101
戦後日本の技術導入・研究開発および
特許の動向ee
明 石 芳 彦
1 は じ め に 経済成長論によれば,国民経済の潜在的な成長率(9)は長期において,技 ハ 術進歩率(例えば,労働生産性上昇率⑦))と労働人口増加率(のとの和を ム ハ その上限と画される(g≦:h+1)。他方,産業組織論においても,hの大きさは 単位生産費・価格の水準とか市場需要の規模など「市場構造」を動的に変化せ しめる。 ム しかし,みの規定関係を事前的に確定することは多くの理由から困難であ り,通常は,その事後的な値がどのような要因によって説明できるかという方 ム 法で代替されている。この意味で,んに関する分析方法は,生産関数を用いた アプローチが支配的である。 いま,技術革新を生み出すストック変数をQとして生産関数の中に明示的に とり入れると,付加価値IZについて, v・:AeAtNi’”3KPQ1・ と示される(N=労働投入量,K=資本ストック,1=時間トレンド変数で「技 ユ 術進歩率」を示す)。1人当りの付加価値(V/N・1ih)について,時間に関して 対数微分すると, *小稿の作成に際して,〔D11〕など各種資料の入手については神戸大学経済経営研究所 図書掛の方々,〔D1〕の入手についてはフランス大使館情報部の方々の御協力を得 た。各位に紙面を借りて謝意を表したい。 1)ここでの分析方法は,Griliches〔6〕, Terleckyj〔17〕のモデルを参照した。そこ に内在する問題点の指摘は越後〔5)が適格である。102 彦根論叢 第226号 ム ム ム ん=λ+・βfe+αQ
・鰍・一K/N)・こ添δ一罪/Q−Q/Q・・ついて・Q/Q一器
器一二割り,多器一・とすれぼ
だ一・+β盆+・・薯 Q が得られる。Qを年当りの技術革新支出で近似すれぽ,労働生産性の変化率を 規定する要因として,三間トレンド変数,資本集約度(または装備率,K/N) の変分,付加価値に占める技術革新支出の比率(Q/V)とに着目すれば良いこ とが分かる。 そこで,例えば戦後日本の潜在的な,または現実に達成された成長率を画す る労働生産性の高い上昇率を分析する際にも,これら資本集約度(K/N)とか 技術革新支出の比率(Q/▽)とかの大きさに着目することが重要となってく ゆ る。こうした観点からの実証的な検討も若干みられるが,小稿では特に,戦後 日本の大企業が示した技術革新行動のパターンなり,それを分析するために無 視できない「制度」的背景,それに関連した論点を整理することを目的とす る。そのことは,間接的にではあれ,欧米で発展してきた産業組織分析におけ る技術革新Q理論的・実証的なアプローチをH本について検証する際の前提条 件のチェックとなるとも考えられるからである。 以下では,次節にて戦後日本の技術革新の動向を技術貿易,研究費と技術革 新に関わる若干の論点から各種の資料を用いて考察する。皿山では,それらの 一成果としての特許に関する戦後日本の実態を,小稿の目的に照して検討す る。そして,W節は小稿での分析結果の整理と今後の課題の指摘に当てられ る。 1[[ 戦後日本の技術革新の動向1,技術貿易
戦後日本の大企業は,1950年ごろから個々に外国企業の特許使用権を獲得し 2)例えば,Grlliches〔6〕, Terleckyj〔17〕,新庄〔!6〕の分析がある。戦後日本の技術導入・研究開発および特許の動向 !03 たり,日本にとって新しい技術の体化されている機械・部品などの輸入(投 資)を急速に開始した。そうした急激な技術導入に支払われる代価が莫大な大 きう きさであったことはしばしば指摘される通りである。 表1(a)技術貿易額の推移 F. Y. 日 本 アメリカ イギリス フランス 西ドイツ 1955 60 65 70 75 80 受 取 額 支 払 額 O.Ol(’56) 02 .1 .14 .23 .31(’81) 1, 184 3, 772 7. 9. ( ’57) 9.5 11.4 !0. 4 9.1 8.93 1,04 1.07 1,02 1,19( ’78) 15, 570 1, 744 1, 565 1, 315 O, 36( ’56) 49 .79 ,96 1.27 1. 43 ( )77) 4, 768 3, 328 .32(’58)1 .31 1 .4i i ・9? i .42 r 1 .46( ’79) 1, 077 2, 334 (注) 1.対価受取額/支払額比率 2.貿易額は各国の「80年」の相当値(単位=億円)。 3.〔D6〕より作成。 表1(a)には技術貿易,すなわち技術の輸入と輸出の状況がその対価受取額と 対価支払額との比率で示されている。日本について,1960年の技術輸出の割合 は輸入額の2%に過ぎない。言い換えれば,受取額の50倍の対価が支払われて いたのである。それが8!年では31%程度までに改善されたとはいえ,依然とし て受取額の3倍余りの対価支払いが続いている。西ドイツを除く他の先進各国 ではそうした状況は見られない。ただ,日本はフランスと共に,技術貿易条件 が趨勢的に改善している国でもある。 次に,日本の技術貿易をその産業別の構成比率から見よう。表1(b)より,技 術輸出は,71年で化学(25 . 3%o),鉄鋼,電気機械の順,その後の化学の傾向 的低下,輸送用機械の急増を経て,81年では化学(18,2%),電気機械,輸送用 機械,鉄鋼の順となった。他方,技術輸入の方は71年で電気機械(30.9%), 化学,機械,輸送用機械の順であったが,輸送用機械の急増と他の減少傾向と 3)Caves&Uekusa〔3〕,越後〔4〕,小林〔10〕,中村〔12〕,ペック・田村〔14〕, 斎藤〔15〕などの分析がある。
104 彦根論叢 第226号 表1(b)産業別技術貿易額の構成比率(%) F. Y.
業業維掌上鋼属垂下械械械
金製機機機
産造 用
鉄回気送密
全製繊化窯鉄非駐機電輸精
対価受取額
1971 76 81 27, 187 82.2 1.6 25 323
13.5 0.7 2.0 6.0 12,5 7.7 3.1 83, 404 9L4 3.8 31. 3 2,1 16. 5 6.7 0.3 2.8 11.6 8.6 0.5 175, 106 86. 7 2.8 18.2 2.8 !4 0 1,2 0,5 3.0 16.4 15.8L7
対価支払額
1971 76 81 134, 543 98.2 1.2 19.7 4.3 3.7 1.9 !.0 17.2 30,9 10.3L7
177, 302 97. 9 1.0 16.1 5.4 6.122
1.41L8
25.1 17.9 1, or 259, 632 98. 4 3.4 14. 3 3.9 Jr.7L4
Ll
!1.9 26.5 18.715
(注) 1.〔D7〕より作成。 2 全産業は百万円単位。(=100%) 表1(C)産業別の技術貿易条件 F. Y. !971 1 76 80製造業E
N
食 品 EN
繊 維E
N
紙・パ
N
化 学 EN
石 油 EN
ゴ ム EN
窯 業 EN
17 T6 S4 Q5 Q4@3352688041317㈲1033
ααqααLααα色000︻0α
O. 44 1. 28 0 42 一(一) 1 78 4. O. 54−e
O.91 12.17 0. 18 一(+) O 22 0.臼う O,19 2 57 X3 Q3 I4 S5T43e818818e31e8356
αLα位しLααα2α♂。α5
F. Y. 1971 1 76 80 鉄 非 金 機 電 輸 精 鋼 EN
鉄 EN
属 EN
械E
N
気 EN
送 EN
密 EN
O. 76L83
0. 08 0. (一) O. 38L
O. 07 0.38 0, 08 0,38 0, 15 0. 35 0.3516
1.28 1,05 1.47 14.33 0. 08 一←う O.!1 0.4 0.22 0. !9 0.23 0. 70 0, 15 0,5 2,24 4.7 1. 10.67 0 27 4. O.32 2.15 0. 37 0.68 0. or 4 6. 44 0.31 1123
︶ 注 ︵ 対価受取額/対価支払額の比率を示す。 Eは総額,Nは新規分の値。〔D 6〕より作成。 (+)/〈一)は輸入(出)値が0又はn.a.のときの出(入)超を示す。戦後日本の技術導入・研究開発および特許の動向 105 から,81年では電気機械(26.5%),輸送用機械,化学,機械となっている。 また,技術貿易の絶対額構成比率では取引単価の高い重化学産業の比率が大 きくなることから,各産業別の対価受取額・支払額の比率を整理した資料が表 1(c)である。そこには,技術契約の総額(継続分+新規分)と新規分との動向 が並置されている。製造業全体について,総額では71年の0.17から80年の0,57 まで傾向的に上昇し,また新規分では71年の0.56から80年の1.93まで上下しな の がら上昇している。それらば景気変動とか契約の波に依存するのだろう。 ところで.こうした考察における技術輸出の相手国は,かつての技術輸入の 相手国と同一かどうか。つまり,日本の技術貿易の変化をもたらした主たる要 因は何によって説明できるのか。この問題に対して,1つの要因だけで回答を うラ 与えることはできまいが,例えば,次のような論点が提供されている。①日本 にとって最新水準でなくなった技術を技術的に発展の途上にある国々,特に東 南アジア地域に輸出したことが黒字の主因だ。②日本が技術開発力を高めてき たことに基因する。つまり,日本の技術水準がいくつかの分野については, 1960年代後半にそのフロンティアー・レベル(欧米の水準)にキャッチ・アッ プすることができ,追い越しさえし始めたことが主因である。 後者の論点は,言ってみれば,小稿で整理された「制度」的背景を踏まえた 上で検討されるべき,またその時点でのみ検討しうる問題と考えられる。よっ て,その議論は後に譲る。他方,前者の論点に関連しては,表1(d)が73年以降 の日本の技術貿易に関する相手地域別構成比率を示している。技術の輸入先ぱ アメリカの比率が圧倒的に高く,全体の約2/3を占めている。他方,輸出先は 73年において約1/2が東南アジア向けとなっている。その割合は次第に低下し ているが,8!年に至っても約1/3を占めている。 以上の考察から,日本の技術貿易は(1)依然として技術輸入偏重にあるが,70 年代前半頃からの新規契約分に関してみると技術輸出型へと移行しつつあるこ 4)個別産業の動向については,明石〔2〕脚注5を見よ。(ただし,計算ミスのため, 総額における繊維は削除,新規分の製造業全体は72年から出超に訂正する。) 5) 例えば.中村〔12〕,ペック・田村〔14〕,斎藤〔15〕らの議論がある。
1Q6 彦恨論叢 第226号 表1㊨ 日本の技術貿易の地域別構成比率(%) 技 術 輸 出 F. Y. 東南アジア
ア・リカ1・一P・パ
1973 74 70r 76 77 78 79 80 81 50.1 35.7 39. 2 38.4 31.9 31.5 41.2 34 0 38 8 9.9 8,1 10 4 90r96
!0.7 14 4 !3.9 /8.6 24. 8 31.12LO
26. 1 26,5 15,3 16,7 !8.2 18 4 技 術 輸 入 ア・リカ1・一P・パ 62.9ac 66.1 63.1 64.6 62.2 64.1 63 7 64,2 66,2 35, 9 32.7 35. 4 33.5 35.8 34, 6 3R..6 34. 3 32. Dr (注) !. ce印は北アメリカの値。 2. 〔D6〕より作成。 と,(2>それを相手国・地域別にみれぼ,大半をアメリカから輸入し,東南アジ アなどへ(再)輸出するパターンが支配的であること,などが確認できた。 2.研 究 費 前述の通り,日本の技術革新はアメリカ,ヨーPッパにあった既存技術の導 入という形態で遂行されてきた。相対的に安価な(そしてリスクの小さい)外 生的技術の競争的導入が活発な設備投資競争に結びつき,また国内市場の「商 業ペース」に見合うような技術への改良競争(研究開発)が誘発されたのでは あるまいが。 技術導入と研究開発との関係について,技術導入額の(A)支出研究費,(B)研究 投資額,そして(c)技術輸入額のそれぞれに対する比率が表1[(a)に示されてい 表且(a)技術導入額/研究費比率(%) F. Y ctt) (B) : 一1 s3.0 31 6 40. 0 2i 6 EF,16(・e;4)1 (C) 1957 60 65 F. Y. (A) (B) (C) 1971 75 ,go /6.0 10 6 8,1 1“一igi2 一[ 10, 3( ’81) (注) (A) (B) (C) 若杉〔17〕より作成。 〔D7〕1966年版。 〔D6〕技術貿易表より作成。戦後日本の技術導入・研究開発および特許の動向 107 る。いずれの指標によっても,研究i費に占める技術導入の割合が1960年頃の約 3∼4割から,80年頃の約1割へと低下している。よって,技術導入と研究開 発とは(補完的な関係を保ちながらも)その相対的な関係が大きく変化してい るのである。 一方,表1[[(b)から研究費のi費目別構i成の推移を見ると,1960年頃は有形固定 資産購入額のシェアが大きい。それは国内での研究開発(技術改良)を目的と 6) した研究投資と考えてよい。その後,75年頃からは,人件費(本務研究員+事 務・助手)のシェアが約50%に達し,安定化している。研究費の下多が概ね研 究スタッフの大小に対応することとなった。それは,一定の研究設備に対する 研究スタッフの固定化という点で,企業の研究体制が定着したことを反映して D いるのかもしれない。ここでは,技術導入・研究開発・設備投資の連動的な関 表■(b)研究費の費目別構成(億円,%)
瞬総額人膿原三瀬離雛蓉の他婁
全 子会社等
!960 65 70 75 80 1960 65 70 75 80 1, 844 4, 258 11,953 1 26,218 1 Egl gsg 1 1 35 6 4S, 3 43,6 52・.1 46, 9 1, 244 2, or 24 8, 233 /6,848 3/, 423 31, 9 43. 2 39.7 51 8 46 2 17 4 16,8 16,5 13.6 15 5 20.2 20.7 20 3 16,8 18.7 34.o 1 24.9 22,9 17,! 18.3 ユ2.0 13.0 17.0 !7.2 19.2 34,9 20.6 21.9 13.2 15.1 !3,0 15 6 18, 2 18,2 20. 1 (注) 1. 全体とは,会社等(民間企業+特殊法人),研究機関,大学等から成る。 2,〔D6〕,〔D 7〕から作成。 6)研究費の構成要素を,α;人件費,b=原材料費, c=有形固定資産(TFA)の滅 価償却額,d=TFAの購入額, e=その他の経費とするとき,研究費は, a+b+c+e のとぎ費用額(Cost, C), a+b→d+eのとき支出額(Disbursement, D)とよばれ る。よって,Z)とCの関係はD−C=d−cより, TFAの償却額以上の購入額(謡曲 究投資)のとき,D>Cとなり,戦後日本の実態はD>Cが支配的である〔D 6〕。 7)1960−65年間の研究設備投資と企業設備投資の増減率がほとんど同じ動きを示して いる(〔D6〕,66年版p.17)。また,60−68年間の技術導入額と研究費(〔D 5〕,108 彦根言倉叢 第『226号 表皿(C)主要国の研究費等の推移 日 本 アメリカ ン960 65 70 75 80
0﹁DO﹁D
667・7
R
1, 844 4, 258 11,953 26, 218 R/Z 46,s3sh
1.15 1. 30 1. 58 1.73 1.96 49, 428 ] 73, 580 1 92, 810 104, 640 1 1 80 [ 141, 057i 2 68 2. 94 2.64 2 28 2 36 R/Y G/R D/G D/R 1.42 1 64 1,96 2 13 2, 42 25. 3 30. 8 25. 2 27. 5 25. 8 3. 2 C66) 37 2,4 2.5 1.0ぐ66) .9 ,6 .7G−D
R−D
3. 29 3. 60 2 91 2 ros 2 66 31.3 24, 5 27. 0 25. 4 63 7 63 8 56 6 51 5 47.5 64.6 roL 6 Jr l 6 50 6 4L 2 32.9 29.2 26, 1 38. 4 46. 0 38. 7 34. 4 33.1 イギリ刻 フランス 西ドイツーグ00500
66777
05050
6ハ0778
OFbO50
ρ06778
6, 630 9, 337 9, 285 14,]04 14, 634 2, 742 7, 30r8 9, 818 18,129 27, 329 3, 524 7, 229 !4, 537 29, 729 48, g8Jr 2 39 2 43 2 10 2 03 2 19 2 94 3 07 L.30 2 27 2 ・t17 ors or 51 2 51 7 .rj1 7 48 1 63.85L6
41 4 4 or, 6 1 25 2,06 1.93 1 80 1,84 1 63 2. 74 2,13 2 02 2 07 66 1 68 7 63.6 60,1 0r 6. 3 40. 2 31.! 35 9 32.1 37 4 26, 4 22 4 2 or. 7 33 8 33.6 37. 7 34. 9 31.6 26.6 21,4 22 8 !9.3 P6・8ぐ79)121・5ぐ79)i 53 8 60. 2 52. 7 50,6 43.7 1.39 ! 77 2.18 2 38 2,63 1 68 2./8 2. 42 2. 68 2・ 9一 8 59.1 46 6 46. 6 48 3 43.1 10.0 19. 7 16.6 1! 7 い2・・(’78) 5.9 9.2 7.8 0r 7 5.7ぐ78) 56. 5 41. 2 42. 1 45, 7 40, Jr (注) 1.〔D7〕1972,81,83年版より作成。 2.R=研究費(億円), G=公共負担額, Z=国民総生産。 D=国防研究費,y’=国民所得,戦後日本の技術導入・研究開発および特許の動向 109 連図の下で,国際的にみた日本の研究費(研究開発支出)の特色などを検討し てみよう。 初めに,表1[(c)は先進主要国の(内国)研究費をめぐる資料である。金額で みた日本の研究支出水準は,80年においてアメリカに次ぐ大きさとなってい る。それを対国民所得比率でみると,水準では西ドイツ,アメリカ,イギリス の順となる。また,その増加率では日本と西ドイツは上昇傾向にあり,アメリ カとイギリスは低下傾向にある。 次に,その公共負担割合(G/R)をみると,他国の水準が傾向的には低下し ているけれども,およそ50%かそれ以上であるのに対して,日本の値は約25∼ 30%に留まっている。ちなみに,研究費に占める国防費の割合(D/R)をみる と,各国とも低下傾向にはあるが,アメリカ,イギリス,フランスなどで2割 強の水準を示している。他方,日本は1%にも満たない。また,国防費を除い た研究費の公共負担率[(G−D)/(R一一D)]を算出してみたが,それでもフラ ンスの値は5割近く,日本の3割弱に比べると格段の差が見出せる。欧米各国 は国防費に関する「制度」的差異を除去しても,研究費に対する政府(国家) 関与の割合が高いのである。 そのことは,研究活動の主体別割合においても確認できる。表∬(d)によれ ば,日本は使用者別でも負担老別でも,会社等(民間会社+特殊買入)が65∼ 70%前後のウェイトを占めている。他方,他の諸国は使用組織に関してぱ産業 が約60∼70%を占めているが,負担別では近年低下傾向を示しているとはい え,政府が40∼50%を占めているのである。 このような研究費の使用と負担の主体に関する国際的な差異と併せて,各国 の研究費の性格別構成を比較してみよう。初めに,各国全体の特徴をみると, 表lll(e)から基礎研究のウェイトは西ドイツ,フランスが20%余りであり,日本 は15%前後であった。逆に,開発研究のウェイトはフランスの45%水準を例外 70年版,P.73),60−69年間の技術導入額と企業設備投資(『通商白書』71年版, P. 149)も同様の事柄を示している。よって.60年代の前半を中心として,技術導入, 研究設備投資,企業設備投資の三位一体的な関連が摘出できょう。
110 彦根論叢 第226号 として,日本,アメリカ,イギリスが6096前後であった。 また,会社等に限定した資料についてみれぽ,近年,各国とも基礎研究へは 5%以下となり,開発研究ではアメリカ,日本は約75%以上の水準である。日
表皿(d)研究費の推移
日 本 アメリカ イギリス フランス 西ドイツ !960 65 70 75 80 1955 60 65 70 75 80* !955一一一一56 61一一一6270
75
78
1971 75 79 1956 60 64 71 75 80 使用組織別!割合 産業 67.4 59.3 68 9 64. 3 65.3 政府 利機 営究 非研関 16,0 16 1 12.9 16.0 15.2 大学等 16.6 24. 7 !8.2 19.7 19.5 外国・i その他 産業負担源別劃_倉
74 8 76.5 70 8 69, 1 68,8 70, 5 61.7 58.0 64.5 62, 7 64, 2 56.0 60.9 59. 5 59. 4 60. 6 66.1 1or.3 12 6 15,4 15.6 ユ5.1 12.7 28,8 28. 1 24. 3 26.6 21. 2 28,1 23 2 23.6Qゾ02
4﹁05
1 74. , 69 1 74. 7 72. 4 72. 3 11 ・.・レ723
33
3.536
3,4 O O57只︶42
0σ4占22QU
11
L2
1.4 IL8 12 0 10,886
10 5 11.7 12.5 13,3 4,851
8,4 8.4 1!.4L21
4.1 40, 5 32 8 32.0 40. 0 45.0 48,9 22,8 33.6 42.7 40. 8 42. 9 14.8 14.8 15.54ρ04
Q48rD
1 1 14002
4Qり﹁D 35.8 39.9 43.1 42. 0 40.9 35, 7 48, 5 47 8 0r44 扉営利 政府研究機 関 25. 3 30. 8 25,2 27.5 27, 7 56 or 63.708
!0 63 8i 12 57 0 51 4 47.513
!. 5, Lroll腸.1
1 P,Illj l k1 48 11 1.7 59.5 40.2 36,6 O,6 0.5 A月 割. ・他 国の 外そ 等 学 大23
24
30
!821
2.1 O.202
0.611
1.105
14 1!111
0000
Ol
m
、到 i9[ ,.71 4.9 6.2 ρ03 3︻0 o. 6 i戟@i4, or i s. 2 55.8 59.1 63.2 48.3 48.8 43.1L8
L3
0.9 2.3 !!L4
2.1 1.6123
〔D7〕より作成。 アメリカの*印は速報値。 イギリスの。印は公社と研究組合の合計値。戦後日本の技術導入・研究開発および特許の動向 111 表皿(e)主要国の性格別研究費 日 本 アメリカ イギリス 全 体 F’ Y’
ス越畑刷開発
1965 70 75 80 1960 71 7」r 80 1961’“6270
75
フフンス 西ドイツ 1971 75 77 1971 75 77 30.3 23.3 14.2 14, 5 31.1 27. 6 2L 5 25.4 38. 6 49.1 64.3 60.1 9.0 14 8 12,9 13 O* ILO 10 rJ 16 1 18.5 20.3 21.1 26,9 23. 8 20.691.0 22. 6 22.6 22. 4* 25.0 28,5 25 4 3Jr.0 36.2 34.4 62,.6 64. Jr 64. 6* 64 0 61.0 58. 5 46, 6 43 Jr 44 5
73,1 758 79,4 会社等(民間企業)
基劃応用「開発
!1 2 9,3 6.4 5.040
3,4 3.0 3.2* 0回目8﹁D −∴7Q4Qゾ3211
20. 0 18,5 18.7 19.0* 3,0 1 20,0 41 [ 21.g 3. 3 1 2 si . 4 ,,4 1 4,0 3.2 35. 1 35. 5 32,0 57.5 63.6 73.7 75.5 76.0 18.1 78, 3 77. 8* 77.0 74.0 71.2 4.7 3,3 61.4 60.5 64. 8 95 3 96. 7 (注)!.〔D7〕より作成。 2 アメリカの民問企業の70年値は,前後の動向と不一致と判断し,71年値を記載。 3.*印は速報値。 本の基礎研究への支出割合が他の諸国に比較して,その低下率は大きいが,そ の水準自体は依然として高位にある点が注目に値する。しばしば,日本の研究 開発は欧米に比べて「市場適合的」または「開発研究中心型」であるとか,純 粋科学的・理学的・基礎的な研究よりも,企業化・市場化指向の強い工学的・ 応用開発的な研究が支配的である,と言われる。研究の質的な特徴・差異を考 慮すればその通りになるのかもしれない。けれども,資料に示された数値で比 較する限り,日本が「従来から開発中心的」 (ペック・田村〔14〕)な研究開発 8) を実施してきたと言い切ることには無理が生じよう。 8) 政府の基礎研究(援助)活動は,1960年のアメリカが,民間企業の4%に対して10112 彦根論叢 第226号 ただ,研究費の絶対額の推移などに着目する時,以下の論点も無視できな い。すなわち,1960年代など,従来は技術導入を基調として,それに対応した 設備投資,加工的研究投資を行なってきた。その技術導入の研究費に占める比 率の低下(表皿(a)参照)に伴って,研究開発のウェイトも相対的に高まってい る。よって,新旧ともに,自主研究開発を行なうとすれば,基礎研究の比率は 小さくはない(なかった)という見方である。 続いて,戦後における各国の研究開発費と労働生産性の変化様式の連動性を 検討してみよう。表1[(f)は1970年を基準年として指数化された実質研究費と労 働生産性の推移を示している。70年以降,実質研究費では日本とフランス,西 ドイツがほぼ同じ割合で増加しているが,労働生産性では日本が他を抜きん出 て高い上昇率を示し,フランスがこれに続いている。この変化率の差が経済成 9) 長率の趨勢経路にも影響している点はしばしば指摘されている通りである。た 表H(f)研究費と労働生産性の動向(製造業) 日 本 アメリカ イギリス フフンス 西ドイツ 実 質 研 究費 lg6s [ 70 75 79 50 X4
m8263
100 100 100 100 114 98 114 121 139 116 125 134 労 働 生 産 性 1965 [ 70 75 80 8231510
rDQゾ878
ioo 1 100 100 100 100 130 118 i13 128 116 203 !28 119 !62 143 209 131 117 174 147(,sr (注)1.実質研究費は(D5〕ユ975,81年より作成。 2.労働生産性は〔D12〕1977,80,82年より作成。 3.なお,生産に関しては,総生産(GP)と純生産(2>P)があり,労働投入 量に関しては延時間数(人・時man−hour;.MH),延日数(人・日mαn−day; MD),就業者数(emPJoyed PerSOn;EP)カミある。 日本はNP/MD,アメ リカはGP/MH,イギリスはNP/EP,フランスはGP/MH,西ドイツは NP/MHである。 %,1961一一一62年のイギリスが,民間企業の3%に対して13%となっている(〔D7〕 1967年忌pp.52∼53, p,58)。研究活動への政府介入(産業政策)の日米比較の分析 等は,Peck&Goto〔13〕,若杉〔17〕を参照せよ。 g)例えば,Kamrany&Chereb〔8〕はアメリカを中心とした, Peck&Goto〔13〕は 日本を中心とした議論を展開している。戦後日本の技術導入・研究開発および特許の動向 113 だし,労働生産性の計測方法が各国間で同一でない点,およびその絶対的な水 準には大きな隔りがある点に注意しなければならない。また,両変数の変化率 に各国問でギャヅプが存在していることに経済学的な意味を与えることも小稿 の限りではできない。 3.研究集約度 これまでの考察では,研究費の絶対額に着目してきたが,例えば研究活動を 産業間・国際間で比較するためには,そうした活動を比較可能な指標で表わす ことが必要となる。つまり,各産業の規模とそこでの研究活動の水準との関係 を相対化した指標を用いることが適切な場合もある。そのとき研究活動の水準 には研究費(または研究員数など)が,また,その産業規模を示す変数には産 表皿(a) 日本の研究費/売上高比率 1960 65 70 70r 80
業業。悶服プ刷学蜀炭ム業歴属・叩三戸器他聖恩
衣ル印 石 金製機夷弓子機機
産造
・ ・ 薬・ 平和
維ノ版 油 鉄三聖気気門送油
全断食繊斗出化一石ゴ窯鉄非金一電電通弊精
︵
信・電冷用機
密 機その他の工業
運輸・編・公益剰0698844938822904443298
0ユ38429330971415284624
ーユ 一2 1 1 122211
ーユ0ユ47529020973813144664
2930214408953900056656
−Qり 一1
122211
34011423294579210845673556544143170853147276
11 24 11 1 133312
−1
3647444912200177219712
9191936ユ80551045975477
24 211111334121
4487!65500043501544269
5757425431310197393028
!1 25 21/11!333231
114 彦オ長言命叢 第226号 業の売上高(または従業者数など)が用いられることが多く,その比率は研究 10) 集約度などと呼ばれている。 趨勢(a)は日本の産業別研究集約度を示している(ここでの研究費は麦出額で 表皿(b>産業別従業員1, OOO人当りの研究本務者数の推移 1960 ’65 ’70 ’75 ’80 ’82
全農鉱建製食繊
虫 唾 水 設造 紙・パ ル 出 版・印 化 漫木産塁木業畳蔭 口﹁ 讐[型
品炭ム業鋼属属械微器他言車画業業
㌔金機纏動機義
油 鉄気窄∴密瀦
医石ゴ窯鉄非金機電う零丁う精そ運
\ ︵ ︵ うち,総合化学繊維( 薬、・
133659784267951673224101212
! 11 21321! 1/12!31121
1 !1 223!1 1112121111
133441563836119760304502422
1/ /i ユ 324111 1112231111
5Q8984819582431832583335823
2 11211! 43511111134451231
270185137574976187483491094
21!13!11 5562321213546224!
684225857703433339156667164
2 1!31!1 65623212236562342
961269568466661451234980454
!0) 工節で示した労働生産性規定の論理関係では,生産性測定に付加価値を用いた。付 加価値額(V)=売上高(S)一製造原価一販売費・管理費+労働賃金の点で,Vの資料 の入手可能性とV/S比率の短期的安定性とから.Sを近似的に代替することが多戦後日本の技術導入・研究開発および特許の動向 1ユ5 11) ある)。それは,製造業全体でみて,1960∼80年の間に約1.5倍になっている。 個別産業では,化学(特に医薬品),窯業,鉄鋼,金属,機械,輸送用および 精密機械などの産業で上昇トレンドが見出せる。また,その値(R/S)は80年 について電気(3.7),精密機械(3.0),化学(2.6)などが上位を占めている。 他方,表明(b)は産業別従業員1,000人当りの研究本務者数の推移を示してい 12) る。製造業全体では,この20余年の問に2倍になっている。特に,化学や電気 機械では3倍程度も増加している。これらのスタッフの増強度が研究費の増加 率と対応していることは予想に難くない。 4.研究活動の集中度 最後に,そのような研究費を支出する担い手を調べてみよう。表皿(c)は, 1960∼80年についての資本階層別の支出研究費のシェアである。階層分けの基 準が同一ではないが,すう勢として資本金10億円以上のシェアは77%から80% へと少しずつ増加している。それを上場企業に対応する大企業群と考えれば, 表皿C)製造業の資本金階層別研究費(会社等,%’) 1960 65 70 75 80
工豆皿WV計
x 一一〇.1 0.1一一一・ 1 1一 !0 10−100 100一一 II 5 70 13,3 41 7 26. 5 100 e︸
4.1 79 11.5 76 5 100 LA 2.4 9.2 10 4 28.9 49 1 100.0 O.6 9.8 12 1 26 5 51,1 100 105
66
12.0 25.4 0rs, 4 99,9 研 究 費 1, 178 2, 23! 7, 576 15, 313 28, 88! 1, 〔D6〕より作成。 2. 研究費は支出額(社内使用研究費)で,単位は億円。 3. x・=・O.Ol(60,65,70年), O、03(75年), O.05(80年) い。他方,労働投入量についても,①人・日≧人・時で,等号は残業のない時,②労 働力が正常稼動以上(以下)の時,雇用者数〉(≦)人・時となる。 !1) アメリカなどの資料は付表IRc別掲している。 12) この人数は“T−ratio”とよばれているが,営業活動(生産。販売活動)に携わら ない労働者の比率を示すものであり,前の研究費/売上高と同様,「科学集約型」産 業の!つの基準とみなされている。116 彦根論叢i第226号 数字でみた研究費の大半(約8割)が大企業によって(支出)使用されている のである。 この点を検討するために,売上高という生産・販売行動に関する上位企業 ノ エ ア 占有率と,研究費,研究者数など技術革新行動に関するそれとの比較を行なっ てみよう〔表皿(d)〕。 先ず,製造業全体については上位20社の集中度を示している。売上高集中度 は70年代に傾向的に低下しているけれども,研究費と研究者数の集中度は横ば いかやや上昇している。また,集中度の水準でみるとき,研究費の集中度は何 と売上高集中度の約2倍の高さである。研究者数の集中度も売上高の集中度よ り10ポイント程度の格差が見られる。 次に,個別産業の実態は,上位5社(4社),10社(8社)の値が掲載され ている。それらのうち,1980年の値からみた特微として,製造業の約2/3の産業 において,集中度の高さはく研究費→本務研究者数→売上高〉の順となってい ユお る点が挙げられる。全体として,研究費の集中度は売上高集中度よりも10ポイ ント以上も高く,特に非鉄金属,ゴム,繊維などの産業は20ポイント以上も高 い。また,各産業の研究費と売上高の集中度の格差を,産業数で単純平均した 値は,上位5社,10社についてそれぞれ13.9,14.0ポイントという大きさであ るQ こうした事実から,各産業の大企業が生産・販売以前の次元で代替的な製品 の開発・差別的加工とか製法・素材の改良を遂行する点で技術革新の投入の主 表皿(d)売上高と研究活動の上位企業集中度 1.製造業全体(上位20社) 1960 (64) 70 75 80 売 上 高 社内使用研究費
研究本務者数
研究関連従業者数 17.0 34. 8 22. 2 27. 9 !7.5 33.5 23 1 25.9 17.3 33.4 25,6 29.6 16.3 33,7 25 6 28,! 13) 売上高集中度が研究費集中度を上回るのは,石油・石炭産業だけである。2, 個男11産業(上f立4 戦後日本の技術導入・研究開発および特許の動向 ・8社と5・10社) 117 〈売 上 高〉 60年 ・?±1 8社 品維プ美学恥炭ム業鋼属・曹長械器三韓械
笈、石 藁機灘響機
.薬・ 電用
ナ油 鉄属般気晶㌔
. 詠
食繊紙誌化明石ゴ窯鉄鞭金一電電愚輸精
︵
66年4樹8社
70年 5社1・・社 75年 5社1・・社;蕪iiliii:i降i
!5.2t24.0]12.4123.6114.6 ss.41,,.,]g・S.tss l?giZ12.g.1陽砺鴛儲1隠濫1:1
鵬:;囎:II器1慰;:1[器:「 il:窟1:1嘘:鎧1:1:、1:l Iggi:i?2ii!g2’i&g:2一!:一2,Z lll:1…1鴇Ill:li器宣lzg・? L3−4. 7一・1 .4.10i i4.Ii 34 8i i9.2 i;:繕i 25.7113.6 争藍:まi:ま:9 ,1論髪:l l夏’11鋸:l sg?11glg 、;’1’雪ll邑:l lll鵜:a, i33,8i26.1 80年 5社1・・社隣;1饗1
24.3]10.4119.51 {多生:呂 :豊:£iきウ_; i:1:1陽lil}.劃 ill.量ll:呈ill:9.1 …ll:li慧:乙匿ま.li I認.1隣:濫ll:羽 i:2..;[21.121Zg・gi itLi,2[23.613s.4[ <研 究 費〉 60年 66年 ・社rg−IE・一1・社隔 品維プ憲章恥炭ム曲玉属口留械械器蠕械械 ロ狽
ル印 石 金製機機機矧機機
●薬. 庵用
こ
パ版 油
鉄属般気気三差密
. 評
食繊紙薫化口偏ゴ暗転非金一電電馴輸精
︵
3s.i1 34,21
2{.8 障1:l Is7.6 28i9 2;1,i ??f 羅.l S:iS 140.1 47.9 41.2 47. 5 77. 0 35, 7 76.2 58, 0 59.4 77. 3 100. 0 37.0 17. 3 74.0 87. 6 75.6 51.2 5{.6865289237799687018686680705276959241
332714553541246552
443925764862367663
507192381077130690799085627054717594
70年 75年 80年 5社1ユ0社!5社i10社5社,10社i604235128031899096653118884123107657
333524753751357552
445636864862368674
238397492643729907742526797570864942
233613563841257643
443439432627435557768587842087646376
37.2i25。6 45・1[53・6 51.7137.5 83,3 74.2 0Q 峨 1ワ R 々り ) ⊥」.) 54.6 37.9 76.8 43.2 73.7 66.5 45.9 31.8 90.3 78.2 63.4 50.6 26.2 25.0 35.6 30.6 68.9 46.1 84.8 70.0 74.4 56.4 63.7 62.4 55.5 41.0 35. 7 1 6!. 6 511S1 90.61 2s 81 :1:劇烈
:gi;I ll:頚 gg[: g?iz 54. 7118 彦根論叢 第226号 〈研究本務者数〉 70年 75年 80年
1・樹・・社」・倒・・初・樹・・社
ル印 石 金製機機機時機機
.薬・ 電用
パ心隔 鉄昏迷藷送密
食繊紙出化蝋石ゴ窯鉄非金一電電稀轄
︵
品
維
プ
刷
学
品) 石 炭 ム業
鋼
属
品
械
械
器
械
械
00622543923Q727111083099499539198348
2223 243163 236431
234414642751257553
567384655790731773762963087634665981
122512442631247523
833539597511220414392219346560172392
21. 9 37. 0 33.7 7!.7 19.! 40.3 igtg
ll:制 4g.8 1 18.4 1 26. 4 61.6 82,1 60r 3 [16 i 49. or605326858382180206
1008037509980135a9.
14361225253!246532
144813363752267651■
963886531249603982
644!06352877867798
体とみることもできる。けれどもそのことは大企業の技術革新行動が「効率 ユノひ 的」だとか「規模の経済性」があるという短絡的な結論に通じるものではない。 他方,一部の大企業が技術開発の主導権を握ることは必ずしも大企業間の競争 が緩和することをも意味しない。技術に関する競争が価格メカニズムと連動す れば,製品・製法の変革という動的な競争条件の下でのその時どきの効率的な 生産活動のメリットに通じるのである。 けれども,大企業が本来的に保有している「市場支配力」の発動により,技 術競争と価格・生産費競争とが分離されるとすれば,様々な問題の発生が予想 される。例えば, (大)企業が開発した新しい技術知識やノウハウなどの「成 果」を特定の経済主体の所有物とする点が挙げられる。技術開発は特許化され るとき,合法的な独占利益を保障されるからである。 14) 従来の研究結果は,技術開発が企業規模と比例関係(弾力性=1)にあること以上 のことを立証していない(60年代の化学産業のみ例外とされる。明石〔1〕とその参 考文献等を参照せよ。)「1十!;3」という意味での規模の経済性はない。戦後日本の技術導入・研究開発および特許の動向 1!9 特許制度には新しい製品・製法の開発・改良を促進するための技術革新イソ センチィヴ機能がある点も指摘される。制度の二面的性格を論評するために も,日本の特許制度の実態を概観しておくことは無意味ではない。 盟 戦後日本の特許をめぐる実態 本節では,技術革新の1つの成果指標ともみなされる特許件数の実態と,そ の企業別・産業別性格について検討する。
1.特許件数
特許とは,いわゆる「工業所有権」とよぼれている特許,実用新案,意匠, 商標のうちの1つである。特許の対象となるのは,「産業上利用することがで きる発明」であり,ここで発明とは「自然法則を利用した技術的思想の創作の うち高度のもの」をいう。また,それは製法,製品(物質)における新規性を エら 対象とし,単なる形状,構造,使用価値,審美感などの新しさではない。 特許権の取得までには,各主体が,①特許権の入手を「出願」し,②およそ 1,5年程度後に「審査請求」を行なう。この段階で料金を支払うために,価値 の低いものは淘汰される可能性がある。③そして,「出願公告」といって新規 に申請する特許の明細書を公表する。それは,④2ケ月以内に異義申立がなけ れば,正規の特許として「登録」される。 したがって,技術革新の成果として特許を用いるとき,技術開発のための支 15)実用新案をもつ国は,日本 と西ドイツなどに限られる。 また,日本における工業所有 権の推移は付表1の通り。 付表1 戦後日本の工業所有権登録件数の推移 [特 許1実用新案 意 匠 商 標 1945 50 Jr5 60 65 70 75 80 82 2, 340 4, 272 8, 557 11, 20r2 26, 905 30, 879 46, 728 46, 106 50, 60! 1,076 8, 021 15, 918 22, 102 35, 040 27, 7!8 48, 406 50, OOi 55, 304 2 3, 676 7, 157 15, 883 13, 654 21, 785 34, 829 3!, 289 33, 499643
16, 465 20, 453 20,5ユ6 31, 217 49, 098 109, 166 65, 739 86, 125 注=〔D13〕第35巻より作成。120 彦根論叢 第226号 出から少なからぬタイム・ラグを要していることが理解できる。以下,日本の 特許をめぐる実態,大企業の=果たす位置などについて,若干の国際比較も含め て,その特徴を整理してみよう。 初めに,主要国の工業所有権の出願件数の推移を概観しよう。表W(a>から, 日本の件数がとび抜けて多いことがわかる。アメリカが10万件近くで推移して いるのに対して,日本は傾向的に増加し続けて,81年では約22万件という膨大 な水準に達している。その理由は,単に①日本の技術開発が生産技術を中心と するという点ではなくて,むしろ,②技術的な先行(事前)調査が十分でない とか,発明に対する自己評価が甘いものなど,企業の特許管理の不十分さに由 来するもの,③小さな発明でも特許紛争からの防衛のために出願されるもの, さらに,④企業聞の出願競争の勢いで技術的水準は低くとも,技術者の士気高 揚のために安易に出願件数が積上げられるものなど,日本の企業間競争の体質 う に求められるようである。 表IV(a)主要国の特許出願件数の推移 195Jr 60 65 70 75 80 日 本 アメ リ カ イギリス フランス 西ドイツ 34, 508 1 43, 484 1 81, 923 77, 502 ! 79, 721 94, 629 3el g51) 441 elE 55, 507
鋤:1:携膳1
130, 831 103, 175 62, 101 47, 283 66, 132 159, 821 10/, 014 53, 400 40, 437 1 601 ogs I i 191, 020 104, 329 41, 640 27, 989 48. 583 注:〔D7〕1966,72,73,83年版より作成。 表IV(b)主要国の特許登録件数の推移 19sJr 60 65 70 75 80 日 本 アメ リ カ イギリス フ ラ ンス 西ドイツ 8, 557 30, 770 20, 630 23, OOO 14, 760 11, 2521画
譜1
26, 905 62, 857 33, 864 41, 800 16, 780 30, 879 64, 427 40, 995 26, 297 12, 887 46, 728 71, 994 40, 689 !−1, 320 18, 290 46, 106 61, 827 23, 804 28, 060 1 20, 188 注:表1▽(a)に同じ。 16)〔D13〕の展望を参考にした。戦後日本の技術導入・研究開発および特許の動向 121 事実,出願された後に,審査請求や出願公告を経て,正規の特許として登録 されている数を見ると,日本よりもアメリカの方が多くなる〔表W(b)〕。両表 の同次年での単純計算によれば,アメリカは低下傾向にありながら,対出願件 数比率で約7割程度の特許登録件数を維持している。これに対して,日本では それが3割弱の水準にとどまっている。上述したような日本の企業内部での特 許管理の体質などに問題がなくもなさそうである。 次に,こうした特許の出願・審査請求・出願公告の過程において,出願から 審査請求に至るまでの累計比率を71∼82年まで,出願年別・請求年別に整理し ユゆ た結果,次のような特徴が見出せた。(1)出願した同年に審査請求する割合は, 70年代前半で2割余,後半に至ると1割余であった。(2)出願年の5年後にほぼ 5割が審査請求されている。これも70年代半ばからは約4割となる。(3)審査請 求の有効年限7年の後の段階でも,出願件数に対する累積審査請求件数の比率 は約7割であった。 さらに,特許の各段階の暦年件数を用いた単純計算から,出願に対する審査 請求の比率が約6∼7割であり,出願に対する出願公告の比率は3割弱にすぎ ないことが矛フかったQ 2.企業・産業と特許 ここでは,特許を出願申請・登録保有している企業の特徴を調べてみよう。 初めに, 〔D8〕または〔D13〕より,全出願公告件数に占める日本法人の 同比率は8割前後の水準を推移している。次に, 〔D3〕 〔1)4〕 〔1)9〕な どの利用可能なデータより,日本の上場大企業の出願公告件数の上位20社を列 挙してみると,表V(a)のようになる。ただし,そこでの件数はAP,3が1972∼ 75年の,AP7 aが76∼80年の出願公告件数の年平均値である。それは各企業の 出願公告ペースの波を調整するために単純平均している。同病より,1972∼75 年については,東レ,帝人,旭化成,三菱レーヨン,クラレなど繊維関係の企 業が5社を数えたが,76∼80年では東レ1社のみしか見出せなく,産業地位の ユ7)〔D13〕から作成した「特許審査請求の推移」の資料に依る。余白の関係で同資料 は省略した。
!22 彦恨論叢第226号 表V(a)大企業の特許出願行動(上位20社)
平均出願公告件数
AP73 1 AP7s
企業名1件数企業名1件数
松・東東=百帝住旭三二嚢富松三キ・官田古小
魏 撃麺・∴国構∵フ議
下立芝・機電人学成工・鉄訂通工機⋮工松
1234567891011121314151617/81920次
立下狛電鉄
菱日日松東三新
﹁0つ﹂883
467噌b101489自
Qゾ49﹂ρ0ρ0 111
or 78. 3 496 0 442, 0 408 5 403, Jr 387 5 358,3 3355i東 326.3住友化学284劃沖電気
1 。1 279.3シャーフ1 239.(〉 ソ ニ 一233・3神戸製鋼i 221.3 21/8キi・ノン 211,8 1 1
富士通
日 電 三菱重工 松下電工 日立造船久保田
三洋電機 レ 2, 621.8 2, 507. 2 L231.2 831.e 631. O oF 90. 0 491.8 488.8 386.0 306.6 287.0 274.2 271.C 262 2 261 6 261.6 20r6 8 2 14.A 製鉄イヒ学二「 237.8230.2
立石電機…229.4出願件数
1980年企業名 件数
立下芝電電自通ン電[エ国鉄ス機成研学管田舎
@菱至∵・麺∵霧化蹴応保電
日松煙三日日富ダ三リ三松新山富国本国日久明
出願公告件数 PTs.2企業名1件数
欝
?lg2e S.12Z2霧
劃
:1−gge.,I l:蹴旨1糊
翻
1,477P
立下芝下竜工電鉄田︻
士菱儒・保・
日野東富三松日新久ソ
2, 678 2, 533 1, 736 1, 304 999 930 920 906 821 503 」 (注) !.〔D8〕〔D 9〕より作成。 相対的な低下が反映されていよう。他方,電機関係は前期にも松下(電器), 日立,東芝,三菱電機,日本電気,ソニー,富士通,松下電工,三洋電機,な ど9社にも上り,後期に至ってはそれに加えて,沖電気,シャープ(立石電気) など11(12)社にものぼる。電気機械産業では特に通信・電子・電気計測器に 関連する技術の急速な変化外みられる点,また,それらの素材とか数多くの細 密な部品が組合せられる点などの要因が件数を増加させていると考えられる。 ところで,いまみたAPぱ文宇通り,年平均出願公告件数であり,それは 特許のフP一における推移を示している。これに対して,企業が実際に保有し ている特許の総数の動向がヨリ重要であることに異論の余地はない。そこで,戦後日本の技術導入・研究開発および特許の動向 123 Noっ洋
島綜紹一熱虻響罧“蕪鐘蝉三曲⋮愁葦 卿罧“
HQQ耳 偏O。。①H 針ゆト曾 豪勇勲 ︵廻ON週円︶色聴塩尊崇迷e課噸釈︵謙︶﹀脳鳶鎗旨8111888$零88818$8諾888器
曾鴨『一般『喩『眠㌧(『弓『σ≧沌団口口『a.、
嵩曾f20つPtト①㊤のgy su w su。つ。つ。つ。つ。つ。つcu。q円同剖㌍H議臨終照粋駆嘩H麻厭冨紳潮(≧ト
擢・二丁 無鯉鯉隷県
う
專瓜桜田SS蕪111魎笹三教黄身111廷111111酬11ト・x・鋼E2i扁8錯#爵li:圏E)1891!IE{IE5お8鍮8潟
団鴨鴎。咳制目喩鷲哩瓢、曾『駄目璽R『。≧。≧版
&o脅餌9含a卜ooowマevco。つ。つ。つ。つoucucu
FL一似稀∼騨齢無価㌍霞璽繁き細皿鞭灘H$嘩倦蘇
綴読応冊虞魍離か鯉
專[巨桜111ぜ111m1日皿畑f置綴磐田超E出る坦理量
諾コrg E}i舘9188圏9$等8薦889誌霧沼霧
㌧通販『c”!『晩。一月一触『『㌧般川縁団蹴『璽
霧92讐麟⇒二①①c「つト④㊤㊤のののsu w寸ev。つ赴m頓綴
一口 窩蟹虞恒
鋼弔樋
灘田屑
ヤト弔憾握ξ輿
霞姻掴皿厳皿廉
富蝋璽終 き 墨血糊黒
目糊照m
鯉終[一く
紐腰山国
斗畢切傷 爵 鼠旨, 駐 .﹂﹁ ー リ ノ へ 卦 橿﹄
憲掴
皿まs。戴8器EII 8 R988器88お88響8望窪潮
解出隅R(!『口触田鰻喚『割田鴨『γて璽鴨L.喩
MO 88含曾ooトト10・nw曽。つ。つのeつco ou cu N ou掴削旨圏外㌍細ムH議灘径や如き隆昌姻煽惑}
1・畷脳製・田二二無丁丁醐
国威車111起111皿恨111誘客」契樋[[エ111彊皿掴桜田=獅噛総量董鷲黙量羅§考究
鯉伺lkム旨き朴素灘一くH[ヤH血糊膿潮煮[腰
丁霊曖鐸・職舷瓢二丁
桜□有川くく桜坦楽髪鎚阜Xi適111111癖噂田無:一:x担 例。“。つwの’s卜。つσ・黛二臼雪麟xo鱈E)i xo曾8巡 遣搏炉課姻二妻嶋憩腱負の儀一爪Q虫針糾勾凝一q気 .N 。径と◎%︹①∩︺︹寸Q︺︹。っQ︺ ,H ︵想︶124 彦根論叢 第226号 次に,各企業のストックとしての特許保有件数の動向について検討してみよ う。 先ず,表V(b)は各年の特許保有件数の上位20社を示している。ここでも,電 機関係の企業が大勢を占めていて,72年の7社から82年の10(11)社まで徐々 に増加している。その他の産業については,例えば,化学,輸送用機械などが 散見されるが,これらの企業の件数については,それが産業特性と企業規模と のいずれとヨリ強く関連しているのかは同表をみるだけでは結論づけ難い。 また,表V(b)を作成するために利用した原データを,産業ごとに集計・計算 した産業別の特許保有件数の平均値が表V(c)に示されている。各年の全サンプ ル平均値を上回る産業を挙げてみると,電機が72年以外で最上位を占めてい た。他方,繊維は72年に最上位だったが,81年からは平均以下へと低下してい る。80年以降では,輸送用機械と非鉄金属の台頭がある。また,75年の化学と 表V(c)大企業の特許保有件数(産業平均値)
72年
75年
80年
81年
82年
食繊紙化石ゴ窯鉄非金機電輸精そ
・ の
口川島パ学湘朋ム雌禾鋼鉄属⋮微機⋮機機他 全 体 (サンプル数) 5,,.4 1 93 2 47. 9 940,9 45, 4 480.5 119.0 107.6 121.0 49e.9 406 1 60 6 213,6 757 5 342. 8 430 6 (440) 110.2 922.4 68 7 636,3 299.6 」 222.8 1 136. 」r 516.2 0r ol. 6 22.2 210,6 1, 731 O ] s・ gs.4 1 601. 7 ,5 5. 5 622.5 (4ro7) 1 129.5 98.6 !,!58.6 、 525.3 102。g i 120.4 757,2 1 573.6 297・1P 906
414 8 1 4!6.4 1 166・1「 159・9 743.2 1 412.2 660.0 803 747.91 692
285.3「245.0 2,298.9 /,6325 /,1018 1 9749 819.3 587.4 13!81 191・5 107.0 403,2 81. 3 387.3 103.8 342.9 77. 7 475.6 483.3 37.3 206.3 /, 154.8 378,1 324, 5 206,0 s21.s [ 604.o 1 41s.2 (482) 1 (476) 1 (695) (注) 1.〔D3〕〔D 4〕〔D 9〕より作成。戦後日本の技術導入・研究開発および特許の動向 125 82年の鉄鋼が見出せる。 こうした点に関連して,特許の出願および登録の件数の,特許庁の分類に基 づく分野別のシェアを参照しよう。表V(d)より,先ず出願件数でみると,化学 が67年の30.3%から77年の23.8%まで低下傾向にあり,弱電は12,5%から22.0 %(電気合計=強電+弱電は21.1%から30.3%o)へと急増している。他方,登 録件数でみるとき,化学は68年の39.0%から78年の30.3%までやはり低下傾向 にあり,弱電は13.9%から18.7%(電気合計も22.4%から25.4%)へと循環的 18) な動きを示していた。よって,出願件数でみれば,化学のヨリ大きなシェア支 配体制から三者が20余%ずつのシェアを保有し合う状況へと変化している。ま た,登録件数でみると,化学は78年時点までで第1位のシェアを占めている 表V(d)部門別特許件数シェアの推移 F. Y.
蜘学
B螺.乱調
・ 器 5 計
解撫強弱瓢
1 2 ∩δ 4 5 ρ0 7 出 願 件 数 1967 72 77 登 録 件 数 1968 73 78 ,gli 21’剥 、訓(調
!00 O 36 26.8 22.3 10 8 7Jr 18.1 25.6 10.9 100.0401
23.s 1 24.2 ig41
8,3i 22 o1 30. k)i s.4 ioo i 1 3.3 39.0 19,1 55 8,5 !3,9 (22.4 !0.7 100 O 5.0 33.2 20.4 10.7 6.1 11.6 17.7 13.0 100.0 2.9 30.3 20,3 1L6 6.7 18.7 25.4) 9.5 100.0 全 件 数 85, 538 1 128, 316 1 158, 720 1 27, 972 1 42, 328 1 45, 504 (注) 〔D7〕より作成。 日用品他=日用品・家具・繊維及び雑貨 18)特許庁の項目別分類基準が変更し,出願件数は77/78年(76.77年は重複)で,登 録件数は78/79年で資料の連続性がなくなっている。新しい基準による近年の動向 はJ出願件数の76年と81年について,化学・冶金・繊維が18.2%から15.7%,処理・ 操作・輸送が21.5%から19.4%へと低下傾向,物理が19,0%から23,2%,電気が20.5 %から2!.9%へと上昇傾向であった。他方,登録件数では,79年と82年について,化 学他が20.0%から23.1%,物理が15.8%から168%,電気が17.2%から18,6%へと上 昇し,処理他が24.8%から20.6%へと低下している。126 彦根論叢 第226号 が,出願動向から今後電気系のシェアがヨリ拡大することは予想できよう。 以.との分析から次のようなことが示唆される。①産業別の特許の出願または 登録の件数は,化学,電気機械産業のシェアが扇ぎい,②けれども,大企業デ ータでみると,電気機械産業に所属する企業の上位シェアの大きさがヨリ顕著 であった。よって,③特許が出願申請された分野別にみた特許分布の仕方と, 企業ベースのデータからみた「産業」別特許分布とが多少異なる性格をもって いる。つまり,個別企業の特許化に関する多様化行動が確認できる。④また, 特許の件数で技術革新の成果の効率性を調べる場合に,電気機械産業もしくは そこに所属する企業の取扱いに留意しなければならない。⑤そして,特許の出 願件数と(登録)保有件数との関係は今だ明確ではないが,約5年程度のラグ が支配的ではないかと予想される。 W 分析結果の整理と今後の課題 小稿での分析によって明らかとなった論点と問題点を整理することで結びに 代えよう。 L 先ず,日本の技術開発ぱ技術導入を中心として,研究開発がその補完的 な役割を果たしてきたが,技術導入と研究開発の支出比率は次第に小さくなっ ている。また,72年から新規の技術契約は出超となり,技術ポテンシャルの拡 大が示唆される。けれども,筆者の別の研究〔2〕では技術料収入は技術料麦 払による説明力の方が支配的であった点などを考慮すれば,日本の技術革新ぱ 依然として技術導入に負う面が小さくないと考えられる。 2.各産業に所属する企業ベースのデータからは,特定の上位企業による研 究活動上の集中度が,売.ヒ高(生産・販売=営業活動)における企業集中度よ りもはるかに高いことが確認された。 3. また,成果指標としての特許件数による分析からも,産業ベース・デー タでは化学, (一般)機械,電気系の分野での特許件数のシェアが高く,特に 化学産業のシェア低下と電気分野のシェア増加の傾向が産業構造の変化に対応 する点で注目に値する。企業ベース・データでは,電気機械産業に属する企業
戦後日本の技術導入・研究開発および特許の動向 127 の上位占有度がヨリ顕著であった。 4.新技術の独占的な使用権もしくは新技術に基づく製品の独占的な販売権 を前提とした外国技術の導入競争が,時として導入企業の排他的な収益機会に つながることもあろう。それが国内の「市場支配力」の強化と結びつくことも 予想できる。しかし,これらの論点を進展させるためには,尚一層の研究が必 ラ 要である。 5. H本の自主的技術開発に関連して,研究開発支出の増加率は他国に比べ て高く,ヨリ高い生産性上昇率,経済成長率を説明する1つの要因であると考 えられよう。しかし,研究開発支出の大きさをみると,大企業の絶対的な水準 が技術進歩の急速な産業においてヨリ高く,そのことは,当該分野での事業活 動の継続に不可避的な要因ではあっても,特別に積極的な意味をもつと考える べきでもないかもしれない。今後,そうした産業でのベンチャー・ビジネスな ど小規模企業の行動と影響力を調べる必要があろう。 6,特許件数を技術革新の成果変数とみる場合,分析結果の解釈の.ヒで調整 的な配慮を行なうことが適切である。その点では,むしろ,各企業の保有特許 件数の黒崎がその企業の技術革新行動とかその収益性等にどのような効果を及 ぼしているかを検討することがヨリ必要であろう。 〈参肴文献〉 〔1〕 明石芳彦「技術革新の産業組織論的実証分析」『彦根論叢』219号,1983年3月。 〔2〕 ,「大企業の技術革新行動一二術料収支の実証分析」 『彦根論叢』224号, 1984年1月。 (3) Caves, R, E & Uekusa, IVf, lndustrial O;rganixation in .Tal)an, Brookings Institution, 1976. 〔4〕越後和典『工業経済』ミネルヴァ書房,1965年。 〔5〕一,「望ましい技術進歩と産業組織」『東洋経済』臨増,近経シリーズ,1972年9 月20日。 (6) Griliches, Z., ‘“Returns to Research and Development Expenditures in the Private Sector” in (9) 1g)例えば,三輪〔11〕の先駆的研究では,この種の問題意識が具体的に展開されてい る。
!28 彦根論叢 第226号 〔7)今井・小宮・村上・根岸・宇沢『価格理論皿』,岩波書店,1972年。 (8) Kamrany, N. M., & Chereb, D M., “Productivity Performance of the United States: lssues and Problems” in Economic lsszaes of the ei.o’hties, eds, by Kamrany, N. M., & Day, R. H., Johns Hopkins Univ. 1979. (9) Kendrick, 」. W., & Vaccara, B. N., eds, ATeze? Developmzents in Prodorcttwitbl Measurement and Analysis, Univ. of Chicago Press, 1980 〔10〕 小林好宏「研究開発と産業政策」,加藤・中村・新野編『経済政策(3)一日本の産 業政策』第7章,有斐閣,1971年。 〔!1〕 三輪芳朗「医薬品産業の高利潤の原因について」,『季刊理論経済学』,vol.28, no・ 1, Apr. 1977. (12〕 中村静治『戦後日本の技術革新』大月書店,1979年。 (13) Peck, M, J., & Goto, A., “Technology and Economic Growth: the Case of Japan” Research Policbl, no. 10, 1981, (!4) Peck, M. J., & Tamura, S., “Technology” m Asia’s IVew Giant: ffow the Japanese Eeonomy Works, eds. by Patrick, H,, & Rosovsky, H., Brookings lnstit− ution,1976,金森久雄監訳『アジアの巨人・日本皿貿易・産業組織・技術』日本経 済新聞社,1978年。 (15〕斎藤優『技術移転論』丈眞堂,1979年。 〔16)新庄浩二「研究開発・広告支出と企業成長」『国民経済雑誌』第147巻3号,1983年 3月,および同題の日本経済政策学会,第40回大会報告要旨・付表,1983年5月目 (!7) Terleckyj, N. E., “Direct and lndirect Effects of lndustrial Re.“earch and Dev− elopment on the Productivity Growth of IRdustries” in (9) 〔18〕植草益『産業組織論』筑摩書房,1982年。 〔19〕 若杉隆平「企業の研究開発活動と産業政策」,日本経済政策学会,第40回大会報告 要旨・付表,1983年5月。 〈資 料〉 (D 1) Annuaire Statistique de la France 1979, 1982 INSEE (lnstitut national de la statistique et des 6tudes economiques) (D 2) (D 3) (D 4) (D 5) (D 6) (D 7) 『外国技術導入年次報告』科学技術庁編。 『会社年鑑』日本経済新聞社,特に,1974年版。 『会社四季報』58年4集秋季号,東洋経済新報社,1983年9月。 『科学技術白書』科学技術一編。 『科学技術研究調査報告』総理府統計局。 『科学技術要覧』科学技術庁計画局編。
戦後日本の技術導入・研究開発および特許の動向 129 (D8〕 『公告特許:出願人索引』(財)日本特許情報センター。 〔D9〕 『季刊・日経会社情報』’81一皿夏号,’82−IV秋号,日本経済新聞社,81年6月, 82年9月。 〔D10〕 『日本統計年報』総理府統計局。 (Dll) RePort on the Census of Production 1956, 62, 68, 73, 78, 79, Department of [Trade and] lndustry, Business Statistics Office, HMSO. 〔D12〕 『労働統計年報』労働大臣官房統計情報部編(財)労働法令協会。 〔D13〕 『特許庁年報』voL 32∼35,日本国特許庁,1980一一・83年。 〔D14〕 『有価証券報告書総覧』 付表皿の(注) 1.〔D1〕〔D 7〕〔D11〕より作成。 2. アメリカの場合,電子機器と通信の区別がない,精密機械は理科学 機器を代用,航空機はミサイルを含む。 3. イギリスのゴムはプラスチックを含む。 4. フランスの非鉄金属は鉱業を含む。 5.西ドイツの繊維・衣服は皮革を含み,ゴムは合成樹脂を含む。また, 75年以降電気機械は電子の値,自動車は車輔の値。
彦根論叢 第226号 130 ①.H O,旨 H.倒 ト.H ①.ゆ QO.O oっ DO 寸.O ゆ,O ゆ.O O.O ゆ.O 頃.① αD.H の.O 寸匡)cr)Lr) N r→ N▼一イoo o o