外国語活動で身につく語彙技能
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第62巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.62,No.2. 平成凶年2月 February,2012. 外国語活動で身につく語彙技能 中 村 典 生. 北海道教育大学釧路枚英語教育研究室. OntheLexicalSkillsLearnedbyElementarySchooIChildren throughForeignLanguageActivities NAKAMURA Norio. DepartmentofEnglishEducation,KushiroCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 概 要 スキルの習得を直接的な目標としない小学校外国語活動においては,児童が実際にどのようなスキルを「結 果的に」身につけているか,ということを,テストという手法を用いては測ることはできない。本稿は自己 評価を用いて,「結果的に」身につく児童の語彙技能(スキル)を調査する方法を碇案し,その成果を示す ものである。また語彙技能調査とともに,どのような教科や外国語活動におけるどんな活動を児童が好むか, という情意面の調査も行い,その結果を示すとともに,情意と児童の語彙技能には何らかの関係があるのか, ということについて考える。. 1.はじめに. 平成23年度に小学校で外国語活動が必修化され,英語教育における小申達携の議論も盛んになっている。 これまで総合的学習の時間の中で行われていた英語活動では,各校によってあまりにも取組みの差が大き かったので,小申達携の議論自体が不可能であったと言って良い。しかし外国語活動が必修化され,小学校・ 中学校・高等学校へとコミュニケーション能力を養成していくという目標の軸が初めて示されたことによ. り,効果的な連携についての議論がようやく具体的にできるようになったのである。 効果的な小申達携を考えるにあたっては,小学校外国語活動で実際どのような「力」を身につけて中学校 に生徒が入学して来るのか,ということを知ることが重要となる。これを知らずして中学校における英語学 習のスタートラインを設定することは難しいからである。外国語活動で身につく「力」には二種類あると考. えられる。一つはコミュニケーションへの積極性等の情意面,もう一つが英語のスキルである。しかしなが ら,外国語活動においては英語のスキルを身につけることが直接的な目標ではないので,たとえばテストと いう手段を用いてスキルを測ること自体許されない,という雰囲気がある。つまり,小申達携を考えると外 国語活動で「結果的に」身についているスキルを明らかにすることは必要不可欠であるが,なかなかそれを. 173.
(3) 文字 ⑥. ③ ⑤. 音声. ④ ① ②. 意味.
(4) 外国語活動で身につく語彙技能. f.⑥音声から文字:語の音声を聞いて,英語のスペリングがわかる. 本稿では以上の先行研究をふまえ,図1のモデルに準じた語彙に関する自己評価アンケートを実施すること で,「結果的に」児童が身につけている様々な語彙技能について明らかにするとともに,情意面との接点に ついて考える。. 3.方. 法. 関西地区A/ト学校に通う4年生から6年生までの児童を対象に,2009年,2010年の2年間にわたって語彙 に関するアンケート(以下アンケートA)と情意面に関するアンケート(以下アンケートB)を2月に実施 する。. アンケートAでは,まず『英語ノート』から表1に示す以下の50語を抽出し,これらを調査語彙とする1。 表1 調査語彙50 barbershop baseball bath beach baker bank cereal clean Cute dentist earth eat Friday giraffe mOOn mouth nurSe Sing sister Sleepy. 且y. bear bread camel castle farmer hther festival florist. glove. help. history hospital July. October. P.E.. postofBce. Straight student Study. pudding. knee riceball. math. SClenCe. SWeater Tuesday turn. shoulder. white. アンケートAは表1のそれぞれの語について,以下(2)の6種類の質問に○×で答えてもらう形式とする。 これらの質問は,それぞれ図1多角的語彙習得モデルに準拠していることに注意されたい。たとえば 「teacherが読める」に○がつけられていれば,スペリングを見て英語で言える図1⑤の技能が身について いると判断でき,「えんぴつが書ける」に○がつけられていれば,語の意味を母語で示しそれを英語で書け る図1④の技能が身についていると判断できるわけである2。. (2)a.語の意味を母語で示しそれを英語で言える(図1の②に対応) b.語の意味を母語で示しそれを英語で書ける(図1の④に対応) C.語のスペリングを示しその意味がわかる(図1の③に対応) d.語のスペリングを示しそれを英語で言える(図1の⑤に対応) e.CDで語の音声を聞きその意味がわかる(図1の①に対応) f.CDで語の音声を聞きそのスペリングがわかる(図1の⑥に対応) 実際に用いたアンケートの一部は以下の通りである。. いみが. 【. 】. l. つ. l l. い. え. せ び さ ん ん. あ せ. えいごでいえるかな? かけるかな?. 【. 】. teacher. 【. 】. 【. 】. 【. 】. watch. 【. 】. 【. 】. わかるかな. よめるかな. 図2 アンケートA(一部抜粋). 175.
(5) 中 村 典 生. このような形式のアンケートを実施することにより,テストを行って解答を書かせることなしに,「結果的に」 児童が身についていると思っている語彙技能を測ることを試みるわけである。. 一方,アンケートB(一部を抜粋)は以下の通りである2。 1.以下のうち好きなものには○を,きらいなものには×を,どちらでもないものには△をつけてくださ い。(「家庭」は5∼6年生だけ○×△をつけてください) こくご 国語. さんすう しゃかい り か おんがく ずこう. たいいく かてい どうとく えいご 算数 社会 理科 音楽 図工. 2.外国語活動の時間にこれからもっとやってみたい活動には○を,もうやりたくない活動には×を,ど ちらでもない活動には△をつけてください。 えいご うた. 英語の歌. ケざ−ム. えいご. よ えいご. 英語を話 えいご. はな えいご. がいこくじん せんせい こうりゅう す 英語を聞く 外国人の先生との交流. き ビデオをみる. か 英語を読む 英語を書く. 図3 アンケートB(一部抜粋). 分析方法としては,アンケートAについては,各語彙技能の自己評価における学年推移を算出し,児童が どのような語彙技能をどのような順序で身につけていくかを考える。また,アンケートBについては,児童 の回答(○△×)の学年推移を項目ごとに示し,外国語活動の経験が情意面にどのような影響を及ぼしてい るかを考えるとともに,児童のスキルと情意の関連性を探る第一歩として,語彙技能の高い児童とそうでな い児童を比較し,英語に対する好感度のどのような違いがあるのか,ということについて考える。最後に, 調査した語彙の中で,児童の慣れ親しみが進んでいるのはどのような語なのか,というランキングを作成し, その傾向について考える。. 4.対. 象. 関西地区A/ト学校に通う2009年度,2010年度の4年生から6年生までの合計435名を対象に,2種類のア ンケートをとする。なお実施時期は両年とも年度末(2月)である。同校では,2009度より5・6年生は『英 語ノート』を用いて年間35時間の外国語活動を担任とALTのTTで行っている。また1∼4年生は,毎週 1回朝の15分程度,英語に関する活動を平成2009年度より行っている。2009年度以前はALT来校時にのみ, 年間数時間程度,各学年で英語活動を行っていただけであった。詳細な対象者の人数は以下の通りである。 表2 アンケートの対象 学. 年. 数. 09年度4年生−10年度5年生. 97人. 09年度5年生−10年度6年生. 98人. 10年度4年生. 97人. 09年度6年生. 143人. 計. 176. 人. 435人.
(6) ①音声→意味. ②意味→音声. ③文字→意味. ①音声→意味. ②意味→音声. ③文字→意味. ④意味→文字. ⑤文字→音声. ⑥音声→文字. ④意味→文字. ⑤文字→音声. ⑥音声→文字. 80.00%. 80.00%. 70.00%. 70.00%. 60.00%. 60.00%. 50.00%. 50.00%. 40.00%. 40.00%. 30.00%. 30.00%. 20.00%. 20.00%. 10.00%. 10.00%. 0.00%. 0.00% 09-4年. 10-5年. 09-5年. 10-6年.
(7) 㻜㻥㻙㻠ᖺ 㻝㻜㻙㻡ᖺ. 㻭ᑠᏛᰯ㻔㻜㻥㻙㻝㻜㻕䚷䕿䛾ྜ㻔䝺䞊䝎䞊䝏䝱䞊䝖㻕 ㄪᰝᅇᩘ㻞ᅇ䛾ඣ❺䛾䜏㻔㼚㻩㻥㻣㻕 䐟㡢ኌ䊻ព 㻝㻜㻜㻚㻜㻑 㻤㻜㻚㻜㻑 㻢㻜㻚㻜㻑. 䐤㡢ኌ䊻ᩥᏐ. 䐡ᩥᏐ䊻ព. 㻠㻜㻚㻜㻑 㻞㻜㻚㻜㻑. 09-5年 10-6年. A小学校(09-10) ○の割合(レーダーチャート) 調査回数2回の児童のみ(n=98). 㻜㻚㻜㻑. ①音声→意味 100.0% 䐢ព䊻ᩥᏐ. 䐣ᩥᏐ䊻㡢ኌ. 80.0% 60.0%. ⑥音声→文字. ③文字→意味. 40.0%. 䐠ព䊻㡢ኌ. 20.0% 0.0%. ④意味→文字. ⑤文字→音声. ②意味→音声. ○ △・無回答 ×. A小学校(09-10) 好き な 教科(英語). 09-4年. 37.1%. 10-5年. 10.3%. 46.4%. 0%. 20%. 39.2%. 40%. 09-4年. 52.6%. 60%. 14.4%. 80%. 100%. ○ △・無回答 ×. A小学校(09-10) 好き な 教科(理科). 74.2%. 10-5年. 2.1%. 57.7%. 0%. 20%. 23.7%. 27.8%. 40%. 60%. 80%. 14.4%. 100%.
(8) ○ △・無回答 ×. A小学校(09-10) 好き な 教科(算数). 09-4年. 49.5%. 10-5年. 3.1%. 32.0%. 0%. 26.8%. 20%. 09-4年. 47.4%. 40%. 60%. 80%. 48.5%. 10-5年. 3.1%. 25.8%. 0%. 40%. 60%. 80%. 㻣㻟㻚㻡㻑. 㻝㻜㻙㻢ᖺ. 㻞㻜㻑. 㻝㻠㻚㻟㻑. 㻢㻜㻑. 㻤㻜㻑. 36.7%. 10-6年. 36.7%. 0%. 20%. 3.1%. 60%. 80%. 55.1%. 10-6年. 5.1%. 36.7%. 0%. 20%. 27.6%. 40%. 100%. ○ △・無回答 ×. A小学校( 0 9 - 1 0 ) 好き な 教科( 国語). 09-5年. 39.8%. 35.7%. 60%. 0%. 80%. 100%. 80%. 100%. ○ △・無回答 ×. 2.0%. 52.0%. 20%. 27.6%. 40%. 60%. 14.3%. 80%. A小学校( 0 9 - 1 0 ) 好き な 教科( 社会) 積み上げグラフ 調査回数2 回の児童のみ( n = 9 8 ). 28.6%. 10-6年. 43.9%. 40%. 60%. 58.2%. 09-5年. 60.2%. 19.4%. 45.9%. 10-6年. 㻝㻜㻜㻑. ○ △・無回答 ×. A小学校( 0 9 - 1 0 ) 好き な 教科( 算数). 09-5年. 40%. A小 学校( 0 9 - 1 0 ) 好き な 教科 ( 理 科). 09-5年. 㻞㻠㻚㻡㻑. 㻟㻟㻚㻣㻑. 㻠㻜㻑. 20%. 36.1%. 100%. 䕿 䕧䞉↓ᅇ⟅ 㽢. 㻞㻚㻜㻑. 㻡㻞㻚㻜㻑. 㻜㻑. 0%. 37.1%. 23.7%. 㻭ᑠᏛ ᰯ㻔 㻜 㻥 㻙 㻝 㻜 㻕 䚷 ዲ䛝 䛺 ᩍ⛉ 㻔 ⱥㄒ㻕. 㻜㻥㻙㻡ᖺ. 26.8%. 59.8%. 48.5%. 50.5%. 20%. 100%. 4.1%. ○ △・無回答 ×. A 小 学 校 (09 - 1 0) 好 き な 教科 (国 語 ). 09-4年. 36.1%. 10-5年. 41.2%. ○ △・無回答 ×. A小学校(09-10) 好き な 教科(社会). 30.6%. 0%. 20%. 6.1%. 100%. ○ △・無回答 ×. 65.3%. 29.6%. 40%. 39.8%. 60%. 80%. 100%.
(9) ○ △無回答 ×. A小学校(0 9-1 0) やりたい活動(ゲーム). 09-4年. 88.7%. 10-5年. 82.5%. 0%. 20%. 40%. 60%. 2.1% 9.3%. 09-4年. 13.4% 4.1%. 10-5年. 80%. 100%. ○ △無回答 ×. A小学校(0 9- 10 ) やりたい活動(ビデオを見る). 09-4年. 60.8%. 10-5年. 6.2%. 57.7%. 0%. 20%. 28.9%. 40%. 60%. 13.4%. 80%. ○ △無回答 ×. 59.8%. 09-4年. 10-5年. 6.2%. 40.2%. 0%. 20%. 42.3%. 40%. 60%. 17.5%. 80%. A小学校(0 9-1 0) やりたい活動(英語を読む). 09-4年. 29.9%. 10-5年. 29.9%. 0%. 20%. 6.2%. ○ △無回答 ×. 40%. 60%. 80%. 0%. 23.7%. 60%. 80%. 100%. ○ △無回答 ×. 5.2%. 20%. 44.3%. 40.2%. 40%. 60%. 16.5%. 80%. 48.5%. 10-5年. 4.1%. 40.2%. 0%. 20%. 47.4%. 28.9%. 40%. 30.9%. 60%. 80%. 6.2%. 32.0%. 0%. 20%. 48.5%. 35.1%. 40%. 100%. ○ △無回答 ×. A小学校(09- 10) やりたい活動(英語を書く). 45.4%. 100%. ○ △無回答 ×. A小学校( 09- 10 ) やりたい活動( 英語を話す). 10-5年 100%. 40%. 43.3%. 09-4年. 41.2%. 38.1%. 50.5%. 10-5年. 100%. 63.9%. 28.9%. 20%. 26.8%. A 小 学 校 ( 0 9 - 1 0 ) やり A小 や り た い 活 動 ( 外 国 人 の 先 生 と の 交 流)). 09-4年. 34.0%. 4.1%. 38.1%. 0%. 100%. A小学校(0 9-1 0) やりたい活動(英語を聞く). 69.1%. 09-4年. 33.0%. ○ △無回答 ×. A小学校(0 9 -1 0 ) やりたい活動(英語の歌). 33.0%. 60%. 80%. 100%.
(10) ○ △無回答 ×. A小学校(0 9-1 0) やりたい活動( ゲーム). 09-5年. 99.0%. 10-6年. 0.0%. 91.8%. 0%. 20%. 40%. 8.2% 0.0%. 60%. 80%. 73.5%. 10-6年. 1.0%. 56.1%. 0%. 20%. 40%. 60%. 13.3%. 80%. 0.0% 20.4%. 79.6%. 09-5年. 10-6年. 49.0%. 0%. 20%. 11.2%. 39.8%. 40%. 60%. 80%. 09-5年. 43.9%. 10-6年. 41.8%. 0%. 20%. 55.1%. 1.0%. 32.7%. 40%. 60%. 25.5%. 80%. 100%. 0.0%. 40.8%. 0%. 37.8%. 23.5%. 35.7%. 20%. 40%. 60%. 80%. 100%. ○ △無回答 ×. A小学校(0 9 - 1 0 ) やり たい活動(外国人の先生との交流). 71.4%. 10-6年. 0.0%. 60.2%. 0%. 20%. 28.6%. 09-5年. 40%. 60%. 62.2%. 10-6年. 80%. 20%. ○ △無回答 ×. 16.3%. 31.6%. 40%. 60%. 80%. 51.0%. 10-6年. 49.0%. 0%. 20%. 45.9%. 3.1%. 20.4%. 30.6%. 40%. 100%. ○ △無回答 ×. A小学校(09-10) やりたい活動(英語を書く). 09-5年. 100%. 37.8%. 0.0%. 52.0%. 0%. 6.1%. 33.7%. A小学校(09-10) やりたい活動(英語を話す). 100%. ○ △無回答 ×. A小学校(09 -1 0) やりたい活動(英語を読む). 10-6年. 100%. ○ △無回答 ×. A小学校(09 -1 0) やりたい活動(英語を聞く). 62.2%. 09-5年. 25.5%. 30.6%. 09-5年. 100%. ○ △無回答 ×. A小学校( 09- 10 ) やりたい活動( ビデオを見る). 09-5年. 1.0%. ○ △無回答 ×. A小学校(0 9 - 1 0 ) やりたい活動(英語の歌). 60%. 80%. 100%.
(11) 中 村 典 生. 6.考 察 6.1 アンケートA・Bの結果からわかること 5.1節,アンケートAの結果からわかる傾向は以下の通りである。. し3)a.①∼⑥すべての語彙技能において,4年生から6年生へと学年が上がるにしたがい,○をつけた児童 の割合が増えている。. b.語彙技能については①音声→意味,②意味→音声,⑤文字→音声,③文字→意味,⑥音声→文字,④ 意味→文字の順で○をつけた児童の割合が高い。しかし③と⑤の技能については,ほとんど割合に差 がない。. (3a)については,図4・5からわかるように,すべての語彙技能において学年が上がるにしたがって○をつ ける割合が多くなっている。つまり,児童が「結果的」に身についていると感じている語彙技能は増えてい ることがわかる。また(3b)においては,語彙技能の相対的な順序づけ,及び③英語の文字を見てその意味 がわかる技能と,⑤英語の文字を見て読める技能は,ほぼ同じような伸びを示すことがわかる。実際にピア ソンの積率相関係数を調べてみると,2009年4年r=.96,2010年5年r=.99,2009年5年r=.98,2010 年6年r=.97と,③と⑤は極めて高い相関があることがわかった。. また,5.2節,アンケートBの結果からわかる主な傾向は以下の通りである。. (4)a.4年生(2009)から5年生(2010)への英語に対する好き・嫌いの変化を見てみると,英語(外国語 活動),算数,国語,理科,社会のうち,英語(外国語活動)のみが好きな割合が増えている。. b.5年生(2009)から6年生(2010)への英語に対する好き・嫌いの変化を見てみると,英語(外国語 活動),算数,国語,理科,社会のうち,理科のみが好きな割合が増えている。 C.活動をやりたいと回答する児童の割合は全般的に学年が上がるにしたがって減っていく。 d.活動をやりたくないと回答する児童の割合も全般的に学年が上がるにしたがって減っていく。. e.英語を聞く・話す・読む・書く,という活動のうち,児童がやりたいと答えた割合が最も低いのは一 貫して読む活動である。. f.英語を聞く・話す・読む・書く,という活動のうち,児童がやりたくないと答えた割合の順位は一貫 して,読む>話す>書く>聞く,である。. (4a)については,外国語活動未経験である4年生から,経験した5年生へと,英語が好きな児童の割合が増 えている,という傾向がわかる。その一方で,5年生から6年生にかけては英語が好きな児童の割合が減る。 (4c−d)で示したように,全般的に学年が上がるにしがたって,活動をやりたいと答える児童の割合が減る 一方で,活動をやりたくないと答える児童の割合も減っていく。これら(4a−d)の事実がどう関係している のか,今後さらに詳細に検討して行く余地があるように思われる。 また,(4e−f)について詳しく見るために,いわゆる4技能(聞くこと・話すこと・読むこと・書くこと) にかかわる活動をやりたい・やりたくないと回答した児童の割合を抜粋してみる。. 統計処理を施したわけではないので,これらの差が果たして有意な差であるかどうかは今後の研究に委ね る必要があるが,少なくとも実際の4技能の難易度(聞く く話すく読むく書く)と,児童のその活動をやり たい・やりたくないという思いにはズレがある,ということがわかる。特に一般に難易度が高いと言われて. 182.
(12) 外国語活動で身につく語彙技能 表5 やりたい活動(4技能) やりたい. やりたくない. 4年(2009) 5年(2010) 5年(2009) 6年(2010) 4年(2009) 5年(2010) 5年(2009) 6年(2010). 聞く. 59.8%. 40.2%. 79.6%. 49.0%. 34.0%. 17.5%. 20.4%. 11.2%. 話す. 48.5%. 40.2%. 62.0%. 52.0%. 47.4%. 30.9%. 37.8%. 16.3%. 読む. 29.9%. 29.9%. 43.9%. 41.8%. 63.9%. 41.2%. 55.1%. 25.5%. 書く. 45.4%. 32.0%. 51.0%. 49.0%. 48.5%. 33.0%. 45.9%. 20.4%. いる書く活動に関しては,児童は非常に高い興味を持っていることがうかがえる。この理由についても今後 更に詳しく検証していく必要がありそうである。. 6.2 スキル面と情意面の接点 冒頭で述べたように,児童のスキル面と情意面の関係について論じた研究は非常に少ない。本稿で収集し たスキル・情意双方のデータを分析することにより,両者の関係について新たな知見が得られる可能性もあ る。しかし,本データはエクセル数百万行にも及ぶほど膨大であることもあり,現段階で十分な分析を行う 準備ができていない。. そこでここでは,まずスキル面・情意面の接点を探る手始めとして,語彙技能が高い児童とそうでない児 童では,やりたい活動に違いがあるのか,ということについて考えてみたい。具体的には,アンケート1で 最も○がつけられた割合が高かった①音声→意味の語彙技能に着目し,平均より多く○をつけた児童(A群 n=46)と○が少ない児童(B群n=51)とに分類する。その上で,両者の語彙技能((む∼(釘)を比較して. 表6 A・B群間の比較(2009年4年) n ①音声→意味 ②意味→音声 ③文字→意味 ④意味→文字 ⑤文字→音声 ⑥音声→文字 09−4年(彰A 46. 50.3%. 25.6%. 10.5%. 5.1%. 12.0%. 6.0%. 09−4年①B 51. 17.1%. 8.9%. 0.7%. 0.5%. 0.6%. 0.4%. 表7 A・B群間の比較(2010年5年) n ①音声→意味 ②意味→音声 ③文字→意味 ④意味→文字 ⑤文字→音声 ⑥音声→文字 10−5年①A 48. 61.7%. 47.1%. 30.8%. 12.1%. 32.4%. 17.3%. 10−5年(彰B 49. 30.9%. 21.6%. 3.8%. 2.2%. 4.1%. 2.4%. 表8 A・B群間の比較(2009年5年) n ①音声→意味 ②意味→音声 ③文字→意味 ④意味→文字 ⑤文字→音声 ⑥音声→文字 09−5年①A 48. 75.0%. 54.6%. 09−5年①B 50. 42.9%. 30.3%. 30.6% 6.4%. 18.1% 2.8%. 35.4% 6.9%. 23.8% 2.6%. 表9 A・B群間の比較(2010年6年) n ①音声→意味 ②意味→音声 ③文字→意味 ④意味→文字 ⑤文字→音声 ⑥音声→文字 10−6年①A 56. 83.7%. 70.4%. 57.4%. 27.2%. 59.5%. 40.4%. 10−5年①B 42. 52.4%. 45.0%. 14.9%. 6.0%. 16.3%. 9.0%. 183.
(13) ○ △・無回答 ×. A小学校( 0 9 ) 4 年( ①) 好き な 教科( 英語) 積み上げグラフ 調査回数2 回の児童のみ. 09-4年①A. 52.2%. 09-4年①B. 23.5%. 0%. 6.5%. 13.7%. 20%. 60%. 80%. 09-5年①B. 60.0%. 0%. 20%. 40%. 2.1% 10.4%. 2.0%. 38.0%. 60%. 80%. 30.6%. 0%. 100%. ○ △・無回答 ×. A小学校( 0 9 ) 5 年( ①) 好き な 教科( 英語) 積み上げグラフ 調査回数2 回の児童のみ. 87.5%. 62.5%. 10-5年①B. 62.7%. 40%. 09-5年①A. 10-5年①A. 41.3%. 20%. 31.3%. 46.9%. 40%. 60%. 10-6年①A. 71.4%. 26.2%. 0%. 20%. 80%. 100%. ○ △・無回答 ×. 23.2%. 47.6%. 40%. 6.3%. 22.4%. A小学校( 1 0 ) 6 年( ①) 好き な 教科( 英語) 積み上げグラフ 調査回数2 回の児童のみ. 10-6年①B. 100%. ○ △・無回答 ×. A小学校( 1 0 ) 5 年( ①) 好き な 教科( 英語) 積み上げグラフ 調査回数2 回の児童のみ. 5.4%. 26.2%. 60%. 80%. 100%.
(14) 外国語活動で身につく語彙技能 表10 語彙技能ランキング(①∼⑥の総合力)上位・下位10語. 全技能. 主成分1 rank. October. 2.8181. Friday. 2.6341. mOOn. 2.5430. 全技能. 主成分1 rank. 全技能. P.E.. 4.3894. 2. (おわ∂er. ノ.♂7プア g. 3. Friday. 1.3440. 3. イ. 主成分1 rank. mOOn. 2.3847. July. 2.0555. 2. October. 1.7854. 3. イ. Tuesday. 2.2905. 4. 力め′. ノ..〃戌グ. カβざeカa〟. ノ.5二郷. July. 1.8862. 5. math. 1.1355. 5. bear. 1.4153. 5. P.E.. 1.5221. 6. Tuesday. 1.0432. 6. Sleepy. 1.3224. 6. mouth. 1.0399. 7. Sleepy. 0.9905. 7. Friday. 1.2678. 7. Sleepy. 0.7420. 8. bear. 0.6927. 9. Sing. 0.5859 10. 〃.〃/ご. β. Study. 1.0409. 8. white. 0.7690. 9. pudding. 1.0027. 9. bear. 0.7664 10. eat. 0.9200 10. /〃りり〃. farmer. −0.7725 41. 倣お′. −β.β乃拶 イノ. history. −0.9791 41. castle. −0.8678 42. (沼ざ∠お. 1〃.−\ヤ//. knee. −1.0488 42. camel. −0.8884 43. 血頭ノ. −β.β繭汐 4ヲ. camel. −1.1475 43. cereal. −0.9015 44. (憲〃プd. −β.且夕α7. SClenCe. −1.1691 44. turn. −0.9113 45. カゐわJγ. 1〃‥中杭ヾ 4J. gira鮎. −1.1735 45. SWeater. −0.9272 46. ざ細なぉ. −ノ.(〃(〃 イ〝. Straight. −1.2356 46. history. −0.9699 47. 血由′. −ノ.ノ且三好 47. earth. −1.2366 47. dentist. −0.9878 48. 應mer. −ノ.彪ノノ 4拶. dentist. −1.5213 48. Straight. −0.9994 49. cereal. −1.2624 49. cereal. −1.7755 49. barbershop. −1.1217. ∂∂カeJl通(p. −ノ..〃尻夕. farmer. −1.7944 50. 50. 表10よりわかることは以下の通りである。. (5)a.学年が違っても慣れ親しんでいる語の大まかな傾向は似ている。. b.5年生では『英語ノート1』ですでに登場した語が上位10単語のうち7単語あることから,外国語活 動で扱った語は習得率が高いと捉えることができる。. C.曜日,教科,状態を表す語,色,動物といったように,児童の日常生活と密接な関わりのある語,授 業で頻繁に登場することが予想される語が上位となっている。. (5a)に関しては,4∼6年を通じて上位にランクされている語が6語(October,Friday,mOOn,July, sleepy,bear)あり,4∼6年を通じて下位にランクされている語も6語(farmer,Camel,Cereal,dentist, straight,barbershop)あることがから,慣れ親しみ進んでいる語,いない語は学年にかかわらずかなり似通っ ていることがわかる。また,(5b)について言えば,上位10語中,October,July,mOOn以外の語がすでに5 年生で使用した『英語ノート1』で登場している。これを考えると,やはり学校で扱った語に対する慣れ親 しみ進んでいることがわかる。また,これらOctober,Julyなどの語は,『英語ノート』ではまだ登場してい なくとも,授業時の挨拶,日常生活などでおそらく耳にしている語ではないかと思われる。このような語に 関しては,(10c)のように慣れ親しみが進むことが考えられる。なお,4年時には上位になっていた語 (sing,mOuthなど)が,5年生以降では上位から消える,ということもある。このようなことも含め,語 彙ランキングについての詳細な分析についても,今後さらに詳細に分析をすすめていくこととする。. 185.
(15) 中 村 典 生. 7.結 本稿では,テストという方法ではなく,児童の自己評価によって「結果的に」身につけている語彙スキル に関するデータ収集を試みるとともに,語彙技能と児童の情意面には,どのような関係があるか,というこ とについても考えて来た。その結果,語彙技能の習得は①音声→意味,②意味→音声,⑤文字→音声,③文 字→意味,⑥音声→文字,④意味→文字の順ですすむことをはじめ,語彙技能と英語への好感度には,何ら かの関係があることを示唆するデータを見いだすことができた。これらの成果は,テストという手法に頼ら ずとも,児童の自己評価を用いることによって有用なデータ収集ができる,という可能性を示したものでは ないかと考えられる。 しかしながら,本稿での分析はまだ試行的なものである。詳細な分析は今後の研究に委ねることとなる。 特に,(i)語彙技能の習得がすすむと,やりたい活動,特に4技能に関する活動にどのような変化があるか, (ii)語彙技能が高いから英語が好きなのか,逆に英語が好きだから語彙技能が高いのか,というという因果関 係,(iii)違った環境で外国語活動を実施している小学校との比較,(i司EFL環境にある他国との比較,などに. ついては,鋭意研究を進めて行きたいと考えている。これらについては今後の成果に期待されたい。. 注 1 50語を選択する際,以下の点に留意した。. 『英語ノート』の特定のLessonから偏って抜き出さないようにする ・カタカナ英語化していないものをできるだけ選ぶ. ・名詞が中心であるが動詞,形容詞も入れる 2 この他ここに挙げた2つの質問の他に,好きな活動,理解や態度に関する自己評価,学校外での英語学 習の有無などの質問も設定し,実際に回答を回収したが,本稿での議論とは直接関係しないため割愛した。. 3.外国語活動は領域であり,教科ではない。また,英語を扱うことを原則としているが,英語のみを扱う わけではない。しかしながら,ここでは小申達携を意識し,また他の表記と合わせて教科という語を用い ている。. 参考文献 門田修平(2003).『英語のメンタルレキシコン一語彙の獲得・処理・学習』,松柏社. 中村典生・兼松綾・林田宏一(2009).「/ト学校英語における文字指導とその課題一英語ノート(試作版)の内容を踏まえて−」. 『小学校英語教育学会紀要』VOl.9,63−70. 中村典牛・兼松綾・林田宏一(2010).「/ト学校英語が中学校の英語学習に及ぼす影響について一語彙の自己評価に焦点を当て て−」.『小学校英語教育学会紀要』VOl.10,25−30. 堀田誠・平野絹枝(2011).「日本人小学校6年生の英単語認知における音韻表象の効果」『教育実践学演習』第12号,157−168. 文部科学省(2009).『英語ノート1』,教育出版. 文部科学省(2009).『英語ノート2』,教育出版. 横川博一(2006).『日本人英語学習者の英単語親密度文字編一教育・研究のための第二言語データベース』,くろしお出版. 横川博一(2009).『日本人英語学習者の英単語親密度音声編一教育・研究のための第二言語データベース』,くろしお出版.. Barron,R.W.(1986).‘‘Wordrecognitioninearlyreading:Aviewofthedirectandindirectaccesshypothesis:’Cog71ition. 24,93−119.. Laufer,B(1997).‘‘what’sinawordthatmakesithardoreasy”:SOmeintralexicalfactorsthataffectthelearningofwords.”. 186.
(16) 外国語活動で身につく語彙技能. InN.SchmittandM.Mccarthy(ed.),l句cabula7rDescriPtion,Acquisitionandlbdagtm.CambridgeU.P.,140−155. Laufer,B.andHulstjin,J.(2001).‘‘Incidentalvocabularyacquisitioninasecondlanguage:Theconstructoftask−inducedin− VOlvement.”4抄IiedLinguistics.22,1,1−26.. (釧路校准教授). 187.
(17)
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