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中間授業アンケートから考える遠隔授業改善

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Academic year: 2021

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中間授業アンケートから考える遠隔授業改善

西 野 毅 朗

1 .は じ め に

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により全国の大学は授業の遠隔化を推進した。 2020年 7 月 1 日の調査時点においては、「対面授業が全面的に実施されている」大学は15.2%、 「対面・遠隔授業を併用」が61.2%、「遠隔授業のみ」が23.6%となっており、 8 割以上の大学 が遠隔授業を実施していることが明らかになっている(文部科学省,2020)。これまでの大学教育 の多くは通信教育課程でない限り対面で授業が実施されており、各大学の教員は期せずして遠 隔授業を短期間で開発しなければならなくなった。ほとんどの教員にとって遠隔授業は初めて の経験であり、2020年度前期の授業開発は試行錯誤というよりも暗中模索の連続であったこと は容易に想像できる。  そして COVID-19の問題は2020年 9 月時点でも未だ収束しておらず、感染症予防の観点か ら2020年度後期以降も遠隔授業の実施は継続されるだろう。もし今後仮に収束したとしても、 学習効果や効率の観点で遠隔授業の魅力に気付いた教員は、2021年度以降も遠隔授業実施を試 み続けるだろう。以上を踏まえると、対面授業の改善だけでなく、遠隔授業の改善も重要な教 育開発(FD)の要素となる。しかし、遠隔授業の改善のための FD の知見は十分に蓄積されて いるとは言い難い。特に、遠隔授業を学生自身がどのように受け止め、どのように改善してほ しいと考えているかについての詳細な分析は重要であろう。そこで本研究は、学生の2020度前 期中間授業アンケートの自由記述欄を分析することで、遠隔授業の改善点について明らかにす ることを試みる。

2 .授業アンケートと授業改善の関係性

 ロンドン大学教育研究所(1982)は、授業評価(course evaluation)の方法として、 1 )学生アン ケート方式、 2 )ビデオ撮影再生方式、 3 )オブザーバーの活用をあげており、授業アンケート は 1 つ目の方式にあてはまる方法といえる。また、Seldin(1999)は、学生による授業に対する フィードバック方法として、評定(rating)と自由記述(written comment)、そして学期末実施

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 日本における授業アンケートの実施率は2017年時点で99.6%となっており(文部科学省高等教 育局,2020)、ほぼすべての大学で取り組まれていることがわかる。天野・南部(2004)の整理と 照らしてみると、1990年代から急激に実施率が増え、現在に至っていることもわかる。そして 授業評価に関する研究も2000年代から積極的になされてきた。  中でも自由記述を対象とした質的研究は、松川他(2017)や西山(2019)が行っているが、いず れも記述を統計的に分析する技法をとっており、その意味内容を構造的に明らかにするもので はない。また、授業の中間評価についても諸研究(細川,2007・権田,2010)があり、中間評価の 授業改善への有効性が確認されているものの、自由記述に関する詳細な分析はなされていない。 さらに遠隔授業を対象としたものは、筆者の管見の限りにおいて皆無である。以上より、遠隔 授業における中間授業アンケートの自由記述を質的に分析し体系を描き出すことは、新規性が 高く研究的価値を有すると考える。

3 .調査および分析の方法

 本調査および分析に当たっては、A大学において2020年度前期中間地点(2020年 5 月26日〜 6 月 1 日)にインターネットを介して実施された中間授業アンケートの結果を用いる。なおA大 学は授業を延期することなく通常の学年歴どおりで遠隔授業を開始しており、当該期間は第 7 講目が開講されている週に該当する。  本調査には、累積履修者36,098名中、5,667名が回答(回答率15.7%)している。設問は多肢選択 式 6 項目、自由記述式 1 項目であった。なお、アンケートデータの本研究への活用については、 データに表れる個人情報の保護を前提としてA大学教学担当副学長より許可を得た。したがっ て、以下の分析結果においては、個人情報や個別大学情報を特定しうる情報を別の言葉で置き 換えて記述している。  自由記述の回答は1,603件あった。自由記述については、直接授業に関係のないものや、意 味内容をつかめないもの、授業内容に関する直接的な質問を省き、授業改善に資するコメント のみを抽出した。また同一のコメントは 1 つに集約した。  分析にあたってはオープンコーディングを用いた。オープンコーディングは、具体的なテク ストを抽象的な概念のかたちに置き換えていく作業であり分析法である(サトウ他,2019)。切 片化にあたっては、センテンス区切りを基本としたが、つながりのあるセンテンスが同一ラベ ルに類すると考えられたときは、 1 つの切片データとして扱った。分析の結果、932件の切片 データを分析対象とした。  ラベリングやカテゴライズの方法は、既存の理論や先行研究に基づいて演繹的に切片データ を当てはめていく方法と、切片データに基づいて類似しているものを集め、概念を生成してい く方法があるが、今回は遠隔授業における授業改善という新規性の高い分析になるため、後者 を選択した。

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 具体的には、切片化した記述を端的に表現する〔ラベル〕をつけ、〔ラベル〕を似たもの同 士で分類し、上位概念としての<カテゴリー>を形成し、<カテゴリー>同士を同様に分類し 最上位概念として【コアカテゴリー】を生成することで、質的データを体系的に構造化する方 法をとった。分析の例は表 1 の通りである。 表 1  オープンコーディングによる分析の一部  以下に示す分析結果においても【 】、<>、〔〕という 3 種類の記号を用いている。また 「 」で示したものは、切片化した学生の自由記述そのものの一部分を直接引用したものであ る。本分析はあくまでも学生の自由記述から遠隔授業の改善点を体系的に描き出すことを主目 的としているため、量的分析は行っていない。

4 .分 析 結 果

 分析の結果、 8 つのコアカテゴリーと28のカテゴリーを導き出した。コアカテゴリーは【ス タイル】【設計】【教材】【方法】【課題】【評価】【ICT ツール】【その他】でり、それぞれの下 位概念としてカテゴリーがある。以下、それぞれのコアカテゴリーごとに分析結果を記述する。

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(1)【スタイル】について  【スタイル】はさらに 4 つのカテゴリーに分類される。<資料提示・課題型><視聴覚教材 配信型><同時双方向型><その他>である。 ①<資料提示・課題型>について  <資料提示・課題型>とは、テキストベースの資料、例えば教科書や参考書、教員が独自に 作成した資料などを配信し、それらを用いた課題に取り組ませることで対面授業に代替する方 法である。ICT に慣れていない教員や学生も実践することができ、学生の通信負荷も最も少 ない方法である。実際、学生から「資料を参考に課題をし、 LMS(1)での提出なので簡単な操 作で取り組むことができ良い」とのコメントもある。  しかし、科目によっては[一方しかない]場合があるという問題が浮かびあがってきた。例 えば「資料を読むだけの授業はやめてほしい」「自主的に学ばなければならないにしても、 レ ジュメを読むだけでいいのか不安」とあるように、資料はあっても課題が提示されない場合が ある。逆に「全く未知の科目なので課題だけじゃ全くわからないため、 授業や資料が欲しい」 「資料提示もないし、ただレポート課題が課されるだけなので代講課題として不安」とあるよ うに、課題は提示されても資料がない場合もあった。しかし、「課題のみの授業のままにしてほ しい」という声もあり、真意はつかみきれないが[一方しかない]ことを肯定する学生もいた。  さらに[コピー型]の授業として「先生のノートを写すだけの課題なので、 授業とは言えな いと思う」「教科書の内容をレポートに移しているだけで、 科目の内容を理解できる課題とは 思えない」という不満がある。また〔単調調べ型〕の授業として「レジュメだけの配布、 また 課題も自分がわからない語句について調べるだけなので授業として成り立ってるのかという不 安」「自分で調べてレポートをするだけなので、 あまり学習しているようには思えない」とい う不満がある。  資料の在り方についても、「教科書を読んでいるだけで、 正直どこが大切か分からない」「教 科書を読んで理解しようとはしているが、 説明がないのでわからないことが多い」など、〔テ キスト資料の限界〕を指摘する。結果的に、「授業資料の配布に加えて、 動画や音声等の解説 を付けてくださると授業に対する理解が深まる」など〔視聴覚教材の希望〕があがる。 ②<視聴覚教材配信型>について  視聴覚教材の中でも学生の通信負荷がより少ないのは聴覚教材、すなわち音声による解説を 行う教材である。〔音声教材への満足〕として、何回も聞くことができるという利点があがる 一方、〔音声教材への不満〕として、テキスト教材よりも理解度は上がったものの、映像がな い分理解がしにくいという、視聴覚教材の要望が伺える。実際〔視聴覚教材の満足〕として、 わかりやすさ、復習のしやすさ、課題への取り組みやすさがあげられている。一方、視聴覚教 材でも理解ができず、〔同時双方向型を希望〕する声もある。 ③<同時双方向型>について  資料提示・課題型や視聴覚教材配信型が、学生自身の都合でいつでもどこでも学べるオンデ

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マンド型(非同期型)であるのに対して、同時双方向型は教員と学生が同じ時間にインターネッ トを介して双方向性のある授業を行う(同期型)ものである。学生は〔双方向性の良さ〕として、 楽しい、面白い、やりやすい、わかりやすいと言う。その要因として、質問がすぐにできる、 発言する場がある、会話できる、他の学生の意見が聞けるという理由があがる。また〔時間割 同時性の良さ〕として、時間割と同じで集中できる、頭に入りやすいという声がある一方、時 間割通りに開講されない、開始時間と終了時間が遅く他の授業に間に合わないといった時間割 同時性が確保されないという問題も指摘された。  〔対面授業と比較〕して、「教室で 1 人 1 人発音の練習をやっていたら少し恥ずかしさがあっ たけど、 オンラインだとミュートなどにして周りを気にせずに発音の練習が気兼ねなくできる のでとてもいい」という肯定的な意見もあれば、「オンラインであるとなかなかスムーズに進 まず、 意見の交換などもしにくい」といった否定的な意見もある。  さらに問題点がいくつか指摘されている。そもそも〔使用ツールの問題〕として、使用する ツールの使い方がわからない、使用するツールを変えてほしい、なぜこのツールを使用するの かがわからないとする。また〔参加・退出問題〕として、授業へ参加できない場合の対応方法 がわからない、何度か入り直しが必要といった学生側の問題から、教員が退出してしまい空白 の時間ができてしまったという教員側の問題も指摘される。うまく参加できたとしても、声が 聞こえない、聞き取りにくい、途切れるといった〔音声の問題〕や、画面の文字が小さくて見 えない、映像にタイムラグが発生する、画面がフリーズするといった〔画質の問題〕が発生す る。さらに、画面を見続けるしんどさや、連続して同時双方向型の授業を受講することのしん どさという〔視聴ストレス〕もある。また〔カメラオン〕は集中力を高めるという肯定的なコ メントがある一方、ストレスがたまる、プライバシーが守られないといった否定的なコメント もあり、「なぜ、 顔出ししなければいけないのかわからない」と理由の説明を求める声もある。 ④<その他>について  特定のスタイルについてのコメントではなかったものとして、〔授業形態〕〔対面希望〕の 2 つが見いだされた。〔授業形態〕については、特定のスタイルというよりも非同期型の授業に ついて、自分の好きな時間に学習できるという従来の対面授業では得られなかった良さを評価 している。一方、クラスによって授業スタイルに格差があることに対する不安や不満もあげら れた。同一科目においても、授業形態が大きく変わることが多いことへの困惑や、授業方式を 明確に示してほしいという要望、対面になることも想定されているのかという授業形態の変化 への不安があった。〔対面希望〕の理由としては、遠隔授業では物足りない、勉強している気 にならない、理解度が低いという遠隔授業というスタイルそのものへの不満がある。また、グ ループワークを含む演習や実習・実技科目は対面の方が良いとする声、そして現在の遠隔授業 のスタイルに満足しているものの、やはり教員に直接指導してもらいたいという声もあった。

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(2)【設計】について  【設計】はさらに 3 つのカテゴリーに分類される。<方針><難易度><進め方>である。 ①<方針>について  <方針>には、〔方向性・予定〕、〔重要点〕、〔成績評価〕の 3 つがある。〔方向性・予定〕で は、シラバス通り進むのか、進むとしたら対面授業と遠隔授業で何が変わり何は変わらないの か、いつから、何を、どういったように授業や課題が提供されるのかがわからないという授業 の全体像の曖昧さが指摘されている。さらに、〔重要点〕がわからないという声がある。「どの 部分を覚えたらよいのかわからない」「パワーポイントで出てくる部位の名前は全部覚えるべ きか」といった記憶すべき点とそうでない点の違いについての疑問や、「作業療法士との関係 性も十分には理解できません」など専門性と授業との結びつきを疑問視する声もある。また覚 えなければならない点や行動目標がたとえ明示されていても、それらが大変な印象を与え、つ いていけるか不安であると訴える学生もいた。〔成績評価〕については、対面から遠隔になる にあたって評価方法法に変更はあるか、テストは行うのか、行うとすればいつどのように行う かという質問があげられた。 ②<難易度>について  <難易度>には、〔否定的難しさ〕と〔肯定的難しさ〕がある。前者については、理解でき ない、難しすぎる、勉強法がわからないというコメントがある。一方後者については、難しい という前置きがあるものの、繰り返し視聴すればわかる、説明はわかりやすい、例えがあるか らわかりやすい、メモをとればわかるというように、教員の教え方や学生の学び方次第で難し さを肯定的に捉えることができ、「内容が難しくなってきたけど頑張ります」「難しいですが、 楽しいです」といった学習意欲に結び付いていることがわかる。 ③<進め方>について  <進め方>には、〔順序性〕、〔進度〕、〔インプットとアウトプットのバランス〕がある。〔順 序性〕については、15回のコース全体の順序性と、 1 回の授業の順序性に分けられる。前者に ついては、「講義の受け方なども事前に紹介してくださっていたのでとても快適に受講するこ とができています」「ゼミクラスということもあり、 自己紹介をする回があったのがとてもよ かった。」というように科目への導入に成功しているものもあれば、「 1 回目 2 回目の作文は大 変だったのに teams では自己紹介など簡単でちょっと戸惑ってます。」とあるように難易度の 順序性がうまく設計されていないという指摘もある。また後者については、前の週の振り返り や、復習の時間があることで学びやすいとする声や、授業の最後にまとめが欲しいという声も ある。さらに、休憩があることで集中力が続く、あるいは休憩が欲しいという要望もあがった。  〔進度〕については、授業の進むスピードが速く、理解できない、復習が間に合わない、予 復習をしても追いつけないというコメントがある。また、授業時間が押しており、範囲が終わ るか不安といった声や、遠隔授業化の影響で内容が削られてしまったことを残念に思う声もあ がっている。

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 〔インプットとアウトプットのバランス〕については、「動画を視聴しながらプリント問題を 解く方法がすごく分かりやすくて良かった」、「授業もわかりやすく、 確認テストがあるおかげ で授業の復習にもなり、 知識のアウトプットをうまくすることができ満足」と、授業と課題が 丁寧に結びつくことによって学生の満足度が向上していることがわかる。一方、「問題は解け ているが文章をもっと読みたい」「ビデオを見ながら資料の空欄を埋めるだけでも理解しやす いのに、 さらに資料を全部手書きで写し直すとなると時間もかかるし、 教科書を読み込んだり する時間が割けなくなってしまう」「授業内容の殆どが答え合わせに時間をかけているので授 業をライブで受けている意味があまり見出せない&非効率だ」というようにインプットとアウ トプットのバランスを欠くことが不満に結びついていることもわかる。 (3)【教材】について  【教材】はさらに<教科書・参考書>、<資料>、<動画>の 3 つのカテゴリーに分類され た。 ①<教科書・参考書>について  <教科書・参考書>は、〔教科書の選択〕、〔入手〕、〔メモが見にくい〕、〔授業とのつながり〕、 〔読解時間の確保〕、〔参考書の推薦〕に分類された。  〔教科書の選択〕では、わかりやすいと難しいが混在している。また〔入手〕では、そもそ も入手方法がわからない、買い方の説明がない、そして手元にないという声があり、教科書を 用いて授業や課題にとりくむという前提が得られない状況があった。そのため、教科書の難度 も考慮してメモを書き込んだ教科書のコピーを学生に配信するも、その〔メモが見にくい〕と の声があがっている。  さらに、「教科書通りの授業で非常にわかりやすい」や、逆に「教科書通りに進めてほしい」、 「教科書との対応がわかりにくい」とあるように、教科書と〔授業とのつながり〕を明確にし ていくことへの期待が表れている。そして、テキストを読む時間や期間が確保されていて理解 しやすいとする〔読解時間の確保〕もあげられた。最後に、「テスト勉強に使用するオススメ の問題集があれば教えていただきたい。」と自主学習用の参考書の推薦を要望するコメントも あった。 ②<資料>について  ここでいう<資料>とは、<教科書・参考書>以外の参考資料すべてを指し、授業のレジュ メなども含む。まず〔資料効果〕として、授業が受けやすくなる、理解しやすくなる、復習が しやすいことがあげられた。そのため〔配布希望〕がある。特に覚えておかなければならない 部分や、授業スライドについて、インターネットを介して PDF 形式や Word 形式での送付を 望む声や、あるいは郵送の要望もある。とくに課題を行う際に、資料が少なく対応が難しいと の声もあった。  郵送の要望の背景には〔印刷〕の問題がある。資料が多い場合は印刷代が高額になる。また

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学生は複数科目を受講しているため、 1 つの科目の資料が例え少なくとも、受講科目が重なっ て結果的に印刷すべき資料が多くなり、学生の経済的負担につながってしまうケースもある。  先述の通り、資料は授業を理解するためのツールと理解されているため、〔配布時期〕につ いても授業前に送付されることが期待されている。「早めの資料配布で事前に読んだり、 余裕 を持って準備ができています。」とあるように、事前配布は予習も可能にしている。また、資 料の公開期間も 1 週間は欲しいとの声がある。  〔作り方〕について、学生が不満に感じる点は、文字が小さい、画像が見にくい、フォント が見にくい、書き込めるスペース(穴埋め形式を含む)がない、重要な点がわからない点である。 一方、逆に学生が満足に感じる点として、説明文章が丁寧、写真が見やすい、リンクが貼られ ている、資料同士のつながりが明らかである点があげられた。  最後に〔解説〕についても言及があった。単に資料が配布されるだけでなく、それを用いて の解説があることで、理解のしやすさや、重要な点の把握に結び付いている。したがって、資 料の解説が不足している授業については、解説してほしいという要望もあがってる。 ③<動画>について  まず、 2 種類の〔動画効果〕がある。第 1 に、感情的効果である。楽しい、面白い、飽きな い、元気をもらえる、助かる、ありがたい、普段通りの授業のよう、満足と続く。第 2 に、学 習効果である。とめられる、見返せる、好きな時間に学べる、集中できる、理解しやすい、わ かりやすい、受講しやすい、課題がやりやすいと続く。したがって、授業動画を配信してほし いという〔動画希望〕もあがっている。一方、動画が配信されても理解が難しいという声もあ る。  動画の〔わかりやすさ〕の要因として、丁寧で細かい説明であることや、イラストが活用さ れていること、レジュメと動画がセットで提供されることがあげられている。一方、板書につ いては文字が見にくく改善点としてあげられる他、マウスカーソルの色を目立たせてほしい、 文字映像だけでなく教員自身も映してどこを説明しているか明示してほしいといった要望もあ げられた。〔工夫〕として、Ted talk など既存に公開されている動画を活用するものもあるが、 既存映像の視聴ばかりが続くと授業感が低下する。また、授業本編の動画だけでなく、同時双 方向型授業でできなかった部分を動画授業として配布したり、オマケの動画を作成したりして 学生に意外な情報を提供するといった工夫が学生に肯定的に受け止められている。  次に〔動画の時間〕である。90分を越えるような長すぎる動画は短くしてほしいと要望があ る一方、10分ほどしか動画がなく、90分で作成してほしいという要望もある。また動画が15分 程度で分割されていて集中力を切らさず学びやすいという声、まったく分割されていないので 分割してほしいという声がある一方で、むしろ動画が分割され過ぎて視聴しにくく、統合して ほしい、あるいは再生リスト化して一覧して見やすいようにまとめてほしいという意見もあっ た。〔公開場所・期間〕については、どこにアクセスすれば動画がみれるかがわかりづらいと いう不満や、公開期間を 1 週間以上に設定してほしいという希望がある。

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 最後に〔視聴の問題〕がある。映像が見れない、見づらい、止まってしまう、上手く読み込 めない時がある、画質が悪い、音声が悪い、音が小さい、雑音が長時間はいっていて頭痛がす るという問題が報告されている。また、再生する場所によっても視聴のしやすさはことなり、 内部 LMS を利用するよりも、YouTube や外部 LMS を利用して再生する方式にしてほしいと いう要望がある。 (4)【方法】について  【方法】はさらに<講義法>、<アクティブラーニングの技法>、<実習・実技>の 3 つの カテゴリーに分類された。 ①<講義法>について  <講義法>では、まず〔説明〕力が求められる。わかりやすさについて、学生は「丁寧」で 「詳しく」、「不足」がないことを期待している。そして、「何を覚えて学んでいるかが明確」 で、覚えるべき重要な点が明示されることを望む。そして、魅力的な〔内容〕として、「体験 談」、「実際に起こったこと」、「例え」、「実践的な話」、「図」、「実物」、「ためになる雑談」があ げられた。一方、「教科書の朗読」や「授業に関係のない」話には不満が出ている。  〔話し方〕については、ゆっくり話してほしいという要望がある一方、早いがわかりやすい という声もある。声に抑揚をつけたり、図示したり、声のくぐもりに注意して話すこと、人を 見下したような言葉遣いをしないことが期待されている。またマイクの問題で聞き取りにくく なっているのではないかという指摘もあげられた。 ②<アクティブラーニングの技法>について  <アクティブラーニングの技法>は、〔発問とディスカッション〕、〔グループワークの魅 力〕〔グループワークの難しさ〕〔その他〕の 4 つに分類した。  まず、〔発問とディスカッション〕については、「先生の質問に対して色々な人の答えが聞け て楽しい」「問題に対してたくさんの人の意見や自分では思いつかない意見が聞けてとても勉 強になる」という効果が表れている。方法としては、遠隔授業の強みとしてチャットを活用す ることで学生にも発言の機会が与えられ、授業の理解のしやすさにつながっている。一方、 チャットに書き込む時間が短いと、「急いで送信するため短文になりがち」という声もある。 さらに、対面授業と同様に「人数が多いわりに、 質問等の回答には同じ人ばかりが指名されて いると感じる」とのコメントもある。  受講生全体で行うものが〔発問とディスカッション〕であるのに対して、学生を小グループ に分けてディスカッションを行うものがグループワークである。〔グループワークの魅力〕と して、「とてもいい」「やりやすい」「楽しい」「有意義な時間を過ごすことができている」「助 かる」という感想が述べられている。「グループワークがオンラインでもできることに感動し ました」「私だけでなくみんな同じような悩みがあって安心した」など、コロナ禍中ならでは の意見もある。

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 逆に、〔グループワークの難しさ〕に関する意見も多く見受けられる。対面授業時と同様に あげられる意見として、初対面の人同士のグループワークは困難、グループワークに参加しな い人がいる、毎回同じ人がリーダーになる、課題を理解していない人がいて進まない、グルー プワークの時間が短すぎることがあげられた。一方、遠隔授業ならではの意見として、話すタ イミングなどコミュニケーションの取り方が難しい、対面の時のようなワイワイとしたにぎや かな雰囲気にならない、メンバーの顔も音声もオフになっていることがあってグループワーク にならない、グループワークのセッションから全体のセッションに戻れなかった、グループ ワークの様子を教員がまったく把握せず放置され内容のない授業になっていた、という意見が あげられた。  〔その他〕の方法として、「ノート提出の際は他の人がどういう風にノートをとっているかと いうのも見ることができ、 楽しく授業を受けさせていただいています」とあるように、学生が 提出した課題を学生間で共有するような工夫や、「発表する機会が多く設けられていて、 自分 の短所を克服するのにとても良い授業だと感じる」とあるように、遠隔授業であっても学生に プレゼンテーションさせる取り組みも肯定的に受け止められている。 ③<実習・実技>について  <実習・実技>では、まず実技の対面授業が行われておらず、「実習の授業が座学になって しまったので、 実際に行えずイメージがつきにくい」、「技術が身につくのか不安」、「実技につ いては、 このまま実習へいくことは不安」という〔不安〕要素があり、そこから〔体験・練 習・補習希望〕の声につながっている。また、そもそも実習はどこでやるのかという〔疑問〕 も抱いているのが 5 月末の実情であった。 (5)【課題】について  【課題】はさらに<課題内容>、<課題量>、<課題提示・提出>、<フィードバック>、 <課題効果>の 5 つのカテゴリーに分類された。 ①<課題内容>について  <課題内容>で改善が期待されるものは、第 1 に〔課題の形式〕に関わるものである。毎回 内容が同じ、形式が同じで身についている気がしない、「教科書内容を写すようなレポート」 で内容理解には結びつかないという声があがる。違う形式の課題がしたい、クイズ形式にして ほしい、調べ学習は面白いというように形式を工夫していくことが期待されている。さらに、 提出課題以外の自主学習用の問題の提示を希望する声や、挑戦問題にやりがいを感じるなど、 特に学習意欲の高い学生はプラスアルファの課題を望んでいる。  第 2 に〔課題の難度〕である。課題内容が難しいというもので、「入門だけを習っている人 にはかなり難しい内容」「初めて学ぶ者としては課題が難しい」というように受講生のレディ ネスと課題の難易度のバランスが取れていないことがわかる。また、講義でわかる範囲を越え た課題に対する不満もあり、授業と課題のつながりを意識した課題づくりも希望されている。

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課題のヒントが欲しいという要望もある。  第 3 に〔課題の理解〕である。単純な難度の問題ではなく課題内容そのものがわかりにくい という声である。問いそのものがわかりにくい、課題の説明が難しい、設問がややこしい、字 数制限や提出方法などの条件がわからない、取り組み方や書き方がわからないとある。音声付 きで説明してほしいという要望もあり、課題そのものや課題への取り組み方に関する詳細でわ かりやすい説明が期待される。 ②<課題量>について  <課題量>では、まず〔多い〕ことが指摘される。〔多い〕とは、課題そのものの個数や回 数の多さ、読む文字量の多さ、書く文字量の多さ、 1 つの課題にかかる時間の長さを指す。ま たこの〔多さ〕は、単に単一の授業の中だけでなく、〔他の授業との関係〕で、総合的に多く なることも意味している。これが結果として「課題をやるばかりで時間が過ぎ復習をすること が難しく、 身についているか不安」、「一度に出される課題の量が多すぎるため、 一つ一つの理 解が鈍くなります」、「とても時間がかかって、 ほかの課題が計画通りにできないことが多い」 という〔課題の弊害〕につながってしまうこともある。しかし、「多い気もするが、 PT,OT に なるためには必要な量だと思う」というように、多いことの意味を理解することで、適切量と 判断する学生もいる。  一方で〔少ない〕ことも指摘される。「明らかに課題を受けた回数が少なく、 単位に影響が 出ないか心配」「課題が出されていないので、 授業にきちんと参加できているかが不安」など、 成績に対する不安がある。また、「課題が 1 番最後の授業でしかないので授業内容を理解でき ているかどうかわからない」「課題等があればありがたい」と自身の理解度を確認するために も課題を希望する声もある。 ③<課題提示・提出>について  <課題提示・提出>では、まず〔使用ツール〕が問題となる。遠隔授業であるため課題の提 出は郵送もしくはインターネットを介することになる。後者について、A大学では以前から利 用されている大学の独自 LMS と業者から購入している外部 LMS の 2 種類が使われている。 学生からは、独自 LMS を使った課題の提示や、課題の提出を希望する声があがっている。そ の要因の 1 つとして外部 LMS は通知が届かないことがあげられている。また、科目によって は両方の LMS を使用しており、どちらか一方に統一してほしいという希望もある。  次に〔提示方法〕だが、資料と合わせて課題を提示することで、課題に取り組みやすくなる。 しかし、「課題作品のファイルの画質のせいかもしれないが、 金閣寺などは字が潰れていたり して読みにくかったので、 出来るだけ字が大きいものや画質の良いものにして欲しい」など、 その資料の見やすさが問題となる場合もある。提示方法で特に問題になるのが連絡の遅さであ る。課題の連絡が遅すぎる、授業日に課題を提示してほしい、土日に課題が設定される、予定 日に課題が提示されず課題があるのかないのか不安になった、重い課題は前もって言ってほし い、という声がある。また、LMS 上に回答欄がないなど、課題設定時に問題が発生している

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こともわかる。  課題を提示する際に問題になるのが〔提出期限〕である。そもそも提出期限の記載がなくわ からないという声もあるが、教員が授業内や資料で示した締め切りと、LMS 上の締切が異なっ て混乱したという声もある。また、「提出期限 1 日は早すぎる」「提出期限が12時間しかないの は、 見落としそうで怖い」「 4 /10の 2 日間のみの掲載となっていたが、 事前になにも聞かされ ず、 予定があったため提出することができなかった」など、期限が早すぎることにたいする不 満があがっている。「パソコンも妹や親と共有なので、 妹がオンライン授業している時間は使 えないので課題に費やせる時間が短いので、 正直きつい」など、家庭環境によっても課題に費 やせる時間が異なり、提出期限にある程度の余裕を持たせることが期待されている。 ④<フィードバック>について  <フィードバック>でまず期待されるのが〔提出確認〕である。学生自身も LMS を使い慣 れていないためか、自身が提出できているかどうかがわからず不安に陥っており、教員に提出 確認のコメントをもらいたいという要望があがっている。次に〔解答希望〕である。課題に対 して解答が示されず、自分の理解度を確かめられないという声がある。小テストは、WEB 上 の自動採点機能を用いることで即時フィードバックが可能となっており好意的に受け止められ ているが、「半角と全角が違うだけで間違いと判定された」など、記述式の問題においては弱 点も指摘されている。続いて〔解説希望〕がある。ただ解答が示されるだけでなく、なぜその 解答なのかという解説があることで、より理解度が深まる。解説が提示されるが、少ないため、 もう少し詳細に解説してほしいといった解説の質に対する希望もある。また解説も文章による 解説だけでなく動画による解説があることでさらに理解しやすくなるという声もある。さらに 個別の〔コメント〕については、コメントされることが嬉しさや楽しさ、やりがい、学習意欲、 内容理解につながるという一方、見下したようなコメントに対して不満を持つ学生もいる。特 に不満につながる要因となるのが〔個人情報〕の扱いである。個人に対するフィードバックを 授業全体で行う際に、個人名を出してしまうことが問題となる。中には、名前は出さないと明 言されていたのに結局出されてしまったことに対する怒りの声もあがっている。本人に対して だけでなく、他の受講生にも不快感を与えてしまっている。 ⑤<課題効果>について  <課題効果>は、〔ポジティブ〕な反応と〔ネガティブ〕な反応に分かれた。〔ポジティブ〕 な反応については、課題そのものが楽しい、面白いという声、知識が増えた、授業内容の復習 になった、理解が深まったという声、スキルアップや成長、キャリアへの好影響を感じる声が あがっている。一方、〔ネガティブ〕な反応は、頭に入っているかからない、正しく理解がで きているかわからない、身についているかわからないがあげられた。この理由として、授業が なく課題しかない、課題の解答が示されないことが指摘された。

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(6)【評価】について  【評価】はさらに<試験>、<レポート>、<課題による評価>、<出席>の 4 つのカテゴ リーに分類された。  <試験>については、実施するのか否か、実施するならばどのように行うのか、範囲はどこ からどこまでか、持ち込みは可能なのかという〔方法〕に関する質問があげられた。またもし 遠隔で実施するならばカンニングできてしまうのではないかという〔危惧〕も呈されている。  <レポート>については、「大学に行くために 2 時間かかり、 図書館を使うことも中々困難 であるため、 最終レポートの期限は長めに設定してほしい」とあるように社会的情勢も鑑みて 早めに詳細を連絡してほしいという要望がある。また、提出したレポートの評価を知ることは できるかという問い合わせもある。  <課題による評価>については、日々の課題、小テストと成績の関係を教えてほしい、課題 が授業で提示されていないが成績はどのようにつけるのか、課題を提出し損ねてしまったこと がどの程度成績に響くのかという課題と成績評価の結びつきについての問い合わせである。  <出席>については、特に同時双方向型の授業で人数が多い場合、きちんと出欠管理がなさ れているかという不安や、同期型の授業に出られずレコーディングされた授業を視聴している 場合の出欠扱いはどのようになるかという心配の声が寄せられている。 (7)【ICT ツール】について  【ICT ツール】はさらに<システムの問題>、<ハードの問題>、<利用ツールの問題>、 <操作の問題>の 4 つのカテゴリーに分類された。  <システムの問題>では、〔授業アクセスの問題〕がある。内部 LMS では再生できたもの が外部 LMS 上ではうまく視聴できない、ログインの仕方がわからない、受講環境は整ってい たのにログインできなかった、教員から送られてきた URL をクリックしてもアクセスできな かったなどの問題が発生している。またそのような受講生が同一科目内に一定数いたことで、 当該授業日の成績は評価しないなどの緊急対応がとられたことに対する(きちんと参加できた学 生の)不満も見受けられる。さらに〔提出の問題〕では、送信前の確認画面が欲しい、提出し たはずなのに未提出扱いになっているなどがあげられる。  <ハードの問題>では、授業中にパソコンの調子が悪くなったり、音声が読み込めなくなっ てしまうといった問題が報告されている。<利用ツールの問題>では、複数の LMS や授業シ ステムが用いられているため混乱が起こりやすく、学生側としては統一してほしいという声が ある。しかし、どれに統一すべきかという希望は学生によって異なる。<操作の問題>では、 操作方法を明確に説明することで授業がわかりやすくなったとする声がある一方、教職員が案 内する操作方法が特定の OS やソフトによるもので、その OS やソフトを用いていない学生は 操作方法がわからず、教員の指示通りの課題ができないというコメントもある。また、タイピ ングが難しいという声もある。

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(8)【その他】について  【その他】は<連絡>、<質問対応>、<学習環境>に分類された。  <連絡>については〔早くほしい〕の 1 点である。これは、授業実施の連絡、休校の連絡、 教材に関する連絡、授業課題の連絡という授業関連の連絡である。これらが遅れることによっ て、アルバイト先に迷惑をかける、余分なコピー代を使ってしまったなどの問題も発生している。  <質問対応>は〔質問方法〕として同期型の授業中、メール、LMS、課題を使ってと様々 な方法がとられている。個別に質問したいため、LMS などで受講生全員にだれが質問したか が見られてしまうのは気が引けるため、メールの方がよいとする意見もある。また、質問方法 がわからない、メールアドレスがわからないという声もある。〔質問回答〕が早く、的確、丁 寧になされることで学生は肯定的感情を持つ一方、回答がないことへの不安を抱える学生もい る。また学生個人の質問に対する回答を全員に共有することで、「自分が質問しそびれたもの も聞くことができとてもありがたい」という声もあがっている。さらに〔質問のしやすさ〕と して、いつもより質問しやすく対面授業よりもオンライン授業の方を評価する学生もいた。  <学習環境>については、〔自宅〕だから集中できるという学生がいる一方、〔自宅〕だから 集中できないという学生もいる。また〔自室〕だから集中できるという学生がいる一方、〔自 室ではない〕から集中できない、家族の邪魔をしている気がする、マイクをオンにできないと いう学生もいる。〔自宅〕では制作が難しいという意見や、〔下宿〕先には Wi-fi 環境がないた め対面授業と遠隔授業が併用されるようになった場合に遠隔授業が受けられなくなるのではな いかという不安を持つ学生もいる。

5 .考  察

 【スタイル】においては、<資料提示・課題型>において、資料もしくは課題のどちらか一 方しか提示されないことや、資料を読むだけでは理解できない、課題も資料をコピーするだけ、 単純な調べ学習を行うだけといった単調なものでは学習意義を見出せないなど、本スタイルが 上手く機能していない状況がうかがえる。<視聴覚教材配信型>では、資料提示・課題型に比 べて聴覚教材の方が、聴覚教材に比べて視聴覚教材の方が学びやすいと学生に受け止められて いることがわかる。しかし視聴覚教材にも限界があり、<同時双方向型>を期待する声もあっ た。<同時双方向型>は質問がすぐできる、会話ができる点が非同期型の遠隔授業よりも優れ ていると評価されている。  これらスタイルの考察について、ジョシュ(2006)が示した学習モデルを参照したい。本モデ ルは、 6 つの学習アプローチと習熟度の関係を示しているが(図 2 )、読む・見るアプローチは <資料提示・課題型>、聴く・閲覧するアプローチは<視聴覚教材配信型>、行動するアプ ローチは<同時双方向型>と合致するものであり、本研究の結果は彼のモデルの一部を根拠づ けるものともいえよう。

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【図 2 】 6 つの学習モデル(ジョシュ,2020,p.43) ※一部筆者がフォントを編集  一方ジョシュは、ツールの使い方や、参加・退出問題、音声や画質の問題、視聴ストレスの 問題など、ICT ツールに関わる諸問題には言及していない。高レベルの習熟を目指すアプロー チになるほど ICT ツールに関わる問題が発生しやすくなることを考慮すると、ICT 環境の整 備や、ICT ツールの発達、および活用スキルの向上を図っていくことがより効果的な学習に は必要であろう。  また、同時双方向型授業ではアクティブラーニングの技法が活用できるものの、オンライン ならではのコミュニケーションの難しさがあり、実習や実技の代替も困難であるという問題も 抱えており、対面授業の必要性も変わらず残っているといえる。<その他>で示した通り、対 面授業や同期型の授業よりも、非同期型の授業の方が学びやすい点もあることも明らかであり、 今後の授業づくりにおいては対面授業と遠隔授業を組み合わせることも考慮し、より効果的・ 効率的・魅力的な授業づくりを検討していくことが必要と考える。  【設計】においては、対面授業から遠隔授業へと急激に変更せざるをえなかったことが授業 設計の困難さを生み出したと考えられる。例えば、<方針>においては、教員自身もこれから の授業がどうなるかわからないという暗中模索の状況下で試行錯誤しながら遠隔授業を始めて いったという経緯がある。はじめから明確な方針を打ち出すことは極めて困難であっただろう。 また<難易度>についても、受講生と一度も会っていない中で学生のレディネスを理解するこ とも難しく、受講生のレベルに合わせた授業提供は難しかったのではないだろうか。最後に< 進め方>についても、A大学は最初の 2 回分の授業のみ遠隔とし、残り13回分は対面授業で行 う予定であった。しかし 4 月末に 5 月以降前期の授業全てが遠隔授業になることが決定され、 教職員に通達されたため、教員は慌てて 5 月以降の授業を作り替えたという経緯がある。この ような状況下で順序性や進度、インプットとアウトプットのバランスをコントロールすること も難しかったであろう。しかし、対面授業であれば、<方針><難易度><進め方>が最適な

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ものになっていたかどうかはわからない。重要なことは、対面授業が再開されようとも、され なかろうとも今回の経験を生かして授業設計を今一度見直し、より学習成果を高められるよう な計画を組み立てることではないだろうか。  【教材】については、教科書や参考書が手に入りにくい状況を考慮しつつ、各種資料や動画 教材を交えた教材提供が学生の学びに役立つことがわかる。平成13年文部科学省告示第51号で は、遠隔授業を「文字、音声、静止画、動画等の多様な情報を一体的に扱うもの」と示してい るが、まさにどれか 1 つの教材を提供すればよいというわけではなく、学生の理解度を高める ために使えるものはすべて使うという姿勢が「対面授業に相当する効果」に結び付くのではな いだろうか。また、授業動画の制作においては、ほとんどの教員が初めて経験しており、テキ スト教材と比べても制作上あるいは配信上、気を付けなければならない点が多々あることも浮 かびあがった。文章は読みやすく作ることが基本であるが、動画は聞きやすく見やすく作り配 信することが必要であり、ICT に関わるスキルが求められる。このようなスキルを高め、多 様な教材を併用することで、授業の質を向上させたい。  【方法】について、講義法は対面授業で注意すべき点とほぼ変わらない。アクティブラーニ ングの技法についても、ICT ツールを駆使すれば、発問やディスカッションだけでなく、グ ループワークも実施することができる。アクティブラーニングの技法の活用について、対面授 業で注意すべき点は同様に遠隔授業でも気を付けるべきだが、それに加えて遠隔授業ならでは のポイントもあった。それは机間巡視の難しさであり、カメラやマイクのオン・オフ問題、学 生同士のコミュニケーションのとりにくさである。これらを理解したうえで、どうすれば遠隔 授業上でも効果的にアクティブラーニングの技法を活用できるか考えたい。最後に、実習・実 技については、いまだ遠隔で代替しきるには至らず、遠隔授業でできることとできないことの 線引きを見定めつつ対面授業をより効果的にするための準備としての遠隔授業のあり方を考え る必要があるだろう。  【課題】についても、従来の授業では出してこなかった科目がこぞって出すこととなり、混 乱を生んだ。しかし、この課題を工夫して提供することができれば、学生の負担感はあっても それ以上に学習成果を高める効果を持つことも明らかになった。どのような課題を、いつ、ど のように提示すれば、学生の学びをより良いものにできるかを考えれば、対面授業に戻ってか らも課題を有効活用し続けられるだろう。また、課題は提出させておわりではなく、その課題 に対するフィードバックを与えることで学びにつながる。受講生に対し、課題解答の解説や評 価を個別、あるいは全体に向けて伝えることで、課題提示⇒課題提出⇒課題解説という教員と 学生のキャッチボール、すなわち対話や双方向性のある授業づくりにつながるだろう。これが 実現できれば、課題を負担と考えるのではなく、むしろ楽しく、自身のためになるものととら え、より積極的な学習姿勢を生み出すことができるのではないだろうか。  【評価】について、今回の授業アンケートは前期の中間にとったということもあり、評価に ついては疑問が呈されるにとどまった。遠隔授業という性質上、カンニングの問題を回避する

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ことは難しく、期末試験の実施には学生自身も危惧を覚える。そして期末レポートにするので あれば、あらゆる科目が期末レポートを課すことを想定し、早めに内容を伝える必要があるだ ろう。課題や出席など日々の学習態度をいかに評価するかも、遠隔授業ではとくに関心が寄せ られやすいところであり、これらの点についても受講生に示しておくことで彼らの不安を払拭 できるだろう。  【その他】については授業時間という枠を超えた内容である。第 1 に教員と学生がどのよう にコミュニケーションをとるのかが指摘されている。教員と学生の立場を比べると圧倒的に学 生の方が立場が弱い。授業のスケジュールを決めるのも、評価を決定するのも教員だからであ る。そのことを自覚し、学生が教員の対応によって不利益を被らないよう、早めの連絡や丁寧 な質問対応をする必要がある。第 2 に、全員が教室に集まって受講する対面授業とは異なり、 遠隔授業は学生の家庭環境の影響を強く受けることを認識しなければならない。彼らが置かれ ている状況の多様性を知ることで、柔軟性のある授業づくが可能になるのではないだろうか。 以上 2 つの要点を一言でまとめるならば、「受講生 1 人ひとりへの思いやり」といえよう。授 業改善というと授業設計や教授方法に目を向けがちだが、それに加えて思いやりのある授業運 営を心掛けることが、受講生 1 人ひとりの学びをより充実したものにし、学習意欲や学習成果 を高めることにつながるのではないだろうか。

6 .課題と展望

 本研究の課題は 3 つある。 1 つ目は、前期の中間アンケートを分析対象としている点だ。学 生も教員も遠隔授業に不慣れな状況下で実施されたアンケートであり、この中間アンケートの 後に授業の様子も大きく変わったことが想定される。特に本アンケート結果は個別教員に フィードバックされており、学生の自由記述をふまえて後半の授業が改善されていることを期 待したい。 2 つ目は、本分析対象が自由記述のテキストのみを対象としており、自由記述に書 かれた内容を必ずしも正確に解釈できているとは限らない点である。本来であれば、インタ ビューなどを通じて、より正確に学生の意図を読み取る必要があるだろう。 3 つ目は、特定の 大学の事例である点だ。この COVID-19問題に対して各大学の対応は一様ではない。大学の方 針が異なれば、授業の様子も変わるであろう。 1 つの事例研究としての知見の域を出ないこと は課題である。  以上をふまえ、本研究は 3 つの展望を持つ。 1 つ目は、前期の期末アンケートを分析するこ とである。本中間アンケートの分析と比較することで、各授業がどのように変容したかという 全体像を明らかにすることができるだろう。 2 つ目は、学生インタビューの実施である。学生 自身がどのように学んだのか、対面授業と遠隔授業では何が違うのか、これからの授業をどの ようにしてほしいと考えているかについて掘り下げて明らかにすることができるだろう。 3 つ は、他大学との比較である。他大学の学生アンケートやインタビューと比較することで本事例

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の特異性や一般性を検証することができるだろう。

 本研究は、新規性と速報性を重視した研究であり、データの網羅性や時間軸に沿った発展性 について課題がある。今後も継続的にデータを収集し分析することで遠隔授業の改善について より頑健なモデルや理論を構築できるよう努めたい。

( 1 ) LMS とは Learning Management System の略であり、授業資料や課題を教員から学生に提示した り、レポート等の課題を学生から教員に提出することができる学習支援システムの総称である。 参考文献 天野智水,南部広孝(2004)「わが国の国立大学における学生による授業評価の展開」大学論集 35, 229-243. 権田豊(2010)「中間アンケートを取り入れたリアルタイム授業改善」大学教育研究年報 (16),125-129. サトウタツヤ・春日秀朗・神崎真実(2019)『質的研究法マッピング』新曜社. ジョシュ・バージン(2006)『ブレンデッドラーニングの戦略』東京電機大学出版局. Seldin,P.(1999)Changing practices in evaluating teaching. Anker Pub.

西山茂(2019)「「学生による授業評価」結果の授業属性ごとの統計的分析による考察」新潟国際情報大学 経営情報学部紀要(2),128-140. 細川和仁(2007)「授業評価調査における中間評価の有効性」秋田大学教養基礎教育研究年報(9),1-9. 松河秀哉、大山牧子、根岸千悠、新居佳子、岩﨑千晶、堀田博史(2018)「トピックモデルを用いた授業評 価アンケートの自由記述の分析」日本教育工学会論文誌 41(3),233-244. 文部科学省(2020)「新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた大学等の授業の実施状況」  https://www.mext.go.jp/content/20200717-mxt_kouhou01-000004520_2.pdf(2020.8.31アクセス) 文部科学省高等教育局(2020)「平成29年度の大学における教育内容等の改革状況について(概要)」  https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigaku/04052801/1417336_00005.htm(2020.8.31アクセス) ロンドン大学教育研究所(1982)『大学教授法入門』玉川大学出版部.

参照

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