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中村哲著『社会科授業に関する体型枠の構築と事例研究 : 知識獲得過程の視点に基づいて』(風間書房,1996.3)

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(1)

社会系教科教育学会『社会系教科教育学研究』第8号 1996 (p. 85)

【書 

中村 

哲著『社会科授業に関する体系枠の構築と事例研究

一知識獲得過程の視点に基づいてー 』

(風

房,

1996.

3)

35,020

教科教育学の学的確立が叫ばれて久しく,われわれ 社会科教育学の領域でも,学問的研究の成果に対して, いくつかの博士の称号が出されてきた。しかし,教科 教育学研究の方法論の難しさから,提出されてきた博 士論文の多くは,一般教育史研究をモデルとした社会 科教育史研究であったり,外国教育研究にならった外 国社会科研究であったが,この中村氏の博士論文(本 書は,氏の博士論文を出版したものである)は,初め てわが国の社会科授業実践を対象とし,その実践の内 容構成と展開過程を分析,説明する体系的枠組みを構 築しようとする,意欲的で社会科教育学上画期的な業 績であることをまず指摘しておきたい。 氏のいう社会科授業の体系枠がないため,これまで の社会科授業論は,自分たちの理論ないしイデオロギー の枠内で自己の授業を語り,他の授業論を批判すると いう方法をとってきた。それは神々の争いであった。 また,全国の附属校での研究授業や,各地域の研究会 でなされる研究授業も,多大のエネルギーをそそいで 行われるにもかかわらず,過去の先行授業研究の成果 を検討することもなく,さらに授業の法則化や授業ス キルの提示を行なう努力がされることも少なかった。 そのため,流行の同じようなテーマで,多様な授業が なされながら,その成果の交換も蓄積もされることな く,その授業は消えていく運命にあった。 中村氏は,教育工学的手法を利用しながら,まず, 社会科授業リソースとして6,500に及ぶ授業事例,教 授メディア,授業記録を蓄積するデータベースを開発 しに基づいて分析,ついでその授業リソースし,授業リソースの体を,知識獲得過程の視点系化を試みてい る。 氏は作業仮説として,「獲得内容」に関する知識を 価値的知識・概念的知識・事実的知識・方法的知識に 分類し,「獲得方法」を知識手段,知識習得,知識発 展の3視点に分かち,12の基本類型を立てる。これが 氏の知識獲得過程の体系枠である。

伊東亮三

(岐

学)

次に氏は,この体系枠の妥当性とわが国社会科実践 の傾向性を解明するために,過去の民間教育研究団体 のいくつかの代表的な社会科授業実践をこの枠組みを もって分析し,その傾向性をさぐり,この体系枠の有 効性を証明しようとする。 その上で,氏は授業リソースの活用化を図り,知識 獲得過程の改善を意図する社会科授業事例の分析と, 改善した授業の開発,知識獲得過程の改善を意図する 授業の教授スキルと教授メディアの分析と開発を行っ ている。 本書は847ページに及ぶ文字通りの大著であり,巻 末には,各附属小,「歴史地理教育」「社会科教育」 「カリキュラム」「生活教育」「考える子どもJF ̄教育」 などの雑誌・機関誌に載せられた授業リソースに関す るデータベースのレコードが掲載されている。 社会科授業リソースの蓄積,知識獲得過程に関する 偏らない体系枠の構築,授業展開,教授メディア利用 の法則化という本書における氏の研究意図にはまった く賛成であり,今後の社会科授業研究の発展に寄与す ると’ころは大きいと考える。 最後に,一つだけ,氏の中心課題である体系枠に関 して疑義というか私見を述べて終わりたい。それは 「獲得内容」に関する知識分類すなわち価値的知識・ 概念的知識・事実的知識・方法的知識の,氏のいう 「体系枠活用の有効性」の問題である。氏の授業事例 分析を読みながら,地理的,歴史的内容の授業には, この知識分類による分析はなじまないように思えてな らない。しかし,現実に日本の社会科の内容は,中学 校だけでなく小学校でも,大部分は地理と歴史である とき,この知識分類の有効性が疑わしく,なにか別の 分析枠があるのではないかの会などの問題解決学習の授とい業事例も,この枠組みう気がする。また初志 分析することに無理があるように思えるのも,私の誤 読であろうか。 −85−

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