嚥下の問題が命の短さを決める」と告知された. 3月当院初診時は介助があればトイレ歩行可能であっ たが, 病状の進行は速やかで, 2ヶ月後には両下肢の運動 能力は喪失し左上肢の脱力と左胸部の違和感が出現, 聴 診上左肺は呼吸音が殆ど聴取出来なくなった. さらに 2ヶ月後の 7月下旬には寝たきりとなり両肺の呼吸音も 殆ど聞こえなくなった. 気管切開人工呼吸や胃瘻栄養に ついては告知を受けた後の通院期間にも説明を受けた が, 患者自身は明確に拒否を表明していた. しかしながら実際に呼吸不全の徴候が見られ始めた頃 合いを見計らって, 6月末に本人および患者家族と在宅 ケアに携わっているスタッフ全員でケア会議を開き議論 し改めて「患者さんの意志を尊重する」ことを確認した. 7月末に初めて本格的な息苦しさを訴えた. そこで気 切せずとも接続可能な非侵襲的陽圧換気法 (NIPPV) を 検討する目的で入院させた. 3週間の入院中に家族を え神経内科医と十 に話し合った結果 NIPPVは導入せ ず経鼻酸素投与だけの治療方針となって退院した. 帰宅後嚥下困難はなかったが, 会話は急激に声が小さ くなった. また同時に胸背部痛を訴えロキソニンを投与 したが効果はすぐに減弱した. この時点で「胸背部痛が 改善しないならモルヒネの内服を開始しよう」と申し出 た. その翌日排 した後しばらくして介助の娘が戻ってみ ると様態が急変していた. 直ち往診依頼があり駆け付け ると, 呼吸は微弱ながらまだあったが意識は消失してい た.酸素流量を増やしたところ SPO2は 79%から 97%ま で回復した. しかしながら意識は回復せず退院後 9 日で 死亡した. 結果的にはモルヒネ投与は行わなかったが, ALSの呼 吸苦に対してのモルヒネ投与は用量や投与経路に対する ガイドラインがなく, 導入に際しての説明と理解は癌以 上に困難かと思われた. 4.がん患者を看取るグループホームスタッフの思いと 緩和ケア病棟による支援 市川 直美,藤井 智代,橋本かよ子 野 裕子,津金沢理恵子 ( 立富岡 合病院 緩和ケア病棟) 【はじめに】 当 PCU は群馬県西毛地域緩和ケアネット ワークの中心的な役割として, 富岡地域を中心に在宅や 介護保険施設への訪問看護や電話相談を行っている. そ の関わりの中で, がん終末期患者を介護するグループ ホームスタッフより「不安」「心配」という声が聞かれた. そこで, PCU 看護師が, 今後どのように関われば施設ス タッフの「不安」や「心配」を軽減できるか えた.今回, 実際に携わったグループホームスタッフにインタビュー を行い, その方向性を見つけることができたのでここに 報告する. 【研究目的】 グループホームスタッフの「不 安」「心配」の内容を具体的に明らかにし,今後の援助の 示唆を得る. 【研究方法】 看取りを経験したグループ ホームのヘルパー 2名にインタビューを実施し, KJ法 により 析し, カテゴリー化した. 【倫理的配慮】 録音 したデータは 析後速やかに破棄し, この研究以外には 用しない. 院内の倫理委員会から承認を得て研究を開 始した. 【結果・ 察】 インタビューをカテゴリー 類 した結果,「支援体制の充実」「施設での生活継続」「家族 との関係」から満足と感じた一方で, 相談への遠慮」「無 力感」「判断困難」「知識不足」「精神的負担」「経験不足」 といった不安があったと判断できる. このような結果か ら施設療養支援に必要なことは, 1介護者が医療的な判 断に困らないよう,具体的に説明する. 2病気・薬に対す る知識を紙面を用いて説明する. 3傍にいること・見守 ることの重要性を伝える. 4 PCU から定期的に電話を する. また,「こういう時には電話を下さい」と具体的に 起こりうる症状の説明を行うことである. 今回, がん終 末期患者が生活の場として過ごしたグループホームス タッフを対象に調査を行った結果, 満足と不安に大別さ れることがわかった. 地域との連携をさらに充実させる ため, 今回の結果を生かしさらなる施設療養支援を行っ ていきたい. 5.家族旅行を希望した終末期患者と家族との関わりを 通して学んだ事 関 尚映,中里まゆみ,林 貴子 萩原由美子,藤田智恵子 (伊勢崎市民病院 9階B病棟) 【はじめに】 終末期医療において患者や家族は生命予後 に限りがあると判断された場合, どのように過ごしたい かを意思表示する事が求められる. 今回, 家族旅行を望 んだ患者・家族の思いを受け止め, 様々な問題を解決し 旅行を実現する事ができた事例を通して学んだ事を報告 する. 【倫理的配慮】 家族に本症例の研究の趣旨を説 明し同意を得た. 【患者紹介】 患者 : A 氏 60代 女 性 家族構成 : 夫と 2人暮らし (子供 3人) 病名 : 肺 癌,肝臓・副腎・骨転移 【経 過】 肺癌で抗癌剤治療に て入院. 症状の出現なく,「残された時間を悔いなく過ご したい」と前向きであった. 徐々に疼痛が出現し持続し てきたため, 医師と相談の結果, 緩和ケアを行う事と なった. 疼痛が持続すると活動意欲が低下し,「家に帰り たい」「家族揃って旅行に行きたい」と聞かれた.そこで 本人の思いを受け止め, 自宅へ帰る事, 旅行に行ける事 を目標とし援助した. 疼痛のコントロールと旅先での急 変時の対応に備えた. 退院となり 1泊 2日の旅行ができ 66 第 19 回群馬緩和医療研究会
た.帰宅した晩,呼吸状態悪化し再入院.その 2日後永眠. 【 察】 今回患者の最期の望みであった旅行を実現で きた. 患者の思い, 家族の思いを受け止め, 目標を決める 事で患者を取り巻く周囲の気持ちが一つになった. A 氏 の言葉から, 私達は残された時間は家族と過ごすかけが えのない時間であり最期の瞬間まで自 らしく生きる力 となったと感じた. 不安定な状態のなか旅行に踏み切っ た A 氏は, 人生を全うし, 悔いのない死を迎える事がで きた. そして家族も満足できた. 残された時間をどう過 ごしたか, また家族の思いはどうかを把握し関わってい く事は, 終末期患者やその家族にとって大切である事を 学んだ.患者一人一人にそれぞれ「その人らしい最期」が ある事を改めて認識する事ができた.