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ガラス光学ローパスフィルタの開発−ガラスホログラムによる超高速加工技術を用いて−

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Academic year: 2021

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1.はじめに フェムト秒レーザー光をガラス内部に集光す ると,本稿で異質相と呼ぶ光学的性質の異なる 領域をガラス内部に形成することができる。近 年,異質相を用いて導波路などの光デバイスを 作製する試みが行われている。 光デバイスに必要な形状や配置の異質相を形 成するには,フェムト秒レーザー光をオンオフ しながらガラスに対し走査させる加工方法が一 般的である。しかし,走査に長時間を要し,走 査に用いるメカニカルステージの位置決め誤差 や走査中のフェムト秒レーザー光自体のビーム 揺らぎのため異質相に十分な形状・位置精度が 期待できないという課題があった。 そこで当研究室では,任意の三次元形状およ び配置を持つ異質相の情報が記録されたガラス ホログラムでのフェムト秒レーザー光の集光に より,走査をせず,高速・高精度で加工する方 法を検討している。ガラスホログラムの設計・ 作製および新ガラスの開発,異質相評価装置の 開発を行い,さらに,開発中のこれら要素技術 の応用の一例としてガラス光学ローパスフィル タの開発も行っている。 本稿では,当研究室でのガラス光学ローパス フィルタの開発について,基礎事項を簡単に説 明のうえで,その一部を紹介する。 2.光学ローパスフィルタ デジタルカメラで細かい縞模様をもつ被写体 を撮影したとき,被写体にはない偽の縞模様が 撮影された画像に現れることがある。この偽の 縞模様をモアレと呼ぶ。光学ローパスフィルタ とは,このモアレを低減する目的でデジタルカ メラに搭載する光学部品をいう。 3.モアレ発生のしくみ デジタルカメラでは,レンズにより結像され た被写体からの光の空間分布を,撮像デバイス により電荷の空間分布に変換する。この変換 は,撮像デバイス受光面上にアレイ状に規則正 しく配置された多数の受光素子により行われ る。すなわちデジタルカメラでは,被写体の像 〒300―2635 茨城県つくば市東光台5−9−1 つくばイノベーションベース3F TEL 029―848―1881 FAX 029―848―1882 E―mail : masaoka@newglass―lab.jp

三次元光デバイス高効率製造技術・研究最前線

ガラス光学ローパスフィルタの開発

−ガラスホログラムによる超高速加工技術を用いて−

!ニューガラスフォーラム つくば研究室

政 岡 文 平,田 中 修 平

Development of glass optical low pass filter

−by ultra high speed processing technology with glass hologram−

Bunpei Masaoka

,Shuhei Tanaka

New Glass Forum

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は,撮像デバイスの受光素子の配置間隔を単位 とした空間的に離散化された画像として記録さ れる。 このため縞模様を持つ被写体をデジタルカメ ラで撮影した際,受光面での縞の間隔が受光素 子の配置間隔よりごくわずかだけ大きい状況で は,隣りあう受光素子間に受光量の差が生じ, かつ,この受光量の差は隣りあう受光素子の組 に沿って周期的に増減を繰り返す。この周期的 に増減を繰り返す受光量の差が,被写体の縞模 様の間隔よりも大きな間隔を持つ偽の縞模様と なって撮影された画像に現れる。すなわち,モ アレが発生する。この様子を図1に概念的に示 す。 4.モアレ低減のための光学的方法 モアレが発生している状況では,モアレを発 生させている受光素子において,隣りあう受光 素子間で生じている受光量の差がモアレとなっ て現れている。 従ってモアレを低減させるためには,この状 況における隣りあう受光素子間の受光量の差を 低減させればよい。 このためには,何らかの方法で受光素子の並 ぶ方向に光線を等しく分割し,受光素子の配置 間隔だけ離れ明るさの等しい重なった像を受光 面上に結像させればよい。なお,このときの画 像の乱れは,高々受光素子1つの大きさの程度 である。 5.通常の光学ローパスフィルタ 通常の光学ローパスフィルタは水晶製であ り,水晶の持つ複屈折性を利用して光線を分割 し明るさの等しい重なった像を受光面上に結像 させてモアレを低減している。水晶光学ローパ スフィルタは現在デジタルカメラにおいて広く 用いられている。 しかし,水晶光学ローパスフィルタには主と してふたつの課題がある。 ひとつは,モアレを低減させるための重なっ た像の間隔を受光素子の配置間隔に一致させる と水晶板の厚みが一つに決まってしまうため, 製品デザイン上あるいは組み立て上の問題が生 じる場合があることである。 もうひとつは,垂直水平両方向のモアレを低 減させる場合には総厚みが増す複数枚の水晶板 の貼りあわせが必要となり,この工程のため製 造コストが高いことである。一枚の水晶板だけ では一方向のモアレしか低減できない。 6.ガラス光学ローパスフィルタの開発 当研究室では,異質相で構成した内部回折格 子により光線を分割し重なった像を形成する方 式のガラス製の光学ローパスフィルタの開発に 取り組んでいる。これは,通常の水晶光学ロー パスフィルタの課題である厚みとコストを改善 できると考えるためである。 当研究室で開発中のガラスホログラムによる 異質相の高速形成技術を適用することにより, 加工時間は一枚あたり数秒以下に短縮可能と見 込める。また,回折格子方式の採用により貼り あわせなしの薄いままで垂直水平両方向のモア レの低減が可能である。よって,加工時間の短 縮と貼り合わせ工程の排除により,水晶製より 図1 モアレ発生のしくみの概念図 受光面での縞の間隔が受光素子の配置間隔よりごくわ ずかだけ大きい状況では,隣りあう受光素子間の受光 量の差が周期的な増減を繰り返し,これがモアレとな って現れる。

NEW GLASS Vol.26 No.1 2011

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も低コストのガラス光学ローパスフィルタの実 現が期待できる。 図2に,試作したガラス光学ローパスフィル タ搭載のデジタルカメラで撮影された画像を示 す。用いたガラス光学ローパスフィルタは,比 較のため,上半分にのみ異質相を形成し,下半 分は未加工の素通しガラスのままとした。被写 体はサーキュラーゾーンチャートである。この チャートは中心から離れるにつれて次第に縞の 間隔が細かくなる複数の同心円状の白黒縞から なっており,モアレやレンズの解像度の評価に 広く用いられている。 図2の撮影された画像では,未加工領域の点 線内でモアレが発生している一方で,チャート の縞模様は垂直方向に対し対称であるにもかか わらず,対応する異質相形成領域の点線内では モアレが低減している。すなわち,光学ローパ スフィルタとしての機能を確認した。 また,撮影に用いたデジタルカメラに元々搭 載されていた水晶光学ローパスフィルタは厚み 約1.5mm であったが,搭載したガラス光学 ローパスフィルタはガラス厚み0.5mm,異質 相部分厚み0.3mm 以下である。光学ローパス フィルタの薄型化を実現している。 7.おわりに 本稿では詳細には触れられなかったが,本研 究室で開発中のガラス光学ローパスフィルタの 製造コストを加工時間の短縮によって下げるた めの,ガラスホログラムを用いたフェムト秒 レーザー光の集光による異質相形成の高速化に は継続して取り組んでいる。 すなわち,任意三次元形状および配置の異質 相の高速形成に最適なフェムト秒レーザー光の 集光をするためのホログラムの設計手法の開発 とその手法によるガラスホログラムの設計・作 製,より低光量・短時間のフェムト秒レーザー 光照射で光学グレードの異質相が形成可能な新 ガラスの開発,さらに,新設計ガラスホログラ ム使用による新ガラスへの内部加工に対しての フェムト秒レーザー光の照射条件の最適化を行 っている。 ガラス光学ローパスフィルタの実用化に不可 欠なホログラム設計手法と新ガラスの開発は, 導波路などの異質相を利用した他の光デバイス の実用化にも大きく貢献できるものと期待して いる。 謝辞 本稿に記載された内容は,経済産業省のプロ ジェクトである「<ナノテク・部材イノベーシ ョンプログラム>三次元光デバイス高効率製造 技術プロジェクト」の一部として,新エネル ギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託 を受けて実施されたものであることを付記し, ここに深く謝意を表します。 参考文献 1)NEDO,−ナノテクノロジープログラム−三次元光 デバイス高効率製造技術パンフレット,2010 図2 ガラス光学ローパスフィルタ搭載のデジタルカ メラで撮影した画像 下側半分の未加工領域点線内で発生しているモアレ が,異質相を形成して光学ローパスフィルタ機能を持 たせた上側半分点線内では低減している。

NEW GLASS Vol.26 No.1 2011

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