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Johannes Brahmsの後期ピアノ曲にみる技法の特徴

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Academic year: 2021

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白鴎大学発達科学部論集第2巻第1号

論文

JohamesBrahmsの

後期ピアノ曲にみる技法の特徴

福田由紀子

Thecharacteristictechni(luesofthelate−period

JohannesBrahms’pianopieces

1■皿W

Brahmsのピアノ作品の変容 “6つのピアノ小品作品118”の設定理由 技法の特徴を譜面から読む Brahmsの「3」という数字の意味

1.Brahmsのピアノ作品の変容

演奏家は作曲家の意図するところを譜面から読み取り演奏をする。それ では、作曲家は何を思って作曲するのだろうか。その際、自分の思いをど のような技法を使って表現していくのだろうか。 本稿では、JohannesBrahms(独・1833∼1897)の集大成とされている 後期のピアノ曲に焦点を当てて考察していく。 彼は簡単な動機を念入りに展開させていく技法を使っている。,Bach

(2)

(独・1685∼1750),Beethoven(独・1770∼1827)など過去の伝統を研究 し、主題の拡大、反進行といった対位法的な技法も自分の作品の中に取り 入れていく。しかし、当時は時代遅れの音楽と否定的な評価を受けたよう である。19世紀に入ってからの作曲家達はそれぞれが新しい方向を目指し ていて、Brahmsには先端に躍り出る余地がなかったらしい。それゆえ過 去に目を向けていったのである。が、技法そのものに強い関心を持ち続け 追求した結果、実は、新しい表現領域に足を踏み入れていくことになった。 その技法は、音楽を単位要素まで分解し、それらを組織的に組み立てて 作品を作り上げていく技法だったのである。のちに、AmoldSch6nberg (懊→米・1874∼1951)によって発見されたのである。彼がBrahmsから 学んだこととして次の点を挙げている。 『1、モーツァルトを通じて私の中に無意識のうちに入り込んできた多 くのもの。とりわけ不規則な拍節法、およびフレーズの拡大と縮小。2、 表現の造形性。つまり明瞭性を確保するのに大きなスペースが必要なとき、 それを節約したり惜しんではならない。いかなる構造も細部まで仕上げる こと。3、楽曲構造の体系化。4、節約、それでいて豊かであること』 (注1) Brahmsは、作曲技法の面で根本的な改革を成し遂げたのである。 彼の後期に作曲されたピアノ曲“6つの小品作品118”の譜面からも、 動機を徹底して使う技法や対位法的な技法、音域の広さ、和音やオクター ブの頻繁な使用、哀愁を帯びた旋律等、いかにもBrahmsらしい特徴が随 所に伺える。譜面を眺めているうちに、これらの技法を駆使すると共に 「3」という数字にもこだわりをもって作曲をしたのではないかと思われ る点を見い出した。 例えば1番は3音下降の動機が曲全体に組み立てられている。2番は、 跳躍進行をしている動機だが、回転してみると隣り合った3音で構成され ている。3番は順次進行の3音が上行、下降しての主題である。また、三 部形式の提示部、再現部が、さらに三部形式で書かれてある。4番は3連

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JohamesBrahmsの後期ピアノ曲にみる技法の特徴

符で書かれてある。5番は、中間部の主題が3回、変奏も含み奏される。 6番はたった3音の揺れ動く主題が曲全体を構成している。これら6曲は すべて三部形式で書かれている。以上の点から彼が「3」と言う数字にこ だわりを持って作曲したのではないかという念を強くした。 「3」という数字がBrahmsにとって何か意味のあることだったのだろ うか?ただ単に偶然だったのであろうか?それとも数字にこだわる人問だっ たのか、主義、主張が文章として書き残されていないのでわからないが、 作品から技法を研究していく過程で答えが見つかるかもしれない。

■Brahms作曲“6つの小品作品118”の設定理由

創作活動の第4期である晩年に、オーストリアの保養地イシュルで59才 の時(1892年)書かれたものである。 その前年に創作活動に終止符を打とうとしていた時のBrahmsの心の状 態が詳しく書かれている手紙がある。 『私は、最近、交響曲も含めてその他いろいろのものに着手しましたが、 どれも具合よく進みませんでした。私は、もう歳をとりすぎたと思ってい ますし、精力的にも書けるわけではなし、またそうしないと決心しました。 私は、自分の生涯が十分に勤勉なもので、十分に達成されたと思っており ます。そして、人に迷惑をかけない年齢となり、いまや平和を楽しむこと ができると考えています。』(注2) しかし、1891年にクラリネット奏者に出会い、彼の演奏に感激して、再 び作曲を始める。もし引退を本当に実現してしまったなら、この作品も生 まれていなかったであろう。 Brahmsのピアノ作品は、ソナタ、変奏曲、小品集に大別される。彼は ピアノ独奏用の作品は、たった15曲しか書いていない。大概、初期、中期、 後期に分けると、“6つの小品作品118”は後期の晩年の作品である。こ の時期には、作品116、作品117、作品119、のピアノ小品も書かれている。

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曲の内容は、イ宅びしさ、孤独感などが漂う、味わい深いものになっており、 Brahms自身、これらの作品を『自分の苦悩の子守歌』と呼んでいたとい うことである。いっさいの複雑なものを捨て簡素でわかりやすい作品となっ ていて、彼の芸術にさらに深い奥行きを与えたとされている。Brahmsの ピアノ曲において本当に完成されたのは後期の小品集であると言われてい る。 一度音楽から身を引こうとした人間が再び作曲しようとした時、変化が 音楽にもきっと現われているはずだ。そしてその変化が作曲においての晩 年的技法なのであろう。一連の晩年のピアノ曲の中で、INTERMEZZOだ

けの作品より、BALLADEやROMANZEの曲名も含む方が技法を読む上

で幅広い研究が可能になる。これらの理由により今回の研究対象を“6つ の小品作品118”に設定することにした。

皿技法の特徴を譜面から読む

Brahms作曲“6つの小品作品118”の譜面からどのような技法が読

み取れるか1曲ずつ見ていくことにする。曲の形式にはアルファベットを 用い()の中には小節番号を記した。各曲の最後には読み取れた技法の 特徴をまとめてみた。楽譜は原点版とみなされるHenle版を使用し、言 葉の説明をわかりやすくするために譜面に書き込みをした。また、図も用 いた。第1曲は譜面全部、第2曲は再現部の初めまで譜面を載せた。第3 曲から第6曲は目立った技法のみ取り上げ、主題と重要と思われる部分の 譜面を載せた。最後に技法を表にまとめてみた。

第1曲INTERMEZZOイ短調

囚(1∼10)圓(11∼20)囚(21∼41)

囚冒頭の3音、C−B−Aの下降音型が動機である。2,3小節の

(5)

JohamesBrahmsの後期ピアノ曲にみる技法の特徴 A−G−Fも動機である。4,5小節のF−E−Disは動機のリズムが縮小され た形である。6小節のD−C、7小節のA−Asは動機の3音のうち、後の 2音を上手に活用している。 最初から10小節までの旋律をみてみると、1オクターブと4度にわたる c−B−A−G−F−E−Dis−D−c−A−As−Gの下降形が用いられている が、下降形はBrahmsによくみられる技法である。 冒頭のバスは、4オクターブもうねりの線を描きながら上昇しているが、 使用されている音はC,E,Aの3音だけである。3,4小節でもA,C,Fの たった3音だけでうねりの線をだしてある。下降する右手に上昇する左手、 また四分音符や二分音符等に対する、動きのある八分音符の使用が対照的 である。 5小節2拍目は、ソプラノ、テノールのA,Hがオクターブ、6小節のF, Fis、7小節のD,Eはアルトとテノールがオクターブである。厚みと重み を出しているそれらは、3度づつの下降で進行している。 5∼7小節のバスラインをみるとF−Fis−Gの加線のある低い音が、半 音階の上昇をする。 8,9,10小節のバスはCが保続音となっている。9,10小節はリズムに 変化があるが8小節を拡大したものである。 和音を見ていくと、1小節のアルトE、3小節のアルトCの内声としての 支えである。5小節の1拍目の和音A、6小節の和音A、和音を使ことで 曲全体に独特の重さと厚みを出している。7,8,9小節の和音も同様で ある。 調性については、イ短調となっているが、冒頭部分がイ短調の累から始 まっていて、聴いてもすぐには調性がわからない。10小節には、平行調の ハ長調に移っている。 四分休符が冒頭、2小節、4小節の左手にあるが、右手の音が鳴り響い たあと、左手の8分音符がappassionatoで動きだすためにも重要であるし、 緊張感、期待感も増す、効果的な使い方をしている。

(6)

Brahmsのピアノ曲は交響楽の響きをイメージしやすいように書かれて いる。 匡i]動機は10,11小節ではソプラノが単音でG−F−Eと下降しているが、 アルトがオクターブでG−Gis−Aと上行の反行形である。 12,13小節はソプラノが3回にわたって下降している。 12,16小節はそれぞれアルトの旋律をソプラノが追う型になっている。 13,14小節のバスはE音を基に3回上行形をとる。ソプラノとは反行し ている。 14、15小節は、ソプラノがc−Cis−Dと動機の反行形で、アルトがc− B(7度跳躍)一Aのラインを描く。下降の動機の際、左手にあった四分休 符はない。 17小節からのバスラインはA−Ais−H−His−cis−D−Dis−Eと、半音 階進行をしている。調は定まらないまま移行する。 囚21小節の右手は動機の3音のうち、後ろ2音を活用している。22、 23小節右手は8分音符が入って変形であるがE−D−Cの動機が活用され ている。 左手は21小節も23小節も4オクターブにかけてのうねる形である。 25小節からはバスは、A−G−F−Eと下降の順次進行をしている。 1番カッコは、リズムに変化があるが、28小節の拡大の形である。 30小節はテノールとソプラノのFis,Disが1,2拍目では入れ替わって いて細部にいたるまで入念に組み立てられている。 31小節からは、6小節にわたっての大きなうねりになっている。その中 の33,34小節に3回にわたって下降形の右手がある。左手は、33小節より A−H−Cis−Dの隠された順次進行のラインを見い出すことができる。 35,・36小節は同じ音型だが同主調の関係になっている。 36小節からは動機の拡大で曲をしめくくっている。 39∼41小節は、左手は4オクターブのうねりである。イ短調の調性であ りながら、最後はイ長調の1度の第2転回で終わっている。

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JohannesBrahmsの後期ピアノ曲にみる技法の特徴 以上の事柄から、曲全体に動機が徹底して使われており、簡素化が感じ られる。調性の不安定さ、音域の広さ、下降形、反行形、オクターブの重 なり、和音の重厚さ、交響楽の響きのイメージ、保続音、休符の上手な使 い方、跳躍進行、順次進行、うねる形、同旋律における同主調の関係、ポ リフォニック、拡大縮小の対位法的技法等が読みとれた。 3という数字のこだわりだが、囚だけを調べても、C,A,F音をそれぞ れ第1音とする動機を3回活用し、しかも3度ずつ下降している。オクター ブの重なりが3回出てきてこれも3度ずつ下降している。4オクターブの うねりの形に使用される音も3音だけである。たった10小節でこれだけ3 という数字を見つけられるのは偶然ではないと思う。匿面コ

(8)

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JohamesBrahmsの後期ピアノ曲にみる技法の特徴

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(10)

第2曲1NTERMEZZOイ長調

囚團(1∼8)團(8∼16)囹(16∼24)回(25∼34)團(34∼38)

團(38∼48)

回国(49∼56)圃(57∼64)国(64∼76) 囚團(76∼84)囹(84∼93)回(93∼102)圓(102∼106)團(106∼116) 囚[蜀冒頭のCis−H−D,Cis−H−A(イ)は、この曲の動機である。 H−Dは3度、H−Aは7度の跳躍をしている。Cis−H−Dを並べ替えれば D−Cis−Hの隣り合った3音である。7度という音程は2度を引っくり返 したものであるから跳躍を回転するとCis−H−A(イ)も隣り合った3音 である。隣り合った音の配置を替え跳躍進行を使うことによって音楽の表 情に変化をつけたのである。國

7度跳躍 3度跳躍

H ll回転する

隣り合った3音の配置

バスもR一へR−Aの跳躍をしている。3、4小節は下降形である。

4小節の3拍目の和音は顎の和音を使って、同じ旋律でも柔らかい響きに 変化している。 5,6小節のバスFis−E−Disは順次進行をしている。 7小節のバスはGis−A−Hの上行の順次進行で、ソプラノは2,3拍目 に下降の7度跳躍をしている。上声部はアルトのパートが入ることで、曲 に厚みを出している。 團10、11小節は3,4小節と比較するとメロディは同じだが和音に若干

(11)

JohamesBrahmsの後期ピアノ曲にみる技法の特徴 の変化が見られる。(書き込み参照) 14,15小節は、6,7小節と比べるとテノールのパートが増えている。 ソプラノは15小節の2,3拍目に9度の下降跳躍がある。 匿]ここからは、小節線をまたぐようにして揺れる形が出てくる。拍子感 の曖昧さをもたらしている。 16,17,18小節、20,21,22小節のソプラノ、テノールの揺れる形の下 で、アルトとバスが、音を保持している。 16,17,18小節のE−Fis−Eは2つとも同じ旋律であるが、和声が違っ ている。 19小節では、ソプラノ、H−A−GisとテノールGis−A−Hが反進行して いる。 20,21,22小節のバスはA−F−Disと3度ずつ下降する。そのたびに、 3度、5度、7度と跳躍の幅が広がっている。 22,23,24小節のバスは2オクターブと3度の中の広いうねりを出して いる。 匝]バスのE音の保続音が4小節続く。ソプラノはGis−A−Ais−H−His− Cis−Dと半音階で上行し30小節のA音を目指し、7度の跳躍をする。アル トは、幅広く動き、跳躍が見られる。 29小節のみ2拍子的に書かれている。本来なら、前の小節と同じリズム で書かれるはずだが、動機のリズムの変形ともとれる。塵]これは、拍 子感の上手な使い方である。29,30小節のバスは、Fis−E−D−cisの順次 進行である。

29小節 本来なら上記のリズムパターンで いくはずであろう。

(12)

30小節から動機がバスに4回出てくる。テノールは持続声としてA音で このように」↓φ」♪JI♪」♪井♪」♪井♪」♪リズムが打たれる。 31小節と33小節の音型は同じでも同主調の関係になっている。 団ソプラノの旋律は動機が転回されている。困

職機。.讐・、贋A

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36,37小節のアルトはA−Gis−F量s−Eの下降の順次進行である。 匿]38∼42小節のバスにはA音の保続音を使っている。ソプラノとテノー ルは揺れる形を使っている。テノールの、38小節の3拍目のFis音、39小 節3拍目のD音、40小節3拍目のH音は3度下降している。42小節からも 左手に3度下降がある。 42小節からのバスは、A−Gis−Fis−E−D−cis−Hの順次進行で、下降 している。 44,45小節のバスは2オクターブと5度の幅で上行している。ソプラノ は6度の跳躍進行をしている。Brahms独特の技法が集約されている。 46,47,48小節にはソプラノにE音の持続声が、アルトには冒頭の動機 が1オクターブ下で書かれている。 旋律が単音で動くのは、囚では、23,24,45小節だけで、その他はポリ フォニックに書かれている。 團第2主題が3回、展開される。 中間部国は、イ長調の平行調である嬰へ短調で、浮情的な8小節の旋 律からなる。49小節から52小節まではソプラノがFis−E−D−cis−H−A一

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JohannesBrahmsの後期ピアノ曲にみる技法の特徴 Gisとなだらかな下降線を描く。アルトがソプラノを模倣する形をとる。 3声部で構成されている。 、[創は嬰へ長調で、すべて和音で書かれている曾57小節∼60小節までは、 右手の旋律を左手が2拍遅れで追うカノンの形がとられている。しかし、 それだけでなく1小節の左手2拍目を右手が2拍遅れで追うカノンの形も とっている。区互]入念な技法である。59小節の3拍目にはシャープ系の 音楽に突然フラットの音が入ってくる。61小節∼64小節までは、前半と旋 律は同じだが和音に変化が見られる。

左手が右手を追う 右手が左手を追う 国では再び嬰へ短調に戻る。国ではソプラノの旋律だったが国では アルトに旋律が移っている。ソプラノがアルトを模倣する。69小節は旋律 がCis(嬰ハ)からCis(嬰ハ)に1オクターブ跳躍して浮情的な旋律の盛 り上がりを作っている。ここはアルトがソプラノを模倣する形をとってい る。 73小節Gis−Fisは74小節のE−Dに続き、76小節のD−Cis、76小節のCis− Hに続いて大胆な跳躍をしているが旋律線はつながっている。 囚は再び冒頭の旋律が現れる。81小節から82小節にかけてH(ロ)から H(ロ)の1オクターブの跳躍がある。

(14)

83小節からは同じなので省略する。 第1曲目と重複する技法は省略し、特に目立つ技法を以上の事柄から取 り上げると、揺れる形、拍子感の上手な使い方、同旋律における同主調の 関係、転回の対位法的書法、歌謡性に富んだ旋律の技法が読み取れた。 3という数字のこだわりだが、全体を通して第1主題が3回でてくる。 しかも、動機は隣り合った3つの音から構成されている。第2主題も変化 しながら3回出てくる。曲の途中に3度下降の音型がでてくることが読み

取れた.麺

(15)

JohannesBrahmsの後期ピアノ曲にみる技法の特徴

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JohannesBrahmsの後期ピアノ曲にみる技法の特徴

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(18)

第3曲BALLADE卜短調

囚[亘](1∼10)囹(11∼22)團(23∼31)+終結部分回(32∼40) 回[司(41∼56)國(57∼72)+接続部分回(73∼76) 囚[司(77∼86)圏(87∼98)團(99∼107)+終結部分回(108∼117) 囚この部分内でも[司[司[司の三部形式をとっている。 匝]E−Fis−G,F−Es−Dの順次進行の3音が上行、下降して始まる主題 である。通常4小節が1フレーズというのが基本だが、ここでは5小節1 フレーズの形で主題が書かれている。魎]旋律はG−F−Es−D−C− B−A−Gと、1オクターブ下降の線を描いている。2,3小節の2拍目、 左手の四分休符は、音がなくなると急にハッとする効果と躍動感をだして いる。

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匿][司ここからはロ長調になる。Aの雰囲気とは対照的に穏やかに書か れている。浮情的な味わい深い第2主題である。匿國 右手は41小節より3度と6度の音程の組み合わせで、H−Dis−Fisと3 度ずつ上行し、左手は、分散和音で揺れる型をとっている。H音の保続音 が41∼44小節まである。 53小節から囚の第1主題が嬰二短調であらわれる。第1主題と第2主 題の併存である。 囚[司32小節からはト長調、108小節からはト短調と、終結部でも同主

(19)

JohamesBrahmsの後期ピアノ曲にみる技法の特徴

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短鯛で茅2主愚 ⑭ 調の関係が見られる。108小節よりバスはG音の保続音である。ソプラノ も112小節までG音の持続声である。114小節より短調で第2主題が現れて

きて終結する。ここでも第1主題と第2主題の併存である。劃

(20)

以上、5小節1フレーズ、3度と6度の和音の使用、第1テーマと第2

テーマの併存、が特に目立った技法である。 3の数字のこだわりだが、隣り合った3音の第1主題、これに対して3 度ずつ上昇していく第2主題。囚部分がさらに三部形式になっているこ とと、ソプラノ、和音で書かれたアルト、オクターブで書かれたバスの三 声部から成り立っていることが読み取れた。

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JohamesBrahmsの後期ピアノ曲にみる技法の特徴

第4曲INTERMEZZOへ短調

囚(1∼51)回(52∼99)囚(100∼133)

囚3連符で書かれてある。魎

lNTERM[EZZOカノン

Allegrett…p・c・agiat・〆雌岬一蜘7樋う形

ソプラノとテノールのカノンで始まる。一拍遅れでテノールがソプラノ を追う形をとっている。アルトとバスは3連符を用いている。3度音程の 揺れる形で反行形になっている。区コ

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それぞれ反行形になっている

18,19小節,22,23小節,26,27小節はヘミオラのリズムが使われて拍子

感のずれを生み出している。醜

回3連符が消え、バスがソプラノを1拍遅れで追うカノンで書かれて いる。水を打ったような静けさ、時の止まったような印象は、囚の3連

符の動きと対照的である。醜

67∼74小節は突然シャープの臨時記号がでてきてホ長調で書かれてある。

(22)

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の調性をはっきり打ち出している。翻

囚111小節からはバスの国音が保続音である。ソプラノは持続声とし て1オクターブ違いの回音が交互になり響く。アルト、テノールは同時 に3連符の揺れる形で対称になっている。匿圃 126小節から3連符が次々にストレッタで現われ、129∼133小節は圖の 静けさで終わる。へ長調に変わっている。匿画 以上の事柄から、特に目立ったものとして、カノン、ヘミオラのリズム、 調性の変化、持続声、ストレッタの対位法的技法が読み取れた。 3のこだわりは3連符、3度音程の揺れが挙げられる。

(23)

JohannesBrahmsの後期ピアノ曲にみる技法の特徴

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(24)

第5曲ROMANZEへ長調

囚團(1∼4)團(5∼8)圏(9∼12)団(13∼16)

圖團(17∼24)團(25∼32)團(33∼44)圓(45∼47) 囚團(48∼51)圖(52∼57) 囚古風なの感じの曲である。四声体で書かれていて4小節1フレーズか ら成る。 匿]ソプラノの旋律をみると、F−E−D−C−B−A−G−Fと下降する型で ある。リズムはJJと一」の組み合わせである。魎]アルト、テノー ルの声部はユニゾンで書かれていて、この旋律が、後に変奏されたり対位 法的な使われ方をする。4小節ではソプラノが下降、バスが上行という反 行型をとっている。フレーズの終わりの4,8,12,16小節は3拍子的な 書き方をしている。

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(25)

JohannesBrahmsの後期ピアノ曲にみる技法の特徴 巨]5小節からは、[司のアルト、テノールが8分音符を使って変奏され ている。3小節と7小節の内声は転回されている。圃

3小節 孝拗) 7小節 孝戯)

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内声が転回されている 和声をみると8小節は二短調のv度の和音でA,Cis,E音が使用されてい るが、5,6拍目はCisがc音になっている。 匝]9小節からは、冒頭のソプラノとアルトの旋律が転回されている。 匿]調号がフラットからシャープの二長調に変わる。 同じ音型」.♪」.♪を繰り返すバッソ・オスティナートが44小節まで続く。

匡]では、8分音符で書かれたソプラノの旋律が団では、3連符に変奏さ れ團では、16分音符に変奏されている。[司と[司には、ソプラノとアル トのリズムの転回箇所が見られる。 97小節からは3小節1フレーズ、100小節からは5小節1フレーズである。

匝]の3小節は、囚に戻るためのフレーズである。匿画互] 囚[司はオターブ、2オクターブの重なりが見られる。最後は1度の第 2転回で終わる。塵麺 以上の事柄から、変奏、転回の対位法、バッソ・オスティナートの技法 が読み取れた。 3のこだわりとして、中間部の主題が変奏を含んで3度奏されるほか、 3小節のフレーズが挙げられる。

(26)

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(27)

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JohannesBrahmsの後期ピアノ曲にみる技法の特徴 A!に戻諏あり3小飾7トズ1

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(28)

第6曲INTERMEZZO三部形式変ホ短調

囚團(1∼20)團(21∼40)圖(41∼62)囚(63∼86) 囚[司Ges−F−Esの三つの音だけで主題が構成されている魎]オーボ エの音の響きを想像させる哀調を帯びた旋律である。左手は,うねりの音 形がみられる。 7,8小節の左手は、主題をもじったも¢と考えられる。 8小節から右手は3度音程の和音を用いて主題を発展させている。 13小節からは1小節ごとにストレッタが3回でてくる。 17小節からは、アルト、バスにユニゾンの形で主題がでてくる。これは、 属調の変ロ短調である。 匿]囚の静と対照的に、動の部分である。和音の重なり、オクターブの 使用、跳躍進行が目立つ。躍動感が感じられるのは16分休符、32分休符の 使い方の上手さだろう。旋律も叙情的なものである。 41,42,43,45,46小節の、左手に見られる上行型は、同和音の転回型 を使っている。塵誕]49,50,51,55,56小節の左手は、下降型の同和 音の転回型である。魎]前述の型とは反行している。区工] 53,54小節は冒頭の主題が現れてくる。59∼62小節にも主題が現れてく

る。魎]第1主題と第2主題の併存である。

囚66小節からは、右手が6度の幅で、ゆったり出てくる。音は異なって

も、主題のリズムを活用している。魎

73、74は右手にシンコペーションのリズムを使っている。翻

77小節からはコーダのように曲を締めくくっている。 以上の事柄から特に、3度・6度の使用、ストレッタの対位法的技法、 拍子感の上手い使い方、浮情的な旋律、第1主題と第2主題の併存、の技 法が読み取れた。 3の数字のこだわりについては、3つの音から主題が構成されているほか に、3度音程の頻繁な使用、3回のストレッタが挙げられる。

(29)

睡囚僕。.④

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JohamesBrahmsの後期ピアノ曲にみる技法の特徴

INTERMEZZO

And乱nte,1乱rgoemesto

1”タヴ

_毒麗_γ吻

狛繭※鱒面脇血

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F量抽響繊塑

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ら、1,酉

(30)

瞬編

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例.41小節左手

例.49小節左手

(31)

JohamesBrahmsの後期ピアノ曲にみる技法の特徴

匿塵]葬樋激趣・イ紡

画・中悌住臥

ッレツレワ比し〃

匿匝]躍.幡轍脳輝

シ別哨ンの1ズヘの御

今まで読み取ってきた技法を表にまとめてみた。 ⑧ ■ 14 レ4 8レ2

) 2

(32)

技法の特徴

第1番第2番第3番第4番第5番第6番

調性の不安定さ・調性感の希薄化 ○ ○ 音域の広さ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 重厚な和音 ○ ○ ○ ○ ○ ○ オクターブ ○ ○ ○ ○ ○ 左手の加線の低い音域 ○ ○ ○ ○ ユニゾン ○ ○ ○ ポリフォニック ○ ○ ○ ○ ○ ○ 反行形 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 下降形 ○ ○ ○ ○ ○ 跳躍進行 ○ ○ ○ ○ 順次進行 ○ ○ ○ ○

対位法的書法拡大・縮小

対位法的書法転回

○ ○

対位法的書法カノン

対位法的書法ストレッタ

○ ○

対位法的書法模倣

○ うねるような音型 ○ ○ ○ 揺れる音型 ○ ○ ○ ○ 休符の上手な使い方 ○ ○ ○ ヘミオラのリズム ○ ○ 拍子感の上手な使い方 ○ ○ ○ 保続音 ○ ○ ○ ○ ○ 持続声 ○ ○ ○ バッソ・オスティナート ○ 動機を徹底して使う ○ ○ ○ ○ ○ ○ 交響楽の響きのイメージ ○ ○ ○ ○ ○ 5小節1フレーズ ○ ○ 3小節1フレーズ ○ 浮情的な旋律 ○ ○ ○ ○ 同旋律における同主調の関係 ○ ○ ○ 第1主題と第2主題の併存 ○ ○ 3度と6度の和声の響き ○ ○ 変奏 ○

(33)

JohannesBrahmsの後期ピアノ曲にみる技法の特徴

IVBrahmsのr3」という数字の意味

6曲とも三部形式で作曲されてある。 1番のイ短調、2番のイ長調、3番のト短調、4番のへ短調、5番のへ 長調、6番の変ホ短調の調性を見ても、イートーへ一変ホとBrahmsの好 んで使用したといわれる下降線を用いて作曲されている。 後期のピアノ作品は簡素化している。自分の内面を素直に表現しようと している。しかし、それは、簡単でやさしいという意味ではない。簡素な 動機を念入りに展開させて、曲を書き上げていくということである。 AmoldSch6nbergの述べた、r節約それでいて豊かである』ということ、 また、『単位要素まで分解し、組織的に組み立てていく』という技法も、 如実に読み取ることができた。後期のピアノ曲は、簡素化しているが、構 築、構成の上手さもさることながら、実に中身がいっぱい凝縮されている ことがわかった。 そして、私の疑問を投げかけたBrahmsのr3」という数字のこだわり は、譜面から読み取ることができた。印象を強めるためか、それとも構成 上の納まりを良くする為か、あるいは宗教からの影響、その他の文化的背 景によるものなのか、今後の研究の課題にしていきたい。

引用文献

注1三宅幸夫ブラームス新潮文庫174∼175頁1986年

注2門馬直美ブラームス春秋社459頁1999年

参考文献

門馬直美「ブラームス」音楽之友社1965年 最新ピアノ講座8rピアノ名曲の演奏解釈H」音楽之友社1982年

(34)

ジョゼ・ブリュイールrブラームス」白水社1985年 三宅幸夫「ブラームス」新潮文庫1986年 デートレフ・クラウス「ブラームスのピアノ音楽」ムジカノーヴァ1989年 特集ブラームスのピアノ音楽ピアノ月刊誌ムジカノーヴァ

P34∼P754995年8月号

カール・ガイリンガーrブラームス」芸術現代社1997年 門馬直美「ブラームス」春秋社1999年 吉田秀和「ブラームスの音楽と生涯」音楽之友社2000年 ディートリヒ他「ブラームス回想録集1」音楽之友社2004年 ホイベルガー他「ブラームス回想録集2」音楽之友社2004年 ヴィトマン他「ブラームス回想録集3」音楽之友社2004年 渡辺晋一郎「ブラームスの音符たち」音楽之友社2005年

付記

本稿作成にあたっては、賀集裕子先生(元国立音楽大学客員教授)に御助 言を賜りました。記して感謝申し上げます。

参照

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