犬と猫の比較栄養学
〜動物看護師の知っておくべき栄養学〜
日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医保健看護学科 石岡 克己 犬・猫にとっての三大栄養素 蛋白質、脂質、糖質(代謝できる炭水化物)の 3 つを合わせて、三大栄養素と呼ぶ。純粋な肉食動物で ある猫は、糖代謝を苦手とする一方で蛋白質代謝は常時稼働している。そのため、維持期の猫が必要と する蛋白量は犬より多い。タウリンはアミノ酸誘導体であり、猫の必須栄養素の一つである。不足すると拡 張型心筋症のリスクがあり、現行の猫用総合栄養食には必ず含まれる。脂質については、5 種類の脂肪 酸が必須脂肪酸として知られる。リノール酸は犬および猫、アラキドン酸は猫のみに必須であるが、最新 の栄養基準(AAFCO2016 など)では成長期など特定のライフステージの犬・猫においてα-リノレン酸、 エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)も必須脂肪酸とされる。糖質は必須でないと考 えられているが、妊娠期や泌乳期の動物では乳糖を合成するため糖質が利用される。近い将来、このラ イフステージでは必須栄養素として扱われる日が来るかもしれない。 採食行動と味覚 犬は、群捕食者であり間欠捕食者である。群れで狩りを行い、集団で大きな獲物を仕留める。採食の頻 度は高くないので、食べられるときに多く食べる習性がある。腐肉食者という言葉は、厳密にはハイエナな どに用いられるが、犬の祖先のオオカミも食物を埋めて保存する習性があり、部分的に当てはまる(犬も 同様の行動様式を受け継いでいるが、埋めても掘り返さないことが多い)。一方、猫は単独捕食者であり、 少量頻回捕食者である。いちどに捕れる獲物が小さいため、その分を回数でかせぐ。新鮮肉食者であり、 温かい食物を好む。このことは、食欲不振を示す猫の看護において重要な情報である。 味覚を感じる味蕾の数は、犬は人間より少なく、猫は犬よりさらに少ない。人間は究極の雑食動物であり、 猫は純粋な肉食動物、犬はその中間に位置する雑食動物なので、味を感じる能力は雑食度に相関して いると言える。猫は、甘み受容体 Taslr2 の遺伝子変異のため、甘みを感じない。このことは、糖代謝が苦 手な猫の食性によく一致している。 肥満 肥満は、体脂肪が過剰に蓄積した状態と定義される。肥満に伴う健康障害が発生または予測される状 況は肥満症と呼ぶが、獣医療では必ずしも明確に区別されていない。肥満は中高齢の雌に多いが、これ は除脂肪組織(主に骨格筋)が少なく、代謝が低いことに関連する。肥満度の評価指標として最も普及し ているのはボディコンディションスコア(BCS)であり、5 段階評価では 3/5、9 段階評価では 5/9(犬は 4/9 も)が適正である。肥満に伴う健康障害として、犬では急性膵炎(肥満でリスクが 3 割増し)、高脂血症、寿 命の短縮、関節疾患などが挙げられる。一方、猫では肝リピドーシスと糖尿病が挙げられる。肥満した猫 が絶食状態に置かれると、わずか数日で肝リピドーシスとなる可能性があり、絶食による減量が危険であ る事が分かる。肥満した猫は、インスリン抵抗性を伴う 2 型糖尿病を発症しやすく、犬の糖尿病が肥満と関 連しない 1 型であることと対照的である。減量には、適正体重の安静時エネルギー要求量(RER)を給餌 量とし(猫では RERx0.8 も推奨される)、適切な減量速度(犬で 0.5-2.0%/週、猫で 0.5-1.0%/週)となって いるか 2 週間ごとに確認する。グラフを描いて体重をプロットする作業を家族の人達と共有することで、良 好なコンプライアンスが得られる可能性がある。動物看護師の職域を考えるセミナー②
動物看護師の知っておくべき「ストレスのないウサギの飼い方とは」
小沼 守 千葉科学大学 危機管理学部 動物危機管理学科 うさぎはストレスに弱い:ストレス感受性が高く、他動物に比べ生理機能の変化、疾病の発 生や程度によっては死に至ることがあるため(Toft P et al, 1992)、対策は重要である。 環境エンリッチメントがストレス対策に重要である:環境エンリッチメントとは「動物の福 祉と健康のために、種に適切な行動を引き出すため刺激や選択の余地など飼育環境に変化 を与えること」で、身体的・精神的ストレスを軽減し望ましくない異常行動を減らすことで ある。種類は①空間 ②採食 ③社会 ④感覚 ⑤認知がある(Maple TL et al, 2013 他)。 コンパニオンラビットの生態を考慮する:ウサギは捕食者から隠れる巣穴も必要である (Trocino A.et al, 2006)。行動調査で、木箱の中約 1%、屋根約 56%(Hansen LT, Berthelsen H, 2000)や、巣箱 42%、塩ビ管 45%、棚上 10%、棚下 3%の報告がある(Whary M et al, 1993)。 棚は群管理の際、逃げ場になって敵対関係を減少させる(Held SDE et al, 1994)。温湿度と活動時間について:温度20-25 度、湿度 40-60%、活動は、薄明薄暮性なので明け 方と夕方に集中するので、その時間の行動を制限しないようにする(Trocino A et al, 2006)。 ケージの大きさ:お腹を出したり、お腹をつけて足を伸ばす大きさや(石毛じゅんこ, 2018)、 障害物を乗り越え高いところに行くので高さも必要となる(Trocino A.et al, 2006)。
床の素材:ワイヤーメッシュ賛成派の意見として、金網床にわらを敷いた区域をつくったら, わらのない方を選んだ(Trocino A et al, 2006)。床材、ワイヤーメッシュとプラスチックネッ トで行動パターンに差がなかった(Princz a Z et al, 2009)。よって糞尿が付かず衛生的なの でワイヤーメッシュが良い。ワイヤーメッシュ反対派の意見は、金網、コンクリート床は避 けた、麦わらを敷いた床は齧ったり、遊んだりしてよかった(Turner RJ et al, 1992)。モルモ ットの足底障害はオガグズ19% vs ワイヤーメッシュ 94%であった(Fullerton PM et al, 1965)。 おもちゃ・齧り木は与えるべきか 異常行動があったウサギにわらまたは乾草やおもちゃを提供すると異常(常同)行動が軽減 した(Brummer H, 1975; PotterMP, Borkowski GL, 1998, Gunn-Dore D, 1999)。天井からぶら下 げられた木製の棒は、跳躍やお互いの交流が増え、攻撃性は低下した(Trocino A et al, 2006)。