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学校検診における色覚検査廃止に関する諸問題

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(1)

聞 多 柳

学校検診における色覚検査廃上に関する諸問題

Problems of the abolition of color vision tests

in physical examinations at elementary school

Tamon YANAGIDA

I.は

じめに 本論文の 目的は

,小

学校 における健康診断 としての色覚検査が平成15年度か ら廃止され ることに関する問題を検討することである。 検査廃上に関する賛否の議論 とその背景につ いての考察

,色

覚問題に関する社会的理解の 現状分析 としての大学生の意識調査

,お

よび 今後の課題 として色覚異常の保有者への心理 的サポー トの提案をおこなった。

2.学

校検診における色覚検査の是非をめ ぐ る問題 文部科学省が2002年 (平成14年

)3月

29日 に「学校保健法施行規則の一部を改正する省 令案」を公布 し

,平

成15年度 より小学校にお ける健康診断 (以下

,学

校検診 と略す

)の

必 須科 日から色覚検査が削除されることとなっ た

.字

義 どお りに受け取 るな らば

,こ

れは色 覚検査の義務付けの廃止であって実施を規制 するものではないが

,小

学校や教育委員会な ど実施担当者 には事実上の規制 と受け取 られ ることが予想 される。学校保健法施行規則の 改正は平成

7年

度にも行なわれている

.こ

の 時は

,そ

れまで小学校の

1年

時 と

4年

,そ

して中学校

1年

,高

1年

時に行なわれて いた検査を

,小

4年

時のみの実施に減 らす 改正であった。今回の改正はそれをさらに進 める簡略化である。この動 きに対 しては以前 か ら

,色

覚異常の保有者 自身や関わ りをもつ 医療者 お よび学校 関係者 の間 で賛否両論 があ った.以下 に,それぞれの論 点 をま とめ よう. 検査 の廃止 を求 め る主張 の要 点 は

,こ

れ ま で行なわれていた検査 の弊害 を指摘す るもの であ る

.今

回の改正 に大 きな影響 力を及ぼ し た と考 え られ る市民団体「 日本色覚差別撤廃 の会」 が2000年2月に当時の文部 省 に提言 を した 。その「文部省への提言 (学校保健 法施 行 規 則 に基 づ く色 覚検 査 について)」 には,

(1)色

覚異常 の有無 は遺伝情報 とい う極 めて 個 人的な情報 であ る。

(2)そ

れ に もかかわ ら ず

,学

校 では体育館等 での一斉検査 とい うプ ライバ シーの保護 には極 めて不都合 な形態 が 行 なわれ がちであ る

.(3)し

か も

,学

校検診 での簡便 な検査法 (仮性 同色表 (石原式検査 表

)倹

)は ,色

覚異常 の正確 ・詳細 な判定 には不備があ る (田邊

,2001).(4)さ

らに, 検査 に よって早期 に告知 した として も

,充

分 なケアがな され る社会的な体制 が (学校 の枚 育現場 も含 めて

)整

って いない

.と

い った理 由が挙 が ってい る。 一方

,検

査 の存続 を求 め る主張 の要 点 は, 保有者 が 自覚す る機会 として小学校 での全員 検査 が必要 だ とす る ものであ る

.色

覚 につい ての電話相談 を1990年 か ら続 けている「 色覚 問題研究 グループぱすて る」 が

,今

回の改正 直前 に文部科学省 に提言 を した 。その提言書 「 学校倹診 におけ る色覚検査存続 の お願 い」 には

,(1)色

覚異常 の保 有者 が 日常生活 に対

(2)

県立長崎シーボル ト大学国際情報学部紀要 第 3号 処 してい くためには

,自

分 な りの学習が必要 であ り

,そ

のためには最低限1回の検査 に よ って 自覚す るこ とが不可欠 であ る

.(2)教

師 や親 がその子の色覚異常 に気づいていないた め に,色 の識別 に困 ってい る状況 を誤解 して, 知 的発達 の遅 れや学習態度の悪 さ と見 なされ るケー スがあ る。

(3)学

校検診 がな くな るこ とで

,教

育現場 で色覚問題 に対 す る意識 がさ らに低下 し

,保

有者 がます ます孤立 を深めて しま う。等の理 由が挙が ってい る。 学校健診 で色覚検査 を実施す るか否 かにつ いては対立 してい る両者 であ るが

,教

育現場 を始め とす る一般社会 におけ る色覚問題 の浸 透度の低 さ

,ひ

いては色覚異常 を保有す る人 々への配慮 の欠如や不足 を憂慮 している点は 共通 して い る. もしも色覚検査 それ 自体 が

,色

覚異常の間 題 に人 々の注意 を喚起 す る機能 を持 っている とすれば

,実

施 をやめて しま う事 で社会的な 意識低下 は加速 す る と考 え られ る。検査 は本 来

,被

験 者 の注意や意識 を喚起 させない よう にデザ インされ るものであ るか ら

,検

査 の実 施 自体 が

,何

らかの問題意識の向上 に寄与す る とは考 え られない

.む

しろ逆 に

,問

題意識 の高低 によって

,検

査 の実施 についての意識 や記憶 の定着度 は違 って くる と予想 され る. つ ま り

,問

題意識の高 ま りが背景 にあれば, 検査 を受けた経験 は記憶 に残 る確率が高い と 考 え られ る

.そ

して受 けた経験 についての記 憶 が乏 しい とい うこ とは

,問

題意識の低 さを 反 映 した もの と考 え られ る。 そ こで

,小

学校 におけ る色覚検査 の記憶 と 色覚問題の理解度の調査 を実施 した。

3.色

覚検査 と色覚用語 に関す る調査 この調査 の 目的は

,色

覚問題の理解 が社会 に どの くらい普及 してい るかを調査す ること であ る

.こ

れ までは小学校 での学校検診 が, 色覚の問題 に触 れ る最初 の機会 とな っていた と考 え られ る。 しか しその機会 が どの ように 活か されて いたかによって

,理

解 が定着 して い るか どうかは大 き く異 なる可能性 がある. 実際 には小学校 での出来事 は どの ように記憶 されてい るだ ろ うか。筆者 の色覚は異常

3色

型色覚第

2異

常 であ るが

,筆

者 自身の記憶 で は

,小

学校時代の色覚検査状況 についてはあ ま り覚 えがない

.た

だ し

,そ

こで異常 を指摘 されたため

,母

とともに眼科 を訪 れた時の こ とはは っき り記憶 してい る。そ こで色付 きの メガネをかけて石原検査表 を見 る と

,前

に読 めなか った文字 が読 めた ことを よ く覚 えてい る。 この ように

,学

校 での検査 で異常 が指摘 されれば

,少

な くとも

,受

けた とい う事実 に ついての記1臆はは っき り残 る可能性 は高い。 しか し異常 が指摘 されなかった人たちに とっ ては

,特

に説 明がない限 り

,何

の検査 か も分 か らず

,記

憶 にさえ残 らない可能性 もあ る。 大学生 に対 して

,小

学校 での色覚検査 を どの ように記憶 してい るか,「色盲」「 色弱」の用 語 に対 して どの ように理解 してい るか

,を

質 問紙調査 した

.対

象 とな る大学生は平成

7年

度 の法 改正 に よる

,小

学校

1年

時の色覚検査 廃上 の影響 を受 けていない者たちであ り

,す

なわち小学校 では

, 1年

時 と

4年

時 の

2回

の 受検歴 があ るはずの者 たちであ る。

3.1

方 法 調査 対象者 :大学 生 103名 (男性 65名

,女

性38名) 調査時期 :2002年9月お よび10月 調査項 目

:(1)巧

ヽ学校 お よび小学校以外 で の色覚検査経験

,(2)お

学校 での色覚検査の 印象

,(3)「

色盲」「 色弱」 についての意味, それぞれについての 自由記述.

3.2

結果 と考察

3.2.1

小学校 における色覚検査の記憶 色覚検査 を受 けた時期 についての記憶 に関 す る調査結果 を表 1.1に 示 す. 調査対象 にな ったのは平成 14年10月現在, 18歳か ら25歳 までの男女 であ った。学校検診 での色覚検査 の実施が小学

4年

生時のみに減 ったのが平成

7年

度 であ る (それ以前 は小学

1年

時 と

4年

時 に行 なわれた)。 したが って,

(3)

-192-今回の対象者は (通った小学校が学校朱健法 施行規則を蓮守 していれば

)1年

時 と

4年

時 に色覚検査を経験 しているはずである。 しか しなが ら

, 1年

時 と

4年

時の

2回

の検 査を記憶 していた者はわずか

2.8%で

あった。 少な くともどち らか一方だけ憶 えているか, あるいは時期を忘れたが受けた憶 えはあると 言 う者を合わせても

,小

学校での学校検診を 記憶 していた者は

39.8%に

とどまった

.残

り の60。

2%は

,「小学校で色覚検査を受けた覚 えはない」 と答えた

.こ

れは学校が検査を怠 ったか

,受

けた人が忘れて しまったかの どち らかである. 次に

,検

査の記憶がある者に尋ねた

,検

査 時の印象の調査結果を表1.2に示す。 印象を答えた内では

,何

の検査なのか

,な

ぜ受けているのかな どの疑間を抱 き

,不

可解 な印象を持 った者 が最 も多 く

22%に

のぼ っ た

.そ

れよりも多かったのが

,特

に印象がな い と答えた者で

31,7%,さ

らにその ときの印 象について記述のない者が

9.8%い

た。 これ らを合わせると

,検

査の経験はしても

, 4割

の人はあま り印象 に残 っていない こ とにな る. つま り

,今

回の調査対象者全体の

,実

に4 分の

3以

上の人は

,色

覚検査を受けた経験が 実質的には記憶 に残 っていないのである.

3.2.2

「 色盲」「 色弱」についての理解 今回の調査対象者の中には

,こ

れまでに色 表

1.1

色覚検査の時期に関する記憶 覚の異常を指摘 された者はいなかった。異常 を指摘 されで もしなければ

,色

覚の検査はあ ま り印象に残 らない と言えそうである

.そ

う だ とすると

,別

の機会に何 らかの教育的指導 がなければ

,色

覚問題に対する正 しい理解は 浸透の しようがない。現在の大学生が色覚呉 常 に関する用語のうち

,一

般世間にもっとも 普及 してい る と考 え られ る単語「 色盲」 と 「色弱」について

,ど

の程度の理解を持 って いるのか

,調

査を行なった. それぞれの語について知 っている意味

,あ

るいは想像される意味を

,自

由記述の形式で 書いて もらった

.回

答された記述内容を筆者 が大まかに分類 した結果を,「色盲」「色弱」 それぞれについて

,表

2.1,表

2.2に示す. 大学生の色覚異常に関する知識はまことに 乏 しいものであった。 「 色盲」「色弱」両用語 とも

,医

学分野で ははっきりした定義がなされている.ただ し, その定義はかな り複雑なものである

.簡

略に 示す と

,色

識別の基盤 となる

3種

の錐体細胞 の うち

,ど

れかの機能が欠損 している

2色

型 色覚を「 色盲」

,ど

れかの機能が別種の錐体 機能に近づ く方向にシフ トしている異常

3色

型色覚を「色弱」と呼が

.つ

ま りこの呼称は, 色覚異常の原因の分類によるものである。そ れが もた らす現象 としての色の見えには

,そ

れほどはっきりした境界はない。特定のスペ ク トル帯域の色に関 して混同が発生する点で は色盲 と色弱は共通 している。混同が生 じる 表

1.2

色覚検査の印象 人数 (割合) 検査の記憶 人数 (割合) 検査 の印象 色覚検査の覚えあ り

1年

時と

4年

時 1年 時のみ

4年

時のみ 年時は不明 小計 色覚検査の覚えな し 全体

3( 2.8%)

13(17.5%)

8( 7.8%)

12(11.7%)

41(39.8%)

62(60.2%)

103(100.0°/o)

6(14.6%)

3( 7.3%)

9(22.0%)

1( 2.4%)

1( 2.4%)

4( 9.8%)

13(31.7%)

4( 9.8°/。) 41(100.0°/。) 楽 しんだ 簡単だ った 不可解だ った 不思議な気分だ った 面倒だ った 具体的な出来事を記述 特に印象な し 記述な し 全体

(4)

県立長崎シーボル ト大学国際情報学部紀要 第 3号 範 囲は

,一

般 に「 色盲」の方 が「 色弱」 よ り も広 い

.し

か し色弱は程度 の幅が大 き く

,そ

れ に よって色混 同の範 囲 もかな り異な り

,色

盲 に近 い場合 か ら正常色覚 に近 い場合 までさ まざまであ る。

1種

の錐体細胞 しか機能 していない

1色

色覚 (全色盲 と呼ばれ

,発

生率 は非常 にまれ) は

,色

の識別 がほ とん どで きない状態 であ る

, 2色

型 (色盲

)と

異常

3色

型 (色弱

)に

よる色の混 同範 囲は

,全

スペ ク トル中の半分 に も達 しない場合 がほ とん どである. したが って

,色

盲 ・色弱 どち らとも

,色

の 認 識 お よび識 別 が全 くで きな いわ けで は な い。「 特 定 の色 の範 囲で混 同が生 じる もので あ り

,そ

の範 囲の比較的大 きい ものを色盲 , 小 さい ものを色弱 と呼ボ」 とい う理解が

,一

応 の正 しい理解 の合格 ラインであ る. 以前 か ら,「 色盲」「 色弱」の用語 は

,指

し 示 す範 囲が曖味 に用 い られ る場合が多 く

,誤

解 も多い とい う指摘 がなされていた (長澤, 1999,2000)。 今回の調査 はそれを裏付 ける ものであ った。それに加 えて「色弱」の方が, 「 わか らない」「 記述 な し」 が多 く,「 色盲」 よ りも知名度 が低 い とい う傾向 も見 られた。 繰 り返 しにな るが,「 色覚異常」 とは色 に 色の区別 が全 くできない 全 てが 自黒 に見える 色 を感 じない 色 の区別が困難 一般 と別の色 が見える 色の認識 が不正確 特定 の色が区別 で きない 見 える色が少 ない 原 因や種類の記述 その他 分 か らない 全体

33(32.0%)

13(12.6%)

13(12.6%)

3( 2.9%)

5( 4.9°/。)

3( 2.9%)

20(19.4°/c)

1( 1.0%)

5( 4.8%)

5( 4.9%)

2( 1.9%)

103(100.0%) 対 して全 く感受性 がない こ とを指すのではな く

,特

定 の範 囲の色 に対 して混 同が起 きる現 象 を指 してい る (具体的 な範囲は

,色

相環 で 表 現 すれば

,主

に紫 か ら青 にかけての範囲 と 緑 ・黄 ・赤 に渡 る範 囲 についてであ る)。 そ の範囲の色のバ リエーシ ョンに対 しては

,区

別 がつ きに くい とい うことであ る。それ以外 の範 囲については色の弁別 もで きるし

,そ

の 範 囲 内であ って も

,同

系色 の濃淡 な どはむ し ろ正常色覚の保有者 よ りも敏感 に弁別で きる 場 合 もあ る。しか し

,誤

解 として多 い ものは, 「 色盲」 は全 く色が感 じられず

,白

黒 に見 え る

,

とか,「 色弱」 は色 が薄 ぼんや りと見 え

,

とい った ものであ った。 これ らの誤解が 生 じる原因は

,正

しい知識 がない こ とと

,用

い られている文字 か らの連想 によるもの と推 測 され る。 さ らに「 色盲」 と「 色弱」は

,学

術的 には 色混 同の程度の強弱に対応 して用 い られてい る (程度 の強い ものを色盲

,弱

い ものを色弱 と呼ボ

)の

だが

,今

回の調査 ではそれを逆 に 捉 え る例や

,色

弱 を視覚機能全般 の低下 と捉 え る例 もあ った。ゃは り「 弱」の字 か らの連 想 と思 われ る。 これ らの語 がいかに曖味な意 味 しか提供 しないか

,

とぃ うこ とを改めて示 色の区別 が全 くで きない 白黒 に見える 色 の区別 が困難 色 が薄 くぼゃけて見える 色 を感 じる力が弱 い 色の濃淡が分 か らない 一般 と別の色 が見える 色の認識 が不正確 特定 の色の識別 が困難 見 え る色が少 ない 色盲の軽 いもの その他 分 か らない 記述 な し 全体 表

2.1「

色盲」の意味についての理解

2.2

「 色弱」の意味についての理解 理解内容 人数 (割合) 理解内容 人数 (割 ) 3( 2.9°/。 )

1( 1.o%)

24(23.3°/。)

9( 8.7%)

7( 6.3%)

2( 1.9%)

5( 4.9%)

3( 2.9%)

18(17.5%)

1( 1.0°/。)

2( 1.9%)

4( 3.9%)

10( 9.7%)

14(13.6%)

103(100.0%)

(5)

-194-した結果 と言 える。 いずれに して も

,大

学生 が色覚異常 につい て

,正

確 で詳 細 な知識 をは とん ど持 っていな い とい うこ とは

,そ

れ までの学校教育で全 く とい っていいほ ど説 明を受 け る機会 を持 って いなかった こ とを示 す と考 えて よかろ う:

4.全

体的考察 と今後 の対策 学校健診 におけ る色覚検査 は

,異

常 を指摘 されない者 に とっては

,あ

ま り記イ臆に残 らな い出来事 に過 ぎない と言 える

.そ

れ に加 え, 色覚問題 について何 ら教育的な指導 がなされ る機会がない ことに よって

,社

会一般 には, 色 覚異 常 を保 有 す る者 に汁 す る理解 と配 慮 は

,現

状 では ほ とん ど普及 していな い と考 え られ る. 小学 校 に お け る色 覚 検 査 は一 斉 検 査 で あ り

,そ

の方法 にプ ライバ シー保護 への配 慮 に 欠 け るな どの問題′点が

,一

面 には確 かにあ る (長澤 ら

,1994a).し

か し

,保

有者 に とって は初 めて気づかされ る機会 であ るこ とは間違 い な く

,そ

の意義 は非常 に重要 であ る(長澤 ら

,1994b).も

しも

,一

斉 検 査 を な くす の であれば

,そ

れ に代わ る何 らかの機会 が必要 にな る。それは何 か と考 えれば

,保

育者や教 員 な どの周 りの大 人が充 分 な知識 を持 って, 子 どもの振 る舞 いを観察 してあげ る こ との他 にはあ り得ない

.し

たが って

,新

た に親 とな る人たちや

,保

育士 お よび学校教 師たち に, 色覚問題 に対す る深い理解 と

,子

どもの異常 に気 づ く目を持 って も らわ な くて はな らな い。 しか し

,本

調査 の結果 か らも推測 され る ように

,こ

れ までの学校環境では

,色

覚問題 に対 す る教育や配慮 はほ とん どなされて こな か った と思われ る。 この状態 が

,こ

の先

,学

校検診 での色覚検査 を廃 止 した後 も続 くので あれば

,保

有者 は確実 に孤立 を深 めて しま う こ とは容易 に予想がつ く. 色覚倹査の廃上 に対す る

,推

進派 と慎 重派 両者 の主張 は互 いに拶F他的 な ものではない。 両者 は

,社

会的支援 の不足 を懸念 し

,そ

れ を 前提 としてい る点 では共通 してお り

,検

査 の 実施が社会的不利につながる事を憂慮する反 対派 と

,検

査実施が本人の対処行動の契機 と なる点に期待する存続派に分かれているに過 ぎない

.ど

ち らが正 しいのか という議論は無 益である。両者は共に

,色

覚問題に心を悩ま せている当事者 か らな る市民 グループであ り

,両

者の願いは ともに叶えられるべ きもの である。両者の主張を止揚 したあ り方での体 制を構築 してい くために必要な改善策を模索 してい く必要がある。 両者の主張の統合案 として

2つ

の選択肢が 考 えられる。

1つ

,色

覚異常の保有者が自 らは自覚せず とも不 自由な く生活できるよう に社会整備すること (色彩環境の改善

)で

あ り

,も

1つ

は保有者 自身が自覚 して

,自

ら 対応策を講 じることを支援するような社会整 備である。 前者の場合

,色

覚検査は一斉検査のみな ら ず個別検査 もこの世か ら廃絶 してしまって構 わない。後者は何 らかの形での色覚検査を行 うが

,保

有者が 自分の色覚異常を知 ることに 何 ら不安を覚えないほど充実 した検査体制を 作る必要がある。この場合

,検

査の実施方法 が個人のプライバシーを何 ら傷つけないだけ でな く

,色

覚異常の診断に伴い

,当

事者の不 安が充分に解消されるまでフ ォローする心理 的サポー トプログラムが同時に提供 される必 要がある. 前者のための方策

,す

なわち色彩環境の整 備は

,以

前か ら訴 えられて きたが実際に進展 しているとは思えない

.む

しろ

,パ

ソコンの 普及で色の扱いが容易になった ことと

,イ

ン ターネ ットの普及によって個人の情報発信が 容易になったことか ら

,色

覚異常に対する配 慮に欠ける色表示が激増することが懸念され る

.し

たがって

,前

者の完全な実現はまだ遠 い と思われる。 しかしそのための努力は続け ていかねばな らない。少な くとも

,ま

ず子 ど もの学習環境を整備する事

,す

なわち教育現 場に従事する人 々が保有者を見分け られるは どの知識 と観察眼を持つことが

,な

ん として も必要である。そのためには

,色

覚異常の保

(6)

県立長崎シーボル ト大学国際情報学部紀要 第 3号 有者 が どの ような振 る舞 いをす るのか

.具

体 的 には どの ような色混 同を起 こすか

,ど

の よ うな場面 において困惑 ・躊躇せざるを終 ない のか

,に

ついて

,体

系的 にま とめた分 か りや すい解説法 を確立す る必要 があ る。文部科学 省 は

,今

回の改正 に ともな って

,平

成 14年 度 中に学校教員 向けの指導書 を作成 し

,全

ての 教 員 に配布 す ることを うた っているが

,そ

の 有効利用 を しっか リチ ェックす る必要 があろ う。 ここで

,前

者 の選択肢 に矛盾 が生 じるこ と に気づ く

.つ

ま り

,色

覚検査 の必要 がないほ ど整備 された色彩環境 を保 つためには

,色

覚 異 常 の保 有者 か らの提言 が な くて は な らな い

.そ

の提言者 が誰 なのかを知 るためには色 覚検査 を行 わなければな らない

,の

であ る。 一方後者のための方策

,す

なわち保有者 ヘ の心理的サポー ト体制 について もまだほ とん ど皆無 と言 って も過言ではない。 しか し筆者 は こち らの選択肢 の進展 に期待す る。なぜな ら

,一

般 多数 の者 とは異な る属性 を抱 えた者 がその事実 を安心 して受容で きる社会

,あ

る いは 自分 と異な る属性 を持 つ他者 に対 して, 安 心 して受容 と配慮がで きる余裕 が持 て る社 会 こそが

,今

後 目指 すべ き社会であ る と信 じ るか らであ る. 色覚異常 の保有者 が置 かれた状況 に対す る 心理 的 ス トレスは

,異

常 の種類 と程度 による 個人差 が極 めて大 き く

,個

々人の立場や場面 に応 じた きめ細 かな姑応 が求め られ る。また, 心 理 的 サ ポー トは保 有者 に対 しての み で な く

,特

,幼

い我 が子 が保有者 であるこ とを 知 らされた母親 が味わ うシ ョック と不安 を軽 減 させ る こ とが

,子

どもの心理的安定の確保 に とって極 めて重要 である。母親 は

,自

らに 色覚異常 が現 れず

,保

因者 として関わ るケー スが多 く

,そ

の こ とを どの ように理解 し受け 止めてい くのかが

,母

親 自身に とっての心理 的課題 となる

.こ

の受容過程は

,保

有者 自身 の色覚異常に対する受容過程 と同様に

,長

い 月 日をかけて進行 してい くと予想される。し かし

,そ

れに伴 う心理的な動揺を受け止める サポー ト体制は現在ほ とんどない

.心

理カウ ンセ リングの知見を活かした

,不

安解消のた めのサポー トプログラムの確立が今後の課題 と考えられる. 引用文献 長澤和弘

,島

正之

,安

達元 明

,安

達恵美子

(1994a)小

・中学校荻諭を対象 とした色覚 異常に対する意識調査

,第

1報

色覚検査 の実施状況

.

日本の眼科

,Vol.65,305

-310 長澤和弘

,島

正之

,安

達元 明

,安

達恵美子

(1994b)小

・中学校教諭 を対象 とした色 覚異常に対する意識調査

,第

2報

色覚異 常 の把握 お よび生徒への指導 について. 日本の眼科

,Vol.65,445450

長澤和弘

(1999)色

覚異常 を どう呼がか?

VISION, 11, 33-36

長澤和弘

(2001)色

覚異常の用語

.眼

科診療 プラクティス66色覚の考 え方

,Vol.4,No.

1, 80-81 日本色覚差別撤廃の会(2000)「文部省への提 言 (学校保健法施行規貝Jに基づ く色覚検査 イこついて)」

http://www.bekkoameone.

jp/ha/cms2000/Default.htm 色覚研究グループぱすて る(2001)「 緊急提 言 :学 校検診 における色覚検査存続のお願 い」http://www opastel.gr.ip/SOShiki/ kinkyuteigen,html 田邊詔子

(2001)仮

性 同色表

.眼

科診療 プ ラ クテ ィス66色 覚の考 え方

,Vol.4,No。

1, 6-9

参照

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