〈論説〉民事・行政訴訟における機密情報の取扱いをめぐるイギリス法の展開--イギリスにおける人権保障制度の現況に関する事例研究を兼ねて
67
0
0
全文
(2) 民事 ・行 政訴 訟 に お け る機 密 情 報 の取 扱 い を め ぐる イ ギ リス法 の展 開. 道,取 材 の 自由 との 関係 で,国 民 の 「知 る権 利 」 を侵 害 して い る と激 し く批 判 さ れ て お り,政 府 の 機 密 情 報 の 取 扱 い に 対 す る 関 心 が に わ か に 高 ま っ て い る3)。 しか し,政 府 に よ る機 密 情 報 の保 護 の あ りよ うは,報 道 機 関 の報 道 や取 材 の 自由 との 関係 に お い て の み 問題 とな るわ け で は な い。 政 府 の活 動 に対 す る統 制 は,報 道 機 関 の報 道,取 材 の み な らず,議 会 や裁 判 所 に よ って も果 た され る こ とが期 待 され る こ と,も ち ろ ん で あ る。 中 で も,立 憲 主 義 や 法 の支 配 を実 現 す るた め に は,裁 判 所 の は た らき が特 に重 要 で あ ろ う。 訴 訟 を通 じた裁 判 所 に よ る統 制 に も,刑 事 訴 訟 に お け る,刑 罰 権 の発 動 の適 否 や 捜 査 活 動 の適 否 に対 す る統 制 の ほ か,民 事 訴 訟 や行 政 訴 訟,す. な わ ち,人 々が 政 府 の活 動 に よ って 侵. 害 され た 権 利 利 益 の救 済 を 求 め る訴 訟 を通 じた 政 府 活 動 の統 制 が 観 念 で き る。 前 者 も重 要 で あ る が4),本 稿 で は,後 者 に絞 り,次 の点 を 考 察 した い。 す な わ ち,政 府 の活 動 に よ り権 利 利 益 を侵 害 され た者 が救 済 を 求 め る際 に, 裁 判 所 の判 断 に重 要 と な る証 拠 が 機 密 情 報 で あ る こ とを 理 由 と して 裁 判 所 に開 示 され な い な らば,適 切 な救 済 の実 現 を阻 害 す る こ と にな らな いか,と い う点 で あ る。 た とえ ば,市 民 が 政 府 の活 動 に よ り権 利 侵 害 を 受 けた と して 国 家 賠 償 請 求 訴 訟 を提 起 す る と き に,原 告 の請 求 を 根 拠 づ け る重 要 な 証 拠 が 政 府 にあ る と して 文 書 開 示 請 求 を した もの の政 府 が 当 該 文 書 は機 密 情 報 で あ る と主 張 して. 3)特. 定 秘 密 保 護 法 案 に 関 す る憲 法 学 の 検 討 と して,宍. 年12月 号81頁,山. 中倫 太 郎 「特 定 秘 密 保 護 法:そ. 戸 常 寿 「特 定秘 密 保 護 法 案 の核 心 」 世 界2013. の諸 問 題 と課 題 」 法 学 セ ミナ ー708号(2013年). 25頁 。 4)刑. 事 訴 訟 との 関 係 で は,も. ち ろ ん,マ. ス コ ミの報 道,取. 材 の 自由 の保 護 の 関係 で,守 秘 義 務 違 反. の 「そ そ の か し」(又 は 煽 動)罪 で 記 者 が 起 訴 され た場 合 の裁 判所 の判 断 の あ り方 が 緊要 で あ る。 こ の 点,い. わ ゆ る外 務 省 秘 密 電 文 漏 洩 事 件(最. 判 昭 和53年5月31日. 〔 刑 集32巻3号457頁. 〕)が,「 手. 段 ・方 法 が一 般 の 刑 罰 法 令 に触 れ な い もの で あ って も,取 材 対象 者 の個 人 と して の人 格 の尊 厳 を著 し く躁 躍 す る 等 法 秩 序 全体 の精 神 に 照 ら し社 会観 念 上 是 認 す る こ との で き な い態 様 の もの で あ る場 合 に も,正 当 な 取 材 活動 の 範 囲 を 逸 脱 し違 法性 を帯 び る」 と して,当 該 事 件 に お け る被 告 人 記 者 の 取 材 行 為 に つ い て 正 当 な取 材 活 動 の範 囲 を 逸 脱 す る と した 判 断 に は,学 り,筆 者 も この 疑 問 を共 有 す る と ころ で あ る。 一70一. 説 か ら疑 問 が 出 され て お.
(3) 法科大学院論 集. 第10号. 開 示 を拒 否 す る場 合 や,市 民 が 不 利 益 処 分 を 受 けた と して 行 政 訴 訟 を 提 起 す る と き に,処 分 の 適 法 性 を 根 拠 づ け る重 要 な 証 拠 が 行 政 機 関 の 手 元 にあ る もの の 当 該 文 書 は機 密 文 書 で あ る と して 提 出 が拒 否 され る場 合 に は,事 案 の 性 質 上, 情 報 が 偏 在 して い るた め,原 告 た る市 民 の 側 で 十 分 な 証 明 や 反 証 が で きず,裁 判 所 は不 十 分 な 証 拠 に基 づ き判 断 を 行 わ ざ るを え な い 結 果,市 民 は 十 分 な証 拠 を 示 され な い ま ま救 済 が 否 定 され るお そ れ が あ る。 原 告 の権 利 利益 の 救 済 に 関 して 裁 判 所 が 適 切 な 判 断 を 行 うた め の 文 書 開示 や証 拠 提 出 の 要請 と,機 密情 報 の 保 護 の要 請 とが 正 面 か ら衝 突 す る の で あ る。 そ れ ゆ え,こ れ らの場 合 に は, 機 密 情 報 の 取 扱 い の あ り方 に 慎 重 な検 討 が 求 め られ よ う。 この 点,文 書 開示 や 証 拠 提 出 の 拒 否 が認 め られ る要件 と,そ の判 断手 続,例. え ば イ ン ・カ メ ラ審 理. の 可否 や 内 容 に 関 す る考 察 が必 要 とな る。 これ らの論 点 の一 般 に つ い て は,民 事 訴 訟 法 学 や行 政 法 学 に お け る検 討 が あ る こ と,も ち ろ ん で あ る5)。 そ して ま た,特 に イ ン ・カ メ ラ審 理 の あ り方 を巡 って は,憲 法 学 で も議 論 が な さ れ て き た。 しか し,機 密 情 報 の取 扱 い とい う,国 家 権 力 の発 動 とそ の統 制 を論 ず る憲 法 学 に と って極 め て重 要 な 問題 で あ る視 角 か らイ ン ・カ メ ラ審 理 の あ り方 手続論. を考 察 しよ う と した もの は管 見 の 限 り見 当 た らな い。 ま た,比 較 法. の対 象 と して も,も っ ぱ らア メ リカ合 衆 国 や ドイ ツが 取 り上 げ られ て い る6)。. 5)民. 事 訴 訟 に お け る イ ン ・カ メ ラ審 理 全 般 の 問題 に つ い て,田. ジ ュ リス ト1028号(1993年)92頁,伊. 邊 誠 「民 事 訴 訟 に お け る秘 密 保 護 」. 藤 眞 「営 業 秘 密 の 保 護 と審 理 の 公 開 原 則(上)(下)」. ス ト1030号(1993年)78頁,1031号(1993年)77頁. ジュリ. 。 民 事 訴 訟 法 上 の 文 書 提 出 命 令 の 判 断 を 行 うた. め の イ ン ・カ メ ラ手 続 の 導 入 に関 して,奥 博 司 「文 書 提 出 命 令 ⑤ イ ン ・カ メ ラ手 続 」 三 宅省 三 =塩 崎 勤=小 林 秀 之 編 『新 民 事 訴 訟 法 大 系3』(青 林 書 院 ,1997年)207頁,伊 藤 眞 「イ ン ・カ メ ラ 手 続 の光 と影 」 新 堂 幸 司 先 生 古 希 祝 賀 「民 事 訴 訟 法 理 論 の 新 た な 構 築 191頁,人. 事 訴 訟 法 に お け る公 開 停 止 制 度 の導 入(同. 法22条)に. 事訴 訟 法 の 基 本 構 造」 ジ ュ リス ト1259号(2003年)63∼68頁,特 の 導 入 と公 開 停 止 に 関 して,伊. 藤 眞=近. 藤 昌昭=坂. 下 巻 』(有 斐 閣,2001年). 関 して,高. 橋 宏 志 他 「《座談 会》 人. 許 法 等 に お け る秘 密 保 持命 令 制 度. 口 智 康=末. 吉 亙=中. 山信 弘=中. 吉 徹 郎 「《座 談. 会》 司 法 制 度 改 革 に お け る 知 的 財 産 訴 訟 の充 実 ・迅 速 化 を 図 るた め の法 改 正 に つ い て[下]」 タ イ ム ズ1162号(2004年)4頁 6)イ. ン ・カ メ ラ審 理 全 般 の 問 題 に つ い て,松. 第3部,佐. 判例. 。 井 茂 記 『裁 判 を受 け る権 利 』(日 本 評 論 社,1993年). 藤 幸 治 「公 開裁 判 原則 と現 代 社 会 」 佐 藤 幸 治=中 一71一. 村 睦 男=野. 中俊 彦 「フ ァ ンダ メ ンタル.
(4) 民事 ・行 政 訴 訟 に お け る機 密 情報 の取 扱 い を め ぐ るイ ギ リス 法 の 展 開. そ こ で,本. 稿 で は,機. 密 情 報 の 訴 訟 に お け る 取 扱 い を め ぐ る イ ギ リ ス 法7)の. 展 開 を 検 討 す る こ と を 通 じて,上. 記 の 問 題 に つ い て,日. か び 上 が ら せ た い 。 イ ギ リス で は こ の 十 年 来,テ. 本 法 の 特 徴 と課 題 を 浮. ロ 対 策 立 法 に 起 因 して,機. 密. 情 報 の 取 扱 い が 問 題 と な る 訴 訟 が 増 加 して い る 。 こ れ に 対 応 す る た め,2013年 司 法 ・安 全 法(JusticeandSecurityAct2013)が 刻 な 問 題 を 孕 む も の と さ れ,法 以 下 で は,テ. 成 立 した が,こ. の法 律 は 深. 律 の 制 定 過 程 で 激 しい 非 難 が 巻 き起 こ っ た8)。. ロ 対 策 立 法 と 関 連 す る 訴 訟 を 紹 介 しつ つ 背 景 と 問 題 の 所 在 を 明 確. に した う え(1),2013年 の 制 定 過 程(皿)を. 法 の 直 接 の 契 機 と な っ た2つ 検 討 す る 。 こ れ に よ り,機. 関 わ る 論 点 を 抽 出 す る と と も に,日 制 定 過 程 か ら は,イ. の 事 件(II),2013年. 密 情 報 の 訴 訟 にお け る取 扱 い に. 本 法 へ の 示 唆 を 得 た い 。 ま た,2013年. ギ リ ス に お け る 立 法 手 続 の 具 体 的 な あ り方 と,日. と の 違 い も 浮 き 彫 り に な る で あ ろ う 。 こ の 点 も含 め て,本 の 制 定 以 来,複. 法. 法の. 本のそれ. 稿 は,1998年. 人権法. 雑 か つ 流 動 的 な もの と な っ て い る イ ギ リ ス で の 人 権 保 障 制 度 の. 現 況 を 切 り取 っ た 事 例 研 究 も兼 ね る もの で あ る 。. 憲 法 』(有 斐 閣,1994年)307頁,同. 「『公 開 裁 判 原 則 』 再 論 」 樋 口 陽 一 先 生 古 希 記 念 『憲 法 論 集 』. (創 文 社,2004年)223頁,長 谷 部 恭 男=宇 賀 克 也 「情 報 公 開 ・個 人 情 報 保 護 」 宇 賀 克 也=大 橋 洋 一 =高 橋 滋 編 「対 話 で 学 ぶ 行 政 法 』(有 斐 閣 ,2003年)129頁,135∼36頁,笹 田 栄 司 「裁 判 の 公 開 」 高 橋 和 之 一 大 石 眞 編 「憲 法 の争 点 〔第3版. 〕』(有 斐 閣,1999年)241頁,同. 憲 法 的 定 礎 」 同 『司 法 の 変 容 と憲 法 』(有 斐 閣,2008年)191頁. 「イ ン ・カ メ ラ手 続 の. 。 ま た,裁. 判所の文書提出命令や議. 会 の 国 政 調 査 権 の 行 使 に 対 して 政 府 の 情 報 の 秘 匿 が 許 され るか とい う実 体 論 につ い て は,イ の 国 王 特 権 及 び ア メ リカ の 執 行 特 権 に関 す る研 究 の 蓄 積 が あ る。 参 照,伊 る証 拠 の 排 除」 兼 子 博 士 還 暦 記 念 『裁 判 法 の 諸 問 題. ギ リス. 藤 正 己 「公 益 を 理 由 とす. 中 』(有 斐 閣,1969年)291頁,江. 橋 崇 「行 政. 秘 密 の 裁 判 上 の 取 り扱 い に 関 して 」 法 学 志 林73巻1号(1975年)56頁,3=4号(1976年)112頁, 74巻2=3号(1977年)36頁,75巻2号(1977年)1頁,下. 山 瑛 二 「ア メ リカ 憲 法 に お け る 『権 力. 分 立 と法 の 支 配 」 一 「執 行 権 特 権 」 につ い て 」 下 山瑛 二=高. 柳 信 一=和. 現 代 的 展 開(2>統治 構 造 』(東 京 大 学 出版 会,1978年)39頁,岡 文 化 社,1998年),大. 田英 夫 編 『ア メ リ カ憲 法 の. 本 篤 尚 『国家 秘 密 と情 報 公 開』(法 律. 林 啓 吾 『ア メ リカ憲 法 と執 行 特 権 』(成 文 堂,2008年)。. 7)正. 確 には イ ン グ ラ ン ド及 び ウエ ー ル ズ の 法 制 で あ る。 以 下 も同 様 で あ る。. 8)そ. の 一 端 を 示 す 邦 訳 文 献 と して,JohnMcEldowney(梅. 川 正 美 ・倉 持 孝 司訳)「 イ ギ リスの 非 常. 事 態 対 処 権 限 にお け る人 権 と法 の 支 配 」 梅 川 正 美 編 「比 較 安 全 保 障 」(成 文 堂,2013年)93頁 一72一. 。.
(5) 1背. 法科大学院論集. 第10号. ロ リズ ム 対 策 立 法 が 数 多 く制 定 さ れ,人. 権 と. 景 と 問 題 の 所 在9). (1)各. 種 の テ ロ対 策 立 法. イ ギ リ ス で は,こ. の 十 数 年,テ. の 相 克 が 問 題 と な っ て い る 。 か つ て,テ. ロ リズ ム 対 策 立 法 と して は,北. ラ ン ド関 連 の テ ロ に 対 す る 臨 時 法 し か 存 在 し て い な か っ た が,そ リズ ム に,従. イ ス ラ ム 過 激 派 に よ る 国 際 テ ロ リズ ム も 含 む 来 の テ ロ 対 策 法 を 統 合 す る か た ち で2000年. Act2000)が と し て,次. 制 定 さ れ た10)。 しか し,そ. アイ ル. れ以外のテ ロ. に も対 処 す るた め. テ ロ リ ズ ム 法(Terrorism. の す ぐ後 に 発 生 した9.11の. テ ロ を契 機. 々 と こ の 領 域 で 法 律 が 制 定 さ れ た 。 こ れ を 列 挙 す れ ば,2001年. 反 テ. ロ リ ズ ム ・犯 罪 ・安 全 法(Anti-terrorism,CrimeandSecurityAct2001), 2005年 テ ロ リ ズ ム 防 止 法(PreventionofTerrorismAct2005),2006年 ズ ム 法(TerrorismAct2006),2008年 Act2008),2010年 2010),2011年. 反 テ ロ リ ズ ム 法(Counter-Terrorism. テ ロ リス ト資 産 凍 結 法(TerroristAsset-Freezingetc.Act テ ロ リ ズ ム 防 止 及 び 調 査 措 置 法(TerrorismPreventionand. InvestigationMeasuresAct2011)と そ の 結 果,現. 9)本. 在 で は,各. 節 の 内 容 は,拙. な る。. 種 の人 権 が 制 限 され る こ と と な っ て い る。 表 現 の 自. 稿 「テ ロ対 策 立 法 と公 正 な 裁 判 を 受 け る権 利. 特 別 弁 護 人 付 き非 開 示 証 拠 手. 続 制度 の 適 法 性」 榊 原正 訓 編 『行 政 法 シス テ ム の 構 造転 換 』(日 本 評 論 社,近 立法 及 び 諸判 例 並 び に参 考 文 献 の 詳 細 は,こ 10)2000年. 法 は,時 限 立 法 で あ った,1989年. 〔EmergencyProvisions〕Act1996)を 体 で あ る と して 列 挙 す る と と もに(附. 刊)所. 収 と重 複 す る。. ち らを 参 照 さ れ た い。. テ ロ リズ ム防 止(臨 時 規 定)法(PreventionofTerrorism. 〔TemporaryProvisions〕Act1989)と1996年. (3条),テ. テ ロリ. 北 ア イル ラ ン ド(臨 時 規 定)法(NorthernIreland 統 合 して 恒 久 化 した もの で あ る。14の 団体 を テ1コリス ト団 則 第2),国. 務 大 臣 にテ ロ リス ト団体 を 指 定 す る権 限 を与 え. ロ リス ト団体 に 指定 さ れ た 団体 へ の所 属 や支 援 を処 罰 の 対象 と し,テ ロ リス ト資産 を定. 義 し,募 金 活 動 等 に よ る支 援 や テ ロ リス ト資 産 の マ ネ ー ロ ンダ リ ング を処 罰 す る と と もに,テ ス ト資 産 の押 収 や没 収 の権 限 を付 与 した。 ま た,警 察 権 限 と して,テ 48時 間 ま で の勾 留 を認 め る な ど の 内容 を含 む。. 一73一. ロリ. ロ リス ト容 疑 者 に令 状 な しで.
(6) 民 事 ・行 政 訴 訟 に お け る機 密 情 報 の 取 扱 いを め ぐ るイ ギ リス法 の 展 開. 由 の 関 係 で は,テ. ロ 行 為 の 遂 行(commitment),準. 備,せ. を 直 接 又 は 間 接 に 奨 励 そ の 他 誘 引 す る 主 張 の 公 表 や,テ 接 に 助 長 す る 刊 行 物 の 頒 布 が 犯 罪 と さ れ る(2006年 ロ リ ズ ム 行 為 の 実 行 や 準 備 に 有 益 な,軍. 隊,諜. る 情 報 の 収 集 行 為 を 犯 罪 と し た こ と で,プ. 指 定 が 制 度 化 さ れ,指. ロ リズ ムを 直 接 又 は間. 法1条,2条)。. ま た,テ. 報 機 関 及 び警 察 の構 成 員 に関 す. レ ス 等 に よ る こ れ らの 者 の 写 真 撮 影. 等 が 妨 げ られ る お そ れ も 懸 念 さ れ て い る(2008年 の 挿 入)。 結 社 の 自 由 の 関 係 で も,法. ん 動(illstigation). 法76条. に よ る2000年. 法58A条. 律 又 は 内 務 大 臣 に よ る テ ロ リ ス ト団 体 の. 定 テ ロ リ ス ト団 体 へ の 所 属 や 支 援 も 犯 罪 と さ れ て い る. (2000年 法3条,12条,13条)。 財 産 権 と の 関 係 で は,テ. ロ 目 的 で の 募 金 活 動 や 財 産 の 所 持,テ. 銭 等 の 使 用 を 可 能 に す る た め の 経 済 活 動 や,テ ン グ 等 が 犯 罪 と さ れ て い る(2000年. 法15条. ロ 目的 で の 金. ロ リ ス ト資 産 の マ ネ ー ロ ン ダ リ. ∼18条)。. ま た,テ. ロ リズ ム 活 動 に 関. 与 した な ど の 要 件 を 充 た して 財 務 省 が 指 定 し た 者 及 び2001年12月27日EC規 に よ り指 定 さ れ た 者 を 「指 定 人 物 」 と し,こ る こ と と さ れ て い る(2010年. 法1条,2条,11条)。. の 者 の 資 金,資. 則. 産 の取 引 を 禁止 す. 財 務 省 に は,特. 定 の者 や. 国 家 が テ ロ 目 的 の 資 金 調 達 や マ ネ ー ロ ン ダ リ ン グ 等 を し て い な い か の 監 視,報 告,取. 引 停 止 等 を 金 融 機 関 に 命 令 す る 権 限 も与 え ら れ て い る(2008年. 人 身 の 自 由 と の 関 係 で も,テ 長7日. 間 だ っ た の が,2003年. て 最 長14日 間,さ. ら に2006年. ロ リ ス ト被 疑 者 の 勾 留 期 間 が,2000年. 刑 事 訴 訟 法(CriminalJusticeAct2003)に 法 で 最 長28日. 法62条)。 法 で は最 よ っ. 間 に延 長 され て い る こ とが注 目 され. る。 ま た,テ. ロ リス ト容 疑 者 の う ち,証. 者 に つ い て も,2001年. 法 は 国外 退 去 させ られ な い外 国人 容 疑 者 の無 期 限拘 束 を. 認 め る定 め を 置 い て い た が,こ と し て,人. 拠 が不 十 分 等 で勾 留 す る こ とが で き な い. れ は,貴. 族 院 に よ り,欧. 州 人 権 条 約 に違 反 す る. 権 法 に 基 づ く不 適 合 宣 言 が 出 さ れ た11)。 こ れ を 踏 ま え 新 た に2005年. 11)AvSecretaryofStatefortheHomeDepartment[2004]UKHL56,〔2005コ2AC68.同. 一74一. 判 決.
(7) 法科大学院論集 法 で 導 入 さ れ た 「管 理 命 令(controlorder)」 他 者 の ア ク セ ス の 制 限,イ. は,居. 住 地 域 や居 住 地 に対 す る. ギ リ ス 国 内 に お け る 移 動 の 制 限,行. ケ ー シ ョ ン を 監 視 す る た め の 措 置 に 協 力 す る義 務,情. は,そ. に 違 反 し な い こ と を 前 提 と し た 命 令 で あ る が,個. 動 や コ ミュ ニ. 報 提 供 義 務 等,広. 由 や 権 利 の 制 限 を 含 み う る も の で あ っ た(1条4項)12)。 管 理 命 令(non-derogatingcontrolorder)」. 第10号. 範 な 自. 「適 用 除 外 を 要 し な い の 内 容 が 欧 州 人 権 条 約5条. 別 の 命 令 が 欧 州 人 権 条 約5条. 違 反 と な ら な い か は 問 題 と な る し13),制 度 自体 に も人 身 の 自 由 に 対 す る 強 度 の 制 限 と し て 強 い 批 判 が 向 け ら れ た 。2012年. 法 に よ っ て 「管 理 命 令 」 に 代 え て 導. 入 さ れ た 「テ ロ リ ズ ム 防 止 調 査 措 置(TerrorismPreventionandlnvestigationMeasures:TPIM)」. は,措. そ の 効 力 を1年,更. 新 も1回. の み に 限 る な ど,人. す る 努 力 は 見 受 け ら れ る が,そ る こ と の 義 務 づ け,特. 行 為 の 遂 行,準. に つ い て,参. 定 時 間 帯 に住 居 に居. 動 に 関 し警 察 官 の 指 示 に 従 う こ. お そ の 内容 は問 題 とな りう る。. 生 活 の 不 可 侵 な ど 様 々 な 人 権 に 対 す る 制 限 が み ら れ る。 テ ロ. 備,せ. 照,岩. 目 に 絞 り,. 権 制 限 の程 度 を緩 和 しよ う と. れ で も措 置 の 内 容 に は,特. 定 地 域 へ の 立 入 禁 止,移. と の 義 務 づ け 等 が 含 ま れ,な そ の 他 に も,私. 置 の 内 容 を 同 法 附 則 が 列 挙 し た10項. ん 動 に関 わ っ た者. 切大 地 「イ ギ リス 貴族 院 のA判. 6巻1号(2007年)169頁,江. テ ロ犯 罪 容 疑者 に限 られ な い. 決 に 関 す る一 考 察 」 東 北 学 園大 学 総 合政 策 論 集. 島晶 子 「テ ロ リズ ム と人 権 」 社 会 科 学 研 究59巻1号(2007年)35頁,. 48∼52頁 。 12)そ. の 他,特 定 の物 の所 有 や使 用 の 禁止 ・制 限,特 定 の サ ー ビス の利 用 の禁 止 ・制 限,職 業 に関 す. る 制 限,結. 社 や 情報 流 通 の制 限 も含 ま れ る。2005年 法 及 び管 理 命 令 につ い て,参 照,岡. 2005年 テ ロ リズ ム 防止 法 」 外 国 の立 法226号(2005年)44頁,田 ジ ュ リス ト1295号(2005年)146頁,岩 秀 介=小. 切 大 地 「イ ギ リス に お け る テ ロ対 策 立 法 と 司 法 審 査 」 大 沢. 山 剛編 『自由 と安 全 』(尚 学 社,2009年)309頁,江. 島晶 子 「国際 人 権 条 約 を 介 した議 会 と. 裁 判 所 の新 た な 関係 」 法 律 論 叢79巻4・5号(2007年)69頁 13)個 別 の管 理 命 令 が 欧州 人 権 条約5条 HomeDepartmentvJJ[2007]UKHL45が 午 前10時 ま で)の 外 出禁 止,訪 判 決 に つ い て,参. 照,江. 3号(2009年)61頁,69頁. 久 慶 「英 国. 中 嘉 彦 「2005年テ ロ リズ ム 防 止 法」. 。. に違 反 す る とさ れ た判 決 と して,SecretaryofStateforthe 知 られ る。 こ の命 令 は,最. 問者 入 室 の原 則 禁 止,通. 大18時 間(午 後4時. から. 信 機 器 所 持 の禁 止 等 を 内 容 と して いた 。 同. 島 晶子 「『安 全 と 自 由』 の議 論 に お け る裁 判 所 の役 割」 法 律 論 叢81巻2= 以 下,岩. 切 ・前 掲 注12)318頁 一75一. 。.
(8) 民 事 ・行 政訴 訟 に お け る 機 密 情 報 の 取 扱 い を め ぐ るイ ギ リス 法 の 展 開. を 探 す 目的 で の 家 屋 の 捜 索 等 が 治 安 判 事 の 許 可 を 条 件 と して 認 め られ(2000年 法42条),ま. た管 理 命 令 や テ ロ リズ ム防 止 調 査 措 置 に は監 視 措 置(具 体 的 に は電. 子 タ グの 装 着)も 含 ま れ るが,こ れ らは私 生 活 の不 可 侵 に対 す る制 限 で あ ろ う。 さ らに,上 級 の 警 察 官 に は,テ ロ行 為 を予 防 す る必 要 性 が あ る場 合 に,28日 間 但 し更 新 は可 能. 一 定 地 域 を 定 め,制 服 を 着 用 した 警 察 官 に,乗 用 車 や. 歩 行 者 を 強 制 的 に停 止 ・捜 検(stopandsearch)す られ た が(2000年 条 約8条(私. 法44条),市. る許 可 を発 す る権 限 が 認 め. 民 生 活 に与 え た 影 響 は大 き く,こ れ は 欧州 人 権. 生 活 の 自 由)と の関 係 で も問 題 と され た 。. (2)基 本 的 な 問 題 の 所 在. 行 政 訴 訟 にお け る公 正 な 裁 判 を 受 け る権 利 との. 関係 これ らの法 律 は,テ ロ対 策 と して,テ. ロ行 為(や. そ の関 係 行 為)を 犯 罪 と し. た り,各 種 の警 察 権 限 を付 与 した りす る刑 事 法 の 側 面 を もつ 一 方,国 外 退 去, 身 体 拘 束,資 産 凍 結 等 の命 令 を授 権 す る公 法 の要 素 も含 む もの で あ る。 これ ら の命 令 の際 に は,そ の前 提 と して,テ. ロ リス トで あ る こ との認 定 を行 うこ とが. 必 要 とな る。 しか し,そ の認 定 の根 拠 とな る証 拠 の 中 に は,諜 報 機 関 等 に よ っ て収 集 され た もの もあ る た め,こ れ らの証 拠 は,政 府 の立 場 か らは,認 定 を正 当化 す る た め に重 要 で あ って も,機 密 保 持 を理 由 と して相 手 方 に開 示 す る こ と がで き な い とい うこ とに な る。 そ こで,こ れ らの 命 令 に対 す る上 訴(Appeal)14)や. 裁 判 所 に よ る許 可 の手 続. の 中 で導 入 さ れ た のが,「 非 開示 証 拠 手 続(ClosedMaterialProcedure)」. であ. る。 これ は,開 示 す れ ば公 益 を害 す る お それ が あ る証 拠 を審 理 の た め審 判 所 や 裁 判 所 に提 出す る た め の手 続 で あ る。 この手 続 に お い て,相 手 方 当事 者 は 当該. 14)イ. ギ リス法 に お け る`Appeal'と. い う語 は,日 本 で い え ば,不 服 申立 て と訴 訟 を 両 方 含 む が,本. 稿 で は,イ ギ リス にお け る用 法 に従 い,両 者 を 包 含 す る も の と して 「上 訴 」 と い う語 を 用 い る。 一76一.
(9) 法科大学院論集 証 拠 を 見 る こ と も 当 該 審 理 に 出 席 す る こ と も 認 め られ な い 公 開になる. 代 わ り に,政. 当 然,審. 府 は 特 別 弁 護 人(SpecialAdvocate)に. 第10号 理 は非. 証拠 を開. 示 す る と い う 制 度 で あ る 。 特 別 弁 護 人 と は,非. 開 示 と され る証 拠 の 審 理 に関 し. て,相. 別 に 選 任 され る弁 護 士 で あ る。. 手 方 当 事 者 の 利 益 を 代 表 す る た め に,特. 特 別 弁 護 人 は,あ. らか じあ 政 府 が 作 成 した 弁 護 士 の 候 補 者 リス トの 中 か ら事 件. ご と に 大 臣 に よ っ て 選 任 さ れ る が,実. 際 に は,相. 任 が な さ れ る よ う で あ る 。 特 別 弁 護 人 は,相 さ れ な い 証 拠 を 見 る こ と が で き,そ. 手 方 当事 者 の 希望 に 従 った 選. 手 方 当事 者及 び そ の代 理 人 に 開示. の 証 拠 の 審理 に つ い て相 手 方 当事 者 の利 益. を 代 表 した 主 張 等 を 行 う。 証拠 開 示 前 で あ れ ば相 手 方 当事 者 と接触 して 指示 を 受 け る こ と が で き,証. 拠 開 示 後 も 相 手 方 当 事 者 か ら書 面 に よ る 指 示 を 受 け る こ. と は 認 め ら れ る が,証. 拠 開 示 後 に 相 手 方 当 事 者 と直 接 に 接 触 す る こ と は,裁. 判. 所 の 許 可 が な い 限 り認 め ら れ な い 。 非 開 示 証 拠 手 続 は,出. 入 国 管 理 に 関 し て,1997年. 特 別 移 民不 服 審 判所 法. (SpecialImrnigrationAppealsCommissionAct1997)で 年 法 は,無. 導 入 さ れ た が,2001. 期 限 拘 束 の 対 象 と な る 国 際 テ ロ リ ス ト容 疑 者 の 認 定 に 対 して,特. 移 民 不 服 審 判 所 へ の 上 訴 を 定 め,こ 2000年 法 で も,テ. の 手 続 を 準 用 し た(2001年. ロ リ ス ト団 体 の 指 定 に 対 し て は,団. (ProscribedOrganisationsAppealCommission)に. そ の 後,非. 律 問 題 に つ い て の み,控. 法 附 則 第3。. ま た,. 体 指 定 不 服 審 判 所. 上 訴 で き る が,そ. 手 続 は 非 開 示 証 拠 手 続 に よ る と さ れ た(2000年 し て は,法. 法25条)。. 別. こで の. 審 判 所 の 裁 決 に対. 訴 院 等 へ の 上 訴 が 認 め ら れ る)。. 開 示 証 拠 手 続 は,2001年. 法 の 無 期 限 拘 束 の 制 度 に 代 わ っ て2005年. テ ロ リ ズ ム 防 止 法 が 導 入 し た 管 理 命 令 に 対 す る 許 可 ・上 訴 手 続 で も 採 用 さ れ (2005年 法 附 則4条3項d号),2011年. 法 の テ ロ リズ ム 防 止 調 査 措 置 に対 す る許. 可 ・上 訴 手 続 で も 引 き 継 が れ て い る(2011法 た,テ. 附 則 第4の2条2項,4条)。. ロ リ ス トの 資 産 凍 結 命 令 等 に 対 す る上 訴 手 続 に 関 し て も,こ. め られ て い る(2008年. 法68条,2010年. 法28条4項)。 一77一. ま の手 続 が定. この他 に労 働 関係 の事 案 等.
(10) 民 事 ・行 政 訴 訟 に お け る機 密 情 報 の 取 扱 いを め ぐ るイ ギ リス法 の 展 開. で も用 い ら れ て い る15)。. しか し,こ の非 開示 証 拠 手 続 は,当 然. 裁 判 に お け る手 続 的 な権 利 と の関 係. で重 大 な 問題 を孕 む。 命 令 等 の適 法 性 を争 う相 手 方 か ら見 れ ば,政 府 側 の提 出 す る証 拠 につ い て直 接 に審 問 をす る こ とが で き な い か らで あ る。 こ の手 続 は, 国 内 の マ ス コ ミか ら,「 秘 密 裁 判(SecretJustice)」. の 名 の も と,厳. れ た。 法 的 に見 て も,人 権 法 が編 入 した 欧州 人 権 条 約6条(公 る 権 利)16)に. (3)判. し く批 判 さ. 正 な裁 判 を受 け. 違 反 して い るの で は な い か との疑 義 が浮 上 す る こ とに な った。. 例 の動 き. しか し,非 開示 証 拠 手 続 が 欧州 人 権 条 約6条 導 入 さ れ る 以 前 か ら,欧. に適 合 す る こ とは,こ の制 度 が. 州 人 権 裁 判 所 に よ っ て 示 唆 さ れ て い た 。Chahalv. UnitedKingdom23EHRR413(1996)17)は,本. 国 に 強 制 送 還 さ れ る と非 人 道. 的取 扱 い を受 け る お そ れ が あ る政 治 犯 に対 して退 去 強 制 処 分 を行 うこ とが 欧州 人 権 条 約3条. 15)ア. に違 反 す る とさ れ た判 決 と して知 られ る が,こ れ と合 わせ て,当. イル ラ ン ドで は,NorthernIreland(Sentences)Act1998が,受. して こ の手 続 を 採 用 して い る。 な お,現. 刑 者 の早 期 出 所 と再 収 監 に 関. 在 は13の 手 続 で この 手 続 が 採 用 さ れ て い る。See,Current. ClosedMaterialProcθdures(http://consul七ation.cabinetoffice.gov.uk/justiceandsecurity/wpcontent/uploads/2012/10/Current-CMP-Contexts-PDF.pdfで 16)欧 州 人 権 条 約6条. は,次. 入 手 が 可 能 で あ る)。. の とお り。 「民 事 上 の 権 利 及 び 義 務 又 は 刑 事 制 裁(criminalcharge)を. 決 定 す る際 に は,何 人 も,適 時 に,法. に基 づ き設 置 さ れ た独 立 かつ 不 偏 の審 判 所 に よ る公 正 か つ 公. 開 の審 理 に対 す る権 利 を保 障 さ れ る。 判 決 は公 開 で行 わ れ な け れ ば な らな い が,民 主 的 な社 会 に お け る道 徳,公 た め,又. 共 の秩 序 又 は 国家 安 全 保 障 の利 益 に な る場 合,子. る 限度 で,プ. レス及 び公 衆 は,審 理 の全 部 又 は一 部 か ら排 除 す る こ と が で き る」。. 17)本 件 は,内 務 大 臣 が,原 告 あ り,イ. ど も の利 益 若 し くは私 生 活 の保 護 の. は公 開 が裁 判 の利 益 を害 す る特 別 な状 況 下 に お い て裁 判 所 の意 見 に お い て厳 格 に必 要 で あ. 正 統 シ ー ク主 義 に共 鳴 し,イ ギ リス の シ ー ク社 会 の 中心 的人 物 で. ン ド首 相 の 暗殺 の謀 議,穏. 罪 で,三 度,逮. 健 シ ー ク教 徒 の殺 害 の謀 議,騒. 擾 事 件 に お け る傷 害 罪 及 び乱 闘. 捕 ・起 訴 を さ れ た が,い ず れ も,不 起 訴 ・無 罪 と な っ て い た と い う人 物 で あ る. 及 び そ の家 族(こ. れ ら も本 事 件 の共 同原 告 で あ る)に 対 し,退 去 強 制 を決 定 し,原 告 を拘 禁 した こ. と に対 し,原 告 は,イ. ン ド送 還 後 に迫 害 を理 由 に政 治 的庇 護 を 申請 した が,こ. れ を 内務 大 臣 が拒 否. した とい う事 案 で あ る。 こ の事 件 に つ いて は,村 上 正 直 「ノ ン ・ル フ ォー ル マ ン原 則 と退 去 強 制 」 戸 波 江 二 他 編 『ヨ ー ロ ッパ 人 権 裁 判 所 の判 例 』(信 山社,2008年)129頁 一78一. を参 照 。.
(11) 法科大学院論集 時,退. 第10号. 去 強 制 処 分 に 対 す る 不 服 申 立 て で 用 い ら れ て い た 「諮 問 委 員 会(advi-. sorypanel)」. に よ る手 続 き が 欧 州 人 権 条 約5条4項18)に. い た 。 しか し,そ. の 理 由 と して は,そ. て い な い こ と や,諮. 違 反 す る と も 判 断 して. も そ も相 手 方 当 事 者 が 手 続 中で 代 表 され. 問 委 員 会 の 諮 問 に大 臣 に対 す る法 的 拘 束 力 が な い こ と等 を. 挙 げ る に と ど ま る(para.130)。. 欧 州 人 権 裁 判 所 は,む. し ろ,「 国 家 安 全 保 障 が. 問 題 と な る 場 合 に は 秘 密 資 料 の 使 用 は 不 可 避 で あ る こ と」 を 認 め た 上 で,安 保 障 上 の 懸 念 に 対 応 す る と と も に,相. 手 方 当 事 者 に 「実 質 的 に 手 続 的 正 義 を 充. た す 措 置(substantialmeasureofproceduraljustice)」 る は ず で あ る と し て,カ こ こ で は,非. を と る方 法 が 存 在 す. ナ ダ の 非 開 示 証 拠 手 続 を 引 き 合 い に 出 す(para.131)。. 開 示 証 拠 手 続 の 導 入 が,国. 家 安 全 保 障 に 関 す る機 密 保 護 と公 正 な. 裁 判 を 受 け る権 利 と の 両 立 を 図 る適 切 な 手 段 と し て,肯 の で あ っ た 。1997年. 全. 定 的 に参 照 され て い た. 特 別 移 民 上 訴 委 員 会 法 に よ る 非 開 示 証 拠 手 続 き の 導 入 は,. こ の 判 決 を 受 け た も の で あ る。 実 際 に 導 入 さ れ た 非 開 示 証 拠 手 続 の 欧 州 人 権 条 約6条. 適 合 性 が貴 族 院 で初 め. て 審 査 さ れ た の は,SecretaryofStatefortheHomeDepartmentvMB[2007] UKHL46,[2008]1AC440で. あ る。 事 案 は,2005年. 法 に 基 づ く,適. 用 除外 を. 要 し な い 管 理 命 令 の 適 法 性 が 争 わ れ た も の で あ っ た が,非. 開 示 証 拠 手 続 の欧 州. 人 権 条 約6条. れ を肯 定 した。 こ の. う ち,3名. 適 合 性 に つ い て は,実 は,非. 質 的 に,4対1で,こ. 開 示 証 拠 手 続 に よ って は 公 正 な 審 理 が 確 保 で き な い 場 合 が 稀. に あ り う る と す る が,2005年. 法 の 不 適 合 宣 言 を 行 う の で は な く,「 裁 判 所 は,証. 拠 の 開 示 が 公 益 に反 す る と判 断 す る場 合 に は当 該 証 拠 を 非 開 示 とす る許 可 を 出 さ な け れ ば な らな い 」 と 定 め る2005年. 法4条3項d号. を. 「相 手 方 当 事 者 の 公 正. な 審 理 に 対 す る 権 利 に 適 合 しな い 場 合 を 除 き 」 と 限 定 解 釈 した 上 で,事. 18)欧. 州 人 権 条 約5条4項. は,次. 案 ごと. の と お り。 「逮 捕 ま た は 拘 禁 に よ り 自 由 を奪 わ れ るす べ て 者 に は,. 拘 禁 の 合法 性 に つ い て 裁判 所 が迅 速 に 決定 を 行 い,拘 禁 が違 法 で あ る場 合 に は 釈放 を 命 じる手 続 を とる こ とが認 め られ る もの とす る」。. 一79一.
(12) 民 事 ・行 政訴 訟 に お け る 機 密情 報 の取 扱 い を め ぐる イ ギ リス法 の展 開. に判 断 す るべ き だ とい う限 定 解 釈 の ア プ ロー チ を と った(para.68-72,87,92)。 も っ と も,本 件 の具 体 的 判 断 は 行 わ ず に差 し戻 した こ と もあ り,具 体 的 に どの よ うな 場 合 に非 開 示 証 拠 手 続 に よ る こ とが 許 さ れ な い の か は不 明確 で あ った。 ま た,こ の 貴 族 院 判 決 で 同時 に取 り扱 わ れ たAF事. 件. 同 じ く2005年 法 に基. づ く,14時 間 の外 出禁 止 等 を 内 容 とす る管 理 命 令 の適 法 性 が争 わ れ た事 案 で あ る. で は,下 級 審 で,管 理 命 令 の根 拠 とな る本 質 的 な証 拠 は秘 密 証 拠 に含 ま. れ る と認 定 す る一 方,人 権 条 約6条. との適 合 性 に 関 して は 「実 質 的 かつ 充 分 に. 手 続 的保 護 を充 たす 措 置 」 が執 られ て い た と認 定 さ れ て い た とこ ろ,こ の判 断 を否 定 す る言 辞 が3名 の意 見 に は見 られ な い こ とか ら,実 際 に非 開示 証 拠 手 続 が許 容 さ れ な い場 合 は極 め て 限定 さ れ る こ と が予 想 され た。 非 開 示 証 拠 手 続 の 欧州 人 権 条 約6条 適 合 性 につ い て,貴 族 院 は,相 当緩 やか に これ を認 めて い た とい え よ う。 しか し,欧 州 人 権 裁 判 所 は,AandOthersvUK(2009)ECHR301で,よ り厳 格 な判 断 枠 組 み を示 し,個 別 具 体 的 な 事 情 に よ って 非 開 示 証 拠 手 続 が 欧 州 人 権 条 約 に違 反 す る こ と を認 め た。 事 案 は,2001年. 反 テ ロ リズ ム ・犯 罪 ・安 全. 法 に基 づ く 「国 際 テ ロ リス ト容 疑 者 」 との 認 定 を 非 開 示 証 拠 手 続 で 行 った こ と が 欧 州 人 権 条 約5条4項. に違 反 しな いか が 争 点 とな った もの で あ る。 欧州 人 権. 裁 判 所 は,一 部 の 原 告 との 関 係 で,欧 州 人 権 条 約5条4項. 違 反 を認 め る と と も. に,次 の よ うな 判 断 枠 組 み を 示 した こ とが 重 要 で あ った。. 特 別 弁 護 人 が 十 分 に 機 能 を 果 た す た め に,「 被 拘 禁 者(detainee)に 別 弁 護 人 に 実 効 的 な 指 示 を 与 え る こ と が 可 能 と な る よ う に,不 (allegations)に り,そ. 利な主 張. 関 す る十 分 な 情 報 が提 供 され な け れ ば な らな い」 の で あ. の 判 断 は 個 別 に行 わ な け れ ば な ら な い も の の,①. 示 さ れ,開. は,特. 示 さ れ た 資 料(openedmaterial)が. を 果 た し て い る場 合 に は,当. 証 拠 の大 部 分 が 開. 決 定 に お い て支 配 的 な役 割. 事 者 に は 実 効 的 に 反 駁 す る機 会 が 否 定 さ れ た 一80一.
(13) 法科大学院論集. 第10号. とは い えず,② す べ て の,あ る い は ほ とん ど の証 拠 が 非 開 示 に止 ま る と し て も,開 示 され た資 料 に含 まれ る主 張 が 十 分 に特 定 され て い るな らば,当 事 者 は,そ の主 張 を根 拠 づ け る証 拠 の 詳 細 を 知 らな くて も,反 駁 す るた め の 情 報 を 代 理 人 や 特 別 弁 護 人 に提 供 す る こ とが 可 能 で あ る と いえ るが,③ 「開示 され た 資 料 が も っぱ ら一 般 的 な 主 張 に止 ま り,特 別 移 民 不 服 審 判 所 に よ る,大 臣 の 認 定(certification)を. 支 持 し勾 留 を 保 持 す る決定 が,も っ. ぱ ら又 は決 定 的 に,非 開 示 資 料 に 依 拠 して い た場 合 に は,人 権 条 約5条4 項 の 手 続 的 要請 は 充 た され て い る とは い え な い」(para.220)。. こ こで 求 め られ て い る手 続 的 要請 は,自 由剥 奪 の強 度 に鑑 み て,欧 州 人 権 条 約 6条1項. の 刑 事 手 続 に お け る公 正 な 審 理 の保 障 と 同 等 の もの で あ る と され る. (para.217)。 そ れ ゆ え,非 開 示 証 拠 手 続 の 許 容 性 を具 体 的 に限 界 づ け る③ の部 分 は,6条. の公 正 な裁 判 を受 け る権 利 との 関係 で も影 響 を及 ぼす こ と に な る。. この 判 決 を受 け て,そ の 直 後 に 出 さ れ たSecretaryofStatefortheHome DepartmentvAF[2009]UKHL28,[2010]2AC269で,貴. 族 院 はA判 決 の. 判 断 枠 組 み を そ の ま ま取 り入 れ,判 例 変 更 を 行 っ た。 この 事 件 は,MB事 併 合 審 理 され,差. し戻 され て い たAF事. 件と. 件 の再 上 告 審 で あ る が,控 訴 院 判 決 で. は非 開 示 証 拠 手 続 は不 公 正 で な い との 判 決 が な され て いた と こ ろ,貴 族 院判 決 は,「少 な くと も,当 事 者 が,管 理 命 令 に よ って 通 常 課 せ られ る程度 の 深 刻 な 帰 結 を 齎 す リス ク に さ ら され る場 合 に は,[当 該 個 人 に対 す る根 拠 資 料 の]非 開示 は,当 事 者 に,そ の者 に不 利 な主 張 の核 心 に つ い て知 る こ とを否 定 す るほ どで あ って は な らな い」 と述 べ て(para.65),三 を 命 じた(para.69)。. こ こで,貴 族 院 は,A判. 度,審 理 を尽 くさせ る た め差 戻 し 決 に お け る欧 州 人 権 裁 判 所 の判. 断枠 組 み を そ の ま ま取 り入 れ,審 理 の公 正 性 の判 断 基 準 と して,相 手 方 当事 者 が 自己 に不 利 益 な主 張 に対 して実 効 的 に反 駁 で き た か,と い う こ とを掲 げ,相 手 方 当事 者 が特 別 弁 護 人 に実 効 的 に指 示 を与 え る こ とで 自 己 に不 利 益 な主 張 に 一81一.
(14) 民 事 ・行 政 訴 訟 に お け る機 密 情 報 の 取 扱 いを め ぐ るイ ギ リス 法 の 展 開. 対 す る実 効 的 な反 駁 が 可 能 と な る だ け の非 開 示 証 拠 の要 旨提 出(gisting)が. 欧. 州 人 権 条 約6条 か ら義 務 づ け られ る 旨 を導 い た。 も っ と も,こ の,開 示 され た資 料 が も っぱ ら一 般 的 な主 張 に止 ま る場 合 に は, 相 手 方 当 事 者 が 特 別 弁 護 人 に実 効 的 に指 示 を 与 え る こ とが 可 能 な 程 度 に非 開 示 証 拠 の 要 旨提 供 が 要請 され る とす る法 理 が 具 体 的 に どの よ うな 場 合 に妥 当 す る の か,AF事. 件 は,妥 当 す る場 合 の一 事 例 を示 した にす ぎず,そ の 射 程 が 問 題 と. な る。 この 点,TariqvHomeOffice[2011]UKSC35は,最 に設 置 され て 貴 族 院 か ら移 行 した. 高 裁2011年. が 要 旨提 出 は要 求 され な い との 判 断 を 示. した判 決 と して 知 られ る。 事 案 は,入 国 管 理 官 だ っ た原 告 が,兄 弟 及 び従 兄 弟 が テ ロ リズ ム 容 疑 者 と さ れ た た め,テ. ロ リス トか ら影 響 を 受 け そ の 地 位 を. 利 用 さ れ る恐 れ が あ る と して,職 務 を 停 止 さ れ,ま た そ の機 密 情 報 取 扱 適 格 (securityclearance)が. 取 り消 され た こ とが 人 種 ・宗 教 に基 づ く差 別 に 当 た り,. 1976年 人 種 関係 法(RaceRelationsAct1976)及. び2003年 雇 用 平 等(宗 教 又 は. 信 仰)規 則(EmploymentEquality(ReligionorBelief)Regulations2003) に違 反 しな い か が争 わ れ た事 案 で あ った。 こ こで は,問 題 とな って い る権 利 の 重 要 性 や訴 訟 の種 類 の違 い,そ う特 殊 事 情 を理 由 と して,AF事 とは い え,AF事. して 出入 国管 理 に携 わ る公 務 員 の勤 務 関係 とい 件 と区別 す る考 え方 が示 され て い る。. 件 判 決 以 後,国. が証 拠(又. は要 旨)の 開 示 か 管 理 命 令 の取. 消 しか を迫 られ る場 面 が増 え た こ とは確 か で あ る。 実 際 に,多. くの事 案 で 内務. 大 臣 に よ る管 理 命 令 の取 消 しが起 き た と指 摘 さ れ る19)。欧 州 人 権 裁 判 所 のA判 決 を受 け た貴 族 院 のAF判. 決 が 示 した,開 示 さ れ た資 料 が も っぱ ら一 般 的 な主. 張 に止 ま る場 合 に は,相 手 方 当事 者 が特 別 弁 護 人 に実 効 的 に指 示 を与 え る こ と が 可 能 な程 度 に非 開 示 証 拠 の要 旨提 供 が 要 請 され る とす る法 理 は,非 開 示 証 拠 手 続 の濫 用 に一 定 の歯 止 め をか け る こ とに成 功 した と評 価 し うる。 19)ColinTurpinandAdamTomkins,BritishGovernmentandtheConstitutional,7thed,,2011, p.768. 一82一.
(15) 法科大学 院論集. H.新. 非開示証拠手続の民事訴訟全般への拡大な ど. たな問題. (1)民 ①. 第10号. 事 訴 訟 に お け る 非 開 示 証 拠 手 続 の 使 用 可 能 性AlRawi事. 件. 民 事 訴 訟 に お け る 政 府 機 密 の 取 扱 い 一 公 益 免 除 特 権(PublicInterest Immunity:PII)と. し か し,非. 非開示証拠手続. 開 示 証 拠 手 続 と 公 正 な 裁 判 を 受 け る 権 利 と の 相 克 は,そ. た な 局 面 を 迎 え た 。 従 来,非. 開 示 証 拠 手 続 が 使 用 さ れ う る の は,法. ら れ た 特 定 の 上 訴 ・許 可 手 続 に 限 定 さ れ て い た と こ ろ,通. の 後,新 律 で定 め. 常 の民事訴訟 全般. に 拡 大 す る 動 き が 出 て き た の で あ る。 そ の 契 機 と な っ た の が,AlRawiand OthersvTheSecurityServiceandOthers[2011]UKSC34で の 事 件 に 入 る 前 に,従 り,非. あ っ た が,こ. 来 の 民 事 訴 訟 に お け る 政 府 機 密 の 取 扱 い に つ い て 振 り返. 開 示 証 拠 手 続 と の 違 い に つ い て 明 ら か に して お き た い 。. 従 来,通. 常 の 民 事 訴 訟 に お い て,デ. ィ ス カ バ リー で 政 府 の 文 書 開 示 が 求 あ ら. れ た も の の 政 府 が 該 文 書 の 機 密 性 を 理 由 と して 文 書 提 出 を 望 ま な い 場 合,政 は 公 益 免 除 特 権(PublicInterestImmunity:PII)を. 利 用 す る こ と と され て き. た20)。 公 益 免 除 特 権 と は,「 文 書 の 開 示 及 び[文 益 を 侵 害 す る こ と」 を 理 由 と し て,国. 書 の 存 否 に 関 す る]応. 王(Crown)に. こ こ で 問 題 は,い. か な る場 合 に 「公 益 を 侵 害 す る こ と」 が 認 め ら れ る か で あ の 認 定 は,開. 示 によ. ギ リス の デ ィ ス カバ リー制 度 につ い て は,参 照,長 谷 部 由起 子 「民事 訴 訟 に お け る情 報 の 収 集」. 成 践 法 学37号(1993年)145頁,166∼74頁 21)試. 国 王訴 訟 手 続法. が 明文 化 した もの で あ る。. る 。 こ の 点,ConwayvRimmer[1968]AC91021)で,こ. 20)イ. 答 が公. これ らの 拒 否 を 認 め る特. 権 で あ る 。 コ モ ン ・ ロ ー 上 認 め ら れ て き た 法 理 を,1947年 (CrownProceedingsAct1947)28条1項. 府. 。. 用 中の 巡 査 で あ った 原 告 は,懐 中 電 灯 の 紛 失 事 件 にお いて 窃 盗 容 疑 で 起 訴 され,こ. 由 に解 雇 され た が,結 で あ る。 被 告 は,試. 局,無. 罪 とな っ たた め,故 意 の 訴 追 を理 由 と して,警. 用 報 告 書(probationaryreports)と. 一83一. の こ とを 理. 視 を訴 え た と い う事 件. 事 件 報 告 書 に つ い て 特 権 を 主 張 した が,.
(16) 民 事 ・行 政 訴 訟 にお け る機 密 情 報 の 取 扱 いを め ぐ るイ ギ リ ス法 の 展 開. る公 開裁 判 とい う公 益 と非 開 示 に よ る公 益 との 比 較 衡 量 に よ り行 う こ と,そ の 判 断 を行 うの は裁 判 官 で あ る こ とが 確 立 した。 従 来,該 文 書 が 政 府 に よ る秘 密 文 書 の分 類 に含 まれ れ ば それ だ けで 非 開 示 とす る傾 向 が み られ た が,文 書 の 内 容 の 秘 密 性 に つ い て裁 判 所 が 実 質 的 に 判 断 す る こ と が 明 らか とな っ た の で あ る22)。も っ と も,「 公益 」 の具 体 的 内 容 は法 律 で定 義 さ れ て い な い。 そ れ ゆ え, 「公 益 の カ テ ゴ リー は 閉 じた もの で は な く,制 限 さ れ る方 向 で あれ 拡 張 され る 方 向で あれ,社 会 状 況 や 法 律 の 展 開 に応 じて,時 期 に よ り変 わ らな けれ ば な ら な い」 と 理 解 さ れ て い る(DvNSPCC[1978]2AllER589に Hailshamの. お け るLord. 判 示)。 裁 判 所 は,秘 密 性 を判 断 す る た め,該 文 書 を 提 示 させ る こ. と及 び相 手 方 当事 者 の 利 益 を 代 表 す る特 別 弁 護 人 の 任 命 を 行 う こ とが 可 能 だ と され て い る。 公 益 免 除 特 権 の 可 否 を 判 断 す る手 続 中 に も裁 判 所 に 対 す る文 書 の 提 出 と特 別 弁 護 人 の 任 命 が 存 在 して い る こ と とな る。 非 開 示 証 拠 手 続 と公 益 免 除 特 権 手 続 との 違 い は わ か りづ らい 。 しか し,両 者 に は,次 の 点 で 決 定 的 な 違 い が あ る。 公 益 免 除 特 権 手 続 の 場 合 に は,裁 判所 に よ り非 開 示 と認 め られ た 文 書 は,当 該 訴訟 にお け る証 拠 か ら排 除 され るの に 対 し,非 開 示 証 拠 手 続 にお い て は,非 開 示 と され た 文 書 も当該 訴 訟 に お い て証 拠 と して 用 い られ る点 で あ る。 前 者 で は,機 密 文 書 の 裁 判所 の み に よ る 弁 護 人 は関 わ るが 相 手 方 当 事 者 は 関 与 で き な い. 特別. 閲読 が,証 拠 の採 否 の み に. 関 わ るの に対 して,後 者 で は 訴 訟 そ の もの の 帰趨 に ま で 関 わ る。 非 開示 証 拠 手 続 で は裁 判 の 公 正 を 損 な うお そ れ が 格 段 に 高 ま るの で あ る。 ま た,上 で み た よ う に,公 益 免 除 特 権 手 続 に お い て は,非 開示 の判 断 は裁 判 所 が対 抗 利 益 を比 較 衡 量 す るか た ちで 行 うの に対 して,非 開示 証 拠 手 続 に お け る判 断 は 「開示 す れ ば 公 益 を 害 す るか」 とい う点 の み に 着 目 して行 わ れ る た め,非 開示 に傾 き やす. 裁 判 所 は こ れ を 認 め な か っ た 。 同 事 件 に つ い て,参. 照,伊. 藤. 22)See,A.W.BradleyandK.D.Ewing,ConstitutionalandAdministrativeLaw,15thed.,2011, p.756.. 一84一. ・前 掲 注6)319頁. 以 下。.
(17) 法 科大学院論集. 第10号. く,こ の 点 で も,後 者 に は問 題 が あ る こ とが 指 摘 され る。 と もあれ,従 来 の 民 事 訴 訟 にお いて,政 府 の 秘 密 文 書 の 取 扱 い は,公 益 免 除 特 権 を 認 め る か 否 か の 判 断 を通 じて,裁 判 所 に よ って 決 定 され て き た の で あ る。 しか し,文 書 開 示 を 求 め られ た 政 府 文 書 の 量 が 膨 大 で,公 益 免 除 特権 の 可 否 の 判 断 だ けで 数 年 を 要 し,か つ,問 題 とな る政 府 文 書 の 中 に 政府 側 の主 張 を 裏 付 け る可 能 性 が あ る もの も含 まれ て い るた め,政 府 側 が非 開 示 証拠 手 続 に よ る こ とを 求 め る事 案 が 登 場 した 。AIRawi事. ②. 件 で あ る。. 事案の概要. こ の 事 件 は,原. 告6名23)が,安. 全 保 障 庁(SecurityService),秘. 密 情報庁. (SecretIntelligenceService),法. 務 長 官,外. 被 告 と して,こ. メ リカ 政 府 に よ る 彼 ら の 収 監 と 非 人 道 的 な 取. れ ら の 組 織 が,ア. 扱 い に 共 謀 した と して,不 告 側 は,責. 務 ・コ モ ン ウ エ ル ス 省,内. 務 省を. 法 行 為 に 基 づ く損 害 賠 償 を 請 求 し た も の で あ る。 被. 任 を 否 定 した 上 で,そ. の 主 張 を 根 拠 づ け る証 拠 の 中 に 開 示 さ れ る と. 公 益 を 害 す る も の が 含 ま れ て い る と し て 非 開 示 証 拠 手 続 を 求 め た24)の に 対 し (通 常 の 民 事 事 件 で,非. 開 示 証 拠 手 続 と特 別 弁 護 人 の 利 用 が 問 題 と な っ た の は. 本 件 が 初 め て で あ る と い わ れ る),原 と 主 張 した 。 そ こ で,本. 告 側 は,通 常 の 公 益 免 除 特 権 に よ る べ き だ. 案 の 前 提 問 題 と し て,裁. 判 所 が,特. に非 開示 証 拠 手 続. の 利 用 を 認 め る 法 律 の 定 め が な い 通 常 の 民 事 訴 訟 の 中 で,コ. モ ン ・ロー に基 づ. き 非 開 示 証 拠 手 続 を 執 る 権 限 を 有 す る か 否 か が 争 点 と な っ た 。 第 一 審(Al RawiandOthersvSecurityServiceandOthers[2009]EWHC2959)は,. 23)こ. こ に は,後. 述 す るBinyamMohamedvSecretaryofStateforForeignandCommonwealth. Affairs[2010]EWCACiv65の 24)政. 府 の 主 張 に よ る と,文. 原 告 で あ るBinyamMohamed氏 書 の 数 は25万. 公 益 免 除 特 権 の 判 断 手 続 に よ れ ば,こ い て3年. 件,そ. の う ち14万. も含 ま れ る。 件 が 安 全 保 障 に 関 係 す る た め,通. の 文 書 開 示 の 採 否 を 決 め る た め だ け に,60人. の 歳 月 を 要 す る も の で あ っ た 。AIRawiandOthersvTheSecurityServiceandOthers. [2011]UKSC34,para.79.. 一85一. 常 の. の 法 律 家 を 用.
(18) 民 事 ・行 政 訴 訟 に お け る機 密 情 報 の取 扱 い を め ぐる イ ギ リス法 の展 開. こ れ を 肯 定 し た が,原. 告 側 の 上 訴 に 対 し て,控. 訴 院(AlRawiandOthersv. SecurityServiceandOthers[2010]EWCACiv482)は,裁. 判 所 が 取 り調 べ. る す べ て の主 張 や証 拠 を両 当事 者 が審 問す る こ とが公 正 な審 理 に と って根 本 的 に 重 要 な 要 請 で あ る こ と を 強 調 し,損 て,裁. 判 所 は,こ. の 原 則 に 反 す る 非 開 示 証 拠 手 続 を 執 る 権 限 を コ モ ン ・ロ ー 上. 議 会 の授 権 が な け れ ば. ③. 判. 有 し な い と し た た め,被. 告 側 が上 訴 した。. 決. 2011年7月13日 と こ ろ,そ. に 出 さ れ た 最 高 裁 の 判 決 は,9人. の 中 に は 要 領 を 得 な い 意 見 も見 られ,正. で あ る 。 しか し,大. き く言 え ば,裁. と す るLordDysonの し,結. 害 賠 償 を請 求 す る通 常 の民 事 裁 判 に お い. 意 見 と,そ. の裁 判 官 に よ る もの で あ る 確 な整 理 を行 う こ と は 困難. 判 所 限 りで 非 開 示 証 拠 手 続 を 導 入 で き な い れ を 可 能 と す るLordClarkeの. 意 見 が対立. 論 的 な 同調 も含 めて 前 者 の意 見 が 多 数 を 占 め た と い う こ とが で き る。. LordDysonは,裁 判 と い う,公. 判 所 は,訴 訟 手 続 を 規 律 す る 権 限 を,自 然 的 正 義 と 公 開 裁. 正 な 審 理 に 対 す る コ モ ン ・ロ ー 上 の 二 つ の 重 要 な 原 則 を 尊 重 す る. か た ち で 行 使 し な け れ ば な ら な い 点 か ら 議 論 を 始 め る(para.22)。 vDavis[2008]UKHL36,[2008]AC112825)に. そ して,R. 照 らせ ば,公. 正 な 審理 に対 す. る コ モ ン ・ロ ー 上 の 権 利 の 本 質 的 な 要 素 を 破 棄 す る こ と は,裁. 判 所 に固 有 の 権. 限 の 行 使 に よ っ て は で き ず,議. 会 の み が な し う る事 項 で あ る こ と を 明 ら か に す. る(para.31,35)。. 特 別 弁 護 人 制 度 も,非 開 示 証 拠 手 続 が 含 む 堰 疵 を あ る 程 度 は. 治 癒 し う る が,特. 別 弁 護 人 が非 開示 証 拠 に関 して 当事 者 か ら指 示 を 受 け る こ と. が で き な い た め,多 Hopeも,裁. 25)刑. く の 場 合 に は 意 味 を な さ な い と す る(para.36)。Lord. 判 の 公 開 や 公 正 とい った 諸 原 則 と国家 安 全 保 障 上 の 必 要 性 との衡. 事 事 件 の証 人 に,将 来 脅 迫 を受 け る か も しれ な い こ と を理 由 に,裁 判 所 が コ モ ン ・ロ ー上 の裁. 判 手 続 を 規 律 す る権 限 に基 づ い て,匿. 名 で の 証 言 を認 め る こ とが 可 能 か が 争 わ れ た事 件 で あ るが,. 貴 族 院 は こ れ を否 定 した。 一86一.
(19) 法科大学院論集. 第10号. 量 と い う 根 本 的 な 問 題 は,議. 会 が 行 う 民 主 政 過 程 で の 決 定 に 委 ね られ る も の で. あ る と して,LordDysonに. 同 調 す る(para.74)。LordPhillipsも,非. 続 の 導 入 は コ モ ン ・ロ ー の 根 本 的 な 変 更 で あ る の で,議 べ る(para. 開示手. 会 の み が な しう る と述. .192)。. ま た,LordKerrも,LordDysonに. 同 調 す る が,次. な 説 示 を 行 っ て い る の が 注 目 さ れ る。 い わ く,非. の よ う に,若. 干原理 的. 開示 証 拠 手 続 を認 め るべ き で. あ る と い う主 張 は,「 裁 判 官 の 前 に す べ て の 重 要 な 文 書 を 提 出 す る こ と が,潜 在 的 に は決 定 的 で あ る か も しれ な い証 拠 の提 出 を控 え な け れ ば な らな い こ とよ り も望 ま し い と い う前 提 に 立 っ て い る 」。 「しか し,こ … … 裁 判 官 は ,す. べ て を 見 て い る の で,公. 必 然 的 に 置 か れ る こ と に な る の だ,と. 正 な結 論 に到 達 す る よ り良 い地 位 に. い う 語 ら れ な い 前 提 に あ る 」。 「証 拠 は,. そ れ に 反 対 す る 側 か ら の 審 問(challenge)に 問 か ら遮 断 さ れ た 証 拠 は,積 主 張 を 知 る 権 利,そ. 極 的 に 誤 り を も た らす こ と が あ り う る 。 相 手 方 の. さ に そ れ ゆ え な の で あ る 」(para.93)。. こ れ に 対 し,LordClarkeは,政. 場 合 に は,あ. さ ら さ れ な け れ ば な ら な い 」。 「審. して そ れ を審 問す る機 会 を有 す る権 利 が公 正 な審 理 の観 念. の 中 心 を 占 め る の は,ま. さ れ な い た め,そ. の 議 論 の 中 心 的 な 誤 り は,. 府 側 が機 密 保 持 の 要 請 か ら証 拠 の 提 出 を許. の 主 張 を 完 全 に あ る い は 十 分 に 裏 付 け られ な い 本 件 の よ う な. る 種 の 非 開 示 手 続 が 要 請 さ れ,裁. 判 所 は非 開 示 手 続 を 許 す コモ. ン ・ロ ー 上 の 権 限 を 持 た な け れ ば な ら な い と す る主 張 は 説 得 的 で あ る と す る (para.156)。. 彼 に よ れ ば,こ. の よ う な 場 合 に 裁 判 官 が 執 り う る 手 段 に は,①. 益 免 除 特 権 に よ っ て 一 定 の 証 拠 を 排 除 し,残 こ と,②. 公. りの 証 拠 に基 づ い て 審 理 を 進 め る. 公 正 な 裁 判 は 不 可 能 だ と し て 訴 訟 を 停 止 ま た は 却 下 す る こ と,③. 特 別. 弁 護 人 付 き の 非 開 示 手 続 を な ん ら か の か た ち で 採 用 す る こ と の 三 つ が あ る が, こ の う ち ど れ に よ る か は 状 況 に よ る。 原 告 が 本 件 の よ う に 公 益 免 除 特 権 に 基 づ く審 理 を 望 む こ と も あ る が,主. 張 を 裏 付 け る証 拠 の 多 く が 被 告 の 手 元 に あ る場. 合 に は 非 開 示 手 続 を 望 む こ と も あ る だ ろ う。 こ の よ う な 場 合 に は,原 一87一. 告 は,訴.
(20) 民 事 ・行政 訴 訟 に お け る機 密 情 報 の取 扱 い を め ぐる イ ギ リス法 の展 開. え が 却 下 さ れ る代 わ り に な ん ら か の 非 開 示 手 続 に 同 意 を 与 え る こ と が 利 益 と な る と考 え る だ ろ う。 そ れ ゆ え,申 も,非. 開 示 手 続 が 適 切 で あ る場 合 の 存 在 が 導 か れ る,と. 159-161)。 上,基. 立 人 の主 張 に か か る 同意 が な い場 合 で あ って. こ の 点,LordClarkeは,LordDysonに. す る の で あ る(para.. 反 論 し て,コ. 本 的 な 原 則 に 対 す る 例 外 が 認 め ら れ て き た の で あ り,こ. 的 な も の で あ っ て も,原. 則 は 絶 対 で は な く,司. モ ン ・ロ ー. の こ と は,基. 本. 法 の 利 益(interestsofjustice). の た め に 必 要 で あ る 場 合 に は 譲 歩 し な け れ ば な ら な い こ と を 示 して い る の だ と し て26),公. 益 免 除 特 権 の 判 断 の 終 結 時 に,裁. の た め に 必 要 で あ る と 判 断 す れ ば,こ. こ の 点,LordMance(LadyHale同. 手 元 に あ り,公. 益 免 除 特 権 の 判 断 の 後 に,裁. 調)も,証. 拠 が被告 の. 判 官 が 開 示 す べ きで な い と判 断 し. 訟 が 審 理 不 可 能 に な っ て し ま う 場 合 で,か. に 同 意 を 与 え て い る 場 合 に は,非. 開示手続が司法の利益. の 手 続 を 採 用 で き る と結 論 づ け る. (para.176-178)。. た 結 果,訴. 判 官 が,非. つ原告が非開示証拠手続. 開 示 証 拠 手 続 が 例 外 的 に認 め られ る こ とを 明. 言 す る(para.121)。 こ れ ら に 対 し,LordBrownは,LordDysonの. 意 見 に もLordClarkeの. 見 に も 完 全 に は 満 足 で き な い と し て,独 Brownは,本. 自 の 見 解 を 述 べ る。 ま ず,Lord. 件 で 非 開 示 証 拠 手 続 を 認 め る こ と は 「コ モ ン ・ ロ ー の 展 開 と し. て 許 容 さ れ る と こ ろ を 超 え る 」 と し,こ か し,本 件 とDavis事. の に 対 し,本. 件 が 刑事 事 件 で 本件 が. た 立 法 に よ っ て も真 の 問 題 に 対 応 で き る. 的 財 産 関 係 の 訴 訟 で は,そ. の 性 質 ゆ え に,特. 「例 外 的 な 解 決 を 要 求 す る」 と述 べ て い る こ とを 指 摘 す る。LordDysonは,商. が,こ. 護 権)が. 支 持 す る。 し. 件 で は立 法 に よ る早 急 な対 応 が期 待 で き た. 件 で は そ れ が 望 め ず,ま. 26)LordClarkeは,LordDysonも,知. の 点 で はLordDysonを. 件 と は 異 な る 。 そ れ は,Davis事. 民 事 事 件 だ か らで は な く,Davis事. の利 益(監. 意. 別な 問題が. 業 上 の利 益 と子 ど も. 問題 と な る二 つ の カ テ ゴ リー の訴 訟 に つ い て公 開 裁 判 原 則 か ら の逸 脱 を認 め る. れ らの場 合 に非 公 開審 理 とす る こ と は コ ン トロ ヴ ァ ー シ ャル で は な く司法 の満 足 い く機 能 を. 果 たす の に対 し,本 件 に お け る非 開示 証 拠 手 続 は,コ る(para.62-65)。. 一88一. ン トロ ヴ ァ ー シ ャル で あ り,機 能 しな い とす.
(21) 法科大学院論集 か が 疑 わ し い か ら で あ る(para.78)。 の 判 断 を 行 っ た 結 果,公. 非 開 示 証 拠 手 続 の 目 的 は,公. 非開示証. 益 免 除 特 権 の た め に 利 用 不 可 能 と さ れ た 証 拠 抜 き の 審 理 か,公. な 裁 判 が 不 可 能 で あ る と して の 却 下 か,と る と さ れ る(para.80)。. し か し,こ. れ に は納 得 で き な い 。 公益 免 除 特 権 の 判 断. む に や ま れ ぬ 理 由 が 必 要 で あ る し,証 何 よ り,非. 害 す る(para.83)。. 額 の 費 用 や 時 間 を 要 す るだ けの や. 人 尋 問 を ど うす る の か と い う問 題 もあ. 開 示 証 拠 手 続 は,裁. ま た,当. 正. い う帰 結 を 避 け る と い う長 所 を 有 す. の 後 に 非 開 示 証 拠 手 続 に よ る の で あ れ ば,巨. る(para.82)。. 益免除特権. 開 の 法 廷 で 証 拠 と して 利 用 で き な い と さ れ た 証 拠 に 両. 当 事 者 が 依 拠 す る こ と を 可 能 に す る 点 に あ る と解 さ れ る(para.79)。 拠 手 続 は,公. 第10号. 判 所 の 高 潔 性(integrity)を. 事 者 の 同 意 が あ った 場 合 に は 非 開 示 証 拠 手 続 に. 入 る こ と が で き る と す る 議 論 に も 賛 同 で き な い 。 「法 の 支 配 と 司 法 の 運 営 (administrationofjustice)は,訴. 訟 当 事 者 の 利 益 よ り も非 常 に 重 要 で あ る 。. 公 衆 も ま た 訴 訟 手 続 の 追 行 に 決 定 的 な 利 益 を 有 し て い る 。 公 開 裁 判 は 最 も重 要 な 憲 法 上 の 原 則 で あ る 。 こ の 原 則 は,当. 事 者 の 同意 の み に基 づ い て犠 牲 に さ れ. る こ と は で き な い 」(para.84)。. の 種 の 請 求 は,伝. 結 局,こ. の 手 続 で は 審 理 不 可 能 で あ る の で,特 か,審. 統 的 な公 開 の法 廷 で. 殊 の 審 判 所 を設 け て そ こで 審 理 を 行 う. 理 不 可 能 で あ る と し て 却 下 す る し か な い(para.86-87)。. LordBrownは,上. 本 件 に 関 し て,. 訴 は 棄 却 す る べ き で あ る と す る(para.87)。. こ の よ う に,結. 論 的 に は,本. 件 にお いて は裁 判 所 の 職 権 に よ る非 開 示 証 拠 手. 続 の 導 入 を 否 定 す る 意 見 が 多 数 を 占 め て 上 訴 は 棄 却 さ れ た も の の,裁 見 は 多 岐 に 亘 り,混. 乱 を 極 め た27)。 こ の 背 景 に は,本. 出 さ れ る 前,2010年11月 れていない. に和解. 案 が,こ. 判官の意. の 貴 族 院判 決 が. そ の 内 容 は 秘 密 と さ れ て お り,リ. ー クもさ. で 終 了 し て い た と い う事 情 も あ る よ う で あ る。 し た が っ て,本. 件 は そ の 時 点 で ム ー トネ ス に な って い た と評 す る こ とが で き る事 件 で あ っ. 27)な. お,も. う一 名,LordRodgerが. 居 た が,彼. は 判 決 の前 に 死 去 して い た とこ ろ,上 訴 は棄 却 され. るべ きで あ る と述 べ て い た点 のみ が 判 決 文 に記 され て い る(para.198)。 一89一.
(22) 民 事 ・行 政 訴 訟 に お け る機 密 情 報 の 取 扱 い を め ぐる イギ リス法 の展 開. た28)。しか し,実 際 に従 来 の公 益 免 除特 権 の判 断 に よ って は審 理 が うま く進 ま ず,政 府 が 和 解 に追 い込 ま れ る事 件 が発 生 し,裁 判 所 もコ モ ン ・ロ ー上 の権 限 で は非 開示 証 拠 手 続 を導 入 で き な い と の判 断 を示 した こ と を契 機 と して,政 府 は,一 般 の民 事 訴 訟 に お け る非 開示 証 拠 手 続 の導 入 を立 法 に よ って行 う動 き を 見 せ る こ と に な る。. (2)裁. 判 所 に よ る 文 書 開 示 命 令 と 外 交 機 密 の 保 護BinyamMohamed. 事件 ①. 事 件 の概 要. AlRawi事. 件 と 同 時 期 に 司 法 手 続 と機i密 情 報 の 関 係 が 問 題 と な っ た 事 件 と. して,BinyamMohamedvSecretaryofStateforForeignandCommonwealthAffairs[2010]EWCACiv65が. あ る。 こ こで は,NorwichPharmacal. 型 の 裁 判 所 に よ る 文 書 開 示 命 令 に よ っ て,国. が 外 国 の 諜 報 機 関 か ら得 て 保 有 す. る 文 書 を 開 示 さ せ る こ と が で き る か が 争 点 と な っ た 。NorwichPharmacal型 の 文 書 開 示 命 令 と は,被. 告 が 第 三 者 の 権 利 侵 害 行 為(wrongdoings)に. あ る か 否 か に か か わ らず 関 与 して お り,か の 当 事 者 と は な ら な い 場 合 に,被. つ,当. 悪意で. 該 権 利 侵 害 行 為 にか か る訴 訟. 告 の 有 す る 当該 権 利 侵 害 行 為 に か か る情 報. が,原. 告 に よ る後 続 訴 訟 に 必 要 で あ る とき に認 め られ る 開 示 命 令 の こ とを い. い,そ. の 名 称 は,こ. の 種 の 命 令 が 初 め て 認 め ら れ たNorwichPharmacalCo&. OthersvCustomsandExciseCommissioners[1974]AC13329)に BinyamMohamed事. 件 の 原 告 は,エ. チ オ ピ ア 国 籍 で あ る が,2001年. ギ リ ス に 合 法 的 に 滞 在 し て い た 者 で あ る 。2002年 2004年. まで イ. に パ キ ス タ ン で 逮 捕 さ れ,. に ア メ リ カ の グ ア ン タ ナ モ 収 容 所 に 移 さ れ た 。 原 告 の 主 張 に よ れ ば,グ. 28)AdamTomkins教 29)原. 由来 す る。. 授 の分 析 で あ る(2012年2月7日)。. 告(NorwichPharmacalと. い う製 薬 会 社)は,寄. う薬 剤 に 対 す る特 許 を有 して い た と ころ,こ. 生 虫 予 防 薬 の 一 種 で あ る フ ラ ゾ リ ドンと い. の 薬 剤 の 不 正輸 入 事 件 が起 き た が,原 告 は,輸. 一90一. 入者 を.
(23) 法科大学院論集 ア ン タ ナ モ に 移 さ れ る ま で の,パ 禁 は 不 法 な も の で あ り,ま さ れ た 際 に,拷. キ ス タ ン,モ. ロ ッ コ,ア. 第10号. フ ガ ニ ス タ ンで の 拘. た各 地 に お いて ア メ リカ合 衆 国 官 憲 の監 視 下 で 尋 問. 問 や 非 人 道 的 な 取 り扱 い を 受 け た と い う 。 原 告 は,ア. 衆 国 に お い て 人 身 保 護 令 状 の 発 布 を 求 め る 訴 訟 を 提 起 す る 一 方,同 判 の 被 告 人 と な る こ と も 予 想 さ れ て い た 。 そ こ で,原. メ リカ合. 国で刑事裁. 告 は,両. 方 の 訴 訟 にお い. て 自 白 が 拷 問 に 基 づ く も の で あ る こ と を 主 張 す る た め に,拷. 問 の 存 在 を示 す. 情 報 が ア メ リ カ 合 衆 国 か ら イ ギ リ ス に 渡 さ れ た 情 報 の 中 に あ る と し て, NorwichPharmacal型. の文 書 開 示 命 令 に よ って 当 該 情 報 の 開 示 を 求 め た の で. あ っ た 。 こ れ に 対 し,被. 告 は,両. ギ リ ス に 渡 さ れ,イ principleを. 国 の 諜 報 部 門 を 通 じ て ア メ リ カ合 衆 国 か ら イ. ギ リ ス が 保 有 し て い る 文 書 を 開 示 す る こ と は,control. 侵 害 す る と して,裁. 張 し た 。controlprincipleと. 判 所 は 開 示 命 令 を 発 す る こ と が で き な い と主. は,諜. 報 に 関 す る情 報 交 換 に お い て は,当. 該情報. の 情 報 源 と な る相 手 国 が そ の 取 扱 い や 流 通 に つ い て コ ン ト ロ ー ル す る こ と が で き る と い う原 則 で あ る。 こ こ か ら,相 意 が な け れ ば,諜. 手 国 の 信 頼 を 維 持 す る た め,相. 報 に 関す る情 報 の 内容 や情 報 授 受 の事 実 を 開示 して は な らな. い と い う要 請 が 導 か れ る 。 そ れ ゆ え,被 り,当. 手 国の同. 告 は,ア. メ リカ合 衆 国 の 同意 が な い 限. 該 情 報 に つ い て は 存 否 を 含 め て 開 示 を 行 う こ と は で き な い と反 論 し た の. で あ った。. ②. 第一審の諸判決. こ の 事 件 の 審 理 は,複. 雑 な 経 過 を 辿 っ た30)。 第 一 次 第 一 審 判 決(R(捌. 特 定 す る こ とが で き な か った 。 そ こで,原. 告 は,輸. 税 委 員 会 〔CustomsandExciseCommissioners〕)に た た め に,原. 30)経. 入 者 を 特 定 で き る情 報 を 保 有 して い た 被 告(関 情 報 の開 示 を求 め た が,被 告 は 開 示 を 拒 否 し. 告 が この 情 報 の 開 示 を 請 求 して 訴 訟 を 提起 した 事 件 で あ る。 貴 族 院 は,本. 要 件 を 示 した 上 で,原. 告 の請 求 を 認 め た 。. 緯 に つ い て,See,AdamTomkins,NationalSecurityandtheDueProcessofLaw(2011). 64CurrentLegalProblem215,at223-243. 一91一. ηyα 〃2. 文で述べた.
(24) 民 事 ・行 政 訴 訟 にお け る機 密 情 報 の 取 扱 い を め ぐる イギ リス 法 の 展 開. M・ 伽. ・の. ・5・c腕 の. σ5'・ ∫ ・力 ・ 伽 卿. ・・4C・ 配・…w・ αZ'樋 伽 ケ・(!>・.1). [2008]EWHC2048(Admin),[2009]1WLR2579)は,本. 件 はNorwichPhar-. macal型. の 文 書 開 示 命 令 を 発 す る要 件 を 充 足 す る と し て,文. た が,具. 体 的 な 開 示 文 書 に 関 して は,外 務 大 臣 に よ る 公 益 免 除 特 権 の 認 証(PII. certificate)を に,判. 認 め た 。 実 際 の 訴 訟 手 続 に お い て は,こ. 決 文 の 原 案 を 外 務 大 臣 に 示 し て,開. し て,公. 書開示命令を認あ. の第一次判 決を下す前. 示 文 書 の対 象 及 び判 決 文 の 内容 に関. 益 免 除特 権 の認 証 を行 うか を考 慮 す る機 会 を外 務 大 臣 に与 え た よ うで. あ る。 こ れ を 受 け て,外. 務 大 臣 は,ア. に,判. のパ ラ グ ラ フ. 決 文 原 案 中 の7つ. メ リ カ 合 衆 国 が 作 成 し た42の 文 書 と と も 後 に わ か っ た こ と だ が,原. 告 に対 す. る拷 問及 び非 人 道 的取 扱 い に 関す る イ ギ リス政 府 の関 与 及 び認 識 に関 す る事 実 認 定 及 び 結 論 が 書 か れ て い る箇 所 の 一 部 で あ り,そ. こに は原 告 の処 遇 に関 す る. ア メ リカ合 衆 国政 府 機 関 か らイ ギ リス の諜 報 機 関 に対 す る報 告 内容 が 記 され て いた. を も公 益 免 除 特 権 の 適 用 対 象 と し て 認 証 し た 。 そ の 結 果,公. 判 決 文 に お い て は,原 案 中 に あ っ た7つ. 表 され た. の パ ラ グ ラ フ が 削 除 さ れ る(redacted). とい う こ とが起 き た。 続 い て,裁. 判 所 は,外. 務 大 臣 が 行 っ た42の 文 書 に 対 す る 公 益 免 除 特 権 の 対 象. と し て の 認 証 に 関 す る判 断 を,第 吻1(ゾ5鰭 (Admin))で. 二 次 一 審 判 決(R(B〃zyα1πMo肱. 一. 和r1わ 面8η αη4Cα η配oηw8α1ぬ んの か5(1>o.2)[2008]EWHC2100 行 っ た 。 こ こ で は,公. 益 免 除特 権 の認 証 に際 して裁 判 所 が考 慮 事. 項 と し て 強 調 し て い た 拷 問 に 対 す る強 い 憎 悪 及 び 非 難 に つ い て,外 証 に お い て は 適 切 に 考 慮 さ れ て い な い と し て,認 し,二. 耀 のv58czε. 度 目 の 認 証 で も,42の. わ ら な か っ た 。 結 局,二. 証 の や り直 し を 求 め た 。 しか. 文 書 を 非 開 示 とす るべ き と の 外 務 大 臣 の 結 論 は 変. 度 目 の 認 証 の 是 非 に つ い て 判 断 し た 第 三 次 一 審 判 決(R. (B吻 α彫1匠o勿 駕θ6)・56c・・鱒. φ』 ∫∫ ・彪力 ・伽 卿. [2008コEWHC2519(Admin))は,ア 断 が 下 る ま で,イ. 務 大 臣 の認. αη4C・ η襯 ・・w6α1噸 伽 ・3(Nα3). メ リカ合 衆 国 の 地 方 裁 判 所 に お け る判. ギ リ ス に お け る判 断 は ペ ン デ ィ ン グ に す る 決 定 を 行 っ た 。 一92一.
関連したドキュメント
10) Wolff/ Bachof/ Stober/ Kluth, Verwaltungsrecht Bd.1, 13.Aufl., 2017, S.337ff... 法を知る」という格言で言い慣わされてきた
Denison Jayasooria, Disabled People Citizenship & Social Work,London: Asean Academic Press
このように資本主義経済における競争の作用を二つに分けたうえで, 『資本
この小論の目的は,戦間期イギリスにおける経済政策形成に及ぼしたケイ
「系統情報の公開」に関する留意事項
生活のしづらさを抱えている方に対し、 それ らを解決するために活用する各種の 制度・施 設・機関・設備・資金・物質・
排出量取引セミナー に出展したことのある クレジットの販売・仲介を 行っている事業者の情報