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明治期フランス小説翻訳の諸問題ーモーパッサンの短篇小説と話法ー

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Academic year: 2021

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明治期 フランス小説翻訳の諸問題

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モーパ ッサ ンの短篇小説

と話法-永 瀬 春 男 l.問題の所在 明治の開国以降、欧米の文物 は急速 に我 が国に移入 され 、 日常生活か ら思想 ・文化 ・技 術等 々の隅々に至 るまで甚大な影響 を及 ぼ した。文学の領域 も無論例外 ではな く、詩歌 ・ 小説 ・戯 曲等各 ジャンル にお いて、無数 の作品が- 多 くは翻訳 を とお して- 移入 され、 日本の文学に不可逆的で決 定的な変容 を もた ら した。 その影 響 は、思潮 、作風 、描法 、人 物造形 な ど多岐 にわた るが、そ うした局面については比較 文学的観 点か らす る多 くの研 究 が積み重ね られてい る。筆者 は少 し視点 を変え、人称や話法 といった表現 の問題 について、 主にフランスの小説作品を題材 に検討 してみたい と考 えてい る。 当面 はモーパ ッサ ン(Guy deMaupassant,1850・1893)の短編小説 の翻訳 を、明治期 を中心 に とりあげ、自由間接話法 の処理 に的を絞 って考察 してみたい。 自由間接話法は、19世紀以降の欧米小説 において普通 に見 られ る手法であるが、 これ に 類す る表現技法 は、 日本の小説作品にお いて も今 日ではす っか り定着 した感 がある。 いま 「これ に類す る」 とい う制限 を付加 す るのは、欧米 の言語 と 日本語 のあいだに当然存在す る差異お よび 日本語 の もつ特性 のゆえに、端的 に同 じ技法 とい うの をた め らわせ る微妙 な 問題 があ る と思 われ るか らで ある。筆者 の検討 も緒 に就 いた ばか りであ り、 ここに示すの はいまだ答 えのない見取 り図 にす ぎない。 まず、 自由間接話法の移入 に関 して、次のよ うな仮説 と課題 を提起 してみたい。 1) 自由間接話法 は、欧米の翻訳小説 を通 して移植 され た と思われ る。 2)自由間接話法 は当初 は翻訳者 の意識 にのぼっていなかった。 では、いつ ごろか ら 正 しく処理 され るよ うになったのであろ うか。 3) また、いつ ごろか ら日本 の小説 に使用 され始 め、次第 に定着 したのであろ うか。 これ らの課題 をモーパ ッサ ンの短編小説 を材料 に検討 してみ る と、問題 は決 して単純で ないことがす ぐに理解 されて くる。 それ をあ らか じめ提示 してお く。 4)仏語原文か らの翻訳 か英訳か らの重訳 か、決定 しがたい場合が多い。 5)異なる言語体系 (日本語)-の翻訳は、話法の判 定 に微妙 な問題 を惹起す る。 6)む しろ 日本語 の特性 について反省 を誘 う点が多い。 4) ∼ 6)の3点 について少 し説 明 を加 えてお く。原文か ら直接翻訳 された ものか、英 訳 か らの重訳か とい う問題 は、筆者 の調査 が不十分 なため もあるが、断定 Lがたい場合 も ある。重訳 の場合 には、英訳 にお ける処理 を確認 しない と、分析結果 に暖昧 さがつ きま と う恐れがある。 ただ し、仏英 両言語 の近 さのゆえに、 この問題 は さほ ど深刻でないか も し れ ない。む しろ 日本語訳の処理が、 自由間接話法 を意識 した上 の ものか どうか判断がむず か しく、明快 な結論 に至 らないケー スの多い点が 目下の障害 とな ってい る。 これは仏語 の

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話 法 (直接 話法 、間接 話法 、 自由間接話法) が、人称代名 詞 、動詞 の法 と時制 、 ギュ メ記 号等 、種 々の指標 の存在 に よって識 別 しやす いのに比べ 、 日本語 には こ うした指標 が きわ めて希薄 だ とい う事情 が あ るた めで あ る。 いわ ば 日本語 の融通無碍ぶ りが、翻訳文の識別 を難 しくす る局面 に多 々出会 うのであ る。 このた め今 回の報 告で は結論 めいた こ とは述 べ ず 、調査結果 の ごく一部 を提示す るに とどめてお きたい。 2.書誌 まず 、筆者 が参照 した(1)仏 語原 文、(2)明治期翻訳 の出典 、(3)現代 の標準的 な邦訳 、お よ び(4)自由間接話法 を最初 に検討対象 と した研 究論文 を示 してお くC

(1)Maupassant,Coniesetnouvelles,2vol.,Gallimard,<<Biblioth占quedelaP16iade'', 1989[19741],1988[197911. (2-1)明治翻訳文学全集 <新 聞雑誌編 > 31:モーパ ッサ ン集 1、大空社 、1997 (2・2)明治翻訳文学全集 <新 聞雑誌編 > 32:モーパ ッサ ン集 2、大空社、1999 (2-3)大正期翻訳文学 画像集成 <雑誌編 > 第 1期 、 5 :モーパ ッサ ン集 、ナ ダ出版 セ ンタ ー (CD-ROM 版) (3)モーパ ッサ ン短編集 、青柳瑞穂訳、新潮文庫、全 3巻、昭和 46年(1971年)初刊

(4) Bailly (Charles),<< Le style indirect libre en fran9alS mOderne '', Gezmanl'sch-RomanlscheMoDatSSChn'ft,IV,1912,pp.549-556,pp.597・606.[明治45年 、 大正元年] 3.「首か ざ り」の明治期の翻訳 紙幅 の関係 もあ り、以 下で は よ く知 られ た短編 「首か ざ り」 1篇 を検討対象 とす る。 こ の作 品 を選択す るのは、明治期 の翻訳 が相対的 に多いためであ る。原題 はくくLaParure))で、 書誌(1)のプ レイヤ ッ ド叢書版 第 1巻 に収録 され てい る1。仏語原 文の頁数 は この版 の もので ある。 青柳瑞穂 に よる標 準 的 な現代語訳 はタイ トル を 「首 か ざ り」 と し、(3)の新潮文庫版 第2巻 に収 め られ てい る。主 な登場人物 は女主人公 の MathildeLoiselとその夫、お よび友 人のMmeForestier(Jeanne)の3人 で ある。 3人称客観体 の語 りに よる最 もあ りふれ た形 式 の作品である。

この作品には、明治期 の翻訳 として、次の6種 が知 られ てい る2。 この うち未調査 の(e)と (i)を除 き、残 り4種 については、表題 、訳者 、初出、翻訳 上 の特徴 な ど概略 を記 してお く。 また比較対照 のた め、昭和初期 の翻訳(Ⅹ)をあげてお く。

1初出お よび再録の経過は以下の通 り。LeGaulols,17fivrier1884;LeVoleu};19juin1884;

LBVj'epopzllal'Lle,7mai1885,'ADDalespoll'tl'qlLeSetlitte'ml'LleS,6octobre1889;Petl't Pan'sl'en,lesupp16ment,14d6cembre1890;ConiesdujouL・etdelaDuL't,1885.

2なお、英訳 として次の短編集があるが、未調査である。 TheOddNumber.TLirteenTalesLy GuydeMaupBSSaDt,translatedbyJonathanSturges,Harper&Brothers,N.Y./London, 1889.これには- ン リー ・ジェームズが序文を寄せてお り、日本ではラフカデ ィオ ・ハー ンが東 京文科大学の学生上田敏 らに紹介 し、上田は明治29年頃 これ を入手 した と推測 されている (上 記書誌の(2)、モーパ ッサ ン集1、中村良雄解説 ;新潮世界文学 22、杉捷夫解説な どによる)0

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(a)明治期翻訳 1 :「首輪」築地庵 主人(人見一太郎)釈 (大空社版 、モーパ ッサ ン集1所収) 初 出 :『家庭雑誌』、明治30(1898)年2月 10日、25日 原書 :原語か らの翻訳か ? (中林 良雄 「『大陸文学』流行 の位相一西洋 文学受容 史のため に (七)」、モーパ ッサ ン集 1、巻末解説、p.354による) 登場人物 :大井花子、力、芳野夫人 特徴 :口語訳。 主人公 (「妾」)に よる1人称の語 りに変更、翻案 に近い。 3人称代名詞 :な し。 「良人」「(芳野)夫人」な ど。 (b)明治期翻訳 2 :「頚環」小 日向是因 (定次郎)釈 (モーパ ッサ ン集1) 初出 :『帝国文筆』、明治34(1902)年7月 原書 :英訳か らの重訳か 登場人物 :ろあぜ る夫人 まちるど、良人、ふおれす ちえ夫人 じあむぬ 特徴 :地の文は文語訳。 3人称代名詞 :「彼女」 を多用、 「彼」 もあ り。 (C)明治期翻訳3 :「まやか し物」香堂訳 (モーパ ッサ ン集2) 初 出 :『慶応義塾学報』、明治37(1905)年9月 原書 :英訳か らの重訳か 登場人物 :村井町子、良人、堀 田夫人蝶 (お蝶) 特徴 :口語訳 3人称代名詞 :「彼女」 を多用 (d)明治期翻訳 4 :「頚飾」前 田古水訳 (モーパ ッサ ン集2) 初 出 :『婦人界』、明治37(1905)年 12月 原書 :未調査 登場人物 :青 山牧、青 山遜 (ゆづ る)、根岸房子 特徴 :口語訳。 「前 田古水意詩」 とあ り、訳者 の補足多 し。 3人称代名詞 :な し。名前で呼ぶ。 (e)明治期翻訳5 :「襟留」八重子訳 初出 :『紅首荷」]、明治40(1908)年 1月-2月 未調査 (i)明治期翻訳6 :「頚飾」前 田晃訳 初出 :『短篇十種モ クバ ツサ ン集』、明治44(1912)年 2月、博文館 未調査 注記 :下記(Ⅹ)『モ ウパ ッサ ン短篇集 ・頚飾外七篇』、岩波文庫 、昭和8(1933)年の旧訳。

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玩)昭和期翻訳1 :「頚飾」前 田晃訳 (『モ ウパ ッサ ン短篇集 ・頚飾外七篇』、岩波文庫、昭 和8(1933)午) 注記 :「緒言」に次の記述 あ り。 「この集 の巻頭 においた 『頚飾』の如 きは、わた しが早大 在学 中、今か ら殆 ど三十年近 くも前 に【翻訳 を]や った もので、わた しの翻講 の最初 の もの だ といって もい ゝものである。- で、今度、 これ をこの文庫 に収 めるに就ては、各篇共 に再磨原作 と照合 した上、出来 るだけ文髄 な どをも統一 して完壁の ものに しよ うと努 めた。 (昭和七年十二月八 日。)」 (下線 は引用者) 4, 自由間接話法の処理 (資料提示) 「首か ざ り」には 自由間接 話法 が5か所で用い られ てい る。 まず原文 と現代語訳 (青柳 釈)を掲 げ、次に明治期 の翻訳(a)∼(d)、お よび昭和初期 の翻訳k)を年代順 に示す。ただ し、 訳文の 旧字 旧かなは ワープ ロで正確 に再現できないため、変更せ ざるをえない個所 が少な か らず あった。振 り仮名 につ いて も原則 として省略 した。 圏点、今 日では用 い られ ない記 号等 も、概ね省略 した。訳文の後 の ( )は筆者の補足説 明である。

1)Loiselposs6daitdix・huitmillefrancsqueluiavaitlaiss68sonP占re.IlemDrunteraitle

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I,p.1204) 青柳訳 :ロワゼル には、父親 のの こ した金 として一万八千 フランあった.残 りは借 りるよ りはかなかった。 (a)我 良人はト ・・・]都合千五百園は財産 と して持 って居 ます、其外 は他 よ り出来 る丈 の融通 を して借入れ る決心 を しま した (翻訳 は ヒロイ ンによる1人称 の語 りに変更 してある) (b)ろあぜ るは父の遺産 の一万八千ふ らんは手 もつ けで有せ るな りき。 され ば、彼はその 鯨 を借 らざるを得 ざ りき。 (C)父か ら三千園は遺 されて持 て居 るが、鯨の三千園は人か ら融通せねばな らぬ。 (d)遜 (ゆづ る)は亡父か ら譲 られた一帯八千フランクの遺産 をそっ くり投げ出 して、基空 隙 の足 らぬ庭 は一一時借入 る ゝこ ととした。 (Ⅹ)ロアゼル は父が遺 した金 を一帯八千フラン持ってゐた。彼 はその鯨 を借 りよ うとした。

2)Ellen'ouvritpaslaboite,cequeredoutaitsonamie.Sielles'6taital)erCuedela substitution.qu'aurait-ellepens6?quaur) ait-elledit?Nel'aurait-ellepasprlSel30ur unevoleuse?(1bl'd.)

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とは しなかった。 も し、替 え玉で あるこ とに気づいた ら、彼 女 はなん と思 うだ ろ う?なん と言 うだ ろ う?自分 を泥棒 と思 うか も しれない じゃないか ? (a)若 し身代 りの品だ と知 ったな らば私 を何 といったで しょ うか (ヒロイ ンによる 1人称 の 語 りに変更) (b)その替玉な るを看破 した らむ には、彼女は如何 に思ひな した りけむ。何事 をや言ひ けむ。 或 はろあぜ る夫人 を以て盗賊 にも擬 した りしな らむ ? (e)ト ・・・]お町の心配 は、箱 を開けて調べ られ る事で、若 しや替玉 と云ふ事 に気 が付かれ た ら、何 うLや う、盗賊 だなぞ と云はれ は しまいか。 (d)お牧 は心に恐怖 を抱 いて、もし房子 さんが替玉 したのに気がついたな ら何 とお思な さる であろ うか、何 と仰有 るだ ら うか知 ら、私 を盗人 と疑 ぐ りな さるまいか と、全 く気 が気 で なかったのだか ら、ト・-] (Ⅹ)夫人は、ト ・・・]その箱 の蓋 をあけなかった。 もし品の変った ことを見付 けた とした ら、 果 して何 と思っただ ら う?何 と言ったで あ ら う?ロアゼル夫人 を泥坊 と思ひは しなかった らうか ?

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(1bLrd.) 青柳訳 :もっ とも、彼女は健気 に も、忽然 として、一大決 心 を したのだ った。 このおそ ろ しく巨額 の負債 は ど うして も払わなけれ ばな らないのだ。 そ うだ とすれ ば、払 うよ りほか はない。 (a)ア ノ恐 ろ しい借金は是非共沸 はなけれ ばな らぬ、イヤ是非梯って見せ ると、今迄にない 女丈夫の魂 を出 して、 ソレか ら家政 の改革 を始 めま した、 (b)彼 巨額 の負債 は排酒 され ざる可 らずo彼女 はみづか ら之 に富 らむ を願 ひ きO (C)お町は始 めて最の貧乏の味 を知 る事 になったO借 りた金 は必ず返- さねばな らぬ、彼女 は勇を振って、 自分 も其責任 を分塘す る気 になって、先づ下女 に暇 をや りト -] (a)かの一切 の負債 は是非共 自分一一人で帝 さねばな らぬ、[・・-・・]と、お牧 の覚悟 はい よい よ 堅 くなるのであった。 (Ⅹ)この恐 ろ しい負債 は排 はなけれ ばな らぬ。彼女 はそれ を排 は うとした0

(6)

4)Queserait-ilarriv6siellen'avait1)OintI)erducetteparure?Quisalt?cluisalt? Commelavieestsinguli占re.changean te!Commeiltautpeudechose130urVOuSDerdre ouvoussauver!(p.1205)

青柳訳 :も しも彼女が あの首か ざ りをな くさなかった ら、 どんな こ とになっていた ろ う? たれ ぞ知 る ? たれ ぞ知 る ? なん と人生 は-んて こで、気 ま ぐれ な ものだ ろ う ! なん と些細な ことか ら、ひ と一人が浮 かんだ り、沈んだ りす ることだろ う ! (a)ア ノ時若 し妾が首輪 を失 さなかったな ら、今 は ど うしてえるで しょ うか人間万事塞翁馬 といふ ことがあるが実に浮世 は不思議 の ものである と徐 ろにな-て居 りま した。 (b)彼女 も し頚環 を失ほ ざ りせ ば、いかにな りけむ、あ ゝ如何 にかな りけむ。有為転変定め がたきは命 な りけ り。失 はむ も、蓄-む も、我等人生 の必要 とす るものの、如何 に煩墳 な るもの よ ! (C)あの頚飾 を失 くさなかった ら、お町の身 は今頃何 うなって居 るで有 らう、実に変れ ば変 はる物 で、人の身の上程計 り難 い ものはないのである。 (d)も し彼時に頚飾 を失 くさなかったな らば、自分 は今頃何 うなったであ らうか、勿論神様 な らぬ もの ゝ誰だって知 りや う筈 はないのだけれ ど。 それ に して も人間の一生位不思議 な 変 は り易い ものがまた とあるだ ら うか、有為転変は世 のな らは しと云ふ もの ゝ、人 間の栄 枯浮沈位 、些細な事情 に支配 されてる もの も稀であ ら うと、深 き想 に沈み も した。 (Ⅹ)も しあの頚飾 を失 くさなかったな らば、何 うなった ら う? 分かるものか ? 分かるも のか ? ほん とに人の一生 くらゐ不思議 な変 は り易 い ものはない ! ほん とに些細 な事が われわれ を栄 えさせ も枯れ させ もす るものだ !

5)MmeLe iselsesentit6mue.Allait・elleluiparler?Oui,certes.Etmaintenantqu'elle avaitI)aV6.elleluidiritta out.PourquoilつaS?(Ibid.)

青柳訳 :ロワゼル夫人 は何 か しら胸 がつ まった。話 しか けてみ よ うか しら? そ うだ、か ま うものか、いまではも う借金 を払 って しまったのだか ら、なにを言ったっていいわけだ。 なんの遠慮がいろ う。 (a) (訳文 には欠如) (b)ろあぜ る夫人はなっか しさと、牡 しさとに痛 く心 を動 か しぬ。彼女 は彼女 に言葉 かけむ と欲す るな るが、 もとよ りな り。凡ての負債 を果 した る今 、 ことの始終 を語 らまほ しう思 - るな り、仔細 あるま じ。

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(C)彼女 は言 も掛 けず、其値知 らぬ鉢で分れた ら うか、否、十年 の間苦 しんだ も皆堀 田夫人 の御蔭だ、何で話 し掛 けず に居 られや う。づかづか と進み寄って、ト ・・・]

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)岩夫 (よもや)房子 に顔 を合せ はす まい と、読者 は推せ らる ゝであ ら うが、否、否お敬 は今 こそ頚飾紛失以来 の一伍一什 (いちぶ しじふ) を ざっ くば らんに打明けや うとさ-汰 心 したのであった。 (Ⅹ)ロアゼル夫人の心 は動 いた。彼女 は言葉 をかけよ うとしたか ? さ うさ、無論 のことだ。 金 を捕って しまった今 こそは、彼女はそれ につ いての一部始終 を打明け よ うとした。構ふ ものか。/彼女は近寄った。

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