宇宙マイクロ波背景放射温度揺らぎの観測的研究
著者
服部 誠
宇宙マイクロ波背景放射の温度揺らぎの
観測的研究
課題番号11440060平成11年度∼平成12年度
科学研究費補助金(基盤研究(B)(2))研究成東報告書
平成13年3月
研究代表者 服部誠
(東北大学理学部助手) Iはしがき
(研究目的) :宇宙マイクロ波背景放射(以下、 CMB)は、ピックバン宇宙論を強力に 支える観測量である。 NASAの打ち上げたCMB観測衛星(COBE)により、ビックバ ン宇宙論の予言通りCMBの温度異方性が発見された。この発見は、銀河や銀河団等 宇宙に存在する構造の起源に対する我々の理解の基本的正しさを証明した非常に画期 的なものであった。その後の理論的研究により、 CMB温度其方性の観測が宇宙の幾何 学(閉じているのか、平坦か、開いているか)を決める宇宙の密度パラメータ等宇宙論 パラメータを測定する上で非常に優れた観測手段であることが明らかになった。更に cMB偏光の観測により実験室実験では到達不可能な程高いエネルギー状態にあった宇 宙初期に起きたと考えられている密度揺らぎの生成の物理過程を直接検証しうる事が明 らかに●なった。 coBEの成功と理論的研究の進展に刺激されて欧米ではより高い空間分解能、より 高い感度でのCMB観測を目指した観測プロジェクトが多数進行中である。昨年には二 つのグループが大気球を用いたCMB温度揺らぎ観測により宇宙の幾何学が平坦である 事を決定つける観測結果を出した。今年7月には、 CMB温度揺らぎ観測専用人工衛星 MAPがNASAにより打ち上げられCOBEより格段に高い空間分解能での全天観測が 行なわれる予定である。 ESAにより2007年打ち上げ予定のCMB温度揺らぎ観測専用 人工衛星PLANCKは、 CMB偏光の空間スペクトルの詳細測定が可能である程高い感 度の検出器を搭載する予定である。現在、 PLANCKの打ち上げ前にCMB偏光の世界 初検出及びCMB偏光の空間スペクトルの詳細測定を目指した地上観測計画が多数動い ている。 本研究の目的は、 CMBの温度異方性及び偏光の観測を本格的に目指す日本のグルー プを立ち上げ、 CMB観測を目的としたオリジナルな観測装置を開発することである0 この研究グループの中心となる東北大学天文学教室に、この研究に必要な最低限の設 備を備えた実験室を作ることが第-の目的である。本研究援助期間中、 CMB観測を目 指して以下の二つのオリジナルなミリ波サブミリ波観測装置の開発研究を行う. -つは Martin 良 Puplett型フーリエ分光器の開口合成への応用である。フーリエ分光器の開 口合成への応用は、飛躍的に高い空間分解能が得られる究極のサブミリ波観測装置と して注目されている技術である。例えば、 NASAのグループによりこの技術を応用し たスペースを利用した計画が立案されている。しかし、応用の為の具体的な研究が殆ん ど進んでいないのが現状である。特に半透鏡に偏光子であるワイヤーグリッドを用い るMartin-Puplett型フーリエ分光器の開口合成への応用は原理の考察もなされておら ず全く世界初の試みである。この装置には、 CMB観測に適した以下のような特徴があ る。温度ゆらぎを干渉シグナルとして測定する為、大気の揺らぎ等システマテイツタな ノイズに強い。干渉計の視野は帯域巾でリミットされるが、この装置では可動鏡のスト ロークを伸ばすだけでスペクトル分解能を上げられる為容易に視野を広げる事ができ る。広帯域での観測が可能である。ポロメータや超伝導直接検出器を干渉計の焦点面検出器として使用する事ができる為、高い感度を容易に得る事ができる。二つの小口径の ミラーの間隔を大きくする事で空間分解能を上げられる為小型で軽量な装置で高い空 間分解能の装置を組み上げる事ができる。もう一つは、低ノイズミリ波サブミリ波検出 器であるポロメータ及び二つの超伝導物質で絶縁体を挟んだ素子(SIS)を用いたSIS 直接検出器の開発である。ポロメータは、既に基礎開発が完了している検出器であり、 CMB温度異方性観測に必要な感度を達成できる物が既に存在している。従って、既存 の素子を使って感度、安定性を評価し我々の観測装置に最適化したシステムを組み上げ る事が主な開発の目的となる。一方、 SIS直接検出器は開発途上の検出器であり、ミリ 波サブミリ波検出器として実用化する為の基礎開発が研究の目的となる。 (これまでの経過) :分担者の二間瀬敏史は、平成9年度から平成11年度の期間''銀河 団による新しい重カレンズ現象とそれを用いた宇宙定数の測定"という研究課蓮で科学 研究費・基盤研究C (代表者二間瀬敏史)から総額290万円の研究費を受けた。この 研究の一貫として二間瀬は、初期宇宙での物理現象をマイクロ波背景放射(CMB)の 温度異方性という観測量でどの様な形で検証可能であるかを調べた。その過程でCMB 温度異方性の観測的研究の重要性を認識し、日本に於いても是非この観測に本格的に 取り組むグループを作るべきであると考えるように至った。分担者の松尾宏は、平成 9年度から平成10年度の間"サブミリ波帯SISフォトン検出器の開発"という研究課題 で科学研究費・基盤研究B (代表者松尾宏)から総額810万円の研究費を受けた。こ の研究で松尾達は、 SISビデオ検出器とSISフォトン検出器の二つの超伝導直接検出器 でサブミリ波検出器を構築した。特にビデオ検出器は1.5Kとかなり高い温度でNEP が10-14W/Jii;という低いノイズレベルまで達成出来ることをしめした。又、松尾は、 平成3年度"サブミリ波帯高感度ポロメータアレイの開発''という研究課題で島津科学 技術振興財団(代表者松尾宏)から稔額100万円の研究費を受け、ミリ波検出器用ポ ロメータアレイを製作した。これは現在、野辺山宇宙電波観測所の4 5 m望遠鏡に搭 載され活躍中である。服部は、平成8年度から平成9年度の間"ダークレンズ探査"と いう研究課題で山田科学振興財団(代表者服部誠)から総額160万円の研究費を受け、 平成9年度から平成10年度の間"銀河団質量分布の進化の解明"という研究課題で科 学研究費・奨励A (代表者服部誠:課題番号09740169)から給額200万円の研究費を 受けた。これらの研究の過程で服部は、 CMBが銀河団中の高温電子によって逆コンプ トン散乱を受けることでCMB温度異方性を生じる効果(スニヤエフ=ゼルドピッチ 効果)のミリ波(野辺山宇宙電波観測所の4 5m鏡を使用)からサブミリ波(ハワイ島 マウナケア山頂のJCMT搭載ポロメータアレイSCUBA使用)までの多波長観測を行 なった。服部は、銀河団質量分布の進化の観測的研究から宇宙論的情報を引き出すこと に興味もって研究を進めてきた。この観測の特にサブミリ波領域での成功は、宇宙論的 パラメータの測定方法としてこれまでとは全く独立な方法で且つよりシツカリした土台 の上に立つCMB温度異方性の観測に乗り出す決心を服部に与える契機になった。 この様な三人の興味が結び付いて本研究計画が生まれた。しかし、現在東北大学天 文学教室には、ミリ波サブミリ波での検出器を開発、評価する設備も経験も皆無であ
り、単独で実験グループを立ち上げるのは困難である。そこでミリ波サブミリ波での通 信の分野で世界的権威である東北大学電気通信研究所水野暗司教授の協力を仰ぎ設備 の使用からノウハウの伝授までバックアップしてもらうことになった。 松尾と服部は平成10年度に数回に渡り関連分野の研究者を仙台に集めて議論を重ね どのような切口でこの分野に乗り出して行くのがよいか計画の具体化を計った。その中 で、これからゼロからスタートすものであれば独創的な観測装置の開発から始めるのが よいであろうという方針が打ち出された。具体的なテーマとして、 Martin-Puplett型 フーリエ分光器を開口合成に応用した装置の開発を行ないCMB観測を目指すという アイデアが松尾により出された。この装置はポロメータや超伝導直接検出器を干渉計の 焦点面検出器として使用する事ができる為、 cMB観測にとって十分な高い感度を容易 に得る事ができる。又、干渉計である為大きなミラーを用いなくとも高い空間分解能を える事ができる。そこでこの装置を用いて既存のCMB観測計画が目指す空間分解能よ り更に高い空間分解能で観測できる装置を作る事で特徴を出そうと考えた。又、その会 合で分担者の一人である科学計測研究所の柴田と知り合い、現在技術指導や装置の利 用等、実質的な様々なサポートを受けて研究を推進している。検出器に関しては、ポロ メータアレイは既存の技術を応用することで目標の感度が達成できることを確認した。 しかし、検出器として安定性に欠けること、 2次元アレイ化が困難なこと、読みだしス ピードが遅いこと等の特性から既に飽和状態の技術であり今後の飛躍的発展が望めな い。一方、 sIS直接検出器は、原理的にポロメータを上回る高い感度を実現しうる夢の 技術であり、安定性がよく、 2次元アレイ化が容易で、読みだしスピードが桁違いに早 いなど今後の飛躍的発展が期待しうる技術である。そこでポロメータ検出器作りと並行 してCMB温度異方性観測に最適化したSIS直接検出器の開発を行なうことにした。 この研究成果報告書には、平成11年度、 12年度に出版された研究代表者、研究分担 者による論文等の内この研究に直接関係ある物を盛り込んだ。 Martin 良 Puplett型フー リエ分光器の開口合成への応用、 sIS直接検出器の開発に関する解説は、それぞれ大田 氏、有書氏が東北大学大学院理学研究科天文学専攻に提出した平成12年度修士論文か ら抜粋し部分的に服部が手を加えた物である。又、ポロメータの組み上げと性能評価は 東北大学大学院理学研究科天文学専攻修士課程1年の浜地氏が行なった。本研究の具体 的進展は彼女等三人の努力に負う所が非常に大きい。この場で改めて謝意を表したい。
研究代表者 服部誠
研究組織
研究代表者 服部誠 研究分担者 二間瀬敏史 水野暗司 柴田行男松尾宏
研究協力者 森川浩司 小松英一郎大田泉
有書誠一郎 浜地芳宏 J.M.Miralles E. P ointecouteau研究経費
平成11年度 10,800千円 平成12年度 1,500千円 計 12,300千円 (東北大学理学部助手) (東北大学理学部教授) (東北大学電気通信研究所教授) (東北大学科学計測研究所助手) (国立天文台天文機器開発実験センター助教授) (東北大学理学部大学院生) (東北大学理学部大学院生) (東北大学理学部大学院生) ` (東北大学理学部大学院生) (東北大学理学部大学院生) (東北大学理学部日本学術振興会外国人特別研究員) (東北大学理学部日本学術振興会外国人特別研究員)研究発表
(1)学術論文
学会誌等
1・ Makoto Hattori, Jean-Pa叫Kneib, Nobuyoshi Makino, "GravitationalLensing in
clllSter8 0f galaxies", Progress of TheoreticalPhysics Supplement 133,1-51 , 1999 2. Eiichiro Komatsu, Tetsu Kitayama, Yasushi Suto, Makoto Hattori,
Ryohei Kawabe, Hiroshi Ma.tsuo, Sabine Schindler, Kohji Yoshikawa,
"Submillimeter detection of the Sunyaev-Zel'dovich eGect
toward the most luminous Ⅹ-ray Cluster at I - 0.45",
AstrophysicalJournalLetters 516,Ll-L4, 1999
3・. Kohji Molikawa.Makoto Hattori, Jean-PaulKneib, Ka21uyuki Yamashita, "The
giant l血ous arc statistics. ⅠⅠ. SpheriCallens models based on ROSAT HRI data",
Astronomy &Astrophysics 351, 413-432, 1999
4. NaomiOta, KaRuhisa Mitsuda, Makoto Hattori, Tatehiro Mihara, "Detection of
lron Emission Lines ffom the Galaxy Cluster hcluding the Radio Galaxy 3C 220.1 at Z-0.62",AstrophysicalJournal530, 172-176, 2000
5. Makoto Hattori, Keiichi Umetsu, "A possible route to spontaneous reduction of the heat conductivity by a temperature gradient driven instability
in electron-ion plasmas"AstrophysicalJournal533, 84-94, 2000
6. HironoriMatsumoto, Takeshi Go Tsuru, Yasushi Fukazawa, Mal(oto Hattori, David S. Davis, "Gas, Iron, and GravitationalMass in Galaxy Clusters:
The GeneralLack of Cluster Evolution a.t 2i i 1.0", Publications of AstronomiCal
Sodety of Japan 52, 153-160, 2000
7. G.Soucai1, N.Ota, H.Bahringer, 0.CZK)Ske, M.Ha,ttori, Y.Mellier, "X-ray observations
and mass deteminations in the cluster of galaxies CIOO24+17", Astronomy
&Astrophysics 355, 433-442, 2000
8. T.Yamada, S.Yamazaki, M.Hattori, G.Soucai1, ∫.-P.Kneib, "Emission-line
properties of MG 2016+112: A luminous obscured quasar at highredshift",
Astronomy & Astrophysics 367, 51-58, 2001
9・ G・Soucai1, J・-P・Kneib, A・0・Jaunsen, J・Hjorth, M・Hattori, T.Yamada,, "Spectroscopic confirmation of a cluster of galaxies at z-1 in thefield of the gravitationallens
MG2016+112", Astronomy 良 AstrophySicS 367, 741-747, 2001
10・ E・Komatsu, H・Matsuo, T・Kitayama, M.Hattori, R.Kawabe, K.Kolm0, N.Nari0,
S・Schindler) Y・Suto) K・Yoshikawal化Substmctures Revealed by the
Sunyaev-Zel'dovidh Effect a・t 150 GHz in a High-Resolution Map of RX J1347-1145",
国際会議集録
11・ M・Hattori, E・Komatsu, "The SZ effect throughthe cooling Bow cluster",
Astronomische Nachridten, 320, No.4, 289-290, 199912・ T・Mihara, K・Nogami, M・Hattori, K.Mitsuda, N.Ota, "X-ray detection from
the distant cluster of galaxies around 3CR184㌔Astronomische Nachrichten,
320, No.4, 293-294, 1999
13・ N・Ota, K.Mitsuda, M.Hattori, T.Mihara, "Detection of lron emission line from the galaxy cluster including the distant radio galaxy 3C220・la,
Astronomische Nacllrichten, 320, No.4, 295-296, 1999
14・ K・Umetsu, M・Hattori, "On the origin of the metallicity gradient
in clusters of galaxies仏I Advances in Space Reseaxch, 25, Issue 3-4, 617-620, 2000
15・ Y・Suto) TIKitayama) E・Komatsu) M・Hattoril R・Ka,wabe, H・Matsuo, S・Schindler, K・Yoshikawa, "CosmologiCallmplications of Galaxy Clusters in X-Ray, Millimeter, and Submillimeter Bands", AdvancesinSpace Reseaxch, 25,
IsSue 3-4, 771-780, 2000
16. N.Ota, K.MitSuda, M.Hattori, T.Mihara, "Detection of Iron Emission Line
かom the Galaxy Cluster Including the Distant Radio Galaxy 3C220.1 ",
Advances in Space Research, 25, Issue 3-4, 789-792, 2000
17. K.Morikawa, M.Hattori, "Galaxy cluster masSeSかom
arc statistics based on ROSAT/HRI data", Advances in Space Research,
25, ISSue 3-4, 793-796, 2000
18・ M・Hattori, I・S.Ohta, H.MatsuoI Y.Shibata, "The Application of MP-FTS to Aperture Synthesis", ISAS Report SP 14, 352-360, 2000
19. H・Matsuo, M.Takeda, T.Noguchi, S.Ariyoshi, H.Aknhori,
"Development of Submillimer-wave Camera for Atacama Submillimeter Telescope Experiment ",Advanced TeclmOlogy MMW,Radio, and
Terahertz Telescopes Proc.SPIE 4015, 228-236, 2000
20・ H・Matsuo, S・Ariyoshi, H.Akahori, M.Takeda and T.Noguchi,
"Development of Submillimer-wave Camera.for Atacama Submillimeter Telescope Experiment", IEEE bans. Appl. Supercond. in press, 2000
和文の解説文等
(2)口頭発表
2000年春日本天文学会(東京大学)平成12年4月5日
1.服部誠(東北大学理学部)他
「Martin & Puplett型murier分光器の相互干渉計への応用Ⅰ. CMB観測計画」
2.大田泉(東北大学理学部)他
「Martin & Puplett塑murier分光器の相互干渉計への応用 ⅠⅠ原理及び実験室での実証実験結果」
2000年秋日本天文学会(群馬天文台)平成12年10月6日
3.有書誠一郎(東北大学理学部)他
‥ 「ASTE搭載サブミリ波カメラの開発ⅠI」
4.大田泉(東北大学理学部)他
「Martin & Puplett型Forier分光器の開口合成への応用
∼実験室実証実験経過報告∼ 」
2001年春日本天文学会(千葉大学)平成13年3月27日
5.大田泉(東北大学理学部)他
「Martin & Puplett型Fourier分光器の開口合成への応用・偏光観測の可能性」
6.服部誠(東北大学理学部)他
「三Kプロジェクト:現状と今後」
(3)学位論文
修士論文
1.大田泉(東北大学大学院理学研究科)平成12年度
「Martin and Puplett型Fouriel・分光器の開口合成型天体干渉計への応用」
2.有書誠一郎(東北大学大学院理学研究科)平成12年度
「A S T E (Atacama Sub血llimeter Telescope Experiment)
搭載サブミリ波カメラの開発」 博士論文
3.森川浩司(東北大学大学院理学研究科)平成12年度
目次
はしがき 研究組織 研究経費 研究発表リスト 1 研究成果 1-1 研究成果の概要 1-2 大田修論より 1-3 有書修論より 1-4 浜地芳宏 2 添付論文 2-1 学術論文 211-1 M.lIattori etal. 211-2 E.Eomatsu etal. 3 添付書類 3-1-1 日本分光技研 3-1-2 日本分光技研 3-1-3 日本分光技研 3-2 ⅠⅩ技研Martin & PllPlett型Fuorier分光器の開口合成への応用
SISサブミリ波カメラの開発
天体観測用ミリ波ポロメータ検出器開発中間報告
The Application of MP-FTS to Aperture Synthesis
Substructures Revealed by the SunyaevIZel'dovich
Effect at 150GIIz in a High-Resolution Map of
RX J1347_1145
二入力Martin & Puplett塑morier分光静仕様及び
取り扱い説明書
二入力Martin & Puplett型Fuorier分光器本体図面 二入力Martin & Puplett型Fuorier分光器
制御システム回路図 ¢700ヘリオスタット図面 l 1 3 3 3 6 2 1 7 7 2 2 1 1 135 141
1.研究成果
研究成果の概要
本科研費の援助によりミリ波サブミリ波装置開発実験に必要な装備を整える事ができ、 東北大学天文教室にCMB観測を酌旨したミリ波サブミリ波装置開発実験室を立ち上げ
る事が出来た.そこではまず、 Martin & Puplett塾フーリエ分光器を開口合成に応用 する為の基礎実験を行なった。この実験での経験を元にMartin & Puplett型フーリエ 分光券を開口合成に応用する為に改良した二入力型Martin & Puplett型フーリエ分光
器を設計し、本科研費を用いて製作した。この装置は、持ち運びの利便性、全光路長を 出来るだけ短くする事を念頭において最大限コンパクトになるように設計されている。 この琴置は平成11年度中に完成し、平成12年度はこの装置を用いた実験室での基礎 実験を行なった。実験を進める中、この装置を用いて四つのストークスパラメータの天 球上での分布を広帯域で測定可能であることを理論的に示し論文として発表した。これ を用いた実験室での実験を行ない、理論的考察通り偏光を表す四つのストークスパラ メータの測定が出来る事を示した。 一方検出器の開発は、国立天文台天文機器開発実験センターの設備を用いて松尾が 中心になって行なった。屋外での観測で使用する為のポロメータ検出器の組み上げと性 能評価を行なった。太陽等明るい天体の観測の為のポロメータの組み上げと性能評価は 平成12年度中に完了した。大気放射の揺らぎにより制限されるレベルまで感度を上げ たポロメータの組み上げを平成12年度から開始している。これには、二入力型Martin 良 Puplett型フーリエ分光器に最適化した設計を施してある。並行してSIS直接検出器 のノイズ測定を行ない、 NEP- 10-18W/痛という驚異的に低いノイズレベルまで到 達しうる事を実証した。 SIS直接検出器とミリ波サブミリ波を結合させ、ミリ波サブミ リ波を効率良く吸収させる為に特殊なアンテナを設計し現在製作中である。又、アレイ 化の為の基本設計を行ない、それに基づき3×3のアレイを現在製作中である。 二入力型Martin & Puplett型フーリエ分光器を、屋外での天体観測に応用する為の 装置の開発も行なってきた。二入力型フーリエ分光器は鉛直上方からきた波面を二つの 入射窓で波面分割して捕らえるように設計されているo従って、天体を追尾し且つ常に 天体からの光を鉛直真上からこの装置に導く様な装置が必要である。更に波面分割す る時の最大ベースライン間隔を最低でも5 0 cmはとる必要がある為、有効ビーム径が 5 0 cmの平行ビームが確保出来るものが必要である。この要求を満たす装置として◎ 700の二枚の平面鏡を組み合わせたヘリオスタットを我々の使用目的に最適化し改良し た物を平成12年度に設計したoこの設計に基づき平成12年度国立天文台共同開発研 究費をあててこれを現在製作中である。 今後の展望 このように平成13年度には屋外での観測が開始できる所まで開発準備が進んでいる。 平成13年度からは、これらを用いた試験観測の結果を元にCMB観測に最適化した観 - 1_
測装置の開発を平成14年度中の完成を目指して行なっていく段階に入る。一方、これま でに開発して来た装置を用いた観測でも宇宙論的に意義の高い成果が期待できる。我々 のシステムの視野は他のミリ波サブミリ波観測装置に比べて圧倒的に大きいという特徴 を生かして、近傍の巨大銀河団であるカミの毛座銀河団のスニヤエフ=ゼルドピッチ 効果(SZ効果)の観測を行なう事を計画している。この銀河団は様々な波長で徹底的 に観測されているが、既存の電波望遠鏡の視野と比べて圧倒的に大きい為SZ効果の観 測がまだなされていない。 SZ効果の観測が行なわれれば、 SZとⅩ線の観測から求めた ハッブル定数と距離梯子を用いて求められたハッブル定数を直接比較する事が可能にな る等、様々は成果が期待できる。検出効率等がほぼ予定通りであれば、現在開発中の高 感度ポロメータを用いれば地上観測で十分検出可能である.カ手の毛座銀河団は春の天 体であるので平成14年春の観測実施を目指して計画を進めていきたいと考えている。
-2-Figure 1:相互相関モードでの実験の様子
:3-TOUR : Tohoku University Repository コメント・シート 本報告書収録の学術雑誌等発表論文は本ファイルに登録しておりません。なお、このうち東北大学 在籍の研究者の論文で、かつ、出版社等から著作権の許諾が得られた論文は、個別にTOUR に登録 しております。 TOUR http://ir.library.tohoku.ac.jp/