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二大学が連携し既存の実習に組み込んで行った クリニカルIPEがもたらす学習経験 薬学部生と看護学部生へのインタビューに基づく質的記述的研究

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研究と報告

二大学が連携し既存の実習に組み込んで行った

クリニカルIPEがもたらす学習経験

―薬学部生と看護学部生へのインタビューに基づく質的記述的研究―

Learnings from university-collaborated clinical interprofessional education

using existing field practice structure: A qualitative study of the perspectives

of nursing and pharmacy students

佐藤可奈

1

 大塚眞理子

2

 志田淳子

2

 井村紀子

3

 薄井健介

4,5

 

菅原よしえ

2

 岡田浩司

4,5

 高橋知子

5

 渡辺善照

4,5

Kana SATO

1

 Mariko OTSUKA

2

 Junko SHIDA

2

 Noriko IMURA

3

 

Kensuke USUI

4,5

 Yoshie SUGAWARA

2

 Kouji OKADA

4,5

 

Tomoko TAKAHASHI

5

 Yoshiteru WATANABE

4,5

抄録: 【目的】クリニカル IPE における薬学部生と看護学部生の学習経験を明らかにし,大学が連携し既存 の実習に組み込む形で実施するクリニカル IPE の可能性を検討する。 【方法】クリニカル IPE を経験した看護学部 4 年生 3 名,薬学部 5 年生 3 名を対象として 2017 年 7 月~ 12 月に半構造的インタビュー調査を実施し,質的記述的に分析した。 【結果】クリニカル IPE から得られた学習経験として,「不安と配慮」「ケアと患者のつながり」「自他 双方の理解」「実践の変化」の 4 カテゴリーが得られた。これらの内容には,専門性の違いだけでなく, 両学生にとって医療系他学部との初めての接触であったこと,実習経験に差があったこと,実在する 患者の問題解決に焦点が当たっていたことの要素が含まれた。 【結論】医療系他学部との交流機会の乏しい学生にとって,既存の実習に組み込まれた IPE は実践の 変化にも及ぶ学習経験をもたらし,専門職連携に効果的な教育方法となる可能性が示唆された。 キーワード:看護学部生,薬学部生,実習,Practice-based IPE,大学間連携 代表者:佐藤可奈 東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科 〒 113-0034 東京都文京区湯島 1-5-45

Tel / FAX : 03-5803-5352  E-mail : [email protected]

1. 東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科(Graduate school of health care sciences, Tokyo Medical and Dental University)  2. 宮城大学看護学群(School of nursing, Miyagi University) 

3. 訪問看護ステーションみどり(Visiting Nursing Station Midori)

4. 東北医科薬科大学病院薬剤部(Department of Pharmacy, Tohoku Medical and Pharmaceutical University Hospital) 5. 東北医科薬科大学薬学部(Faculty of Pharmaceutical Sciences, Tohoku Medical and Pharmaceutical University)

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Abstract:

Aim: To explore the perspectives of nursing and pharmacy students on the learnings from clinical interprofessional education and to discuss the feasibility of university-collaborated education using existing field practice structure.

Method: A qualitative approach was adopted. Semi-structured interviews of three nursing and three pharmacy students, who participated in a clinical interprofessional education program, were conducted from July to December 2017. Analysis was performed using coding, constant comparison, and by observing the emerging categories.

Result: Four categories emerged, including: “empathetic understanding of anxiety,” ”revaluing the meaningfulness of own practice for the patient,” “understanding the professions of both others and oneself,” “incorporating other professional art.” These learnings were related to the characteristics of the clinical interprofessional education such as the differences in their professions, first contact with unfamiliar co-medical students, differences in their experiences in clinical settings, and focus on solving problems of real patients.

Conclusion: The learning perceived by the students suggested that introducing university-collaborated clinical interprofessional education into standard field practice could contribute to quality care as well as interprofessional collaboration.

Key words : Nursing students, Pharmacy students, Clinical interprofessional education, Practice-based interprofessional education, University collaboration

Ⅰ.背景・研究目的  保健医療福祉におけるクライエントのニーズの 多様化,各職種や組織の扱う範囲の複雑化を背景 に,効果的かつ効率的な医療を提供していく上で 多職種による専門職連携が不可欠であることは論 を待たない。先行研究において多職種による連携 は,クライエントへの安全かつ個別的なケアの提 供,各専門職のスキルの最大限の活用,より良い サービスの提供をもたらすことが世界的に示され てきた1-4)。連携の促進を図る上では,専門職連

携教育(Interprofessional Education,以下 IPE), すなわち,複数の領域の専門職者が連携およびケ アの質を改善するために,同じ場所で共に学び, お互いから学び合いながら,お互いを学ぶこと5) が不可欠であることが提唱されており6),特に専 門職としての資格を取得する前の基礎教育課程の 段階から IPE を行うことが有効であると指摘され ている7,8)。本邦でも各職種の養成課程における モデル・コア・カリキュラムや教育分野別評価に 他職種との協働に関する項目が明記され,各基礎 教育機関において取り組みが進められている。  IPE にはさまざまな方法があるが,先行研究で はスモールグループディスカッション,事例検 討,講義が多くを占めており,臨床で患者に関 与する方法は 3 割強にとどまることが報告され ている9)。本邦においては専門職連携の必要性 の教育は受けているものの,実際に他職種と共 に学ぶ機会が限定されているとの指摘もある10) IPE の教育方法の類型化の一つとして,problem-based,exchange-based,simulation-based, observation-based,practice-based の 5 種への分 類11)が示されており,実習において特定の患者 の問題解決に焦点を当てた教育方法は practice-based IPE として実際のケア提供環境に近い設定 であることから効果的な教育を提供できる可能性 がある。しかし,本邦では当該形態の教育介入の 実施とその効果の検討が十分になされていない。 また,医療系単科大学においては IPE そのものへ の障壁が大きい12)ことも相まって,大学間連携 共同教育が進められている13)中でも知見が乏し い状況にある。  これらの現状を踏まえ,2017 年 3 月,医療系 学部としては看護学部のみを持つ A 大学,医学 部と薬学部のみを持つ B 大学の二大学が連携協 定を結び,看護学部生と薬学部生の既存の実習 を活用した実習形態の IPE(以下クリニカル IPE) を行うプロジェクトを設立し,初年度のクリニカ ル IPE の効果を検討することとした。本稿ではこ

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のうち,両学部生に実施したインタビューの結果 を報告する。  本研究目的は,二大学が連携して実施したクリ ニカル IPE における薬学部生と看護学部生の学習 経験を明らかにし,大学が連携し既存の実習に組 み込む形で実施する IPE の可能性を検討すること である。 Ⅱ.研究方法 1.研究デザイン  対象者の経験を明らかにすることを目的とする ことから,質的記述的手法を用いた。 2.二大学連携クリニカル IPE の概要(表1)  クリニカル IPE の目的,対象者(学部・学年), 内容を表 1 に示す。通常,IPE には異なる専門職 との遭遇,という要素が含まれるが,加えて本ク リニカル IPE では医療機関において患者と関わり 協働してケア計画を立案することから,実在する 患者の問題解決が要素に含まれていることが特徴 である。また,各学部の既存の実習の構造を維持 したままクリニカル IPE を組み込み,学部間の実 習方法の差を実現可能な範囲で調整した実習設計 の結果,学生にとって医療系他学部と初めて接触 する機会となったこと,学部間で実習経験の差が ある状態での実習となったことが特徴として挙げ られる。 3.対象者  2017 年 5 月にクリニカル IPE を経験した A 大 学看護学部 4 年生(総合実習)12 名,B 大学薬 学部 5 年生(病院実務実習)11 名のうち,研究 協力に同意を得られた者を対象とした。 4.データ収集方法  2017 年 5 月に実施された実習オリエンテー ション時に,研究協力依頼書を対象者へ配布し, 口頭および書面にて研究への協力を依頼した。調 査対象者にはインタビュー当日に改めて上記項目 の説明を行った。同意書への署名をもって同意が 得られたものとした。  2017 年 7 月~ 12 月に半構造化面接を行い, クリニカル IPE における対象者の経験について 「最も印象に残っていることは何か」「どのように 考え,行動したか」などの質問を契機とし聴取し た。これらを IC レコーダーへの録音およびフィー ルドノートへの観察事項の記載にて収集した。 5.データ分析方法  インタビューの音声データは逐語録にし,逐語 録を熟読し実習での経験について語られた内容を 抽出した。意味内容が把握できる最小単位で区切 り,意味内容を端的に表すコードを付した。コー ドを意味内容の類似性と相違性に基づいて継続比 較を行い学部別に分類してサブカテゴリーとし た。両学部のサブカテゴリーの類似性や共起性に 基づいて学部間の対応を意識しながらさらに整 理を進めて抽象度を上げ,カテゴリーとした14) 質的研究や学生指導の経験がある研究者複数名に よりコードの抽出や分類の適切性,ならびにカテ ゴリー,サブカテゴリー,コードの一貫性につい ての討議を行い,分析の妥当性の担保に努めた。 6.倫理的配慮  調査は両大学の倫理審査委員会の承認を得た上 で実施した。対象者に,研究の概要,協力への自 由意思や匿名性の保障等について,文書と口頭に て研究者が説明した。協力の有無や調査内容が対 象者への評価に影響しないことを保障するため, 調査への協力意向の把握は実習の成績確定後に行 い,インタビュー調査は実習担当教員以外の教員 が担当した。 Ⅲ.結果 1.対象者の概要  対象者は 6 名で,看護学部生が 3 名,薬学部 生が 3 名であった。うち看護学部生 2 名,看護 学部生 1 名と薬学部生 1 名がそれぞれ同じ実習 グループに属していた。インタビューに要した時 間は1名あたり 29 ~ 43 分(平均 34.5 分)であっ た。 2.対象者の経験の概要  クリニカル IPE における対象者の学習経験は表 2 のように整理された。以下,4 つのカテゴリー について,説明と具体的なデータを示す。

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表 1.二大学連携クリニカル IPE の目的および展開 表 1 二 大 学 連 携 ク リ ニ カ ル I PE の 目 的 お よ び 展 開 ク リ ニ カ ル I P E の 目 的 保 健 医 療 福 祉 専 門 職 の 連 携 と 協 働 を 学 ぶ. ク リ ニ カ ル I P E の 到 達 目 標 1 ) 患 者 の ニ ー ズ に 沿 っ た 支 援 活 動 を 行 う う え で の , 保 健 医 療 福 祉 専 門 職 の 連 携 と 協 働 の 必 要 性 を 理 解 し , 説 明 で き る 。 2 ) 連 携 と 協 働 の た め に ,自 身 の 専 門 領 域 の 知 識 ・ 技 術 ・ 態 度 を 活 用 で き る 。 3 ) 連 携 と 協 働 の た め に , 自 身 の 専 門 領 域 と ほ か の 専 門 領 域 と の 共 通 性 を 説 明 で き る 。 4 ) 連 携 と 協 働 の た め に , ほ か の 専 門 職 に つ い て の 特 徴 を 理 解 し , 他 の 専 門 職 が チ ー ム に 存 在 す る 重 要 性 を 述 べ る こ と が で き る 。 5 ) 連 携 と 協 働 の た め の 技 術 を 理 解 し , チ ー ム で 活 動 で き る 。 6 ) 医 療 の 質 の 向 上 の た め の 課 題 に つ い て , チ ー ム で 検 討 で き る 。 実 習 対 象 者 看 護 学 部 生 :4 年 生 1 2 名 ( 既 存 の 「 総 合 実 習 」 に 組 み 込 む 形 で 実 施 ) ・ 各 年 次 で 医 療 機 関 で の 実 習 を 経 験 し て お り ,1 , 2 年 次 の 基 礎 看 護 学 実 習( 合 計 約 1 か 月 ), 3 年 次 の 領 域 別 実 習 ( 合 計 約 5 か 月 ) を 経 て 基 礎 的 能 力 を 有 し た 状 態 で , 学 び を 統 合 す る た め に 4 年 次 の 実 習 に 臨 む 。 ・ 今 回 の 対 象 者 は 4 年 次 の 学 生 の う ち , ク リ ニ カ ル I P E を 実 施 す る 病 院 で 実 習 を 行 う 分 野 に 配 属 さ れ た 学 生 で あ る 。 薬 学 部 生 :5 年 生 11 名 ( 既 存 の 「 病 院 実 務 実 習 」 に 組 み 込 む 形 で 実 施 ) ・ 実 習 は 5 年 次 の み , 1 年 間 を Ⅰ 期 ~ Ⅲ 期 に わ け , こ の う ち 2 期 間 で 病 院 と 薬 局 の 実 習 を 経 験 す る 。 ・ 今 回 の 対 象 者 は Ⅰ 期 で 大 学 病 院 に 配 置 さ れ た 学 生 で あ り ,病 院 で の 実 習 が 初 め て で あ る 。 実 習 内 容 ( 事 前 学 習 : 各 大 学 に て 実 施 ) 1 . 実 習 オ リ エ ン テ ー シ ョ ン 2 . 二 大 学 共 通 事 前 課 題 の 提 示 ( レ ポ ー ト と し て ま と め る ) チ ー ム 医 療 と は 何 か , チ ー ム 医 療 の 意 義 , 看 護 学 ・ 薬 学 の 教 育 制 度 お よ び 免 許 制 度 , 社 会 に お け る 看 護 師 お よ び 薬 剤 師 の 役 割 3 . I P E の レ ク チ ャ ー I P E の 基 本 実 習 内 容 ( 臨 床 実 習 ) 学 生 を 各 学 部 2 ~ 3 名 ず つ 病 棟 に 配 置 し , 各 病 棟 で 以 下 の 活 動 を 実 施 す る 。 1 .受 け 持 ち 患 者 と の 関 わ り( 看 護 学 部 生 お よ び 薬 学 部 生 が 一 緒 に ケ ア に 参 画 す る ) 2 . 臨 床 現 場 に お け る 連 携 場 面 の 見 学 3 . デ ィ ス カ ッ シ ョ ン ① (6 0 分 )  ア イ ス ブ レ イ ク  受 け 持 ち 患 者 の 情 報 の 共 有 4 . デ ィ ス カ ッ シ ョ ン ② (6 0 ~ 9 0 分 ) ※ デ ィ ス カ ッ シ ョ ン ① の 数 日 後 に 実 施  患 者 の 支 援 目 標 の 設 定 と 支 援 の 検 討 , 発 表  専 門 職 が 連 携 す る う え で 重 要 な 行 動 や 態 度 に つ い て 実 習 内 容 ( 事 後 学 習 : 各 大 学 に て 実 施 ) 1 . 振 り 返 り の 話 し 合 い , レ ポ ー ト 提 出

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表 2.対象者のクリニカル IPE における経験 表 2 対 象 者 の ク リ ニ カ ル IPE に お け る 経 験 カ テ ゴ リ ー 薬 学 部 生 の サ ブ カ テ ゴ リ ー 薬 学 部 生 の コ ー ド の 例 看 護 学 部 生 の サ ブ カ テ ゴ リ ー 看 護 学 部 生 の コ ー ド の 例 デ ィ ス カ ッ シ ョ ン へ の 不 安  他 学 部 の 学 生 と 初 め て 接 する  コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に 苦 手 意 識 を も つ デ ィ ス カ ッ シ ョ ン へ の 不 安  コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン で の 戸 惑 い  知 識 の 不 十 分 さ へ の 不 安 不 慣 れ な 実 習  現 場 を 知 ら な い  初 め て の 実 習 に 労 力 を 費 や す 相 手 の 状 況 を 慮 る  相 手 の 状 況 を 慮 る 配 慮 を 受 け 止 め る  看 護 学 部 生 に 対 話 を サ ポ ート し て も ら っ た と 感 じ る 初 め て の 患 者 と の 関 わ り  患 者 の 闘 病 姿 勢 に 感 銘 を 受け る 相 手 の 実 践 に 敬 意 を 払 う  看 護 学 部 生 の 患 者 の 情 報 を有 用 だ と 感 じ る  相 手 の 実 践 に 興 味 を 持 つ 専 門 職 と し て の 患 者 へ の 責 任 を 自 覚 す る  自 身 の 専 門 性 が 他 の 職 種 に 還 元 で き る こ と に 気 づ く  専 門 職 と し て の 役 割 の 責 任 を 自 覚 す る 専 門 職 と し て の 患 者 へ の 責 任 を 自 覚 す る  自 身 の 専 門 性 に 気 づ く  患 者 の 情 報 を 代 弁 す る 立 場 の 責 任 を 自 覚 す る 患 者 に 還 元 で き た と い う 実 感  患 者 に 還 元 で き た と い う 実 感 相 手 の 姿 勢 に 触 発 さ れ る  相 手 の 姿 勢 に 触 発 さ れ る 相 手 の 姿 勢 に 触 発 さ れ る  相 手 の 準 備 状 況 に 圧 倒 さ れ る 相 手 の 専 門 性 を 理 解 し 敬 意 を 払 う  看 護 学 部 生 の 視 点 か ら 学 ぶ 相 手 の 専 門 性 を 理 解 し 敬 意 を 払 う  相 手 の 役 割 へ の 理 解  相 手 の 知 識 が 役 に 立 つ  相 手 に 頼 っ て い い と 気 づ く 違 い を 受 け 止 め る  視 点 の 違 い に 感 嘆 す る  専 門 知 識 の 範 囲 の 違 い を 実 感 す る 違 い を 受 け 止 め る  違 い に 感 嘆 す る  温 度 差 を 感 じ る  違 い の 中 の 共 通 性 に 気 づ く 自 身 に 必 要 な 能 力 を 理 解 す る  自 身 の 役 割 に 悩 む  他 職 種 に 伝 え る 能 力 が 必 要 と 感 じ る 自 身 に 必 要 な 能 力 を 理 解 す る  他 職 種 に 伝 え る 能 力 が 必 要 と 感 じ る わ か り あ う プ ロ セ ス を 体 験 す る  議 論 の 方 向 を 探 る  伝 わ ら な い と 感 じ る  折 れ な い  相 手 の 反 応 に 安 堵 す る  意 見 が 合 う と 感 じ る よ う に な る 他 職 種 へ の 視 点 の 変 化  他 職 種 の 実 践 の 根 拠 を 見 出 せ る よ う に な る 職 業 ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 変 化  専 門 職 と し て の 自 覚 が つ い た こ と を 実 感 す る  今 後 の 進 路 に 希 望 を 持 つ 実 践 の 変 化  看 護 学 部 生 の 実 践 を 取 り 入 れ る

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1)不安と配慮  看護学部生,薬学部生ともにディスカッション への不安を抱いていた。薬学部生からは医療機関 での実習が初めてで実習そのものに慣れていない 状況が語られ,看護学部生からはその状況を慮り 配慮した様子が語られた。さらに薬学部生がその 配慮を認知し肯定的に受け止めた様子が語られて おり,支援的相互作用がみられた。  ディスカッションも,あんまり薬学の学校で はあんまりやってなくて,ちょっと自分たちも どういう感じなんだろうなって(薬学部生 1)  あんまり緊張させすぎても,ちょっとなっ て思うので(略),(自分たちも)1 年生の時と かそうだったよとかって思って,そうだよね と思って。 (看護学部生 3)  なんか看護学生の人,すごい話しやすくて。 それで結構向こうの人にフォローしてもらっ たりとかもあった。 (薬学部生 3) 2)ケアと患者のつながり  代弁する,という表現に代表されるように,両 学部生ともに実在する患者への専門職としての責 任を自覚したという内容がみられた。実習経験の 少ない薬学部生においては,患者との関わりを新 鮮に感じ,また看護学部生の情報収集や看護ケア の実践に関心を持ちその能力に敬意を払ってい た。看護学部生においては,薬学部生の質問を受 けて説明する過程で自身のケア実践が患者の観察 をふまえたアセスメントに基づいていることに改 めて気づくという側面がみられ,全体的に看護学 部生のケア実践が双方の学習経験に直結していた ことが特徴的であった。  看護師の方はやっぱり直接会ってっていう ところで。日常的な看護もそうなんですけど, やっぱりメンタル的なところも,患者さん不 安に思ってるようなことって多分いっぱいあ ると思って。そういうところもケアしていか なきゃいけないんだなっていうのは,すごい ディスカッションを通して学んだとこでも あって。(薬学部生 1)  その患者さんにとって必要だと判断してる からやってるんだよっていうことを説明した ときに,やっぱり薬学部の人たちも,ああ, そうなんだっていうのと同時に,やっぱ私た ちも,それもやっぱ自分たちで計画立ててやっ てるものなので,私たちのやってることって, やっぱ意味あるんだなって言葉に出してみて 思いましたかね。(看護学部生 3) 3)自他双方の理解  互いの専門性の違いに直面し,医療系他学部と の交流機会が少ない状況にある中での新鮮な驚き や戸惑いを覚えながらも,相手の姿勢に触発さ れ,専門性を理解し敬意を払い,違いを受け止め, 同時に自身に必要な能力を理解する内容が語られ た。看護学部生はわかりあうまでのプロセスが強 く印象に残った内容として語られていたのが特徴 的であった。  薬学部生と話したこと自体,もう,ほぼ発 見みたいなものなんですけど (看護学部生 1) ほんとに違う職種なんだなっていうのを思い ました。(薬学部生 3)  何で分かってくれないんだろうっていうよ りは,ああ,やっぱり何か違うんだなあって。 (略)その違いを知ってるからこそ,どうす ればいいのか,次に私たちはどう出ればいい のかっていうのが分かった,学べたかなって 思ってます。違いがあるから,どうやってお 互いの意見を尊重し合いながらも患者さんに 向かっていくのか。(看護学部生 2)  私たちは(患者のケア方針について)こう考 えてるんですっていうのを言わなきゃいけな いっていうふうな感覚でいった(看護学部生 1)  薬学生側も,そんな遠慮してる感じがなく て結構言ってくれていたので,こっちの意見 も言っても,そんな,ああっ(まずい状況) てはならないかなって。(看護学部生 3) 4)実践の変化  薬学部生においては,クリニカル IPE 後にも異 なる内容の実習を経験していたことから,患者の 問題解決のために協働した経験や学びをその後の 実習に活用した内容が聴取された。他職種への視 点や職業アイデンティティが変化するとととも に,自身の実践が変化した様子が語られた。

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 あれがあったので,すごい今,病棟実習と か行っても,看護師さんの動き方とかも,そ れをどういうふうに気を付けてるかとか,す ごい見ちゃいますね 。(薬学部生 2)  直接関わる時とかは,特にそういうの(看 護学生が行っていた心理面での支援)意識し て話し掛けるようにしたりとかは,今の実習 中してました 。(薬学部生 1) Ⅳ.考察  本研究により,二大学が連携して実施したクリ ニカル IPE における薬学部生と看護学部生の学習 経験には「不安と配慮」「ケアと患者のつながり」 「自他双方の理解」「実践の変化」の要素があるこ とが示唆された。本結果をふまえ,既存の実習に 組み込む形で実施するクリニカル IPE の可能性に ついて考察する。 1.実習形態の IPE  今回のクリニカル IPE では,看護学部生,薬学 部生ともに臨床で共通の患者を対象にして情報収 集・アセスメント・ケア計画の検討を行った。臨 床の緊張感と緊迫感の中で実在する患者の問題解 決に焦点を当てることにより,「ケアと患者のつ ながり」の内容にみられるように,専門職として の自覚がより強化された経験をした可能性があ る。これは,チームワークの効果をもたらすとさ れる15),サービス提供に関わる課題であったこ と,臨床で行われたことにより学生の緊張感が維 持され心理社会的効果を高めたことが一因である と考えられる。  さらに,実体験として自らのケア計画と実践が 患者にもたらす影響を経験した学生は強い達成感 を経験しており,本教育方法はチームとしての成 功体験を得る機会を創出できると同時に,学生集 団の活動が直接的に患者に変化をもたらす可能 性をも示している。世界保健機関による Health and education systems モ デ ル6)で は,IPE が

collaborative practice(協働的実践)を介して最 終目標である improved health outcomes(健康 アウトカムの改善)につながる構造が示されてお り,今後は IPE による協働的実践の促進だけでな く,患者の健康アウトカムの改善についても視野 に入れた検証が望まれる。 2.大学間連携による既存の実習に組み込まれた クリニカル IPE  本クリニカル IPE は,他の医療系学部との交流 機会を十分に提供しにくい大学が連携し,各学部 の既存の実習に組み込んで実施したものであり, 学部の新設・再編成やカリキュラムの改正といっ た大規模な改革を伴わずに現存の構造やリソース を活用し導入したものである。ゆえに,学部間で の実習経験の差をはじめとした実習設計の限界が あった。しかし,学生が語った「不安と配慮」な どの内容にみられるように,交流機会のなさと実 習経験の差があったゆえに支援的相互作用を生ん だ可能性がある。本邦で開発された医療保健福祉 分野の多職種連携コンピテンシー16)のコアドメ インの一つである「職種間コミュニケーション」 に含まれる,職種背景が異なることに配慮する, という側面の貴重な学習機会となると考えられ る。一方で,基礎学習の段階での振り返りや普段 の交流を経ずに臨床で他の専門性の観点に遭遇す ることは,特に医学部生においては他学部生との 関係に緊張や不協和をもたらす可能性も指摘され ており17),学部の特性や学生のレディネスによっ ては注意を必要とする。今後は,特に他の医療系 学部と十分な交流機会がない環境にある学生への クリニカル IPE について,大学間連携を超えた情 報や経験知の共有を行うとともに,学生間の相互 作用を肯定的・効果的なものにするための運営や 指導のあり方を検討していく必要がある。  さらに,今回の IPE は異なる二大学で既存の 実習の構造内で実施したにも関わらず,「実践の 変化」が得られていた。本邦における実習形態 の IPE としては,同一大学内学部間連携での段 階的・体系的な IPE プログラムの効果が報告さ れている18-21)が,本 IPE のような条件下でも成 果があげられる可能性が確認できたことにより, 類似した状況にある大学にとって先駆的実践の一 例となりうると考える。  本研究の限界として,サンプリングバイアスの 可能性が挙げられる。対象者数が少なく,また強 制力の排除には努めたものの,教員が主体となり 調査設計・実施を行ったため,肯定的評価への偏 りが生じている可能性に注意しながら本結果を解

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釈する必要がある。また,看護学部生と薬学部生 のカテゴリーを比較し,支援的相互作用について の検討を行ったが,実際に同じグループに配置さ れ相互に関与した学生は一部であり,実情を正確 に反映していない可能性があることに注意が必要 である。 Ⅴ.結論  他の医療系学部との交流機会の乏しい学生に とって,既存の実習に組み込まれたクリニカル IPE は,不安と配慮,ケアと患者のつながり,自 他双方の理解,実践の変化といった学習経験をも たらすことが示され,専門職連携に効果的な教育 方法となる可能性が示唆された。 Ⅵ.引用文献

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3) Esther Suter, Siegrid Deutschlander, Grace Mickelson, et al.: Can interprofessional collaboration provide health human resources solutions? A knowledge synthesis. Journal of Interprofessional Care. 26(4): 261-8, 2012.

4) Merrick Zwarenstein, Scott Reeves, Hugh Barr, et al.: Interprofessional education: effects on professional practice and health care outcomes. Cochrane Database of Systematic Reviews, Issue 3, 2000.

5) The Centre for the Advancement of Interprofessional Education: https://www. caipe.org/(2019 年 7 月 15 日閲覧) 6) World Health Organization: Framework for

action on interprofessional education and

collaborative practice. 2013.

7) Margaret Horsburgh, Rain Lamdin, Emma Williamson: Multiprofessional learning: the attitudes of medical, nursing and pharmacy students to shared learning. Medical Education, 35(9): 876-883, 2001.

8) Della Freeth, Scott Reeves: Learning to work together: using the presage, process, product (3P) model to highlight decisions  and possibilities. Journal of Interprofessional Care, 18(1): 43-56, 2004.

9) Erin Abu-Rish, Sara Kim, Lapio Choe, et al.: Current trends in interprofessional education of health sciences students: A literature review. Journal of Interprofessional Care, 26 (6): 444-451, 2012.

10) 酒井郁子:医療職種教育に及ぼす IPE の影響 と薬剤師に期待すること 看護師の視点か ら.薬学雑誌, 137(7): 869-877, 2017. 11) S c o t t R e e ve s , J o a n n e G o l d m a n , I v y

Oandasan: Key factors in planning and implementing interprofessional education for health care professionals: Understanding key factors. Journal of Allied Health, 36(4): 231-235, 2007. 12) 山本武志: Practice-based IPEの実践と課題. 保健医療福祉連携 連携教育と連携実践, 11 (2): 85-88, 2018. 13) 文部科学省:大学間連携共同教育推進事業: http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ kaikaku/renkei/(2019 年 7 月 15 日閲覧) 14) Johnny Saldaña: The coding manual for

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16) Juyoung Park, Michele Hawkins, Elwood Hamlin, et al.: Developing Positive Attitudes Toward Interprofessional Collaboration Among Students in the Health Care

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Professions. Educational Gerontology, 40 (12): 894-908, 2014. 17) 多職種連携コンピテンシー開発チーム: 医療 保健福祉分野の多職種連携コンピテンシー. 2016. http://www.hosp.tsukuba.ac.jp/mirai_ iryo/pdf/Interprofessional_Competency_in_ Japan_ver15.pdf(2019 年 7 月 15 日閲覧) 18) 木内祐二: 昭和大学の体系的,段階的なチー ム医療教育の新たな取り組み. 保健医療福 祉連携, 11(2): 89-96, 2018. 19) 下井俊典: 国際医療大学の IPC 実習「関連 職種連携実習」について. 保健医療福祉連携, 11(2): 97-103, 2018. 20) 新井利民: 埼玉県立大学における IPE 実習科 目. 保健医療福祉連携, 11(2): 104-110, 2018. 21) 井出成美, 朝比奈真由美, 伊藤彰一他: 千葉 大学 クリニカル IPE―大学病院における医・ 薬・看の診療参加型 IPE. 保健医療福祉連携, 11(2): 123-130, 2018.

参照

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