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Ⅰ. はじめに
近年,高齢化社会に伴い多くの疾患が認知されてい る.なかでも,肺炎による死亡数は,昭和50年に不慮 の事故にかわって第4位となり,上昇と低下を繰り返 しながら上昇傾向を示してきたが,平成23年に脳血管 疾患を抜いて第3位になった1).また,近年のデータ から肺炎で亡くなる対象者の約95%が65歳以上の高齢 者で占められ,高齢者の肺炎の大部分が誤嚥性肺炎で あると報告されている2).そこで,高齢者に対して安 心で美味しく・楽しく口から摂取し,心身の健康を支 援することを目的とした嚥下食のメニュー作成を試み た.筆者の地元群馬県には,江戸時代から「焼きまん じゅう」という伝統的なおやつがあり,菓子屋職人や 各家庭により培われてきた.伝統のある焼きまんじゅ うは,高齢者をはじめ大人から子どもまで幅広い年代 において人気の高いおやつである.著者らは,昔から 食べ慣れ親しんでいる焼きまんじゅうに着目し,地元 に集積する食材等を利用した嚥下食の提供を検討し, 「第4回~地域の伝統からオードブル・デザートまで~ 嚥下食メニューコンテスト 2016」に応募して,最 終審査において優秀賞を受賞した.本報では,同コ ンクールで受賞した「上州焼きまんじゅう味噌だん べぇ」及び「桑茶」の材料・作り方メニュー作成のポ イント等を報告する.Ⅱ. 「第
4回 嚥下食メニューコンテスト2016」
嚥下食の提供として,主催は一般社団法人日本医療 福祉セントラルキッチン協会,嚥下食ドットコム.協 力はフードシステムソリューション2016.後援は月刊 『臨床栄養』.高齢者の介護食について研究をしていた ので,「第4回 嚥下食メニューコンテスト2016」に応 募した. 【応募資格】 嚥下ピラミッドのL0~ L4もしくは,嚥下調整食分 類2013のコード0j ~コード4に該当する食事 【定義】 嚥下ピラミッドとは,2004年に開催された第10回日 本摂食・嚥下リハビリテーション学会の教育講演で金 谷が「5段階による嚥下食」の進化・発展形として発 表したものである.すべての食事を摂食・嚥下の難易 度にもとづいて,普通食から嚥下食までの6段階のレ ベルに分類し,各レベルの食物形態の物性条件を基準 化することで,品質管理を行う3). 嚥下調整食分類2013とは,国内の病院・施設・在宅 医療および福祉関係者が共通して使用できることを目 的とし,食事(嚥下調整食)およびとろみについて段 階分類を示した.日本摂食・嚥下リハビリテーション 学会分類2013(食事)では,より幅広い成人の中途 障害による嚥下障害症例に対応できるよう,コード0 に,ゼリーを意味する0j ととろみを意味する0t を設 けた4). 【応募条件】 本コンテストは,調理・提供に関わる知見や技術の 向上と普及拡大を目指し,一般料理部門・デザート 部門・行事食部門の3つのカテゴリーに分類されてい る.筆者らは,群馬県の伝統食である焼きまんじゅう に着目し,地元の食材を盛り込んだ「上州焼きまん じゅう味噌だんべぇ」をデザート部門で応募した. 【応募メニュー名】 ・上州焼きまんじゅう味噌だんべぇ ・桑茶高齢化社会における食文化の継承と継続
―美味しさと栄養の重要性―
Food Culture Inheritance and Continuity in Aging Society
―
Importance of Good Taste and Nutrition―
古塩 胡桃,中山 優子
Kurumi Kosio, Yuko Nakayama
20 桐生大学紀要.第27号 2016 【メニューのポイント】 1.生地は,群馬県産のゴロピカリ米を焼きまん じゅうの生地として代用したことである.ゴロピカリ 米は全粥でミキサーにかけ,なめらかな形態にして物 性を保つため,生地にトレハロースを用いた.トレハ ロースは水に対する作用が強く,製品中の水分活性を 低下させ保湿性を高め保存・日持ちを向上させること や凍結などによって起こる離水を防止することなど水 分にとって好ましい機能を持っている5).さらに,見 た目にも配慮し,白い生地に群馬県産の桑葉100%の 粉末を練り込むことで,白と緑の2色を目で見て楽し めるようにした.桑葉の効用としては,便秘を改善, α‐グルコシダーゼを抑制し血糖値を下げる,高血圧 の抑制など様々な効能が報告されている6).そのため 焼きまんじゅうのお供として,とろみをつけた桑茶も 一緒に添えた. 2.焼きまんじゅうの丸い形を表現するために製氷 器を使用した.誰が作っても均一に丸く形成すること ができるため,再現性に優れている.ゲル化剤は,臨 地実習の現場で広く利用されていたスベラカーゼに注 目した.スベラカーゼの特徴は,米のべたつきを改善 し,温冷配膳車でも適時適温の提供ができるところが 魅力である. 3.タレは,昔ながらの懐かしい甘い味噌ダレの味 をベースに,香りの良いにんにくとねぎを使用するこ とで,嗅覚に刺激を与え,食欲を促進するようアレンジ を加えた.さらに高齢者の低栄養の予防の観点から, 少量でもエネルギーアップが図れる粉飴を活用した.
Ⅲ. 実践活動の成果
今回応募したメニューの物性は,桐生大学医療保 健 学 部 栄 養 学 科 に て( 株 ) 山 電 ク リ ー プ メ ー タ ー (RE2‒3305/33005B)を用い,硬さ・付着性・凝集性 を測定した.測定値から,嚥下ピラミッドのL2,嚥 下調整食分類2013のコード1j に相当した.L2(嚥下 食Ⅱ)は,均質性をもつもののレベル1に比べて粘性, 付着性が高い,ゼラチン寄せなどの食品が該当する3). コード1j は,均質で付着性・凝集性・かたさ,離水に配 慮したゼリー・プリン・ムース状のものである4). 「第4回 嚥下食メニューコンテスト2016」では,応 募総数107作品から第一次審査(書類選考)で6作品が 選ばれ,第二次審査(最終選考)の最終審査結果で優 秀賞を受賞した. 実際に決勝審査で提供したメニューの写真を示す (図1). 【メニューの材料 (1人分)】 ≪生地≫ ・群馬県産ゴロピカリ米………25g ・桑茶(粉末)………0.2g ・ゲル化剤(スベラカーゼ)…………全粥の重量2% ・トレハロース………米の重量2% ≪タレ≫ ・ねぎ…………4g ・にんにく……0.2g ・油………2g ・粉飴…………13g ・黒砂糖………8g ・砂糖…………16g ・調理酒………8g ・赤味噌………12g ・水………12ml ≪桑茶≫ ・桑茶(粉末)……0.01g ・水……120ml ・とろみ剤(とろみパワースマイル)……1.2%濃度 【作り方】 ≪生地≫ ① ゴロピカリ米を5倍加水で全粥を作る. ② 全粥を80℃以上に温め,ミキサーにかける(強 火). ③ なめらかになるまでミキサーで撹拌,その後ゲル 化剤を加え均一になるまで撹拌する.3分の1の量に は桑茶の粉末を入れて再びミキサーで撹拌して2色 つくる. ④ 温かいうちに製氷器の型に流し込んで形成し,冷 蔵庫で冷やす. ≪タレ≫ ① ねぎとにんにくを極みじん切りにする. ② 鍋に油をしき,ねぎとにんにくを炒めて香りを出 させる. ③ ②に粉飴・黒砂糖・砂糖・調理酒・赤味噌・水を 加え,焦げないように混ぜ合わせる.5分程煮立た せてとろみをつける(弱火~中火). ≪桑茶≫ ① 120ml の水に桑茶(粉末)を溶かす. ② とろみ剤でとろみを付ける(1.2%濃度). 表1 1人分におけるエネルギーと栄養素21 桐生大学紀要.第27号 2016