1 .はじめに 1.1 研究の背景 わが国では,観光需要が多様化している社会状況に ある.特に,観光立国の実現に向けて,インバウンド 需要の増大は,目を見張るものがある.2019(令和元) 年の訪日外国人客数は,約3,188 万人と過去最高を記 録した.その動きに呼応して,各地で「まち」の活性 化を目指し,個性あふれるインバウンドツーリズムが 立案,実践されつつある. このような背景には,観光客の目的が「モノ」消費 から「コト」消費へと移行しつつある点に大きな要 因が見て取れる 1).また,旅行形態は「団体旅行」か ら「個人旅行」へと変化した.さらには,マスツーリ ズムからサステイナブルツーリズムへの変化もみられ る.併せて,昨今のわが国におけるインバウンドツー リズムに目を向けると,定番であった「ゴールデン ルート」から「地方」へと観光対象地域が多様化して いる.それらの需要が変化し,今までは観光の対象地 になり得なかった場所や単なる通過点であった場所に おいて,地域振興のツールとして「観光」を活用でき る可能性が出てきたと考えられる. そこで本研究では,訪日外国人観光客の誘客につな がる可能性を有する航空機への乗降客が乗り継ぎ時間 を有効に利用して観光資源を巡るトランジットツアー に着目することとした. 1.2 研究の位置づけ トランジットツアーに関する既往研究は,安達2) によって,成田・関西・中部の各国際空港で実施する ことができるトランジットツアーの可能性に触れられ ていた.そのなかでは, 「トランジット客のトランジットツアーも,すで に各国で実施されているサービスであり,国際空 1日本大学理工学部まちづくり工学科 2京浜急行電鉄株式会社 * Corresponding author 令和2 年 6 月 29 日受付,令和 2 年 11 月 11 日受理
トランジットツアー実施による地元門前町への波及に関する基礎的研究
─成田山新勝寺表参道周辺を対象として─
西山 孝樹1*,金子 正輝2,田中 賢1,天野 光一 1A Basic Study on the Inducement Effect to Local Monzen-machi by the Transit Tour
—Case Study in Around the Naritasan Omotesando Street—
Takaki NISHIYAMA, Masaki KANEKO, Yasushi TANAKA and Koichi AMANO
Abstract
This study deals with transit tours focusing specifically on areas around airports that were previously ignored by tourists. Herein, with the aim of obtaining basic information for use in the revitalization of local economies, we clarified the relationship between an airport and surrounding areas through such a program. Spe-cifically, through social media analysis, interviews, and questionnaires survey, we found a lack of collaboration between Narita International Airport Corporation, volunteer guides, and stores on Naritasan Omotesando Street. Our results showed that for transit tours to function more effectively as tools for revitalizing the local economy, these three parties need to coordinate their activities. Furthermore, we proved that an effort to create transit tours led by shops has the potential to overcome this lack of communication and improve cooperation between the involved parties.
港の航空旅客に対するサービスの一つとなってい る.このサービスは,航空旅客へのショートツ アーのサービスとしてばかりか,日本の文化を 知ってもらうためにも大事である.しかも,地域 への経済効果も得ることができる.旅行客が地域 のわずかな時間のショートツアーで,日本の文化 を観たり,食べたり,温泉に入ったりすることに よる経済的な効果なのである.」 トランジットツアーは,他国の人々が日本の文化を知 り得る有用なツールの1つであると示されていた. それに加えて,安達は各空港の周辺に点在する観光資 源にも触れ,時間的な制約がある乗り継ぎを利用した ツアーであることから,シンプルで無理のないコース づくり,空港から20 km圏内のエリア設定,定時性 確保の必要性を挙げていた. その他に,花岡3)は成田空港のトランジット旅客 を対象に北東アジアに所在するトランジット空港選択 の実態に迫った.この研究では,AHP(階層化分析法) を用いて,乗継ルート選択において重視する要因の重 要度を明らかにしている.AHP による分析を行うに あたり,乗継ルート選択の階層構造の主段階を空港, フライト,航空会社の3要因とした.そのうち,空 港の副段階を「乗継プロセス,乗継施設,トランジッ トツアー,スタッフサービス,ショッピング/レスト ラン」と定めていた. 分析の結果としては, 「主段階が空港の中では,乗継時間に影響を与 える乗継プロセスが,旅行目的にかかわらず最 もウェイトが高い結果となった.その一方で, ショッピング/レストランはトランジットツアー に次いで低い値を示した.トランジット旅客に対 する空港サービスの優先順位として,セキュリ ティチェックなどの乗継プロセスをスムーズにす ることが,ショッピング/レストランの充実やト ランジットツアーよりも大切であることが,この 結果からわかる.」 乗り継ぎを行う空港を選択するうえで,セキュリティ チェックなどの乗継プロセスよりも,トランジットツ アーの有無は重要な要因ではなかった.しかしなが ら,安達が述べていたように,そのトランジットツ アーは訪日外国人が日本の文化を知り得る貴重な時間 であるといえる. 西山4)は,海外の 28空港において実施されている 213のトランジットツアーを調査した.それらを分類 したところ,ただ単にバス等で観光資源を巡ったり, 車窓から眺めたりする「観光資源を巡るのみのツアー」 は61ツアーであった.それに対して,空港が所在す る地域の食材を使った料理を食べたり,地域住民にそ の土地を案内してもらい交流したりする「地域との繋 がりを持つツアー」が68 ツアー存在していたことを 明らかにしている.このように,「地域との繋がりを 持つツアー」が「観光資源を巡るのみのツアー」の数 を上回る結果が得られていた. 最後にはなるが,わが国で実施されるようになった トランジットツアーに着目し,運営側とそのツアーの 行き帰りで訪れる商店街などの受入側双方へ聞き取り 調査やアンケート調査を実施し,その実態に迫った研 究は存在しない状況にもあった. 1.3 国内におけるトランジットツアーの歴史 わが国におけるトランジットツアーの歴史を過去の 新聞記事およびインターネットによる検索を行い,時 系列で表-1にまとめた.ここで取り扱う過去のトラ ンジットツアーが旅行業法に基づいた旅行商品であっ たかについては,既に終了しているツアーがほとんど を占めており,その詳細は不明であったことを付言し ておく. そ の 創 始 は,2004(平 成16)年 度 の ビ ジ ッ ト・ ジャパン・キャンペーンの中核事業として,2005(平 成17)年2月5日 か ら2月20 日 に 組 み 込 ま れ た “YŌKOSO! JAPAN WEEKS”で設定された5).成田
国際空港では,2005(平成17)年の2月に1ヶ月限 定で試験的に実施された 6).そして,利用者から好評 であったこともあり,同年 10月からツアー内容を充 実させ,休止期間を挟んで約半年間にわたって実施さ れた. 中部国際空港では,愛知万博閉幕後の需要喚起を図 ることを目的として,成田国際空港よりも遅い2005 (平 成17)年9月 か ら ツ ア ー が 設 定 さ れ た 7),8).関 西国際空港では,翌月の 10月からショッピングツ アーと空港周辺の岸和田市や堺市などを巡る 2コー ス9)~12)を実施した. いずれのツアーも一旦終了したが,2014(平成26) 年9月に国土交通省が主体となり「トランジット旅 客の訪日観光促進協議会(国土交通省ほか,航空会 社,商業施設,日本政府観光局,千葉県,空港周辺自 治体,成田国際空港株式会社(NAA)などで構成)」
が発足し,「Narita Transit Program」開催への準備が 始まった13),14).
こ の よ う に,2005(平 成17)年 か ら2009(平 成
アーが2015(平成27)年から成田国際空港で実施さ れる運びとなった.筆者らは,2015年以前に実施さ れたツアーが数年で終了していたことを踏まえ,訪日 外国人のリピーターを獲得していくためにも,継続的 に実施できるツアーの構築が望ましいと考える. そして,2018(平成30)年度に実施された国土交通 省航空局「国際航空旅客動態調査」15)によると,成田・ 羽田・関西の各国際空港を経由して他国へ向かう通過・ 乗継旅客は年間 214万997人であった(表-2).その うち,成田国際空港の国際線通過・乗継旅客は,年間 186万6,500人で,全体の約87.2%を占めた(表-2). そこで本研究では,わが国に所在する国際空港のな かで,最も通過・乗継旅客が多い成田国際空港に着目 した.主として,トランジット旅客を対象に2015(平 成27)年から実施されているトランジットツアーの
「Narita Transit Program」を研究対象とすることとし た(表-1)16)~18). 1.4 研究の目的 前節で示した,わが国におけるトランジットツアー の歴史的背景および乗継旅客の各空港利用状況から, 本研究では成田国際空港周辺に着目することとした. トランジットツアーのプログラム内容を分析すると共 に,ツアー運営側である成田国際空港株式会社と受入 地域側である成田山新勝寺表参道周辺地域が持つ意識 の差異を明らかにする.そのうえで,今後のまちづく りへ貢献できる可能性を示唆し,地域活性化へ繋げて いくための基礎情報を得ることを目的とした. 表-1 わが国におけるトランジットツアーの歴史 年 月日 場 所 内 容 2005 2/1-2/28 成田国際 空港 空港周辺の観光施設などを訪れ, 日本の歴史や文化を感じられるバスツアー 2005 10/1-12/28 ・空港周辺での買い物(3 時間) ・ 酒蔵見学,日本酒の試飲,成田山新勝寺の参拝と護摩体験 (5 時間半) ・小江戸佐原を散策する1 日ツアー(6 時間半) ・参加者が好きな時間,場所を散策できるタクシーツアー 2006 1/20-2/20 2005-2006 9/26-3/3 中部国際 空港 2005 年に開催された愛知万博「愛地球博」に合わせ 15 コースのトランジットツアーを提案 2005-2009 下記と連動 関西国際 空港 ショッピングツアー(3 時間・200 円) ・りんくう地区の商業施設を訪れる 2005-2006 10/1-2/28 日本文化体験ルート ・犬鳴山温泉・不動尊(所要時間3 時間,800 円) 2006-2007 9/1-2/28 関空キャッスルウォーカーツアー ・ 南海電鉄から発売された企画きっぷ
『KIX Castle Walker Ticket』を利用
・「岸和田城」や「だんじり会館」など日本文化に触れられる 個人参加型ツアー(所要時間3 時間,1,500 円)
2008-2009 5/30-3/31
SAKAI Japan Cool Culture Tours
・ 堺市を訪問し日本の伝統文化や歴史に触れる.南海電鉄 往復乗車券(関西空港駅~堺駅),妙國寺または日本庭園の 入場券,レンタサイクル利用券が付く. (所要時間5 時間,1,600 円) 2014 6/17 観光立国推進閣僚会議・観光立国実現に向けたアクション・プログラム2014 2014 第1 回 9/19 成田国際 空港 トランジット旅客の訪日観光促進協議会 ・ 国土交通省ほか,航空会社,商業施設,日本政府観光局, 千葉県,空港周辺自治体,成田国際空港株式会社などの 構成で発足. 2015 第2 回 1/23 2015 第3 回 2/27
2015- 3/1 「Narita Transit Program」開始
表-2 わが国における空港別通過・乗換旅客数 空 港 名 通過・乗換旅客数 割 合 成田国際空港 1,866,500 人 87.2% 羽田国際空港 181,416 人 8.5% 関西国際空港 93,081 人 4.3% 合 計 2,140,997 人 100.0%
2 .研究方法 研究対象とした成田国際空港のトランジットツアー について,SNSの分析および関係各所へ聞き取り調 査およびアンケート調査を行った.そして,トラン ジットツアーを介した空港と周辺地域との関係性を明 らかにし,本プログラムを実施することによる地元門 前町の波及効果へ繋げていくための基礎情報を得るこ ととした.加えて,これまでは観光客にとって通過点 であった空港周辺が,本プログラムでどのような影響 を受けているのかも明らかにした19),20).そのために, 後述する成田山新勝寺表参道を対象として,その地域 の店舗へ聞き取り調査などを行った. 2.1 トランジットツアープログラムの概要 成田国際空港のトランジットツアー「Narita Transit Program」は,2015(平成26)年の開始当初から成田 国際空港株式会社が一般財団法人成田国際空港振興協 会へ運営を委託して実施されている.なお,表-3に 示したNo. 5-1とNo. 5-2の定期観光バスはJRバス 関東が運行している.
「Narita Transit Program」は,表-3で示した11コー
スが設定されている21).そのうち,表-3 No. 1~No. 5-1 の5コースがボランティアガイド同行型ツアー, 表-3 No. 5-2~No. 11の7コースがセルフツアーであっ た.また,No. 5-1とNo. 5-2の「ウェルカム成田セ レクトバスツアー」は,午前と午後で異なるルートを 設定しているが,1日を通して乗車することが可能で あることから,1つのツアーとしてカウントした. 2.2 成田国際空港で実施するトランジットツアー の対象となる旅客 表-2で 示 し た よ う に,成 田 国 際 空 港 の 国 際 線 通 過・乗継旅客は,年間186万6,500人で,全体の約 87.2%を占めた.しかし,そのほとんどが制限エリア 内で過ごしており,わが国の訪日外国人客数に含まれ
表-3 成田国際空港のトランジットツアー「Narita Transit Program」一覧
No ボランティア 対象地域 ツアー内容 移動手段 所要時間 予約方法 価格 商品 形態 1 同行型 ツアー 成田市 成田山新勝寺と 成田山表参道で 日本文化体験 鉄道および 徒歩 3 時間
・ Narita Airport Transit & Stay Program 専用予約サイト ・ 成田空港内カウンター で直接申込みも可 無料 交通費 のみ 負担 ガイドプログラム 2 芝山町 日本の食文化体験 路線バス およひ徒歩 3 時間 3 多古町 日本人の故郷の 原風景 里山体験 路線バス・ 自転車・ 徒歩 3 時間 4 栄町 江戸の街並みと 歴史コスプレ体験 鉄道・ 路線バス・ 徒歩 3 時間 5-1 成田空港⇒成田山新勝寺⇒ 芝山町の芝山仁王尊⇒ 多古町の道の駅⇒成田空港 ウェルカム 成田セレクトバス ツアー 路線バス 6 時間 火・水・木 午前運行 ・成田空港駅 訪日旅行センター ・JR 成田駅びゅうプラザ ・空港周辺ホテル(一部) ※ 空席がある場合はバス 車内での支払も可 5-1,5-2 各々 2,000 円 5-1,5-2 両方参加 3,500 円 定期観光バス 5-2 セルフ ツアー 成田空港⇒香取神宮⇒ 水郷佐原山車会館⇒ 神崎町の道の駅⇒ 成田空港⇒JR 成田駅 ウェルカム 成田セレクトバス ツアー 路線バス 6 時間 金・土・日 午後運行 6 イオンモール成田 ショッピング& わくわくの「WA」 体験 参加者が 手配 3 時間 いずれも最低所要時間 ・成田空港内
Narita Airport Transit & Stay Program カウンター 無料 ルートと 地図のみ を提供 ガイドプログラム 7 プレミアムアウトレット酒々井 ショッピングバスツアー 2.5 時間 8 イオンモール成田富里 ショッピング& 日本文化体験 3 時間 9 神崎町 日本の文化「発酵」 体験 3 時間 10 MEGA ドンキホーテ ショッピング 2.5 時間 11 川村記念美術館 美術鑑賞 2.5 時間
ていない.そこで,図-1には,成田国際空港におけ る乗継時間別の旅客数を示した.空港に到着してか ら,次便まで比較的時間があるとみられる4時間以 上を空港内で過ごしている旅客は54万4,236人で通 過・乗継旅客全体の約29.2%にあたる. そこで,まずはそれら 4時間以上の乗り継ぎ時間 を必要としている約54万人をメインターゲットと考 えることができる.例えば,乗継時間が 2,3時間程 度であれば,空港内でのショッピングや飲食等で,そ の時間を費やしてしまう.また,いずれもボランティ アガイドが同行しないセルフツアーではあるが,表-3 のNo. 7「酒々井プレミアムアウトレットショッピン グバスツアー」,No. 10「MEGA ドンキホーテショッ ピング」,No. 11「川村記念美術館美術鑑賞」の 3コー スは,トランジットツアーのなかで最も所要時間が少 ない2.5時間の設定であった. 以上のことから,地域の交流を伴い,わが国の文化 に触れてもらうためには,空港における搭乗手続きや 保安検査,出入国審査など,諸手続きの時間を考慮し て,乗り継ぎ時間は4時間以上を有する旅客が対象 と定義した.
3 .「Narita Transit Program」に関する SNS の投稿 「Narita Transit Program」で は,広 告 戦 略 と し て FacebookやTrip advisorを使用したSNSプロモーショ ンを行っており,世界各国の利用者から様々なクチコ ミや評価22),23)が投稿されていた.それらSNSの「ク チコミ投稿」を分析し,本プログラムに対する評価を まとめた. 3.1 Facebook に投稿されていたクチコミ投稿 Facebookページに投稿されていたクチコミは図-2 で示したように,2017(平成29)年11月1日時点 では「106」あった(国別ではアメリカ合衆国から投 稿されたものが「33」と最も多かった).そのうち, 2017年の投稿が「65」と全体の約61.3%を占めてい た.このことから,2017(平成29)年に入り,参加 者の急増が推測される状況にあった. 個々のクチコミに目を向けると,ボランティアガイ ドに対する感謝の気持ちを述べているものが「59」と 全体の約 55.7%であった.さらに,ボランティアガ イドと個人的にSNS上で繋がりを持っているツアー 利用客もおり,ガイドスタッフが要になっていた.そ の他のクチコミは,まだトランジットツアーへ参加し たことがないユーザーが,これから参加したいという 願望を綴ったクチコミもあり,ツアー利用客が新規の 客を呼び込むという現象も起きていた. 3.2 Trip advisor に投稿されていたクチコミ投稿 Trip advisorページに投稿されているクチコミは, 図-3で示したように,2017(平成29)年11月1日 時点で「49」あった(国別ではFacebookページと同 様にアメリカ合衆国から投稿されたものが「13」と 1 時間未満 0 . 2 % 1 〜2 時間 1 3 . 6 % 2 〜3 時間 3 4 . 3 % 3 〜4 時間 2 2 . 8 % 4 〜5 時間 1 2 . 6 % 5 〜6 時間 3 . 8 % 6 〜1 2 時間 1 0 . 2 % 1 2 時間以上 2 . 5 % 図-1 成田国際空港における乗換時間別の構成 図-2 Facebook クチコミ投稿ユーザー国籍内訳(N=106) 図-3 Trip advisor クチコミ投稿ユーザー国籍内訳(N=49)
最も多かった).そのうち,2017(平成29)年に投稿 されたものが「34」と全体の約69.4%であり,Trip advisorページにおいても,同年に入り,参加者の急 増が推測された. トリップアドバイザーの評価点は,「とても良い」 から「とても悪い」の5段階評価である.投稿され て い る「49」の ク チ コ ミ の う ち,「と て も 良 い」が 「48」,「良い」が「1」であった.全評価の平均は 4.98 と非常に高かったため,その分析は対象としないこと とした. 個々のクチコミを見ていくと,ボランティアガイド に対する感謝の声が「49」のうち「47」でみられ, 全体の約95.9%を占めた. 3.3 クチコミに書き込まれたツアー利用客による 評価の視点 本研究で対象としたトランジットツアーが無料(参 加者は交通費と昼食などを負担するのみ)で実施され ているにもかかわらず,ツアー利用者は,質の高いボ ランティアガイドによるもてなしに注目していた.ト ランジットツアーの舞台となる各所をボランティアガ イドが流暢な英語により案内が行われ,不自由なくコ ミュニケーションが図れることを最も評価していた. そして,ツアー自体の行き先は決まっているもの の,その行程は参加者各々の乗り継ぎ時間に合わせて アレンジされている.併せて,参加者の希望やボラン ティアガイドが勧める店舗を提案することも評価され る一要因であった. ツアー中の具体な体験では,成田山新勝寺での護摩 祈祷や読経の見学,成田山参道店舗での買い物などが 挙げられていた.そのほかには,美しい田園風景を眺 めながら地元食材を用いた食事に加えて,自身がお茶 を立てたり,着物を着たりする様々な日本文化や生活 の体験がツアー参加者の満足度を高めていた. その他には,ツアー出発前の受付カウンターにおい て,参加者の乗り継ぐ航空機の出発時間を把握した り,大きな荷物を預けるためのコインロッカーを案内 したりするなど,細やかな配慮がなされていることも 評価に繋がっていた. 少ないながらも,研究対象としたトランジットツ アーへの参加によって,日本を乗り継ぎの中継地点と して捉えるのではなく,観光の目的地とした旅行の計 画を立てるきっかけになったとするクチコミもあっ た.訪日外国人客の誘致にもつながる可能性も示唆さ れる状況にあった.
Facebookページ,Trip advisorページとも,その評 価については類似の傾向がみられた.このことから, トランジットツアーの要になっているのは「ボラン ティアガイド」であると考えられる.そこで,ツアー を運営する成田国際空港株式会社(NAA)とツアー 客を引率するボランティアガイドに対する聞き取り調 査を行うこととした. 4 .トランジットツアーに関する聞き取り調査 表-5に示した「Narita Transit Program」の運営主体 である成田国際空港株式会社とツアー催行の要となっ ているボランティアガイドに対し,表-4に示した項 目に沿って聞き取り調査を行った.なお,これら関係 各所への聞き取りについては,各代表者へヒアリング を行い,組織として代表した意見を総括した内容と なっている. 4.1 成田国際空港株式会社に対する聞き取り調査 成田国際空港株式会社に対する聞き取り調査では, ツアー対象地域の成田山新勝寺表参道からは高い評価 を得ており,その関係は良好であるとの回答を得た. 今後は,トランジットツアー自体を持続可能なプログ ラムに仕立て上げていくかが課題であるとの回答を得 られた. 表-4 ツアー主催者(成田国際空港(株))およびボランティアス タッフへの聞き取り調査項目 No 聞き取り調査における質問項目 1 ・ ツアー対象地域(成田山新勝寺表参道周辺店舗)との 関係性 2 ・ツアー参加者の急増に伴う課題 3 ・ツアー催行時における参加者への配慮事項 4 ・参加者の意見を踏まえたツアー内容の課題および改善点 5 ・ボランティアガイドの構成・ガイドへ申し込みをした理由 6 ・ボランティアガイドの体制 表-5 本研究で実施した聞き取り調査の概要 調査対象 調査日 対象者 実施場所 成田国際空港株式会社 Narita Transit Program 担当職員 2017/10/28 社員2 名 成田国際空港株式会社本社 ボランティアガイド スタッフ 2017/10/28 ガイド 1 名 ボランティア ガイド控え室 (成田国際空港内)
4.2 ボランティアガイドに対する聞き取り調査 ボランティアガイドは,パイロットやCA(キャビ ンアテンダント)といった航空関係者,ツアーガイド などの第一線を退いた人が多い.ボランティアガイド を行うことで,老後の楽しみが増えるなど,生きる活 力に繋がっていることも聞き取り調査から明らかと なった.また,ボランティアガイドへ参加した理由 は,自身が有する英語の実践や 2020年に開催される 東京オリンピック・パラリンピックへ向けて何かしら の役に立ちたいと考えていた. ボランティアガイドは,通常8~10 人が控え室に 常駐しており,各々のツアーは 2人1組で催行され ている.1つのツアーグループは,最大10人程度の 参加者を想定しているとのことであった.ボランティ アガイドは,自身の参加可能日をインターネット上で 申し込むシステムとなっている.しかしながら,その ほとんどの実施日が常に満員で,ガイドを申し込む場 合にはキャンセル待ちの状況が続いている. 4.3 ボランティアガイドを実施するうえでの課題 ボランティアガイドがトランジットツアーを実施す るにあたっては,参加者の国民性や信仰する宗教など によって異なった配慮が必要になることに難しさを感 じていた.例えば,交通量が多いアジア圏からの参加 者は,車が近づいても道を開けないことがあったり, ベジタリアンのツアー参加者に対しては参道の店舗を 紹介できなかったりするなどの課題を抽出することが できた.参加者の多様性に対して,各々のボランティ アガイドに知識や経験の蓄積を必要としている点が浮 き彫りとなった. また,参加者の急増により,大人数でツアーを催行 せざるを得ない回数が増えた.個々のツアー参加者の 行きたい場所が異なった場合は,行程のどこに重点を 置いて各所を巡るべきかに頭を悩ませていた.以上の ことから,成田国際空港株式会社およびボランティア ガイドの双方は,成田山表参道各店舗との関係は良好 であるという認識を持っていた.そして,その成田国 際空港株式会社とボランティアガイドの二者は,ツ アー参加者の急増という共通の問題を抱えていたもの の,それぞれ異なった課題解決に向けて動き始めてい ることが分かった. 5 . トランジットツアー実施による空港周辺地域への 効果 参加者の約40%がインターネットを経由して,ツ アーを申し込んでいる状況から24),3.1および 3.2で 示した「SNSの口コミ投稿調査」と「関係者に対す
る聞き取り調査」をもとに,「Narita Transit Program」
の11コースのなかで,最も人気のある表-2 No. 1の 「成田山新勝寺と成田山表参道で日本文化体験」コー スに着目した 20). 本コースは,ボランティアガイドと共に成田国際 空港から京成電鉄に乗車し,京成成田駅から表参道 を散策しながら成田山新勝寺周辺を巡る 3時間のツ アーである.その行程には,図-4中でも示した成田 観光館で毎週木曜日に実施される無料のティーパー ティー,有料であれば成田山新勝寺での写経体験や護 摩祈祷,まちかどふれあい館における着物・浴衣の着 付け体験を参加者が自由に組み込むことも可能である. 本コースが空港周辺地域へどのような効果を与えて いるのか,そのルート上にある表-6に示した成田山 新勝寺表参道の店舗へ図-4で示した調査票を配布し 図-4 参道商店へのアンケート調査項目(調査票)
て,アンケート調査を実施した.そして,研究対象 とした地域を表-7に示したまちづくり協議会ごとに 4分割をして,エリアごとの特性を見出すこととし た(図-5).なお,まちづくり協議会とは1987(昭和 62)年に開始された「新勝寺表参道における景観整備 事業」において,電線の地中化や景観に関する指針を 決定する際に設立された25).
5.1 未だ知られていない「Narita Transit Program」 成 田 山 新 勝 寺 表 参 道 の 各 店 舗 へ「Narita Transit
Program」を知っているか,という質問では「知って
いる」と回答したのは全体の 72.8%に昇った.これ
ら,「Narita Transit Program」を知っていると回答し
た店舗の位置については,図-6中に記号で示した. このように,トランジットツアーの認知度が高かった のは,そのツアー内容を知っている店舗がアンケート に回答しやすかったからであったとも考えられる. その結果,「本町・田町界隈/門前広場」の1店舗 を除いて,図-6中の赤線で示した京成成田駅と成田 山新勝寺を繋ぐトランジットツアーのルートに沿っ て,その存在を知っていると回答した店舗が並んだ. 他方,本プログラムを開始して,3年が経とうとし ているにも関わらず,27.2%の店舗は「Narita Transit Program」の存在を「知らない」と回答している状況 にあった.
5.2 「Narita Transit Program」が認知された時期 「Narita Transit Program」の存在を知っていた店舗 へツアーをいつ知ったのか,という質問を行った. トランジットツアーが開始された2015(平成27) 年と回答したのが37.5%,ツアー開始翌年の2016(平 成28)年に,その存在を知ったと回答したのは半数 の50.0%という割合であった(図-7).特出すべきは, 12.5%の店舗がツアー開始2年目の2017(平成29) 年に入って,その存在を知ったと回答した. ほぼ毎日,トランジットツアーが稼働し,その参加 者は参道店舗へ足を運んでいる.筆者らは,ツアー開 表-7 まちづくり協議会ごとの店舗分布 エリア まちづくり協議会 対象店舗数 対応色 成田駅前/ 花崎町界隈 花一参道 まちづくり協議会 11 店舗 ▲ 上野界隈 上町まちづくり 協議会 7 店舗 □ 仲町・幸町界隈 幸和会・仲町 まちづくり協議会 17 店舗 ● 本町・田町界隈/ 門前広場 本町振興会 5 店舗 ■ 表-6 成田山新勝寺表参道各店舗への調査詳細 調 査 地 調 査 日 対象店舗数 回収率 成田山新勝寺表参道 2017 年 11 月 6 日 22/40 店舗 55% 図-5 調査対象とした店舗分布図 JR成 田駅 成田山新勝寺 総門 ▲成田駅前/花崎町界隈 □ 上町界隈 ● 仲町・ 幸町界隈 ■ 本町・田町界隈/門前広場 200m まちかどふれあい館 成田観光館 51 至 成田空港 至 千 葉 ・ 東 京 至 成田 空港 至 我孫 子 J京成成田 駅
図-6 「Narita Transit Program」を「知っている」または「知らない」 と回答した店舗の位置 JR成 田駅 成田山新勝寺 総門 まちかどふれあい館 成田観光館 ▲ 成田駅前/花崎町界隈 上町界隈 ● 仲町・ 幸町界隈 ■ 本町・田町界隈/門前広場 ツアーで利用するルート ツアーを「知っている」 ●■ と回答した店舗 ツアーを「知らない」 ●■と回答した店舗 200m 51 至 千 葉 ・ 東 京 至 成田 空港 至 我孫 子 J京成成田 駅
始後の早い段階で,その存在を参道店舗が認知してい
たと推測していた.しかしながら,1割余の店舗が2
年余を経て後にそのツアーの存在を知ったということ は,ツアーの地元への周知方法等に問題があったので はないかと推察された.
5.3 「Narita Transit Program」を認知したきっ かけ
「Narita Transit Program」をツアー催行時に参加者 が街を歩いている様子で認知したと回答したのは全体 の約37.5%,ボランティアガイドの姿を見て知ったの が約56.3%と最も多い結果となった(図-8).それら を合わせた約 93.8%が,トランジットツアーを主催 している成田国際空港株式会社等の関係者からではな く,先述した外部からの情報を得ることでトランジッ トツアーの存在を認知していた.さらに,トランジッ トツアーの詳細を知っている店舗は存在しておらず, ツアーの舞台である成田山参道店舗が,その内容を知 らない状況では,対応しようにも,対応することがで きないと考えられる. 5.4 トランジットツアー開始後の参道活性化 「Narita Transit Program」が開始され,そのツアーに よる参道活性化を感じるか,との問いに対して「感じ る」「少し感じる」と回答したのは,全体の62.5%で あった(図-9).その一方で,「感じない」「あまり感 じない」と回答した店舗も存在していた. なお,ここでいう参道における具体な活性化の内 容について,参道店舗へのアンケートでは図-4のQ6 で示したように自由記述とした.参道の活性化を「感 じる」あるいは「少し感じる」と回答したのは10 名 であった.そのうち,7名の回答があり,内訳は3名 が「参道のにぎわい」,2名が「店舗におけるツアー 客立ち寄りの増加」,2名が「乗り継ぎの時間に,成 田山や参道の良さを外国人観光客に知ってもらえてい る」というものであった. 以上を踏まえ,ツアーの存在を知っているかどう かとツアーによる活性化を感じるかという点は,相 関が強いと思われる.そこで,図-6で示した「Narita Transit Program」を知っていると回答した店舗のうち, 図-9の参道活性化を「感じる」「少し感じる」と回答 した店舗を赤色,「あまり感じない」「感じない」と回 答した店舗を青色として図-10 中に示した. その結果,参道活性化を「感じない」「あまり感じ ない」と回答したすべての店舗が,図-10[1]成田駅 前/花崎町界隈,[2]本町・田町界隈/門前広場に該 当した. 図-10[1]成田駅前/花崎町界隈のエリアで活性化 を感じない理由としては,トランジットツアーの目的
図-7 「Narita Transit Program」の存在をいつ知ったか(N=16)
37.5% 50.0% 12.5% 2015年 2016年 2017年
図-8 「Narita Transit Program」の存在をどのように認知したか (N=16) 6.2% 37.5% 56.3% インターネット ツアー催行時 ボランティアガイド
図-9 「Narita Transit Program」開始後,参道や店舗が活性化した と感じるか(N=16) 12.5% 50.0% 25.0% 12.5% 1.0% 感じる 少し感じる あまり感じない 感じない わからない
図-10 「Narita Transit Program」を知っていると回答した店舗のう ち参道活性化を「感じる」または「感じない」と回答した 店舗
地である成田山新勝寺周辺はもちろん,様々な体験が できる成田観光館やまちかどふれあい館,店先で鰻を 焼く老舗の店舗が集中する上野界隈や仲町・幸町界隈 の店舗へツアー客が立ち寄ることが多い.そのため, 図-10[1]成田駅前/花崎町界隈は観光客が立ち止ま ることは少なく,素通りの場合が多いものと推察され る. 図-10[2]本町・田町界隈/門前広場に該当する店舗 は,成田山新勝寺総門を超えた位置に所在しており, 同図赤線部のツアールートから外れていると推測され る. 町の活性化を「少し感じる」「感じる」と回答した 店舗は,上野界隈と仲町・幸町界隈に集中しており, それぞれのエリア特性が明確に現れる結果となった. 5.5 「Narita Transit Program」におけるツアー
関係者と参道店舗とのコミュニケーション 「Narita Transit Program」の関係者であるボランティ アガイドや成田国際空港株式会社と成田山参道店舗と のコミュニケーションが取れているか,という質問に 対して「よく取れている」と回答した店舗は存在しな かった.その一方で,約81.3%が「取れていない」「あ まり取れていない」と回答した(図-11). 成田山表参道の各店舗から話を聞くなかで,「ツアー 内容を知らないため対応できない」や「店舗として観 光客のニーズを知りたい」など,ツアー内容の開示を 求める声に加えて,ボランティアガイドと話す機会を 求める声も多く挙がった.以上のことから,ツアーの 運営主体である成田国際空港株式会社,ボランティア ガイド,成田山新勝寺表参道の 3者間では,コミュ ニケーションがとれていない現状であることがわかっ た.このようなことから,成田山表参道の各店舗は, ツアー内容を知らないため,トランジットツアーに対 する方策を定め切れていない状況が浮き彫りとなった. 5.6 まとめ
「Narita Transit Program」のツアー全体を通して, プログラム関係者である成田国際空港株式会社,ボラ
ンティアガイドおよび成田山参道店舗の 3者間で連
携がとれていないことが明らかになった.関係者それ ぞれのプログラムに対する評価の食い違いや今後の方 向性に対する差異がみえ,その改善が急務であると考 えられる(表-8).現状では「Narita Transit Program」 をまちの活性化のツールとして使い切れていない状況 であった.今後,トランジットツアーをまちの活性化 ツールとして機能させるためにも,先の3者で足並 みを揃える機会を創出すべきである. 6 .考察 本研究では,トランジットツアーを実施するにあ たって,運営側である成田国際空港株式会社およびボ ランティアガイドは,ツアーの行き帰りで足を向ける 成田山表参道との関係について,連携が上手く取れて いると回答した.一方,その受入側である成田山表参 道は,運営側との連携について「よく取れている」と 回答した店舗は皆無であり,「取れていない」「あまり 取れていない」と回答した店舗が約8割にものぼっ た.このように,運営側と受入側の間で,ツアー実施 時の課題に対する齟齬が生じていることを抽出するこ とができた. そこで今後は,成田山表参道店舗が主導するトラン ジットツアー,いわゆる着地型のツアーを作り上げる ことで,聞き取り調査およびアンケート調査で明らか となった「コミュニケーション不足の解消」や「関係 者の連携上昇」の解消が狙えると考えられる.他方, 参道の各店舗へ聞き取り調査をするなかで,「参道の 店舗でも若い世代が頑張っている」という声が随所で 挙がっていた.例えば,「NARITA酒フェスティバル」 図-11 ツアー関係者と参道店舗とのコミュニケーションが取れて いるか(N = 16) 0.0% 18.75% 31.25% 50.0% よく取れている 取れている あまり取れていない 取れていない 表-8 トランジットツアーに関係する 3 者の整理 成田国際空港 株式会社 (NAA) 成田山表参道 各店舗 ボランティア ガイド 評価指標 参加者の 満足度を上げる 参加人数の 増加を目指す ツアーの中身を 知らないため方 向性を設定でき ていない ツアー参加者の満 足度を上昇させる 目的 ツアー参加者, 表参道各店舗か ら高評価を得て 事業化 訪日外国人で自 店 の ビ ジ ネ ス チャンスを創出 し,地域活性化 ・老後の趣味 ・ ツアー客を満足 させる ・ 2020 年に向けて 役に立つ 目標 収益の 回収・有償化 ツアー内容が分 からないため目 標が設定できて いない 自身のツアー内容 をより良いものに する
など,参道のまちづくり協議会が主催となるイベント も開催され,参道店舗群も観光需要を喚起させる十分 な力を持っていた. そのほかにも,外国人観光客を対象とするトラン ジットツアーを対象とする場合は,歌舞伎・市川團十 郎と成田山新勝寺の関係や出開帳などのエンターテイ メント性を付加することで広報効果も高まるのではな いかと考えられる. 本プログラムは,明確な観光対象である成田山新勝 寺へ参拝し,空港へ戻るというツアーである.ボラン ティアガイドの努力によって,成田山新勝寺への行き 帰りに門前町を楽しむことは実施されていたものの, 参道店舗を巻き込むまでは到達できていなかった.主 催者である成田国際空港株式会社と受入側の参道店舗 は,寺社仏閣へ訪れることだけを目的とせず,門前で の様々な体験をも加え,それらが一揃えになること で,ツアー自体の大きな魅力や参加者の楽しみとなる ことを理解する必要がある. 本章では,今後の成田山表参道におけるトランジッ トツアーの展開について,「主催者と地元との意識に 乖離があること」,「ガイドツアーを介してトランジッ トツアーの存在を知ったこと」,「新しい取り組みの展 開が模索されていること」等,地元の成田山表参道へ の効果および展開の可能性を有していることを述べて きた. その一方で,コロナ禍のなかにあって,訪日外国人 観光客が激減しており,回復には数年の期間を要する と推察される.さらに,航空機の運用効率化によるト ランジット時間の短縮化が進められており,本研究で 対象としたツアーの将来性は明るいとは言えない状況 でもある.それらを勘案し,トランジットツアーが一 つの契機となって得られた上述の課題とその解消への 道筋を現在模索されている新しい生活様式に基づく地 元住民の誘客へも繋げる手法へと展開されることの可 能性も有するといえる.これらは,今後の研究課題と して示唆・展開していきたい. 謝辞 本研究は,2017(平成29)年の航空政策研究会「若 手研究者研究助成」を受けて実施したものです.この 場をお借りして感謝申し上げます. 参考文献 1)JTB総合研究所(2018):観光学基礎 観光学入門のため の14章,株 式 会 社JTB総 合 研 究 所,pp. 233-248安 達 清 治 (2006):日本の国際空港における乗継ぎ客等への空港の利便 性の研究,大阪明浄大学紀要,第6号,pp. 1-7. 2)安達清治(2002):関西空港を利用したトランジット客の 観光促進のためのトランジットツアーの研究,観光研究論集, 第1号,大阪明浄大学観光学研究所,pp. 1-12. 3)花岡伸也・康書陽・宮本秀晴・角田昂哉(2017):北東ア ジアのトランジット空港選択の実態とその要因,運輸政策研 究,Vol. 19, No. 4, pp. 25-31. 4)西山孝樹(2018),トランジットツアーに関する研究:地 方空港と周辺地域の持続的な繋がりを目指して,2017年度研 究助成論文集,航空政策研究会,pp. 13-86. 5)国土交通省総合政策局国際観光推進課:“YOKOSO! JAPAN WEEKS”におけるトランジット(乗換)客向け空港周辺ツ アーの実施及び入国審査場における取組みについて,日本語, http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/01/010128_.html,2019.4.1. 6)成田国際空港株式会社:“YŌKOSO! JAPAN WEEKS”にお ける成田空港の行事等について,日本語,https://www2.naa.jp/ press.nsf/6bc6b86dfb7e8379492567df0034dd37/2d06d134118ca0 1949256f9b000d3386/$FILE/ようこそJAPAN.pdf#search=%27成 田+2005+トランジット+ツアー%27,2019.4.1. 7)朝日新聞:乗り継ぎ時間に愛知ぶらり旅見学客もOK 中 部空港,秋から,朝日新聞,2005年5月19日朝刊,p. 1. 8)朝日新聞:中部空港周辺ツアー,15コースを提案 協議会 発足【名古屋】,朝日新聞,2005年5月24日朝刊,p. 30. 9)関西国際空港株式会社:空港活性化調査事業「トランジッ トツアー」の実施について,日本語,http://www.nkiac.co.jp/ news/2005/202/050928_2.pdf#search=%27関西空港+トランジッ トツアー%27,2019.4.1. 10)関 西 国 際 空 港 株 式 会 社:「関 空 ト ラ ン ジ ッ ト ツ ア ー 2006」の 実 施 に つ い て,日 本 語,http://www.nkiac.co.jp/ news/2006/58/0608302.pdf,2019.4.1. 11)朝日新聞:関空のトランジットツアー,岸和田→堺に変 更 堺「知名度アップの好機」/大阪府,朝日新聞,2008年6 月11日朝刊,p. 26. 12)関西国際空港株式会社:「関空トランジットツアー 2008」 の実施について,日本語,http://www.nkiac.co.jp/news/2008/ 750/kankutransit2008.pdf,2019.4.1. 13)国土交通省航空局・観光庁:トランジット旅客の訪日観 光促進協議会の設置について(案),日本語,http://www.mlit. go.jp/common/001055471.pdf,2019.4.1. 14)国土交通省観光庁:トランジット旅客の訪日観光促進 事業の進め方について(案),日本語,http://www.mlit.go.jp/ common/001055476.pdf,2019.4.1. 15)国土交通省航空局(2018):平成30年度国際航空旅客動 態調査~集計結果~,国土交通省,p. 191. 16)朝日新聞:乗り継ぎ客ツアー,離陸へ 成田空港で2種 類,ボランティアガイド募集/千葉県,朝日新聞,2015年1 月24日朝刊,p. 29.
17)国土交通省観光庁:「Narita Transit Program」を3月1日 より開始します!,日本語,http://www.mlit.go.jp/kankocho/ news03_000121.html,2019.4.1.
18)朝日新聞:空き10時間,飽きないひと時 成田・国際線 乗り継ぎ外国人の周辺ツアー/千葉県,朝日新聞,2015年3
月2日朝刊,p. 29. 19)朝日新聞:成田空港,通過だけじゃ損 空港周辺を巡る観 光バスツアー開始/千葉県,朝日新聞,2017年4月2日朝刊, p. 27. 20)朝日新聞:外国人旅行者向け,成田ガイドを募集/千葉 県,朝日新聞,2017年5月6日朝刊,p. 19.
21)Narita Airport Transit & Stay Program:NARITA INTERNATIONAL AIRPORT CORPORATION,英語,https:// www.narita-transit-program.jp,2019.4.1.
22)Narita Airport Transit & Stay Program Facebookページ: 英語,
https://ja-jp.facebook.com/Narita-Airport-Transit-Stay-Program/,2019.4.1.
23)Narita Airport Transit & Stay Program Trip advisorページ: 英語, https://www.tripadvisor.fr/Attraction_Review-g298161- d10333820-Reviews-Narita_Airport_Transit_Stay_Program-Narita_Chiba_Prefecture_Kanto.html,2019.4.1. 24)成田国際空港株式会社(2018):成田空港~その役割と現 状~,成田国際空港株式会社,p. 114. 25)橋本暁子・齋藤譲司・亀川星二・西田あゆみ・津田慶吾・ 井口梓・松井圭介(2010):成田山新勝寺門前町における街並 み整備と商業空間の変容,地域研究年報,Vol. 32,筑波大学人 文地理学・地誌学研究会,pp. 1-41.