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AIやロボットに対する小学生の意識調査

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Academic year: 2021

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【研究論文】

AI やロボットに対する小学生の意識調査

Elementary school students' awareness of AI and robots:

加納寛子

†1

KANOH Hiroko

†1 要旨: 近年 AI に関する技術は飛躍的に進展してきており,社会人を対象に AI に対するイメージの調査なども 行われている.本稿は,小学生の AI やロボットに対する意識に焦点を当てて分析を行った.プログラミング経験 の有無とプログラミングに対する意識についての分析結果より,「プログラミングは魅力がある」「プログラミングを学 びたい」「プログラミングが好き」の 3 項目については,プログラミング経験がある者の方が,魅力や好感を持ち学 ぶ意欲も高いことが示された.ビジュアルプログラミング言語など,小学生にも取り組みやすいプログラミングソフト やアプリが多数開発されてきており,経験をする前には,ハードルが高く感じられるが,経験することにより,魅力 や好感・意欲の向上につながることが推察された. AI の発展に対する意識については,プログラミング経験の 有無によらず,子ども達は,AI の発展に対し,期待し,興味・関心を持ち,おもしろい,役立つと考えていることが わかった.一方で,少なからず不安も抱いている者もいることが読み取れた.そこで,不安高群と低群に分類し, AI の発展に対する意識との関連を調べたところ,不安もあるけれど期待している,不安もあるけれど興味もある, という積極的な意識としての不安感であった. さらに,AI ロボットに期待することと不安に感じることに関する記 述傾向として,「楽しさ」「技術発展」「他者との関わり」「(生活や家庭など身の回りのところへの)普及」「必要悪」 「支配と恐怖」に,分類された.このことから,負の側面を認識した上で,発展や楽しさなど明るい希望的側面に期 待を寄せていることが推察された. キーワード: AI,ロボット,小学生

Keywords: AI, Robots, Elementary school student

1 はじめに

1.1 AI に関する技術の進展

近年AI に関する技術は飛躍的に進展してきており, AI が人の知能を超えるシンギュラリティ(技術的特異 点)の到来も指摘されている.カーツワイル(1990, 2016)1)2)は,21 世紀前半には,必ずや,機械が人間 の知能を大幅に凌駕するだろうと予測している. また, シャナハン(2016)3)は,「生産されるものが生産を行う 知性そのものであれば,知性は自らの改善に取りか かれる」と,テクノロジーの生産物自身が自己再帰性 をもつことを指摘している. 既に,頭脳勝負のゲームでは,AI の勝利が続々と 報告されている.チェスでは,ロシアのチャンピオンで あるカスパロフに,「ディープ・ブルー(Deep Blue,米 IBM 開発)」が勝利したのは 1997 年のことである.将 棋では,日本の永世棋聖の称号をもつ米長 邦雄氏 に,「ボンクラーズ」1が勝利したのは 2012 年のことで ある.さらに,囲碁でも 2016 年に,韓国のトップ棋士 李九段に,「アルファ碁(AlphaGo,Google Deep-Mind 開発)」が勝利した.

1.2 AI に対する社会人のもつイメージ

人の知能を凌駕しようとしている AI に対して,どの ようなイメージを持っているのか,総務省による「平成 28 年版 情報通信白書」4)において,日米就労者の 1 保木邦仁が製作した将棋プログラム「Bonanza」の公 開されたソースコードを参考にして,伊藤英紀が製作 したコンピュータ将棋プログラムである. 情報教育 Vol. 2 2020 Research Report of Informatics Education Vol. 2 2020 pp.9-16

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抱くイメージについて報告されている.この調査によ れば,「コンピュータが人間のように見たり,聞いたり, 話したりする技術」という人間の知覚や発話の代替に 近いイメージが日米双方とも多い.日米でイメージが 異なるものとして,米国では, AI は「人間の脳の認 知・判断などの機能を,人間の脳の仕組みとは異なる 仕組みで実現する技術」という理解をしている人が 42%いるが,日本は 26%にとどまっている.同様に「画 像や自然言語(話し言葉や書き言葉),様々なデータ などを分析して,その意味合いを抽出する技術」「学 習や推論,判断などにより,新たな知識を得る技術」と いうイメージも,日本より米国の方が多い.一方,「コン ピュータに自我(感情)をもたせる技術」というイメージ は,米国より日本の方が多いことが報告されている.

1.3 SF に登場する AI ロボット

神原・萩田(2016)5)による論考に,ロボットが自我や 感情を持っていることを連想させるようなタイトル【ロボ ットと「ふたりぼっち」の愉しい共同生活へ】がつけられ ているように,米国人に比べ,日本人は,自我や感情 を持つことへの期待があるのかもしれない. このことは,ロボットが描かれた古い作品からも読み 取れる.1920 年に発表されたチェコの作家カレル・チ ャ ペ ッ ク に よ る 戯 曲 「 R.U.R. ( 原 題 : Rossum's Uni-versal Robots,チェコ語: Rossumovi univerzální roboti, ロッサム万能ロボット会社)」6) がある.この作 品に描かれるロボットは,バイオノイド(bionoid,人間 に近い生体や心を持つ人造人間)である.脳・内臓・ 骨等の臓器は,(現代的にいえば3D プリンターのよう な)機械で製造され,血管などは紡績機で製造され, 自動車のように組み立てられ,目的の労働を行うため のプログラムがインストールされる.忠実に仕事はこな すが,感情や感覚はなく,不良品と見なされれば容赦 なく粉砕装置で処分される存在である. 一方,手塚治虫による SF 漫画「鉄腕アトム」は感情 と判断力を持ち合わせ,悪に屈せず正義を貫くスー パーヒーローとして描かれている.藤子・F・不二雄に よる日本の SF 漫画「ドラえもん」は,22 世紀の未来か らやってきたという設定のネコ型ロボットで,勉強もス ポーツもダメでのろまな少年という設定の「のび太君」 を常に助け,無償の慈しみを注ぐ存在として描かれて いる.R.U.R.で登場するロボットは奴隷のように,完全 に使用者である人間の下部として位置づけられてい るが,「ドラえもん」と「のび太君」の間に主従関係はな く,友情と信頼関係で結ばれている7) ビデオリサーチ(2019)8)による視聴率調査によれば, 「ドラえもん」の視聴率は4.7%である.日本リサーチセ ンター(2017)9)による第4回NRC全国キャラクター調 査によれば,認知度は 97%である.高い視聴率では ないが,誰もが知っているキャラクターといえる. もちろん子ども達は,ドラえもんに限らず,日々, 様々なアニメを見たりゲームをしたり,家族で旅行に 出かけたり,学校で学んだり,公園で友達と遊んだり, 多様な影響を受けつつ生活している.そういった具体 的な経験による違いもあるだろうし,家庭環境や個人 特性により,特定のイベントへ参加を希望するかどう かは少なからず影響を受けている. 本稿では,自主的にロボットやプログラミングに関 するイベントに参加した小学生を対象に,AI やロボッ トが発達する社会に対する意識について調査を行う.

2 研究方法

2.1 調査の概要

2019 年 8 月 17 日(土)に山形大学小白川キャンパ スで開催した「ロボット・プログラミングを通して未来の 街(スマートシティー)を考えよう」という小学生を対象 としたイベントに申し込みをした子ども達を対象に,質 問紙調査を実施した.参加申し込みと同時に回答を 求めたため,当日都合で参加出来なかった人の回答 も含む.本イベントは,日本学術振興会による大学や 研究機関で「科研費」により行われている研究成果を, 小学生等に還元していくための「ひらめき☆ときめき サイエンス~ようこそ大学の研究室へ~」事業の一つ である.小学校高学年を対象に募集をかけたが,小 学4 年生~6 年生 35 名及び中学生 2 名からの参加 申し込みがあった.参加者は,山形県内からが 33 名, 県外からが4 名であった.

2.2 分析方法

小学生35 名のデータを分析対象とし,対象の男女 数は男30 名,女 5 名であった. 調査項目は,プログラミングの経験やプログラミング に対する意識についての項目と,AI に対する意識及 び AI と人や社会に対する意識の項目で構成した. AI に対する意識及び AI と人や社会に対する意識の 項目作成にあたっては,Kanoh(2018)10)による小学

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生のヒューマノイドロボットに対する質問紙調査の結 果に,大学生を対象とした予備実験の結果を加え検 討した.予備実験は,2018 年 10 月~11 月の期間に, 大学生を対象に実施した.実施した内容は,文献 「 THE DIGITAL SOCIETY INDEX 2018 Framing the Future」11)を輪読し,未来社会の枠組

みや IoT が発展したスマート社会を推察し,スマート シティーのモデルを作成し,小型ロボットをその中を 歩かせ,AI モラルについてディスカッションを行った. その後,文献輪読とディスカッションから,①どんなこ とに気づきましたか?②20 年後の日本は,どうなって いると思いますか?③日本はこの先どうすべきだと思 いますか?という項目について記述式で回答を求め た.その結果,スキルの習得の重要度は低いと考え, Kanoh(2018) 10)で実施した調査項目の中で,プログ ラミングの習熟などに関する項目を削除し,AI ロボット と共に働くスマート社会を想定した項目として,AIロボ ットと友達になりたいかいなか等の項目を追加した. 本質問紙調査は参加申し込み時に回答を求めた ため,実施イベントにおけるプログラミングの経験は含 まれていない.選択項目はすべて6件法で回答を求 めた.それぞれについて1 点~6 点まで得点化し,分 析を行った.さらに, 6 件法で回答を求めた項目に ついて,たとえば「AI ロボットに悪口を言われると.人 間に言われるより傷つく」という項目で,なぜ 1 と回答 したのか,なぜ 3 と回答したのか,回答した理由及び, AI ロボットに期待することと不安に感じることについて, 記述式で回答を求めた.統計解析ソフトには IBM SPSS Statistics Version24,テキストマイニングソフ トにはKH Coder(樋口,2004)12)を用いた.

3 プログラミング経験の有無との関連

3.1 プログラミング経験の有無と

プログラミングに対する意識

プログラミング経験の有無によって,プログラミング に対する意識が異なるのではないかと考え,プログラ ミング経験を独立変数とし,プログラミングに対する意 識について,1 要因の分散分析を行った(表 1).その 結果, 「プログラミングは魅力がある(F (1,33) = 5.02, p <.05) 」「プログラミングを学びたい(F (1,33) = 6.00, p <.05)」については5%水準で有意であった.「プロ グラミングが好き(F (1,33) = 8.38, p <.01)」について は1%水準で有意であった.この 3 項目については, プログラミング経験ありの群が,無しの群よりも高い得 点を示しており,プログラミング経験がある者の方が, 魅力や好感を持ち学ぶ意欲も高いことがわかった. また,有意差の見られなかった項目に関して,全体 の平均値に着目すると,「プログラミングは大切だと思 う」が 5.06,「プログラミングは将来役立つと思う」が 5.26 という高い平均値を示しており,すべての子ども 達が,大切であり将来役立つと考えていることがわか った. 表1 プログラミング経験の有無と プログラミングに対する意識 人 数 平均 値 標準 偏差 F プログラミング は大切だと思う 無し 12 4.75 1.54 1.42 あり 23 5.22 0.80 全体 35 5.06 1.11 プログラミング は魅力がある 無し 12 4.83 1.53 5.02* あり 23 5.61 0.50 全体 35 5.34 1.03 プログラミング は将来役立つと 思う 無し 12 4.83 1.53 2.38 あり 23 5.48 0.95 全体 35 5.26 1.20 プログラミング を学びたい 無し 12 4.92 1.51 6.00* あり 23 5.74 0.45 全体 35 5.46 1.01 プログラミング が好き 無し 12 4.17 1.75 8.38** あり 23 5.48 0.95 全体 35 5.03 1.40 *p<.05 **p<.01 2

3.2 プログラミング経験の有無と

AI の発展に対する意識

プログラミング経験の有無によって,AI の発展に対 する意識が異なるのではないかと考え,プログラミング 経験を独立変数とし,AI の発展に対する意識につい 2 *が付されている箇所は 5%水準で有意, **が付さ れている箇所は 1%水準で有意であることを示してい る.以降の分散分析表についても同様である.

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て,1 要因の分散分析を行った(表2).その結果,す べての項目において,プログラミング経験の有無によ る違いは見られなかった(n.s.).そのため,経験の有 無に分類しない全体の平均値を見ると,期待・興味・ 関心・おもしろい・役立つ,の項目いずれも 4 以上の 値を示していた.このことから,プログラミング経験の 有無によらず,子ども達は,AI の発展に対しポジティ ブな印象を持っていることがわかった.「不安」項目の みネガティブな項目であり,4 を下回り 3.7 であったが, 少なからず不安を抱いている者もいることが読み取れ る. 表2 プログラミング経験の有無と AI の発展に対する意識 人数 平均値 標準偏差 F 期待 無し 12 4.17 1.53 0.29 あり 23 4.48 1.68 全体 35 4.37 1.61 不安 無し 12 3.92 1.56 0.33 あり 23 3.61 1.47 全体 35 3.71 1.49 興味 無し 12 4.25 1.60 1.27 あり 23 4.91 1.68 全体 35 4.69 1.66 関心 無し 12 4.25 1.36 0.65 あり 23 4.70 1.64 全体 35 4.54 1.54 おもし ろい 無し 12 4.83 1.34 0.00 あり 23 4.83 1.67 全体 35 4.83 1.54 役立つ 無し 12 4.50 1.38 0.18 あり 23 4.74 1.68 全体 35 4.66 1.57 *p<.05 **p<.01

3.3 プログラミング経験の有無と

AI ロボット対する意識

1.2 節で述べたように,社会人は AI に対して,人間 の知覚や発話の代替に近いイメージを所有していた. AI ロボットとともに働くイメージは,各種メディアでもし ばしば登場し,子ども達へも浸透しているのではない かと考え,AI ロボット共生する時代を空想し,AI ロボ ットが上司や部下,友達等であった場合,どう捉える かについて回答を求めた.プログラミング経験を独立 変数とし,AI ロボットに対する意識について,1 要因 の分散分析を行った(表3). 表3 プログラミング経験の有無と AI ロボットに対する意識 人 数 平均 値 標準 偏差 F AI ロボットと友達に なりたい 無し 12 3.67 1.72 0.00 あり 23 3.70 1.61 全体 35 3.69 1.62 (将来職場で)AI ロボ ットが上司にいたら うれしい 無し 12 3.25 1.60 2.03 あり 23 2.52 1.34 全体 35 2.77 1.46 (将来職場で)AI ロボ ットが部下にいたら うれしい 無し 12 3.67 1.56 1.21 あり 23 3.04 1.61 全体 35 3.26 1.60 手術が必要になった 時.AI ロボットに手 術を頼みたい 無し 12 3.58 1.08 1.55 あり 23 2.96 1.55 全体 35 3.17 1.42 風邪と思われる症状 の時.AI ロボットに 診察を頼みたい 無し 12 4.17 1.34 4.40* あり 23 3.04 1.58 全体 35 3.43 1.58 AI ロボットに掃除を 頼みたい 無し 12 4.83 1.85 0.04 あり 23 4.96 1.52 全体 35 4.91 1.62 AI ロボットに家にい てほしい 無し 12 4.17 2.04 0.18 あり 23 4.43 1.62 全体 35 4.34 1.75 10 年後.AI ロボット が冷蔵庫のように家 庭に 1 台普及する時 代になると思う 無し 12 4.17 1.85 0.51 あり 23 3.74 1.60 全体 35 3.89 1.68 AI ロボットに悪口を 言われると.人間に言 われるより傷つく 無し 12 4.17 1.53 2.29 あり 23 3.30 1.64 全体 35 3.60 1.63 *p<.05 **p<.01 その結果,「風邪と思われる症状の時,AI ロボット

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に診察を頼みたい」という項目のみ,プログラミング経 験のない群の平均値が高かった(F (1,33) = 4.40, p <.05).プログラミング経験を有する子ども達は,プロ グラミングを通して,少しでも間違っていると動かなか ったり,期待するほど有能でない経験をし,自分が風 邪をひいたというピンチに陥ったときに,頼れる存在と して認識出来ないのではないか.その一方で,自分 でプログラミングをしたことがない子ども達は,ドラえも んや鉄腕アトムのように,安心して頼れる存在と考え がちなのではないかと考えられる. その他の項目については,プログラミング経験の有 無による違いは見られなかった.そのため,経験の有 無に分類しない全体の平均値を見ると,「(将来職場 で)AI ロボットが上司にいたらうれしい」という項目は, 平均 3 を下回っており,子ども達の多くが望んでいな いことがわかる.「AI ロボットに掃除を頼みたい」「AI ロボットに家にいてほしい」の項目は,平均値が4 を上 回っており,望んでいることがわかる.

4 AI の発展に対する不安感との関連

3.2 節において,AI の発展に対する「不安」要素に ついて,全体の平均は3.7 であったが,選択項目 1~6 まで散らばりが見られた.そのため,AI の発展に対す る「不安」の高低によって,AI の発展に対する意識や, AI ロボットに対する意識が異なるのではないかと考え, AI の発展に対する「不安」の高低を独立変数とし,各 意識について,1 要因の分散分析を行った.なお, 1~3 を選んだ回答者を不安低群,4~6 を選んだ回答 者を不安高群とし,それぞれの項目との関連を分析し た.

4.1 AI の発展に対する不安感の高低と

AI の発展に対する意識

AI の発展に対する「不安」の高低を独立変数とし, AI の発展に対する意識について,1 要因の分散分析 を行った(表4).その結果,期待(F (1,33) = 3.55, p <.05) ・ 興味(F (1,33) = 9.32, p <.01) ・ 関心(F (1,33) = 19.95, p <.01) ・ おもしろい(F (1,33) = 6.13, p <.05) ・ 役立つ(F (1,33) = 5.16, p <.05), いずれの項目についても,不安高群は低群よりも有 意に高い値を示した.このことから,不安だから期待し ない,不安だから興味がない等々ではなく,不安もあ るけれど期待している,不安もあるけれど興味もある, という積極的な意識としての不安感であることがわか った. 表4 AI の発展に対する「不安」の高低と AI の発展に対する意識 不安 人数 平均値 標準偏差 F 期待 低群 15 3.80 2.01 3.55* 高群 20 4.80 1.11 全体 35 4.37 1.61 興味 低群 15 3.80 2.11 9.32** 高群 20 5.35 0.75 全体 35 4.69 1.66 関心 低群 15 3.47 1.68 19.95** 高群 20 5.35 0.75 全体 35 4.54 1.54 おもしろい 低群 15 4.13 2.00 6.13* 高群 20 5.35 0.81 全体 35 4.83 1.54 役立つ 低群 15 4.00 2.00 5.16* 高群 20 5.15 0.93 全体 35 4.66 1.57 *p<.05 **p<.01

4.2 AI の発展に対する不安感の高低と

AI ロボットに対する意識

AI の発展に対する「不安」の高低を独立変数とし, AI ロボットに対する意識について,1 要因の分散分析 を行った(表5).その結果,「AI ロボットに掃除を頼み たい」という項目については,不安高群が低群よりも 有意に平均値が高く(F (1,33) = 4.67, p <.05),不安 が高い者ほど AI ロボットに掃除をしてもらいたいと考 えていることがわかった.また,「10 年後,AI ロボット が冷蔵庫のように家庭に1 台普及する時代になると思 う」という項目についても,不安高群が低群よりも有意 に平均値が高く(F (1,33) = 7.46, p <.05),不安が高 い者ほど,生活必需品の一つである冷蔵庫並みにAI ロボットが普及すると予測していることがわかった.そ のほかの項目については,不安の高低による差は見 られなかった(n.s.).

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表5 AI の発展に対する「不安」の高低と AI ロボットに対する意識 不安 人 数 平均 値 標準 偏差 F AI ロボットと友達に なりたい 低群 15 3.40 2.03 0.81 高群 20 3.90 1.25 全体 35 3.69 1.62 (将来職場で)AI ロボ ットが上司にいたら うれしい 低群 15 3.07 1.67 1.08 高群 20 2.55 1.28 全体 35 2.77 1.46 (将来職場で)AI ロボ ットが部下にいたら うれしい 低群 15 3.00 1.65 0.67 高群 20 3.45 1.57 全体 35 3.26 1.60 手術が必要になった 時、AI ロボットに手 術を頼みたい 低群 15 3.40 1.59 0.67 高群 20 3.00 1.30 全体 35 3.17 1.42 風邪と思われる症状 の時、AI ロボットに 診察を頼みたい 低群 15 3.33 1.80 0.09 高群 20 3.50 1.43 全体 35 3.43 1.58 AI ロボットに掃除を 頼みたい 低群 15 4.27 2.12 4.67* 高群 20 5.40 0.88 全体 35 4.91 1.62 AI ロボットに家にい てほしい 低群 15 3.87 2.00 2.01 高群 20 4.70 1.49 全体 35 4.34 1.75 10 年後、AI ロボット が冷蔵庫のように家 庭に 1 台普及する時 代になると思う 低群 15 3.07 1.87 7.46* 高群 20 4.50 1.24 全体 35 3.89 1.68 AI ロボットに悪口を 言われると、人間に言 われるより傷つく 低群 15 3.60 1.76 0.00 高群 20 3.60 1.57 全体 35 3.60 1.63 *p<.05 **p<.01 また,有意差の見られなかった項目に関して,全体 の平均値に着目すると,「AI ロボットに家にいてほし い」という項目に関して,全体の平均が 4.34 を示して おり,不安高低に関係なく,AI ロボットに家にいてて ほしいと考えていることがわかった.

4.3 AI ロボットに期待することと

不安に感じることに関する記述分析

AI ロボットに期待することと不安に感じることに関す る記述については,KH Coder を用い,多次元尺度 法 (multidimensional scaling: MDS) により分析 した.作成に際して,複合語の検出には Term Ex-tract を選択し,最小の重み付けによる作成が最適と 考え,方法は Kruskal 法,距離は Jaccard 係数3 選択した(図 1). 図1 AI ロボットへの期待と不安 AI ロボットに期待することと不安に感じることに関す る記述傾向として,「楽しさ」「技術発展」「他者との関 わり」「(生活や家庭など身の回りのところへの)普及」 「必要悪」「支配と恐怖」に分類された. 下記に,記述の一例を示す.負の側面に言及して いると読み取れた部分には破線 ,正の側面に言 及していると読み取れた部分には線 ,正負両面 に関する言及として読み取れる部分については , を加えた.この記載から,負の側面,正の側面双方を 理解した上で,新たな発展を期待している様子が読 み取れた. 期待.ロボットの普及で工業の効率化など画期的なこ とだと思うので期待はあります. 3 「語 A を含み」かつ「語 B を含む」文書の数で, Jaccard 係数が大きいほど,共通に登場した文書が 多く,その二つの語は「近い」と判断される. 楽しさ 支配と恐怖 他者との関わり 技術発展 普及 必要悪

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不安.将来.ロボットが普及することによって仕事の効 率化ははかれると思います.しかし.それが進むことに よって人の仕事がなくなり.ロボットが仕事をする世の 中になるんじゃないかという不安があります. 興味.これからロボットがいろんなことに役立ってくると いうことで.どんな風に役立ってくるか興味があります. 関心.ロボットがどんな風にこれから普及してくるのか. 関心があります. 面白い.ロボットのプログラムやいろんなことを考えると 面白いと思います. 役に立つ.いろんなところで今も役に立っているのが 実感できるので.役に立つと思います. 友達になりたい.ロボットと友達になるというのは面白い と思うし楽しいとは思うけど.個人的には人の友達とい たいと思います. 上司にいたら嬉しい部下にいたら嬉しい.ロボットを人 と同じ立場にすることはしたくないと思います.なので あまり嬉しいとは思えません. 手術をしてもらいたい.手動機械をとうした手術はあり だと思いますが.ロボットに対して.まだ確実な信頼が 持ててないので頼みたくはないと思います. 診察を頼みたい.診察はしてもいいと思います.ロボット の観察などの技術はあると思うので診察はしてもいい と思います. 掃除を頼みたい.僕は頼みたいです.今自動掃除機な ども使われてきているので.掃除を見てみたいです. 家にいてほしい.ロボットが家にいることでいろんな便 利なこともあると思うので家に居ることはいいことだと思 います. 家庭に一台のように普及すると思います.携帯電話を とうしての電話やメールなどがなくなってロボットでの 通話になっていくと思います. 人より傷つく.いいえ人に言われるよりは傷つかないと 思います.でも傷つくとは思います.ロボットでいろんな ことができるようになると思うのでそれと同時にロボット と親しくなっていくと思うので傷つくことはあると思いま す.

5 考察

社会人のAI やロボットに対するもつイメージについ ては, 総務省(2016) 4)やユーキャン(2019)13)の調査 等で報告されている.本稿では,小学生の AI やロボ ットに対する意識に焦点を当てて分析を行った.プロ グラミング経験の有無とプログラミングに対する意識に ついての分析結果より,「プログラミングは魅力があ る」「プログラミングを学びたい」「プログラミングが好 き」の 3 項目については,プログラミング経験がある者 の方が,魅力や好感を持ち学ぶ意欲も高いことが示 された.ビジュアルプログラミング言語など,小学生に も取り組みやすいプログラミングソフトやアプリが多数 開発されてきており,経験をする前には,ハードルが 高く感じられるが,経験することにより,魅力や好感・ 意欲の向上につながることが推察された. AI の発展に対する意識については,プログラミング 経験の有無によらず,子ども達は,AI の発展に対し, 期待し,興味・関心を持ち,おもしろい,役立つと考え ていることがわかった.一方で,少なからず不安も抱 いている者もいることが読み取れた.そこで,不安高 群と低群に分類し,AI の発展に対する意識との関連 を調べたところ,不安もあるけれど期待している,不安 もあるけれど興味もある,という積極的な意識としての 不安感であった. また,AI ロボットに対する意識については,「風邪と 思われる症状の時,AI ロボットに診察を頼みたい」と いう項目に関してのみ,プログラミング経験のない群 の平均値が高かった.経験がないと,ドラえもんのよう に何でもやってくれる万能な存在と考えがちであるが, 実際に経験することにより限界を推察することができ, 経験のある者の方が診察を頼む程に信頼を寄せられ ない存在と考えるのではないかと推察された. さらに,AI ロボットに期待することと不安に感じること に関する記述傾向として,「楽しさ」「技術発展」「他者 との関わり」「(生活や家庭など身の回りのところへの) 普及」「必要悪」「支配と恐怖」に,分類された.このこ とから,負の側面を認識した上で,発展や楽しさなど 明るい希望的側面に期待を寄せていることが推察さ れた.

6 今後の課題

本稿の調査は,「ロボット・プログラミングを通して未 来の街(スマートシティー)を考えよう」という小学生を 対象としたイベントに申し込みをした子ども達を対象 にしており,元々このようなイベントに関心を持たない 人々は,異なった意識を持っている可能性もあるため,

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対象を変えて実施していくこと,そして,今回は分析 対象人数が35名であったため対象を広げて実施して いくことが今後の課題である.また,記述については, 個別の質問に回答した後であるため,個別質問の影 響を受けた内容の記述であった.選択式の質問とは 同時に実施しない状況で記述を行うと,「楽しさ」「技 術発展」「他者との関わり」「(生活や家庭など身の回り のところへの)普及」「必要悪」「支配と恐怖」以外の側 面も抽出できるかも知れないため,影響が一切ない状 況下での実施も今後の課題として残された. 【参考文献】

1) Ray Kurzweil (1990), The Age of Intelligent Machines, MIT Press, (Cambridge).

2) レイ・カーツワイル (2016), シンギュラリティは近 い,NHK 出版,(東京). 3) マレー・シャナハン (2016), シンギュラリティ---人 工知能から超知能へ,NTT 出版,(東京). 4) 総務省(2016), 平成 28 年版 情報通信白書,特 集 IoT・ビッグデータ・AI~ネットワークとデータ が創造する新たな価値~. 5) 神原誠之,萩田紀博 (2016),ロボットと「ふたり ぼっち」の愉しい共同生活へ,in NAIST-IS 書籍 出版委員会編, シンギュラリティ 限界突破を目 指した最先端研究,近代科学社.

6) Capek, Karel (1920),R.U.R.(Rossum's Uni-versal Robots),(訳) 大久保 ゆう,RUR―ロッ サム世界ロボット製作所,青空文庫. 7) 加納寛子 (2017),AI 時代の情報教育,大学教 育出版. 8) ビデオリサーチ (2019),視聴率データ 週間高世 帯視聴率番組10,Vol.50. 9) 日本リサーチセンター (2017),第4回NRC全国 キャラクター調査【Part4:マンガ・アニメキャラクタ ー編】.

10) KANOH Hiroko (2018),The Learning Mo-tivation and Understanding towards Pro-gramming Education of Elementary School Students in Japan,International Journal of

Information and Education Technology,

8(12), 855-860.

11) Jerry Buhlmann, Anh Tran (2018), THE DIGITAL SOCIETY INDEX 2018 Framing

the Future, Oxford Economics.

12) 樋口耕一 (2004), テキスト型データの計量的分 析 ―2 つのアプローチの峻別と統合―,in 理論 と方法, 数理社会学会, 19 巻,1 号,101-115. 13) ユーキャン (2019), AI・ロボット時代に関する意 識調査 ロボット研究者の石黒浩教授が思い描く 人 間 と ロ ボ ッ ト の ワ ー キ ン グ シ ェ ア と は ? https://www.u-can.co.jp/company/news/1201 279_3482.html (2019 年 12 月 23 日参照). 受付: 2019 年 12 月 27 日 採録: 2020 年 3 月 16 日 ――― 著者略歴 ――― 加納 寛子 山形大学 学術研究院 准教授. 1995 年 東京学芸大学教育学部数学科卒,1999 年 東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程 修了,2004 年 早稲田大学国際情報通信研究科 博士後期課程単位取得退学,2004 年から現職. 研究内容:情報モラル教育,ネットいじめ,AI ロボッ トと人の関わりについての研究. E-mail: [email protected]

参照

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