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高校生における自律的動機づけとレジリエンスとの関連 -自己決定理論の援用の可能性-

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兵庫教育大学学校教育学研究, 2015, 第27巻, pp 31-39

高校生におけ る 白律的動機づけ と レ ジリ エ ンス と の関連

-

自己決定理論の援用の可能性 一

久 保 勝 利*

西 岡 伸 紀**

鬼 頭 英 明**

本研究の目的 は, 高校生におけ る自律的動機づけ と レ ジリ エ ンス と の関連 を検討す る と と も に, 生徒のレ ジリ エ ンス を 酒養す る支援のためのア プロ ーチ と し て, 自己決定理論の援用の可能性 を検討す る こ と であ っ た。 高校 1 ・ 2 年生213名 (男子102名, 女子111名) を対象に, 質問紙調査 を実施 し た。 相関分析の結果, 自律的動機づけ及びレ ジリ エ ンスは, 自 己決定感, 有能感, ソ ー シ ャ ル ・ サポー ト の各変数 と 有意な弱 い ~ 中程度の正の相関 を示 し た。 AM OS に よ るパス解析 の結果, 自己決定感, 有能感, ソ ーシ ャル ・ サポー ト がレ ジリ エ ンスに比較的大き な正の影響 を与え る こ と が示 さ れ, 自 己決定感と ソ ーシ ャル ・ サポート は, 有能感 も高める方向に働 く こ と が示 さ れた。 そ し て, 自己決定感, 有能感, ソ ーシ ャ ル ・ サ ポ ー ト が レ ジリ エ ンスへ影響 を及ぼす プロ セ ス には, こ れら の各変数がそ れぞれ独自 に影響 を与え る プロ セ ス と , 有能感 と 自律的動機づけ を経由す る プロ セ スが示 さ れた。 キ ーワ ー ド : レ ジリ エ ンス, 自律的動機づけ , 自己 決定感, 有能感, ソ ー シ ャル ・ サ ポー ト 問題 と 目的 高校生の時期は思春期中期にあたり , 自我が不安定な 「疾風怒濤の時代」 と も呼ばれ, 学業, 部活動, 人間関 係, 進路選択 , 大学受験な どで乗 り 越え なけ ればな ら な い壁や課題が多 く 存在す る時期 であ る。 そのため, 高校 への不本意入学, 学業不振や人間関係の問題, 受験への 不安 な ど, 多 く の生徒が多様 な問題 を抱え ながら高校生 活 を送 っ ており , 全 ての生徒が学校生活に対す る不適応 状態 を呈す る可能性 を有 し てい る と 考え ら れる。 平成24年度 「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問 題に関す る調査」 (文部科学省, 2014) によ る と , 高等 学校におけ る不登校生徒数は, 平成21 年度の51,728人

(1.55%) から平成24年度の57,664人 (1.72%) と, 4 年

連続で増加 し てい る。 永作 ・ 新井 (2005) は, 中学生を 対象 に, 自己決定理論に基づい て高等学校移行時の心理 的要因 と し て自律的高校進学動機を取り 上げ, 学校移行 後の学校適応 ・ 不適応 と の関連 を検討 し た。 その結果, 自己決定の高い進学動機を有 し て高校に進学す るこ と が, 進学後の学校適応の高 さ につながる可能性 を示 し , 自己 決定の低い進路選択は, 進学後の学校不適応につながり かねないこ と を示唆 し てい る。 こ こ でい う 自己決定 と は, 「求 め ら れた行動 の価値 や調整が, 内在化 し 統合 さ れて い る程度 の違い (Ryan & Decl, 2000) 」 を意味 し てお り , 自律性 (自律的) と ほぼ同義であ る。 新井 ・ 佐藤 (2000) は, 自己決定は学習の動機づけ だけ ではな く , 子 ども の生活や行動全般に大 き く 影響 を与え る概念であ ると 述べ, 西村 ・ 櫻井 (2010) は, 中学生を対象に学習 動機と 学業適応 と の関連 を検討 し た結果, 自律的学習動 機 と 適応的指標 ・ 不適応的指標は関連があ る こ と を示 し てい る。 不登校は学校不適応の一側面 にす ぎないが, こ れら の先行研究からは, 高校入学時の生徒の自律的な動 機づけ を高める支援の重要性が示唆 さ れる。 自己決定理論は, 内発的動機づけ に関す る理論 を発展 31 さ せた も ので, 行動に対 し て自律的 であ る と い う こ と に よ り , 高い学業成績や良い精神的健康がも た ら さ れる と いう 理論であり , 行動に対 し ていかに自己決定性が高い かが重要で あ る。 自己 決定理論 では, 「無動機づけ」 , 「外発的動機づけ」 , 「内発的動機づけ」 を自己決定 (自 律性) の程度によ っ て分類 し, 内発的 一外発的動機づけ の 2 つ を自己決定 ( 自律性) と いう 観点から一次元上の 両極 と 捉 え , 連続性 を持 つ も の と し てい る。 そ し て, 社 会的 な価値 を自分のも のに し てい く 価値の内在化 ( 自己 調整) に注日 し て, 適切な働き かけ によ っ て, よ り 自己 決定 ( 自律性) の程度の高い動機づけが形成 さ れる こ と が想定 さ れてい る。 自己 決定理論 では, 「外発的動機づ け」 を , 報酬や罰 な ど外部か ら の統制 に従 う 段階で最 も 他律的な 「外的調整」 , 外部の評価や義務感が伴う 自己 価値の維持や恥の感覚の回避 な ど外部の評価や義務感が 伴う 「取り 入れ的調整」 , 活動への価値 を認め自分のも のと し て受け入れてい る状態の 「同一化的調整」 , 自身 の価値観 と 行動や活動の価値観が矛盾 な く 統合 さ れ自己 内 に葛藤 を生 じずに活動に取 り 組む段階の 「統合的調整」 の 4 つに区分 し, 特に 「同一化的調整」 「統合的調整」 と 「内的調整 (内発的動機づけ)」 を 「自律的動機づけ」 と し , 学業成績や精神的健康な どに良い影響 を与え る と し てい る (山口, 2012) 。 ただ し , 統合的調整は, 探索 的因子分析を行う と 「同一化的調整」 や 「内的調整」 に 項目が含ま れ, 統計的に分別で き ない と い う こ と も あり , 近年の研究ではあま り と り あげ ら れてい ない (西村 ・ 櫻 井, 2013) 。 こ のため, 本研究で も 「 統合的調整」 は扱 わな い こ と と し た。 自己決定理論では, 生理的欲求と 心理的欲求 を区別 し た上で, 動機づけの基本的な心理的欲求 と し て, 自律性 欲求 (行為 を自 ら 起こ そ う と す る傾向性) , 有能欲求 ( 環境 と 効果的 に関わり な が ら 学 んで い こ う と す る傾向 性) , 関係性欲求 (他者や コ ミ ュ ニ テ ィ と 関わ ろ う と す * 兵庫教育大学大学院修士課程 * * 兵庫教育大学大学院人間発達教育専攻 平成26年10月22 日受理

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32 る傾向性) の 3 つのいずれも 人が生得的に持 っ てい る心 理的欲求 と し て特定 し てい る。 こ れら の心理的欲求が全 て成長に向け ての生得的 な傾向性であり , こ れら の欲求 が同時 に満 た さ れる よ う な条件の も と で外的 な価値 が内 在化 (自己調整) さ れ, より 自己決定 (自律性) の程度 の高い動機づけ を持つよ う になる と 仮定 し てい る (長沼, 2004) 。 本研究では, 自律性欲求, 有能欲求, 関係性欲 求の 3 つの基本的心理的欲求の充足の程度 を, そ れぞれ 自己 決定感, 有能感, ソ ー シ ャル ・ サポー ト から捉え る こ と と し た。 ソ ー シ ャ ル ・ サ ポ ー ト は , 個人 を取 り 巻 く 人 々か ら 受 け る様々な形の支援 をいい, 「社会的包絡」 , 「知覚 さ れ たサ ポー ト 」 , 「実行 さ れたサ ポー ト」 の 3 種類 に分類 さ れる (Barrera, 1986) 。 児童生徒 を対象 と し た調査 では, ソ ー シ ャ ル ・ サ ポ ー ト は , 微妙 な個 人差 を反映 す る た め にはサ ポー ト を受け る可能性への主観的評価の測定が適 し てい る こ と か ら ほ と ん ど 「知覚 さ れたサ ポー ト 」 の観 点で測定さ れている (石毛 ・ 無藤, 2005) 。 久田 ・ 千田 ・ 箕口 (1989) は, ソ ー シ ャ ル ・ サ ポー ト に つい て , 「 ふ だ んか ら自分 を取 り 巻 く 重要な他者に愛 さ れ大切 に さ れ てお り , も し 何か問題が起こ っ て も 援助 し て も ら え る , と い う 期待の強 さ」 (Cobb, 1976 ; 久田 ・ 千田 ・ 箕口, 1989) と 定義 し ており , こ の期待は, 過去の経験によ っ て形成 さ れる も ので あ り , その経験に基づ く 将来の可能 性につい ての予測であ る。 本研究では, 認知的な ア プロ ー チ と し て , サ ポー ト を受 け て い る , あ る いは受 け て い な い と い う 主観的感覚 を測定す る事 に よ っ て ソ ー シ ャ ル ・ サポー ト レベルを査定 し た。 動機づけは, 行動の始発性や原因性と い っ た, 行動 を 一定方向 に向け て始発 させ, 推進 し , 持続 させる過程の 全般 を総称す る概念で あ るが, 一方で, 挫折や困難な状 況に晒 さ れるこ と で, 一時的に心理的不健康な状況に陥っ て も そ れを乗 り 越え そ こ から 立 ち直 る力 を表す概念に, レ ジリ エ ンス があ る。

M asten, Best and Garmezy (1990) は, レ ジ リ エ ンス を 「困 難あ るいは脅威的 な状況 に も 関わら ず, う ま く 適 応す る過程, 能力 , あ るいは結果」 と 定義 し てい る。 日 本におい て レ ジリ エ ンスは, 「回復力」 「復元力」 「反発 力」 と も 言われ, 「生 き る力」 な ど と 訳 さ れてい る。 レ ジリ エ ンスの研 究は, 重篤 な障害, 虐待 や貧困 な ど の厳 しい環境 に直面 し ながら も適応的 な結果 を示す要因 につい ての研究が行 われた こ と が始 ま り と い われてい る が, 現在では, 重篤 な障害の有無に関わら ず, 日常生活 の中で厳 し い状況で も適応で き る者 と 適当 で き ない者の 差 を調査 ・ 研究 し た も の を中心 に, レ ジリ エ ンス研究分 野の対象範囲は全般的に広 く 扱われている (今村 ・ 山本 ・ 出水 ・ 徳島 ・ 谷川 ・ 乾, 2013) 。 石毛 ・ 無藤 (2005) は 中学生の受験期の学業場面におけ る精神的健康 と レ ジリ エ ン ス お よ び ソ ー シ ャ ル ・ サ ポ ー ト の関連 に つ い て検討 し , レ ジリ エ ンス概念の構成因子 と し て, 自 ら問題解決 し よ う と す る自立的 な傾向であ る 「自己志向性」 のほか 「楽観性」 ・ 「 関係性」 の 3 因子 をあげ てい る。 こ れら の 研究において, 良好な精神状態へと変化 し た者は自律性, 高い計画性, ス ト レ ス フ ルな状況 を統制す る能力, 家族 の サ ポ ー ト を 備 え て い る こ と が示 さ れ て い る (M asten,

Burt, Roisman, 0bradovic, Long, & Tellegen, 2004) 。 田中 ・ 兒玉 (2010) によ れば, レ ジリ エ ンスは, 本来 人間が有 し , 個人内で発達 させる こ と がで き , ま た可逆 的で促進 させる こ と がで き る人間の基本的 な生き る力 を 強め る機能で あ り , 周囲から の有効 な働き かけ によ り 個 人内部のレ ジリ エ ンス を高め る こ と で, 危機状況から の 回復がで き る と 考え ら れ, 状況に適応す る ための介入の 可能性 も示唆 さ れてい る。 レ ジ リ エ ンス を高めて ス ト レ ス フ ルな状況に有効 に対処で き る よ う な介入 をす る こ と は, 予防的介入 と い う 観点か ら重要で あ る と 考え ら れて い る。 平野 (2010) は, レ ジリ エ ンス要因 を, 持 っ て生 ま れた気質 と 関連の強い 「資質的 レ ジリ エ ンス要因」 と 後天的 に身 につけ てい き やすい 「獲得的 レ ジリ エ ンス要 因」 に分け て捉え, 両者を測定す る二次元レ ジリ エ ンス 要因尺度 (BRS) を作成 し , 「資質的 レ ジリ エ ンス要因」 と 「獲得的 レ ジリ エ ンス要因」 を分け て捉え る こ と によ り , レ ジリ エ ンス を後天的 に高めてい く 方法 を検討で き る と し てい る。 こ れま で に, 自律的動機づけ と レ ジリ エ ンスの関連に 関す る先行研究は少な く , 高校生におけ る自律的動機づ け と レ ジリ エ ンス と の関連 を検討 し た研究は未 だ見受け ら れない。 学習動機づけ と レ ジリ エ ンスの関連につい て検討 し た 先行研究と し ては, 倉住 ・ 渡辺 (2007) は, 中学生を対 象 に学習意欲低下場面 を取 り 上げ, 場面に対す る対処方 略 と レ ジリ エ ン シー 及 び学習動機づけ の関連につい て検 討 し , レ ジリ エ ンス得点の高い者は回避的対処を選択 し に く く , 直接的問題対処を行う 傾向があり , 低動機づけ ス タ イ ルを持つ者は回避的対処 を行いやす く , 直接的問 題対 処 を行 わない傾向があ る こ と を示 し てい る。 ま た, 自己決定理論に関す る自律的 な学習動機づけ と 他者から の働 き かけ に つ い て 検討 し た先 行 研 究 に つ い て は , Va11erand, Fortier, & Guay (1997) が, 高校生 を対象 に 他者から の働き かけ と 生徒の学習動機づけ, 退学への意 志 と 行動 と の関連につい て検討 し , 両親や教師から の自 律性支援は, 自律性や コ ン ビ テ ンスの認知 を介 し て自律 的 な動機づけ を形成 し , そ れが退学への意志や行動 を抑 制す るこ と を示 し てい る (岡田 ・ 中谷,2006) 。 動機づけ と レ ジリ エ ンスは異な る概念で あ るが, 生徒 の学校不適応や不登校の予防に向け て, どち ら も重要な 視点 で あ る と 思 わ れる。 以上のこ と よ り , 本研究では, 生徒の学校不適応や不 登校予防の観点から自律的動機づけ と レ ジリ エ ンス を取 り 上げ, 高校生におけ る自律的動機づけ と レ ジリ エ ンス と の関連 を検討す る と と も に, 生徒のレ ジリ エ ンス を涵 養す る支援のためのア プロ ーチ と し て, 自己決定理論の 援用の可能性 を検討す るこ と を日的 と す る。

方法

1 . 手続き

2014年 1 月下句に, 兵庫県下の公立高等学校普通科 1

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自律的動機づけ と レ ジリ エ ンス 2 年生各120名計240名を対象に質問紙調査 を行っ た。 調 査は, 学級担任の指導の下に主に L H R の時間に無記名 で実施 し , 回答はその場で即時回収 し た。 調査の実施に あたり , テス ト では無 く 学校の成績と は無関係であ る事, 回答は強制 ではな く 回答 し た く ない項目があ っ た場合は 回答 し な く て構わない と い う 事, 回答から個人の情報や 回答内容が特定 さ れる事はな く , 研究目的以外に使用 し な い事 を伝 え て も ら っ た。 回 収 さ れた220名 ( 回収率 91.7%) のう ち , 回答 に不備のあ っ た 7 名 を除 く 213名

(男子102名, 女子111名 / 1 年生109名, 2 年生104名)

を分析対象 と し た。 平均年齢16.3歳 (sD= .58) であ っ た。 分析には, SPSS (ver.21) と AMOS (ver.20) を使 用 し た。

11. 質問紙の構成

1 . 内容 属性 (学年, 性別, 年齢) 。 現在の身近な ソ ーシャル ・ サ ポー ト 源の種類 に つい て 「家族」 「友人」 「 その他」 「 い ない」 の 4 つの選択肢の中から 一つ選択 さ せた。 測 定には, 二次元 レ ジリ エ ンス要因尺度, 学習動機づけ尺 度, 自己決定感尺度, 有能感尺度, 学生用 ソ ーシ ャル ・ サ ポー ト 尺度 を用い た。 2 . 使用尺度 二次元 レ ジ リ エ ン ス要因 尺度 二次元 レ ジリ エ ンス要因尺度 (平野,2010) は, 「困難 な出来事が起き て も , どう にか切 り 抜け る こ と がで き る と 思う 」 な ど レ ジリ エ ンス につい て, 7 つの下位尺度21 項目で測定す る尺度であり , 大学生用に作成 さ れたが高 校生に も適用可能 で あ る と 考え ら れてい る。 こ の尺度 を 用 い て , 高校生 におけ る レ ジ リ エ ンス に つい て , 「 ま っ た く あ てはま ら ない」 か ら 「 よ く あ てはま る」 の 5 件法 で回答 を求めた。 学習動機づけ尺度 学習動機づけ尺度 (安藤, 2005) は, 「勉強す る こ と が楽 し いから」 な ど自己決定理論に基づ く 4 つの下位尺 度 (外的調整 ・ 取入れ的調整 ・ 同一化的調整 ・ 内的調整) につい て, 14項目で測定す る尺度であ る。 こ の尺度 を用 い て, 高校生の学習動機づけ につい て, 「ぜ んぜ んあ て はま ら ない」 か ら 「 と て も あ てはま る」 の 5 件法で回答 を求 め た。 自己決定感尺度 ・ 有能感尺度 有能感 ・ 有能欲求 ・ 自己決定感 ・ 自己決定欲求尺度 (櫻井, 1993) は, 「物事は他の人よ り も上手に し てい る」 「自分の思い通り に行動 し てい る」 な ど日常生活 におけ る有能感, 有能欲求, 自己決定感, 自己決定欲求につい て, 33項目で測定す る尺度であ る。 大学生を対象 に作成 さ れたが, 項目の内容から 高校生に も適用可能で あ る と 考え ら れる。 こ の尺度よ り , 自己決定感尺度 8 項目, 有 能感尺度 8 項目 を用いて, 高校生の自己決定感, 有能感 に つい て , 「 ま っ た く あ てはま ら な い」 か ら 「非常 によ く あ てはま る」 の 6 件法で回答 を求めた。 学生用 ソ ーシ ャ ル ・ サポ ー ト 尺度 久田 ・ 千田茂 ・ 箕口 (1989) によ っ て作成 さ れた, 学 33 生 用 ソ ー シ ャ ル ・ サ ポ ー ト 尺 度 (The Scale of

Expectancy for Social Support : SESS) は, 将来何か問 題が生 じ た場合 に, 周囲の人々から どの程度の援助が期 待 で き るか調べ る事 を目的 と し た尺度 で , 「 あ な たが落 ち込 んでい る と 元気づけ て く れる」 な ど16種類のサポー ト 場面 を設定 し , 各場面におい て どの程度サポー ト 源が 対象者 を サ ポー ト し て く れるかについ て 「 絶対 ち がう 」 か ら 「 き っ と そ う だ」 の 4 段階で評定 を求め る も ので あ る (岡安 ・ 嶋田 ・ 坂野, 1993) 。 本研究 では 「 あ な たは, あ な たのま わり の人 た ち が, どの く ら いあ なたの助け にな っ てい る と 感 じ ていますか。」 と の教示 を行い, 16場面のう ち, 調査校側の意見 を考慮 し て 「 あ な たが失恋 し た と 知 つた ら , 心か ら同情 し て く れる」 と 「 あ な た を心か ら愛 し てい る」 の 2 場面 を削 除 し た14場面で質間紙を構成 し た。 こ の尺度 を用いて, 高 校生 に おけ る認知的 な ソ ー シ ャ ル ・ サ ポー ト に つい て , 「絶対 ちがう 」 から 「 き っ と そう だ」 の 4 件法で回答 を 求めた。 結果 1 . 分析指標の作成 1 . 項目分析 各下位尺度の項日 の逆転項日 の処理 を行い, 記述統計 量 と ヒ ス ト グラ ムを出力 し て, 平均値 ・ 標準偏差 を確認 し , 天井効果と フロ ア効果の検討 を行 っ た。 各項目のヒ ス ト グラ ムはほぼ正規分布であ っ た。 学習動機づけ尺度 の同一化的調整に含ま れる 「Q27 今, 学習 し ておかな い と 後で困 るか ら」 の項目で 「 5 と て も あ てはま る」 が92 % と 天井効果を示 し たため, 分析から 除外 し た。 次 に , 現在 の身近 な ソ ー シ ャ ル ・ サ ポー ト 源の種類 に つい ての結果は, 対象者213名に対 し, 「家族」 : 47.9%

(102名), 「友人」 : 42.3% (90名), 「その他」 : 2.3% ( 5

名 : 中学校の先生, 恋人, 全 て, アイ ド ル, 記述無 し) , 「いない」 : 7.5% (16名) , であ っ た。 その他記述に, 「高 校の先生」 に類す る記述は見 ら れなか っ た。 2 . 各尺度の因子分析 二次元 レ ジ リ エ ン ス要因尺度の因子分析 二次元 レ ジリ エ ンス要因 尺度は 7 つの下位尺度から 構 成 さ れてい るが, 先行研究 (平野, 2010) に準 じ て, 7 因子解を仮定 し た探索的因子分析 (最尤法, プロ マ ッ ク ス回転) を行 っ た結果, 本来の 7 下位尺度に相当す る因 子は抽出 さ れなかっ た。 次に, 固有値 1 以上の探索的因 子分析 (最尤法, プロ マ ッ ク ス回転) を行い, 因子負荷 量が.40に満 た ない項目 を 除外 し て再度因子分析 (最尤 法, プロ マ ッ ク ス回転) を行 っ た結果, 5 因子解が抽出 さ れた (Table t) 。 第 1 因子の 「努力す るこ と を大事に す る方 だ」 な どを, 日標や意欲 を持 ち実行で き る力 と し て 「行動力」 , 第 2 因子の 「自分から 人と 親 し く な る こ と が得意だ」 な ど を, 見知 ら ぬ他者に対す る不安や恐怖 が少な く , 他者 と の関わり を好む力 と し て 「社交性」 , 第 3 因子の 「 た と え自信がない こ と で も , 結果的 に何 と かな る と 思 う 」 な ど を , 将来に対 し て不安 を持 たず, 肯 定的な期待 を も っ て行動で き る力 と し て 「楽観性」 , 第

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の 「授業の内容が楽 し いか ら」 な ど を, 何かに対す る興 味 を満足 さ せ る ため, も し く は達成感 を得 る ために自己 目的的に行動 を し てい る状態の 「内的調整」 , 第 3 因子 の 「自分 のためにな る と 思 う か ら」 な ど を , 活動への価 値 を認め自分の も の と し て受け入 れてい る状態の 「同一 化的調整」 , 第 4 因子の 「学生なので, 勉強す る こ と が あ たり ま え だか ら」 な どを, 自己価値の維持や恥の感覚 の回避な ど外部の評価や義務感が伴う 「取り 入れ的調整」 と命名 し た。 尺度 の内的 整合 性 を 検討 す る た め に , Cronbach の α 係数 を算出 し た。 尺度全体の α係数は α= .63 と 低い値 で あ っ た。 尺度全体 と し ては分析 に用い ない。 下位尺度 の 「外的調整」 「取り 入れ的調整」 「同一化的調整」 「内 的 調整」 の α係数は, そ れぞ れ α

= .77, .59, .70, .76で

あ っ た。 「取 り 入 れ的調整」 の値は α= .59 と 低い値であ るが, 安藤 (2005) と同 じ値であ るので, こ のま ま分析 に用 い る こ と と し た。 下位尺度の各項目の得点の合計平均点 をそ れぞれ 「外 的調整」 「取り 入れ的調整」 「同一化的調整」 「内的調整」 得点 と し , 「外的調整」 と 「取入れ的調整」 の合計点 を 「統制的動機づけ」 , 「同一化的調整」 と 「内的調整」 の 合計点を 「自律的動機づけ」 の得点と し て扱う 事と した。 こ の得点化の方法は動機づけの上位概念 を捉え る指標 と し て多 く の研究で用い ら れてい る も ので あ る (西村 ・ 櫻

井, 2013) 。

自己決定感尺度の因子分析 先行研究 (櫻井, 1993) と同様の因子構造を示すかど う か, 先行研究と同 じ 1 因子解を仮定 し た探索的因子分 析 (最尤法, プロ マ ッ ク ス回転) を行い, 因子負荷量の 低い 4 項目 を除外 し て繰り 返 し因子分析 を行 っ た結果, Tab l e 2 学習動機づけ尺度の因子分析結果 (最尤法 ・ プロ マ ッ ク ス回転) と 平均値 ・ 標準偏差 NO. 項目 Fl F2 Fi F h2 M SD 13 16 14

5 5 11 8 12 15 8

18 2 6 5 06 80 70 04 54 32 24 .40 26 .73 .61 04 80 07 74 00 61 00 .63 14 .63 -21 .62 17 .58

18 2 4 <第1因子外的調整> ( =.77) 35 他人に勉強しろと言われるから。 31 勉強しないと親がうるさいから。 29 勉強しないと教師にしかられるから。 <第2因子内的調整> ( al=.76) 25 授業の内容が楽しいから。 26 勉強することが楽しいから。 23 新しい知識 iるのが楽しいから。 <第3因子同一化的調整> ( a=.70) 28 自分のためになると思うから。 24 勉強内容が将来役に立つと思うから。 32 希望する職業に必要だから。 30 勉強するべき大切 内容だと思うから。 <第4因子取り入れ的調整> ( =.59) 34 学生 ので,勉強するのが たりまえだから。 22 勉強しないと不安だから。 33 良い成績納りたいから。 15.57 9.44 6.83 3198 4142 4825 一 16 41 寄与率 累積寄与率 /V:213 a=63 29 - 35 14 5 11 3 rl: 一一 一 一 一

-因子間相関 Tab l e 1 二次元 レ ジ リ エ ン ス要因尺度の因子分析結果 (最尤法 ・ プロ マ ッ ク ス回転) と 平均値 ・ 標準偏差 34 Fl Fl F F h2 M SD 日 97 96 95 94 96 88 92 07 97 97 04 04 02 = 33 24 65 07 07 06 39 72 53 22 30 42 74 64 46 37 06 06 09 14 -.01 .77 05 67 -06 62 -.07 .64 07 60 03 65 02 14 02 21 90 02 75 -09 69 -01 54 10 -09 .93 05 08 76 01 04 .73 -03 -01 .83 02 .77 04 .73 04 83 36 -03 .B7 64 02 47 44 05 01 07 06 06 13 00 01 01 <第1因子行動力> ( a'二.81) 6 自分lまリ強い人間1_と思,) 7 つらい:と も我程きる方f:'。 8 决ナ::と観後までやりとおす・とができる。 5 券力する:とt大事にする方f 。 <第2因子社交性> (a'=85) 2 自分力、ら人と規しく る:とが得意f_。 4 交友開保が

<

,社交的でる。 3 音力、ら, 人との開保とるのが上手f:'。 <第3因子案観性> ( =.82) 10 ナ:とえ自信がtい・とでも, 標的に何と力、t1ると思う。 9 と'んt :と も, f:いてい何と力、tり うt がする。 11 因識出案事が起きても,と'うに力、切り技ける:とができると思う。 <第4因子 問題解决t向> ( a二11 ) 20 出未事が

a

つナ:とき. 今の程から得らるもa)報す。 19 能出案事が1らっf:とき. の問題 决するナ: に情報接 る。 18 様t出案事が, と゛ t風に自分0 持ちに最警する力、理解している。 奇与率 26.47 10.41 9.22 7.55 果續容与率 2647 3688 4610 5364 /V二213 α二.82 月 一 -:--Ir 因子間相開 4 因子の 「嫌な出来事があ っ た と き , 今の経験から得 ら れる も の を探す。」 な ど を, 問題 を積極的 に解決 し よ う と す る意志 を持 ち , 解決方法 を学ぼ う と す る力 と し て 「問題解決志向」 , 第 5 因子の 「他人の考え方 を理解す る のが比較的得意だ」 な どを, 他者の心理 を認知的に理解, も し く は受容す る力 と し て 「他者心理の理解」 と命名 し た。 ただ し , 第 5 因子の 「他者心理の理解」 につい ては, 項目数が 2 項目 と 少ない ため, 今回の分析に用い る事は 控え る こ と と し た。 ま た, 先行研究 (平野, 2010) におけ る 「統御力」 と 「自己 理解」 の因 子は抽出 さ れな か っ た。 他の因子 に分 散 し てま と ま っ た も のと 考え ら れる。 尺度 の内的 整合 性 を 検討 す る た め に , Cronbach の α 係数 を算出 し た。 尺度全体の α係数は α= .82, 各下位 尺度の α係数は 「行動力」 「社交性」 「楽観性」 「問題解 決志向」 「 他者心理の理解」 が そ れぞ れ α

= .81, .85,

.82, .71, .75の値 を得, 内的整合性が高い と判断 し た。 「他者心理の理解」 を除 く 各下位尺度の項目の合計平 均点 を各 「下位尺度」 得点 と し, 各 「下位尺度」 得点の 合計点 を 「 レ ジリ エ ンス得点」 と し て分析に用い る こ と と し た。 学習動機 づけ尺度の因子分析 先行研究 (安藤, 2005) と同様の因子構造を示すかど う か, 先行研究と同 じ 4 因子解を仮定 し た探索的因子分 析 (最尤法, プロ マ ッ ク ス回転) を行 っ た結果, 先行研 究 と 同 じ 4 因子が抽出 さ れた。 次に固有値 1 以上の探索 的因子分析 (最尤法, プロ マ ッ ク ス回転) を行い, 同様 の 4 因子 を抽出 し た (Table 2) 。 そ こ で, 先行研究にな ら い, 第 1 因子の 「他人に勉強 し ろ と 言 われる か ら」 な ど を , 報酬や罰 な ど外部から の 統制に従う 段階で最 も他律的な 「外的調整」 , 第 2 因子

(5)

1 因子 4 項目が抽出 さ れた (Table 3) 。 尺度全体の α係 数 は α= .74で あ っ た。 次 に行 っ た固有値 1 以上の探索 的因子分析 (最尤法, プロ マ ッ ク ス回転) では 3 因子解 と な っ たが, 2 項目のみの因子が 2 因子抽出 さ れた こ と と因子の解釈可能性 を考慮 し て, こ こ では 1 因子解を採 用 し, 1 因子 4 項目の得点の合計平均点を 「自己決定感」 得点 と し て分析 に用い るこ と と し た。 Tab l e 3 自己決定感尺度の因子分析結果 (最尤法 ・ プロ マ ッ ク ス回転) と 平均値 ・ 標準偏差 No 項目 Fl h2 M SD 38 自分の思いと'おりに行動している。 40 何かやりたいときには、他人に頼らず自分の半1断で決めている。 42 他人の考えにこだわらず、自分の考えと'おりにしている。 36 自分の生き方は自分で決めている。 76 67 .63 53 57 4.01 .95 45 4.00 .94 40 3.68 1.04 28 4.37 1.05 自律的動機づけ と レ ジリ エ ンス Tab l e 5 学生用 ソ ーシ ャ ル ・ サポー ト 尺度の因子分析 (最尤法 ・ プロ マ ッ ク ス回転) と 平均値 ・ 標準偏差 35 目 fl f2 h2 M SD <第1因子理解的・協力的サホ1一トa'=.86> 77 流i:がミス定しても, つと力パーしてく;Itる。 74 流ナ:が大切職 ・失取しナ:と つナ:ら, 一生識 ォ 0てく;Itる。 82 流l:が人間開保に出 いると つナ:ら, いろいろと解决方法アドバイスしてく;Itる。 75 流i:が元識 いと,すぐ 、てつ'力、つてくオtる。 79 一人 lまきう111い課題がl)っ1:ときlま,快く手信つてく;Itる。 81 1、f_力、ら流ナ:0 持ちtよく理解してく;llる。 76 流ナ:が不清 llちまけナ:いときに,話都いてくオtる。 <第2因子受容的・總的サホ1ートa,二.85> 71 流ナ:に何力、うオtしい:とが起きナ:とき, 定bが:とllように書Allくオtる。 78 流ナ:が何力i成し達げf_とき,心力、らおal と定言つてくl

i

tる。 73 流i:がする話lまいつもナ:いてい興 t持って けてく る。 83 良いと:ろも患いと:ろもすべて合て, 流f:a)存在認10てくる。 70 流ナ:が差ちIM, いると,元つ'けてくオtる。 -.14 .422.95 .78 -.01 .48 3.04 .89 .04 .50321 .83 17 .55 312 .80 02 .35 305 .87 32 .64332 .73 24 44 341 73

13 00 03 11 39 64 70 66 60 70 41 46 30 58 42 67 53 47 54 57 IV:213 a' =.74 寄与率 42.60 累積寄与率 42.60 /l二213 =.91 奇与率 46.91 4.38 果指春与率 46.9151.29 有能感尺度の因子分析 先行研究 (櫻井, 1993) と同様の因子構造を示すかど う か, 先行研究と同 じ 1 因子解を仮定 し た探索的因子 分析 (最尤法, プロ マ ッ ク ス回転) を行 っ た結果, 1 因 子 8 項日が抽出 さ れた (Table 4) 。 次に行 っ た固有値 1 以上の探索的因子分析で も同様に 1 因子 8 項目が抽出 さ れた。 こ れら 1 因子 8 項目の得点の合計平均点 を 「有能 感」 得点 と し て分析 に用い るこ と と し た。 Tab l e 4 有能感尺度の因子分析 (最尤法 ・ プロ マ ッ ク ス回転) と 平均値 ・ 標準偏差 Na 項目 55 物事はほかの人より上手にしている。 59 周りの人が出来ないことでも、うまくやっている。 54 難しい課題でも、うまくやり遂げている。 53 有能な人間である。 58 やりかけたことは、うまくやり遂げている。 57 ほかの人には難しいようなパズルや間題 簡単に解く方である。 60 現在所属するクラスでは優秀な方である。 56 なるべく簡単にできる課題をしている。 IV=213 a' =.81 Fl h2 M SD

83 83 50 50 率 率 与 与 寄 簡 累 10 36 05 23 03 08 10 18 99 73 01 61 10 14 52 64 学生用 ソ ーシ ャ ル ・ サポ ー ト 尺度の因子分析 先行研究 (久田 ・ 千田茂 ・ 箕口, 1989) と同様の因子 構造 を示すか どう か, 先行研究と 同 じ 1 因子解を仮定 し た探索的因子分析 (最尤法, プロ マ ッ ク ス回転) を行 い, 先行研究と 同様の 1 因子14項目が抽出 さ れた。 尺度 全 体 の α係数は α= .91で あ っ た。 し か し , 先行研究 に おけ る対 象 者 が大 学生 で あ る こ と や ソ ー シ ャ ル ・ サ ポ ー ト の多様性を考慮 し, 次に固有値 1 以上の探索的因子分 析 (最尤法, プロ マ ッ ク ス回転) を行 っ た。 因子負荷量 が.40に満 た ない 2 項日 を 除外 し て再度因子分析 を行 っ た結果, 2 因子解が抽出 さ れた (Table 5) 。 第 1 因子 を 「 あ な た が ミ ス し て も そ っ と カ バ ー し て く れ る」 な ど, 手助け や助言, ア ドバイ ス と い っ た何 ら かの援助が期待 でき るよ う なサポー ト と し て 「理解的 ・ 協力的サポー ト」, 第 2 因子 を 「あ な たに何かう れし い こ と が起き た と き , そ れを わが こ と の よ う に喜 んで く れる」 な ど, 自分 の言 葉や感情な どを批判 し たり 評価 し たり せず, あり のま ま に受 け 入 れて も ら え る よ う な 情緒的 な サ ポ ー ト と し て 「受容的 ・ 共感的サ ポー ト 」 と 命名 し た。 尺度の信頼性 を検討 す る た めに, Cronbach の α係数 を算出 し た。 尺 度全 体 の α係数は α= .91, 各下位尺度の α係数は 「 理 解的 ・ 協力的サポー ト」, 「受容的 ・ 共感的サポー ト」 が そ れぞれ a = .86, .85の値 を得, 内的整合性が高い と 判 断 し た。 1 因子解と同等のα係数が得 ら れた事と ソ ーシャ ル ・ サポー ト の多様性 を考え, 分析には 2 因子解を採用 す る こ と と し た。 各項目の合計平均得点 を それぞれ 「理 解的 ・ 協力的サポー ト」 得点, 「受容的 ・ 共感的サポー ト」 得点 と し, こ れらの下位尺度得点の合計点 を 「 ソ ー シ ャル ・ サポー ト」 得点 と し て分析に用い る こ と と し た。

11. 分析

1 . 性差 ・ 学年差の検討 各尺度得点の性差およ び学年差の検討 各尺度得点の平均値 と 標準偏差 を算出 し た (Table 6) 。 次 に, 各尺度得点 におけ る学年差お よ び性差の検討の ために, 各尺度得点について, 学年 (2) x 性別 (2) の 2 要因分散分析を行っ た (Table 7) 。 全 ての尺度得点 におい て交互作用は認め ら れなか っ た。 学年差につい ては, 全 ての尺度得点 におい て有意差は認 め ら れな か っ た。 性差 に つい ては, ソ ー シ ャ ル ・ サ ポー

ト ( F (1,193) = 25.06, p < .001) ) で性別の主効果が認

Tab l e 6 各尺度の全体 ・ 男女別 ・ 学年別の平均値 ・ 標準偏差 全体(/V-213) 男子(/VI二102) 女子(/V:111) 1年(/V二109) 2年(/V:104) 尺度 M SD M SD M SD M SD M SD レン;リエンス 13.26 自律的動機つ°け 6.41 自説定感

4.01

有能感

3.00

ンーシヤル・サ

'

ート 6.54 25 26 91 76 59 10 27 75 72 60 15 39 73 80 65 20 12 76 88 80

(6)

36 学校教育学研究, 2015, 第27巻 Tab l e 7 各尺度得点における学年差 ・ 性差の検討のための 二元配置分散分析の結果 Tab l e 9 ソ ーシ ャ ル ・ サポ ー ト の高低 2 群によ る各尺度 得点の平均値 ・ 標準偏差 と t 検定の結果

1年(IV=109)

2年(/V=104)

男子(/V=64)女子(IV=45) 男子(IV=38)女子(/V=66) 学年差 性差交直作用

R度

-

M SD M SD F値 F値 F値 レンリエンス 自律的動機つけ° 自ii决定感 有能感 ンーシヤル・ サホ1一ト

13.12 2.21 13.41 2.08

6.33 1.29 6.34 1.54

4.02 .71 3.89 .75

3.05 .82 2.86 .77

13.42 2.33 13.20 2.13

6.50 1.23 6.48 1.06

4.29 .81 3.93 .70

3.20 1.06 2.93 .74 2 5 15 8 5.45 2.78 7.47 1.93 6.06 2.24 7.23 1.33 .39 01 00 51 06 5 3 25 0 1 0 14 2.00 SS高群 ( IV=107) SS低群 ( N:106) 尺度 M SD M SD t値 レジリエンス 自律的動機づけ 自己決定感 有能感 /V=21 3 13.75 6.54 4.02 3.08 2.28 1.26 .73 .81 12.75 6.28 4.01 2.92 4 6 6 6 9 2 7 8 3.45** 1 .53 .07 1 .46

"p

<

.01 IV'213 lf=1/209 *p<.001 , 'p<.05 め ら れ, 女子が有意に高か っ た。 ま た, 自己決定感 ( F

(1,209) = 5.51, p < .05) , 有能感 ( F (1,209) = 3.93, p

< .05) で , 性別の主効果が認め ら れ, 男子が有意に高 か っ た。 2 . 尺度間の関連 各尺度得点間の相関分析 各尺度得点間の相関係数を算出 し た (Table 8) 。 レ ジ リ エ ンスは, 自己決定感, 有能感 と そ れぞれ有意な中程 度の正の相関 を示 し , 自律的動機づけ, ソ ーシ ャル ・ サ ポー ト と そ れぞれ有意な弱 い正の相関 を示 し た。 自律的 動機づけは, レ ジリ エ ンス, 自己決定感, 有能感, ソ ー シ ャ ル ・ サ ポ ー ト と そ れぞ れ有 意 な弱 い正 の相関 を示 し た。 Tab l e 8 各尺度得点間の相関分析の結果 け づ ス 機 感 ・ ン 動 定 ル 的 決 聽 . 'ト ' ジ 律 己 能 一 ポ レ 自 自 有 ソ サ /V=213 レジリ 自律的 自己 一 * * * * 9 6 7 8 3 4 4 2 .208** 239*** .245** 217** 17. S 有能感 191** ソーシヤル 一p<.001,'本

p<

.01 ソーシ ャル ・ サポー トの高低 2 群によ る各尺度得点の比較 ソ ー シ ャ ル ・ サポー ト 無 し群が16名 と 少 ない こ と を考 慮 し て , ソ ー シ ャ ル ・ サ ポ ー ト 無 し 群 を含 め た ソ ー シ ャ ル ・ サ ポー ト 得点 を中央値以上の高群 と 中央値以下の低 群 の 2 群 に分類 し , ソ ー シ ャ ル ・ サ ポー ト の高低 2 群 に よ る各尺度得点の比較検討 のために, ソ ー シ ャ ル ・ サ ポー ト の高低 2 群 を独立変数に, レ ジリ エ ンス, 自律的動機 づけ, 自己決定感, 有能感を従属変数と し た t 検定を行っ た。

その結果, レ ジリ エ ンス ( t (211) = 3.45, p < .001)

に お い て ソ ー シ ャ ル ・ サ ポ ー ト 高 群 が有 意 に 高 か っ た (Table 9) 。 ソ ーシ ャ ル ・ サポ ー ト 源別の各尺度得点の比較検討 ソ ー シ ャ ル ・ サ ポ ー ト のサ ポ ー ト 源 の そ の他 サ ポ ー ト 群は 5 名 と 少 な く , サ ン プルサイ ズの減少 によ る検定力 の低下やパ ーソ ナ リ テ ィ な ど個人の特性の影響が大 き く な る と 考え ら れる ため, サ ポー ト 源別の分析 に用い る こ と は控え る こ と と し た。 ソ ー シ ャ ル ・ サ ポー ト 源別 の各尺度得点 の比較検討 の た め に, そ の他サ ポー ト を 除 く , 親サ ポー ト 群 , 友人サ ポ ー ト 群 , ソ ー シ ャ ル ・ サ ポ ー ト 無 し 群 の 3 群 を独立変 数 と し て, レ ジリ エ ンス, 自律的動機づけ, 自己決定感, 有能感の各尺度得点 を従属変数に,

-

元配置分散分析 を 行っ た (Table 10) 。

その結果, レジリエ ンス ( F (2,205) = 3.37, p < .05) ,

有能感 ( F (2,205) = 5.84, p < .01) において, サポート

源別の水準間 に有意差が認め ら れた。 Tukey の HSD 検 定 によ る多 重比較 によ り , レ ジリ エ ンスの 「家族> い な い」 と 有能感の 「家族> 友人」 「家族> いない」 におい て 1 %水準で有意差がみら れた。 3 . レ ジ リ エ ン ス と 自律的動機 づけ およ び自己決定理論 と の関連の検討のためのパ ス解析 次 に, 自己 決定感, 有能感, ソ ー シ ャ ル ・ サポー ト が 自律的動機づけ, レ ジリ エ ンスに及ぼす影響およ び自律 的動機づけ と レ ジリ エ ンスの関連につい て検討す る ため に, AM OS によ るパス解析 を行い, 自己決定感, 有能 感, ソ ー シ ャル ・ サポー ト を外生変数に, 自律的動機づ け , レ ジリ エ ンス を内生変数 と し た因果モ デルを作成 し た (Figure 1) 。 モ デル適合度 の結果は, x2

= .583 ( = 1, p= .445) ,

GFI = .999, AGFI = .984, NFI= .996, CFI = 1.00, RMSE A= .000, AIC= 28.583であり , 良好なモデル適合度が示 さ れた。 やや係数が小 さ い と こ ろ がみ ら れるが, 適合度 は十分 な も のだ と いえ る。 作 成 モ デルか ら は, 自己 決定感 と ソ ー シ ャ ル ・ サポ ー ト が自律的動機づけへ影響 を及ぼす プロ セス と し て, そ れぞれ直接的 に影響 を与え る プロ セス と 有能感 を経由す る プロ セ ス の 2 つが示 さ れ, 自己 決定感 と ソ ー シ ャ ル ・ サ ポー ト が レ ジ リ エ ンスへ影響 を及ぼす プロ セ ス には, そ れぞれ直接的 に影響 を与え る プロ セ ス と 有能感ま たは 自律的動機づけ を経由 と す る プロ セス, さ ら に有能感 と 自律的動機づけ を経由す る プロ セスの 4 つが示 さ れた。 ま た, 有能感が自律的動機づけへ影響 を及ぼす プロ セス には直接的 に影響 を与 え る プロ セ スが示 さ れ, 有能感が レ ジリ エ ンスへ影響 を及ぼす プロ セ スには, 直接的に影 響 を与え る プロ セス と自律的動機づけ を経由す る プロ セ ス の 2 つが示 さ れた。 比較的大 き な影響が示 さ れたのは, 自己決定感 (β= .31, p< .001) , 有能感 (β= .32, p< .001) , ソ ーシャル サポー ト (β= .20, p< .001) から直接的にレ ジリ エ ンス

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自律的動機づけ と レ ジリ エ ンス Tab l e 10 ソ ーシ ャ ル ・ サポ ー ト 源別の各尺度得点 (SS除 く ) に おけ る一元配置分散分析の結果 37 家法(IV=102) 友人(IV=90) いい(/V=16)

- - -

多重比

R度

M SD M SD M SD F'値

レン

リエ

ンス 13.42 1.98

自律

的動機つ

け 6.53 1.26

自説定

感 4.04 .72

3.18 .83

13.29 2.22 11.92 2.86 3.37' 家

>いい

6.34 1.22 6.42 1.28 1.00

3.99 .73 4.00 1.02 .11

2.88 .73 2.55 1.23 5.84 家

>友

人,家法>

い い

IV

213 df=2/205

'p<.01,'p<.05 に つ な が るパ ス係数 で あ り , そ れぞれ0.1 % 水準 で有意 で あ っ た。 自己決定感, 有能感, ソ ーシ ャル ・ サポー ト から自律 的動機づけへの標準化総合効果はそ れぞれ, .20, .18, .18で あ り , レ ジ リ エ ン スへの標準化 総合効果は, そ れ ぞれ .40, .35, .28で あっ た。 こ れによ り , 自己決定感 は, 自律的動機づけ お よ びレ ジリ エ ンス に対 し て, 最 も 大 き な正の影響 を及ぼ し てい る こ と が示 さ れた。 ま た, 自律的動機づけは, レ ジリ エ ンスに有意な正の 影響 を及ぼす こ と が示 さ れた。

IV 考察

本研究の目的は, 生徒の学校不適応や不登校予防の観 点から自律的動機づけ と レ ジリ エ ンス を取 り 上げ, 高校 生におけ る自律的動機づけ と レ ジリ エ ンス と の関連 を検 討す る と と も に, 生徒の レ ジリ エ ンス を涵養す る支援の ためのア プロ ーチ と し て, 自己決定理論の援用の可能性 を検討す る こ と で あ っ た。 本研究の結果よ り , 各尺度得点 におけ る性差につい て は, 自己決定感, 有能感において男子が有意に高 く , ソ ー シ ャ ル ・ サ ポ ー ト におい て女子 が有意 に高 か っ た。 レ ジ リ エ ンスおよ び自律的動機づけ に性差は認めら れなか っ た。 ソ ー シ ャ ル ・ サ ポー ト に おい て 性差 が認 め ら れ, レ ジリ エ ンス に性差が認め ら れない点は先行研究 と 一致 し た結果で あ る (岡安 ・ 嶋田 ・ 坂野, 1993 ; 石毛 ・ 無藤,

2005)。

各尺度得点間の相関分析 につい ては, レ ジリ エ ンスお よ び自律的動機づけは, 自己決定感, 有能感, ソ ーシ ャ ル ・ サ ポー ト の各変数 と 有意な弱 ~ 中程度の正の相関 を 示 し た。 ソ ー シ ャ ル ・ サ ポー ト の高低 2 群 によ る各尺度 得点 の比較のための t 検定の結果, レ ジリ エ ンスについ ては, ソ ー シ ャル ・ サポー ト 高群が有意に高か っ た。 ソ ー シ ャル ・ サポー ト 源別の各尺度得点の一元配置分散分析 の結果, レ ジリ エ ンス につい ては, サ ポー ト 源の違い に よ る有意差は認 め ら れな か っ た。 こ れら の結果よ り , レ ジリ エ ンス につい てはサポー ト 源の種類 に よ ら ず, サポー ト があ る と の認知や期待 の高 さ が重要であるこ と が示唆 さ れる。 山田 ・ 渡辺 (2009) は , 高校 生 を対 象 に, 知覚 さ れた ソ ー シ ャ ル ・ サ ポ ー ト のサ ポー ト 量 と 満足度が レ ジ リ エ ンス に与 え る影響 につ い て検討 し た結果, サポー ト の量 を多 く 認知 し てい る ほ ど レ ジリ エ ンスが高か っ た こ と を明 ら かに し てい る。 ま F i gure 1 自己決定感, 有能感, ソ ーシ ャ ル ・ サポ ー ト が 自律的動機 づ け お よ び レ ジ リ エ ン スに 及ぼ す影響 と 自律的 動機 づ け と レ ジ リ エ ン スの関連に つ い て の因果 モ デル た, 岡安 ら (1993) は, 中学生を対象に, 知覚 さ れたサ ポー ト が高いほ どス ト レ ス反応が小 さ い こ と を報告 し て い る。 知覚 さ れたサポー ト の水準が高い こ と は, 過去に 他者か ら サ ポー ト を受け た経験が多 い こ と や他者 と の親 密度が高いこ と , サポー ト の入手可能性に対す る期待が 高い こ と を意味 し , こ の期待はス ト レ ツサー に対す る嫌 悪性や統制可能性 と い っ た認知的評価に影響 を及ぼす こ と に よ っ て, ス ト レ ス反応の生起 を抑制す る機能 を持つ と考え ら れる。 岡安ら (1993) は, 知覚 さ れたサポー ト の レ ベ ルは過去のサ ポー ト 経験 を反映 し てい る と 考え ら れ, 実際にサポー ト を受け , ス ト レ ス を軽減で き た と い う 経験が多 け れば, サポー ト の期待す なわちサポー ト の 有効性に対す る評価は必然的に高ま り , こ の評価が高め ら れれば, ス ト レ ス に直面 し た場合 にサポー ト を活用す る可能性が高 ま り , そ れが有効で あ れば さ ら にサ ポー ト の期待 が高ま る, と い う 循環が生ま れる と 述べてい る。 自己決定感, 有能感, ソ ーシ ャル ・ サポー ト が自律的 動機づけ, レ ジリ エ ンスに及ぼす影響およ び自律的動機 づけ と レ ジリ エ ンス と の関連の検討 のために行 っ たパ ス 解析の結果, 良好なモ デル適合度が示 さ れた。 作成モ デルからは, 自己決定感, 有能感, ソ ーシャル ・ サ ポー ト の 3 つの説明変数 と も , 自律的動機づけ な ら び に レ ジリ エ ンス に対 し て有意な正の影響 を及ぼす こ と , 自律的動機づけは レ ジリ エ ンス に有意な正の影響 を及ぼ す こ と , 自己決定感 と ソ ー シ ャル ・ サポー ト は, 自律的 動機づけ と レ ジリ エ ンスのみな ら ず, 有能感 も 高める方 向に働く こ とが示 さ れた。 有能感は 「有能さの自己認知」 の測定であり , Decl (1985) は, 自己の有能さ の認知 を 高揚す るこ と を通 し て内発的動機づけが高めら れる傾向 があ る こ と を述べ てい る。 こ れら の結果よ り , 自律的動機づけ につい ては, 少 な か ら ず レ ジリ エ ンス を高 め る役割 を担 っ てい る と 推察 さ れ, 自己決定感, 有能感, ソ ー シ ャル ・ サポー ト が直接 的 に レ ジリ エ ンスに影響 を与え る と と も に, 自己決定感, 有能感, ソ ーシ ャル ・ サポー ト の充足が自律的動機づけ の高ま り につながり , そのこ と がレ ジリ エ ンス を喚起 さ せ る , と い っ た プロ セ ス の存在 が示唆 さ れた。 欧米 や オ ース ト ラ リ ア で は, レ ジ リ エ ンス育成 に関わ る教育 プロ グラ ムは様々に存在す るが, 内容的 には ソ ー シ ャ ル ス キ ル ・ ト レ ー ニ ン グ (SST) や そ れに類似 し た 活動 が多 く , 日本におい て も , レ ジリ エ ンスの育成につ

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38 なが る取 り 組 みと し て, ラ イ フ ス キル教育やス ト レ ス マ ネ ジ メ ン ト 教育 と い っ た取 り 組みが考え ら れてい る (針 間, 2012 ; 原 ・ 都築, 2013) 。 しかし, こ れらのプロ グラ ムは, 主に通常の授業 と は別の教育活動 と し て行 われて い る も ので あ る。 本研 究の結果か ら は, レ ジリ エ ンス に 対 し て, 自己決定感, 有能感, ソ ーシ ャル ・ サポー ト が そ れぞれ直接的およ び間接的 に影響 を与え る こ と が示 さ れ, レ ジ リ エ ンス を酒養す る た めの ア プロ ーチ と し て , 自己決定理論の有用性が示唆 さ れた。 こ れによ り , 教員 が自己 決定感, 有能感, ソ ーシ ャル ・ サポー ト に配慮 し た生徒への関わり 方 を常時活動 と し て意識的に行い, 様々 な活動に関わり 支援す るこ と で, 通常の学習活動や学校 行事 の指導 を通 し て, 生徒の レ ジリ エ ンスの、 i画養 を図 る こ と が可能 であ る と 推察 さ れる。 今後の課題 と し て, 本研究の限界 と 問題点につい て 2 点述べる。 第 1 に, 本研究が高校生を対象に し, 調査校 が 1 校で あ っ た点で あ る。 本研究の結果には, 調査校の 特徴 のみが反映 さ れたサ ン プ リ ン グバイ ア ス の懸念 も あ り , 結果の一般化には, 複数の調査校, 校種の研究結果 を検討 す る必要があ る。 第 2 に, レ ジリ エ ンスの涵養に 向け た具体的 な介入方法の検討 であ る。 本研究は, レ ジ リ エ ンス と 自己 決定感, 有能感, ソ ー シ ャ ル ・ サ ポー ト およ び自律的動機づけ と の関連につい て, 包括的 な影響 と プロ セ ス を明 ら かに し た も ので あ る。 こ れを 踏ま え , 今後は, 生徒のレ ジリ エ ンスの涵養に向け た, 自己 決定 理論 を援用 し た具体的 な支援 プロ グラ ムを実証的 に検討 す る必要があ る と 考え ら れる。 本研究結果は, 自己決定感, 有能感, ソ ーシ ャル ・ サ ポー ト を通 し た ア プロ ーチ が レ ジ リ エ ンス を涵養す る可 能性 を示 し た も ので あ っ た。 具体的 な支援 プロ グ ラ ムや 問題が顕在化 し た生徒への介入方法 につい ては検討が必 要で あ る も のの, 少 な く と も , 学校不適応や不登校の一 次予防に向けた集団への教育的 ア プロ ーチ と し て, 有用 で あ る と 考え ら れる。

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