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「学士課程教育の構築に向けて」概観

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(1)2 1巻 1号. 文学・芸術・文化. 2 0 0 9 .9. 「学士課程教育の構築に向けて」概観 井面信行 .はじめに 近年、日本の大学には教育改革の波が押し寄せ、教育の現場には、学生に 対するきめ細かな教育的配慮が求められてきている。そして、私たち教育現 場を預かるものは、戸惑いつつその対応に追われているという感を再めな L 。 、. しかし、「戸惑いつつ」というのは、もしかすると団塊世代の大学教(職) 員l. もう少し正確にいえば、 1969年に頂点を迎えた学生運動を経験した世. 代の教(職)員に特有の意識かもしれな L、。私事に及んで恐縮であるが、私 は 1969年 3月に現役受験生として大学を受験して、失敗、一年間の浪人生 活ののち、翌 7 0年 4月に大学に入学をした。その時点において、学生運動 の熱気は下降に向かう兆しを示してはいたものの、現実にはまだベトナム戦 争は終結せず、日米安保条約の自動延長の期日も近づいていた。学生自治会 は次々とストライキを打ち、私の通った大学では 7 0年度の授業は通年で 1 0 回程度しか行われなかったと記憶している。 このような状況の中で、私たちの i 吐代には「大学は、教師に勉学を教わる 場所ではなく、自分自身で勉強するところである」という意識が育まれたこ とは否定できなし、。「戸惑いつつ」の意識はそこに連なっている。すなわち、 現在大学教育に求められている学生に対するきめ細かな教育的配慮は、か えって学生の自立心を削ぐのではないか、学問は孤独の中で遂行されるとい う自覚が生まれないのではないか、自分で考え、自分で行動し、自分で責任 を果たすという近代人の人格基盤形成を妨げるのではないか、といった疑い が付きまとうのである。 とはいえ、私たちはボブ・デイランの“ T heT i m e sTheyAr eAC h a n g i n ' υ 1. 氏. 。 口. (1 3 7 ).

(2) 「学士課程教育の構築に向けて」概観井面. erZ e i t g e i s tは確実に に共感しつつ青春を送った世代でもある O 時代精神 d 変わり、当否の議論は別として、市場原理とグローパル化の波は全地球を覆 い尽くすところまで来ている O 時代の変化には対応しなければならない。 現在の各大学の教育現場に求められている諸改革の由って米たるものは何 か。それは、中央教育審議会によって提出された「学士課程教育の構築に向 けて J(平成 2 0年 3月 2 5日中問答申)という苓申書である。この中身につ いて、私たち大学教員には、それを知ること、批判的に吟味することの権利 と義務がある O しかし、その権利と義務を誠実に遂行することは、決して容 易なことではなし、。大学の紀要に掲載するに相応しいとは思われないこの報 告は、「学士課程教育の構築に向けて」の内容を簡略に紹介し、せめて教. 1 .. (職)員各位の時間節約に資するようにと願うものにすぎない。. 学士課程教育の構築に向けて」の内容. 本答申書の目次は次のとおりである。. はじめに. 今なぜ学士課程教育か. 第 l章. グローパル化、ユニバーサル段階等をめぐる基本認識. 第 2章. 改革の基本五 IらJ~ 競争と協同、多様性と標準性の調和を~. (1)大学の取組 社会からの信頼に応え、国際通用性を備えた学士課程 教育の構築を. 2 1世紀型市民 Jに相応しい「学習成 ①幅広い学び等を保証し、 1 果」の達成を ②学生が本気で学び、社会で通用する力を身に付けるよう、きめ細 かな指導と厳格な成績評価を ③入学者受入れ方針を明確にし、高等学校段階の学習成果の適切な 把握・評価を. ( 2 )闘による支援・取組 大学の自主性・自律性を尊重した多角的支援 (1 3 8). 5 7.

(3) 文学・芸術・文化. 2 1巻 l号. 2 0 0 9 .9. の飛躍的充実を ①我が国の「学土」の水準に関する枠組みづくり、「高等学校から 大学へ大学から社会へ」と連なる階梯の設計を ②学土課程教育の優れた実践に対する重点的な財政支援の拡充を ③大学聞の連携、聞かれた協同のネットワークの構築を 第 3章 改 革 の 具 体 的 な 方 策 第 1節 学 位 の 授 与 、 学 修 の 評 価. 第 2節 教 育 内 容 ・ 方 法 等. (1)教育課程の編成・実施. ( 2 )教育方法 ( 3 )成績評価. 第 3節 高 等 学 校 と の 接 続. (1)入学者選抜. ( 2 )初年次における教育上の配慮、高大連携 第 4節 教 職 員 の 職 能 開 発. 第 5節 質 保 証 シ ス テ ム. (1)設置認可・評価等 ( 2 )大学団体等の役割・機能. おわりに. 改革の加速に向けた社会全体の支援を. 以ドに、「学士課程教育の構築に向けて J(以下、「構築」と略す)の主要 部分の内容を要約して報告する o (太字は筆者による). 「学士課程教育の構築に向けて J(審議のまとめ) 平成 2 0年 3月 2 5日 中央教育審議会大学分科会制度・教育部会. Fhυ. ρHU. (1 3 9).

(4) 「学士課程教育の構築に向けて」概観井出. くはじめに〉 ここでは、学士課程教育すなわち大学学部教育の構築が、日本社会が将米 的に発展するための喫緊の課題であるという認識が示され、まず構築の方針 が次の四つに分けて提示されている O すなわち、 ア.. r 2 1世紀型市民yの育成. イ.. r 学習成果」の重視と「学士」の水準の維持・向上. ウ.教育の質を保証するシステムの再構築 工. 大学聞の「協同」の必要性. とくに、「学士課程教育」という概念について、大学関係者のみならず一 般的にもその理解を期待する旨が述べられている。「学士課程教育」とは、 すなわち大学学部教育のことであるが、ここでは学部・学科という縦割りの 教学に代えて、学士・修士・博士といった学位授与の課程中心の教学に再構 築することが意図されている O その意味は、学生本位の教育を展開すること であるとされている。. 〈第一章. グローパル化、ユニバーサル段階をめぐる基本認識〉. ・現代社会は、グローパル化する知識基盤社会3であり、国境を超えた多様. 2 1世紀型市民」の で複雑な課題に直面している O そのような状況の中で、 r 育成が、現代の大学が担う公共的使命である。その使命は、具体的には学生 の「学習成果」の評価の明示というかたちで行われるべきである。 -現在の日本は、高等教育に関してユニバーサル段階にあるといえる(平成. 1 9年度大学進学率 47%)。いわゆる「大学全入時代Jの到来に伴って、入試 による「入口」の質保証の機能は大きく低ドしている。 ・グローパル化、ユニバーサル段階にある現代社会において、日本の大学教 育の大きな問題は、教育内容・方法・学修の評価に通じた「質」の管理が緩 い点にある O それは日本の学士課程教育が国際的に信用を失う危機へとつな がる。したがって、「学位(学士 ) J の国際的通用性を確保することが不可欠 F内U. Fhd. (1 4 0).

(5) 文学・芸術・文化. 2 1巻 l号. 2 0 0 9 .9. である。. 〈第二章. 改革の基本方向~競争と協同、多様性と標準性の調和を~>. まず、いわゆる i (大学設置基準の)大綱化 J(平成 3年)以降に展開され た大学改革の進展と懸念について述べられている。すなわち、国立大学等の 法人化、大学設置基準の弾力化、第三者評価制度、 GP事業への支援などを 推進し、各大学の個性・特色の明確化が求められ一定の成果が得られたが、 反面、「大学全入時代」に伴い、学生確保が最優先される傾向つまり「市場 化」の状況が拡大し、大学の本質についての反省が希薄になっているという 懸念が指摘されている。 また、日本の大学は、先進諸国と比較して、教育研究活動を支援する社会 的基盤、知的共同体の存在が希薄であり、大学教育の発展を妨げているとも 指摘されている。 このような反省に立ち、学士課程教育の推進に当たって以下の二点が重要 視される O 1.大学問の健全な競争環境の下、各大学が自主的な改革を進めること. 2 . 自律的な知的共同体を形成・強化し、大学問の連携・協同や大学団体 等の育成を進めること. (1)大学の取組 学士課程教育の目標は、「社会からの信頼に応え、国際通用性を備えた学 士課程教育の構築」を実現することであると主張されている。そのために は、以下の「三つの方針(ポリシー )J4に貰かれた教学が展開される必要が ある。. 5 4. (1 4 1).

(6) 「学士課程教育の構築に向けて」概観. 井面. o1三つの方針J 入学者の受入(アドミッション・ポリシー) 受入方針の明確化。 AO入試の再考なと、。. 学士課程教育の質保証 のための三つの方針. 教育課程の編成・実践(カリキュラム・ポリシー) 共通教育と専門教育、初年次教育、 補習教育、キャリア教育 学位授与・学習の評価(ディプロマ・ポリシー) 1学士力 J) 出口管理、学士の質保証 (. ①広い学び等を保証し、 1 2 1世紀型市民」に相応し l¥1 学習成果」の達成を ・学位授与の方針に関して。「学習成果」重視の観点から、卒業までに学生 がどのような能力を修得することを目指すかを、できるだけ具体的に示して いくことの重要性が説かれる。また、各大学の教育理念や「建学の精神」と の関連に留意して、達成すべき「学習成果」を明確に示すことも求められて いる O ②学生が本気で学び、社会で通用する力を身に付けるよう、きめ細かな指 導と厳格な成績評価を ・学生を本気で学ばせること、教育課程の内容に止まらず、指導方法、成績 評価の改善 5を講じ、社会で通用する力を確実に身に付けさせることが、ま すます重要となることが説かれる。. •1 課題探求能力」という高等教育に相応しい高次の目標とともに、基礎的 な読解力や文章表現力などを修得させることが不可欠であることも指摘され ている。さらに、地域や産業界との連携を深めるような、聞かれた教育活動 の推進も求められている。 ③学者受入れ方針を明確にし、高等学校段階の学習成果の適切な把握・評 価を ・ユニバーサル段階、「大学全入」時代を迎え、高等学校と大学との接続は、 (1 4 2 ). -53. ー.

(7) 文学・芸術・文化. 2 1巻 l号. 2 0 0 9 .9. 大学が「選抜」する時代から大学進学希望者が「相互選択」する時代へと 移ってきていることを踏まえ、入学者受入れ方針を明確化していくことが求 められている。また推薦入試・ AO入試について、それらの導入の本旨にそ ぐわない実態が生じていることへの懸念が表明されている。. -各大学が「三つの方針」に基づいて組織的に教育活動を展開するために、 大学の教員が共通理解を形成し、具体的な教育実践に取り組んでいくことが 求められている。そのために、教員の組織的な研修すなわち FD (ファカル ティ・ディベロップメン卜)の実施が義務付けられることになった。また、 教員と職員との協働関係を一層強化するため、職員の職能開発すなわち. SD. (スタッフ・ディベロップメント)を推進するべきことも提言されている。. ( 2 )国による支援・取組 大学の自主性・自律性を尊重した多角的支援の飛躍 的充実を ・教育支援に関して、我が国の場合、先進諸国と比較して、対 GDP比等で 見ると大学に対する財政支援が手薄であることが指摘され、国に対して多角 的に各大学を支援していくことが求められている。一方、大学に対しては、 基盤的経費を確実に措置した上で、競争的資金を拡充し、財政支援全体の強 化を図っていくことが強く望まれている。 また、大学には、社会に対する説明責任(アカウンタビリティ)を十分果 たしていくことも求められている。. ①我が国の「学土」の水準に関する枠組みづくり、「高等学校から大学へ 大学から社会へ」と連なる階梯の設計を -我が国の大学が授与する「学士」について、それが国際的に通用するもの となるために、固と大学関係者とが協同し、「学士」の水準に関する枠組み づくりがなされるよう求められている。また、高校から大学への教育の移行 5 2 .. (1 4 3).

(8) 「学士課程教育の構築に向けて」概観井面. がi 帯りなくなされるよう、高大連携の仕組みの再構築が求められている。 ②学土課程教育の優れた実践に対する重点的な財政支援の拡充を • GP事業 6の一層の推進が求められている。. ③大学問の連携、開かれた協同のネットワークの構築を ・大学教育の質の向上のために、大学聞の「競争」と「協同」との調和が重 要であることが説かれている O 具体的な取組として、教育・研究設備の共同 利用化、共同プログラム(社会人向けを含む)の開発・実施、放送大学の授 業番組の活用、大学教員・職員の研修 (FD'SD) センターの共同運営、教 育活動の相互評価などが示されている O. 〈第三章. 改革の具体的方策〉. 第 l節 学 位 の 授 与 、 学 修 の 評 価. 国際的に「学習成果」の明確化を図ることが重要視されつつあるが、その 背景には、以下のような状況がある。 ア.グローパルな知識基盤社会において、学問の基本的な知識を獲得するだ けでなく、知識の活用能力や創造性、生涯を通じて学び続ける基礎的な能 力 7を培うことが重視されつつある O イ.学位取得者の国際的な流動性が高まる中、知識・能力等の証明である学 位の透明性、同等性が要請されるようになってきている。 ウ.企業の採用・人事面において、コンピテンシ一概念が導入され、産業界 は大学(とりわけ学土課程)に対し、職業人としての基礎能力の育成を求 めるようになってきている. o. 以上のことに鑑み、学士課程教育が目指す「学習成果Jすなわち「学士 カ」を保証するための課題が以下の点に集約されている。 1.大学全体や学部・学科等の教育研究上の目的、学位授与の方針を定 め、それを学内外に対して積極的に公開する。. 2 . 学位授与の方針の策定に当たって、 PDCAサイクル 9が稼動するよう (1 4 4). 5 1.

(9) 文学・芸術・文化. 2 1巻 l号. 2 0 0 9 .9. にする。. 3 . 学位授与の方針等に即して、学生の学習到達度を的確に把握・測定 し、卒業認定を行う組織的な体制を整える。. 4 . 大学の実情に応じて、大学問で相互に学位授与の方針の策定・実施に 関与する仕組みについて検討する。. 5 . 学位に付記する専攻分野の名称については、学聞の動向や国際通用性 に配慮して適切に定める。. そして、「学士力」を養成するための指針として、以下の 4分野の能力の 掴養が提言されている。. 1 . 知識・理解 専攻する特定の学問分野における基本的な知識を体系的に理解するととも に、その知識体系の意味と自己の存在を歴史・社会・自然と関連付けて理 解する。 (1)多文化・異文化に関する知識の理解. ( 2 )人類の文化、社会と自然に関する知識の理解 2 . 汎用的技能 知的活動でも職業生活や社会生活でも必要な技能 (1)コミュニケーション・スキル 日本語と特定の外国語を用いて、読み、書き、聞き、話すことができ る 。. ( 2 )数量的スキル 自然や社会的事象について、シンボルを活用して分析し、理解し、表現 することができる O ( 3 )情報リテラシー. ICTを用いて、多様な情報を収集・分析して適正に判断し、モラルに 則って効果的に活用することができる。 5 0. (1 4 5 ).

(10) 「学士課程教育の構築に向けて」概観井面. ( 4 )論理的思:考力. 情報や知識を複眼的、論理的に分析し、表現できる。 ( 5 )問題解決力. 問題を発見し、解決に必要な情報を収集・分析・整理し、その問題を確 実に解決できる O. 3 . 態度・志向性 (1)自己管理力 自らを律して行動できる。. ( 2 )チームワーク、リーダーシップ 他者と協調・協働して行動できる O また、他者に方向性を示し、目標の 実現のために動員できる O ( 3 )倫理観. 自己の良心と社会の規範やルールに従って行動できる。 ( 4 ) 市民としての社会的責任. 社会の一員としての意識を持ち、義務と権利を適正に行使しつつ、社会 の発展のために積極的に関与できる。 ( 5 )生涯学習力. 卒業後も自律・自立して学習できる。. 4 . 統合的な学習経験と創造的思考力 これまでに獲得した知識・技能・態度等を総合的に活用し、自らが立てた 新たな課題にそれらを適用し、その課題を解決する能力. 第. 2節 教 育 内 容 ・ 方 法 等. (1)教育課程の編成・実施 ここでは「学士力」の達成に向け、教育課程の体系化・構造化を推進する ことの必要性が説かれ、以下の点に集約されている。 1.明確化した「学習成果」や教育研究上の目的の達成に向け、順次性の (1 4 6). 4 9.

(11) 文学・芸術・文化. 2 1巻 l号. 2 0 0 9 .9. ある体系的な教育課程を編成する(教育課程の体系化・構造化)。. .I 教養教育 J 、「専門教育」の科目区分に拘らず、一貫した「学士課程 教育」として組織的に取り組む。. 2 . 学生の「幅広い学び」を保証するための、意凶的・組織的な取組を行 つ. O. -主専攻・副専攻制の積極的導入。入学時から学生が学科に配置され、 細分化された専門教育を受けるような仕組みについての見直しを検討す る(例えば、学部・学科間の移動の弾力化、学部・学科の在り方の見直 しなど)。. 3 . 英語等の外国語教育においては、バランスのとれたコミュニケーショ ン能力の育成を重視するとともに、専門教育との関連付けに留意する O ・「読む・書く・聞く・話す」の四技能のバランスに留意し、学習支援を行 う。「専門を学ぶための英語 (EAP( E n g l i s hf o rAcademicPurposes)J という観点に立って教育活動を展開する。. 4 . キャリア教育は、生涯を通じた持続的な就業力の育成を目指すものと して、教育課程の中に適切に位置づける。 ・豊かな人間形成と人生設計に資するものであり、単に卒業時点の就職 を目指すものではないことに留意する。アウトソーシング I こ偏ることな く、教員が参画して学生のキャリア形成支援にあたる。大学が責任を 持って関与するインターンシッブと、単なるアルバイトとは峻別する。. 5 . 一方的に知識・技能を教え込むのではなく、豊かな人間性や課題探求 能力等の育成に配慮した教育課程を編成・実施する O. 6 . 共通教育や基礎教育の重要性について教員聞の共通理解を確立し、教 育活動への積極的な参画を促す。また、これらの教育における努力や業 績を適切に評価する O. 7 . 地域の実情に応じて、大学問連携を強化し、学生に対する教育内容を 豊富化する。. 4 8. (1 4 7 ).

(12) 「学士課程教育の構築に向けて」概観井面. 大学が取り組むべきこれらの課題に対して、国がなすべき支援についても 提示されている O すなわち、 1.個性や特色のある教育課程に関する優れた実践への支援 ( GP)。. 2 . 大学聞の連携強化に向けた取組(共同プログラム、単位互換など)へ の支援。. 3 . 複数大学が共同で教育課程を編成・実施し、連名で学位授与する仕組 みの創設。 などである O. ( 2 )教育方法. ここでは、日本の大学の国際的通用性の観点から、学生の学習時間の国際 的水準化、単位制度の実質化、教育の双方化・システム化が提言されてい る。それらの課題は以下の点に集約されている O 1.自己点検・評価活動の一環として学習時間等の実態把握を行い、単位 制度の実質化の観点から、教育方法の点検・見直しを行い、質の向上を 図る. 0. ・卒業要件単位数、各科目の単位数配当、履修指導と学習支援の在り方 などの点検・見直しを行う。諸手法(シラパス、セメスター制、キャッ プ制、 GPAなど)を相互に連携させて運用する。点検・評価のための 目安として、具体的な学習時聞を設定することも検討する。. 2 . 各科目の授業計画に関しては、学部・学科等の目指す「学習成果Jを 踏まえて適切に定め、学生等に対して明確に示すとともに、必要な授業 時聞を確保する。 シラパスに関しては、国際的に通用するものとなるよう、以下の点に 留意する。 -各科目の到達目標や学生の学修内容を明確に記述すること .準備学習の内容を具体的に指示すること (1 4 8 ). 4 7.

(13) 2 1巻 I号. 文学・芸術・文化. 2 0 0 9 .9. -成績評価の方法・基準を明示すること ・シラパスの実態が、授業内容の概要を総覧する資料(コース・カタロ グ)と同等のものに止まらないようにすること. 3 . 各科目の授業時間内及び事前・事後の充実の観点から、各セメスター で履修する科目の数・種類が過多とならないようにする O -例えば、細分化された 2単位科目(週 l回開講)を多数履修するよう な在り方を見直し、教育効果の観点から適切と判断する場合、 3単位又 は 4単位科目(聞に休憩を入れた 2コマ続きの授業又は週複数回開講す る授業)を標準形態とする。科目登録等に際し、各学生の実情に応じて 登録の適否等に関する履修指導を積極的に行うよう努める。それらの 種々の取組と併せて、キャップ制の導入や受講科目数に対応した柔軟な 授業料システムについて検討する。. 4 . 学習の動機付けを図りつつ、双方向型の学習を展開するため、講義そ のものを魅力あるものにすると共に、体験活動を含む多様な教育方法を 積極的に取り入れる O ・学生の主体的・能動的な学びを引き出す教授法(アクティブ・ラーニ ング)を重視し、例えば、学生参加型授業、協調・協同学習、課題解 決・探求学習、 PBLC P r o b l e m / P r o j e c tB a s e d L e a r n i n g ) などを取り 入れる。大学の実情に応じ、社会奉仕体験活動、サービス・ラーニン グ、フィールドワー夕、インターンシップ、海外体験学習や短期留学等 の体験活動を効果的に実施する。学外の体験活動についても、教育の質 を確保するよう、大学の責任の下で実施する。. 5 . TA等を積極的に活用して、双方向型の学習や少人数指導を推進する. O. -授業における指導(例えば、ディスカッション、討論など)への参 画、授業外の学習支援など、 TAの役割を一層拡大する。優秀な学部学 生を. SA C スチューデン卜・アシスタン卜)として活用することも検討. する。 46. (1 4 9).

(14) 「学士課程教育の構築に向けて」概観井面. 6 . 教育研究上の目的等に即して情報通信技術(ICT) を積極的に取り入 れ、教育方法の改善を図る。 的確な授業設計を行った上で、例えば、以下のような取組について検 討する。. • VOD (VideoonDemand) システム等、 eラーニングの活用による 遠隔教育. • LMS (LearningManagementSystem) を利用した事前・事後学習 の推進 ・ブレンディッド型学習(教室の講義と eラーニングによる自習の組み 合わせ、講義と web上でのグループワークの組み合わせなど)の導入 .クリッカー技術や携帯端末を活用した学生応答・理解度把握システム による双方向型授業. 大学が取り組むべきこれらの課題に対して、国がなすべき支援・取り組み についても提言されている。すなわち、 1.自己点検・評価の一環としての学習時間の現状把握。. 2 . 単位の上限設定(キャップ制)の促進。. 3 . シラパスの内容調査。. 4 . 教育方法の改善に向けた優れた実践への支援。 5 . TA等の教育支援人材の増加への支援 などである O. ( 3 )成績評価. ここでは、我が国の学士課程教育をめぐって、「出口管理」の強化、卒業 認定などの評価の厳格化が重要な課題となっていることを踏まえ、成績評価 の厳格化、組織的なチェック体制の確立の必要性が説かれている。それは以 下の点に集約されている。 (1 5 0 ). 4 5.

(15) 文学・芸術・文化. 2 1巻 l号. 2 0 0 9 .9. 1.教員聞の共通理解の下、成績評価基準を策定し、その明示について徹 底する。 ・成績評価の結果については、基準に準拠した適正な評価がなされてい るか等について、組織的な事後チェックを行う。また、成績評価の通用 性を高める方策として、当該教員以外の第三者の参画を求める仕組みを 検討する。. 2 . GPA(GradePointAverage)10等の客観的な基準を学内で共有し、 教育の質保証に向けて厳格に適用する。. GPAを導入・実施する場合は、以下の点に留意する。 -国際的に GPAとして通用する仕組みとする(例えば、グレードの設 定を標準的な在り方に揃える、不可となった科目も平均点に算入する、 留年や退学の勧告等の基準とするなど) ・アドバイザー制を導入するなど、きめ細かな履修指導や学習支援を併 せて行う。 -教員間で、成績評価結果の分布などに関する情報を共有し、これに基 づくファカルティ・ディベロップメント (FD) を実施し、その後の改 善に生かす。 ・その他単位制度の実質化に向けた諸方策を総合的に講じる O. 3 .I 学習成果」を学生自らが管理・点検するとともに、大学としてこれ を多面的に評価する手法として、学習ポートフォリオを導入・活用する ことを検討する。. 4 . 各大学の実情に応じ、在学中の「学習成果」を証明する機会を設け、 その集大成を評価する取組を進める。 ・例えば、卒業論文やゼミ論文などの工夫改善や新規導入を実施した り、学部・学科別の、あるいは全学的な卒業認定試験を実施したりする ことを検討、研究する。. 5 . 国際性を特色とする大学においては、外国語コミュニケーション能力 4 4. (1 5 1).

(16) 「学士課程教育の構築に向けて」概観井面. の評価を厳格に行う O -例えば、卒業や進級の要件として、 EAPの観点、 l こ留意しつつ客観的 な到達目標を独自に設定したり、 TOEFLや TOEICなどの検定の結果 を活用したりする O. 第 3節以下省略. 4 ・まとめ 「構築」の主要部分の要約としては、ひとまずここまででよいと思われる O 筆者が太文字で表記した概念なり用語なりを順にたどっていけば、「構築」 が何を根拠にして、{可を大学に求めているのかが比較的容易に見通せる. 110. 「構築」の由って来たる根拠は、国際社会とりわけ OECD加盟諸国の高等 教育の現状と日本のそれとを比較、反省するところにある。例えば、ヨー. 9 9 9年に 2 9カ国が参加し ロッパでは、高等教育資格の枠組み作りのため、 1 て「ボローニャ宣言」を採択し、「欧州高等教育園」を構築することを目指 している。そこには、高等教育に学位システムと単位制度を中心とした共通 の枠組みを構築して、ヨーロッパ地域の国際競争力を向上させ、地域内の学 位等の国際的通用性を確保しようとする目標が含まれている O また、アメリカでは、全米カレッジ・大学協会 (AAC&U :A s s o c i a t i o n 、 2005年の報告書において「専 o fAmericanC o l l e g e sandU n i v e r s i t i e s )が 門分野や学問的予備知識によらず、すべての学生が学士課程段階において身 につけるべき学習成果(アウトカム ) J として 1 5分野の知識や技能の修得を 合意している. 120. このような OECD加盟諸国の高等教育をめぐる動きに対し、「構築」は日 本の高等教育の現状について繰り返し危機感を表明し、国際競争に伍するこ とのできる「質」を保持した人材の創出が高等教育の最重要の課題であるこ とを主張する。その背後には、日本の大学教育は、教育内容・方法、学修の (1 5 2 ). 4 3.

(17) 文学・芸術・文化. 2 1巻 l号. 2 0 0 9 .9. 評価を通した「質」の管理が緩いという反省がある O そのひとつの根拠とし て 、 OECD加盟諸国と比して日本の大学生の修了率が異常に高いことが指 摘されている. 1 3. 言うまでもなく、このことは日本の大学の「出口」管理が. 甘いことを意味し、日本の大学の「入難出易」の特質への危機感が表れてい ることになる。国際的信用が得られない「学士」を排出しつづけるかぎり、 日本の高等教育への信頼は失墜する. この問題を克服する方策を打ち立てる. こと、それが「構築」全体を貰くポリシーとなっている。 2 1世紀型市民、知識基盤社会、学習成果の明確化、学士力、 GPA、学位. の透明性・同等性、国際的通用性など、キーワードとなっているすべての概 念・用語は、最終的に高等教育を通して国際的に通用する人材を育成とい う、国家戦略としての目的へと収敬するのである。. 大 「構築」についてどのような評価を下すべきかを反省する聞にも、現実の 問題として、教育の現場には「構築」の中に提言されている様々の施策、方 策の実行が求められている。これらの大学改革の大きな流れに抗する可能性. r i t i kが、これら改革 があるとしても、そのためには厳密な意味での批判 K の中身に関して展開されねばならないであろう。しかし、それを展開する能 力も余力もいまの筆者にはない 140 しかし、それ以前の問題として、近年の大学改革の中身は、学生、教員、 職員の豊かな感性がデジタル化されて数量に変換され、切り詰められ、締め 出されているように感じられる。私たち教員にとって最も重要な問題は、学 生諸君との聞に信頼関係を結び、教師が学生のために存在するというかたち ではなく、教師と学生とが共存して共通の課題に取り組むというかたちでの 教育を展開することである。逆にいえば、共に考え、共に行動し、共に反省 することができる限りでの信頼関係を取り結ぶことができるならば、私たち は学生諸君を責任ある、常識ある社会人として送り出すことのできる素地を 作ったことになると思う O 4 2. (1 5 3).

(18) 「学士課程教育の構築に向けて」概観井面. そして、この経過の中で教養 d i eBildung15が 形 成 さ れ る も の と 信 じ る 。 教 養の形成は、個々の学習内容の差異によって左右されるものではなく、別の 言い方をすれば多様な学問領域を綜合的に渉猟しなければ得られないもので はなく、個別、特殊の学問においても教師との対話を通して十分に展開する ものであろう。例えば、教師の手取り足取りの指導の中で、ある瞬間聴櫨を 挽くコツが会得できたとき、その会得は人格の陶冶へとつながっているに違. i l d e nされたとき、 いないのである。なぜなら、まさしくー桐の茶碗が形成 b 自分自身もまた陶冶 b i l d e nされるからである。. l 現在、大学に必要とされているのは教職員の意識改革である O しかし、本稿では 筆者は教員の視点からしか陳述できな L、。職員の観点を含んだより包括的視点から の考察は、別途必要となるであろう。. 2 この概念も「我が国の高等教育の将来像」において提示されている。「幅広く深 い知識を身につけ、課題探求・解決能力を具え、持続可能な社会っくりを担いうる 人材」と規定されている。. 3 この概念は、平成 1 7年に中教審答申として出された「我が国の高等教育の将来 像」において提示されたものであり、そこでは次のように述べられている。「これ からの「知識基盤社会」においては、高等教育を含めた教育は、個人の人格の形成 の kでも、社会・経済・文化の発展・振興や国際競争力の確保等の国家戦略の上で も、極めて重要である。精神的文化的側面と物質的経済的側面の調和のとれた社会 を実現し、他者の文化(歴史・宗教・風俗習慣等を広く含む。)を理解・尊重して 他者とコミュニケーションをとることのできる力を持った個人を創造することが、 今後の教育には強く求められている。 J(中央教育審議会答申「我が国の高等教育の 将来像. はじめに J(平成 1 7年 1月 2 8日)より抜粋。). 4 I 三つの方針」は「構築」において初めて提示された概念ではなく、これもまた すでに「我が国の高等教育の将来像」の中で提言されている。「各大学は、入学者. (154). 4 1.

(19) 文学・芸術・文化. 2 1巻 l号. 2 0 0 9 .9. 受入方針(アドミッション・ポリシー)を明確にし、選抜 J ら一法の多様化や評価尺度 の多元化の観点を踏まえ、適切に入学者選抜を実施していく必要がある。また、教 育の実施や卒業認定・学位授与に関する方針(カリキュラム・ポリシーやディプロ マ・ポリシー)を明確にし、教育課程の改善や「出口管理」の強化を凶ることも求. 1我が国の高等教育の将来像」第 2章 3節) められる。 J(. 5 ここでは GPAが念頭に置かれている。 GPAについては後述する. O. 6 GPは GoodP r a c t i c eの略。 GP事業とは文部科学省による教育支援プログラム の一環であり、特色のある優れた教育システムに対して財政的支援が行われる。 「特色ある大学教育支援プログラム(特色 GP)J と「現代的教育ニーズ取組支援プ ログラム(現代 GP)J があったが、平成 2 0年度より、「質の高い大学教育推進プロ グラム(教育 GP)) に統合された。. 7 いわゆる生涯学習の可能性について、本答申はユネスコの提唱する「持続発展教 育」を例示している。「持続発展教育」とは、「地球的視野で考え、様々な課題を自 らの問題として捉え、身近なところから取り組み、持続可能な社会づくりの担い手. 1構築」第 3章第 1節)のことである O となるよう一人一人を育成する教育 J( 8 本答申は、学生の能力に関するに大学. 企業聞の情報の錯綜も指摘している。. すなわち、「企業は「即戦力」を望んでいる」という言説が広がり、学生の資格取 得などの就職対策に精力を傾ける大学が目立つようになったが、実際に多くの企業 が望んでいることは、むしろ汎用性のある某礎的能力であり、就職後直ちに業務の 役に立つ「即戦力」は、主として中途採用者に対する要請であると言うことであ る 。. 9 PDCAサイクルは経営学の概念であり、生産管理や品質管理などの管理業務を効 1an(計画 )-Do ( 実 率的に実行するためのマネジメントサイクルの一つである o P 行)-Check(点検・評価)-Act(処置・改善)の 4段階を順次経過し、一周したら 最後の Actを次の PDCAサイクルにつなげ、継続的に業務改善をしていくことを 目的とする。. 1 0 GPAとは、アメリカ等の大学で導入されている学生の成績評価のためのシステ. 4 0. (1 5 5 ).

(20) 「学. 1 :課 程 教 育 の 構 築 に 向 け て 」 概 観 井 面. ムである O 現在、近畿大学では、成績を優 ( 8 0~ 1 0 0点)、良 ( 7 0~ 7 9 )、可 ( 6 0 ~. 6 9 )、不可 ( 5 9以下)の 4段階で評価をしている。それに対して、 GPAは、不. 可を含めた成績と単位数とを連動させてグレード・ポイン卜に読み替え、成績全体 の平均を評価するシステムである o GPAは、一般的に以下の方法によって算出さ れる。 1.成績を 5段階に分け、それぞれをポイントに換算する. O. 一般的には、. 2 . ポイントとその科目の単位数を次の GPA計算式に当てはめる GPA~. 4XA il'l'価単位数 +3XB~半価単位数十 2XC評価単位数十 lXD評価単位数 +OXF評価単位数. 履修総単位数. 1 1 大急きで弁明しておかねばならないことは、太文字は、筆者がその概念なり用語 なりを重要視し、それを推進せねばならないと考えていることを意味するのではな いということである。単に「構築」のキーワードをなすものと判断し、それを明示 しようとしただけである. O. 1 2 1 5の分野は以下のとおりである O. 0文化と自然に関する知識 (KnowledgeofHumanCultureandNaturalWorld): ・科学 ( s c i e n c e ) -社会科学 ( s o c i a ls c i e n c e s ) -数学 ( mathematics) ・人文学 ( h u m a n i t i e s ). -芸術 ( a r t s ). 0知的、実践的スキル(IntellectualandPracticalS k i l l s ): (1 5 6 ). 3 9.

(21) 文学・芸術・文化. 2 1巻 l号. 2 0 0 9 .9. -文章と会話によるコミュニケーション ( w r i t t e nando r a lcommunication) ・探求的、批判的、創造的思考 ( i n q u i r y,c r i t i c a landc r e a t i v et h i n k i n g ) ・数量的リテラシー ( q u a n t i t a t i v el i t e r a c y ) ・情報リテラシーCin formationl i t e r a c y ) ・チームワーク (teamwork) ・学習の統合Cin t e g r a t i o no fl e a r n i n g ). 0個人的、社会的責任(IndividualandSocialResponsibility) ・市民としての責任とその遂行 ( c i v i lr e s p o n s i b i l i t yandengagement) ・倫理的思考 ( e t h i c a lr e a s o n i n g ) ・異文化に関する知識と活動Cin t e r c u l t u r a lknowledgeanda c t i o n s ) ・生涯教育への志向 ( p r o p e n s i t yf o rl i f e l o n gl e a r n i n g ) ( 1学士課程教育の構築に向けて」参考資料による). 1 3 2 0 0 4年の OECDの調査によれば、日本の大学生の修了率は 91%である o 2番目 は韓国とアイルランドの 83%。アメリカは 54%0 OECD各国平均は 71%である O. 1 4 K r i t i kはギリシア語の k r i n δ 「分ける」に由来する。すなわち、批判とは批判 の対象を要素に分割し、その要素と全体との連関を明らかにし、認識の真理性に照 らして全体を評価することである。したがって、批判からはドクマテッシュな判断 は締め出されている。批判がドグマを排した「様々の可能性の吟味」を意味するか ぎり、「様々の可能性」についての知識が絶対的に不足している筆者には、批判は 困難である。. 1 5 ドイツ語の動詞 b i l d e nは「形づくる、形成する Jなどの意味を持っと同時に 「陶冶する、教育する、琢磨する」などの怠味も持つ。したがって、その名詞形. Bildungは「造形、形成Jと同時に「教養、人間形成、教育」など、の意味を持つ。. 3 8. (157).

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参照

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