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表面分析装置使用の体験記

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Academic year: 2021

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Journal of Surface Analysis Vol.16, No. 3 (2010) p. 186 鈴木茂 表面分析装置使用の体験記 −186−

巻頭言

表面分析装置使用の体験記

学生時代に電子分光装置や質量分析装置にお世話になって以来,いろいろな分析装置と縁がある. この電子分光とはAES と XPS であり,質量分析はスパークソース質量分析法(SSMS)であった. AES や XPS は界面偏析や表面反応の解析に,SSMS は微量元素の分析に使ってきた.当時の SSMS は定量性が悪く,色々やったが苦労ばかりで大したデータが出なかった.イオン源の安定性,排気 系,イオン源と乾板の配置等に問題があったものと思われる.その他にも各種顕微鏡等による観察 では,同一材料でも観察場所による成分や構造のばらつきがあることが多く,それらが全体的な結 果にかなり影響していることなどを悟った.いろいろな職場を体験し,SIMS やその他の分析装置 にもお世話になった.各分析法には長所も短所もあり,多面的に調べた方が信頼性のある結果が得 られることが多い.手法ごとの特徴を見分けられるようになったのも,若いころお世話になった表 面分析装置のおかげだと思う.この 30 数年で表面分析装置はめざましい発展を遂げたが,その背 景には要素技術の発展に負うところも少なくない.それらの体験を紹介し,教訓?についても述べ てみたい. ・真空排気系-30 年以上前の超高真空装置には,ロードロックがついていなかった.試料交換は, 分光器の真空を破り,大気から超高真空への粗引き,高真空排気,ベーキングをしていた.油の逆 流が怖いということで,ソープションポンプ(ご存じない若い方が多い)で粗引きをしていた.今 は,ロータリーポンプとターボポンプの粗引き系の組み合わせが一般的になり,超高真空技術が手 軽になった.昔は,ICF フランジの開閉が多いため,使用するガスケットの数が多かった.ガスケッ ト節約のために,トルクレンチでかける力を何段階かに分けてガスケットを複数回使用したことも あった.ICF フランジが一般的になる前は,金線(シール)をガスケットに使い,潰れた金線は回 収して再溶解し線引きして何回も使っていた.真空系本体がガラス製,金属製,いずれの場合でも コールドトラップが重要である.昔の冷却には,液体窒素よりも液体空気(職場で製造しており安 価だった)を使っていた.液体空気は水色であり,気化温度が低い液体窒素が気化すると,水色が 濃くなるのを見るのも勉強になった. ・データ処理-SSMS を使っていた時にはコンピュータなどがなく,乾板に焼きついたイオンに よる黒化度をミクロフォトメータで読み取り,X-T レコーダのアナログデータにしていた.XPS で はミニコンピュータが付いており,プログラム等が紙テープ(若い方は多分ご存じない)に入って いた.その後,記録媒体は大型ディスク,8 インチフロッピ,5 インチフロッピ,3.5 インチフロッ ピ等へと変化した.昔はピークフィッテングするのに,X-Y プロッタに書かせたスペクトルを,別 なプロッタに書かせた関数形と比較するようなこともやっていた.最近では,コンピュータを用い ると,測定データに対して簡単にスムージングやスペクトルフィッティングをしてしまう. ・教訓-以上のような技術の発達は研究者にとって便利でも,教育上よくないことがある.例え ば,バルブ操作は,ボンベガスバルブ,バイトンバルブ,ニードルバルブ,バリアブルリークバル ブなどと締め具合を感じとって覚えるのがよい.超高真空ゲージは,真空度を段階的に確認しなが ら点けるのがよい.最近は,これらがボタン操作で済んでしまう装置が多い.このため,若者は実 情を知らないまま操作して(時には壊して)しまうことがある.教育上必ずしもよくない.研究で は“先端的”が流行っているが,その前に基本的なことを身につけた方がよいと考える.装置メー カの皆様にはそれらも配慮した装置を作っていただきたいと思うが,読者の皆様のご意見は如何で あろうか? 東北大学多元物質科学研究所 鈴木 茂 ― JSA 巻頭言は三人連続して鈴木でした ―

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