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生活習慣病患者の動機づけ支援とコミュニケーション

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Academic year: 2021

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164 行動医学研究 Vol.25, No.2

(受付日:2020 年 7 月 16 日/受理日:2020 年 8 月 13 日)

*一般財団法人住友病院, 大阪府 大阪市 北区 中之島 5-3-20 (〒530-0005)

Sumitomo Hospital,5-3-20,Nakanoshima,Kita-ku,Osaka-shi,Osaka,530-0005,Japan ©2020 Japanese Journal of Behavioral Medicine

行動医学研究 vol.25,No.2,164-165,2020

[総説]

生活習慣病患者の動機づけ支援とコミュニケーション

Motivational support and communication for patients with lifestyle-re

lated diseases

巣黒慎太郎

Shintarou SUGURO

一般財団法人住友病院 臨床心理科

Department of Clinical Psychology, Sumitomo Hospital

Ⅰセルフケア行動へのアドヒアランス向上

生活習慣病(糖尿病、肥満症、脂質異常症、高血 圧症、心・脳血管障害など)は食行動、身体活動、 飲酒、喫煙などの生活習慣が発症と進行に関与す るため、セルフケア行動(食行動変容、運動習慣の 形成と維持、禁酒、禁煙、体重や血糖の自己測定、 内服やインスリン自己注射など)に取り組み適正 な体重、血糖値、脂質の管理することで、合併症の 発生や進行の予防し健康寿命や生活の質を保つこ とを治療目標とする。したがって、生活習慣を改 善し継続することが自分にとって重要であると患 者自身が理解しセルフケア行動を主体的に実行す るというアドヒアランスを向上することが療養指 導上の課題となる。医療多職種による療養指導で は疾病や治療法の知識・手技を教えることで、患 者は適切な危機感を抱きそれが生活改善の動機と もなるが、医療者は「正しい知識や方法」を持って いると自認するゆえ患者の不健康的な問題点を是 正したくなる衝動に自覚的でありたい。無自覚で あると、病状を否認、楽観する患者に脅威を与え、 説き伏せ指示に従わせたり、実行の伴わない治療 意欲の乏しい患者とみなして、患者の自信を損な い反発を招く恐れがある。あくまで患者が自分の 健康に目を向けてセルフケア行動をとることに意 義があると思えるよう動機を引き出し、またセル フケア行動(ひいては自身の健康)を管理できる自 信を養うことが必要である。

Ⅱ-1 動機を引き出す視点と方法の実際

筆者の所属する総合病院の糖尿病・代謝センタ ーでは、糖尿病、脂質異常、肥満症、メタボリック シンドローム患者対象に教育入院を行い、患者が 生活習慣病療養の知識や食事療法、運動療法を習 得できるよう、多職種チームで講義や療養指導に あたっている。心理職が司会進行担当する教育入 院プログラムとして、生活行動変容の動機づけと 患者同士の相互支援を目的とし、1 グループ 5~7 名で 60 分間の心理グループワーク(以下 GW)を実 施している。 プログラム手順 ①事前評定:食事療法・運動療法 にとりくむ重要性の認知と自己効力感を患者が自 己評定(0-100%の主観評定)する。②GW 冒頭に事前 評定を参加者全員で発表、共有する。③事前評定 値に応じた質問をして話し合う。

Ⅱ-2 重要性と自信を手掛かりに話し合う

Rollnjck,S.ら1)は、心理療法を専門としない一 般の保健医療従事者が診療・援助として療養指導 しながらも患者の抵抗を生じさせずに患者の主体 的な行動変容に導けるよう、トランセオレティカ ルモデルと動機づけ面接、クライエント中心療法

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生活習慣病患者の動機づけ支援とコミュニケーション 165 を統合した面接方法論を考案した。セルフケア行 動に取り組むことについて「重要性」「自信」の 2 点から行動変容への準備性を評価し、行動変容に 向けての円滑な会話を構築していくこのメソッド を筆者の GW に援用している。 (1)重要性を探る 重要性を低く評定している場合:どのような病気 として知っていたか予備知識や先入観を確かめ、 重要性低値が病気や治療法についての誤解や知識 不足に起因していれば、正しい疾病知識を情報提 供することで病気への適度な危機感や予防意識を 高める。また、発症すると思っていたか予期を確 かめることで疾病への心理的距離が把握でき(「こ の食生活ではいずれなると思っていた」「まだ実 感がない」など)、ときに罹患・発症に伴う心理的 動揺や不安、絶望など潜在している負担感情が表 出される糸口となる。こうした感情を整理してい くことは、慢性疾患を抱えた生活や自己像へ適応 していくためにも、そして課せられた義務でなく セルフケア行動に着手できるためにも、先立つプ ロセスとして重要である。さらには、家族団欒と しての間食や仲間づきあいでの会食など、自身の 健康より重視しているものがあり重要性が低値と なっているときには、現在の健康的でない習慣の よい面、およびその習慣を続けると困る面を聴き 整理する(メリット/デメリット分析)。 一方、重要性を高く評定した理由を尋ねる際には、 セルフケア行動を大切に思う心境や病気への危機 感をもつに至った契機などが具体的に語られるよ う尋ねることで、健康に向けて生活改善を望む方 向の会話が展開しやすくなる。 (2)自信を構築する 自信を低く評定した場合:飲食で対処に難しかっ た場面を明確にし、GW では他参加者から対処のア イディアを募って対処の選択肢を増やし(ブレイ ンストーミングによる解決法)、患者が主体的に目 標行動やプランの選択肢を発案して選び達成でき そうな目標の高さに設定していく。望ましい習慣 がつまずき(逸脱)中断(再発)した際の誘惑・トリ ガーを GW で共有し、対処を講じる。 高く評定した場合:特定のセルフケア行動を習慣 化してすでに継続できている実績に基づいた高値 であれば、維持できている秘訣や、継続を妨げる 状況に役立った対処などを尋ね引き出す。 原法では「重要性」「自信」のうち評定がより低値 の方を優先して聴き始めることを推奨しているが 、筆者の GW では「自信」高値から尋ね、療養上の 困難への対処を披露してもらうことで患者自身の 効力感の回復および患者同士のモデリングや発話 の賦活を狙っている。

Ⅱ-3 血糖値コントロールの先にある生き方

なんのためにセルフケア行動を維持するかとい う問いは、何を大切にしてどのように生きたいか を明らかにすることになり、それを実現するため に独自の理由を持ってセルフケア行動に携わる動 機づけとなる(「孫の成長を見届けたい」「趣味と 人づきあいの場のダンスレッスンを続けるため合 併症の神経障害なく動ける足腰でいたい」)。血糖 値や体重の管理、合併症への進行抑制という一般 的な治療目標を越えて、その先にある健康寿命を どのように生きるかに目を向けることで、検査値 の増減に縛られ一喜一憂することからも脱却しう る。

Ⅲ 合意をつくる

何のために健康でありたいか、自身がどこに価 値をおいて生きるのかが明らかになることで、検 査値の改善の先にある生き方や健康寿命を全うす ることに目が向き、他律的な治療でなく自分の望 む生活のためにセルフケア行動にとりくむことと なる。このように何のために取り組むかを考え話 し合うことは目標についての合意形成といえる。 医療者の論理は、健康に導く使命であるが、患 者の論理は、必ずしも健康に価値を置いていると は限らない。また目先の治療手段に縛られ、どこ を目指すのか患者自身でも見通しの持てない状況 かもしれない。療養指導においては、健康への方 向づけが前提になりながらも知識や療養方法を伝 え説くだけに留まらず、患者自らが生活を改善で きるよう主体性や自律性を支援する必要があると いう葛藤をはらんでいる。 そこで目標、方法についての合意形成のプロセス において、生活習慣上の癖や問題点を患者自身で 発見できるようガイドする医療者の姿勢が協同的 な関係を築き、治療に対する患者の主体性を育む 素地となる 2)。認知(行動)療法で考案され重視さ れている「発見を促す質問」、Guided Discovery という姿勢は、患者の動機を引き出し主体性を支 えながら療養指導に携わる多職種にとって共通ス キルといえる。

文献

1) Rollnick,S. Mason,P. Butler,C. Health Beh avior Change.:Harcourt Health Sciences.,1 999 (社)地域医療振興協会公衆衛生委員会 PM PC 研究グループ(監訳).健康のための行動変 容 保健医療従事者のためのガイド 法研.2001 2) 巣黒慎太郎,働きながら療養する糖尿病患者に 対する認知行動療法的アプローチ, 糖尿病ケ ア,2016;13(1):76-8

参照

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