ミツパ テ科 学 ): HoneybeeScience(2002)
ベ トナム北部 山岳地域 にお ける養蜂
吉田 忠晴
2001年 3月 9日∼17日,9月 12日∼25日 の2回にわたり,社団法人 日本ユネスコ協会連 盟の依頼を受 け,ベ トナム北西部のライチ ャウ 省 トゥアチュア郡 とフォントー郡の養蜂調査を 行 った. この調査 は, 国際協力事業団 (JICA:Japan InternationalCooperation Agency) と社団 法人 日本ユネスコ協会連盟 (NFUAJ:Nati on-alFederation ofUNESCO Associationsin Japan)との 「開発パー トナー事業」の一環 とし て実施 された.開発パー トナー事業 とは,NCO (非政府組織)や大学 な どとJICAがパ ー トナ ーシップを組み,受託団体がそれぞれ得意 とす る分野で開発援助事業を実施 して,開発途上国 のよりよい社会づ くりに貢献 しようというもの で,1999年か ら開始 された新 しい形態の事業 である. NFUALによる 「ベ トナム北部山岳地域成人 識字教育振興計画」 は, JICA との第 1号案件 と して 採 用 さ れ,2000年 4月 よ りJICA/ NFUAJプロジェク トが開始 された. ベ トナム 北西部の ライチ ャウ省 (図 1) は, ラオスと中 国の国境に接 し,険 しい山々か らなる辺境の地 である. ここにはモ ン族, タイ族,キ ン族など 様々な山岳少数民族の人々が暮 し,それぞれ固 有の文化を守 っている.少数民族 は文字を持た ないために非識字者が多 く,より良 い生活向上 のための知識や技術を学ぶためにはベ トナム語 が必要 となる.日本ユネスコ協会連盟 は,1990 年の国際識字年をきっかけとして世界寺子屋運 動 を推進 している.そこで学校に行 けない子供 達や学校に行 けなか った大人を対象 として, ト ゥアチュア郡 内11村 とフォン トー郡 内 29村 の 40村 に寺子屋 を建設 して基礎教育を行 うこ とが計画 された. さらに寺子屋教育の推進 と共 に農業教育をは じめとした収入向上計画の実施 について も検討 された. プロジェク トの事前調査にあたり,モン族が 主流民族である トゥアチュア郡では,伝統的に 養蜂を営んでお り,養蜂生産物か らは現金収入 を得ている.そのため収入向上計画 として トゥ アチュア郡, フォン ト-郡での養蜂普及がどの 図1 ライチャウ省とフォントー郡, トゥアチュア郡の位置程度期待で きるかについて調査が実施 された. ハノイか らライチャウ省の省都 ディエ ソビエ ン7-までは飛行機で1時間,ディエンビェ ン 7-か ら トゥアチュアまでは車で 4時間,フォ ン トーまでは8時間の距離である. ベ トナムにおける トウヨウミツパテの養蜂 現在,世界には9種の ミツバチが分布 してい るが,ベ トナムでは トウヨウ ミソバチ,オオ ミ ツパテ, コ ミツパテ, ク口コ ミツバチおよび導 入種 のセイ ヨウ ミツバ チの5種 が生息 してい る.1960年代 に中国か ら可動巣枠式巣箱を用 いたセイヨウ ミツパテの近代養蜂技術が導入 さ れ,現在, ベ トナム南部を中心に
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万-7
万群 のセイヨウ ミツパテが飼養 されている.セイヨ ウ ミツバチ導入後, トウヨウ ミツバチの巣枠式 巣箱への改良が北部で始 まり,その後急速に普 及 している (松香 はか, 1995).Craneetal (1993) は,縦型,横型の丸太巣箱に上桟を取 り入れた トップバー式巣箱 は,ベ トナムで考案 されたのが最初であると述べている. 現在, トウヨウ ミツバチはアジア地域 に,中 国産の原亜種 (Apisceranacerana),イ ンド亜 檀 (A c.indica),日本亜種 (A c.japonica),ヒマラヤ亜種 (A c.himalaya)の
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亜種が認 め られている (吉田,2000a).ベ トナムの トウ ヨウ ミツバ チは,北部 の山岳地帯 で は中国亜 種,南部ではイ ン ド亜種の2亜種 に分 けられる (Tan and Dung,2000). ベ トナムでの トウ ヨウ ミツパテの飼養方法には, (1) 自然巣か ら のハチ ミツ採集,(
2
)
丸太巣箱による定地養蜂, (3)可動巣枠式巣箱 による定地養蜂,(4)可動巣 枠式巣箱 による移動養蜂が行われており,-チ ミツの年間収量 は1群あた り2-30kgと地域 に よ っ て 大 き な 差 が 見 ら れ る (Mulder, 1992). 北 部 山岳地 域 の蜜源植 物 ベ トナムは南北 に長 いEg土 (北緯8度 5分∼ 北緯23度 5分)であるため,地形,気候に変化 が富んでいる.そのため100種以上の蜜源植物 が上 げられる.北部山岳地域の蜜源植物 は,義 蜂研究開発 セ ンターによ って調査 されて いる (Chinh,2001).野生の樹木ではク リ,ハゼノ 辛,ユーカ リ,農業栽培種では トウモロコシ, イネ, ゴマ,マメ類, ウ リ類,森林の樹木では ココヤシ, ゴム,アカシア,果樹ではバナナ, ロンガ ン, ライチー,アンズ,スモモ, ミカン 類,その他 としてに ヒヨ ドリバナ, カッコウア ザ ミ,セ ンダングサなどである.採蜜の最盛期 は11月∼3月で,5月∼9月は蜜源が減少する ため砂糖給餌が必要 となる. 養蜂関係組織 とライチ ャウ省での 養蜂指導の経緯 1966年,現在の農業 ・農村開発省 (MARD: Ministry ofAgricultureand RuralDevel -opment)に養蜂部が開設 され,養蜂研究事業 は, 1967年 に設立 された ドクテ ィン養蜂研究局で 行 われ た.1978年 に設立 され た国営企業 の TheCentralBeekeepingCompany (CBC) にMARDの養蜂部や蜂場が移管 され, 現在, CBCはベ トナム養蜂組合 (VINAPI:Vietnam ApiculturalCorporation) として運営 されて いる.VINAPIは, 1984年 に ミツバチの学術 的な研究,養蜂の発展,生産物の加工処理方法, 販売方法など応用面の開発を目的 とした養蜂研 究開発セ ンター (BRDC:The Bee Research andDevelopmentCenter)を設立 した.現在,アジア地域 において,持続可能な農業 と村落開発のための重要な要素 として,導入種 のセイヨウ ミツパテではな く,在来種の トウヨ ウ ミツバチによる養蜂普及が推奨 されている. トウヨウ ミツバチは,セイ ヨウ ミソバチに比べ て生産性 はやや劣 るものの,病気や害敵 に対す る抵抗性 は高 く,初期の投資が小額ですみ,塞 源植物が十分 と言えない地域で飼養で きる.労 働力 も規模 に応 じた範囲で行 うことができ,飼 養方法の習得,実行が しやす く,そ して現金収 入が得 られる,など多 くの利点を上 げることが で きる BRDCでは, トウヨウ ミツバチの特徴を生か して,家族支援プロジェク トとして養蜂指導を
既に実施 している.講習会を開催 して飼養技術 の基本 を修得 させた後,い くつかの家族 を選 び,2-3群を貸 し付けて養蜂を行い,1年後に その資本を回収するが,その間の収入 はその家 族 に帰属 させ るというものである. さらに対象 家族を中心に養蜂互助 グループを結成 して勉強 会を開催す るなどの組織作 りにも取 り込んでい る. BRDC指 導 普 及課 で は,1995年 か ら2年 間, ライチャウ省での養蜂振興プロジェク トを 実施 している.更に トゥアチュア郡農業普及セ ンターの職員の1人は,1996年か らBRDCで 養蜂の指導 を受 け,1998年か ら トゥアチュア 郡での養蜂普及活動を行 っている. 2001年 8月 1日 ∼ 21日 に は,JICA / NFUAJプ ロジェク トの依頼 で BRDCと トゥ アチュア郡農業普及セ ンター職員の協力よって 養蜂指導者の研修が実施 された. この研修には フォン トー郡農業普及セ ンター職員4名, トゥ アチュア郡農業普及セ ンター職員4名,JICA/ NFUAJプロジェク ト職員 2名, 養蜂互助 グル ープの リーダー4名の14名が参加 している. ミツバチの生態や生理,蜂具など基礎的知識か ら分蜂群の捕獲方法,伝統巣箱か ら巣枠式巣箱 へ蜂群を移 し替える移群法,採蜜方法,採蜜後 の蜂児巣板の巣枠への取 り付 け,給餌時期 と給 餌方法,モデル養蜂農家の見学などの研修が行 われた. 養蜂普及 の現状 1.養蜂互助グループ トゥアチュア郡の11村 に 53の集落がある. 2000年 には,16集落に養蜂互助 グループが結 成 されている. グループは10数農家で組織 さ れ,責任者を選出 してグループ内の規則を決め ている.責任者が非識字者である場合 には, 別 に書記を選出 して会議の議事録や活動を記録す る.問題が発生 した場合 には,農業普及セ ンタ ーが問題解決のために協力するという仕組であ る.農業普及セ ンターの職員は,互助 グループ の組織化 と養蜂技術の指導が基本的な活動で, 実際の運営 はグループのメンバーで進め られて いる. 最初に農業普及セ ンターによる地域の在来 ミ ツバチや蜜源植物 など環境条件,伝統養蜂の技 術 と知識について調査 される.次に養蜂導入農 家を特定 し,互助 グループの活動内容,利点, 問題点及びその解決法について話 し合いが持た れる.互助 グループの組織化 と共にグループ内 の規則や年間活動計画が作成 される.農業普及 セ ンターの職員は,新規 グループの会合 には毎 回参加するが,既存のグループの会合には3回 に 1回程度出席 して会議の運営を援助する.そ して年末にそれぞれの互助 グループが自分連の 活動を評価す るという取組みが行われている. トゥアチュア郡内の主 な互助 グループの活動 を調査することがで きた. シンフィン村 は, 5集落に互助 グループが設 立 されている.その一つのハ ンドゼ集落 は,19 農家が所属 している. 蜂群 は 1人4-5群を所 有 し,全体での飼育数 は100群である.グルー プの リ-ダーは8月 に実施 された養蜂指導者 研修 コースに参加 している. リーダーは養蜂指 導者 として, グループ内や他の集落の指導を行 って いる.毎月4日に は情報交換 の会合 を持 ち,その月の蜂群管理の内容,問題点について 話 し合いの場を持 っている. ムオ ンバ ン村 は, 7集落に互助 クループが設 立 されている.14農家が参加 しているグルー プの リーダーは,普及セ ンターの責任で他のグ ループの指導にも出かけるなど,農家か ら農家 への効果的な指導が実施 されている, チェントゥー村 は,1998年 に 6農家が参加 γ E こ 叫 り j: ., ・ F 血
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lA.,- JV ィ.・ - l l■■-図2 壁に張り出された年間管理計画図3 中EE]・雲南省 との国境の村の丸太巣箱 してグループが結成 されている.養蜂に興味を 持 ち,入会 を希望す る農家 には蜂群 を貸 し出 し, 1年間技術を教えている.管理上で問題が 発生 した場合 は,月1回開催 される会合で助言 や指導が行われ,解決できない問題 については 普及セ ンター職員の指導を求めたりす る. グル ープ リーダーの家には,1月 :採蜜 目標 28kg, 2月 :新 しい巣 箱 6個 作 成,3月 :分 蜂 (6 群),4月 :雨,暑 さ対策 (36群),5月 :夏の 分蜂管理,6月 :雨期の給餌 36kg,7月 :古 い 巣板の除去(36群),8月 :2回目の給餌 30kg, 9月 :蜂群管理, 弱群には給餌対策 (36群), 10月 :新 しい巣枠の作成 (10群), 11月 :防 寒の準備 (36群),12月 :採蜜 目標 36kg, と い う2001年 の管理計画が張 り出 されて いた (図2).現在の 30群か ら6群を増や して, 36 群 にする計画である, サ ンニェ-村 ドンピー集落 は,2000年 5月 にグループが設立 された新 しい互助 グループで ある.グループには6名が参加 し,グループ全 体で9群 を所有 している.普及セ ンター職員の アシスタントである普及推進員が, この村の指 図5 巣箱内の巣枠 と巣板間隔を維持する桟 図4 独 自に考案 した縦長巣箱内の峰群 導 を行 っている.年間計画 はグループで作成 さ れ, グループ全員で協力 しなが ら実施 されてい る.壁 には,1月 20日 :計画を立てる,1月 22 日∼2月 15日 :巣箱の作成,2月 20日 :分蜂 群の捕獲技術,2月 25日∼3月 15日 :分蜂, 3月 20日 :分蜂後の飼育方法,4月20日 :採 蜜,5月 20日 :夏に入 る前の準備,6月 20日 :給餌,7月20日 :夏 の管理,8月 20日 :2 回 目の給餌,9月20日 :蜂群管理,捕獲技術, 10月 20日 :冬の管理,11月 20日 :講習会の 開催,12月 20日 :冬の採蜜,という年間計画 が示 されていた. 2.巣箱 と巣枠 フォン トー郡では,箱型や丸太式の伝統的な 巣箱がまだ多 く見 られた.中国 ・雲南省 との国 境 の村であるザオサ ン村 は,2月∼3月に空の 巣箱 に分蜂群の飛来を待つ 「待ち受 け巣箱」が 家壁に吊り下げ られていた (図 3).バ ンボー村 図6 巣箱内の蜂群
31 図7 養蜂研修を受けたフォントー郡 農業普及センター職員の蜂群 では,独 自に考案 した縦長 の巣箱を用 いている 農家が見 られた.巣箱の内部 には巣板を造 らせ るための上桟が取 り付 け られていたが,蜂球 は その上部 にあるなど,飼育法の改良,指導 を必 要 とした (図4). 1998年 の養蜂講習会 に参加 した り,配布 れ た手引書 を入手 した りして可動式巣箱 を作成 し ている農家が フォン トー郡で見 られた.巣箱の サイズ縦32cmX横50cmX高 さ27cmで, 巣 枠 の幅は3cmで,上桟 の長 さは42cm,両側桟 の長 さは20cmであった.巣枠 には,上か ら5 cm間隔で3本,7cm間隔で2本の針金 を張 っ ているもの も見 られたが,殆 どは針金を使用 し ていない巣枠で,下桟 も使用 してい ものが多か った.上桟 と上桟の間には,巣板間隔を維持す るために1cm幅の桟が置かれてお り,巣枠 と 桟 によって内蓋が されたよ うな状態 になる (図 5,6). フォン ト-郡での可動式巣箱 のサイズは, ト ゥアチュア郡 の もの と殆 ど同様で,大 きな違 い は見 られなか った.2001年8月の養蜂指導者 図 9 巣板から貯蜜部分を切り取る 図8 トゥアチュア郡農業普及センター職員の 巣枠の幅についての指導 の研修 コースに参加 した フォン トー郡農業普及 セ ンター職員の 1人 は,森の木の空洞 に営巣 し ていた群 を採集後,巣板 は巣枠 に稲 わ らで取 り 付 け,採集直後 の蜂群 には砂糖水を給餌 してい るなど,研修を受 けた管理方法が実行 されてい た (図 7).巣枠 に平行な巣板を造 らせ るために 3cmの上桟の幅は重要 な要素 とな っている.サ ンニ ェ-村 シソスー集落 の互助 グループ,10 農家の リーダーには,巣枠の上桟の幅が不揃 い であったため,上桟,側桟の幅を同 じに揃える よ うに トゥアチュア郡農業普及 セ ンター職員か ら指摘 されていた (図8). 3.採蜜法 巣枠式巣箱 や軒先 に吊るされている丸太巣箱 か らの採蜜方法 は, シ ソフ ィン村 タパ オ集 落 (トゥアチュア郡)で見 ることがで きた. 巣箱か ら取 り出 した巣板 は,バナナの葉 の上 に置かれ, ナイフで巣板部分を巣枠か ら完全 に 切 り離す.巣板上部 の貯蜜部分を巣枠 の上桟を 図10 蜂児巣板は稲わらで取り付ける
図 11 丸太巣箱から巣板を切り取る 図13 蜜巣板をナイフで細かく砕く 使 ってナイフで切 り取 る.残 った蜂児部分の巣 板 は再 び上枝 に稲 わ らで縛 り付 け,巣箱 に戻 す.縛 り付 けた蜂児巣板か ら働 き蜂が羽化す る と, その場所 に貯蜜 され,巣板が下部 に新 しく 造 られ蜂児巣板 となる (図9,10).これは貯蜜 部分だけを確実 に採蜜す ることがで き, また働 き蜂の減少 を妨 げない合理的な方法である.丸 太巣箱か らの採蜜 は,片側 の蓋を開 け,布 に火 をっけ煙 を吹 き込 み,反対側 に働 き蜂を移動 さ せ る.働 き蜂の付 いていない巣板上部 に竹製の 長 いへ ら状 の板 を刺 し入れ,3-4枚 の巣板 を 切 り離す.丸太巣箱 内には1枚の巣板 を残す. 切 り離 した巣板か ら貯蜜部分を切 り取 った後, 蜂児巣板 は巣枠 に稲わ らで縛 り付 け,丸太巣箱 で は な く巣 枠 式 巣 箱 に移 し変 え る (図11, 12).丸太巣箱では巣板が新 たに造 られるため, 貯蜜の様子を見なが ら採蜜す る.貯蜜巣板 はナ イフなどを使 って細か く砕 き,波布 を通 して-チ ミツを収穫す る (図13,14). ラニタン村 (フォン トー郡)では,1998年の 講習会で配布 された手引書 を入手 して,それを 参考 に して丸太巣箱か ら可動式巣箱 に切替えて 図12 蜂児巣板は巣枠式巣箱に導入する 図14 波布を通 してハチ ミツを癒し取る いる農家 も見 られた. その農家 は- ノイの養蜂 器具店か ら巣礎 を購入 して巣枠 に針金を張 って 取 り付 けるなど,管理技術 は素晴 らしい内容で あ った.針金を使 っているため,採蜜 には友人 か ら借 り受 けた遠心分離器 を使用 していた. こ の分離 器 は1998年 に配布 され た もので あ っ た. 4.採塗量 14農家 が参加 して いるムオ ンバ ン村 (トゥ 7チュア郡) のグループは, 合計34群を飼養 している.
20
00
年 にはグループ全体で200
kg
のハチ ミツを採取 してお り,一群当 りの採蜜量 は5
.
8kg
を示 している.6
農家が参加 している サ ンニェー村 ドンビー集落 (トゥアチュア郡) で は, グループ全体で9
群 を所有 し,200
0
年 の採蜜量 は50
kg
, 一群当 り5
.
5
kg
であ った. トゥアチュア郡での年間の一群当 りの平均採蜜 量 は5kg
前後 と考 え られ た. フォ ン ト-郡 では,養蜂 の指導 が まだ十分 に行 われて いないた め, 伝統式巣箱か ら一群当 り2-4kgの採蜜が 一般的であ った. しか しラニ タン村で遠心分離 器 を使 用 して いた農 家 は,2001年 の2月∼4 月 に10群 か ら60kg,一 群 当 り6kgの採蜜 を 示 して いた. 5.ハチ ミツの価格 収穫 されて- チ ミツは,700mlの ビール瓶 に 入 れ られ,重量 に して約1kgの単 位 で販売 さ れている.1瓶 の平均価格 は, トゥアチュア郡 で20,000ド ン, フ ォ ン ト- 郡 で 少 し高 く 25,000ドン, 日本 円 に して160円∼200円で ある. トゥアチ ュア郡 で80%を 占め るモ ン族 系 の 農家 は,作物 の収穫 は極端 に低 く, 自給 自足 の 生活で,余剰 したわずか な作物や家畜 を販売す る程度 であ る. シソフィ ン村- ン ドゼ集落 の養 蜂互助 グル ープの リー ダーは,蜂群 を18群 ま で増 や し, 年間 に90kgもの採蜜 を して いる. ハ チ ミツは徒歩3時間 の距離 の シ ンフ ィ ン村 に,1瓶20,000ドンで売 りに行 く,そ して- チ ミツか らの収入 は,現金 所得 の40%を 占め る よ うにな った とい う.残 り60%は,陸稲,豚, 鶏 の販売か ら得て いる.- チ ミツで得 られた現 金で,塩 や衣類 を購入す るとい う. 6.その他の生産物 -チ ミツ以外 の生産物 と しては,採蜜後 に残 る ミツバ チの蜂 ろ うがある.蜂 ろ うはモ ン族 の 伝統 的なろ うけつ染 (藍染 め) や糸 をよる時 に 用 い られ,1kg40,000-50,000ドンで取 引 さ 図15市場で売 られているスズメバチ酒 れている.大型 のオオスズメバ チ (雲南亜種) が6月∼7月 に飛来 して蜂群 を攻撃す るが, オ オスズメバ チの巣 を採集 す ると10kgほどにな り,市場 に持 って行 くと,働 き蜂や幼虫 ・桶 は 1kg25,000ドンで売 れ るとい う.オオスズメバ チの働 き蜂 は焼酎 の中に入 れ られ, スズメバチ 酒 と して販売 されていた (図 15). また巣箱付 きの蜂群 も売買 されていた.丸太 巣箱 の蜂群 は20,000-50,000ドン, 可動式巣 箱で は100,000ドンであ る. フォン トー郡, トゥアチュア郡での 養 蜂 技 術 の 向上 と今 後 の普 及 活 動 1.養蜂技術 の向上 養蜂のいか に適正 に普及 す るか は,在来 の ミ ツバ チや蜜源植物 とい う養蜂資源 を含 めた一般 的環境,伝統養蜂 の知識 とその普及度,地域 内 での- チ ミツの理解度 と消費,将来的な生産物 販 売 の展 開 につ いて の調 査 が必 要 と され る (Saville,1998).トゥアチ ュア県 では,養蜂振 興 の資源 となる在来 の トウヨウ ミツパ テの入手 は可能 である.蜜源 とな る植物 も多 く,伝統的 な巣箱 による養蜂技術 と知識 を持 ってお り,集 落内や市場 で- チ ミツの販売が行われている. ミツパ テの飼養技術 の移転 に関 して は,農業普 及 セ ンター職員 による養蜂指導 によ って指導機 関 と農家の密接 な関係が成立 してお り, さ らに 農家間での養蜂互助 グループ活動 は効果的 に機 能 している. 1998年∼1999年 の農 業普 及 セ ンター職 員 によ る トゥアチ ュア郡5集 落 での養蜂普及 活 動 で は大 きな成果が見 られ,以下 の報告がある (Hong,1999). (1)可動式巣箱 は,1998年 の60群が1999年 には144群 と,84群増加 した. (2)丸太巣箱 は,1998年 の175群 が1999年 には25群 に減少 し,可動式巣箱 に移行 され た. (3)養蜂互助 グループの加入農家 は,1998年 の38農 家 が1999年 に は55農 家 に増 加 し た . (4)全 グループの採蜜量 は, 1998年 の870kg
が1999年には973kgに増加 した.
(
5
)
可動式巣箱 での 1群 当た りの平均採蜜量 は5kg,丸太巣箱では2kgである. このよ うな成果 を生 み出 した理 由につ いて は,以下のように述べている. (1)伝統的な養蜂技術 と知語は三,新 しい技術 ・ 知識の基 となった.(
2
)
その地域の資材 (木材)を用いた巣箱,栄 枠の作成,雨期の給餌法など飼育法の改善が 導入で きた. (3) 1回の採蜜量 は2-3kgで,1年 に2回の 採蜜であったが,1
年 に5
回採蜜できるよう になった.ハチ ミツ1kgの価格 は18,000ド ン∼25,000ドンである. (4) グループは,様 々な養蜂の技術面や問題点 について解決するのを容易に している. また グループは定期的に会合を組織 し,規則を作 りなが ら運営 している. (5)農業普及セ ンターの職員 は,養蜂に関す る コ ミュー ンの普及推進員の協力を得ている. 普及推進員は,その地域の言語を話 し,地域 と密接 な関係を持ち,地域の問題や事情に精 通 している. (6)養蜂生産物 (-チ ミツ,蜂 ろう)の市場が あり, トゥアチュアの-チ ミツの品質は特 に 良いと言われている. (7) コミューン ・村の労働者 は養蜂の技術的な 図16 トゥアチュア郡養蜂普及センターに 提供した可動巣枠式縦長巣箱 知識を持 っている.(
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)
-ノイの養蜂研究セ ンターか らの定期的な 支援が,新 しい技術の進歩をもた らしている (9)養蜂研修や援助は主 に養蜂農家の要望に基 づいている. (10)農業普及セ ンターの職員 とコ ミューンの普 及推進員 は,養蜂農家 との信頼関係を築いて いる. フォン トー郡 では,1998年 に養蜂研究開発 センターの支援 によって養蜂普及が実施 されて いるが,同時に実施 された トゥアチュア郡 はど 進展 していないのが現状であった. トゥアチュ ア郡 との違いを見 ると農業普及セ ンターの役割 は大 きいものがあると思われる. フォン ト-那 では,伝統養蜂の経験を持 って,精力的に養蜂 を行 っている農家 もあり,養蜂が経済的な利益 を もた らす と考えている.養蜂振興 において, 養蜂モデル農家の選定,あるいはモデル蜂場の 設置など,パイロッ ト的な実例作 りが重要であ ると言われているが,経験のある農民に対す る 農業普及セ ンターの指導 は, トゥアチュア郡の 例をみて も重要である.2001年8月の養蜂指 導者の研修 コースに, フォントー郡農業普及セ ンターの職員が 4名参加 している.フォントー 郡では ミツパテの逃去が多 くみ られ,蜂群の維 持が低下 しているため,巣枠式巣箱への移群 演,移群時また雨季や蜜源減少時期での給餌法 など,研修を受 けた 4名の指導 は,養蜂普及に とって今後重要 になると考え られる. 図17 ベトナムで初めての縦長巣箱での蜂群これまでの トゥアチュア郡農業普及セ ンター の指導によって,丸太巣箱 に変わる巣枠式巣箱 が普及 している.採蜜方法は貯蜜部分を切 り取 り,残 りの蜂児巣板 は上桟 に稲わ らなどを用い て縛 り付 け, これを繰 り返 してい く方法である これは手間のかかる方法であるが,-チ ミツの 生産を確実に行 うことができ,一定 した品質の ハチ ミツを得 ることがで きる.9月に実施 した 瓶入 りハ チ ミツの水分調査で は,水分含量 は 21-22%と水分 の少 ない,熟成 された-チ ミ ツが殆 どあった.養蜂が普及 してきた段階で, -チ ミツなど養蜂生産物 の市場の確保 は,養蜂 による目にみえる収入増加の必須要素 として重 要な課題 となる. トゥアチュ了のハチ ミツの品 質や味の良 さは,ベ トナム国内では有名 になっ ている.Chinh(2001)が提言 しているように, モ ン族が生産 した トゥアチュ了の-チ ミツであ ることがアピールできるような容器やラベルを 工夫 し,ハ ノイなどの都市部で,無農薬有機農 業地域で生産 された 「オーガニ ック -ニー」 として市場展開する方法が模索で きる.そのた めには,BRDCの今後の協力が必要であると考 え られる. 蜂群管理上の問題点 としては,蜜源の少ない 季節での蜂群の逃去が上 げ られる.筆者 は,ニ ホンミツバチに適 した可動巣枠式縦長巣箱であ るAY巣箱を開発 し,横長巣箱に比較 して分蜂 性の低下や貯蜜の増加など,飼育の安定化をは かることができている (吉田,2000b).イ ン ド ネシア森林省では,縦長巣箱の ヨシダ巣箱が ト ウヨウ ミツバチの飼育 に良好であるとの結果が 報告 されている(Widjaja,etal,2000).その ために,生産性の高 い養蜂を営むための巣箱 と して,縦長巣箱 による蜂群管理 を提案 した. 2001年5月 に,AY巣箱 をベ トナムの トウヨ ウ ミツバ チに適 した形 に改良 した巣箱 を提供 し,8月には縦長巣箱 による蜂群の飼育が開始 された (図16,17).縦長巣箱での トウヨウ ミ ツバチの飼育 はベ トナムでは初めてのことであ り,今後の飼育結果が待 たれるところである. 2.今後の養蜂普及活動 図 18 トゥアチュア郡養蜂普及センターで作成され ている指導用のイラスト フォントー郡, トゥアチュア郡での成人識字 振興計画の中で, どのよ うな農業をどういう形 で取 り入 れ るか につ いての検討 が行われて き た.その結果,識字教育 と結びついた形での養 蜂普及 は可能性が高いと結論 された.養蜂 は伝 統的に行われてきているため,非識字者 にとっ て も分か り易 く,資本を多 く要 しない,労働力 の負担が少ない,蜂群を設置するための土地負 担が少ない,生産物の運搬が容易であるなどの 特徴が上げられる.普及活動 にあた って,指導 のための印刷物の配布 は,識字率の高いところ では適切な方法であるが,識字率が著 しく低い ような地域では効果 は低減する.実際,ネパ ー ルでの農民参加型養蜂普及事業で識字率の低い 地域に対 しては,養蜂技術をイラス ト化 した掛 図を用 いて普及活動が行われている (中村 ・中 村,2001). トゥアチュア郡のサ ンニエー村に おいて,手引書では理解で きず,蜂群が逃去 し て しまった例があった. そのため養蜂指導面で 導入す る養蜂教材の作成 は,今後の活動 にとっ て重要 な課題 となる. 主な教材 としては,(1)省や郡の 「継続教育 セ ンター」で村 々の寺子屋で教える教員養成の 際に,BRDC専門家によって養成教員に養蜂の 基礎を講習する.その際 に養蜂の基礎的な内容 を分か り易 く説明する教材や 「トウヨウミツパ テの養蜂」 についての ビデオを作成 して指導す る.(2)教員による寺子屋での識字教育では, 養蜂用語を解 り易 く表 した初心者向けのイラス ト化 したポスターで,養蜂 に興味を持 って もら うための指導を行 う.(3)養蜂を希望する農家
には,飼育の技術的な内容 をイラス ト化 したポ スターを用 いた指導を行 う.(4)理解 し易 い言 葉 とイラス トによる飼育 マニュアル,管理のポ イ ン トを表 した養 蜂 カ レ ンダーを配布 す る. (5)飼育管理の講習 のために 1群程度 の蜂群を 寺子屋 に配置す るなどが考 え られ る. これ らイ ラス トの作成,講習会の支援 には, BRDC,農業普 及 セ ンターの協 力 が必要 で あ る. 既 に農業普及 セ ンタ-によって, 図18に 示 したよ うな分蜂群の捕獲方法 をイラス トに し たポスターや,その他の管理方法 などのポスタ ー作成が予定 されてお り,今後 これ らを利用 し た活動が期待 され る. (〒194-8610 町田市玉川学園6-ト1 玉川大学 ミツバチ科学研究施設) 引用文献
Crane,E.et.al.1993 ミツバ チ科 学14(4):1 57-164.
Chinh,P.H.2001.Report:Surveysituation of beekeeplnglnTuaChuaandPhongThodis -tricts,La主Chauprovince. BRDC.7pp, Hong,D.T.1999.Report:ResultofImplement
a-tion BeeProgram 1999.TuaChuaAgr.Ext. Sta 5pp 松香光夫,深江義忠, 清水衛. 1995.ミツパテ科学 16(3):123-128. Mulder,V.1992.NEDTAR:61-74. 中村佳子,中村純. 2001. ミツバチ科学22(2): 87-97. Saville,N.M.1998.ミツバチ科学19(3):121-128. Tan.D.Q.and P.X.Dung.2000.Proc.3rd.
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A projectforpromotion ofadultliteracy in northern mountainousreglOn in Vietnam was inaugurated in April,2000 by Japan Inter na-tionalCooperationAgencyandNationalFeder a-tionofUNESCO AssociationlnJapan.Thispr o-jectlSdevelopedatTuaChuaandPhongTho dlStrictsin La主Chau provinceneartheborder ofLaosandChina.PeopleofMhongtrlbeliving atTua Chua hasbeen traditionally keeping bees. They haveearned somecash byselling the beekeeping products. The authorvisited there in March and September ln 2001 and surveyedfeasibilitytoincreasetheirincomeby developlngtheirskillsofbeekeeping.
In thoseareasgroupsoftheinterested bee -keeperwereorganlZedundertheinstructionof AgriculturalExtension Station. Thosegroups make iteasierto solve the various problems concerning beekeeping skills and knowledge. Alsotheyhaveregularmeetingsandorganized activitleSaccordingtoanllmberofrulessetup. They keep beesin the movable-frame hives,
whichwereconvertedfrom horizontaltraditi on-allog hives. Theframesaremadewith top andsidebars.Thebottom barisnotinstalled. Thewidthofframeis3cm.Beekeepersremove eachcombfrom ahiveandshakethebeesfrom it,and putitonabananaleaf.Thentheycut offthecombcompletelyfrom theframeusinga knife,andtheupperpartofeachcombcontai n-ingsealedhoneyiscollected Thentheyattach the top bar to the lower partofthe comb containing brood by threading twostraw and insertitintothehive.Theaveragehoneyhar -vestfrom onemovable-framehiveisabout5 kg,whereasabout2 kg fora traditionallog hive.
The beekeeping development at La主Chau provinceseemssuccessfulasoneofruraldeveト opmentsin cooperation with Agricultur alEx-tension Station and theprojectforpromotion of adult literacy by National FederatlOn Of UNESCO AssociationinJapan.