HTLV-Iのがん遺伝子産物Taxの新規標的遺伝子CARM1
の解析
著者
好川 翔平
2016 年度 修士論文要旨
HTLV-I のがん遺伝子産物 Tax の新規標的遺伝子
CARM1
の解析
関西学院大学大学院理工学研究科 生命科学専攻大谷研究室 好川翔平 ヒトT 細胞白血病ウイルス(HTLV-I)は、ヒトで初めて同定されたレトロウイ ルスであり、T 細胞をがん化し、成人 T 細胞白血病(ATL)を引き起こす。HTLV-I ゲノムには、転写制御因子Tax がコードされている。Tax は、少なくとも3つ の転写因子CREB、NF-κB、SRF を活性化することで、宿主細胞の増殖関連遺 伝子を発現誘導し、細胞増殖を促進する。そのため、HTLV-I によるがん化には、 Tax による標的遺伝子の発現誘導が重要であると考えられている。しかし、Tax が発現誘導する遺伝子の全貌は未だ明らかにされていない。Tax の新規標的遺 伝子を探索するために行われた先行研究のDNA マイクロアレイで、CARM1 遺 伝子が同定された。CARM1 は、ヒストンをメチル化することで遺伝子発現を 促進する。また、CARM1 は Tax と協調的に働き、HTLV-I の LTR からの遺伝 子発現を増強することが報告されている。そこで本研究では、Tax によって発 現誘導されたCARM1 が、Tax による増殖関連遺伝子の発現誘導及び細胞周期 信仰に貢献しているか否かを調べた。その結果、①CARM1 のノックダウンに より、Tax による NF-κB の転写活性化と標的遺伝子の発現誘導が抑制された。 ②Tax の発現により、Tax の標的遺伝子プロモーター領域の CARM1 の結合が増強し、かつヒストンのメチル化が亢進した。③CARM1 のノックダウンによ り、Tax による E2F の活性化が抑制された。④CARM1 は、増殖刺激よって mRNA およびタンパク質レベルで発現誘導された。以上より、Tax によって発 現誘導されたCARM1 は、Tax による標的遺伝子発現誘導を促進することで、 Tax による細胞周期進行に貢献することが示唆された。