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「総合的な探求な時間」の教材開発に関する実践研究

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(1)

「総合的な探求な時間」の教材開発に関する実践研

著者

藤野 博行, 水口 智之, 石川 勝彦

雑誌名

社会文化研究所紀要

81

ページ

35-52

発行年

2020-03-31

URL

http://id.nii.ac.jp/1265/00000726/

(2)

「総合的な探究の時間」の教材開発に関する実践研究

藤 野 博 行 

水 口 智 之 

石 川 勝 彦 

目次 1 はじめに 2 「総合的な探究の時間」変更の背景 3 総探のカリキュラムについて 4 教材準備と授業の進行 5 まとめ 1 はじめに 学習指導要領の改訂に伴い、これまで実施されてきた「総合的な学習の時間 (以下、「総学」と表記。)」は「総合的な探究の時間(以下、「総探」と表記。)」 に変更された。これを受けて、福岡県立北九州高等学校(以下、「北九州高校」 と表記。)では

2018

11

月、総探の全体計画と年間指導計画の作成を開始した。 総学と総探では、学習内容について大きく異なる点が2つある。1つは、課 題の在り方である。総学は与えられた課題を解決し、自己の生き方を考えてい くことであったが、総探では自己の在り方や生き方を考えながら、自分で課題 を発見して解決していく力の育成と変わった。これにより、生徒は教師から与 えられる課題を待つだけではなく、自分から社会に目を向けて、自分の進路と 照らし合わせながら問い立てを行い、より良く課題を解決していくために必要 なものは何なのかを考えて行動することが求められている。

(3)

もう1つは、課題解決に向けて既習の知識や情報を整理して活用しつつ、多 様な他者と共働を目指すことを目的としたことである。課題に対してまずは自 分で考え、情報を収集し、整理してまとめて表現を行うが、その過程で解決が 難しいときには、多様な他者との共働から解決策を見出すことを試みることが 求められている。 本稿では、総探の企画段階からその後の取り組み、その過程における成果や 課題等について報告したい。 2 「総合的な探究の時間」変更の背景 ⑴ 社会の変化  平成

28

年1月、科学技術基本法に基づき策定された第5期科学技術基本計画 において「超スマート社会(

Society5.0

)1」が提唱された。これは「必要なも の・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々な ニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年 齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮ら すことのできる社会」と定義される2。技術革新と、それに伴う社会の変化は これまでと比較にならないほど急激なものとなっている。数年先でさえ予測す ることが困難な社会が到来している。  一方、社会で活躍するために必要な能力も変化が生じている。従来は学歴な ど、客観性の高い能力が重視されていたが、近年、知識はもちろんのこと、そ れを用いて課題を解決する力やコミュニケーション能力、主体性、環境の変化 に適応できる柔軟性など、幅広い能力を有する人材が求められるようになって いる3。将来の予測が困難な社会を生き抜くことができる人材に求められる能 力も、過去のそれとは全く異なる高度なものになっているといえよう。 ⑵ 教育を取り巻く環境の変化  我が国の

18

歳人口は、団塊ジュニア世代が

18

歳を迎えた

1992

年の約

205

万人 を境に減少を続けており、

2018

年現在は約

118

万人、

2040

年には約

88

万人に減

(4)

%

)に過ぎなかった大学進学者数は、

1969

年には約

33

万人(同

15.5%

)、

2018

年 度には約

63

万人(同

55.3%

)にまで上昇した。これに伴い

1955

年に

280

校であっ た大学の数も、

2018

年には

782

校にまで増加5し、大学は現在「ユニバーサル 化」の時代6を迎えている。  望めば高等教育を受けることができる環境がある点は歓迎すべきことであろ う。しかし

2001

年以降の

19

年間で大学進学者数は約5

%

の増加にとどまるのに 対して、大学数は約

22%

増加しており、供給過剰な状況と言える7。大学も経 営的な観点から、従来であれば不合格となるような受験生についても合格を出 さざるを得ず、それでもなお、全国の私立大学の約

33%

が定員割れを来してい る8。従来に比べて幅広い学力層が入学していることから、一部、非常に学力 の低い大学生が存在しているのは確かである。教育に関心がない教員が、自ら の研究分野について滔々と語るという我が国の伝統的な大学教育は、高校にお いて基礎的な学力を身につけ、入学試験により選抜された大学生の自律的な学 習姿勢に助けられていた部分がある。このような講義に対応できない学生が増 えているのが現状である。 ⑶ 高大接続改革  以上のような環境の変化に教育も対応すべきであるが、初等・中等教育と高 等教育との間の溝は大きく、その大きな原因が大学入試であった。すなわち、 大学入学者の質は過去のそれとは変化しており、多様な学力・背景を持つ者が 入学しているにもかかわらず、大学は知識の教授が中心であり、入試も知識偏 重型となっている。高等学校も入試圧力から知識に偏った教育をせざるをえな い。そこで、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協 働性」(学力の3要素)をバランスよく評価できる入試への転換(大学入試改革) をいわば「かすがい」とし、高等学校教育と大学教育を一体的に改革しようと するものが、高大接続改革である。  高大接続改革については、

2012

年に文部科学大臣より中央教育審議会に対し て諮問がなされた9。これに応じ、高大接続特別部会により検討が開始され、

2014

年に「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大

(5)

学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」(高大接続答申)が公表された。 本答申では「生きる力」と、その構成要素の一つである「確かな学力」を、高 等学校教育、大学教育を貫く視点から再定義したほか、これらの能力を測るた めの「高等学校基礎力テスト(仮称)」、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」 の導入も提言した10。そして、高大接続答申に基づき

2015

年3月に高大接続シス テム会議が設置され、

2016

年3月、高大接続システム会議「最終報告」が出さ れた。この報告では、これまで検討されてきた方策の具体案が提言されている。 ⑷ 「総学」から「探究」へ  

Society4.0

以前の社会では、機械やコンピュータが代替できない仕事(定型 的業務)が数多く存在した。そして、このような仕事に従事するためには、知 識はもちろん、知識を効率良く習得し、これを大学入試などにおいて正しく 「吐き出す」能力(効率良く入力し、正確に出力する能力)が必要とされた。 しかし今後、ほとんどの定型的業務は

AI

に取って代わられると言われている。 とすれば、これから社会に出る者たちに残された業務は企画・開発や対外的な 交渉に代表される非定型的業務である。このような業務においては、周囲のあ らゆる情報・環境を勘案しながら、習得した知識を活用して職務上の課題を解 決する能力が求められる。しかしながら、これまで実施されていた総学につい ては、教科間の関連付けの不備や、探究過程における「整理・分析」「まとめ・ 表現」に関する取り組みの不十分さなどの問題が指摘されていた11。  そこで、総探では自己のキャリア形成と関連付けながら、実社会や実生活を 営む中で存在する「自分ごと」の問いを発見し、各教科・各科目で身につけた 「ものの見方」や「考え方」を働かせ、横断的・総合的な学習に主体的・協働 的に取り組む事を通して、生きる力を涵養することを目指している12。高校在 学中の早い時期からこのような学習に慣れ、大学では主にゼミ活動や卒業論文 の執筆などを通してこの能力を大きく発展させることにより、これからの社会 で働き、幸せに生きるために必要となる力を、大学入試をかすがいとしてシー ムレスに育成する。総探は、そのための科目として誕生したと言えよう。

(6)

3 総探のカリキュラムについて

⑴ カリキュラムの方向性

北九州高校は北九州市内にある1学年5クラス規模の全日制普通科高校 である。教育目標は、

Think Globally

(国際的視野をもって考える)、

Act

Locally

(地域で活躍できる実践力を持った人材の育成)を前面に打ち出した

教育活動を展開しつつ、

The Main Creator

(社会の変化に対応し、社会を支 え、その発展に寄与する力をもつ人材)の基盤となる「体力(健康)、学力(知 力)、豊かな心(情操)」とそれを将来にわたって貫くための「志(フロンティ アスピリット)」を伸長させることとしている13。  このような教育目標を踏まえた上で、総探を学ぶ1年生に対して身につけて もらいたい能力は次の2点であった。1つは「多種多様な課題に対して、自分 の将来を見据えて、自分で問い立てができるようになること」である。生徒が 学校卒業後に生活する社会には数え切れないほど多くの課題がある。それを誰 かに課題を与えられるタイミングを待つだけでなく、自ら課題に対して問い立 てをすることで問題意識を自分自身に喚起する意識を持ってほしいと願ったか らである。 もう1つは「解決に向けて、知識や情報を整理して活用し、多様な他者と協 働すること」である。知識や情報を得るだけでなく、それを活用するために整 理したり、1人では解決が難しい課題に対して、他者の意見や助言を求めたり 協力したりしながらより良く課題を解決できる能力の育成を目指したからであ る。 その能力を身につけるための授業展開を目指して、独自教材には「絶対解」 ではなく「納得解」を求める課題を多く準備して、課題設定・情報収集・整理 分析・まとめ・表現の活動が何度もスパイラルして繰り返される14ように計画 した。 まずは、課題に対して自分で「考えること、調べること、まとめて表現する こと」に主眼を置いて活動を展開した。次に、他者の意見を参考にして自分の 意見を見直したり、新しい発見に繋げたりする活動を通して、その都度自分の 言葉で記録を残し、整理する習慣を定着させるように努めた。

(7)

また、総合的な探究の時間の取り組みは教員、生徒両者にとって慣れない取 り組みであり、不安も強かった。これを解消するため、教員と生徒がコミュニ ケーションを図りつつ、ポートフォリオ的な記録を残す教材を用いた学習活動 を導入することとした。この教材は、生徒が自分の学習活動を記録する欄、教 員からの質問事項に対して自分の意見を短文でまとめて1つ回答する欄。1時 間の授業の取り組みを2行感想文という形でまとめる欄から構成されている (資料1)15。 資料1 ポートフォリオ教材の抜粋 ⑵ 全体計画と年間指導計画 以上の趣旨を反映すべく、総探の全体計画及び年間指導計画を作成した。総 探の授業を通して卒業までに生徒に身につけてもらいたい能力は、学校のグラ ンドデザインに沿った内容とした(資料2)。また、上記の目標を達成するた め、1年生の年間指導計画(資料3)、具体的な年間活動計画(資料4・資料5) を作成した。

(8)

資料2 全体計画の設定 資料3 年間指導計画の設定 資料4 総探における年間活動計画

(

前半

)

※1ヶ月に2∼4コマ、1コマは

50

分で構成 月 内容 詳細 4 総探説明

KJ

法基礎講座① オリエンテーション 高大接続事業:大学生によるティームビルディ ング講義 自己性格分析(自己認識と他者認識の差異を知 る) 5

KJ

法基礎講座② 進路探究① 文章読解① 本校イメージの差異(入学前と入学後、分類、 討議、発表) 担任面談 「クリスマスイブの夜に」

(

地域創生

)

6 基礎学習① 協働作業 祭の情報共有① 進路探究② モザイクアート制作 自分と他者のイメージの差異を知る 担任面談

(9)

7 祭の情報共有② 日本と世界の祭の情報調べ、地域活性に役立つ 祭の検討 8 祭の情報共有③ 探究課題希望調査 生徒実態アンケート 地域活性、地域創生に活用できる祭アイデアの 共有

SDGs

、その他喫緊の

20

課題から自分の興味関 心を探る 別紙マークシート用紙の活用 資料5 総探における年間活動計画

(

後半

)

※1ヶ月に2∼4コマ、1コマは

50

分で構成 月 内容 詳細 9 文章読解② 調べ学習

(

グループ可

)

発表準備

(

グループ可

)

「アフリカゾウの旅」(環境問題、絶滅危惧種の 保護) 関心のある絶滅危惧種を深掘りして、文章化し て意見をまとめる なぜ絶滅危惧種なのか原因を探り、解決方法を 発表する

10

自立と協働の体験学習 北九学 文章読解③ 調べ学習

(

グループ可

)

発表準備

(

グループ可

)

多様な他者との協働を野外調理(カレー)から 学ぶ 『多様な他者との協働作業を上手に取り組むため に必要なこと』 ・自己分析(長所、短所/できること、できな いこと) ・自分にできないことを多様な他者に依頼する 手順と方法 ・支え、支えられて成り立つ世界で生きること を自覚する機会

11

文章読解④ 調べ学習

(

グループ可

)

発表準備

(

グループ可

)

「独自教材:地球のエコを考える(環境問題)」 「独自教材:未来の世界を改善するためにするべ きこと」 「環境保全問題」を深掘りして、身近な課題から 解決策の模索 「他者との協働」により個人では気づけなかった ことを再認識

(10)

12

文章読解⑤ 文章要約と発表①

SDGs

に関する新聞記事を読んで

100

字要約の手 法を学ぶ 要約後に「発表者・清書者」を分担して、ルー ブリック相互評価 《冬休み課題》 ①身近なプラスチック製品と代 替品の模索        ②自 分 達 で 考 え る

SDGs

関 連 問 題と

100

字要約        ③大 切 な 人 へ『 感 謝 の 手 紙

100

字』と発表 1 文章読解⑥ 文章要約と発表② 自己表現を文章で挑戦 過去の活動振り返り 冬休み課題に関する新聞記事を

100

字要約して発 表、清書 要約後に「発表者・清書者」を分担して、ルー ブリック相互評価 感謝の手紙を「回し読み、発表、優秀作品1点 の選出」 リフレクションシートを書きながら、自省を促 す時間の提供 2 到達度確認試験 発表準備・リハーサル ※試験持ち込み教材→手書き教材のみ許可 ※文章表現記述問題、知識定着確認の穴埋め問 題等で構成 これまでの活動紹介と今後の活動予定

(

学習到達 目標の提示

)

3 ふりかえり 次年度の取り組み説明 各クラスで今年度の反省点、次年度への改善点 を確認

2020

年度に取り組む内容の説明(グループ分け 説明含む) 4 教材準備と授業の進行 ⑴ 導入 入学して間もない1年生同士の警戒を解き、お互いを知ることにより、協力 できる環境を作ることが必要である。そこで最初の学習活動として、九州国際 大学の学生による

Project Adventure

16の要素を取り入れたアイスブレーキン グを展開した。本活動では高校教員は見学に徹した。生徒に対する授業展開で あったが、教員研修としても機能した。 その後、自己紹介と他者紹介を通して自己性格分析(自己認識と他者認識の

(11)

差異を感じること)ができるような教材を作成した。自分が思っている自分の イメージと他者が思っている自分のイメージは必ずしも一致しないことがあ り、それらを近づけるためには、話し合いや共働作業をすることが大切である という点について体験から学んでもらった。 テーマを変えて同じ方法を繰り返すことは、生徒に対する学習定着を促進す ることにつながると考え、同様の活動を本校の「入学前と入学後のイメージの 差異」をテーマにして展開した。生徒一人ひとりが書き出したイメージを

KJ

法で分類し、本校のイメージを確定してみた。その結果に生徒は納得したり、 新たな発見をしていたようである(資料6)。 資料6 

KJ

法による取り組み(コマシラバスから抜粋) ⑵ まちおこしに役立つ祭りの計画・準備 地域創生の一環として、「まちおこしに役立つ祭の計画・準備」を考える教 材を作成した。自分の住む町に多くの人が訪れて、賑やかで元気な雰囲気を作 るためにはどのような祭を計画するのが良いかを考える活動である。その課題

(12)

た。授業では、それぞれが調べてきた情報を利用してマインドマップ(資料7) を作成する活動を展開した。個人で調べた色々な祭を他者と情報共有すること で「違い」を感じてもらう機会を提供し、祭の計画と実施に必要な予算や人材、 場所の確保、実施計画のタイムラインなどの詳細をグループワークで詰めてい く作業を展開17した。完成した計画はクラス内で発表して、新しい発見をもた らすような情報共有を図ることができた。 資料7 イメージ探しとマインドマップ ⑶ 

SDGs

や世界が抱える諸課題から自分の興味を探る 世界に散在する諸課題を生徒は少なからず感じてはいるものの、詳細はよく 分からないままであることが生徒の実情であった。そこで、その中身を知って もらうべく

SDGs

17

テーマを分かりやすい言葉に置き換えて、自分の興味・ 関心を探るアンケート調査18を行った(資料8)。この結果により、次年度以 降に検討しているクラスの枠を超えたグルーピングの参考資料が出来上がっ た。

(13)

資料8 世界の諸課題から自分の興味関心を探るワークシート ⑷ 環境問題を考える① 絶滅危惧に瀕している動物の記事を読んで、なぜ絶滅に瀕しているのか、ほ かに絶滅危惧種はいないのかを調べつつ、地球規模の環境の変化とそれに付随 して起こっている環境問題について学習活動を展開した。まずは個人で絶滅危 惧種について調べ学習をしたあとに、ペアやグループで情報共有を行い、類似 した内容は

KJ

法で分類する活動に取り組んだ。情報共有が終わった後は絶滅 危惧の原因が何なのかを生徒間で話し合い、現状のいかなる課題を、どのよう に解決していくことが種の保存に繋がるのかをクラス内で討論して、グループ ごとに発表した(資料9)。 資料9 環境問題と絶滅危惧種のワークシート ⑸ カレーライス作り 学校内でカレーを調理する学習活動に取り組んだ。誰もが知っているカレー

(14)

やもどかしさを感じるであろう。実社会では気の合うメンバーだけで活動でき るとは限らず、多様な他者との共働は必至になることから、生徒にその擬似体 験をしてもらうためにこの学習活動を企画した。 クラスを

20

人2グループに無作為に分割して、男女混合グループでカレーラ イス作りに挑戦した。各グループには事前に詳細な指示書を渡し、グループ内 での分業

(

レシピ検討、食材調達、食材加工、火起こし、野外調理、予算の精 算等

)

を促した。このときに重要視した点は2つである。1つは役割分担にお いて男女の差を理由にしないこと、もう1つは、自分のできないことは他者に 丁寧に依頼して円滑に集団行動を行うことである。話し合うこと、相談するこ とで業務分担を行い、1人1作業を必ず遂行することを徹底した。不安要素の 多い活動であったが、生徒は力を合わせながらカレー作りに取り組んでいた。 資料

10

 共働作業で調理をしている様子 ⑹ 環境問題を考える② 「自分の身近な場所における環境変化を通して考える地球規模の環境問題」 というテーマで学習活動を展開した。まず、自分が生活する地域の街並みや環 境の変化を思いつくままに書き出してグループで話し合いをした。そのあと、 地球規模の環境問題に関する一問一答問題(独自教材)を準備した。与えられ た一定量の文章を丁寧に読み込み、内容をしっかり落とし込んでいくと、その 後に続く問題解答に役立つという読み込み型の教材である。授業では、教材を そのまま使用するのではなく、前提として環境問題の説明や、数値化したデー タを過去と比較して地球環境の破壊状況を提示するなど、担当教師による独自 の工夫も見られた。授業の後には生徒に「改善すべき環境問題」の優先順位を

(15)

考えてもらう課題を与えて、将来の環境問題を改善するために今の自分がしな ければいけないことをタイムラインで考えてもらった。各自の思考内容をクラ ス内で情報共有して、様々な問題が山積していることを再認識することができ た。総探の授業開始当初と比較すると、自分の意見を整理して他者に伝わるよ うに説明する技法が身についてきたように感じた。 ⑺ 新聞の要約 1年間の総探の集大成として、与えられた多ジャンルの新聞記事を読んで、 重要な情報を収集し、

100

字に要約して発表する学習活動を2回展開した。1 回目は教員が準備した新聞記事で要約の方法を学び、2回目は自分たちで探し てきた新聞記事を用いて同じ作業を展開した。1回目は読解、要約ともに時間 を要したり、生徒の出来栄えに格差が生じていた。経験による慣れが影響して いる可能性があるが、大福帳の記述では、2回目は多くの生徒が達成感を得て いたようである。 資料

11

 読み込みと要約のワークシート①

(16)

資料

12

 読み込みと要約のワークシート② 5 まとめ 1年間を通して多くの教材に取り組み、その教材を利用して「考えること、 調べること、悩むこと、多様な他者との共働作業から得るもの、他者から助け てもらうこと、他者の協力で答えを導き出すこと、他者に分かるように伝える こと」を繰り返してきた。何を伝えたいのか探るために認識から思考し、相手 に分かるように伝えるために思考から表現を学びながら学習活動を展開してき た。生徒に「やらされる学びではなく、やりたい学び」を提案するため、多岐 にわたる学習活動に取り組んできた。 その際、総探の学習活動の展開において肝要となる「社会の変化に気付く力」 に目を向けさせるだけでなく、「生徒の実態」にもしっかりと着目して教材作 成に取り組んだ。学習指導要領に記載されているように、「何ができるように なるか」のために「どのように学ぶのか」を念頭に置いて教材作成を行い19、 所属する学年団教員とも綿密な情報共有を欠かさなかった。 この新たな取り組みに関しては、反復学習による知識や技能の定着だけを目 標にするのではなく、生徒が何を理解して、何ができるようになるのかという 「生きて働く知識・技能の習得」を目指した。また、未知の状況に対応できる 思考力・判断力・表現力を身につけるために、理解していることをどのように 使うのか道筋を立てて考える力の育成にも取り組んできた。さらに、この学び をこれからの人生に活かすための「学びに向かう力」の涵養のために、どのよ うに社会と関わってより良い人生を送るのかということを考えることができる 教材を独自開発してきた。学習指導要領で説明されているとおり、学びを単体 として捉えることなく、繋がりのある一連の学習活動として捉えて、高校で学 ぶいろいろな教科をクロスオーバーして連動する学習過程を生徒に経験しても

(17)

らい、その学び全体が生徒にとって「意味在るもの」として存在すること20 願って取り組んできた。 総探は始まったばかりであり、この1年間の取り組みだけでは到達点の確認 さえままならない状況である。しかし、次年度以降に続く学習活動の布石は生 徒それぞれに十分残せているのではあるまいか。次年度の学習活動開始時には まず、何ができるようになるかという到達点をより明確に生徒に提示したい。 次に、思考のスパイラルを繰り返す中での共働作業の連続や答えに辿り着くま でのプロセスの具体化を展開していきたい。そして、次年度は今年度の取り組 みをさらに発展させるためにも2つのことに主眼を置いた活動を学年団教員全 員で取り組んでいきたい。 1つは多様な他者との共働作業を助長させる取り組みとして、「クラスの枠 を超えたグルーピングによる共働作業」。もう1つは「校内発表だけでなく 校外での活動発表の機会の提供」を推し進めていきたい。地域で開催される

SDGs

発表会への参加、観光甲子園へのエントリー、高校生ビジネスコンテス トへの挑戦など校外での催し物にも積極的に参加することで自分たちの出来栄 えや現在の自分の能力を他者と比較して確認できる良い機会になるのではない だろうか。 このようにして、1年目の総探は、完成までにはまだ多くの可能性を秘めた 状況である。今後はより良い総探を完成させるためにも、教材の改善はもちろ ん、多くの人の助言や協力を受けながら推し進めていきたい。 ※添付資料はすべて、実際に使用した教材から一部抜粋したものを使用 注 1 狩猟社会をsociety

1

.

0

、灌漑技術の発達と定住化(農耕社会)をsociety

2

.

0

、蒸 気機関の発明と大量生産の開始(工業社会)をsociety

3

.

0

、コンピュータの発達と 情報流通の開始(情報社会)をsociety

4

.

0

定義し、IoT・AI・ビッグデータ・ロボッ ト技術などを活用した「超スマート社会」をsociety

5

.

0

と定義している。 2 内閣府「第5期科学技術基本計画」(平成

28

年1月

22

日閣議決定)

11

(18)

11

月)6頁 4 日本、文部科学省「平成

30

年度文部科学白書」(

2019

年7月)

188

頁  https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab

201901

/

1420047

.htm 5 日本、文部科学省「文部科学省統計要覧」(平成

31

年版)  https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/

002

/

002

b/

1403130

.htm 6 マーチン・トロウ著、天野郁夫・喜多村和之訳『高学歴社会の大学』(東京大学 出版会、

1976

年)。本書では、大学進学率が

10

%未満の状態を「エリート型」、同

10

%超∼

50

%を「マス型」、同

50

%超を「ユニバーサル型」と定義したうえで、エリー ト型からマス型、ユニバーサル型へと進むにつれて、大学の役割が変質すると述 べる。特にマス型からユニバーサル型への移行は、大学の目的が、社会の指導層 育成から、高度産業社会に適応しうる人材となるための素養を身につけさせるた めに、万人に遍く高等教育システムを提供することに変質し、大学教育を受ける ことが、一定の能力を持つ者に平等に与えられる権利から、国民に課せられた義 務へと移行するとも述べる。 7 

2000

年から

2018

年にかけて、大学数は

640

校から

782

校に増加している。一方で、 大学進学者数は約

60

万人から

63

万人の増加にとどまる。 8 日本私立学校振興・共済事業団「平成

31

2019

)年度私立大学・短期大学等入 学志願動向」(

2019

年8月)2頁 9 日本、文部科学省「大学入学者選抜の改善をはじめとする高等学校教育と大学教 育の円滑な接続と連携の強化のための方策について」(平成

24

年8月

28

日)https:// www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo

3

/

047

/attach/

1325778

.htm

10

 中央教育審議会「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教 育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」(

2014

12

月)6頁∼7頁、

10

頁。「生きる力」は、「豊かな人間性」、「健康・体力」・「確かな学力」から構成さ れる。また、「確かな学力」は「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「主体性・ 協働性」(学力の3要素)から構成される。

11

 中央教育審議会「総合的な学習の時間の成果と課題について」(初等中等教育分 科会教育課程部会(第

107

回)資料、平成

30

10

月1日)

12

 文部科学省「高等学校学習指導要領解説 総合的な探究の時間」(平成

30

年7月) 7頁

13

 日本、福岡県立北九州高等学校「校訓・校章・教育目標」 http://kitakyushu.fku.ed.jp/one_html

3

/Pub/Default.aspx?c_id=

45

2019

年3月閲覧)

14

 文部科学省、前掲注

12

12

-

14

15

 日本、早稲田大学人間科学学術院向後千春研究室「全ての授業で大福帳使おう」 (https://kogolab.wordpress.com/授業のデザイン/大福帳/すべての授業で大福帳を 使おう/)を参考に本教材を作成した。

(19)

16

 日本、Project Adventure Japan「PAとは」http://www.pajapan.com/aboutpaj/ aboutpa/(

2019

年2月閲覧)

17

 田村学、廣瀬志保編著 『「探究」を探究する』(学事出版、

2017

年)

116

117

頁、

191

18

 日本、日本ユネスコ国内委員会教育小委員会「今日よりいいアースへの学び」 http://www.esd-jpnatcom.mext.go.jp/about/pdf/message_

02

.pdf(

2019

年6月閲覧)

19

 文部科学省『高等学校学習指導要領(平成

30

年告示)解説「総合的な探究の時 間編」』(学校図書、

2018

年)

153

20

 福岡県教育委員会「令和元年度県立高等学校「総合的な探究の時間」担当教員 研修会 資料」(

2019

年)8頁

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・この1年で「信仰に基づいた伝統的な祭り(A)」または「地域に根付いた行事としての祭り(B)」に行った方で

⑴調査対象 65 歳以上の住民が 50%以上を占める集落 53 集落. ⑵調査期間 平成 18 年 11 月 13 日~12 月

本報告書は、日本財団の 2016