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「農業法」の概念について

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Academic year: 2021

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(1)Title. 「農業法」の概念について. Author(s). 遠藤, 順三. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. B, 社会科学編, 26(1): 1-11. Issue Date. 1975-09. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/4396. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 遠藤順三 :「農業法」 の概念について. 「農業法」 の概念について 遠. 藤. は し がき. 「農業法」 の意義 農業及至農業活動及びその経済的特質 農業及び農業者. 順. ニ. 「農業法」 の法源 )成文法源 ← D不文法源 結 びにか えて. はしがき 「農 業 法」 Agricul tural law は, あらゆる法律中最も古くまた最も新 しい法律学の分野 である. と云ってよい。 然しながらこの法律は, 従来より統一的法典を持たないが故に 後述する如く 学 , , 説上 「農学法」 の組織, 体系の把握についても研究者によって各人各様であっ て 必ず しも定説と , 云う べきものはない。 従って我が国の場合, 従来法律学に於いて 「農業法」 をもって独自の法域 , 若しくは法系と認めなかっ た結果, 単に農業に関係を有する個々の法令域ぃはその 集団を指して「農 業立法」 等と称することはあっ ても, 統一法典と しての 「農業法」 は未だ出現せず 種々の単行法 , と非制定法 (慣習法, 判例法等) の他に, 各種の公法, 私法法令中における 現代農業の発展に適 , 応すべき性格を有す る現定を綜合して, これに統一的系統を附与せざるを得ない実状 にあると云っ てよい。 (同旨小林巳智 次教授 「農業法」32頁以下) 而して, 従来 「農業法」 研究の方向として, 一般に単行法個々に関する研究, 例えば 「農地法」 域いは 「家畜取引法一 等個々に関する研究と,「農業法」 全般にわたる (法体系全般にわたる) 研究 との二つが存するであろう。 以上のうち前者については, 個々に関する文献, 解説書等も比較的入 手し易く, その研究も容易であろう が, 後者については, 研究者, 従っ て論文, 文献等極めて少く, 又前述した事情からして理論的にも多くの困難な障碍に逢着する であろう. 然し今日我々が当面し ている課題は, 以上のう ち後者に属するものと云うべく, 正に法律学中に於ける独自の体系として の 「農業法」 の樹立を目指すものでなければならない。 凡そ学問の研究はその根本概念, 即ちその 本質論をもって出発点となすべきもの であり,「学問の研究に携はらんとする人々は誰しも糞ふやう に, 農業法に於ても, その体系樹立の整備が主要問題 であることは変りない 然しこの古く してし かも最新の法律学の領域に於て, 先づ根本問題たる事実の分明が先決問題 である. 概念法学の据え た古き礎石をその儀に認容してその上に建設する農業法は外観上一通り威容は備へたことは可 能で あっても, それは結局農民階級にとっ て断じて明日の幸福を約束するものでない」(小林巳智次教授 「農業法研究」 ) とされる小林教授の説述は 今日に於いてもなお今後の 「農業法 研究に関する 」 , 重要な啓示, 指針たることを失わないであろう, 以下 「農業法」 に関し, その概念について考察しよう。.

(3) . 遠藤順三: 「農業法」 の概念について. 「農業法」 の意義 「農業法」 と云う 法律用語は, 先述 した事情からして未 だ充分に熟さない許りでなく, 諸外国に 「 於いても我 が国に於いても種々の用語例 が存する。 例えば我が国に於いて も , 或いは 農業法律」, 「農業法規」,「農業立法一 等と称せられ, 未だ決定的な用語は存 在しないが, ここでは 「農業法」 と 云う 語 を 以 っ て 代 表 語 と す る こ と と す る. な お, 諸 外 国 につ い て 見 る に, ドイ ツ に 於 い て は 普 通 にLandwirtschaftsrecht と 称 せ ら れ る が, この 用 語 も 時 代 に よ り そ の 範 囲 は 必 ず しも一定 して い e と 称 せ ら れ, 更 に 英 な い. ま た フ ラ ン ス に於 い て は, Droit rural, Droit agraire ou agricol f f the farmer,Law o はL て に よ が o r 場 合 aw っ turallaw が通 常 で あ る , 米 に 於 い て はAgricul. 而 して 「農業法」 は, 先述した如く 必ず しも明確な限界 (法域) を 有する もの ではなく, その概念も学者により区々 であって, その意義に関して も未だ定説を認め得 ないが, 以下主として小林 巳智次, 橋川 渡両教授の所説 を中心に, 他の 二三の主要な学者の所説を 紹介し若干の検討を加えよう. 「 先ず小林教授は,「農業法」 とは 「農業若 しくは農業者 を特定の対象とする 法を言」い この場合 特 定の対象とする」 とは,「単に何等かの関係を有する というに止まらず, 必ず, 農業の特殊なる性質 に基き発生す可き 身分的乃至財産 的, 若くは社会的乃至経済的事情を積極的に維持助成し, 若くは 消極的に防止除却することを目的とする, 法律秩序の樹立 を当面の機能 となすことを指す」 のであ 「 り, 更にこの法は,「従来の法律 学が公私の諸系統 に分化発達 したるに対 し」, その何れにも専属せ ず, 各法系に多少の 差こそあれ関連を有するものであるが, 就中, 行政法及び民法と緊密なる連繋 を有するもの」 であって, 労働法或いは経済法等と軌を一にし,「思想上旧法学の原理に対 し何等か 「 的の分類や機構と相容れ の批判的立場にあり」 , 従 っ て その 系統組織等の点に就ても, 勢い伝統 ざるもの」 であって,「形式上ならびに実質上その本質従って領域に就いて 尚 ほ 幾多の困難なる未解 決の問題 を有すると離ども, これが独立の法域を樹立す可き 必要と可能性とは充分に存在すること. the f arm も用 い ら れて いる.. 「未 だ 統 一 法 典 な・く 種 々 の 単 行 法 と は 明 ら か」 であ る が, 当 面, 我 が 国 に 於 け る 「農 業 法」 は, ,. 慣習法の他 に, 各種の公私法令より, 時代に適応すべき農業的性格を帯ぶる規定を綜合 して, 之に 1 ) 統 一 的 系 統 を 附 与 せ ざ る を 得 な い 実 状 に 在 る」 と して 居 ら れ る, {. 「 次に橋川教授は,「農業法」 は 「農民の準則として 農業活動の関係 を律する法」 であり 多く私法 関係に帰する」 もの であるけれども,「農業活動 には特殊の色彩を有す る為に尚この私法関係 には協 「 同主義, 保護主義, 干渉主義 を採ることとなるから」 これらを基礎とすれば 農業法」 は単なる公 私両法の併立関係ではなく, 労働法とならんで 「公私混靖融合の特別 法域を形成する もの」 であっ て, そ の 法 的 性 格は,「私 法 よ り 出 でて 公 私 法 融 合 の 法 域 を 開 拓 しつ つ あ る も の」 と さ れ, 云 は ば公 2 ) 私法 融合 説 を 主 張 して 居 ら れ る の で あ る. {. 次に野間海造氏は,「農業法」 とは 「農民及び農業を直接の対象とする法の 一団である」 とし, こ の 法 は 「農 に 於 て ま と め ら れ, 農 の 色 彩 に よ っ て 特 色 附 け ら れ た 特 殊 法 の 集 団」 であ り, 更 に そ の. 法 的性格と して,「農業法は 公法私法何れかの 範噂に立龍るに非ずしてその両者にまたがり」, また 法形式上は,「種々の単行法の中 に若くは特別法を以て断片的に散在 して居る」 と して, 一種の公私 3 ) 法併立乃至併存説を主張されている. { 「 次に樋田豊 太郎氏は, 農業法」 は広狭ニ義に解するを相当とし,「専ら農業の為め に存する法制」 「 及び 「主として農業の為め に存する法制」 を以って狭義の 「農業法制」 となし, 更に 農業にも必 ず関係ある法制」 を加えて広義の 「農業法制」 と称するを可とする とされ, その内容は一切の公私 法を含む如く である. ◎以上樋田氏の所説はあくまでも現法体 系を基礎 として, 主と して農業と法 2.

(4) . 遠 藤順 三 : 「農 業法」 の概 念に つ い て. 制の関係を論 じたもの であり, その法域如何乃至法体系の確立如何に関して は 必ず しも論じて居 , ら れ な い 様 に 理 解 さ れ る.. 次に土屋栄一氏は,「農業法」 とは 「農業及農業を通して農業者に交渉ある 法」 ◎或いは農 業及び 農業者を 「対象とする法」 を云うとさ れ, 更に以上の 「対象とする」 とは 単に何等かの関係を有 , すると云うのみ ではなく,「農業及農業者を身分的, 財産的, 或 は社会的 経済的 政治的 必要よ , , , り積極的に保護, 助長することを目的とするか, 又は消極的に農業の秩序を維持することを目的と するか, 若くは農業を通して農業者に交渉あることを目的とするもの である」、と述べて居られる . そして要するに 「農業法」 は,「農行為及その隣接経済行為の結合反覆せる農業及その農業 を通 して 農業者に交渉ある法となすことが出来る」 とさ れているの である, { 6 )以上土屋氏の所説は全体とし て前掲小林教授説の強い影響がぅかがはれる. 即ち 「農業若くは農業者を特定の対象とする 法 (小 」 「 林教授),「農業及農業者を対象とする法」(土屋氏) , 或い は 農 業の特殊なる性質に基き発生す可 き身分的乃至財産的, 若くは社会的乃至経済的事情を積極的に維持助成し云々」(小林教授) に対す る土屋氏の説述等 である. また氏が 「隣接経済行為の結合反覆せる農業云々」 と述べておられるあ た り は, 明 ら か に 「商 法」 か らの 影 響 が 見 ら れ る の で あ る.. 更に以上の他に増田福太郎氏の所説が挙げられよう, 氏によれば 「農業法」 とは単に農業に関す る法ではなく, 農業者の 「協同態に関する法」 であるとされ, 農業団体と農地に関する立法を以っ てその中心的存在と しておられる. またその法的性格と しては,「農業法は行政法を父とし 民法を , 母 と して, 公 法, 私 法 の 界 線 に 生 み 落 した ば か り の 嬰 児 で あ る」と 述 べ て お ら れ る の で あ る ( ) 以上 7 。. 増田氏の所説は,「農業法」 をもっ て農業者の 「協同態に関する 法」 であるとさ れる点は 法律関係 , の 「協同主義」 を主張される橋川教授説に相通 じるものがあるが, 農業団体と農地に関する立法を 以って中心的存在とする点は概念上やや狭きに失する であろう. 然しその法的性格に関する説述は 誠に軽妙にして, 行政法及び民法との緊密な連繋を主張される小林教授説と合わせて 興味深いもの があるが, 表現がやや比職的に過 ぎ,「界線に生み落した」 とは所謂公私法併立か 公私法融合かが , 必ずしも明確 でない点に難があると云うべき であろう 以上 「農業法」 の意義に関し六氏の説を紹 . 介し, 若干の検討を加えたの であるが, これを要するに,「協同態に関する法」 を主張さ れる増田氏 説を除き, 各説共およそ何等から意味に於いて農業及び農業者 (農業活動 橋i -教授) に関係を有 , - する, 或いは対象とする法を指 称するとされる 点 で は 共 通 して い る と 云 っ て よ い で あ ろう. ま た そ の法域乃至法的性格に関しては大略三つにこれを整序 し得る であろう 即ち公私法融 合説を主張さ , れる橋川教授, 公私法併立乃至併存説 を主張する野間氏に対し, 旧法理に対して批判的立場に立つ 独立の法域を主張される小林教授の所説は, 社会法説とも云う べきものであろう , しからば 「農業法」 の意義, その法域乃至法的性格に関し, 以上三説中いず れに拠るべき であろ うか. 先ず公私法併存説について見れば, 従来の観念によっ て公法私法に法を分類するならば 成 , 程農業関係法中には明らかに公法的なものと私法的なものとが存する 例えば 「農業法」 構成概念 。 の中核たる農地所有権, 或いは 「農業協同組合法」 による経済活動は正に私法関係に属 するもの で あり, これに対するに 「家畜伝染病予防法」,「農薬取締法」 等防疫, 取締りに関する法規は明らか に公法関係に属するものである. 然し以上を以って直ちに 「農業法」 は公私法併存の法域とみなし てよいものであろうか. 試みに明治維新以来の農業関係立法を一瞥しても 大正10年の 「米穀法」 , , 昭和8年の 「米穀統制法」, 昭和12年の 「糸 価安 定施 設法」 或 い は大 正13年の 「小作調停法」 等 の小作関係立法, 昭和13年の 「農地調整法」 等の農地開係立法等一連の立法は いずれも日本農業 , が持つ制約的構造とも云う べき小農経営維持の為には 単に私法規定のみをもっ てしては到底充分 , にその目的を達成し得ないところから, 公法的形態の法規を加えて以上の 「農業法」 を構成せざる 3.

(5) . 遠藤順三; 「農業法」 の概念について を 得 な か っ た 事 情 を如 実 に 示 し て い る も の と 云 う べ く, 従 っ て 以 上 よ り す れ ば,「農 業 法」 内 部 に お. ける私法的規定, 公法的規定の存在 を以って単なる併立乃 至併存と解する野間氏説等は, あまりに 8 } も両者の密接関係を軽視するものと云はね ばなるまい.( -一 前述の如く教授の所 説は社会法説とも云う べきもの であるが--につい 次に小林教授の所 説- t social,social l aw概念 の形成に関し, 多大の て 見 れ ば, 近 時 に 於 け る 社 会 法Sozialrecht , droi. 影響をあた えたのは, 抽象的人格者 を基礎とする在来の個 人法に対して, 現実的具体的な社会的存 在者としての 人間を基礎として, これを規制対象とする法秩序 をもっ て社会法と称するラードブル 9) の所説であろう. 而 して以上の所説は, 第一大戦後, 従来の 1878-194 フ Gustav Radbruch ( 市民秩序に対して社 会的弱者保護のため, 国家が経済社会乃至産業社会 に積極的に介入する必要あ りとする, ドイ ツを 中心に一般化 した思想を背景として 成立したものであり, 更に以上のラー ドブ ルフ説は, その後時の 経過に伴い, 社会法を以っ て主として労働法, 経済法及び社会福祉乃至社会 し, 在来の市民法秩序に対 保障等に関 する諸法規を中 心に, 現実の人間の経済的社 会的地位に注目. す る 修 正 法 域 を 指 称 す る と 解 さ れ る に 至 っ た の であ り, こ の 点前掲小林教授が,「農業法」 を以って 公私法 「何れにも専属 せず」,「旧法学の原理に対し何等かの 批伴的立場にあり」 として, 独立の法 域 を 主 張 せ ら れ る の と 軌 を 一 に す る と 云 っ て よ い であ ろ う. 然 し 小 林 教 授 の社 会 法 説 に つ い て は,. 現在社会法に関 して一応の概念規定はなされてい るものの, それ自体未だ不明確であり , 又その体 、 系如何について も定説を見るに至 っていない実状から, 社会法説に拠ることは今後早急な農業法秩 序の樹立を目指す限り,「農業法」 体系確立のためにも 必ず しも適切とは云い難いと思われる. 然し 以上の小林教授の所説中,「農業法」 は公私法いずれにも属さずとされながらも, 各法系特に 「行政 法及び民法と緊密 な連繋を有す」 とされておられる点は, 今日農業 が他産業と種々の交渉を有し, 従って農業者と他産業従事者及び其の他の国民との間に, 多様な接触関係を生ずるこ と, 及び国家 が農業乃至農業者に対する各種政策 を, 常に立法の形式によって実施することを考え合わせる時, 正に農業の現状に即 し,「農業法」 の令後に於ける性格を指摘するものとして注目に値いするであろ つ.. 以上に対 し橋川教授の公私法 融合説は,「農業活動」 における 「特殊の色彩」 からして 「農業法」 は 「協同主義」「保護主義」「干渉主義」 を以ってその基調とし,「私法より出でて公私法融合の法域を 開 拓 しつ つ あ る も の」 と さ れ て い る. 確 か に 農 業 関 係 法 に 於 い て, 協 同, 保 護, 干 渉 い ず れ を と っ. ても農業政策上重要 な基調をなすことは言をまたないところであるが, その要因たる 「農業活動」 における 「特殊の色 彩」 に関しては, 次項に於いて後述する如く, 今日に於ける農業活動の とらえ 方としては消極的にす ぎ至当とは云い難い. 然し 「農業法」 の法域乃 至法的性格に関 し,「公私法融 合の法域を開拓 しつつある」 とされる点は, 今後に於ける 「農業法」 体系確立の現実に即 した主張 9 〉 と して 注 目 す べ き で あ ろ う.{. 以上を要するに, 筆者は 「農業法」 とは 「農業若くは農業者を特定の対象とし, 更にその農業活 動及び経済活動の関係を規律する法 を云う」 と考えたい. またこの場合特定の対象とすることの意 義に関しては, 先述 した小林教授説に従う ものである. 更にその法域乃至法的性格については, 公 法私法いずれにも専属せず特に 「行政法及び民法と緊密なる連繋を有 し」(小林教授説) -- 「農業 法」 の現状より出 発 して早急にその法体系の樹立 を目指す限り-- 「公私法融合の法域を開拓しつ つある もの」(橋川教授説) と規定したい. 蓋し 「農業法」 を以っ て 「公私法融合の法域」 にありと 規定 しても, それはあくまで資本主義経済体制を基盤とし, その内部に於ける一法系として, 現法 秩序乃至旧法学の原理に対する批判的意義を充分に包含せ しめ 得ると信ずるからである. 註 の 小林巳智次 「農業法」32一36頁 昭和10年 日本評論社 4.

(6) . 遠藤順三: 「農業法」 の概念について ( 2 ) ( 3 ) ( 4 ) ( 5 ) ( 6 ) ( ) 7 ( 8 ) ( ) 9. 橋川渡 「農業法の法域に就て」 76頁以下 (農業経済研究第十一巻第一号) 岩波書店 1頁以下 (現代法学全集第28巻) 昭和5年 日本評論社 野間海造 「農業法」 31 樋田豊太郎 「日本農業法制」 上 4-5頁 昭和3年 市谷書院 土屋栄一 「農業法概論」 まえがき 昭和14年 巌松隆書店 2頁 前掲土屋栄一 「農業法概論」4 0頁, 4 増田福太郎 「農業法律講義」 参照 前掲橋川波 「農業法の法域について」 参照 橋川教授は農業における経済活動に関し, その 「非営利性」 を強調されている。 (橋川渡 「農業法の本質とその帰麹」 農業経済研究第十巻第二号2頁以下参照). 農業乃至農業活動及びその経済的特質 以上の如く 「農業法」 を以って農業若くは農業者を特定の対象とし, 更にその農業活動及び経済 活動の関係を規律する法を云うと定義する限り, 次に農業及び農業者についてその意義を確定する 必要がある.◎ 而して以上の確定に当り, 先ず以っ て農業乃至農業活動及びその経済的特質につい て ふ れね ばな る ま い.. 農業とは一般的に作物の栽培又は家畜の飼育を通 じて行われる生産活動 であると云っ てよい. 換 言すれば, 農業生産は云はば自然の恩恵によ って作物や家畜 が生育し, 繁殖する過程を通じて行わ れる生活動であると云うことが出来よう. 従って農業生産は常に自然の強い制約の下に置かれてい るのであって, この事が農業生産乃至農業活動を著しく特徴ずけているのである. 以上に関して前掲小林教授は,「農業の 主なる特質をあ ぐれば, その先天的方面にては, 自然力に 支配せらるること多く, 従って季節的繁閑を生じ, 分業と機械化が限定せらるる」 また経済的には 「比較的資本主義的発展に適応せず 従っ て現代経済組織に於ける落伍者となり易く これがため , , n ) 又前述 した如く, 農民階級の政治的法律的地位を制約する根本要素となる」 と述べて居られる.( 農業活動に於ける 「特殊の色彩」 を主張せられる橋川教授は,「農業の最も普通なる形態は, 農民の 労資の投下により土地及び自然を利用 して植物性及び動物性の食糧品並に原料品の生産をなし, 又 こ れ に加 工 して こ れ を 売 却 す る こ と を以 て 業 と す る も の で あ る」 とさ れ, 以 上 よ り して 農 業 を そ の. 生産と云う点から見れば, それは工業生産と異なり,「天候, 気温, 湿度, 土壌等の自然影響に左右 されつつ生育には又時間的制限を受ける. 生産の対象たる動植物も亦これ等環境によく適合しなけ ればならぬ. 且つ我が国農業は極めて小規模に組織せられ自家労力の報酬に生きむとするである」 とされ, 更にその,「生産物の売却と云う点に見ても, 農業に於ては農業者みづからの収獲せる生産 物自体が既に量に於て限度があり, 従って売却物にも亦量的に限りあり, 故に商事現象に於て, 営 利と云うことを前提とすることによって通常備わる性質たる取引の集団性, 反覆性ということは農 業者の取引には殆んど見られない所である. 取引が集団反覆されてこそ商的色彩を帯びて業務が益 益営利化されて来るのに, 農業取引の如き単行為 (非反覆性. ) の ものが如何 でか営利的と云い得よ 1 2 ) う. 」 と して 農 業 に於 け る 経 済 活 動 の 非 営 利 性 を主 張さ れ て い る の で あ る。(. 而して以上の所論のうち, 農業生産に於ける自然的 条件, 乃至農業それ自体よりする必然的特色 に関する限り, 現在に於いても何等変るものではないが, 其の他の諸点, 特に経済的側面からする 特質に関し, 橋川教授の云はるる農業の非営利性等の所説は, 今日に於いてそのまま妥当するとは 思考し得ない。 即ち橋川教授の以上の部分に関する主張は, 明らかに歴史的所産として, 当時 (昭 和10年前後) に於ける農業の経済的地位, 或いは技術的レベルを背景として述べられていることを 考慮すべきであると思う。 現在に於いては, 既に昭和36年6月 「農業基本法」 の制定を見, またこ の法の制定自体, 農工間に於ける所得格差の増大と云う新情勢に対応 して, 「農業の自然的経済的.

(7) . 遠藤順三: 「農業法」 の概念について. 3 ) ことを意図したものであること 社会的制約による不利を補正 し一「農業の近代化と合理 化を図る」0 考え合わせるとき, 農業乃至農業活動及びその経済活動を以っ て 「非営利」 或いは 「資本主義的発 展に適応せず」 等と規定する実益はもはや認められない であろう. 即ち後述する如く, 今日に於 け 1 4 ) としての性格と実 質を有するも る農業乃至農業活動及びその経済活動は,「農を本体とする企業」{ の と云:う べ き で あ る. 註 ( 1 の 前掲土屋栄-.氏は 「農業法」 を解釈する前提として農, 農業者の概念を明らかにする必要があるとされて いる。 (前掲 「農業法概論」 6頁) 9頁 ( 1 1 ) 前掲小林教授 「農業法」3 1 2 ) 前掲橋川教授 「農業法の本質と其の帰趨」 2頁-4頁 ( 「前文」 1 3 ) 「農業基本法」 (昭3 6法1 27) ( 回 前掲樋田豊太郎 「日本農業法制」 上3頁. 農業及び農業者 農業の意義に関し, 前掲小林教授は,「農業とは, 農行為, すなわち, 耕種養畜又は両者を兼ね, 土地の生産力を直接 に利用する行為, 及びこれに附随して, その 生 産 物 を 直接加 工 する が如き行 1 5 } とされている. 確かに狭義に於ける農業は, 土地の生産力を直接に 為を目的と為す業務をいう」( 利用する所謂農行為を以っ てその中核とすることは異論はないが, それは先に 「農業乃至農業活動 及びその経済的特質」 の項に於いてふれた如く, 我が国の農業は, 沿革的に見て 「比較的 資本主義 的発展に適応せず」(小林教授) 或いは農業生産の 「非営利性」 を主張される橋川教授の所説の如く, 過去に於いて明らかに時代の経済組織乃至活動におくれる傾向を有していたとはいえ, 今日, 特に 将来の農業に関 し, 以上の如く云わば閉鎖的乃至消極的にとらえるべきではないであろう, 従って かかる見地からすれば, 農業とは 「農行為及び之に附随せる経済行為の結合反覆」 であるとされる 1 6 } 並びに,「農業は即ち単なる農行為ではない. 農行為を基本とし之に附随する諸種の 前掲土屋氏,{ 行為 (工行為, 商行為) を併せて一の企業を成す」 のであっ て, 即ち 「農業は農を本体とする企業 mの意見は正に注目に値ぃするものであろう. 更に筆者は現在の農業が なり」 とされる前掲樋田氏( 「 8 1 )その行為が農業者によって営利を目的として反覆さ 少くとも業たる以上, 商法」 に於けると同様{ れる限り, その 「附随する経済行為」 或いは 「附随する諸種の行為」 の範囲も, 生産物の直接加工 等に止まらず,「農を本体とする企業」 の目的--農業をもっ て自立, 高生産性の企業たらしめる目 的--自体から現実に必要なりや否やの規準による べきではなく, 更にその目的を害せず且つ目的 達成に資する限りにおいて, 出来得る限り広く解す べきであると思う, 次に農業者の意義乃至範囲に関しては, 上述の如く農業を以って企業と解する以上, 農業者とは 即ち農企業の主体を云い, 更にこの場合農企業の主体とは, その営業より生ずる権利義務に関し, 直接自己に帰する者を指称することに成るが, この点に関 しても, 先述した農業に於ける農行為の 場合と同様に, それはあくまでも農業者の中心的存在にす ぎず, 小林教授の云われる如く,「単に農 1 9 ) 及び, 農業 業従事者のみならず, 農業経営に 必要なる土地其他の要素について権利を有する者」( 労働者即ち,「労働契約に基き傭主たる農業経営者と法律的に結 ばるる者」◎ をも包含すべき である. 而 して以上の農業従事者及 び, 農業経営に必要な土地其の他の要素について権利を有する者が, 具 体的に何を指すかに関し, 現行農業法令中 「農業近代化資金助成法」(昭3 6法202) 同 法施 行令 (昭 「 36政令346) 04) 同 法施 行令 (昭36政令348) に規定さ れて 6法2 , 及び 農業信用保証保険法」(昭3 いる如く農業を営む者 (狭義の農業者) の他, 農業関係法人 (公法人, 私法人) , 組 合, 農 業関係 2 1 ) 而して以 団体 (権利能力なき社団) , 農 業関係 企 業 (会社) 等をも含むものと解す べきである.( 上の如く農業及び農業者の意義乃至範囲に関し, 積極的に広く解さんとする所以は, かかる理解を.

(8) . 遠 藤順 三 : 「農 業法」 の 概 念につ い て. 敢えてすることが, 農業と他産業, 農業者と然らざる者, 特に商人と云っ た者との経済的接触連繋 が著しく増加 した昨今に於いて, 相互間に於ける円満な経済的発展のために, 将来に向っ て必ずや 実益を現わすものと確信するからである. 註 ( 1 5 ) 前掲小林巳智次 「農業法」37頁 ( 1 6 ) 前掲土屋栄一 「農業法概論」 7頁, 土屋氏は更に 「附随せる経済行為とは種子及び肥料の買入, 生産物の 販売行程等を云うのであって, 農行為と之に附随せる経済行為が相集まって経済をなし結合反覆をなす時, 之が農業である。 故に農行為だけあれば之が経済行為であっても農業とは云えない」 とされるのである, ( 1 7 ) 前掲樋田豊太郎 「日本農業法制」 上3頁 ( 1 8 ) 「商法」 に於いて 「業とする」 とは, 営利の目的をもって同種の行為を継続的かつ集団的になすことを云 い, この場合その行為を反覆する意思と, 営利の目的の存在が要件とされるのであるが, 農業に於いてもこ の点同様に解することが出来るであろう. 1頁 Q 9 ) 前掲小林巳智次 「農業法」13 ) 前掲小林巳智次 「農業法」136頁 ( 2 0 ( 2 1 ) 「農業近代化資金助成法」 第二条 (定義) 及び 「農業近代化資金助成法施行令」 第一条 (農業者等) 並び に,「農業信用保証保険法」 第二条 (定義) 及び 「農業信用保証保険法施行令」 第一条 (農業者等J 参照,. 農業法の法源 t な る 語 は, 法 の 内 容 を認 識 す る 為 の 材 料 法 源source oflaw, Rechtsouelle, source du droi. を意味する語として用いられる場合もあるが, 一般的には法の存在形式を指称する語と解されてい る. 而して後者の意味か らすれば, 法源は普通一定の政治的, 経済的, 社会的目的実現の手段とし て, 一定の機関, 所定の手続, 形式に従って定立さ れた制定法 (成文法源) と, 一定の機関, 手続, 形式によって定立されることな しに, 社会生活そのものの内より生じたろが故に, 非制定法 (不文 法源) と総称せられるものに大別される。 そして前者は更にこれを憲法, 法律, 命令, 自治法等に 分か, 後者はこれを慣 習法, 判例法, 条理に分かつことが出来よう. 而して 「農業法」 に於いても これ等各種法源を認め得るのであるが, 他の法系に見られる如く, 未だ統一法典を有せざるが故に, 各種法典並びに其の他の単行法の規 定中に 制定法とし ,ては勢い農業に関す る既存の単行法の他に, こ れ を 求 め ね ばな ら な い. ← )成文法源. 「日本国憲法」 の場合 直接農業を対象とした規定条文 は存在しない 然し憲法中「国」 , . 9条) 及び結社の自由に関する規定 民の権利及び義務」 に関する規定 辺) 「財産権の保障」(憲法第2 (憲法第2 1条) 等は明らかに 「農業法」 の基礎的規定と見ることが出来る。 また憲法に直接附属し (昭25法100) は, 国 民, 従っ て農業者の て い る と 云 っ て も過 言 で は な い と 思われる 「公職選挙法」 政治的発展に多大の関係を有する事は明らかであり, 将来ますますその意義は増大するであろう. 憲法. 法律--法律即ち国会制定法中には, その規定の一 部に農業に関する 規定を置くものも多く, 又 特に農業のみを対象として制定された単行法 (固有の 「農業法」) が近 時増加の傾向を示している. 先ず 「民法」 は私法の一般法 (普通法) として,「農業法」 の基礎をなすものである. 即ち農業者 も国民の一員たる以上,「民法」 に規定された財産的, 身分的規定は, 当然農業者も一個の私人とし ) 及び債権 てその適用をう けることは云う迄もない, 而 して特に物権法中永 小作 権に関する規定,鰹 }等, 農業に直接関係を有する部分も包含されている. ) 雇傭に関する規定鮎 法中賃借に関する規定,伽 )の他,「民法」 の附属法たろ 「民法施行 又更に入会権に関し各地方の慣習による べき旨定めた規定伽 「 2法24) もまた農業に関係ある部分を 1法11) 法」(明3 , 或 い は特別 法としての 不動産登記法」(明3 有する. なお 「農業動産信用法」(昭8法30) は固有の 「農業法」 たるのみならず,「民法」 の特別法.

(9) . 遠藤順三: 「農業法」 の概念について. たる地位をも有する。 次に 「民法」 の特別法たる 「商法」 は, 農業上の商事的基礎を示すもの であり (商人, 会社 商 , 行為中の売買, 運送, 寄託等) 先 に農業及び農業者 従 て べた 項に の 於 述 各種の 会社法 人 いて っ , (農産物加工, 貯蔵, 販売, 受諾業等) , 及 び農 業組合法人等の農業生産法人の組織 粒びに経 営に 関 して常に必要な規定を供給している. また 「家畜取引法」(昭31法123 ) 「家畜商法」 (昭24法2 08) 「農業災害補償法」(昭22法185)姥 「 の等いずれも 商法」 の特別法たる地位に立つ もの である . 次に公法に眼を転ずるに, 先ず 「刑 法」 は直接農業問題を取 り扱っ てはいないが, 水利犯罪に関 8 月ま云うに及ばず, 農民運動に伴う諸種の犯罪 (集団行動域いは脅迫等) は当然 「刑法」 する規定姥 及びその附属法令によって律せらるべきもの であり, 従って 「刑法」 及びその附属法令は 農業の , 刑 事的基礎法 (刑事的一般法) たる地位を有するものである. なお 「森林法」(昭26法24 9 ) 第8 章 罰則に関する規定は, 森林に関する特別刑 法と して, 森林に関する犯罪と刑罰を規定するものであ }森林放火◎其の他農山村生活と密接な関係を有する刑罰法規を るが, その内容と しては森林窃盗㈱ 包含しており, いずれも 「農業法」 の関係法源たるもの である, 又更に民事及び刑 事の訴訟法が, 訴訟手続に関する原則として農業上の争訟に適用されることは云う迄もない. また 「行政法」 は, 丈れ自身統一法典 を有 しない点に於いては 「農業法」 と同様 である 而して . その内容を構成する多数の単行法は, 直接又は間接に農業と相接触す るものが極めて多いのみなら ず, 先に農業法の意義の項に於いて述べた如く, 国家が農業乃至農業者 に対する政策を常に立法の 形式によって実施するところから,「行政法」 中には特に農業を対象とするもの即ち, 固有の 「農業 法」 の 領 域 に入 れ る べ き も の が 特 に 多 い. こ こ に そ の い く つ か を 揚 ぐ れ ば,「国 家 行 政組 織 法」(昭23. 法120) をは じめ, 地方制度に関する 「地方自治法」(昭2 2法67) 更には各種税法,「河川法」(明29法 71)「土地収用法」(昭26法2 19) 等の 行 政 各 法は農業と直接又は間接に関係を有することは云う迄も ない. また行政部門 (狭義に於ける) に属する固有の 「農業法」 と しては,「農業協同組合法」(昭22 法132) 及 び附属法令,「農業委員会等に関する法律」(昭26法88) 及び附属法令,「食糧管理法」( 昭17 「 法40),「農産物検査 法」(昭26法144) 6),「肥料取締 法」(昭29法127 ) , 家畜伝染病予防法」(昭26法16 , 「農薬取締法」(昭2 3法82),「植物防疫法」(昭25法 15 1) 等その数は甚だ多い. なお地方公共団体が 制定する 「条例」 も, その所管事項として産業の保護奨励或いは生産物の検査 事務に関し定める場 合 があ り, 従 っ て 「条 例」 中 に も ま た 「 農 業 法」 の 法 源 た る も の が 存 す る .. 次に以上の行政部門に属する農業関係法を除く, 固有の 「農業法」 たる性格を有す単行法として 「 主要なものをあげれば 0 , 先ず 農業基本法」(昭36法 127) をあげね ばならない. この法律は昭和3 年以降に於ける日本経済の著しい発展に伴い, 農業と他産業部門との間に生 じた生産性及び所得の 格差増大, 農産キ劾肖費構造の変化, 他産業えの労働力移動の増加と云っ た農 業に於ける新情勢に対 応 して, 農業政策の向う べき方向を示すと共に, 国家の農業に対する今 後の施策を義務づけたもの である. 次いで農業の組織に関する前掲 「農業協同組合法」 及び 「農業委員会等に関する法律」(こ れ等は行政部門に属すると共に固有の 「農業法」 たる性格を有する) の他, 主として農業の振興助 成に関するものとして,「農業改良助長法」(昭23法 165 ),「耕土培養法」(昭27法 235),「主要作物種 子法」(昭27法 13 1), 更に農業各部門の振興措置をはかるものとして 「酪農振興法」(昭2 9法 182) , 「家畜改良増殖法」(昭25法 2 09),「果樹農業振興特別措置法」(昭36法15) 等があり, また農業の地 域的整備振興に関するものとして,「農業振興地域の整備に関する法律」(昭44法58), 農業以外の条 件との関連に於いて地域的振興を目指す 「農村地域 工業導入促進法」(昭4 6法 112) 及び , 以上に関 連して発生の可能性を有する公害に対応すべき 「農用地の土壌の 汚染防止等に関する法律」(昭45法 139) 等が挙げられる. 次に資金融通等金融に関す るものとして,「農 林漁業金融公庫 法」(昭27法.

(10) . 遠藤順三; 「農業法」 の概念について. 355),「農林中央金庫法」(大12法42) の他,「自作農維持 資金融通法」(昭30法 16 5),「農業改良 資金 助成法」(昭3 「 1法 102),「農業近代化資金助成 法」(昭36法 20 2), 開拓者資金融通法」(昭22法6) , 「天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置法 (昭30 法 136) 等を挙げる 」 ことが出来る. 次に農作物の需給, 出荷並びに価格安定に関するものとしては 「農産物価格安定 , 法」(昭28法 225 ),「飼料需給安定法」(昭27法 356),「畜産物の価格安定等に関す る法律 (昭36法183) 」 , 「加工原料乳生産者補給金等暫定措置法 (昭40法 1 12),「砂糖の価格安定等に関する法律」(昭40法 」 109) 及び 「繭糸価格安定法」(昭26法 3 10),「卸売市場法」(昭4 6法35),「野菜生産出 荷安定法」(昭 41法 103) が挙 げ ら れ る。 註 姥の 「国民の権利及び義務」 に関しては 「日本国憲法」 第三 車こ規定されている そのいずれの条文も 「農業 , 法」 の法源として関係を有しないものはないが, 本文に掲げた条文以外では特に第1 1条 「国民の基本的人権 の享有, 第12条自由, 権利の保持の責任, 濫用禁止, 利用責任 第1 条個人 3 の尊重と公共の福祉 , , 第18条奴 隷的拘束及び苦役からの自由 , 第19条思想及び良心の自由, 第25条国民の生存権, 国の社会保障的義務, 第 26条教育を受ける権利, 教育の義務, 第30条納税の義務, 等の規定は 「農業法」 の基礎的法源と見ることが , 出 来る。. ( 2 3 ) 例 圏 解 ) 例 ( 2 8 ) 鰹 ) ) 例. 「民法」 物権第5章第27 0条--第2 79条 「民法」 債権第2章 第6 1条--第6 0 2 2条 「民法」 債権第2章第6 23条--第64 1条 「民法」 物権第3章 第26 3条, 第6章第2 94条 「農業災害補償保険法」 の保険事業に関する部分は 「商法 の特別法たる地位に立 つ. 」 「刑法」 第10章溢水及び水利に関する罪 第11 9条--第12 3条 , 「森林法」 第19 7条, 第1 9 8条, 第2 1 2条 「森林法」 第89条. に )不女法源. 「判例法」 は 裁判所に於ける判決に由来することは云う迄もない この場合判決は具 体的事件 , 。 に関し, 主として特定の権利義務の関係を確認するものであっ て 原則的には一般的な法規たる性 , 質を有しないもの であるが, その判決中に内在する合理性は 同一の或いは類似の事件に対し同一 , の 判 決 を下 さ しめ る 効 力 を も つ かく て 裁 判 所 に よ っ て 類 似 の 判 決 がく り か え さ れ る と そ こ に 自 。 ,. ら 「判決法」 として抽象的一般的な規範が確立され 社会一般もこれに順応して行く様に成るので , ある. 即ち換言すれば, 裁判判決は, 法の解釈適用を通じて抽象的一般的な成文法規を具体化 して 行く の であ っ て, こ れ がく り か え さ れ て 「判 例 法」 と して の 効 力 を 持 つ に 至 る の で あ る .. 而して以上に 関しては農業関係の判例に関しても例 外ではないが 「農業法」 の法源としての 「判 , 例法」 は, 個々の農業関係法規の解釈適用を通じて夫々具体的妥当性を指示 すると云う点に於いて 重要である許り でなく, 今一つの重要な意義を有することに注目せね ばならない 即ち農業上その . 地域社会に於いて多大の効力を認められている慣習が -たんその均衡を破って争訟の中心問題と , 成った場合, 裁判官は法令のみならず, 判例法及び学設等を援用 して判 決を下すことに成る であろ う が, いずれにもせよ争 訟の中心問題となっ た慣習に関し 如 何なる範囲に於いてこれを認定する , かが最も重要な問題 であり, その認定 (即ち判決) によって当該慣習は具体化せられ 一つの 「判 , 例 法」 と して 確 定 せ ら れ る こ と であ る 従 っ て こ の 種 の 判 決 ひ い て は 「判 例 法 (農 業 関 係 の) も , 」 ,. また 「農業法」 の法源として重要な意義を有するのである 。 次に 「条理」 についても, 我々の 理性によって判断される物事の筋道は 法律の規定や契約の内容 , を解釈する標準となるだけ でなく, 法規も慣習も裁判前例も存在せざる事項に関し 独立に裁判の , 規準と成り得ることは云う迄もない 更に例えば 「成文法」 が存在してもそれが相互に予 盾する様 , . 9.

(11) . 遠藤順三: 「農業法」 の概念について. な場合÷÷それはしばしば起り得ることではないが--其の統一的 合理的解釈を導き出す為にも重 「 「 贈りりをは たすであろう, そして以上は単に成文法のみならず, 判例法」 相互, 慣習法」 相当, 要な役 或いは 「成文法」 と 「判例法」 乃至 「慣習法」 相互間に於いても同様であり, その調整が事訟の中 「 心問題と成っ た場合等は、「条理」 のはたす役割りは特に重要であり, 以上からして 条理」 もまた 「 「農業法」 の補充的法源としての意義を有する と云う べきである. 更に 慣習法」 は本来慣習に由 来し, この場合の慣 習とは社会生活に於いて事実上の慣行が反覆して行われ, 或る程度迄一般人ま たは特定職業乃 至階級に層す る人びとを規律するに至っ た社会規範の一つ であり, 農業上に於いて 「 もこの様な社会規範が古くから多数存在していることは云う 迄もない. これ等は法律上一般に 事 実たる慣 習」 と称せられ, 更にこの 「事 実たる慣 習」 が, 社会の法的確信によって支持さ れて, 法 規範と しての 実体を備え, かつ法規範と して妥当す べき効力意思がその中に現れるに至っ た時, こ 「 れを 「慣習法」 と称するのである. 而して或る農業上の 争訟に対 し, 以上の 慣習法」 に基いて裁 「 判 が行われる場合, その存在や内容が時と して不明瞭な 慣習法」 を, 裁判判決が如何なる範囲に 於いて認定するかが重要な問題である. 例え ばこれを農業上に於ける 水利慣行について見れば, 云 う迄もなく我が国の農 業は, 濯澱経営を中心とするもの であり, 従っ て水の利用は 土地の利用と共 的に に, 営 農 上 欠く べ か ら ざ る も の であ る に も か か わ らず, 土 地 の 支 配 秩 序 に 関 して は 早く か ら 法. 整備されて来たのに対 し, 水の利用秩序 に関しては何等法的に確定されず, 全く手をつけられてい なかっ たことは周知の事実である. 従っ て以上か らして水と云う自然に対する 人間の支配乃至利用 を 秩序に関 し, 長年月の間に自ら一つの 慣習を生 じ, またその慣習 に対応するそれ ぞれの社会関係 う 発生せしめ たr-それは他方或る社会関係 に対応する 水利慣習を生ぜしめ たとも云えるであろ が 「 --のである. そ してこれ が, 一度法律上乃至裁判上の問題として取り上 げられた場合は, 農業水 成 るの で 利 権」 即 ち 「権 利」 と 云 う 形 態 に 於 い て 現 わ さ れ た 規 範 関 係 と し て と り 上 げ ら れ る こ と に. あっ て, そこでは農民の自治的慣習乃至 「慣習法」 といえども, 必然的に 形式的には近代法概念に .得 な い の で あ る, そ して こ の 場 合, そ よ う て, そ の 規 範 関 係 を 論 理 的 に 構 成 す る こ と に 成 ら ざ る を. 「慣習 の 拠って立つ べきは正に水利慣習 以外にはなく, 従って裁判所 が農業上の水の 利用に関する 「 法」 を認定するに当っては, 常にその 「慣習」 乃至 慣習法」 に対応するそれぞれの社会関係, 即 水利 ち社会的存在としての水利慣習乃至水利権と, それを生んだ社会構造との 内的関連性及び農業 以外の水の利用 (都市に於ける飲料水利, 工業水利, 発電水利等) との外的関連性をも合わせて充 「 に農 分に考察した上で確定す べきであろう. 以上を要するに, 農業上の慣 習乃至 慣習法」 は, 唯 業水利関係に止まらず, 常に法令或い は判例等の 欠陥を補充する効力を有しているのであっ て, 今 「 日の農業 が正に政策の転換期, 再編成期に 在ることを考え合わせる時, 農業に関す る 慣習法」 は, 「農 業 法」 の 法 源 と し て 極 め て 重 要 な 意 義 を 有 す る も の と 云 わ ね ばな ら な い.. 結びにかえて (昭36法 127) 制定以来, 既に十数年の歳月 が経過 した. この間 昭和36年 (1961) 「農業基本法」 基本法が掲げ た, 農業と他産業間に於ける生産性及 び所得の格差是正を通じて農業従事者と他産業 従事者との生活水準均衡実現の目標は一向に達成されてい ない. 例えば農業生産性の低位に しても, その要因が我 が国農業経営現模の 零細性に存す ることを, 法自ら指摘しながらも, その規模拡大を 目指す所謂 「構造政策」 の実施は遅々として進まず, 合わ せて農業従事者と他産業従事者との生活 水準均衡実現の 前提たる所得格差の是正も又, 達成し得ない状 況にあると云ってよい. 従って以上 を要するに,「農業基本法」 は農業政策の 目標をかか げ, 諸問題に取り 組む意図は示 しながらもよく べ その解決をはかれず, 現段階に於ける我が国農業政策は正に混迷停滞の状況にあるものと云う く, 10.

(12) 遠藤順三 「農業法」 の概念について. 今後の我が国農業の発展は, もはや基本法乃至個々の農業関係法令に対する補充, 補強を以って し ては到底望み得ないことを示 しており, 従って今後における,「農業法」 の綜合的整備, 更にその体 系化を通じて抜本的改革を企図する以外, その方途はないものと云わねばなるまい. この小論は以 上の理解に基き, 我が国将来の農業をして自 立高生 産 性の 企 業 た らしむ べく, 今後に於ける 「農 業法」 の綜合的整備, 体系化を目指し, あらためてその概念如何について考究せんとしたものに他 な ら な い, あとがき 本稿以下,「農業法」 の体系如何について考究されねばならないが, この問題に関してはいずれ改めて論じたい, なおこの小論の完成に当り, 恩師小林巳智次, 橋川渡両教授の前掲論文より多くの示唆を受けた. これからの引 用に関し衷心より謝意を表したい. (本学助教授・岩見沢分校). 11.

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