第6学年4組
道徳学習指導案
1 主題 『困難と出遭って』資料名「かたうでの名コーチ」(東京書籍)[高学年1-(2)] 2 主題設定の理由 ○ 本主題の指導内容は、より高い目標を立て、希望と勇気をもってくじけないで努力することを ねらいとしている。本主題は、高学年1-(2)(不撓不屈)の内容である。 本時で指導する「不撓」とは、どのよ うな困難に出遭ってもたわまない、屈し ないことであり、「不屈」とはどんな困 難に出遭っても意志を曲げないことであ る。したがって「不撓不屈」とは、どん な困難に出遭ってもひるまず、意志を貫 くことである。人は様々な人に出会い、 こんな人になりたい、こんな生き方がし たいという自分の理想である夢や目標を 描く。しかし、現実を見つめることによっ て、理想と現実の違いを意識し、夢や目 標の実現に困難さを感じることがある。 このときに、困難に対して勇気をもって 粘り強く取り組む気持ちをもったり、他 者から励まされたりして、希望をもつこ 【高学年1-(2)の内容分析】 とが大切である。このことによって、人は実現可能な努力目標を立て、着実に前進する強い意志 と実行力をもって努力しようとする。しかし、夢や目標を実現することは難しく、さらに様々な 困難に出遭う。人は、理想と現実の違いの大きさから自分の弱さに負け、困難と向き合わずに夢 を諦めることもある。困難を乗り越えるには、蛮勇ではなく真の勇気を出して希望をもち、その 困難に向き合う不撓不屈の精神が必要である。つまり、困難を乗り越える為に、自分自身が強い 意志と実行力をもって、周りの人々の支援を受けながら、粘り強く取り組むことが大切になって くる。こうして、困難を乗り越えようとするときこそが、自己成長を遂げようとしているときで、 仮に夢が実現しなくても、努力を続けることや身に付いた知識や技能、培われた人間性は、生き ていく上で大きな意味をもつ。さらには夢や希望をもって困難を乗り越えると、大きな自信や真 の勇気を得ることができ、その過程で得られた達成感や満足感は、今後生きていく時の原動力と なる。そして、より強い意志をもってより高い理想の実現に向けて努力を重ね、よりよく生きよ うとするのである。 本主題の具体的な内容としては、①主人公中村治人さんと自己の生き方の共通点や差異点を考 えることで、大きな困難と出遭ったときにどんな気持ちが大切かを考えること、②友だちの考え や根拠と比べながら、大きな困難と出遭ったときには、強い気持ちをもって乗り越えることの大 切さを感じることができること、③夢や希望に向かうことのよさをもとに、夢や希望についての 展望をもつことができることなどである。 本主題に関しては、低学年で自分がやらなければならない勉強や仕事は、しっかりと行うこと の大切さを学習してきた。中学年では、自分でやろうと決めたことは、粘り強くやり遂げることの大切さを学習した。第5学年では、より高い目標を立て、希望と勇気をもって努力することの 大切さを学習した。それらを受け、複数時間を設定し、前時で夢や希望を抱くことのよさを感じ させ、本時で困難なことに出遭った時の強い意志と実行力の大切さを感じさせたことは、中学校 でのより高い目標を目指し、希望と勇気をもって着実にやり抜く強い意志をもつ学習へと発展し、 よりよい生き方を見出す子どもを育む上で意義深い。 ○ 本学級の子どもたちは、「誰にでも優しく接する保育士になりたい」とか、「NO.1のプロの棋 士になりたい」などといった将来の夢や希望があり、普段の学校生活や家庭生活、社会生活にお いて、「応援団長としてブロック全体をまとめたい」「水泳の目標タイムを切りたい」など、何 らかの目標をもって生活することができている。また、これまでに自分で立てた目標を達成した 経験があり、「うれしい」「頑張ってよかった」「また何かにチャレンジしよう」といった達成し た喜びも知っている。しかし、将来の夢がもてない子どもや、夢はあっても明確な理由がないと いう子どもも数人いる。これらは、自己の生き方について多面的に考えたり、夢や希望について 吟味するような機会が少ないことが原因であると考えられる。また、6年生ともなると、理想主 義的な傾向がさらに強まり、自分の価値観に固執しようとする傾向も表れる。したがって、自分 の価値観にこだわるあまり、積極的に様々な生き方と出遭っても自己の生き方を吟味しないまま 夢を追い求めようとしていることや、夢や希望をもって生きることのよさに気付いていないこと が原因と考えられる。しかし、前時の指導により、将来の夢がもてなかった子どもが、終末段階 の記述に「夢をもつことはいいことだと思った。ぼくも今はないけれど、夢をもちたいと思った。」 と考えるようになった。また、夢をもって努力することで多くのことを学べることや、その学ん だことを生かしたり夢をもち続けたりすることが大切であることを学習している。そこで、小学 校卒業や中学校進学といった節目を迎えることを意識し、自らの将来の夢や希望、目標をより具 体的に描くようになるこの期に、自己に対する肯定的な自覚を促し、一人一人、自分の夢や希望 をもち、その理想に向かって努力することの大切さについて考える学習が大切であると考え、本 主題を設定した。このことは様々な人の生き方をもとに自己の生き方を見つめ、夢や希望をもっ て生きることの道徳的価値に気付き、見出した価値に基づいて自己の生き方を見つめ直す道徳的 態度を育てるとともに、よりよい生き方を見出す子どもの姿を生み出す上でも意義深い。 ○ 本主題の指導にあたっては、道徳の時間を複数時間設定し、自己の内面を吟味する活動を通し て、夢や希望の実現に向かってより高い目標をもち、努力しようとすることができるようにした い。そのために本時は、第一次として、自分の夢や希望をもって生きるよさを感じ、自分の生き 方に取り入れていこうとする心情を深めたい。さらに、第二次では、どんな状況になっても、夢 や希望を失わず、常により高い目標をもって努力する心情を深めさせたい。 特に本時指導は、資料『かたうでの名コーチ』を範例的に活用し、主人公中村治人さんの生き 方や友だちの考えをもとに吟味しながら、どんな困難に出遭っても、夢や希望を失わず、常によ り高い目標をもって努力することのよさを感じ、自己の生き方についての考えを深めさせたい。 本資料『かたうでの名コーチ』は、次のような話である。主人公の中村治人さんは、元気な毎 日を送っていたが、悪性の肉腫にみまわれ、右腕を切断することになり、絶望の縁に立たされた が、新たな目標を立て、スキーの指導員に合格したという話である。 まず、事前に、主人公の生き方を対象にし、自己の生き方との共通点や差異点を明らかにする。 生き方シートを活用して、主人公と自分との重なり具合を考えながら、主人公中村さんと自己の 生き方の共通点と差異点を明らかにする。こうして、自己の生き方を理想像である主人公の生き 方と比較して見つめた上で、導入段階で前時の学習を振り返る。「夢をもつと成長できる。学ん
だことを生かしたり夢や希望をもち続けたりすることが大切」といった学習内容を想起させ、心 のノートを見せながら、今後困難なことと出遭っても夢を実現できるか投げ掛ける。そして、大 きな困難とぶつかったときにどんなことが大切か話し合わせ、価値の方向付けを図る。次に、展 開前段では、主人公の生き方についての考えを友達と比較して、主人公の生き方に含まれる道徳 的価値について追求・把握する。このことで、自己の生き方を主人公の生き方と比較して見直し、 自己の生き方の道徳的価値を見出す。「中村さんを支えていたのは、どんな心でしょう。」とい う問いに対して自分の考えと根拠をノートにまとめる。そして、主人公中村さんの生き方のよさ について話し合い、自分自身の身体の障害にもめげず、より高い目標をもって努力しようとした ことの道徳的価値を追求・把握させる。さらに、展開後段では、把握した価値に照らし合わせ、 自己の生き方を振り返り、自分にも中村さんと同じよさがあることを理解させ、価値の主体的自 覚を図る。このことで、道徳的価値を含む主人公の生き方に照らし合わせて自己の生き方を振り 返らせる。終末段階では、前時学習した内容も含めて、夢や希望を実現するために大切な心とと もに、自分の夢や希望についての考えをまとめさせ、自己の生き方に展望がもてるようにする。 最後に、一人一人の夢をスライドショーで紹介し、追求・把握した価値を自己の生き方に進んで 生かそうとする意欲を高めることができるようにする。 3 本主題の計画(全2時間) 事前指導 第 一 次 中間指導 第 二 次 事後指導 朝の活動 道徳の時間1 帰りの会 道徳の時間2(本時) 帰りの会 自分の夢や希 主題名 次時は夢や希望を 主題名 学習を振り返り、 望について話 『夢や希望を抱いて』 実現する上で困難 『困難と出遭って』 夢や希望を求めて し合い、学習 資料名 と出遭った時につい 資料名 生きていくことに 計 画 を 立 て 『オードリー=ヘップ て学習することを方 『かたうでの名コーチ』ついて決意を新た る。 バーン』(文溪堂) 向付ける話をする。 (東京書籍) にする。 1-(2) 希望・勇気 1-(2) 不撓不屈 4 本時 平成 年 月 日( )第 校時 第6学年 組教室にて 5 本時のねらい (1) 資料『かたうでの名コーチ』をもとに、大きな困難と出遭ったときに、常により高い目標をもっ て強い気持ちをもって乗り越えることの大切さが分かり、勇気をもって夢を実現しようとする心情 を育てる。 (2) 主人公と自己の生き方を比較して自己の道徳的課題を把握し、友達との話合いで自他の生き方を 比較して価値を追求・把握し、把握した価値を基に自己の生き方を見つめ直し、価値の自覚を深め ることができるようにする。 6 準備 教 師:夢や希望の一覧表、読み物資料の流れ図、複数時間指導計画図、挿絵、短冊 子ども:生き方シート(ピンク・黄色)、生き方ノート、心のノート 読み物資料『かたうでの名コーチ』(東京書籍)、付箋紙(ピンク・黄色)
7 学習指導過程 学 習 活 動 と 内 容 指 導 上 の 留 意 点 1 前時学習を振り返り、大きな困難と出 遭ったときの生き方について話し合う。 (1) 前時の学習内容を振り返る。 ※ 前時学習を振り返り大きな困難と出遭っ ア資料『オードリー=ヘップバーン』を たときの生き方について話し合わせ、価値 導 活用して学習したこと の方向付けを図る。 イ前時での学びの内容 ※ 事前に生き方シートを使って主人公と自 ・夢をもつと成長できる。学んだこと 己の生き方を重ね合わせ、主人公中村さん 入 を生かしたり夢や希望をもち続けた の生き方との共通点と差異点を考え、付箋 りすることが大切。 紙に書かせておく。 (2) 心のノートを見ながら学習のめあてに ※ 学習計画表をもとに前時学習した「夢を 段 ついて話し合う。 もつと成長できる」「学んだことを生かし ・これから、困難なことにも出遭う。 たり夢や希望をもち続けたりすることが大 ↓ 切」といった内容を確認する。 階 ・大きな困難に出遭ったらどうする? ※ 一人一人が夢や希望をもっていることを ↓ 確認した後、心のノートを見せながらこれ ・大きな困難に出遭ったらどんな気持 から困難に出遭うことや、大きな困難に出 ちが大切なのだろうか? 遭ったらどうするか投げかけ、本時の道徳 的価値への方向付けを図る。 大きな困難に出あったときに、どんな気 持ちが大切なのか考えよう。 2 資料『かたうでの名コーチ』をもとに、 道徳的価値(不撓不屈)について話し合う。 展 (1) 中村さんのどんなところがいいなあ素 ※ 主人公中村さんの素晴らしいところとそ 晴らしいなあと思ったか、また、それは の根拠を話し合わせ、中村さんが右腕を失 どうしてか話し合う。 うという困難を乗り越え新たな目標をもっ 開 <考え①>困難に出遭っても希望をもてたこと て生きたことのすごさに気付かせる。 ・どん底に落ちた感じがしていたときに 障害を乗り越えようと頑張っている子 ※ 友達の考えや根拠との共通点や差異点を 前 どもたちを見て、自分も頑張ろうと思 明らかにしながら小集団で話し合わせる。 えた。 (希望をもてた) <根拠①> ※ 根拠として自分の体験や中村さんの立場 段 ・もし、自分が中村さんの立場だったら、 を想定して考えたことなどをもとに全体で もう生きていて何になると思うだろう 話し合わせる。 と考えたから。 ・自分もけがをしたときに、何で自分だ ※ 小集団から学級全体へ形態を変え、一人
けこんなことが起きるんだとか考えた の発言をもとに付加・修正・強化しながら ことがある。 発言をつなぎ、めあてを指し示しながら、 ・自分だったら右腕を失うと、こんな前 常にめあてを意識させ、具体的に考えさせ 向きな気持ちにはなれないと思う。 ることで、道徳的価値の本質に迫ることが できるようにする。 <考え②>スキーの指導員になったこと ・昔のヨット仲間からすすめられて指導 ※ 主人公の行為や考えを多様な側面から見 員の道を目指し、トップクラスの成績 つめさせるために、子どもたちの発言を次 で、全国で初めてのかたうでの指導員 の4つの場面に分けて板書し、それらを選 になった。 (目標の達成) んだ根拠について交流させる。 展 <根拠②> ①困難に出遭っても希望をもてたこと ・両腕があっても指導員になるのは難し ②スキーの指導員になったこと いのに、片腕で指導員になった。 ③片腕で泳ぎ切ったこと ④不自由さに挑戦し続けたこと <考え③>片腕で泳ぎ切ったこと 開 ・ヨットが転覆したときに、左腕だけで ※ 主人公中村さんがこれまで頑張り続けて 岸まで泳ぎ切った。 (困難の克服) きたこと全体について発言した子どもには、 <根拠③> 「特にどの場面で強くそう思ったか」と助言 ・急に片腕で泳ぐなんてとうてい無理な し、具体的な場面で焦点化して考えること ことだ。 ができるようにし、根拠を明確にさせる。 前 <考え④>不自由さに挑戦し続けたこと ・不自由さに挑戦し、一人乗りのヨット に乗ることに成功し、自動車のA級ラ イセンスを取ることにも成功した。 段 (新たな目標) <根拠④> ・スキーの指導員や片腕で泳ぐことだけ でもすごいのに、次なることに挑戦し ていることがすごい。 (2) 中村さんを支えた心について話し合う。 ※ 自分の考え(ピンクの付箋紙)や根拠(黄 <考え> 色の付箋紙)を書かせ、書き終わったら、 ・右腕がないぐらいでへこたれてはいけ 重要度や位置関係を吟味させ、付箋紙を貼 ない。 (不撓・不屈) り替えさせる。 ・どんな困難に出遭っても諦めない気持 ※ 自他の考えや根拠の共通点や差異点を明 ちが大切だ。 (諦めない気持ち) らかにしながら、障害を乗り越えるための ・「絶対に」という強い気持ちをもって 訓練に取り組んでいる子どもたちを見た中 困難を乗り越えようとする気持ちが大 村さんの気持ちについて4人グループの小 切だ。 (強い意志) 集団で話し合わせる。 ・スキーができなくなっても指導員とし ※ 小集団の話合いの後、再び考えを吟味し、
ての道があると考えることが大切だ。 全体で話し合わせる。 (希望) 全体での話合いの後、再び付箋紙を活用 ・いつも次なる目標に向かって頑張るこ し、自分の考えや根拠を吟味させる。 展 とが大切だ。 (新たな目標) ※ 子どもたちの発言をもとに板書を構造化 <根拠> して道徳的価値についてとられやすいよう ・ヘップバーンさんも戦争中で十分に練 に工夫する。 開 習できない状況でも、強い気持ちでバ レエのレッスンを続けた。 ・大きな困難と出遭ったことがきっかけ 前 で中村さんの人生が大きく変わっている。 段 いつも、より高い目標をもち、 強い気持ちで乗り越える。 3 把握した価値に照らし合わせ、自分の 生き方について考える。 展 <自己の生き方の振り返り> ※ 生き方シートを使って、自分の生き方と ・中村さんのように、大きな困難に負け 主人公中村さんの生き方を再度重ね合わせ、 開 ずにがんばってきたことがある。 共通点や差異点を考えさせる。 ・中村さんの生き方はすごいと思ったけ ※ 意図的に指名し、把握した道徳的価値に 後 れど、自分の中にも同じような心がある。 関するキーワードを含みながら、進んでよ り高い目標をもって絶対にという気持ちで 段 乗り越えることについてふれている内容を 取り上げる。 4 夢の実現するときに大切なことについ てまとめ、これからの自分の生き方につ いて考える。 終 (1) 2時間を通して学んだ夢の実現のため ※ 2時間を見通した学習計画表(実態調査 に大切なことについて自分なりの考えを をもとにまとめたもの)を提示し、夢の実 末 発表する。 現に対して大切な心について総合的にとら ・困難なことに出遭ったときに、その困難 えさせる。 段 と向き合えるように、何事にもより高い 目標をもって取り組んで、強い心をつく ※ 生き方ノートに、今日の学習をもとに自 階 りあげていきたい。 分の希望や目標について、どんなことを感 (より高い目標をもつこと) じているか書かせる。 ・中村さんのように困難なことに出遭って も乗り越えようという気持ちをもって、 ※ これから大切にしたい心について発表さ ヘップバーンさんみたいに夢をもち続け せて、自分の考えを記述させる。
て努力を続けたい。(夢をもち続けること)
(2) 目標に向かって頑張っている姿のスラ ※ 困難にもめげず、自分の目標達成の為に イドショーを視聴する。 努力している姿を視聴させ、夢や希望を叶
えようという意欲を高めさせる。 8 板書計画