「雪まつり」での国際交流活動の有効性 : 子どもの「楽しさ」や「英語で相手とコミュニケーションを図ることの慣れ」の観点から
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(2) 北海道教育人学紀要(教育科学編)第55巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.55,No.2. 平成17年2月 February,2005. 「雪まつり」での国際交流活動の有効性 子どもの「楽しさ」や「英語で相手とコミュニケーションを図ることの慣れ」の観点から. 神 林 裕 子. 北海道教育人学附属札幌小学校. TheEfncacyofInternationalExchangeActivitiesintheSapporoSnowFestival FromtheViewpointsof”Fun”and”theFamiliaritywithCommunicationinEnglish”. KAMBAYASHI Yuko. SapporoElementarySchooIAffiliatedwithHokkaidoUniversityofEducation Sapporo Campus. 1.はじめに. 2002年度より本格的に開始することになった総合的な学習では,「国際理解教育の一環としての外国語会 話等」として,英会話活動が取り入れられるようになった.英会話活動の施行については,大津・鳥飼(2002). や松川(2003),直山(2004)の提言にあるように賛否両論がある.しかしながら,文部科学省の「『英語が 使える日本人』の育成のための戦略構想の策定について」(2003年7月12日)から「『英語が使える日本人』 の育成のための行動計画の策定について」(2003年3月31日)に至る一連の政策の流れを受け,全国で英会 話活動に取り組む学校が増加してきている.. 本校では2000年度より,国際理解教育の中で英会話活動に取り組み,今年で5年目を迎える.これまで, 学習の目標,内容,各学年の年間指導計画等,改定を加えてきた.設定した目標に対しては,教師の授業評 価,子どもたちの自己評価等から評価をし,一定の成果をあげてきている(2000,本校研究紀要50).その 中で,中学年と高学年の子どもたちから「英語は楽しい」,「英語で相手とコミュニケーションをすることに. 慣れてきた」の評価については,前者の方が後者を常に上回る結果であった.高学年のように社会生活の経 験も増し,大人との話し合いを楽しめるほどの思考力も伸びてきている段階では,英語による表現活動の内 容も,他の教科で学習する内容の質と同程度のものが望まれる(久埜,1999).このことから,本校の高学 年の児童の実態と英会話学習を照らし合わせると,発達段階に合わせてその内容をさらに工夫する必要があ ると考えた. また,文部科学省(2001)では,『′ト学校英語活動実践の手引き』の中で,「高学年の子どもたちには,知. 的好奇心を満たすゲーム(宝探しなど)や地域の外国人を招く国際交流活動を通して,自分で考えながら実 際にコミュニケーションを図る活動を重視する」ことを述べている.しかしながら,どのような活動をどの 程度の内容で行うのかは各学校に委ねられており,明確な内容指定はない.そこで,今年度は他の総合的な. 27.
(3) 神 林 裕 /一. 学習【雪まつりへGO!:雪まつりの国際雪像コンクールに行き,札幌を紹介したり,外国の方から見た札 幌を調べたりする学習(以下,「雪まつりへGO!」)】と関連させて,英語表現の難易度は高まるが,交流 活動を見据え質的により充実した英会話活動の年間指導計画を策定した.「雪まつり」は札幌に住む子ども たちにとっては外国人との交流活動がもてる非常に貴重な機会である考えたからである.. 今年度の英会話活動は「雪まつりへGO!」の施行1年目ということもあり,5・6年生は年間指導計画 の都合上,両学年でほぼ同じ内容を学習してきた.5年生が6年生に進級した際には,今年度の実践を踏ま え,さらにステップアップした学習を予定している.この結果,今年度に限り,1年間の学習として,5年 生は“学習の最後に交流活動をもたないグループ,6年生は“学習の最後に交流活動をもつグループとなっ た.そこで,2つの学年には学校における英会話学習の経験年数に違いはあるが,単元の終了時にアンケー ト調査を実施し,「雪まつり」での外国人との交流活動が,子どもの「楽しさ」や「英語で相手とコミュニケー ションを図ることの慣れ」にどのような影響を与えるか,検討を試みた.. 2.方法. 2.1対象児童とその学習背景 今回の対象児童は本校の高学年,5年生84人,6年生81人,合計165人(男子82名,女子83名)である.「雪 まつりへGO!」の単元は6年生時の最後に設定した.学習の内容は,札幌を紹介したり,雪国に住む札幌 の人の服装(雪国であるのにもかかわらず軽装である理由等)について自分なりの意見をもち同じ雪国の外 国人がどのような服装をしているのかをインタビューしてみたりすることなどである.これを受けて,英会 話活動の内容では,外国の方とのインタビューの際に必要となる英語表現を学習したり,どのようなことを 言いたのか,訊きたいのかを子どもたちと話し合って内容を決めスキットで会話練習等をしたりした(表1).. 英会話活動においては,6年生の交流活動は5・6年生の2年間の学習のまとめとなるように設定した.な ぜなら,子どもたちの「言いたいこと・訊きたいこと」を充実させて交流活動を迎えるには学習時問の面か ら2年間を見据えた方がよいと考えたからである.しかしながら,先に述べたように今年度に限っては5・ 6年生の学習内容をほぼ同一にした.. 学習の前半は“Excuse,me∴“MayIasksomething?”などの「交流の場で必要となる英語表現の学習」 を多くし,後半では,子どもたちが考えた会話をスキットにして,「内容にある程度の自由度を設けたスキッ. トの学習」を多く取り入れた.なお,本校における総合学習における国際理解教育の位置づけ,総合的な学 習の目標,国際理解教育の各学年の目標は本校研究紀要No.50に記載されている. 表1 本校における英会話活動の単元名とそこで巾心となる学習表現. 28.
(4) 「雪まつり」での国際交流活動の有効性. 2.2 アンケート調査. 子どもたちには,単元の終了時に以下のようなアンケート調査を行った.. Ql 英会話活動は楽しかったか. Q2 英語で相手とコミュニケーションをすることに慣れてきたか 「楽しさの中に英語に慣れ親しむことができるように工夫をすることが大切である(2001.『′ト学校英語 活動実践の手引き』)」にあるように,英会話活動では「楽しさ」「英語に慣れ親しむこと」が重要視されて. いる.このことから,今回のアンケートでは,この2点について調査をした.各質問には4つの選択肢,「と てもそう思う」,「どちらかと言えばそう思う」,「どちらかと言えばそう思わない」,「そう思わない」が設定. され,子どもに自由に選択させた.また,4つの選択肢にはそれぞれ1,2,3,4点の得点を与え,客質 問の平均スコアおよび標準偏差を算出した(平均スコアが低い方が質問に対して肯定的となる).. 2.3 交流活動. 「雪まつりへGO!」は以下の日程・内容で行った.. 【日 時】 2月5日(木). 9:00∼11:00. 【場 所】 大通り公園西11丁目 さっぼろ雪まつり「国際雪像コンクール広場」 【内 容】 子 ど も の 学 習 活 動. 教師のかかわリ ・集合場所,. 外国の方と交流を図り,札幌の紹介をしよう! 今までの英語学警が身につけた力を試そう!生かそう!. 時間,活動 内容の確認. 札幌の紹介をしよう!. 自己紹介をしよう!. ・あいさつ,笑顔で元気に自分の・ラーメン ことを話してみよう. をする. ・降雪量. ・四季の移り変わり ・札幌の絵はがきをあげよう. どの絵はがきが人気かな?その理由は? など. ・英語に自信 がもてない 子どもたち. には,資料. 外国の方に質問してみよう!. や身振りで. どのカードがよいか選んでもらおう WhTch card do youlike better? あなたの住んでいるところと札幌ではどちらが寒いですが?. ls your hometownc01derthan Sapporo? など. 何とか言い たいことを 伝えること. たくさんの外国の方と交流できたよ!. ができるよ. 英語で話すことにも自信がもてたよ!. うに促す. 29.
(5) 神 林 裕 /一. 2.4 統計処理. 5・6年生の平均スコアの比較には,Studentのt検定を用い,有意水準は5%以下とした.. 3.結果. 図1から「英会話活動は楽しかった」という質問に対して,「とてもそう思う」,「どちらかといえばそう 思う」を合わせると,6年では100%,5年生では91%であったことがわかる.2つの選択肢の比率をみる と,6年生では「とても楽しかった」が87%,「どちらかといえば楽しかった」が13%であった.それに対 して5年生では,前者が29%,後者が62%であった.「英語で相手とコミュニケーションをすることに慣れ てきたか」という質問に対しては,「とてもそう思う」,「どちらかといえばそう思う」を合わせると,6年 では94%,5年生では86%になった.2つの選択肢の比率を比較すると,6年生では「とてもそう思う」が 49%,「どちらかといえばそう思う」が45%であったのに対し,5年生では,前者が24%,後者が62%であっ た.. 図2には各質問の平均スコアの比較を示した.その結果,「英会話活動は楽しかった」という質問では5 年生は1.80±0.59点,6年生は1.13±0.34点となった.また,「英語で相手とコミュニケーションをする ことに慣れてきたか」という質問では,5年生は1.96±0.71点,6年生は1.60±0.65点であった.いずれ の質問でも5年生と6年生の差は1%水準で統計的に有意なものであった.. 4.考察. 今年度の高学年の英会話活動は,新しい年間指導計画の施行1年目ということもあり,その大きな相違と して,5年生は“学習の最後に交流活動をもたないグループ’’,6年生は“学習の最後に交流活動をもつグルー プ となった.そこで,この機会を利用して,「雪まつり」での外国人との交流活動が,子どもの「楽しさ」. や「英語で相手とコミュニケーションを図ることの慣れ」にどのような影響を与えるか,アンケートによっ て調査した.. 実際の交流活動では,札幌の紹介をしたり,寒さに対する服装の違いについて意見を訊いたりと意欲的に 活動に取り組む子どもたちの姿が見られた(写真1).また,その交流活動では,英会話活動の授業で子ど もたちの言いたいことスキットにして学習内容を進めたことが大いに生かされていた.この交流活動での大 きな収穫は子どもたちが交流活動において何とか学習した英語を使いながら,交流そのものを楽しんでいた ことである.以下は交流を終えた後の児童の作文である.. 私はすごく緊張していました.見知らぬ外国人に話しかける のは初めてだったからです.最初,声をかけることに少し時間 がかかりました.香港の人に声をかけました.すると,′ltしそ うだったけれど親切にこちらへ采てくれました.質問もなかな か最初は通じなかったけれども,どんどん慣れてきてしっかり 答えてもらうことができました.そして,香港の人たちから交 流のバッチをいただきました.上手く交流ができたという証拠 ではないかと思います.すごくうれしかったです.. 30. 写真1. 外国人と交流する子どもたち.
(6) 「雪まつり」での国際交流活動の有効性. 図1 各質問における4つの選択肢の占める割合(%). 31.
(7) 神 林 裕 /一. 図2 各質問におけるスコアの平均値(標準偏差)の比較 両質問とも6年生のスコアは5年生と比較して1%水準で有意に低値であった。. 32.
(8) 「雪まつり」での国際交流活動の有効性. 調査の結果,「雪まつりへGO!」はその交流活動のために英会話活動の学習内容が難しくなったにもか かわらず,6年生のすべての子どもたちから「英会話活動は楽しかった」という評価を受け,「とても楽しかっ. た」という選択肢を選んだ子どもが87%を占めた(図1).この数値が示すように,英会話活動は 6年生 の子どもたちから「とても楽しい」という非常に高い支持を受けていることがわかる. 一方,交流活動をもたなかった5年生でも,「英会話活動は楽しかった」とする子どもたちが91%にのぼり, 交流活動をもたない場合でも,英会話活動への楽しさは保持されていることがわかる.しかしながら,興味 深いことに,選択肢を詳細に見ると「とても楽しかった」とする子どもたちが5年生の場合,6年生の3分 の1程度にとどまっていた.また,「英会話活動は楽しかった」という質問の平均スコアでは,5年生の値 は6年生の値よりも有意に高かった(図2).このことから,英会話活動の学習内容として,「雪まつり」で の外国人との交流活動をもつことにより,それが「英会話活動の楽しさ」に与える影響は非常に大きいと考 えられる.. 「英語で相手とコミュニケーションをすることへの慣れ」については,5・6年生ともに約90%の子ども が「そう思う」と答えている.これは英会話活動における成果の1つと言えることであり,多くの研究開発 校での報告と一致する.しかしながら,5・6年生の選択肢の内容を見ていくと,「とてもそう思う」と答 えた子どもたちは,5年生は6年生の約半分であった(図1).また,「英語で相手とコミュニケーションを することへの慣れ」についての平均スコアは,5年生と6年生に有意差が認められた(図2).これについ ては,5年生が学校における英会話の学習経験年数が1年少ないことも考慮しなければならないが,「雪ま つり」での交流活動の有無が影響していると推察される. 以上の結果から,「雪まつり」での外国人との交流活動は,子どもの「楽しさ」や「英語で相手とコミュニ. ケーションを図ることの慣れ」に有効に作用すると考えられ,今後,英会話活動の内容との関連を十分に図 りながら積極的に学習活動の中に位置づけていくべきではないかと思われる.. 参考文献 大津由紀雄・鳥飼玖美子.2002『小学校でなぜ英語?』岩波ブックレットNo.562. 松川磯子.2003.『小学校英語活動を創る』高陵社書店. 直山木絹子.2004.「ノト学校英語活動,益あり,害なし,よって必要あり,ただし,条件つきで」『英語教育』5月号,pp12 −14.. 文部科学省.2003.「英語が使える日本人の育成のための戦略構想の策定について」7月12日公示. 「英語が使える日本人の育成のための行動計画の策定について」3月31日公示. 北海道教育大学附属札幌小学校.『心を油養し,知を創造する学校 研究紀要No.50』491アヴァン. 久埜百合.1999.『こんなふうに始めてみては?小学校英語ご 三省堂. 文部科学省.2001.『小学校英語活動実践の手引きご 閉経堂.. (北海道教育大学附属札幌′ト学校教諭). 33.
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