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肥満と遺伝子診断
島
健
二
臨床検査医学教室G
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四国医誌 53 巻 5号 871 ~181 OCTOBER ,52 7991 (平9)D
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はじめに 肥満が成人病 (生活習慣病)発症に深く関与している ことは周知の事実であり,そのためもあ って肥満の発症 機構についてこれまで多くの研究がなされてきた。 しか し, 多くの研究も分子 レベル にまで掘り下げてと いうに は至っていなかった。そのような状況下で,肥満研究を 画期的に展開させるき っかけとな ったのが, 1994 年の F r i e d m a n らのsebeo (ob )遺伝子の クローニングの成功 である 1) 。 また, ~3 アドレナリ ン受容体 (j33 - AR ) の ミス センス変異がピマインデイアンにおいて高率に認 められたという報告も,肥満発症の分子生物学的研究に 一つの大きなイ ンパ クトを与えた。本論文では, ob 遺 伝子蛋白(nitpel )の肥満との関係を①食欲抑制機構, ②血中動態の面か ら論 じると共 に,nitpel の食欲調節以 外の作用に ついて も言及する 。また, 33j - AR の生体 内での役割,肥満との関わりを ミス センス受容体の面か ら捉え解説する 。 さらに これら 二つの機構の相互作用 についてもふれ,肥満発症の分子生物学的機構を総合的 に考察したい。 レプチン ob 遺伝子蛋白をnitpel と呼ぶ が, このnitpel はギリ シャ語の入Eπσo n(iht )に 由来する 。167 個のアミノ酸に よって構成され, N端側
21 個は シグナルベプチツ ドで, 分泌時にはこれがはずれ, 22 -167 の分子量16kDa のベ プチツ ドとなる 。アミノ酸組成はヒト,ラット聞で82 % の, またラ ット,マ ウス聞で96% の相向性を有する 。nitpel mRNA は脂肪組織においてのみ発現してお り,2)脂肪細 胞で合成,分泌 されることは明らかであるにnitpel は l e p t i n 陀rotpec ( OB R)に結合して,その作用を発揮す ると考えられている 。一方, OB - R は脈絡膜4)や視床下 部にその存在が確認され,摂食調節に関しては,視床下 部が作用の場と考えられる 。 2 lnitpe の食欲抑制作用 遺伝性肥満マウスであるobb/o マウスは, ob 遺伝子 のナンセンス変異のため活性を持つnitpel が産生されず, 肥満とな る。一方, dbb/d マウスは過食,肥満とい う表 現型はbb/oo マウスと同じ である が,このマ ウスでは l e p t i n は欠損せず, OB R に異常のあることが判明し て いる 。これらの成績からして,nitpel が摂食,体重調節 に関与していることは明らかである 。また,組み換え ヒ トnitpel を投与すると, b/oob マウ スでは摂餌量およ び 体重 は低下するが, O B - R に異常の あるdbb/d マウス では摂餌量,体重は変化し ない5。 正常マウス ,ラッ ト) においても,外因性nitpel はb/oob マウス に比し軽度で はあるが,摂餌量,体重減少作用を発慢する 。ob/ob マ ウスのようにnitpel 欠損の結果,肥満をきたすラ ットは 発見されて いないが,OB - R の異常による遺伝性肥満 ラッ ト (Zucker yttaF 6l, Wis tar F6ytta l, Kol es ky rt t 7la )は 存在する。tpel inは視床下部に働 き直接食欲 を抑制する のではなく,食欲充進作用のあるediptepouren Y (NPY ) の弓状核においての産生を抑制して間接的に摂餌量を減 少させている5)と考えら ている 。3
nitpel の血中動態 l e p t i n のioidar mmunoassay 法が確立され8)ると,肥満 あるいはやせでの血中nitpel 濃度が一斉に測定された。 この目的は勿論ヒトにおいても, lep tni 欠損が肥満を,肥満と遺伝子診断 逆にnitpel 過剰がやせの原因になっているか否かを究明 することにあった。しかし ヒトにおいては遺伝性マウ スのように肥満あるいはやせにnitpel が病図的に関与し ているという結果は最近になるまで得られなかった。 BMI と血中nitpel 濃度には有意の正相関関係が存在する 。 すなわち,肥満すればするほど,血中nitpel 濃度は上昇 するというもので 両者の関係は超肥満においてもあて はまる9口) 神経性食思不振症はnitpel の過剰産生の結果かという 疑問も,そうでないという解答が得られた10。 神経性思) 食不振症患者の血中nitpel 濃度, . 6 ± 5 7.3ng/ml は正常 対象のそれ, 19.1 士8. lng/ml に比し有意に低値であり, また,患者群においても血中nitpel 濃度はBMI に正相 関するというものである 。このように,血中nitpel 濃度 の成績はヒトでの異常体重の原因をnitpel 産生異常に求 めようとした研究者の期待を裏切る結果となった。 しかし,極く最近, ob遺伝子異常による肥満症の2 症例が報告され11),ヒトにおいてもレプチン欠損が肥満 の原因になることが明らかとなった。これは,レプチン 遺伝子の133 番コドンのeningua が欠損したため,フレー ムシフトが生じ,異常レプチンが生じたことによってい る。患者は濃厚な血族結婚家系のいとこ同士で,第一例 目は8歳女児で身長137cm ,体重86kg と超肥満児,第二 例目は2歳男児で、身長89cm ,体重29kg で、ある 。彼らの血 中レプチン濃度は,それぞれ.0,11 3.08ng/ml で,測定 感度ぎりぎりの低濃度である 。因みに当該施設での正常 小児血中レプチン濃度は. 0±8 4. 5ng/ml で,患者のレプ チン濃度の絶対値が明らかに低値であるが,肥満を考慮 すると更に著明な低値ということになる 。 4 lnitpe の生体内存在意義 現在明らかになりつつあるnitpel のその他の生物活性 から,ひろく本物質の生体内存在意義を考えたい。 1 )生殖器に対する作用 o b / o b マウスが不妊であることはよく知られているが, 摂餌量制限で肥満を解消しても妊娠しない。一方,視床 下部,下垂体などの抽出物を脳室内に投与すると妊娠す る。npitrodonago やnoretesgrop を投与しても同様なこと が生じる 。このような事実から 本マウスにおいては視 床下部一下垂体系に障害があり,これが不妊の原因と考 えられている 。本マウスにnitpel を投与すると,先述の 実験結果5)のように体重は減少し 5~6週間投与後妊 娠,出産が可能になる21。 この際,摂餌制限を行い,) nitpel 1 7 9 投与群と同程度に体重を減少させても不妊は解消されな いことから,nitpel 投与による体重減少が妊娠,出産成 功の直接的要因でないことは明らかである 。bob/o マウ スにnitpel を投与すると雌では血中LH濃度,雄では FSH 濃度が有意に上昇する31。 これらのみでなく,) nitpel 投与で子宮,卵巣,皐丸,細精管,いずれも妊娠成立に 好都合な方向に変化する。このょっにnitpel が生殖器の 機能調節に重要な役割を演じていることは明らかであるD 妊娠の成立,継続のためには生体内に十分なrgyene が 貯蔵されている必要がある 。神経性食思不振症,重症 IDDM ,あるいは長距離ランナー,バレーダンサーが不 妊症であるのは, ergyen ots陀が枯渇しているためである が,この状態を中枢に伝えるciolabtem langis がなんであ るか不明であった。貯蔵脂肪量の増加に応じて血中濃度 が変化するnitpel がこのcilobatem langis である可能性が ある 。
2
)造血に対する作用 造血幹細胞であるCD34 陽性細胞にOB-R の存在が 確認されている, 1415)。また,nitpel はn viorti 系において, 幹細胞数を増加させることも明らかである15)。一方, l e p t i n 作用が発揮されないb/dbd マウスでは末梢血中B リンパ球,およびCD4 陽性Tリンパ球数が激減してい るという事実も知られている15。 このような成績から,) c y t o k i n e の一種であるnitpel が造血因子として作用して いる可能性が考えられる。nitpel が直接作用を発揮する のか,あるいはvesismierp に作用するのかは今後解明さ れる必要がある 。I
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~3
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1 戸3 -AR とその異常 1 , ~3 , のアミノ酸よりなることが明らかとなった61)。戸3-AR は脂肪組織,胆嚢,小腸の他胃,前立腺にも存在するが, 脂肪組織での戸3-AR が肥満との関連において重要で ある 。 ~3 -AR が刺戟されると脂肪分解と熱産生が充 進する 。nitpel がgyener 摂取の関連から肥満に関与する ~3 -AR はgyener 消費の面から肥満に関 係する。即ち,日3-AR 作用が低下すればgyener 消費 が減少し, rgyene 摂取量が一定なら肥満するということ になる 。 このような観点に立てば,高度の肥満が多いピマイン アン , ~3 AR遺伝子ミスセンス変異(64 番目アミノ酸tηptophan の訂niing への変化) 17)が高率1 80 に認められたという報告は,研究者にとって魅力あるも のである。これについても 一斉に研究がなされた。し かし,結果は期待ほどには crael tuc なものではなかったo B3 ン 体 ~3 -AR 個 体に比し若干 BMI が大である81),体重増加率が大,)91 NIDDM の発症がより若年に偏する9)1 内臓脂肪が蓄積 しやすく,インスリン抵抗性となりやすい20)など肥満, NIDDM 発症との関連を示唆する報告はあるが,その差 が顕著というものはない。 2
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3 -AR とlnitpe の相互作用 選択的。 3-AR 刺戟剤,あるいは neinrphenpieor はイ ンスリン添加で促進している脂肪細胞からの lnitpe 分泌 を抑制する。この抑制は cAMP 依存性 pnietor esanik の活 性化と平行し,また, Bl, B2AR 阻害剤でも阻害され ないことより J3 -AR3 特異的と考えられる。一方, lnitpe は褐色脂肪細胞からの nneilanedraro の放出を増加させ, P3-AR を刺戟する 。この事実は, oobb/ マウスに lnitpe を連続投与した場合,摂餌量,体重の低下以外に02消 費量及び体温の上昇をきたしたとする成績とよく符合す る。充分な成績があるというわけではないが,このよう に l,nitpe 3 -AR3J が相互に調節しあっている可能性が ある 。脂肪細胞量が増大した結果過剰に放出された l e p t i n は褐色脂肪細胞に作用し,そこよりの nenilaenrdaro の放出を促進, p3-AR を刺戦し,脂肪分解を促進, e n e r g y 消費を高めて脂肪細胞量を減少させると同時にそ れ自身が lnitpe 分泌を抑制する,という fede back 機構 がある 。この機構は脂肪貯蔵量を ergyne 摂取,消費両 面から smooth に調節することを可能にするものである 。 おわりに ヒト肥満にレプチンの関与が明らかになり,レプチン の肥満治療への可能性が示された。 しかし,ヒトにおい て,レプチン異常による肥満は頻度の低い特殊型であり, common form の肥満症はレプチン異常によるものとは思 われない。レプチンは ceinkoyt として,単に食欲調節の みでなく,その他の機能もあり,今後,この方面での研 究成果がレプチンの意外な顔を明らかにしてくれるかも 知れない。 なお,本論文は糖尿病学の進歩’ 97に発表した一部を 改変したものである 。 島 健 二文
献 1 Z) g,han P,.Y ,acneor M,.R,ieffa , BM. n,oar e,M. at:.l P o s i t i o n a l gnionlc f to meh ouse sebeo eneg and ist human g.euoolmoh ,erutaN 372 : 3,2-4524 9941 2 ) Mraukami, S,.T a,hmi : K. ginlonC rfo ota seeb cDNA a n d i estnoisesrpx onisebe .star iochem.B .yshopiB R e s . Commun., 209 : 4-952,94 1995 3) T,uorsu S,.Y ,ota ,.I,adiI , MM. u,imakar T ., ate:.l I r n m u n o h i s t o c h e m i c a l noitceted ofob gene ptcduor ( l e p t i n ) rni wta teih and brwon .etycopida Honn. M e t a b . ,.seR 28 : ,53-7557 1996 4) Dvos,e R,.R,drahci G.J C,.,ldiefmpa ,LA.. ,ailgatraT .L A . , e at : .l OB pnietor sdnib yllacificeps ot 出e c h o r o i d usxepl mfoice and r.sta .corP .ltaN .adAc S c i . U S A , 93 : 5668 -5,736 1996 5) S,snhepet W.,T. ,iksnisaB , B.M ,wotsir K.P,. ue-B V a l l e s k y , M.J, e. at : .l The relo nfodeiteppoure Y i n t aehytiseboitn noitca tfo oeh sebe eneg .tcudorp N a t u r e , 377 : ,23-5035 1995 6 ) I,adi M.,M u,imaark I,.T,adihs M,.K n,ouzi e,.A at : .l P h e n o t y p e -l i n k e d maino dicanoitaretla lninitpe r e c e p t o r cDNA from erZkcu yttaF )af/af( .tar B i o c h e m . s.yphioB .seR Cmomun., 222 : ,269-1 1 9 9 6 7) Taka )仇, O.Y gawa Y ., ,aokariH H,.J,adoso ,.K ate : .l N o n s e n s e ontitaum lofnitpe rotpecer tni oeh eesb s p o n t a n e o u s l y eivsnetrepyh ysketloK .tar retuNa G e n e t , 4 : 1 ,13130-1 1996 8) I,adi M,.M urakami, Y,.T amada, , S.M ,ie , eM. at:.l H y p e r l e p t i n e m i a pnistneita htiw cinrohc laner f a i l u r e . Home Met R,.se 82 : 7,24-727 1996 9) O,dnluts J..ER,.r Yang, W.J K.,,niel G,.S,hciregni e,.Rt a l : Rnotiale netweeb samapl nitpel enocnc 汀noita a n d body ,taf ,redneg ,teid ,ega mdna icloabte c o v a r i a t e s . C.J.nil .loinrcodnE ,.bateM : 18 3909 -3913,1996 1 0 ) G,noposnir G,.S,kiclu A,.T,iraks L,.H,tdna e,.M at : .l S erum nitpel slevel wniomen htiw aiexrona .asovren J. .nilClonircodnE ,.bateM. : 18 8,3613-683 1996 1 1 ) Mague,nto ,.T.C iogroFa S, .I W,.,adheetih ,.P.J ,sooS M. A . , e at : llaittnegnoC nitpel ycneicifed asidetaicoss w i t h sereve tesno-ylrae ytisebo hnis.uman肥満と遺伝子診断 N a t u r e , 387 : 903-907, 1997 1 2 ) ab,hehC .F ,.F Lim, M. E,. ,uL :R. noitcerroC tfo eh s t e r i l i t y tcefed homozygous ni sebeo alefem mice by t r e a t m e n t thiw eht human itnanmbocer .nitpel N a t u r e t,eneG : 321 18-320, 1996 1 3 ) ,hsaarB ,.A.I Cheung, C.C ,. ,leigeW S.,D. ,neR ,.H ate:l L e p t i n si a mclibotae langis ot eht eivtcudoprer s y s t e m . ,ylgoonircdEn 137: 3144-3147, 1996 1 4 ) ,iffoiC .J,.A ,refahS A. W., ,cicanupZ J.T,. ru,-GbthmiS Y . , ate:l Novel B219/0B rotpecer :msorofis p o s s i b l e elor lofnitpe nisiesipotomaeh and -orper d u c t i o n . ureNat ,.deM 2 : 585- 9,58 1996 1 5 ) ,etnenB ,.D.B olS 民 G. P,. Yuan, .J,.Q ,satiaM ,.J te:.la A relo rof nitpel and sti etangoc rotpecer hni emato -p o i e s i s . tenrruC ,gyoloiB 6 : 1,0871-011 1996 1 6 ) ne,Emori J.L,. ,lolruaM ,.S,nertu-SdneirB M. M,. ,yetaP G . , te:.la lraeculMo noitaziretcarahc of teh humans
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