Ⅰ.緒 言 2018 年,受動喫煙防止を強化する改正健康増進法の 制定に伴い,望まない受動喫煙の防止を図るため,多数 の者が利用する施設は一定の場所を除いて禁煙すること となった (1)。また,労働安全衛生法においても職場の 快適職場形成の一環という観点ではなく,労働者の健康 © 日本衛生学会
飲食店における禁煙実施状況の年間推移に関連する人口・世帯,
経済・労働要因:都道府県別資料による検討
川村 晃右
1,2,中井 あい
2,山田 和子
2,森岡 郁晴
2 1京都橘大学看護学部看護学科 2和歌山県立医科大学大学院保健看護学研究科Association of Annual Transition of Implementation of Nonsmoking at Eating
and Drinking Establishments with Indices on Population/Household
and Economy/Labor: Examination Using Prefectural Data
Kosuke KAWAMURA
1,2, Ai NAKAI
2, Kazuko YAMADA
2and Ikuharu MORIOKA
21Department of Nursing, Faculty of Nursing, Kyoto Tachibana University
2Graduate School of Health and Nursing Science, Wakayama Medical University
Abstract
Objectives: The purpose of this study was to clarify the relationship of the annual transition of implemen-tation of nonsmoking at eating and drinking establishments with indices of population/household and economy/labor by prefecture.
Methods: The prefectural rates of eating and drinking establishments implementing nonsmoking (here-after, nonsmoking rate) were computed in a year using the data from “Tabelog®”. Forty-seven prefectures were classified by hierarchical cluster analysis into “prefecture clusters” 1 to 5 in descending order of the median of nonsmoking rates. The indices of population/household (e.g., percentage of the population aged 65 years and over and percentage of nuclear family household) and economy/labor (e.g., prefectural income per capita and percentage of construction and mining workers) were classified by hierarchical cluster analysis into 11 “index clusters”, and the representative index in each index cluster was extracted from the results of the Jonckheere-Terpstra test. An ordinal logistic regression analysis was performed using the numbers 1 to 5 of prefecture clusters as dependent variables and the indices representing the index clusters as independent variables.
Results: The percentage of the population aged 65 years and over and the percentage of construction and mining workers were positively related to the order of prefectural clusters.
Conclusions: To promote implementation of nonsmoking in eating and drinking establishments in prefec-tures especially in those with larger numbers of elderly people and construction and mining workers, it is important to inform the persons in charge that implementation of nonsmoking does not affect the number of customers.
Key words: eating and drinking establishments(飲食店),smoking cessation(禁煙),trend in a year(年間推移),
cluster analysis(クラスター分析)
受付2020 年 10 月 19 日,受理 2021 年 1 月 15 日 Reprint requests to: Kosuke KAWAMURA
Department of Nursing, Faculty of Nursing, Kyoto Tachibana University, 34 Yamada-cho, Oyake, Yamashina-ku, 607-8175 Kyoto, Japan FAX: +81(75)574-4274
の保持増進の観点から受動喫煙防止対策が求められるよ うになった (2)。 受動喫煙を受ける場所は,飲食店が最も多いとされて いる (3)。飲食店においても改正健康増進法により 2020 年4 月より原則屋内禁煙となった。しかし,飲食店の種 別によっては,受動喫煙対策が進んでいない (4)。筆者 らは都道府県別の飲食店の受動喫煙対策と医療費との関 連を検討し,禁煙の実施は医療費を抑える可能性がある ことを明らかにし (5),改正健康増進法に沿った受動喫 煙対策の実施は重要であることを示してきた。改正健康 増進法の制定以降,段階的に進められてきた飲食店の禁 煙化であるが,直近でも飲食店での受動喫煙対策が進ん でおらず,受動喫煙を受けている状況であるという報告 もみられることから (6),飲食店においても受動喫煙対 策に向けた支援は急務である。 禁煙化が進まない理由には,顧客を失うことが心配と いう意見が多く (7),顧客の喫煙行動が禁煙化に影響す ることが考えられる。人々の喫煙行動には自治体の規模 や人口の多い都市部での居住,世帯形態 (8),世帯年収 が (9),禁煙対策事業への取り組みには人口規模が (10), さらに受動喫煙には職種が影響している (6)。飲食店に おいても,地元の人口・世帯,経済・労働要因によって, 受動喫煙対策が進みにくい可能性がある。しかし,飲食 店の禁煙化と人口・世帯,経済・労働要因との関連につ いて明らかにした報告はみられない。 そこで,本研究では飲食店の受動喫煙対策として段階 的に進められている禁煙実施状況の年間推移をとりあ げ,人口・世帯,経済・労働要因との関連について都道 府県別の資料を用いて検討し,飲食店における受動喫煙 対策促進に向けた資料を得ることを目的とする。 Ⅱ.方 法 1.飲食店における禁煙実施状況の把握方法について 本研究では,先行研究と同様に (5),カカクコムグルー プが運営する通称「グルメサイト」の「食べログ」を用 いて (11),飲食店の禁煙実施状況を把握した。この方 法は,飲食店がグルメサイトに登録した情報を活用し て,簡易に禁煙・喫煙状況を把握できる方法である。改 正健康増進法は喫煙室の設置による喫煙を認めているた め,本研究では分煙を含む禁煙化の状況を確認すること とした。 「食べログ」による禁煙実施状況の把握方法およびデー タの妥当性については,先行研究 (5) でも検討されてい る。他のグルメサイトよりも登録状況が良好で,禁煙・ 喫煙情報の提供率は約半数であるため (5),本研究にお いても「食べログ」によるデータを用いることとした。 近年では「ケムラン」という屋内完全禁煙の飲食店を検 索できるグルメサイトも出てきてはいるが (12),登録数 はまだ少なく,禁煙実施状況を把握できるものではない。 2019 年 5 月から 2020 年 4 月までの毎月末に都道府県 別の禁煙(分煙を含む)店舗数を把握した。「禁煙・喫煙」 の欄を禁煙(分煙を含む)とした場合の店舗数を分子,「指 定なし」とした場合の店舗数(全件数)を母数とし,禁 煙(分煙を含む)店舗の割合(以下,禁煙店舗の割合) を算出した。また,「食べログ」の登録状況と禁煙・喫 煙情報の提供率を確認するために,「喫煙可」とした場 合の店舗数についても確認した。 2.都道府県別の喫煙率,人口・世帯要因,経済・労働 要因の把握方法について 国民生活基礎調査より2016 年の喫煙率を把握した。 人口・世帯要因として,政府統計の総合窓口により (13),2018 年の 15 ~ 64 歳人口割合,65 歳以上人口割合, 人口増減率,転入率(日本人移動者),転出率(日本人 移動者),総面積1 km2当たりの人口密度,2015 年の昼 夜間人口比率,核家族世帯割合,単独世帯割合,65 歳 以上の世帯員のいる世帯割合,高齢夫婦のみの世帯の割 合,高齢単身世帯の割合を把握した。 経済・労働要因として,政府統計の総合窓口により (13),2015 年の 1 人当たり県民所得,2018 年の実収入(二 人以上の世帯のうち勤労者世帯)(1 世帯当たり 1 か月), 2015 年の労働力人口比率(男),労働力人口比率(女), 就業者比率,第1 次産業就業者比率,第 2 次産業就業者 比率,第3 次産業就業者比率,共働き世帯割合,高齢就 業者割合(65 歳以上)を把握した。また,職場で受動 喫煙を受けている者の割合が高かった販売・サービス業, 保安,輸送・機械運転,建設・採掘業についても把握す ることとし (6),平成 29 年就業構造基本調査より (14), 2017 年の販売従事者数,サービス職業従事者数,保安 職業従事者数,輸送・機械運転従事者数,建設・採掘従 事者数を分子とし,総数を分母としたそれぞれの割合を 把握した。 3.分析方法 禁煙化の進み具合を加味して検討するために,禁煙店 舗の割合の年間推移を評価することとし,各都道府県に おける毎月末の禁煙店舗の割合を用いて,Ward 法によ る階層クラスター分析を行った結果,47 都道府県は 5 つのクラスターに分類された。本研究では禁煙化が進み づらい要因を検索するために,各クラスターに属してい る都道府県で求めた年間の禁煙店舗の割合(データ数は 12×クラスターに属する都道府県の数)の中央値が大き い順に,都道府県クラスター1 ~ 5 を設けた。 このクラスター別に,喫煙率,人口・世帯,経済・労働 要因の中央値を求めて比較した。比較には,Jonckheere-Terpstra 検定を用いた。 人口・世帯,経済・労働要因の要因間のSpearman の 順位相関係数を算出したところ,強相関がみられる要因 が多かったため,先行研究 (15) を参考にグループ間平 均連結法による階層クラスター分析を用いて,要因を分 類した。要因のクラスター毎に属している要因の順位相
関係数を確認し,強相関がみられた場合は, Jonckheere-Terpstra 検定の結果を加味して一方を採用するなどして, 各クラスターの代表となる要因を抽出した。 禁煙店舗の割合のクラスターの番号を順序変数の従属 変数とし,要因のクラスター毎に代表値として抽出され た人口・世帯,経済・労働要因を独立変数とした順序ロ ジスティック回帰分析を行った。 分析にはIBM® SPSS® Statistics 24 を用い,統計学的有 意水準は5% とした。 4.倫理的配慮 本研究で用いた情報は「食べログ」の公開情報であり, 検索結果としては店名や住所,価格帯などが表示される。 このうち,本研究で用いた情報は,禁煙・喫煙情報に基 づく内容のみであるが,本研究によって登録店舗が特定 されることのないように配慮した。 Ⅲ.結 果 1.飲食店における禁煙実施状況について 2020 年 4 月に「食べログ」に登録されていた都道府 県別の店舗数(全件数)の合計は905,929 件であった。 全件数のうち,禁煙(分煙を含む)の店舗は229,192 件, 喫煙可の店舗は198,241 件であった。全店舗に占める禁 煙・喫煙情報提供率は47.2% であった。 都道府県別でみた場合,例えば2020 年 4 月の和歌山 県では,全件数は7,425 件で,禁煙(分煙を含む)の店 舗は1,138 件であり,禁煙店舗の割合は 15.3% であった。 2.禁煙店舗の割合の年間推移のクラスターによる分類 について 各都道府県における禁煙店舗の割合の年間推移を用い て階層クラスター分析のデンドログラムを描いた結果, 47 都道府県は 5 つのクラスターに分類された。 各クラスターに属している都道府県で年間の禁煙店舗 の割合の中央値を求め,大きい順に,東京,神奈川,愛 知などで構成される群を都道府県クラスター1,北海道, 群馬,奈良などで構成される群を都道府県クラスター2, 岩手,宮城,栃木などで構成される群を都道府県クラス ター3,秋田,山形,福島などで構成される群を都道府 県クラスター4,青森,福井,和歌山などで構成される 群を都道府県クラスター5 とした(表 1)。各都道府県 クラスターにおける禁煙店舗の割合の年間推移は,ほぼ 平行に推移していた(図1)。 3.都道府県クラスター別の喫煙率,人口・世帯,経済・ 労働要因の比較について 喫煙率は,Jonckheere-Terpstra 検定の結果,有意な傾 向はみられなかった(表2)。 人口・世帯要因では,都道府県クラスターの番号が高 いほど,15 ~ 64 歳人口割合,人口増減率,転入率,人 口密度が低い傾向を,65 歳以上人口割合,65 歳以上の 世帯員のいる世帯割合,高齢夫婦のみの世帯の割合,高 齢単身世帯の割合が高い傾向を示していた(表2)。 経済・労働要因では,都道府県クラスターの番号が高 いほど,一人当たりの県民所得,販売従事者の割合が低 い傾向を,第一次産業就業者比率,共働き世帯割合,建 設・採掘従事者の割合が高い傾向を示していた(表2)。 階層クラスター分析のデンドログラムの結果,人口・ 世帯要因は,4 つの要因クラスターに,経済・労働要因は, 7 つの要因クラスターに分類された(表 3)。要因クラス ターの代表となる要因として,人口・世帯要因の要因ク ラスター1 からは転入率を,要因クラスター 2 からは昼 夜間人口比率を,要因クラスター3 からは 65 歳人口割 合を,要因クラスター4 からは核家族世帯割合を採用し た(表3)。 経済・労働要因の要因クラスター5 からは共働き世帯 割合を,要因クラスター6 からは一人当たりの県民所得 を,要因クラスター7 からは実収入を,要因クラスター 表1 階層クラスター分析による都道府県の分類 都道府県 クラスター 都道府県 1 東京,神奈川,愛知,京都 2 北海道,群馬,奈良,鳥取 3 岩手,宮城,栃木,埼玉,千葉,山梨,岐阜, 静岡,三重,滋賀,大阪,兵庫,岡山,香川, 福岡,沖縄 4 秋田,山形,福島,茨城,新潟,富山,石川, 長野,島根,広島,山口,徳島,愛媛,佐賀, 熊本,大分,宮崎 5 青森,福井,和歌山,高知,長崎,鹿児島 図1 2019 年 5 月から 2020 年 4 月における禁煙店舗の割合の 年間推移に関連する都道府県クラスター別の禁煙店舗の割合 (中央値)(%)の推移
表 2 禁煙店舗の割合の年間推移に関連する都道府県クラスターによる人口・世帯,経済・労働要因の比較 都道府県クラスター 1 都道府県クラスター 2 都道府県クラスター 3 都道府県クラスター 4 都道府県クラスター 5 中央値 四分位範囲 中央値 四分位範囲 中央値 四分位範囲 中央値 四分位範囲 中央値 四分位範囲 p 禁煙店舗の割合( % ) 30.9 29.1–32.5 24.8 24.2–25.8 21.8 20.4–22.7 17.5 16.2–18.5 13.2 12.2–14.4 ** ▼ 喫煙率( % ) 18.6 17.7–19.7 20.1 17.4–24.0 19.9 18.3–21.0 19.5 18.4–20.2 19.1 18.5–20.8 15 ~ 64 歳人口割合( % ) 62.3 60.0–65.0 57.5 56.2–58.3 59.0 57.6–60.5 56.0 55.1–57.1 55.5 55.0–56.7 ** ▼ 65 歳以上人口割合( % ) 25.0 23.6–28.0 31.1 29.8–31.5 28.4 27.5–30.0 31.9 30.2–33.0 32.3 31.1–33.2 ** ▲ 人口増減率( % ) 0.18 - 0.19–0.58 - 0.66 - 0.83– - 0.47 - 0.4 - 0.54– - 0.02 - 0.73 - 0.94– - 0.55 - 1.01 - 1.13– - 0.72 ** ▼ 転入率( % ) 2.17 1.61–2.87 1.41 1.01–1.62 1.66 1.44–1.92 1.45 1.17–1.54 1.29 1.15–1.58 ** ▼ 転出率( % ) 2.13 1.61–2.39 1.65 1.16–1.94 1.77 1.69–1.89 1.66 1.51–1.78 1.71 1.50–1.91 人口密度( % ) 2628 786–5675 233 90–349 411 276–931 180 137–260 180 123–230 ** ▲ 昼夜間人口比率( % ) 101.6 93.8–1 13.8 99.9 92.5–99.9 99.5 96.2–100.1 99.9 99.7–100.2 99.9 99.4–99.9 核家族世帯割合( % ) 55.5 49.4–58.0 57.6 53.8–62.7 57.5 56.0–58.7 55.8 52.5–57.3 56.0 53.1–59.0 単独世帯割合( % ) 36.9 34.0–45.0 29.1 26.4–35.3 31.0 29.0–32.6 30.6 27.7–32.7 31.0 28.6–35.9 65 歳以上の世帯員のいる世帯割合( % ) 36.5 32.0–39.4 45.6 41.9–48.6 42.8 39.2–45.7 47.7 45.0–51.1 48.8 45.5–49.8 ** ▲ 高齢夫婦のみの世帯の割合( % ) 10.8 8.8–1 1.6 12.8 11.5–14.6 11.6 10.8–12.7 12.7 11.4–13.5 13.0 11.3–14.1 * ▲ 高齢単身世帯の割合( % ) 10.6 9.4–1 1.7 11.2 10.5–12.6 10.4 9.3–1 1.7 11.9 10.2–12.9 14.1 11.5–15.6 * ▲ 一人当たり県民所得(千円) 3332 2953–4953 2542 2310–3006 2923 2753–31 10 2774 2487–2945 2497 2387–2852 * ▼ 実収入(千円) 565 539–632 543 505–592 559 498–598 593 533–612 519 475–572 労働力人口比率(男) ( % ) 64.6 60.8–68.5 66.0 63.8–68.6 67.6 64.8–68.9 68.2 66.5–68.8 66.6 64.7–68.5 労働力人口比率(女) ( % ) 45.9 44.5–49.0 47.2 43.1–50.9 48.1 46.4–49.5 49.2 47.4–51.0 47.8 46.5–49.7 就業者比率( % ) 96.1 95.7–96.5 95.6 95.2–96.0 95.8 95.2–96.0 95.9 95.5–96.5 95.4 95.0–95.9 第一次産業就業者比率( % ) 1.5 0.5–2.1 6.0 3.2–8.4 3.7 2.7–5.1 7.3 5.2–9.2 9.1 6.5–1 1.6 * ▲ 第二次産業就業者比率( % ) 21.3 16.7–29.4 22.0 18.0–28.8 25.1 22.4–30.9 25.6 22.8–28.5 19.7 18.5–24.0 第三次産業就業者比率( % ) 69.9 62.9–72.1 68.8 62.6–71.4 65.5 61.9–70.1 65.0 61.9–66.9 67.7 64.8–69.8 共働き世帯割合( % ) 22.3 18.8–25.5 26.8 21.9–30.8 26.9 23.2–29.8 28.6 26.3–32.7 26.2 24.9–29.7 * ▲ 高齢就業者割合( % ) 24.1 21.9–24.6 21.6 19.3–24.4 22.5 20.2–24.4 22.5 21.9–24.0 23.0 20.9–23.6 販売従事者の割合( % ) 13.5 12.2–13.8 11.6 10.7–13.0 11.3 10.7–13.2 10.8 10.6–1 1.6 10.8 10.6–1 1.2 ** ▼ サービス職業従事者の割合( % ) 11.3 10.8–13.6 12.8 12.1–13.2 11.9 11.6–12.3 12.6 11.6–12.9 13.1 12.1–13.8 保安職業従事者の割合( % ) 1.8 1.4–1.9 1.7 1.4–2.7 1.6 1.5–1.7 1.8 1.6–1.9 1.8 1.7–2.7 輸送・機械運転従事者の割合( % ) 3.1 2.6–3.2 3.4 2.8–4.3 3.5 3.3–4.0 3.7 3.1–3.9 3.5 3.2–4.3 建設・採掘従事者の割合( % ) 3.6 3.1–3.8 4.7 3.7–4.9 4.6 4.1–5.0 4.9 4.8–5.5 5.3 4.8–5.8 ** ▲ Jonckheere-T erpstra 検定 * p<0.05 , ** p<0.01 .▼ 都道府県クラスターの番号が大きいほど低い傾向.▲ 都道府県クラスターの番号が大きいほど高い傾向.
8 からは販売従事者の割合を,要因クラスター 9 からは サービス職業従事者の割合を,要因クラスター10 から は輸送・機械運転従事者の割合を,要因クラスター11 からは建設・採掘従事者の割合の要因を採用した。 都道府県クラスター1 ~ 5 の番号を従属変数に,要因 クラスター1 ~ 11 から採用した代表の 11 要因を独立変 数にした順序ロジスティック回帰分析の結果,人口要因 の65 歳以上人口割合と,労働要因の建設・採掘従事者 の割合が有意な関連要因であった(表4)。 Ⅳ.考 察 1.禁煙店舗の割合の算出方法の妥当性について 2020 年 4 月に「食べログ」に登録されていた全店舗数 は905,929 件であった。総務省による経済センサス基礎 調査 (16) の「宿泊業,飲食サービス業」の事業所数が 728,027 件(2014)で,先行研究が 885,059 件(2019)で あった (5)。飲食店の増加の推移を考慮すると,本研究 では国内の飲食店をおおむね網羅していると考える。ま た,禁煙(分煙を含む)の店舗と喫煙可の店舗を合わせ ると,全店舗に占める禁煙・喫煙情報の提供率は約半数 で,先行研究も同様に約半数であったことから (5),本 研究の分析に用いるデータとして妥当であると考える。 2.都道府県クラスターに関連する人口・世帯,経済・ 労働要因について 本研究の5 つの都道府県クラスターの禁煙店舗の割合 は,徐々に高くなっていたが,ほぼ平行に推移していた。 この結果は,いずれの都道府県においても飲食店の禁煙 化を加速度的に進められるわけではないことが窺えた。 この背景には法律で禁煙にすべき日が決まっていても, 居酒屋ではスペースの確保が困難などの物理的要因があ るものの,顧客を失うことが心配で (7),マイナスの経 済影響を与えるという懸念があることなどがあり (17), 禁煙化に踏み切れないことが推察された。 人口・世帯要因では,禁煙店舗の割合の低い都道府県 クラスター5 に向かうほど,15 ~ 64 歳年齢人口割合が 低く,65 歳以上人口割合,65 歳以上の世帯員のいる世 帯割合,高齢夫婦のみの世帯の割合,高齢単身世帯割合 が高くなる傾向があった。順序ロジスティック回帰分析 において,都道府県クラスターの順序には65 歳以上人 口割合が有意な正の要因であった。30 歳代前後は喫煙 率が高いものの (18),職場での禁煙化が進み (19),就 業中の喫煙が困難となっていること,育児などのライフ ステージの視点も考慮すると,この年代は禁煙に対する 理解があると推察される。しかし,年代が高くなるほど, 何があっても禁煙しないと答える割合が高くなること (20),特に男性の 50 歳代や 60 歳代は飲食店の禁煙化に 反対する者が多いことを考え合わせると (21),都道府 県クラスター5 に向かうほど,飲食店の禁煙化を望まな い高齢者の存在が多くなり,禁煙化を遅らせる要因にな る可能性が推察された。 経済・労働要因では,禁煙店舗の割合の低い都道府県 クラスター5 に向かうほど,一人当たりの県民所得,販 売従事者の割合は低く,第一次産業就業者比率,共働き 世帯割合,建設・採掘従事者の割合は高くなる傾向があっ た。順序ロジスティック回帰分析において,建設・採掘 従事者の割合が有意な負の要因であった。建設業は,受 動喫煙防止対策に関する意識が他の業種よりも低く (22),職場の禁煙化が進んでいないこと,さらに就業中 の移動で使用する車内での喫煙ができることが,禁煙を 表4 禁煙店舗の割合の年間推移に関連する都道府県クラス ターを従属変数,人口・世帯,経済・労働要因を独立変数とし たとした順序ロジスティック回帰分析の結果 b 95%信頼区間 p 65 歳以上人口割合(%) .440 .113–.767 0.008 転入率(%) 1.086 -1.430–3.602 0.398 昼夜間人口比率(%) .115 -.184–.415 0.449 核家族世帯割合(%) .292 -.060–.644 0.104 一人当たりの県民所得(千円) .000 -.003–.003 0.945 実収入(千円) -.003 -.017–.010 0.621 共働き世帯の割合(%) .166 -.091–.423 0.207 販売従事者の割合(%) -.112 -.919–.694 0.785 サービス職業従事者の割合(%) -.013 -1.019–.993 0.979 輸送・機械運転従事者の割合(%)-.140 -1.800–1.520 0.869 建設・採掘従事者の割合(%) 1.406 .060–2.752 0.041 Nagelkerke R2 0.545 モデル適合度 p=0.000 表3 人口・世帯,経済・労働要因の階層クラスター分析によ る分類 要因 クラスター 要因 1 15 ~ 64 歳人口割合,人口増減率,転入率 *,転出率,人口密度 2 昼夜間人口比率*,単独世帯割合 3 65 歳以上人口割合 *,65 歳以上の世帯員のいる世帯割合,高齢夫婦のみの世帯の割合, 高齢単身世帯の割合 4 核家族世帯割合* 5 労働力人口比率(男),労働力人口比率(女), 就業者比率,第二次産業就業者比率,共働き 世帯割合*,高齢者就業者割合 6 一人当たりの県民所得* 7 実収入* 8 第三次産業就業者比率,販売従事者の割合* 9 サービス職業従事者の割合者の割合 *,保安職業従事 10 第一次産業就業者比率,建設・採掘従事者の割合* 11 輸送・機械運転従事者の割合* * 要因クラスターの代表として採用した要因
考える機会を少なくしている可能性がある。このような 背景により,本研究の建設・採掘従事者の割合が負の要 因であったことは,先行研究の居酒屋での受動喫煙が多 いことに符合していることが窺えた (6)。 3.飲食店の禁煙化の促進に向けた示唆について 本研究では,都道府県クラスターの番号の禁煙店舗の 割合は喫煙率との間に関連がみられなかったことから, 禁煙化は飲食店の利用者の喫煙行動に関係なく進んでい ることが窺える。 50 歳代や 60 歳代は飲食店の禁煙化に反対する者もい るが,約8 割の者は飲食店の受動喫煙防止の取り組みに 賛成していたとの報告もみられることから (21),禁煙 化が進んでいない要因として高齢者の人口割合があった が,禁煙化に対する顧客の理解は得られると考えられる。 また,建設・採掘に従事する喫煙者であっても,今後, 改正健康増進法により事業所の受動喫煙対策が進められ るとともに,作業現場等までの車内での喫煙対策が重要 視され (6),受動喫煙防止対策に関する意識が高まるこ とによって,飲食店の禁煙化への理解または賛同につな がる可能性がある。 飲食店の事業者には,改正健康増進法による施設の管 理権原者等の責務についての周知を行う必要がある (23)。その際には,高齢者や建設・採掘従事者が多い県 であっても,禁煙の実施でレビューサイトの口コミ評価 に影響を及ぼすことはなく (24),禁煙化による来客者 数に変化がないことを周知することで (4),顧客を失う ことの心配が緩和され,店舗の禁煙化の促進につながる と考える。 Ⅴ.研究の限界 本研究では,「グルメサイト」の「食べログ」を用いて, 飲食店の禁煙実施状況を把握した。そのため,禁煙・喫 煙情報については,「指定なし」「禁煙」「禁煙(分煙を 含む)」「喫煙可」の選択のみである。改正健康増進法で は,喫煙室内での喫煙を認めており,本研究ではそれを 分煙とみなした。しかし,「食べログ」には,これらの 詳細な記載がなく,登録事業者によっては空間分煙,時 間分煙も含んで登録している可能性がある。また,本研 究の対象飲食店には客席面積が100 m2以下などの経過 措置の対象店舗が含まれていると考えられるが,「食べ ログ」には客席面積に関する情報が記載されていないた め,分析対象から除外することは不可能であった。さら に登録内容が誤っている可能性があり,これらが本研究 の限界である。一方,情報が誤っている場合は閲覧者か ら訂正を促すような仕組みになっていることや,飲食店 の禁煙実施状況について把握する適切な方法がないこと から,本研究で用いるデータとしては最も妥当であると 考える。 関連要因として検討した人口・世帯,経済労働に関す るデータは最新のものを用いたものの,国勢調査や経済 サンセスなどは5 年毎に調査されていることから 2015 年のデータも含まれている。データの収集年が異なるこ とに関しては,大きな変動はないため影響は少ないもの の,正確な横断調査にはなっていないという先行研究 (25) と同様の限界があると考える。また,要因間に強 相関がみられるものも多かったため,クラスター分析や 相関を確認するなどの方法を用いて代表的な要因を抽出 したが,それらが結果に影響を及ぼしている可能性が あることも限界である。 Ⅵ.結 語 本研究では,飲食店の禁煙店舗の割合の年間推移を5 つのクラスターに分け,禁煙店舗の割合の中央値の大き い順のクラスターとそれに関連する人口・世帯,経済・ 労働要因について都道府県別の資料を検討した結果,以 下のことが明らかになった。 ・ 都道府県クラスターの順序と喫煙率とは関係がなかっ た。 ・ 都道府県クラスターの順序には,65 歳以上人口割合, 建設・採掘従事者の割合が正に関連していた。 ・ 高齢者や建設・採掘作業者の多い県においても,禁煙 化への理解または賛同が得られ,来客者数に変化がな いことを,飲食店の事業者に周知する必要がある。 本研究に関連し,利益相反はない。 文 献 (1 ) https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/point (2020.9.30) (2 ) https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo85_1.html (2020.9.30) (3 ) https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000351576.pdf (2020.9.30) (4 ) 宇佐美毅,稲葉明穂,吉田 宏,五十里明,富永祐民. 飲食店における受動喫煙防止対策の実態と禁煙化に よる経営への影響についての考察.日本公衆衛生雑誌 2012;59(7):440–446. (5 ) 川村晃右,中井あい,山田和子,森岡郁晴.飲食店に おける禁煙実施状況と有訴者率・通院者率・医療費・ 死亡率との関係:都道府県別の資料による検討.日本 衛生学雑誌2019;74:19006. (6 ) 五十嵐彩夏,相田 潤,草間太郎,小坂 健.業種別 にみた職場における受動喫煙状況.日本公衆衛生学雑 誌2020;67(3):183–190. (7 ) 長山有香理,桑原徹人,木下幸子,早坂信哉,村田千 代栄,野田龍也,他.飲食店の分煙状況および関連要 因に関する研究.厚生の指標2010;57(3):31–36. (8 ) Ohida T, Kamal AM, Takemura S, Sone T, Mochizuki Y,
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