足病変患者のリハビリテーション介入施設の現状 ~研修会参加施設へのアンケート調査を通して~
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(2) 日本フットケア学会雑誌Vol.17 No. 4. 表 1 末梢動脈疾患の分類:Rutherford 分類 度. 群. 臨床所見. 0. 0. 無症候. I. 1. 軽度の跛行. I. 2. 中等度の跛行. I. 3. 重度の跛行. II. 4. 虚血性安静時疼痛. III. 5. 小さな組織欠損. III. 6. 大きな組織欠損 図 1 第 1 回 足病変患者のリハビリテーション研究会 (2014 年) 春日部中央総合病院にて足病変患者のリハビリテーショ ンについての講義と実技を実施した (許可を得て写真を掲 載).. 方が異なるのが現状である. A 病院の CLI 患者は高齢者や低体力者などが多く, 退院後に自宅へ戻れずに施設転院となる患者や,創処置 が必要な状態で在宅ケアや透析病院でケアを継続しなけ ればならない患者がいる.退院後,生活期に移行したあ. 告する.. とに再発や創傷悪化により再入院を繰り返す患者もい る.. 【方法】. そこで,退院後の再発や悪化を防ぐために,CLI の管. FREE conference 参加施設 54 施設で,アンケートに協. 理やアプローチについて,知識を共有できる場を作ろう. 力の得られた医師,理学療法士,看護師に実施した.. と,我々は「足病変患者のリハビリテーション研究会」を 発足した(図 1).研究会の対象は当院近隣の施設の医療. アンケート方法は,足病変患者のリハビリテーション. 職種として,2014 年から開催し,30 名程度が参加する. 研究会事務局からのメールを用い,以下の項目を調査し. 研究会となった.. た. 1. 血行再建術の年間件数. 末梢動脈疾患の診療ガイドラインでは,医師,看護師, 理学療法士,義肢装具士,薬剤師,栄養士など,多職種. 2. IC のリハビリテーション年間件数. によるチーム医療が推奨されている .. 3. CLI のリハビリテーション年間件数. 3). 我々は数年前より他施設の足病変患者の治療やチーム. 4. 創傷治療医の診療科. 医療の現状を知るために,幾つかの施設見学を行う機会. 5. フットケアチームの有無,義肢装具士の介入の有無. を得た.そこで IC や CLI,糖尿病性足病変の診療にリ. 6. 理由の記載. ハビリテーションがかかわっていないことや,義肢装具. 血行再建術の件数,間欠性跛行・重症虚血肢のリハビ. 士が介入してない現状があることが分かった.そこで足. リテーションの年間件数は平均値 ± 標準偏差,中央値. 病変患者をみるうえで,基本的な治療とはどのようなも. で記した.. のかを創傷治療医,理学療法士,義肢装具士などの職種. 【倫理的配慮】. で診療している病院を集め,多施設研究活動を行うこと. 本調査はヘルシンキ宣言に準拠し,各施設に対して研. とした. 研究会はエビデンスにつなげる臨床研究として,B 診. 究の趣旨,参加にあたっては自由意思によること,およ. 療所,A 病院,他 3 病院の創傷治療医と理学療法士が 2 ヶ. び匿名性の担保について説明し,メール返送をもって同. 月に 1 回集まり,治療のプロトコールにつながるような. 意を得たものとした.. 研究活動を進めている.現在までの実績は,創傷を悪化. 【結果】. させずに歩行能力を維持できる免荷期間の調査や予後調. 研修会に参加をした 54 施設中,11 施設よりメール返. 査などの研究活動を続けている. 同時に,研究している内容を啓発する場を作りたいと. 送があった.そのうち,フットケアチームとして取り組. 考え,3 年前から Foot Rehabilitation Expert Evidence(FREE. んでいる施設は 8 施設であった.血行再建術の件数とリ. conference)という研修会を年に 1 回開催している(図 2).. ハビリテーションの年間件数は,血行再建術は 133±. FREE conference は,全国の施設から医師や理学療法士,. 115.4 件,IC の リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン は 10.8±12.6 件,. 看護師,義肢装具士など,100 名程度が参加している.. CLI のリハビリテーション介入件数は 18.6±10.1 件で. 今回は,2016 年の FREE conference に参加された施設を. あった(表 2).フットケアチームの職種についての調査. 対象に,全国での CLI や糖尿病性足病変のリハビリテー. では,創傷治療医の診療科は形成外科 9 件,皮膚科 3 件,. ションの現状を知るための調査を行ったので,以下に報. 血管外科 2 件,心臓血管外科 1 件,循環器科 2 件,整形. 198. 資料-榊.indd 198. 2019/12/04 12:05.
(3) 足病変患者のリハビリテーション介入施設の現状. 図 2 第 2 回 FREE conference の光景 年 1 回創傷治療医,リハビリテーション職種,義肢装具士,看護師を対象に,足病変の 治療に必要な知識と技術を高めるような内容を企画している (許可を得て写真を掲載) .. いない.. 外科 1 件,透析内科 1 件,各診療科 1 件であった(図 3).. 末梢動脈疾患の診療ガイドラインではリハビリテー. フットケアチームにおける義肢装具士の介入は 8 施設で. ションが治療の一つとされている 3).そこで,当研修会. あった (表 3).. に参加している施設に対し,血行再建術の件数と IC な. リハビリテーションが十分行えない理由においては, 依頼数が少ない,多診療科の医師のため依頼が多い診療. らびに CLI に対するリハビリテーションの件数を調査. 科と依頼が出にくい診療科がある,時間がないなどの理. したところ,リハビリテーション介入の割合は各 10%. 由であった.. 程度と低値であった.診療ガイドラインでは間歇性跛行 のリハビリテーションのエビデンスレベルは高く 3),診. 【考察】. 療報酬でも心臓リハビリテーションのコスト算定が可能. 今回のアンケート調査は FREE conference に参加して. にもかかわらず,実施施設が少ないことが明らかとなっ. いる施設と限定されている為,全国の状況は反映できて. た.実施できない理由として,心疾患などの心臓リハビ. 199. 資料-榊.indd 199. 2019/12/04 12:05.
(4) 日本フットケア学会雑誌Vol.17 No. 4. 表 2 血行再建術の年間件数とリハビリテーション年間介入件数 年間件数 (件) 平均値 ± 標準偏差. 中央値 (件). 血行再建術件数. 133±115.4. 75. 間歇性跛行リハビリテーション介入件数. 10.8±12.6. 10. 重症虚血肢のリハビリテーション介入件数. 18.6±10.1. 16. 図 3 創傷治療医の診療科 (11 施設が回答,複数回答有). 表 3 アンケート実施施設のフットケアチームの状況 フットケアチームの有無. 有/無. 施設数. 8/3. 義肢装具士介入の有無. 有/無 8/3. リテーションの件数が多く,IC のリハビリテーション. 歩行開始時期,荷重方法についてはさまざまである.創. を行う余裕がない,医師からの指示がないなど,施設の. 傷治療期のリハビリテーションにおけるリスクとは何. 環境によって理由はさまざまであった.CLI では,リハ. か,またはどんなアプローチが有効かは不明であるため,. ビリテーションを実施するうえで何をしたらよいか分か. エビデンスの構築が急務である. CLI や糖尿病性足病変の治療には,創に負担をかけな. らない,医師からのリハビリテーションの処方箋が出な. いように管理をすることが必要なため,義肢装具士の介. いことが主な理由であった. IC のリハビリテーションは,多くの運動療法の有効. 入は大変重要である.海外の報告では,装具着用下と非. 性も示されている.虚血により筋肉への血流が減少し筋. 着用下で再発率も異なるため 5),創傷治療中から再発予. 萎縮が起こりやすい.そのため血行再建術後に筋力ト. 防においても義肢装具士の役割は非常に大きいという報. レーニングやトレッドミルなどの歩行トレーニングなど. 告もある.しかし今回の調査では,フットケアチームと. の運動療法は,治療効果を高め,QOL 向上にもつなが. して稼働している病院であっても,全ての施設で義肢装. る 4).今後,リハビリテーション介入施設が増えること. 具士が介入していないことが明らかとなった (表 3).. が望まれる.. CLI や糖尿病性足病変において,理学療法士の役割は. 一方,リハビリテーションに指示を出す創傷治療医の. 身体的な特徴や生活習慣,性格や経済状況などの情報を. 調査結果では,形成外科や皮膚科など,普段リハビリテー. 踏まえて,多職種と連携することが必要である.. ションとかかわりの少ない診療科も多くみられた.創部. また,創部の悪化を防ぎ,再発予防を目的とした動作. がある状態で運動を行うことはリスクも伴うため,創傷. 指導を通して,日常生活動作能力を低下させないような. 治療医とリハビリテーションの必要性や安全性について. 介入が求められる.. コミュニケーションをとりながら進めていく必要があ. 今回のアンケートでは,研修会参加施設での状況であ. る.しかし,CLI のリハビリテーションにはプロトコー. るが,血行再建術の件数に比べ,リハビリテーションの. ルがないため,各診療科や施設によって荷重開始時期や. 介入件数は少なく,更に全ての職種が揃って活動できて. 200. 資料-榊.indd 200. 2019/12/04 12:05.
(5) 足病変患者のリハビリテーション介入施設の現状. 「利益相反なし」. いるところは希少であった.また,血行再建術後のリハ ビリテーションが介入できていないという現状を踏ま. 【文献】. え,より多くのリハビリテーション職種が興味をもち, リハビリテーション介入件数が増えることで,より多く. 1) TASC Ⅱ Working Group(2007) / 日本脈管学会(2007) : 下肢閉塞性動脈硬化症の診断・治療方針Ⅱ.東京,メ ディカルトリビューン 2)榊 聡子:重症下肢虚血と理学療法.理療ジャーナル. 2017: 50 (9) ; 827-832 3)日本循環器学会,日本インターベンショナルラジオロ ジー学会,日本形成外科学会,他(2015) ,末梢閉塞性 動脈疾患の治療ガイドライン,2015 年改訂版,2019 年 6 月 21 日,http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2015_ miyata_h.pdf 4) Szymczak M, Oszkinis G, Majchrzycki M:The Impact of Walking Exercise and Resistance Training upon the Walking Distance in Patients with Chronic Lower Limb Ischemia. Bio Med Res Int. 2016; 1-8 5) Uccioli L, Faglia E, Monticone G, et al:Manufactured shoes in the prevention of diabetic foot ulcers. Diabetic Care. 1995: 18 (10) ; 1376-1378. の患者の足を救うことにつながると考えられる.. 【結語】 今回の調査結果では,血行再建術の件数に比べ,血行 再建術後のリハビリテーション介入ができておらず,全 ての施設が義肢装具士やリハビリテーション職種を含め た構成で取り組んでいないことが明らかとなった.今後 は,この結果をもとに研修会の参加を通して,各施設で の足病変に興味をもてるリハビリテーション職種や義肢 装具士を増やし,リハビリテーション職種が積極的にか かわっていけるような研修会を企画・運営したいと考え る.. 【研究限界】 今回のアンケート調査は,研修会参加に限られた施設 の結果であるため,今後は全国での調査を検討していき たい.. Current Status of Rehabilitation Intervention Facilities for Foot Lesion Patients ~Through a Questionnaire Survey of the Facilities Participating in the Workshop~ Abstract In rehabilitation for peripheral arterial disease, the evidence level is high for Rutherford classification 1 to 3 intermittent claudication (IC), and rehabilitation is defined as a treatment. On the other hand, reports of the effectiveness and safety of rehabilitation are rare for 4-6 critical limb ischemia (CLI). Therefore, we started the “Rehabilitation Study Group for Podiatric Patients”, starting with hospitals. We administered a questionnaire at the “FREE conference”, one of our activities, to investigate the current status of participating facilities. The survey revealed that the number of rehabilitation interventions was as low as 10% for both IC and CLI compared with the number of revascularization procedures. According to this survey, rehabilitation was insufficient for foot disease patients, and the composition of foot care teams at each facility varied. Furthermore, it clarified that rehabilitation occupations were hindered by the presence of prosthetic braces. In the future, I would like many people to become interested through workshops and research activities on the prevention of foot amputation. Key Words:PAD, IC, CLI, rehabilitation. 201. 資料-榊.indd 201. 2019/12/04 12:05.
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