宇都宮大学教育学部紀要
第63号 第1部 別刷
平成25年(2013)3月
YOSHINO Keiko, NAGAI Mayumi
Physical and Mental Condition of Students in
Utsunomiya University
after the Great East Japan Earthquake
東日本大震災が宇都宮大学学生へ与えた
心身への影響について
吉 野 啓 子
永 井 真由美
宇都宮大学教育学部紀要
第63号 第1部 別刷
平成25年(2013)3月
YOSHINO Keiko, NAGAI Mayumi
Physical and Mental Condition of Students in
Utsunomiya University
after the Great East Japan Earthquake
東日本大震災が宇都宮大学学生へ与えた
心身への影響について
吉 野 啓 子
永 井 真由美
研究の目的) 平成23年3月の東日本大震災が本学学生に与えた心身への影響を調査して、健康管理上の資料と する。 研究方法) 平成23年度4月の定期健康診断を受診した学生に震災後の健康状態について3つの設問と自由記 述からなるアンケート調査を施行した。この結果はすでに全国大学保健管理研究集会にて発表したが、 今回は そのデータに新たな観点を加えて再検討する。また、平成23年6月の留学生健康診断受診 者に震災後の状況についての4つの設問について自由に記述するアンケート調査を行ったので、その 結果についても検討を加える。さらに、震災後の新入生面接・震災体験と関連する面談事例について その概要を報告する。 調査結果) 1.学生定期健康診断時に施行したアンケート結果 対象となる学部学生4292名および院生1015名のあわせて5307名のうち、回答者は 3665名で全体の回答率は69.1%である。学部生では1年生の回答率は93.6%、2年生は 51.9%、3年生は66.3%、4年生は69.8%、大学院生は全体で65.9%である。留学生で は学部生と院生とを併せた回答率は42.9%であった。(表1参照) ① 心身の不調の有無 設問1で「心身の不調がある」と回答したのは271名で全回答者の7.4%である。そのうち学部 生は204名で、女子学生および上級生に高い傾向があった。大学院生は67名で性差及び学年によ る特徴はみられないが、修士課程の院生の心身の不調は学部生より高い傾向があった。(表2参照) 自由記述では余震時の不眠、いつも地面が揺れている感じがする地震酔い、余震があると不安に なる、震災時に乗り物に閉じ込められたための外出不安、不安・抑うつ・過呼吸・パニックなどの 精神症状があげられている。また、過食や食欲不振、胃痛、下痢などの消化器症状、甲状腺機能亢 進や月経不順など内分泌系の不調、頭痛・めまいなど神経系の不調、喘息症状やかぜ症状など呼吸 器系の不調などの身体症状がみられた。そのほかテレビなどマスコミ情報から不安が募るという不
東日本大震災が宇都宮大学学生へ与えた
心身への影響について
Physical and Mental Condition of Students in Utsunomiya University
after the Great East Japan Earthquake
吉野 啓子,永井 真由美
YOSHINO Keiko
1, NAGAI Mayumi
11 宇都宮大学保健管理センター
調があった。(表3参照) ② 放射能への不安 設問2で「放射能への不安がある」と回答したのは843名で、全回答者の23.0%にあたる。そ のうち、学部生は685名で全体では男子より女子が高い。大学院生は158名で一般学生では女性 に、留学生では男性に高い。留学生全体の放射能への不安は一般学生に較べて高かった。(表4参照) 放射能への不安についての自由記述は、水道水(飲料水)・野菜・海産物などへの不安、栃木県に 住むことの安全性への不安、放射能の健康への影響、公表されている放射線量への不信感、福島にあ る実家への不安、放射能被災地への心配、将来の出産への不安、目に見えない不安、風評被害の危惧、 表1 H23年度健診時アンケート回答率 表1 H23年度健診時アンケート回答率 対象 対象 対象 学生数 人数 㻑 学生数 人数 㻑 学生数 人数 㻑 㻝 㻥㻟㻜 㻤㻤㻞 㻥㻠㻚㻤 㻞㻝 㻤 㻟㻤㻚㻝 㻥㻡㻝 㻤㻥㻜 㻥㻟㻚㻢 㻞 㻥㻢㻢 㻡㻜㻡 㻡㻞㻚㻟 㻞㻟 㻤 㻟㻠㻚㻤 㻥㻤㻥 㻡㻝㻟 㻡㻝㻚㻥 㻟 㻥㻥㻠 㻢㻢㻣 㻢㻣㻚㻝 㻞㻝 㻢 㻞㻤㻚㻢 㻝㻘㻜㻝㻡 㻢㻣㻟 㻢㻢㻚㻟 㻠 㻝㻘㻟㻜㻢 㻥㻜㻡 㻢㻥㻚㻟 㻟㻝 㻝㻡 㻠㻤㻚㻠 㻝㻘㻟㻟㻣 㻥㻞㻜 㻢㻤㻚㻤 総数 㻠㻘㻝㻥㻢 㻞㻘㻥㻡㻥 㻣㻜㻚㻡 㻥㻢 㻟㻣 㻟㻤㻚㻡 㻠㻘㻞㻥㻞 㻞㻘㻥㻥㻢 㻢㻥㻚㻤 㻝 㻟㻢㻢 㻞㻤㻡 㻣㻣㻚㻥 㻠㻞 㻟㻝 㻣㻟㻚㻤 㻠㻜㻤 㻟㻝㻢 㻣㻣㻚㻡 㻞 㻠㻟㻠 㻟㻝㻣 㻣㻟㻚㻜 㻠㻤 㻝㻣 㻟㻡㻚㻠 㻠㻤㻞 㻟㻟㻠 㻢㻥㻚㻟 㻟 㻞㻝 㻠 㻝㻥㻚㻜 㻣 㻟 㻠㻞㻚㻥 㻞㻤 㻣 㻞㻡㻚㻜 㻠 㻝㻤 㻠 㻞㻞㻚㻞 㻤 㻝 㻝㻞㻚㻡 㻞㻢 㻡 㻝㻥㻚㻞 㻡 㻢㻜 㻡 㻤㻚㻟 㻝㻝 㻞 㻝㻤㻚㻞 㻣㻝 㻣 㻥㻚㻥 総数 㻤㻥㻥 㻢㻝㻡 㻢㻤㻚㻠 㻝㻝㻢 㻡㻠 㻠㻢㻚㻢 㻝㻘㻜㻝㻡 㻢㻢㻥 㻢㻡㻚㻥 㻡㻘㻜㻥㻡 㻟㻘㻡㻣㻠 㻣㻜㻚㻝 㻞㻝㻞 㻥㻝 㻠㻞㻚㻥 㻡㻘㻟㻜㻣 㻟㻘㻢㻢㻡 㻢㻥㻚㻝 学部生 院生 合計 学年 一般学生 留学生 合計 回答者数 回答者数 回答者数 表2 心身の不調(設問1) 表2 心身の不調(設問1) 人数 㻑 人数 㻑 㻝 㻡㻡㻞 㻞㻜 㻟㻚㻢 㻡㻟㻞 㻥㻢㻚㻠 㻡㻤㻡 㻞 㻟㻜㻣 㻣 㻞㻚㻟 㻟㻜㻜 㻥㻣㻚㻣 㻢㻝㻣 㻟 㻠㻝㻞 㻞㻟 㻡㻚㻢 㻟㻤㻥 㻥㻠㻚㻠 㻢㻞㻟 㻠 㻡㻤㻠 㻞㻤 㻠㻚㻤 㻡㻡㻢 㻥㻡㻚㻞 㻤㻡㻣 総数 㻝㻘㻤㻡㻡 㻣㻤 㻠㻚㻞 㻝㻘㻣㻣㻣 㻥㻡㻚㻤 㻞㻘㻢㻤㻞 㻝 㻟㻟㻤 㻝㻤 㻡㻚㻟 㻟㻞㻜 㻥㻠㻚㻣 㻟㻢㻢 㻞 㻞㻜㻢 㻞㻟 㻝㻝㻚㻞 㻝㻤㻟 㻤㻤㻚㻤 㻟㻣㻞 㻟 㻞㻢㻝 㻠㻣 㻝㻤㻚㻜 㻞㻝㻠 㻤㻞㻚㻜 㻟㻥㻞 㻠 㻟㻟㻢 㻟㻤 㻝㻝㻚㻟 㻞㻥㻤 㻤㻤㻚㻣 㻠㻤㻜 総数 㻝㻘㻝㻠㻝 㻝㻞㻢 㻝㻝㻚㻜 㻝㻘㻜㻝㻡 㻤㻥㻚㻜 㻝㻘㻢㻝㻜 㻞㻘㻥㻥㻢 㻞㻜㻠 㻢㻚㻤 㻞㻘㻣㻥㻞 㻥㻟㻚㻞 㻠㻘㻞㻥㻞 人数 㻑 人数 㻑 㻝 㻞㻟㻥 㻝㻤 㻣㻚㻡 㻞㻞㻝 㻥㻞㻚㻡 㻟㻝㻡 㻞 㻞㻢㻟 㻝㻣 㻢㻚㻡 㻞㻠㻢 㻥㻟㻚㻡 㻟㻡㻝 㻟 㻠 㻜 㻜㻚㻜 㻠 㻝㻜㻜㻚㻜 㻞㻟 㻠 㻟 㻝 㻟㻟㻚㻟 㻞 㻢㻢㻚㻣 㻝㻤 㻡 㻢 㻜 㻜㻚㻜 㻢 㻝㻜㻜㻚㻜 㻡㻥 総数 㻡㻝㻡 㻟㻢 㻣㻚㻜 㻠㻣㻥 㻥㻟㻚㻜 㻣㻢㻢 㻝 㻣㻣 㻝㻟 㻝㻢㻚㻥 㻢㻠 㻤㻟㻚㻝 㻥㻟 㻞 㻣㻝 㻝㻣 㻞㻟㻚㻥 㻡㻠 㻣㻢㻚㻝 㻝㻟㻝 㻟 㻟 㻜 㻜㻚㻜 㻟 㻝㻜㻜㻚㻜 㻡 㻠 㻞 㻜 㻜㻚㻜 㻞 㻝㻜㻜㻚㻜 㻤 㻡 㻝 㻝 㻝㻜㻜㻚㻜 㻜 㻜㻚㻜 㻝㻞 総数 㻝㻡㻠 㻟㻝 㻞㻜㻚㻝 㻝㻞㻟 㻣㻥㻚㻥 㻞㻠㻥 㻢㻢㻥 㻢㻣 㻝㻜㻚㻜 㻢㻜㻞 㻥㻜㻚㻜 㻝㻘㻜㻝㻡 男女合計 対象学生数 回答者数 あり なし 男 女 心身の不調 男 女 男女合計 院生 学年 学部生 学年 心身の不調 対象学生数 回答者数 あり なし
早急な対策への要望、無力感などがあった。(表5参照) ③ 相談希望の有無 「相談希望がある」と答えた学生は50名で全回答者の1.4%であった。学部生は31名で留学生 はいなかった。大学院生は19名で男子学生に高かった。(表6参照) 表3 心身の不調についての自由記述の内訳表3 心身の不調についての自由記述の内訳 内容 人数 余震のための不眠 㻞㻜 いつも地面が揺れている感じがする地震酔い 㻝㻞 余震があると不安になる 㻝㻞 過食や食欲不振、胃痛、下痢などの消化器症状 㻝㻞 不安、抑うつ、過呼吸、パニック等の精神症状 㻤 甲状腺機能亢進、月経不順等内分泌系の訴え 㻡 頭痛・めまいなど神経系の訴え 㻡 震災時に電車に閉じ込められたための外出不安 㻟 喘息症状やかぜ症状など呼吸器系の訴え 㻡 マスコミ情報で不安になった 㻝㻝 表4 放射能への不安(設問2) 表4 放射能への不安(設問2) 人数 㻑 人数 㻑 人数 㻑 人数 㻑 人数 㻑 人数 㻑 㻝 㻡㻠㻢 㻝㻜㻤 㻝㻥㻚㻤 㻠㻟㻤 㻤㻜㻚㻞 㻢 㻝 㻝㻢㻚㻣 㻡 㻤㻟㻚㻟 㻡㻡㻞 㻝㻜㻥 㻝㻥㻚㻣 㻠㻠㻟 㻤㻜㻚㻟 㻞 㻟㻜㻠 㻢㻢 㻞㻝㻚㻣 㻞㻟㻤 㻣㻤㻚㻟 㻟 㻞 㻢㻢㻚㻣 㻝 㻟㻟㻚㻟 㻟㻜㻣 㻢㻤 㻞㻞㻚㻝 㻞㻟㻥 㻣㻣㻚㻥 㻟 㻠㻜㻤 㻣㻢 㻝㻤㻚㻢 㻟㻟㻞 㻤㻝㻚㻠 㻠 㻞 㻡㻜㻚㻜 㻞 㻡㻜㻚㻜 㻠㻝㻞 㻣㻤 㻝㻤㻚㻥 㻟㻟㻠 㻤㻝㻚㻝 㻠 㻡㻣㻞 㻝㻜㻥 㻝㻥㻚㻝 㻠㻢㻟 㻤㻜㻚㻥 㻝㻝 㻢 㻡㻠㻚㻡 㻡 㻠㻡㻚㻡 㻡㻤㻟 㻝㻝㻡 㻝㻥㻚㻣 㻠㻢㻤 㻤㻜㻚㻟 総数 㻝㻘㻤㻟㻜 㻟㻡㻥 㻝㻥㻚㻢 㻝㻘㻠㻣㻝 㻤㻜㻚㻠 㻞㻠 㻝㻝 㻠㻡㻚㻤 㻝㻟 㻡㻠㻚㻞 㻝㻘㻤㻡㻠 㻟㻣㻜 㻞㻜㻚㻜 㻝㻘㻠㻤㻠 㻤㻜㻚㻜 㻝 㻟㻟㻢 㻤㻜 㻞㻟㻚㻤 㻞㻡㻢 㻣㻢㻚㻞 㻞 㻜 㻜㻚㻜 㻞 㻝㻜㻜㻚㻜 㻟㻟㻤 㻤㻜 㻞㻟㻚㻣 㻞㻡㻤 㻣㻢㻚㻟 㻞 㻞㻜㻝 㻢㻡 㻟㻞㻚㻟 㻝㻟㻢 㻢㻣㻚㻣 㻡 㻞 㻠㻜㻚㻜 㻟 㻢㻜㻚㻜 㻞㻜㻢 㻢㻣 㻟㻞㻚㻡 㻝㻟㻥 㻢㻣㻚㻡 㻟 㻞㻡㻥 㻤㻢 㻟㻟㻚㻞 㻝㻣㻟 㻢㻢㻚㻤 㻞 㻝 㻡㻜㻚㻜 㻝 㻡㻜㻚㻜 㻞㻢㻝 㻤㻣 㻟㻟㻚㻟 㻝㻣㻠 㻢㻢㻚㻣 㻠 㻟㻟㻝 㻤㻝 㻞㻠㻚㻡 㻞㻡㻜 㻣㻡㻚㻡 㻠 㻜 㻜㻚㻜 㻠 㻝㻜㻜㻚㻜 㻟㻟㻡 㻤㻝 㻞㻠㻚㻞 㻞㻡㻠 㻣㻡㻚㻤 総数 㻝㻘㻝㻞㻣 㻟㻝㻞 㻞㻣㻚㻣 㻤㻝㻡 㻣㻞㻚㻟 㻝㻟 㻟 㻞㻟㻚㻝 㻝㻜 㻣㻢㻚㻥 㻝㻘㻝㻠㻜 㻟㻝㻡 㻞㻣㻚㻢 㻤㻞㻡 㻣㻞㻚㻠 㻞㻘㻥㻡㻣 㻢㻣㻝 㻞㻞㻚㻣 㻞㻘㻞㻤㻢 㻣㻣㻚㻟 㻟㻣 㻝㻠 㻟㻣㻚㻤 㻞㻟 㻢㻞㻚㻞 㻞㻘㻥㻥㻠 㻢㻤㻡 㻞㻞㻚㻥 㻞㻘㻟㻜㻥 㻣㻣㻚㻝 人数 㻑 人数 㻑 人数 㻑 人数 㻑 人数 㻑 人数 㻑 㻝 㻞㻞㻢 㻠㻤 㻞㻝㻚㻞 㻝㻣㻤 㻣㻤㻚㻤 㻝㻞 㻢 㻡㻜㻚㻜 㻢 㻡㻜㻚㻜 㻞㻟㻤 㻡㻠 㻞㻞㻚㻣 㻝㻤㻠 㻣㻣㻚㻟 㻞 㻞㻡㻟 㻠㻣 㻝㻤㻚㻢 㻞㻜㻢 㻤㻝㻚㻠 㻝㻜 㻢 㻢㻜㻚㻜 㻠 㻠㻜㻚㻜 㻞㻢㻟 㻡㻟 㻞㻜㻚㻞 㻞㻝㻜 㻣㻥㻚㻤 㻟 㻟 㻜 㻜㻚㻜 㻟 㻝㻜㻜㻚㻜 㻝 㻜 㻜㻚㻜 㻝 㻝㻜㻜㻚㻜 㻠 㻜 㻜㻚㻜 㻠 㻝㻜㻜㻚㻜 㻠 㻟 㻝 㻟㻟㻚㻟 㻞 㻢㻢㻚㻣 㻜 㻜 㻜㻚㻜 㻜 㻜㻚㻜 㻟 㻝 㻟㻟㻚㻟 㻞 㻢㻢㻚㻣 㻡 㻠 㻝 㻞㻡㻚㻜 㻟 㻣㻡㻚㻜 㻞 㻝 㻡㻜㻚㻜 㻝 㻡㻜㻚㻜 㻢 㻞 㻟㻟㻚㻟 㻠 㻢㻢㻚㻣 総数 㻠㻤㻥 㻥㻣 㻝㻥㻚㻤 㻟㻥㻞 㻤㻜㻚㻞 㻞㻡 㻝㻟 㻡㻞㻚㻜 㻝㻞 㻠㻤㻚㻜 㻡㻝㻠 㻝㻝㻜 㻞㻝㻚㻠 㻠㻜㻠 㻣㻤㻚㻢 㻝 㻡㻤 㻝㻠 㻞㻠㻚㻝 㻠㻠 㻣㻡㻚㻥 㻝㻥 㻡 㻞㻢㻚㻟 㻝㻠 㻣㻟㻚㻣 㻣㻣 㻝㻥 㻞㻠㻚㻣 㻡㻤 㻣㻡㻚㻟 㻞 㻢㻠 㻞㻝 㻟㻞㻚㻤 㻠㻟 㻢㻣㻚㻞 㻣 㻡 㻣㻝㻚㻠 㻞 㻞㻤㻚㻢 㻣㻝 㻞㻢 㻟㻢㻚㻢 㻠㻡 㻢㻟㻚㻠 㻟 㻝 㻝 㻝㻜㻜㻚㻜 㻜 㻜㻚㻜 㻞 㻜 㻜㻚㻜 㻞 㻝㻜㻜㻚㻜 㻟 㻝 㻟㻟㻚㻟 㻞 㻢㻢㻚㻣 㻠 㻝 㻝 㻝㻜㻜㻚㻜 㻜 㻜㻚㻜 㻝 㻜 㻜㻚㻜 㻝 㻝㻜㻜㻚㻜 㻞 㻝 㻡㻜㻚㻜 㻝 㻡㻜㻚㻜 㻡 㻝 㻝 㻝㻜㻜㻚㻜 㻜 㻜㻚㻜 㻜 㻜 㻜㻚㻜 㻜 㻜㻚㻜 㻝 㻝 㻝㻜㻜㻚㻜 㻜 㻜㻚㻜 総数 㻝㻞㻡 㻟㻤 㻟㻜㻚㻠 㻤㻣 㻢㻥㻚㻢 㻞㻥 㻝㻜 㻟㻠㻚㻡 㻝㻥 㻢㻡㻚㻡 㻝㻡㻠 㻠㻤 㻟㻝㻚㻞 㻝㻜㻢 㻢㻤㻚㻤 㻢㻝㻠 㻝㻟㻡 㻞㻞㻚㻜 㻠㻣㻥 㻣㻤㻚㻜 㻡㻠 㻞㻟 㻠㻞㻚㻢 㻟㻝 㻡㻣㻚㻠 㻢㻢㻤 㻝㻡㻤 㻞㻟㻚㻣 㻡㻝㻜 㻣㻢㻚㻟 あり なし 合計 留学生 一般学生 合計 留学生 一般学生 回答者数 回答者数 回答者数 あり なし あり なし 回答者数 あり なし 回答者数 あり なし 男 女 男女合計 回答者数 あり 男女合計 学年 院生 なし 学部生 学年 男 女 表5 放射能への不安についての自由記述の内訳表5 放射能への不安についての自由記述の内訳 内容 人数 水道水への心配 㻝㻢 野菜や海産物など食べ物への心配 㻥 栃木県は大丈夫なのかという不安 㻝㻝 放射能による健康不安 㻣 報道されている放射線量への不信感 㻝㻠 福島に実家があり心配 㻝㻤 被災地への心配 㻡 将来、子どもを産むことへの不安 㻟 目に見えない不安を感じている 㻝㻞 風評被害を危惧 㻢 早く対策を立ててほしい 㻤 放射能情報で無力感にさいなまれている 㻝 273
相談したいことの自由記述は、授業料など経済的支援について、就職活動への不安、宇都宮の放射 線量、大学を休講した方がよい、余震への不安、痩せなどの身体症状や精神不安、放射能に関連した 精神的不安、福島に実家があること、水道水への不安、放射能検査を受けたい、そして放射能への安 全対策や確実な情報の入手法、マスコミ情報への不信感などであった。(表. 7参照) 2.留学健康診断時のアンケート結果 留学生へのアンケートは留学生特別健康診断を受診した72名に行った。回答者の内訳は学部生 16名、(男11・女5)院生41名(男18・女23)、研究生15名(男2・女13)で、性別では 男性31名、女性41名であった。アンケートの設問は①震災時どこにいたか、②震災時やその後困っ たこと、③心身の不調の有無、④現在心配なことについて尋ねた。 表6 相談希望(設問3) 表6 相談希望(設問3) 人数 㻑 人数 㻑 人数 㻑 人数 㻑 人数 㻑 人数 㻑 㻝 㻡㻠㻢 㻞 㻜㻚㻠 㻡㻠㻠 㻥㻥㻚㻢 㻢 㻜 㻜㻚㻜 㻢 㻝㻜㻜㻚㻜 㻡㻡㻞 㻞 㻜㻚㻠 㻡㻡㻜 㻥㻥㻚㻢 㻞 㻟㻜㻠 㻝 㻜㻚㻟 㻟㻜㻟 㻥㻥㻚㻣 㻟 㻜 㻜㻚㻜 㻟 㻝㻜㻜㻚㻜 㻟㻜㻣 㻝 㻜㻚㻟 㻟㻜㻢 㻥㻥㻚㻣 㻟 㻠㻜㻤 㻣 㻝㻚㻣 㻠㻜㻝 㻥㻤㻚㻟 㻠 㻜 㻜㻚㻜 㻠 㻝㻜㻜㻚㻜 㻠㻝㻞 㻣 㻝㻚㻣 㻠㻜㻡 㻥㻤㻚㻟 㻠 㻡㻣㻞 㻣 㻝㻚㻞 㻡㻢㻡 㻥㻤㻚㻤 㻝㻝 㻜 㻜㻚㻜 㻝㻝 㻝㻜㻜㻚㻜 㻡㻤㻟 㻣 㻝㻚㻞 㻡㻣㻢 㻥㻤㻚㻤 総数 㻝㻘㻤㻟㻜 㻝㻣 㻜㻚㻥 㻝㻘㻤㻝㻟 㻥㻥㻚㻝 㻞㻠 㻜 㻜㻚㻜 㻞㻠 㻝㻜㻜㻚㻜 㻝㻘㻤㻡㻠 㻝㻣 㻜㻚㻥 㻝㻘㻤㻟㻣 㻥㻥㻚㻝 㻝 㻟㻟㻡 㻢 㻝㻚㻤 㻟㻞㻥 㻥㻤㻚㻞 㻞 㻜 㻜㻚㻜 㻞 㻝㻜㻜㻚㻜 㻟㻟㻣 㻢 㻝㻚㻤 㻟㻟㻝 㻥㻤㻚㻞 㻞 㻞㻜㻝 㻟 㻝㻚㻡 㻝㻥㻤 㻥㻤㻚㻡 㻠 㻜 㻜㻚㻜 㻠 㻝㻜㻜㻚㻜 㻞㻜㻡 㻟 㻝㻚㻡 㻞㻜㻞 㻥㻤㻚㻡 㻟 㻞㻡㻤 㻠 㻝㻚㻢 㻞㻡㻠 㻥㻤㻚㻠 㻞 㻜 㻜㻚㻜 㻞 㻝㻜㻜㻚㻜 㻞㻢㻜 㻠 㻝㻚㻡 㻞㻡㻢 㻥㻤㻚㻡 㻠 㻟㻞㻥 㻝 㻜㻚㻟 㻟㻞㻤 㻥㻥㻚㻣 㻠 㻜 㻜㻚㻜 㻠 㻝㻜㻜㻚㻜 㻟㻟㻟 㻝 㻜㻚㻟 㻟㻟㻞 㻥㻥㻚㻣 総数 㻝㻘㻝㻞㻟 㻝㻠 㻝㻚㻞 㻝㻘㻝㻜㻥 㻥㻤㻚㻤 㻝㻞 㻜 㻜㻚㻜 㻝㻞 㻝㻜㻜㻚㻜 㻝㻘㻝㻟㻡 㻝㻠 㻝㻚㻞 㻝㻘㻝㻞㻝 㻥㻤㻚㻤 㻞㻘㻥㻡㻟 㻟㻝 㻝㻚㻜 㻞㻘㻥㻞㻞 㻥㻥㻚㻜 㻟㻢 㻜 㻜㻚㻜 㻟㻢 㻝㻜㻜㻚㻜 㻞㻘㻥㻤㻥 㻟㻝 㻝㻚㻜 㻞㻘㻥㻡㻤 㻥㻥㻚㻜 人数 㻑 人数 㻑 人数 㻑 人数 㻑 人数 㻑 人数 㻑 㻝 㻞㻞㻢 㻠 㻝㻚㻤 㻞㻞㻞 㻥㻤㻚㻞 㻝㻞 㻝 㻤㻚㻟 㻝㻝 㻥㻝㻚㻣 㻞㻟㻤 㻡 㻞㻚㻝 㻞㻟㻟 㻥㻣㻚㻥 㻞 㻞㻡㻞 㻝㻜 㻠㻚㻜 㻞㻠㻞 㻥㻢㻚㻜 㻝㻜 㻜 㻜㻚㻜 㻝㻜 㻝㻜㻜㻚㻜 㻞㻢㻞 㻝㻜 㻟㻚㻤 㻞㻡㻞 㻥㻢㻚㻞 㻟 㻟 㻜 㻜㻚㻜 㻟 㻝㻜㻜㻚㻜 㻝 㻜 㻜㻚㻜 㻝 㻝㻜㻜㻚㻜 㻠 㻜 㻜㻚㻜 㻠 㻝㻜㻜㻚㻜 㻠 㻟 㻜 㻜㻚㻜 㻟 㻝㻜㻜㻚㻜 㻜 㻜 㻜㻚㻜 㻜 㻜㻚㻜 㻟 㻜 㻜㻚㻜 㻟 㻝㻜㻜㻚㻜 㻡 㻠 㻜 㻜㻚㻜 㻠 㻝㻜㻜㻚㻜 㻞 㻜 㻜㻚㻜 㻞 㻝㻜㻜㻚㻜 㻢 㻜 㻜㻚㻜 㻢 㻝㻜㻜㻚㻜 総数 㻠㻤㻤 㻝㻠 㻞㻚㻥 㻠㻣㻠 㻥㻣㻚㻝 㻞㻡 㻝 㻠㻚㻜 㻞㻠 㻥㻢㻚㻜 㻡㻝㻟 㻝㻡 㻞㻚㻥 㻠㻥㻤 㻥㻣㻚㻝 㻝 㻡㻤 㻝 㻝㻚㻣 㻡㻣 㻥㻤㻚㻟 㻝㻥 㻝 㻡㻚㻟 㻝㻤 㻥㻠㻚㻣 㻣㻣 㻞 㻞㻚㻢 㻣㻡 㻥㻣㻚㻠 㻞 㻢㻠 㻜 㻜㻚㻜 㻢㻠 㻝㻜㻜㻚㻜 㻣 㻝 㻝㻠㻚㻟 㻢 㻤㻡㻚㻣 㻣㻝 㻝 㻝㻚㻠 㻣㻜 㻥㻤㻚㻢 㻟 㻝 㻜 㻜㻚㻜 㻝 㻝㻜㻜㻚㻜 㻞 㻝 㻡㻜㻚㻜 㻝 㻡㻜㻚㻜 㻟 㻝 㻟㻟㻚㻟 㻞 㻢㻢㻚㻣 㻠 㻝 㻜 㻜㻚㻜 㻝 㻝㻜㻜㻚㻜 㻝 㻜 㻜㻚㻜 㻝 㻝㻜㻜㻚㻜 㻞 㻜 㻜㻚㻜 㻞 㻝㻜㻜㻚㻜 㻡 㻝 㻜 㻜㻚㻜 㻝 㻝㻜㻜㻚㻜 㻜 㻜 㻜㻚㻜 㻜 㻜㻚㻜 㻝 㻜 㻜㻚㻜 㻝 㻝㻜㻜㻚㻜 総数 㻝㻞㻡 㻝 㻜㻚㻤 㻝㻞㻠 㻥㻥㻚㻞 㻞㻥 㻟 㻝㻜㻚㻟 㻞㻢 㻤㻥㻚㻣 㻝㻡㻠 㻠 㻞㻚㻢 㻝㻡㻜 㻥㻣㻚㻠 㻢㻝㻟 㻝㻡 㻞㻚㻠 㻡㻥㻤 㻥㻣㻚㻢 㻡㻠 㻠 㻣㻚㻠 㻡㻜 㻥㻞㻚㻢 㻢㻢㻣 㻝㻥 㻞㻚㻤 㻢㻠㻤 㻥㻣㻚㻞 女 男女合計 あり なし 回答者数 あり なし 男 男女合計 院生 学年 一般学生 留学生 合計 回答者数 あり なし 回答者数 女 学部生 学年 一般学生 留学生 なし 男 合計 回答者数 あり なし 回答者数 あり 回答者数 あり なし 表7 相談したいことの具体的記述の内訳表7 相談したいことの具体的記述の内訳 内容 人数 授業料など経済的な心配 㻠 就職活動についての心配 㻟 宇都宮の放射線量 㻟 大学を休講にすべき 㻞 余震 㻝 痩せなどの身体症状 㻝 放射能への不安 㻟 不安 㻠 福島に実家がある 㻞 水道水への不安 㻡 放射能検査を受けたい 㻞 安全対策についてなどの情報が欲しいと 㻤 マスコミ情報への不信感 㻣
① 震災時どこにいたのか 震災時にいた場所については、25名が母国におり、約半数の35名は宇都宮にいたと回答した。 残りの12名は日本各地にいたが、被災地にいたと答えた人はいなかった。 学部生のうち3年生(編入生6名)は全員日本にいて、そのうち2名が宇都宮にいた。2年生(5人) のうち4名は帰国、1名は宇都宮にいた。新入生うち1名は自国におり、2名は日本にいたが、宇都 宮にはいなかった。大学院生は41名のうち26名が宇都宮にいて、11名は帰国していた。 研究生のうち、10年度入学の学生(7名)は全員宇都宮におり、11年度入学の学生(8名)は全 員国外にいた。(表8参照) ② 震災とその後に困ったこととその対処 設問2の震災体験とその後の生活上の困難さについて、22名は特に困ったことはなかったと回答 したが、そのなかの10名は当日、宇都宮にいた。放射能への心配(20名)や関連した飲用水や食 べ物を心配した人(11名)が多い一方、なお続く余震への心配(10名)や、震災や余震時に不安や パニックに陥った(4名)人や、震災後の停電や情報不足に悩んだ(9名)、アルバイトがなくなり経 済的に困った(2名)などがあった。さらに、11年度入学の研究生8名中3名が来日前に親から反 対されるなどして、日本にくるべきか悩んだと記載していた。(表9参照) ③ 心身の不調や生活の変化 特になしと答えた人がほとんどであったが、余震への不安症状(10名)、生理不順やじんましん など身体不調(4名)を訴える学生がいた。(表10) ④ 現在心配なこと 72名中13名が放射能に関する心配をあげていた。その中には②と③の項目で特に困ったことが ないとしていた学生が数名いた。さまざまな身体面の悩み(7名)、や震災後に集中力が低下した(3名) と感じている人もいた。(表11) 表8 震災時どこにいたのか(設問1) 表8 震災時どこにいたのか(設問1) 人数 㻑 人数 㻑 人数 㻑 㻝 㻝 㻟㻟㻚㻟 㻜 㻜㻚㻜 㻞 㻢㻢㻚㻣 㻟 㻞 㻠 㻤㻜㻚㻜 㻝 㻞㻜㻚㻜 㻜 㻜㻚㻜 㻡 㻟 㻜 㻜㻚㻜 㻞 㻟㻟㻚㻟 㻠 㻢㻢㻚㻣 㻢 㻠 㻝 㻡㻜㻚㻜 㻝 㻡㻜㻚㻜 㻜 㻜㻚㻜 㻞 総数 㻢 㻟㻣㻚㻡 㻠 㻞㻡㻚㻜 㻢 㻟㻣㻚㻡 㻝㻢 院生 全学年 㻝㻝 㻞㻢㻚㻤 㻞㻠 㻡㻤㻚㻡 㻢 㻝㻠㻚㻢 㻠㻝 10年度入学 㻜 㻜㻚㻜 㻣 㻝㻜㻜㻚㻜 㻜 㻜㻚㻜 㻣 11年度入学 㻤 㻝㻜㻜㻚㻜 㻜 㻜㻚㻜 㻜 㻜㻚㻜 㻤 㻞㻡 㻟㻠㻚㻣 㻟㻡 㻠㻤㻚㻢 㻝㻞 㻝㻢㻚㻣 㻣㻞 研究生 合計 学年 震災時どこにいたのか 合計 母国 宇都宮 日本国内 学部生 表9 震災後の心配(設問2)表9 震災後の心配(設問2) 内容 人数 特に困ったことはなかった 㻞㻞 放射能について心配 㻞㻜 余震が心配 㻝㻜 不安やパニックに陥った 㻠 停電や情報不足 㻥 飲用水や食べ物 㻝㻝 アルバイトがなくなり経済的に困った 㻞 来日前に日本にくるべきか悩んだ 㻟 表10 心身の不調(設問3) 表10 心身の不調(設問3) 内容 人数 余震への強い不安 㻝㻜 生理不順やじんましんなど身体不調 㻠 表11 現在心配なこと(設問4)表11 現在心配なこと(設問4) 内容 人数 放射能に関する心配 㻝㻟 身体面の心配 㻣 集中力の低下 㻟 275
3.その他の震災関連の記録 ① 新入生面接 健康診断時に毎年、心理面接を新入生全員に施行している。震災後間もない平成23年4月初旬の 面談時に自発的に震災について語る学生は居なかった。話題にすると大丈夫であったと答えた学生が 大半であったが、なかには「自宅を流された」、「親の勤務先が被害に遭った」、「震災で親が失業した」、 「祖父母の家が原発の近くで心配だ」と話す学生もいた。それらの学生も、新学期が始まる期待と緊 張が大きく、継続面接を希望することはなかった。 健康診断後に施行した呼び出し面接では、新入生が震災当日に後期試験や入学手続きのために宇都 宮に来て震災に遭遇していた場合も少なくなく、帰宅困難者がかなりいたことが窺えた。震災や原発 によって経済的被害を受けた学生はその支援を期待していたが、特に健康面での援助を求めることは なかった。 ② 相談事例 平成23年度に相談に来た学生のなかで震災体験との関連が深い3事例について概容を記述する 事例1)大学院生男子 平成23年4月末に「頭痛があり、意欲がでず、研究に集中できない」と相談に来た。 前年は夏休みも研究をして忙しく過ごしていた。平成23年2月から新しい研究が始まり、3月の 震災当日も研究室にいた。帰宅困難のため研究室で一晩を過ごし、翌日、自宅に戻り、2週間自宅待 機した。 その後、登校したが、2週目頃から不調で授業も受けられない状態となって内科、眼科、脳外科を 受診した。面談では朝方の気分が悪く、疲れやすく研究に集中できないと訴えたが、一見すると顔色 は良く、朗らかな印象であった。5月初旬に一旦回復した様子だったが、間もなく嘔気と頭痛が再発 したために投薬を希望して再来した。5月末頃になって徐々に症状が治まっていった。 事例2)学部生男子 平成23年6月の初めに、「意欲がなくなって授業に出られない」と相談に来た。3月の震災の後、 自分も何か活動しなくてはと意気込み、いろいろやってみた。ところが、やり方について友人たちか らクレームがあり、不本意な結果となった。4月下旬頃から授業も欠席が続き、すっかり意欲を喪失 した状態となったという。表情はうつろで朝方の不調が強いため服薬を勧めてみたが、カウンセリン グの仕方を巡るやり取りがくい違ったことをきっかけに6月末で面談が途絶えた。 事例3)学部生女子 平成23年11月頃に「将来の進路をどうしようか」と相談に来た。とりとめない話のなかで、何 気ない調子で被災者であることについて語った。春休みの帰省中に震災に遭遇して自宅が全壊した。 4月になって登校すると担任が話題にしたせいか、被災したことを皆が知っていた。周囲から何かと 話しかけられる度にプライバシー侵害だと感じて落ち着かなくなった。親切に助言してくれる数人の 教員の居室へ話に行き、落ち着くように努めている様子で、保健管理センターへも数回来たのちにいっ たん打ち切った。 翌年も春頃に、「進路に悩んでいる」と再度、相談に来た。面談を続ける一方で、担任教員が彼女 の不安な思いや行動に対して受容的に接して、彼女の過ごしやすい環境を整えてくれたことをきっか けにして、次第に学業への自信と意欲を取り戻していった。
4.考察とまとめ ライフサイクルでいう青年期後期に大学生の大半が属しており、この年代の青年は社会状況に対し て敏感に反映する一方、社会問題解決に対する行動を起こすとも言われている。今回のアンケート結 果にもこのような特徴がよく窺われる。 健康診断受診時のアンケート調査は震災後1カ月経ったころに施行されたが、宇都宮では余震がな お続く一方、放射能汚染を巡っての情報が混とんとしていて不安が高まっていた時期であった。 回答率はほぼ受診率を反映していて、新入生に高く、2年生に低い。また、留学生の回答率が低い 理由としては、余震や放射能を恐れて帰国したまま、4月上旬にはまだ大学に来ていないことも考え られる。院生のうち後期課程の回答率が低いことにも同様の理由があると推測される。 設問1の心身の不調については、回答率が半数に満たない学部2年の男子学生を除いて、震災経験 がより少ないと思われる1年生に低く、宇都宮で過ごしていた上級生に高い。同様の理由で、修士課 程の院生では心身の不調を訴える率が高くなっていると推測される。 心身の不調は、震災後の余震によって引き起こされる不安症状が中心で、その内訳は不眠やパニッ クなどの精神症状と、ストレス反応と推測される身体症状が見られた。そのほか、余震との直接の関 係ではなく、テレビに映し出される津波が押し寄せる画面などを目にすることによって不安になって しまうといういわば、映像・社会パニックとでもいうべき不安が訴えられたのが特徴的であった。 放射能への不安があると答えたのは回答者の23%に及び社会全体の不安を反映している。外国人 留学生の方が不安を訴える率が高く、諸外国での報道や情報が当事国の日本より深刻なことを反映し ていると推測される。自由記述をみると、放射能不安に対して具体的な対応策や、より安全に過ごす ための情報を求めていることがわかる。それは雨による汚染がどの程度、飲料水や野菜に及んでいる のかをはじめとする居住地としての栃木県の安全性であり、放射能の身体へ及ぼす影響や将来の出産 への影響である。 具体的数値が示されて安全だと報道されてもなお、目に見えぬ不安が強い社会状況を見据えて、農 家へ及ぼされる風評被害への危惧や、より危険の高い地域に居住する人たちへと心を寄せる記述も青 年期の正義や理性が反映していると思われる。 相談希望については50名の人がありとしているが、自由記述をみると、身体症状や様々な精神的 不安など保健管理センターが関与すべきものもあるが、被災後の授業料などの支援や、社会情勢の変 化による就職活動への影響、被曝線量を計測してほしいなど具体的な要望が多い。何よりも安全対策 や確実な情報入手などへの切実な思いやマスコミ情報への怒りなどを語り合いたいという要求が強い ようであった。 留学生特別健康診断は震災後3カ月が過ぎた6月に行われた。震災を振り返るゆとりが出てきた時 期である。また、健康診断時のアンケート数より全体数は少ないが、研究生など健康診断時のアンケー トには参加していない学生が多数含まれていた。 留学生が、震災時にいた場所についての設問には学年による特徴がある。学部の2年生の大半が帰 国していたのに対して、2年目の研究生や大学院生の半数以上が宇都宮で研究に従事していたようで ある。編入生は編入前の高専や短大の所在地にいた者が多い。研究生の11年度入学者は回答者全員 が震災時は母国にいて震災後の日本に対する不安を乗り越えて来日してきたと推測される。 日本で生活している留学生が震災後に悩んだことやその対処について設問の2で尋ねたが、特に 困ったことはなかったという強気の答えが多かった。その一方で、震災や余震に対してパニックとなっ 277
た人や余震が不安で一人ではいられず、友人と一緒に過ごしたという話も聞かれた。停電や情報入手 に苦労したり、アルバイトがなくなったり、食生活が乱れて過食となり肥満になったという学生もい た。放射能に対する不安は高く、留学生にとって、健康面からみると栃木県は安全な場所ではなくなっ ているようである。 心身の不調について大半の留学生は何もないと答えているが、余震によって不安がなお強いままの 留学生が少なくないほか、震災と関係ないと思われる、さまざまな身体症状が記載されていた。 留学生が心配していることは何よりも放射能の汚染であり、その身体への影響である。研究生や院 生では、研究が中断されたことも影響してか、震災後に集中力が欠けて成果が上がらないという記述 があり、地震によって学問研究領域へも影響が出ていることがよく窺われた。 新入生の面接では東北の被災地や栃木県の学生以外でも、宇都宮にたまたま来ていて地震を体験し た学生が少なくないことが分かった。宇都宮大学の学生になった証であるはずの入学式がないという 事態もこの年度の特徴であり、例年と変わらずに勉学意欲に燃えていたこの年度の新入生たちについ ては今後も注意深く見守っていく必要があると考えている。 最後に概容のみを記述した震災体験と関連の深い3事例からも震災時やその後の学生の心理状況が よく窺われる。最初の事例は順調だった研究生活が震災によって中断されたことをきっかけに研究や 授業に集中できずに、頭痛や嘔気といった身体症状に悩まされたものである。相談者自身も家族も研 究室の人たちも、震災の一過性の影響と考えて簡単に治ることを期待していたが、元の状態に戻るの に2カ月ほどかかっている。毎日の生活のリズムが乱されたことの弊害が多くの大学院生にあったと 推測される。 2番目の事例は震災後に自分のできることをしたいというボランティア活動がうまく機能せずに、 学業や生活のリズムが乱れたための相談事例である。残念ながら面談は数回で打ち切られてしまった が、意欲的な学生が、経験不足や周囲との協調性のずれから挫折体験となってしまったようである。 その事態を客観的にとらえて対処するにはまだ至っておらず、「相談を必要とする自分」という立場 がうまく受け容れられなかったのではないかと推測している。 3番目の事例からは被災した学生の心情がよく窺える。PTSDとまでは言えないまでも、傷つき やすくなっていて、できれば触れてほしくないこころの傷口が被災者ではない周囲の人たちの何気な い言葉によって耐え難い痛みを覚えているかもしれない。受容的で優しい対応が持続的に保たれる中 で、学生が本来持っている力を引き出していくことを忘れずにおきたい。 震災は春休み期間中に発生したが、留学生アンケートでその半数が宇都宮にいたことから、学部2 年生以上の学生・院生の多数が、宇都宮大学構内や宇都宮市内の住居にいて震災を体験したものと推 測される。震災当日の停電のなかでなお余震が頻発しており、一人暮らしの学生は心細さや不安・不 眠に陥り、事例1のように自宅生もまた帰宅困難のためにそれぞれ苦慮したことは想像に難くない。 その後の津波の被害情報やそのための放射能漏れのニュースは実態のつかめない恐怖心をもたらすば かりで、放射能に対する対処法についての情報はほとんどなかった。今回の学生アンケートの結果は そのような状況を反映したものとなっている。