平成21年度税制改正について
目 次 第一 平成21年度税制改正による税制上の 措置(「所得税法等の一部を改正する 法律」(平成21年法律第13号)による 税制改正)……… 3 一 平成21年度税制改正による税制上の… 措置の基本的考え方……… 3 二 平成21年度税制改正による税制上の… 措置の概要……… 5 三 平成21年度税制改正法附則について ……… 7 第二 「経済危機対策」による税制上の措… 置(「租税特別措置法の一部を改正す… る法律」(平成21年法律第61号)によ… る税制改正)……… 8 一 「経済危機対策」による税制上の措… 置の基本的考え方……… 8 二 「経済危機対策」による税制上の措… 置の概要……… 8 平成21年度税制改正については、平成21年度予 算編成と並行して行われた税制改正プロセスを経 て、本年1月23日に「所得税法等の一部を改正す る法律案」が国会に提出され、3月27日に可決・ 成立し、4月1日に施行されました。また、依然 として深刻度を増す経済金融情勢に対応するため、 あらためて4月27日に「租税特別措置法の一部を 改正する法律案」が国会に提出され、6月19日に 可決・成立、26日に施行されました。 このため本稿では、いずれも平成21年度税制改 正となる上記の両者について、便宜上、 一 平成21年度税制改正による税制上の措置(「所 得税法等の一部を改正する法律」(平成21年法 律第13号)による税制改正) 二 「経済危機対策」による税制上の措置(「租税 特別措置法の一部を改正する法律」(平成21年 法律第61号)による税制改正) に名称を分けて記載し、各々についての詳細は後 の各章に譲るとともに、ここでは、改正の基本的 考え方のほか、法案成立までの経緯や改正の概要 を述べることとします。第一 平成21年度税制改正による税制上の措置
(「所得税法等の一部を改正する法律」
(平成21年法律第13号)による税制改正)
一 平成21年度税制改正による税制上の措置の基本的考え方
昨年夏以降の経済金融情勢の悪化に対し、政 府・与党は、「安心実現のための緊急総合対策」 (平成20年8月29日)、「生活対策」(平成20年10月 30日)、「生活防衛のための緊急対策」(平成20年 12月19日)という累次の経済対策をとりまとめ、 歳出措置については、平成20年度第1次・第2次 補正予算、平成21年度当初予算においてその具体 化を図りました。これらの経済対策の一環として、税制について は、平成20年11月28日に政府税制調査会において 「平成21年度の税制改正に関する答申」が、12月 12日に与党において「平成21年度税制改正大綱」 が取りまとめられました。その後、平成21年1月 23日に「平成21年度税制改正の要綱」が閣議決定 され、同日、「所得税法等の一部を改正する法律案」 が国会に提出されました。本法律案は、3月27日 に可決・成立し、3月31日に公布、4月1日に施 行されました。 こうした経緯からも明らかなとおり、平成21年 度税制改正による税制上の措置は、景気回復に資 することを主眼として、住宅・土地税制、法人関 係税制、中小企業関係税制、相続税制、金融・証 券税制、国際課税、自動車課税等について、幅広 い措置が講じられました。 これらの改正により、平年度で▲6,850億円の 減収、初年度(平成21年度)で▲4,690億円の減 収になると見込まれています(【資料1】参照)。 【資料1】… 平成21年度の税制改正(内国税関係)による増減収見込額 (単位:億円) 改 正 事 項 平 年 度 (21年度増減収見込額)初 年 度 1 住宅・土地税制 ⑴ 住宅ローン減税の拡充 △ 1,530(注1) △ 110 ⑵… 長期優良住宅の新築等及び既存住宅の改修に係る税 額控除制度の創設 △ 240 △ 110 計 △ 1,770 △ 220 2 法人関係税制 ⑴… エネルギー需給構造改革推進設備等の即時償却制度 の導入 △ 850 △ 780 ⑵ 資源生産性向上促進税制の創設 △ 430 △ 410 計 △ 1,280 △ 1,190 3 中小企業関係税制 ⑴ 軽減税率の引下げ △ 1,100 △ 1,100 ⑵ 欠損金の繰戻し還付の適用停止の廃止 △ 1,120 △ 940 計 △ 2,220 △ 2,040 4 相続税制 ⑴ 非上場株式等に係る納税猶予制度の創設 △ 210 △ 170 ⑵ 農地等の納税猶予制度の見直し △ 80 0 計 △ 290 △ 170 5 金融・証券税制 確定拠出年金制度の拡充 △ 270 △ 50 6 自動車課税 自動車重量税の減免措置の創設 △ 1,020(注2) △ 1,020(注2) 合 計 △ 6,850 △ 4,690 (注1) 住宅ローン減税の拡充による平年度減収見込額は、平成21年から25年までの居住分について改正後の 制度を適用した場合の減収見込額の平均と改正前の制度(平成20年中に居住の用に供する場合に適用さ れる制度)を適用した場合の減収見込額との差額を計上している。 (注2) 自動車重量税の減免措置の創設による減収見込額は、特別会計分(平年度△340億円、初年度△340億円) を含む。
二 平成21年度税制改正による税制上の措置の概要
1 住宅・土地税制
住宅税制については、経済に大きな波及効果を 期待できる住宅投資の活性化を図るため、住宅ロ ーン減税が大幅に拡充されるとともに、自己資金 での一定の住宅投資についても新たに税額控除制 度が導入されました。 具体的には、 ① 住宅ローン減税について、一般住宅に係 る最大控除可能額が500万円に、特に長期優 良住宅に係る最大控除可能額が過去最高水準 を上回る600万円に引き上げられるとともに、 所得税から控除しきれない額については、更 に個人住民税から税額控除できる制度を創設 する ② 自己資金で長期優良住宅を新築した場合に、 標準的なかかり増し費用の10%をその年分の 所得税額から控除(最大控除可能額100万円、 1年繰越可)する制度を創設する ③ 自己資金で一定の省エネ改修工事(太陽光 発電装置の設置費用を含む)又はバリアフリ ー改修工事を行った場合に、その標準的な工 事費用と実際の工事費用の額とのいずれか少 ない金額(200万円を限度。ただし、太陽光 発電装置を設置する場合には、300万円を限 度)の10%をその年分の所得税額から控除す る制度を創設する 等の措置が講じられました。 また、土地税制については、低迷する土地市場 の状況を踏まえ、土地需要を喚起し、土地の流動 化と有効活用を推進する観点から、所要の措置が 講じられました。 具体的には、 ① 個人が平成21年及び22年に取得した土地等 を5年超保有し、譲渡した場合に、その譲渡 所得の計算上、1,000万円の特別控除を適用 する制度を創設する ② 事業者が同期間に土地等を先行取得し、そ の後10年間に他の土地等を譲渡した際に、当 該譲渡益に対する課税繰延(先行取得した土 地等の圧縮記帳を認めることにより、譲渡益 の80%(平成22年に土地等を先行取得した場 合には、60%)相当額の課税を繰延べ)を行 うことを可能とする特例措置を創設する 等の措置が講じられました。2 法人関係税制
法人関係税制については、資源生産性の向上を 実現する経済構造への転換を図り、成長と両立す る低炭素社会を実現する観点から、省エネ・新エ ネ設備等を取得した場合、その年度に全額の損金 算入を可能とする措置(即時償却)等が講じられ ました。 具体的には、 ① 現行のエネルギー需給構造改革推進税制の 対象となる設備等(太陽光発電設備など)に ついて、2年間即時償却を可能とする措置を 創設する ② 一定の計画認定を前提に、省エネ性能の高 い家電製品等の生産設備等について、2年間 の即時償却を可能とする措置(資源生産性向 上促進税制)を創設する 等の措置が講じられました。3 中小企業関係税制
中小企業関係税制については、中小企業が金融 不安や景気後退の影響を特に受けやすいことに配 慮し、資金繰りに苦しむ中小企業へ手厚い支援を 行う措置等が講じられました。 具体的には、 ① 中小法人等を対象に年800万円までの所得 について改正前22%とされていた軽減税率を 2年間18%に引き下げる ② 中小法人等の欠損金の繰戻し還付の適用停止措置を廃止する 等の措置が講じられました。
4 相続税制
相続税制においては、非上場株式等に係る相続 税及び贈与税の納税猶予制度の創設並びに農地に 係る相続税の納税猶予制度の見直しが行われまし た。 具体的には、まず、中小企業の事業承継の円滑 化を通じた雇用の確保や地域経済活力の維持を図 る観点から、「非上場株式等に係る相続税の納税 猶予」制度が創設されました。本制度は、経済産 業大臣の認定を受けた非上場会社(認定中小企業 者)を経営していた被相続人から相続等により当 該会社の株式等を取得しその会社を経営していく 相続人について、その納付すべき相続税額のうち、 株式等に係る課税価格の80%に対応する税額の納 税を猶予するものです。 また、この相続税の納税猶予制度の導入に併せ て、非上場株式の生前贈与による事業承継を円滑 化する観点から、「非上場株式等に係る贈与税の 納税猶予」の制度も創設されました。本制度は、 認定中小企業者の代表者であった者の後継者とし て経済産業大臣の確認を受けた者が、その代表者 であった者から贈与により取得した株式等につい て、その贈与税の全額の納税を猶予するものです。 なお、贈与者の死亡時には、猶予対象株式等を相 続により取得したものとみなして、贈与時の時価 により他の相続財産と合算して相続税額を計算す ることとしており、その際、経済産業大臣の確認 を受けた場合には、相続税の納税猶予を適用する ことができるとされています。 次に、農地に係る相続税の納税猶予制度につい ては、農地を将来にわたり確保し、その有効利用 を促進するために農地の転用規制の厳格化や農地 の面的集積の促進等を行う農地制度の見直しを踏 まえ、所要の見直しが行われました。 具体的には、農地法の転用規制の及ぶ市街化区 域外農地について、農地を永続的に確保し、その 有効利用を促進する観点から、 ① 農地の有効利用に資する政策的な貸付けが なされた農地に相続税の納税猶予の適用を拡 大 ② 20年間の営農による納税の免除を見直し、 終生の農地利用を要件とする仕組みに改組 ③ 身体障害等により自作が困難となった場合 には農地の貸付けにも納税猶予を継続 ④ 利子税率を改正前の6.6%から3.6%に軽減 (平成20年11月末時点においては日銀の基準 割引率が0.5%であり、特例の適用により改 正前4.0%から2.2%への軽減) 等の見直しが行われました。 なお、農地法の転用規制の及ばない市街化区域 内農地については、今回の改正で、自作が困難と なった場合の扱いの見直しや、利子税の負担の軽 減の措置(終生の農地利用が要件とされる者に限 る)に限り適用されます。5 金融・証券税制
金融・証券税制については、金融所得課税の一 体化を推し進め、簡素で分かりやすい制度とする ことで、個人投資家が投資しやすい環境を整備す ることが重要です。このため、平成20年度改正に おいて、平成21年より原則として本則税率(20%) の適用を開始するとされていましたが、厳しい経 済金融情勢に鑑み、改正前の軽減税率(10%)に ついて3年間の延長が行われました。 また、本則税率に復帰した後においても、貯蓄 から投資への流れを促進し、多様な投資家が参入 し厚みのある株式市場を構築する必要があること から、少額の上場株式等への投資のための非課税 措置を併せて創設することとされました。 具体的には、年間1口座100万円まで、5年間 で最大5口座500万円までの上場株式等への投資 に係る配当・譲渡益を非課税とし、非課税期間は 最長10年間で途中売却は自由といった内容を骨子 とする非課税措置を創設することとされました。 本制度は、平成22年度改正において措置し、上場 株式等の配当等に対する本則税率適用開始時に導 入される予定です。さらに、少子高齢化が進展する中、老後に向け た資産形成を行う自助努力を支援する観点も重要 であることから、確定拠出年金についていわゆる マッチング拠出の導入、拠出限度額の引上げを行 うこととされたほか、生命保険料控除において新 たに介護医療保険料控除を創設することとされま した(生命保険料控除の見直しは、平成22年度改 正において措置し、平成24年1月から導入される 予定です)。
6 国際課税
国際課税については、わが国経済の活性化を図 る観点から、わが国企業が海外市場で獲得する利 益を必要な時期に必要な金額だけ国内に戻すこと ができるよう、海外子会社利益の国内還流に向け た環境整備を図る措置が講じられました。 すなわち、企業の配当政策の決定に対する中立 性といった観点に加え、適切な二重課税の排除を 維持しつつ、制度を簡素化する観点も踏まえ、今 般、間接外国税額控除制度に代えて、外国子会社 からの配当を益金不算入とする制度を導入する等 の措置が講じられました。7 自動車課税
厳しい経済状況の中で、自動車への買換・購入 需要を促進するとともに、低炭素社会の実現を目 指す観点から、環境性能に優れた自動車に係る自 動車重量税について、時限的に減免措置を講ずる こととされました。 具体的には、平成21年度から23年度までの間に 受ける最初の新規・継続車検等の際に、 ① 電気自動車、ハイブリッド車、天然ガス自 動車等のいわゆる次世代自動車等については、 免税 ② その他一定の排ガス性能・燃費性能を備え た低公害・省エネ自動車については、その性 能に応じて75%若しくは50%の軽減 を行うこととされました。三 平成21年度税制改正法附則について
平成20年12月24日に閣議決定された「持続可能 な社会保障構築とその安定財源確保に向けた『中 期プログラム』」では、世界経済の混乱から国民 生活を守り、平成20年度を含む3年以内の景気回 復を最優先で図る方針を掲げつつ、同時に、国民 の安心強化のための社会保障安定財源の確保と、 それに向けた税制抜本改革の全体像、今後の歳出 改革の在り方等を明らかにしています。 「中期プログラム」は、与党において「平成21 年度税制改正大綱」が決定された後、政府・与党 間での調整を踏まえて策定されましたが、その結 果、今後の税制抜本改革の道筋及び基本的方向性 について、「所得税法等の一部を改正する法律」 (平成21年法律第13号)の附則第104条が規定され ました。 その詳細は後の章に譲りますが、本附則におい ては、「平成20年度を含む3年以内の景気回復に 向けた集中的な取組により経済状況を好転させる ことを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消 費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成 23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものと する」とされるとともに、個人所得課税、法人課 税、消費課税、自動車関係諸税、資産課税等の全 般にわたり、改革の基本的方向性が示されたもの となっています。政府・与党は、それまでの経済対策に加え、深 刻度を増す経済金融情勢に対応し、景気の「底割 れ」を防ぐ等の観点から、新たに「経済危機対策」 (平成21年4月10日)を取りまとめ、雇用対策や 金融対策をはじめ、幅広い措置を講じることとし ました。この中では、政策手段を総動員する観点 から、税制措置も講じることとされ、特に需要不 足に対処する観点から、 ・ 住宅取得等のための贈与税の軽減 ・ 中小企業の交際費課税の軽減 ・ 研究開発税制の拡充 が決定されました。本対策に基づき、4月27日に 「租税特別措置法の一部を改正する法律案」が国 会に提出され、6月19日に可決・成立し、26日に 施行されました。 これらの改正による減税規模は、平年度で▲ 650億円程度、初年度(平成21年度)で▲550億円 程度と見込まれています(【資料2】参照)。 【資料2】 経済危機対策における税制上の措置による 減税規模 平 年 度 ( 初 年 度 ) 住宅取得等の ための贈与税 の軽減 ― ( ― ) 中小企業の交 際費課税の軽 減 ▲ 200億円程度 (▲ 200億円程度) 研究開発税制 の拡充 ▲ 450億円程度 (▲ 350億円程度) 合 計 ▲ 650億円程度 (▲ 550億円程度)