HoneybeeScience(1998)
西ネパール,ジュムラにおける農民参加型養蜂普及事業
村落地域 において養蜂 がいかにうま く, また 適正 に普及す るかはその普及活動 にすべてがか か っている. そこでアジア養蜂研究 協会では養 蜂振興普及 のため, アジア各地 の事情 に応 じた 普及活動の実行 ガイ ドライ ンを作 っている.本 稿では, ネパールの辺境地域の ジュムラでの養 蜂開発における筆者の ごく限 られた経験 を もと にこれ らの点 についてまとめてみた.提言 の多 くはアジア各地で一般的であろうが, また多 く は, この事例 における,辺地で,伝統的で,刺 用可能資源の少 ない地域 に特異的な内容で もあ る.本稿 の目的は したが って,事例 を もとに し た 「モデル」 の作 出といえよう.なお, この事 例 はア ジア養蜂研究協会 とICIMOD による養 蜂振興 ワークショップ (1998年 3月 23-24日 に開催)での討議 の材料 とされた. モデル作出のためにジュムラを候補地 と した のは, 1) ジュムラの トウヨウ ミツバチは他の ヒマラヤ地域 の ミツバチよりも大 き く,ハチ ミ ツの生産量 も多 いと思われていること, 2) ジ ュム ラで は盛 ん に伝統養蜂 が行 われて い るこ と, 3) 稲作 には不適 な ジュムラの標高では養 蜂を行 うことに利点があ ること, 4) ハチ ミツ と蜂 ろうが地域経済 (物 々交換)において重要 な位置を占めること, 6) 蜜源植物が充分 にあ ること, 7) ジュムラは辺地でまた耕地が少 な いことか ら極度の貧困状態 にあ り,養蜂 は収入 源あるいは栄養改善のための選択肢 として試 さ れるべ きであったなどの理由による.Ⅰ
養蜂振興の定義
養蜂の普及振興 とは何か とい う実際的な定義 は 「養蜂の (専門的)技術 と知識 を,通常 は養NaomiM.Savi
l
l
e
蜂の "専門家"か ら "研修者"へ,それ らの人々 の居住地や住居 を訪れて伝えること」である. 研修者 は一般 的 には男女 を問わず農民 を指 す が,新 しい普及指導者で もよい.専門家 は ミツ バチの研究者,普及指導員,あるいは農民である.Ⅱ
養蜂振興の方法
養蜂振興事業では下記 の方法が組み合わされ て用 い られている, 1)教室型研修 養蜂理論や ミツバチ生物学 などを,地域や地 方 の農業研修セ ンターな どに人を集 めて教 える のに向 く. ただ し,研修 にどの農民を呼ぶかが 問題で,村落内での評 いの原因 となることもあ る.発言権 のある者が参加 しやす く,実際に活 動的で も,あるいは興味を持 っているのに黙 っ ていた り,注意をひかないために参加で きない ことがある. 2)村落研修 上記 のよ うな理論 の研修 (ただ し材料や設備 図1 ジュムラのバタ村で トノブバー巣箱造 りの研 修を受ける農民. 村落研修はひとにぎりの代 表ではなく多くの村人が参加できる利点があ る122 図2 カルナリ技術学校のデモンストレーション蜂 場で (稲わら巣箱を開けてみる) は限度 が あ る) に も巣箱 の実地製作 に も向 く (図 1). コ ミュニティのよ り多 くの人 々が参加 で きる点が利点である.参加者 は自分 の仕事の 合間に気軽 に参加 でき,何 が行われているかを 理解 しやすい.家畜や子供 の世話 など日常の作 業を研修の合間に行 うこともで きる.参加者 の 日常 の仕事 にあわせて,男女別のクラスを時間 をかえて組む ことも可能である.一方講師はそ の村 の事情がよ く理解で き,そ こでは何が適切 かを知 ることがで きる. 3)実地研修 (デモ ンス トレー シ ョン) 特 にデモ ンス トレーション蜂場 (図 2) やパ イロッ ト農家での研修 は,養蜂作業や蜂群管理 ゐ研修では欠かせない. 4)訪問研修 訪問研修 には個別指導や, デモ ンス トレーシ ョンによる実地上 の問題解決などが含 まれる. どのような問題が実際に発生 していて,それを どのように解決 してい くか といった追加研修で は不可欠 な方法である 5)研修旅行 通常 は同地域 (地方)内,時 には普及が進ん だ他地域へまだ普及が進んでいない地域の農民 を連れてい く,予算があり,言語的にも,養蜂 事情 も同等の場所があれば,たとえ隣 り同士 の 村での相互訪問 も意味があ る. このような相互 訪問 は ヒマラヤ養蜂協会 に所属す るジュムラの 養蜂家 とイ ン ド, ウッタル プラデシュ州のム ン シア リの国立造林協力連合 の養蜂家 との間で行 われ る予定である. 6)印刷物の配布 識字率が高いところでは特 に適切 な方法であ る.識字率が著 しく低 いよ うな地域では効果 は 低減す る.研修 に用 い られ るものは,写真入 り で本文 はやさ しい現地語で書かれている必要が ある.そのような印刷物 は (研修生以外の)新 たな読者や教育 レベルの高 い人々にとって も有 益である.
Ⅲ
養蜂振興の基礎
1 地域 内の利用可能な資源の探索 資源には,1)地域 の土着 ミツバチ,2)伝統 的な養蜂技術 と知識, 3) 地域で入手可能な材 料,4)住民が含 まれ る. なぜ土着の ミツパテを用いるか ? 地域 の土着 ミツパテを用 いることが どのよう な養蜂振興 において も最適 である. これは,導 入 した ミツバチは防除不可能な病気を蔓延 させ 得 る,新 しい環境 に適応 しない,高価である, 野生の蜂を用 いるのに較べて初期投資が大 きい などの理由による.充分 な病気の検査がなされ ないままの ミツパテの導入 によって大 きな損害 を被 ることもよ くある. ジ ュム ラの事 例 は それ を物 語 って い る. 1990年代 のは じめにこの地方 の養蜂 を改善す るための研修普及事業で, そのNGOの要請 を 受 けた養蜂専門家がセイ ヨウ ミツパテを導入 し たが, その後1994年 にはすでに トウヨウ ミソ バチへの ヨーロッパ腐姐病感染 は有意 な頻度で 図 3 伝統養蜂の知恵.テンの防除の方策として,石 と林のある枝で問いを施 した伝統巣箱(Pecchacker 活動 をは じめた1995年 までにはヨーロッパ腐 姐病 とそれ以前か ら被害 のあ ったタイサ ックブ ルー ド病の双方のために ジュムラの ミツバチは かな り失 われていた.1996年 にはカルナ リ技 術学校の蜂場 の蜂群や村 内の蜂群 もほとんどが 死滅 した.1996年 に行 った検査で は ヨー ロッ パ腐姐病 が検 出 された.1997年 にはタイサ ッ クブルー ドはほとんど見 られな くな ったが, ヨ ーロッパ腐姐病 は地域全体 に被害を広げ,現在 で も感染 している蜂群が見 られ る.セイ ヨウ ミ ツバチが導入 されなか った場合 に何が起 きたの かを確かめることは今やで きないが, ヨーロッ パ腐姐病が トウヨウ ミツパテに見 られる病気で はないことか ら,セイ ヨウ ミツバチか ら蔓延 し たとしか考 え られない. なぜ伝統的な知識や技術を用いるのか ? 現地の伝統養蜂家 は自分 たちの蜂や養蜂事情 について外部 の,特 に海外か らの現地語 の話せ ない養蜂専門家 よ りもよ く知 っている. それが 原始的であって も,普及指導員 はそれが長 い歴 史の中で発達 して きた もので,単純 に無視でき た り近代的な方法で置 き換え られるものではな いことを肝 に銘 じなければな らない (図 3).変 化 には時間がかか り,その社会がより伝統的で 図4 参加型観察法.著者 (左)と誓友のスキリ・ブ ッダ.現地の衣装を着て彼らと同じように振る 舞うことで障壁は取り除ける 図5 ジュムラの低カース ト部落であるダダコット 村におけるPRA.女性たちが,日常利用する 資源がどのくらい遠 くにあるかを地図を描い て示 している 末発展 な状態であればあるほどかか る時間 は増 加す る.文盲で地方か ら出たことのない人々に とって,新 しい考 え方 はゆっくりとしか受 け入 れ ることので きないもので,通常納得で きるま でにそれな りの努力が必要である. また植物 の遺伝資源を将来の利用 に備えて保 護す るように,養蜂 に関す る伝統的な知識や技 術 も将来,あるいは他地 で応用可能なように調 査 して書 き残 してお く必要がある. 現地知識 との接触 養蜂の現地知識 に触れ るには時間 と努力が必 要であるが, これには農民 と普及員の間の信頼 関係を築 く上で重要 な方法である.最 もよいの は,伝統的な方法を見て,習い,一緒 にや って みることで,家を訪 れて,あるいは少人数 のグ ループを対象 に方法につ いてさりげな く質問す るの もいい.このような活動 は 「参加者観察法」 を適用すれば簡単 に行 え る. これ は地域 の習 慣,服装,行動を外部の普及員が受 け入れ るこ とを意 味 して い る (図 4).「参加 型村 落評 価 (PRA)」と 「参加型学習活動 (PLA)」はそのよ うな知講屯に接触す るのに用い られ る.その中で は伝統養蜂 の活動 チ ャー トやカ レンダーを作 っ た り,他の農事,収入源,男女 の労働区分 など を知 ることができる (図 5). 現地知識の改良 と利用 実際に利用 されていた り,村人が好む伝統巣 箱の研究 に基づいて,適正な巣箱が現地 の もの の改良 とい う形で作 られ ることが多 い. これは 固定式か ら可動枠式への転向を含むのが普通で
124 図6 ジュムラ式巣箱の トップバーを見るジュムラ 養蜂プロジェク トの指導員サタナンダ・ウパ ダヤ氏 ある.板や釘,針金などの入手状況 によっては 近代的な枠式巣箱で もいいが,発展途上国での 辺地 では多 くの場合,巣枠式 よりも トップバー 式 の方が実際的である. 適正技術の導入 による伝統技術の改良 「適正 (中間)技術」は地域の作業条件や資源 状況 に適合 した技術を指す. これは土地 によっ て異 な り,例えば ジュムラではジュムラ型 トッ プバー式巣箱 (図 6)が最 も適正であ り,一方 もっと標高の低 い地域や森林破壊が進んだ地域 で は, そのような巣箱 は不適切で,代わ りに, 梶, レンガ,稲わ らの巣箱 が向いている. 2 養蜂普及事業への普及対象者の参加 参加型計画 は じめに普及指導員 は前述 のPRAやPL
A
, あるいは参加者観察法を用 いて村人が何 を 感 じ,何 を欲 しが っているかを調査す る必要が ある. いったん養蜂事業 に参加す ることが望 ま しいとなればその事業 をど うすすめるか農民参 加型 の計画立案 によって事業運営を決定す るべ きである.適正技術が必要 であればそれを開発 す るために農民を行動調査 に参加 させ る必要が ある.同様 に地域 の伝統的な知識 は普及事業が 持 ち込む新たな方法を取 り混ぜてい くために調 査 して記録 されるべ きであ る. 普及の対象を誰 にすべきか 養蜂普及 の受 け手を誰 にす るかはひとつの課 題である.一般的なガイ ドライ ンでは伝統養蜂 の経験を持っか,特 に興味を持 っていて伝統的 な方法で精力的に養蜂を行 っているか,あるい は養蜂が経済的な利益を もた らす と考 え られる 人 々である (図 7).初期投資の少 ないこと,土 地 を必要 としないこと,時間をそれにとられな い ことなどの利点か ら,養蜂 は土地 を持たない 農民 (ジュムラでは低 カース トの人々)や女性 に も向 く. グループ活動 特定 の対象を決めて活動す る場合,活動 を組 織化 し,経験 とアイデアを共有す るために も養 蜂家のグループを結成す る必要がある. このグ ループは養蜂の専門知識 を周辺 に広げる中心的 な役割を果たす 「ポケ ッ トエ リア」にいるべ き である. こうしたグループは郡 レベルの養蜂 協 会 の支部的な役割を果たす ことに もな り好都合 となる. このグループが事業を彼 らの村 のため の もの と思 い,得 られる利益を自分たちの もの であると思わないと普及のための努力 は無 にな る.養蜂家 グループに決定権 を与 え,責任を負 わせ ることはグループを効果的に機能 させ るた めに, また動機付 けのために も極 めて重要であ る. 農民か ら農民へ グループを結成 し,農民 に研修 を行 った ら, その中で最 も熟練 して興味 も持 った者 に,その 地 域 の他 の農民 を教 え させ るべ きで あ る (図 8).農民同士 は地域 の方言 を共有 し,お互 いの 事情 も理解 している し, また自分 たちの村 なの で くつ ろいだ気分でい られ る.互 いの問題 を理 解 しているので,普及指導員 と研修生 の関係 よ りも厚 い信矧 姻係 にある.実際,農民か ら農民 図 7 ジュムラのパ トマラ村の伝統養蜂家一家,彼ら が盛蜂普及の対象となる図 8 農民から怨民への研修.H lBAのメンバーが 他のIgp<民に巣箱の扱い方を説明している への効果的なアプローチ こそがおそ らく長期的 な養蜂普及活動を辺地で行 う場合の唯一受 け入 れ られ る形か も知れない. 市場開拓 地域 の養蜂 協会 と して,あ るいはその支部 とし ての協同販売 は市場開拓 においていい手だて と なる.市場の確保 は養蜂 による目に見える収入 増の必須要素である.養蜂生産物の加工や付加 価値製品の製造 は地域 の養蜂家や養蜂協会の潜 在的な収益性 を上 げるためにも組織化 され る必 要がある (図 9). 3 文化的感受性 外国人や対象地域外の者 が外来 の普及指導員 として心がけてお くべ きことには大 ざっばに次 のような ものがある. 1)地域の習慣や タブーの尊重 2)現地 向 きの服 装 一普 及員 と農民 との差異 (貧富 や教育程度)を強調 しないよ うに控 え 目で賀沢ではないものにす ることが重要. あ ま りに現代風だ った り地域の人 々にとって見 慣れない服装だ った りす ると農民か ら疎外 さ れることもある 3)可能 な限 り現地語,方言 を習得す る.時間的 に無理があるな ら,せめてあいさつや ごく簡 単 なや りとりがで きるよ うに努力す る, 4)自分 の方がよ く知 って いるか らと出 しゃば らないで現地 の経験者の意見を尊重す る. 5)相互学習の精神で進む こと. こち らの考 え や知識 を共有するの と同 じように農民 に彼 ら ハチミツや蜂ろう,ろうそく(1998年 4月) が何を知 っているかをたずね ること. 6)巣箱 に触 った り,開けた り,あるいは写真を 撮 った りす る前 に許可 を もらうこと. 7)時間,空間,あるいは食事 などを農民 と共 に す ること.普及員 と農民 の間の良好 な関係 は 普及事業 の成功の絶対条件である. 8)何 につけ参加す ること. 農民 と共 に くつろ いでいっ もの自分 を保つ こと.
4
持続性 普及事業 を通 じて,持続性 の問題 については 繰 り返 し考え理解す るよ うに しなければな らな い. ほぼどのような事例 において も,外部 の資 金が入手可能であれば金銭 的に物事 を解決す る 傾向にあるが, そのような潤沢な資金を費やす ことがある時点以降は不可能であるということ を充分 に考慮 に入れなければな らない.普及員 は以下 の点を自問 自答すべ きである. 1)事業の後 を誰が受 け継 ぐのか ? 2)今後,材料や資金がどこか ら来 るのか ? 3)環境 に関わ る問題 (森林利用など)が具現 し ないか ? 4)農民 が事業 を彼 ら自身 の もの と考 えている だろうか ?Ⅳ
普及か ら得 られるもの
次の ものが普及 の利益 と してあげ られ る. 1)知識 の移転,共有,新 しい知識の創造 2)養蜂 による収入増加 3)養蜂 による生活の向上- これは祭事や神事126 表1 普及活動に関わる調査項目と利用できる方法 調査すべき項目 手法 いっ農民に会い,研修等の活動を行うか -- スケジュール作成 ・ルーチンワーク 警 讐 慧㌔ 芸去芸芸完 忘這㌔ 莞嘉忘孟宗芸
妄
)- 地酢 製 (部落,資源など) な作物はどこにあるのか 養蜂の相対的な経済価値はどうか-
(
芸冨…震 .;芸との順位付けとその解析 どんな現地技術 (養蜂の)が用いられ・それぞれがい〉- 養蜂暦作成・作業フローチャー ト作成 つ重要になるか 主要蜜源は何か - 蜜源暦作成 ハチミツの帖 ,蜂群数7その他養蜂に関わる状況の変化 〉- 時系列調査と現状調査 性差別の問題を考射 るべきか-
(誓書別のPRAを行い考え方に差があるかを比較 のための "ハ レ" の もの としてハ チ ミツを保 存 してお くよ うな, あるいは薬 と して用 いる よ うな辺地 において特 に重要 である.蜂 ろ う も薬 と して加工 され, またその他 の社会的, あるいは環境上 の利益 を もた らす. 4)農民 を組織化で きる 5)(開発への)動機付 けになる 6) 農民 に権限を与 え られ る (農民か ら農民へ の研修 で は特 に) 7)(現地技術 の取 り込 みによる)新 しい適正技 術 の開発Ⅴ
参加型開発手法とその応用
表1
に は普及事 業 を進 め る上 で の確 認事項 とそれ らを確かめ るために用 いることが可能 な 参加型開発手法をま とめた.Ⅵ
ジュムラでの養蜂普及の事例
以下 に述べ る普及事業 は適正巣箱 の設計 と現 地 知識 に関 す る実地調 査 か ら発展 して きた.1
99
4
年 オース トリアか らの専 門家 が カルナ リ 技術学校 とジュムラの農民 に稲 わ ら巣箱 を持 ち 込 んだ.1
年後 の1
995
年, この地域 の追跡調 査 が行 われ,稲 わ ら巣箱 はほとん ど利用 されて お らず,管理 の点 で問題が あることが明 らかに な った.1
995
年7
月 には, カルナ リ技術学校 に5
種類 の巣箱 を置 いて実験 が始 め られた. こ の実験で用 いた巣箱 は,1) 伝 統 的 な横 式 丸 太 巣箱, 2) 丸太巣箱 を改良 した トップバー式丸 太巣箱, 3) ジュム ラ巣箱 と呼ばれ る箱形 の ト ップバ ー巣箱, 4) オース トリア式 の稲わ ら巣 箱 (巣枠 または トップバ ー),5)ニュー トン巣 箱 (枠式)の5種 であ る. これ らの実験方法や 結 果 につ いて は第4回 ア ジア養蜂研究協 会大 会 で発表 された.1
996
年4-5
月 に試験 に用 いた巣箱 を郡 内 の異 な る地域 の カー ス トの異 な る4つ の農民 グループに配布 して,農民 による巣箱 の受 け入 れ と村 の養蜂事情 とを調査 した. これ らの グル ープには特 に隣村 の住民 に対 して も養蜂 を教 え られ るよ うにな る ことを念 豆削こお いて巣箱 製 作,養蜂理論 ・実地 の研修 を与 え,事業側が与 えた蜂群 を農民が分割 してで きた新 しい蜂群 で 新 たな養蜂 グループを始 め られ るよ うに計画 さ れた. 養蜂 グループが結成 された1
9
96
年春, タイ サ ックブルー ドや ヨーロッパ腐姐病 を含 む蜂病 で, カルナ リ技術学校,村 に設 けたデモ ンス ト レーシ ョン蜂場, および農民 の所有す る伝統巣 箱 の蜂群 のほとん どが死滅 した.養蜂家の士気 や意気込 みは失 せて,事業 は失敗 したか に見 え た. ジュムラ養蜂 プロジェク トのス タッフは, これ らの病気 の薬剤防除 と防除のための管理方 法 を研究 し, 1
9
97
年5
月 には 「蜂病防除 と普 及」 のための農民指導員研修 が行 われた. この 研修で, もともとの4つの養蜂 グループの中か図10 -同に会 した養蜂組織 ジュムラヒマラヤ亜蜂 協会のメンバーたち ら優秀 な農民 を選 び, どう病気 を診断 し,必要 な管理 をす るかの詳細 な研修 を,養蜂 の基礎 と 普及手法 の研修同様 に行 った. この研修 か ら最 もす ぐれた農民普及指導員 が選 ばれた.彼 らは 各地 に赴 いて,蜂病 と伝統 養蜂 に関す る聞 き取 り調査,参加型開発手法の実践,蜂病, ろ うそ くや薬用 ク リームを含 む蜂 ろ う加工 に関す る研 修, トップバ ー巣箱 (ジュムラ巣箱) の普及 な どを行 った. ジュムラ養蜂 プロジェク トで農民指導員を利 用 した ことは,農民 に権限 を与 え,強 い動機付 けとな った. また同時 に郡 内で養蜂家 を探す上 での最 も効果的な方法 にな った.地域 の農民指 導員 は政府 の普及員や地域外 か ら来 る開発事業 のスタッフに較 べてい くつか長所 があ る.彼 ら は農民 と同 じ方言 を話す (ジュムラ方言 は平野 部 や カ トマ ン ドゥの ネパ ール語 とは区別 され る).外来者 が とまど うよ うな現地事情 に も特 に不平 を抱かない し, また外来者 と住民 との間 にあ るよ うな貧富,学歴 の差や文化的な不釣 り 合 いを招 くこともない. 彼 らは,2・3か月 の うちに名 目だ けにな っ ていた郡 の養蜂 協会 を農民主導 の ジュム ラヒマ ラヤ養蜂 協会
(
HI
BA)
とい う名 の非政府組織 (NCO) として再生 させ るために組織化 された (図10). この組織 は現在 で は新 しい養蜂家 グ ループと して,巣箱製作 と養蜂 の研修, および 蜂病予防のための活動 をす るNGO と して登録 されて い る.1997年 5月 か らこれを書 いて い る1998年 3月 までに農民指導員 によ って,30 か村で養蜂 (巣箱製作 を含 む こともあ り)研修 が行 われ,30の新 たな村単位 の養蜂家 グルー プが結成 された.郡 内の農民 が追加研修 の対象 とな り,採蜜やハチ ミツの品質,蜂 ろ う加工 と 販売,巣箱 の衛生管理 と蜂病予防, およびその 他養蜂 に関す るさまざまな研修 を受 けた. 1998年 3月か らは, ジュム ラ遵蜂 プ ロジェ ク トか ら資金援助 を受 けて,HI
BA
は,特 によ り辺地 で, よ り標高 の高 い地域 の,養蜂が他 の 耕作 よ りも利点 が多 いと思 われ る, もともと伝 統養蜂 の盛 んで あ った地域 をね らいに入れて, 郡 内の7か所 に村単位 の 「養蜂情報 セ ンター」
を設置 し,各 セ ンターには3月か ら9月 まで常 駐 の男性 の指導員 を置 く予定である. そ こで, ジュムラ式巣箱 と伝統巣箱 の両方 を置 き, また 最 も活動的な養蜂 グループに対 して巣箱 の配布 を行 う. これによ って村内 に2か所 のデモ ンス トレーシ ョン蜂場が開設 され, それが研修やデ モ ンス トレーシ ョンに用 い られ, また女王蜂や 交尾群 の供給源 と して も機能す るだろ う. 現 在 こそ, ほ とん どの活 動 がICIMODの ジ ュ ム ラ養 蜂 プ ロ ジ ェ ク トの援 助 に よ るが,HI
BA
は近 い将来, 農民主導型 で 自己資金型 の 組織への転換 を削 旨している.ハチ ミツ,蜂 ろ うお よびその加工 品 の協 同販売 は地 元 の別 の NGOであるスル ジャ社会奉仕協会 (4S) の協 力 を得 て,最低限の養蜂普及活動 への融資がで き そ うな 状 態 で あ る. しか し,近 い うち にHI
BA
が養蜂普及 のためのセ ンターを村 々に開 設 す ることがで きれば上記 のよ うな集 中的な普 及事業 をす る必要 はな くな る.農業普及事務所 図11 養蜂研修に参加 したジュムラの女性たち128 の普及員 との共同で持続的かつ効果的な養蜂普 及が行えそうな様子である. 女性に対す る養蜂普及 はジュムラにおいては 大 きな課題であった (図 11).女性 は養蜂に対 して興味を示 したが, 日常 の仕事量 における性 差 によって,女性 には養蜂を学んだ り, さらに 営むための時間はごく限 られている.女性 は家 辛,育児,耕作に追われてお り,そのため,秦 蜂の研修を受 ける時間を作 った り,普及員が訪 問 したときに会 ったりす ることが難 しい. しか し養蜂への女性 の参加 を妨 げている最大 の壁 は,男性がいるグループで発言 したり,あるい はそれに参加す ることさえできないというもの である. これは同時に彼女 たちの教育 レベルの 問題 も関与 している.男性 の方が教育があり家 族 を代表 して話す ものだか ら,誰かが村 に来た ときには男性 と話 したがるものだと認識 されて いる. 女性を参加 させるために,女性の農民指導員 を養成 した.5人の女性が訪問調査 と女性対象 の研修を行 うために雇われた. この女性たちに よって特別の研修が行われた. しか しなが ら女 性の指導員が村 に入 っていろいろな場所 に立 ち 寄 りなが ら歩 き回 ることには, さまざまな風評 が立 ち,やさ しいことではなか った. ジュムラ の習慣では女性が旅行す ることがすでに認め ら れないことであり,それが彼女 の父親や兄弟や 夫以外の男性 と一緒であればなおさらである. そこで,今後の計画では女性指導員 は単発の訪 問研修 よりもーか所で5- 7日程度 の研修を行 う際に有用になると思われ る.彼女たちは養蜂 情報セ ンターをたずねて対象区域内の女性研修 員 と連絡を取 るように して,毎 日いろいろな場 所を巡 り歩 くような長期の訪問研修 には行かな くて済むようになる. ミツバチが病気 に対 して 抵抗性がつ くにつれて,女性たちが彼女たちだ けで管理す る分の蜂群 も入手できるようになる とありがたい. 本稿では,ネパールの辺地である養蜂普及事 業がいかに行われているかの詳細な報告である と同時に, この事業の経験を もとに一般的にど のような問題が起 こるのかを も述べた. アジア 養 蜂研究協会のためにはこれがひとっのモデ ルとして受 け入れ られるか どうかはわか らない が,いずれにして も他の各地でまた異 なる問題 -の経験を もとにモデルは作 られるべきではあ る. (著者 の住所 は下記参照)(翻訳 中村 佳子)
SAVILLE,NAOM【M.Farmer-participatory exte n-sion in Jumla,WestNepal.Honeybee Science (1998)19(3):12ト128.1CIMOD,PO.Box 3226,
Kathmandu,Nepal.
In thispaper,basicprinciplesofbeekeeping extension are described as: i) working with the local bees, technologies, materials and people;ii)participation ofbeneficiariesin the development process;iii) culturalsensitivity; iv)sustainability.Examplesoftheapplication ofPRA toolsinbeekeepingextensionarelisted,
and the story ofa farmer-partlCipatory pro一 gramme in beekeeping development in the remotedistrictofJumlain WestNepalistold. Jumla,a high hilldistrict of the Himalaya (2500-3700 m),isisolated from motorroads by5dayswalk.Materialsbroughtinfrom the plainsarenotaffordableforthelocalpeople.
Thereisastrong tradition ofbeekeeping in Jumlaand henceextension isfocussed on the adaptation and improvementofindigenouslog hivebeekeeping.Farmers.whohavebeen tr a-ined in movable comb beekeeping with the newly developed Jumla top-barhive,and also in brood disease identification and treatment,
arenow trainersatavillagelevelfortheHi ma-layanBeekeepers'Association.