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JAIST Repository: 産学連携に対する評価方法の研究

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JAIST Repository

https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 産学連携に対する評価方法の研究 Author(s) 永松, 陽明; 藤, 祐司; 渡辺, 肇 Citation 年次学術大会講演要旨集, 29: 79-82 Issue Date 2014-10-18

Type Conference Paper Text version publisher

URL http://hdl.handle.net/10119/12400

Rights

本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す るものです。This material is posted here with permission of the Japan Society for Science Policy and Research Management.

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1C05

産学連携に対する評価方法の研究

○永松 陽明(横浜市立大学)藤 祐司(東京工業大学)渡辺 肇(横浜市立大学) 1. 背景 研究開発を効率的に推進するために,オープン イノベーションがますます重要となっている.そ の進め方として,コア技術を自前で行い,その補 完,拡大やビジネス化はオープンイノベーション で補っていくなどの議論などが多数あり,その多 さは高まるニーズを表している[1]. オープンイノベーション推進の一手段である 産学連携も,1995 年の科学技術基本計画制定と 1996 年の第 1 期科学技術基本計画をトリガーとし [2],1998 年の大学技術移転促進法を受けた大学, 財 団 法人 など に よ る TLO(Technology Licensing Organization:技術移転機関)設立により,活発化 している. 産学連携を進めるに当たっては,伊藤(2007)[3] が論じているように,図1 に示す企業や大学,そ の他組織が共にロイヤリティ(利益)を確保できる メカニズムの構築が必要になる. 図 1. 戦略的共同研究マネジメントモデル. 出所:伊藤(2007)[3] また,産学連携を進めるにあたり,公的資金を 利用した研究開発も行われる.その適切な利用・ 管理のため,新エネルギー・産業技術総合開発機 構 (New Energy and Industrial Technology Development Organization: NEDO)では,研究プロ ジェクトの事前,中間,事後及び追跡調査・評価 を行っている[4].産業総合研究所[5]や科学技術振 興機構[6]も同様な取り組みを行っている. 一方,文部科学省(文科省)と経済産業省(経産省) では,産学連携評価指標の開発に着手しており, その例を表1 に示す. 表 1. 文科省・経産省による産学連携評価指標例 出所:東京医科歯科大学(2014)[7] 表1 を見ていくと,NEDO などと同様に公的な 資金を使うことによる波及効果などの把握が,ね らいであることがわかる. 以上の取り組みは,国家的な視点での産学連携 研究のアウトプット評価が主軸となっている. 一方で,オープンイノベーションや産学連携に おいては,企業も重要な役目を果たしていかなけ ればならない.そのため,企業視点での産学連携 評価も必要であり,重要となる.しかし,企業が 必要とする産学連携評価についての議論は少な い.そこで,本研究ではそれを対象に議論を進め る. 発明開示 評価,発明譲受 基本特許の出願 実施快諾 (オプション含む) ロイヤリティの発生 ロイヤリティの配分 研究者 大学 (研究費) 企業 共同研究の実施 公募型研究資金 改良発明 TLOによる マネジメント 評価 観点 評価軸 評価項目 評価項目の 詳細 対応する 指標 イノベー ションの 創出 技術移転 (実施承諾) 技術移転活 動の有効性 発明評価, 特許出願, マーケティン グ等の技術 移転活動が どの程度有 効に実施さ れているか 特許権の実 施許諾権利 数/特許出 願件数 ‐省略‐ 技術移転活 動の効率性 ‐省略‐ ‐省略‐ 技術移転 (譲渡) ‐省略‐ ‐省略‐ 大学等の 産学連携 活動の 方針策定へ の貢献 研究力向上 産学連携活 動から研究 活動への フィードバッ ク状況 産学連携活 動から研究 活動としてど れだけの成 果(論文等) が生み出さ れたか 共同研究等 による研究 成果として の論文数/ 共同・受託 研究契約件 数 ‐省略‐ 教育・人材 育成 ‐省略‐ ‐省略‐ まとめ 英国の製造業は、19 世紀半ばからの第二次産業革命以降、技術教育の遅れ等の理由により、その技術 力は衰退し、降下の一途をたどった。しかし現在、産業によっては競争力を維持しているものや、回復 しているものもある。例えば、医薬品産業、自動車産業、航空機産業、軍需産業等、GDP に対する付 加価値が高いハイテク産業において、英国は存在感を示している。本稿で見てきたように、リーマンシ ョック後、英国政府は製造業を長期的なチャンスとして見据え、経済戦略に活用しようという試みを本 格的に開始した。世界的潮流をみても、現在は、製造技術のデジタル化によって第三の産業革命がすす みつつあるとの指摘もあり、製造業は、3D プリンタ等を用いた付加製造技術(Additive Manufacturing) による開発・試作・製造プロセスの革新の可能性も含め、よりスマートでフレキシブルなものづくりに 移行していくことが予測される5。ただ、英国には製造業を軽視する伝統的な考えからなかなか抜けきら ない側面もあるため、政府や大学が主導する様々な政策や取り組みが実を結び、実際に製造業時代の再 到来となるのかどうか今後注目していく必要がある。

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企業視点での体系的な産学連携評価に繋がると 考える. これまでの議論及び表2 を踏まえると,表 3 に 示すプロセス評価案が考えられる. 表 3 既存研究から導出した産学連携推進のため の評価方法(リファレンスモデル) 4. 評価方法の検討 3 で考案した産学連携の評価方法(リファレ ンスモデル)の検討を行うために,事例を用いる. 利用する事例は,筆者が担当した産学連携のプロ ジェクトであり,理工系大学とメーカが行ったも のである(永松他(2013)[14]). このプロジェクトの取り組み内容は,企業での 失敗事例をヒューマンエラーの視点でとらえ,失 敗要因を解決する方策を業務プロセスに反映さ せ,同類事故発生を抑制するものである.産学連 携の成果としては,開発そのものg成功したこと と開発した方法が社内適用されたことである. この産学連携を進めるにあたって,上記のリフ ァレンスモデルの実施項目を行ったか否かの評 価を表4 にまとめる. 表 4 事例の評価結果 この部分が足りないので,追加すべき. 表4 の右列の「実施状況」が,利用事例で行っ たか否かを示したものである.○は行ったもの, ×は行っていないものである. 利用事例では,概ね実施項目を行っているが, 特許作成支援のみ行っていない.理由としては, 特許は企業側で作成する契約としたためである. 特許は大学側,企業側どちらで作成しても問題は 起きないと考えられ,特許作成支援は大学が執筆 する際のみ行えば良いと考える. 以上,今回用いた成果の出ている事例を評価し た結果,特許作成支援以外は実施していることか ら,考案したリファレンスモデルには不備が少な いと考える. ただ,リファレンスモデルの実施項目以外で重 要であることは,信頼関係の構築や適切な情報開 示やコミュニケーションの充実もある[15].共同 研究における研究者のコミュニケーションの重 要性については,関根(2014)[1]も必要なことと指 摘している. 以上の指摘と特許作成支援を踏まえると,企業 視点での産学連携評価方法(リファレンスモデル) は,表5 となる. 表 5 新しい産学連携推進のための評価方法 (リファレンスモデル) 5. 結論 本研究は,既存研究が少ないが企業視点での産 学連携評価は重要であるという観点で,産学連携 評価方法の検討を行った. その評価方法として,CMMI や ISO9001 などの リファレンスモデルを参考とし,既存研究から実 施項目を抽出し,産学連携推進のための評価方法 (リファレンスモデル)を作成した. 作成したリファレンスモデルの検討のために, 筆者が担当した事例を用いた.検討結果は,作成 したリファレンスモデルには特段の不備はない というものであったが,信頼関係の構築や適切な 情報開示やコミュニケーションの充実も重要で あったため,それらを考慮した新しい評価方法を 作成した. 今回作成した評価方法は,1 事例でしか検討を プロセス 実施項目 研究着手前  技術発掘のための連携先探索  発掘技術の事業化,知的所有権の検 討  相手先との交渉(目的,契約など)  スケジュール設定(役割分担など) 研究着手中  進捗確認の実施  特許作成支援 研究終了  研究の効果確認 プロセ ス 実施項目 実施状況 研究 着手前  技術発掘のための連携先探索  発掘技術の事業化,知的所有権 の検討  相手先との交渉(目的,契約 など)  スケジュール設定(役割分担 など) ○ ○ ○ ○ 研究 着手中  進捗確認の実施  特許作成支援 ○ × 研究 終了  研究の効果確認 ○ プロセス 実施項目 研究着手前  技術発掘のための連携先探索  発掘技術の事業化,知的所有権の検 討  相手先との交渉(目的,契約など)  信頼関係の構築  スケジュール設定(役割分担など) 研究着手中  進捗確認の実施  適切な情報開示  コミュニケーションの充実  特許作成支援(大学が執筆する場合) 研究終了  研究の効果確認 2. 既存研究サーベイ 前章で触れたが,産学連携による研究プロジェ クト評価は行われている.しかし,企業視点での 評価方法における文献や研究は少ない. そうした中でも,桑江(2007)[8],實淵(2007)[9], 阿部(2007)[10]がある. 桑江(2007)[8]は,東芝における半導体分野の産 学連携に触れ,事例紹介とその経験を踏また産学 連携の成功要因を導出している。成功要因は,3 点あり,(i)共同研究の目的を明確にしたこと,(ii) 産学それぞれの役割分担を明確にしたこと,(iii) 産のニーズを開示し学のアイデアを導き出した こと。換言すれば,産のニーズと学のアイデアの 結合,と論じ,産学連携学会の論文内容を用いて, その一般的な妥当性を検証している. 實淵(2007)[9]は,企業からの視点に立ち,産学 連携の取り組み先(大学)選定や共同研究の契約に ついて問題となる項目3 点を論じている.その問 題になる点として,(i)役割と費用負担,(ii)成果の 帰属,(iii)成果の実施条件を挙げている. 阿部(2007)[10]は,積水化学での産学連携につい て,その推進方法を論じている.その方法は,ま ず大学訪問や学会参加などにより情報収集を行 い,その情報を基に技術を発掘し,その発掘技術 が事業に貢献するか,知的所有権を確保できるか などの視点で検討し,共同研究,研究委託先を決 定するものである.共同研究先が決定し,研究が 始まると3 か月に1回程度進捗確認をしていくこ と,大学の研究の視点が長期的なことであるため、 そうしたことを考慮したスケジュールを設定す ること,特許を作成する際にその支援が必要であ ることなどを併せて論じている. 以上の既存研究の要点を,表2 に整理する. 表 2 既存研究における産学連携の要点 整理を行った既存研究は,経験を踏まえまとめ られており,企業が産学連携を進めるにあたり, 参考になる.一方で,それらは体系的に整理はな されていない. そこで,本研究では、企業視点での体系的な産 学連携評価方法の検討を行う. 3. 評価方法の考案 システム開発や品質管理,失敗学など分野では, 計画や業務の進め方,改善の参考となるリファレ ンスモデルを踏まえ,評価が実施されている. 例えば,システム開発の分野では,カーネギー メ ロ ン 大 学 に よ る CMMI(Capability Maturity Model Integration)[11]がリファレンスモデルとし て利用されている。このリファレンスモデルが特 徴的であることは,成熟度というコンセプトであ り,組織の成熟度レベルによって実施すべきこと が異なっている. 一方,品質管理の分野では ISO9001[12]がリフ ァ レ ン ス モデ ル と し て多 く 利 用 され て い る . PDCA(Plan-Do-Check-Action)を行うこと,しなけ ればならないことなどが規定されている. また,上記2 つのリファレンスモデルを踏まえ, メーカーの設計部門におけるリファレンスモデ ルを作成・運用した研究[13]がある.その研究で は,品質経営評価技法と呼ばれるリファレンスモ デルを作成・運用している.その具体的な内容は, 設計プロジェクトにおける必要なプロセスと実 施項目(仕組み)を ISO9001 や事業部設計基準など から抽出するものであり,評価の際は,プロジェ クトにおける実施項目を行っているか,否かだけ ではなく,実行のレベルも併せて評価している. そのコンセプトを図2 に示す. 図 2 品質経営評価技法のコンセプト 出所:永松他(2011) 以上のリファレンスモデルのコンセプトに従 い,産学連携におけるプロセスや進め方について もリファレンスモデルを作成・運用することが, 論文名 成功要因 桑江(2007)  共同研究の目的を明確にしたこと  産学それぞれの役割分担を明確にし たこと  産のニーズを開示し学のアイデアを 導き出したこと。換言すれば,産の ニーズと学のアイデアの結合 實淵(2007)  役割と費用負担  成果の帰属  成果の実施条件 阿部(2007)  情報収集を基にした技術発掘  発掘技術の事業貢献や知的所有権の 確保可能性などの検討  3か月に1回程度進捗確認  大学の研究の視点が長期的なことを 考慮したスケジューリング  特許作成の際の支援 仕組み プロジェクト プロセス 改善 事業部 実行 品質経営 評価技法 評価 改善提案(ベストプラクティス提示) 計画 仕様 設計 検査 製品

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企業視点での体系的な産学連携評価に繋がると 考える. これまでの議論及び表2 を踏まえると,表 3 に 示すプロセス評価案が考えられる. 表 3 既存研究から導出した産学連携推進のため の評価方法(リファレンスモデル) 4. 評価方法の検討 3 で考案した産学連携の評価方法(リファレ ンスモデル)の検討を行うために,事例を用いる. 利用する事例は,筆者が担当した産学連携のプロ ジェクトであり,理工系大学とメーカが行ったも のである(永松他(2013)[14]). このプロジェクトの取り組み内容は,企業での 失敗事例をヒューマンエラーの視点でとらえ,失 敗要因を解決する方策を業務プロセスに反映さ せ,同類事故発生を抑制するものである.産学連 携の成果としては,開発そのものg成功したこと と開発した方法が社内適用されたことである. この産学連携を進めるにあたって,上記のリフ ァレンスモデルの実施項目を行ったか否かの評 価を表4 にまとめる. 表 4 事例の評価結果 この部分が足りないので,追加すべき. 表4 の右列の「実施状況」が,利用事例で行っ たか否かを示したものである.○は行ったもの, ×は行っていないものである. 利用事例では,概ね実施項目を行っているが, 特許作成支援のみ行っていない.理由としては, 特許は企業側で作成する契約としたためである. 特許は大学側,企業側どちらで作成しても問題は 起きないと考えられ,特許作成支援は大学が執筆 する際のみ行えば良いと考える. 以上,今回用いた成果の出ている事例を評価し た結果,特許作成支援以外は実施していることか ら,考案したリファレンスモデルには不備が少な いと考える. ただ,リファレンスモデルの実施項目以外で重 要であることは,信頼関係の構築や適切な情報開 示やコミュニケーションの充実もある[15].共同 研究における研究者のコミュニケーションの重 要性については,関根(2014)[1]も必要なことと指 摘している. 以上の指摘と特許作成支援を踏まえると,企業 視点での産学連携評価方法(リファレンスモデル) は,表5 となる. 表 5 新しい産学連携推進のための評価方法 (リファレンスモデル) 5. 結論 本研究は,既存研究が少ないが企業視点での産 学連携評価は重要であるという観点で,産学連携 評価方法の検討を行った. その評価方法として,CMMI や ISO9001 などの リファレンスモデルを参考とし,既存研究から実 施項目を抽出し,産学連携推進のための評価方法 (リファレンスモデル)を作成した. 作成したリファレンスモデルの検討のために, 筆者が担当した事例を用いた.検討結果は,作成 したリファレンスモデルには特段の不備はない というものであったが,信頼関係の構築や適切な 情報開示やコミュニケーションの充実も重要で あったため,それらを考慮した新しい評価方法を 作成した. 今回作成した評価方法は,1 事例でしか検討を プロセス 実施項目 研究着手前  技術発掘のための連携先探索  発掘技術の事業化,知的所有権の検 討  相手先との交渉(目的,契約など)  スケジュール設定(役割分担など) 研究着手中  進捗確認の実施  特許作成支援 研究終了  研究の効果確認 プロセ ス 実施項目 実施状況 研究 着手前  技術発掘のための連携先探索  発掘技術の事業化,知的所有権 の検討  相手先との交渉(目的,契約 など)  スケジュール設定(役割分担 など) ○ ○ ○ ○ 研究 着手中  進捗確認の実施  特許作成支援 ○ × 研究 終了  研究の効果確認 ○ プロセス 実施項目 研究着手前  技術発掘のための連携先探索  発掘技術の事業化,知的所有権の検 討  相手先との交渉(目的,契約など)  信頼関係の構築  スケジュール設定(役割分担など) 研究着手中  進捗確認の実施  適切な情報開示  コミュニケーションの充実  特許作成支援(大学が執筆する場合) 研究終了  研究の効果確認 2. 既存研究サーベイ 前章で触れたが,産学連携による研究プロジェ クト評価は行われている.しかし,企業視点での 評価方法における文献や研究は少ない. そうした中でも,桑江(2007)[8],實淵(2007)[9], 阿部(2007)[10]がある. 桑江(2007)[8]は,東芝における半導体分野の産 学連携に触れ,事例紹介とその経験を踏また産学 連携の成功要因を導出している。成功要因は,3 点あり,(i)共同研究の目的を明確にしたこと,(ii) 産学それぞれの役割分担を明確にしたこと,(iii) 産のニーズを開示し学のアイデアを導き出した こと。換言すれば,産のニーズと学のアイデアの 結合,と論じ,産学連携学会の論文内容を用いて, その一般的な妥当性を検証している. 實淵(2007)[9]は,企業からの視点に立ち,産学 連携の取り組み先(大学)選定や共同研究の契約に ついて問題となる項目3 点を論じている.その問 題になる点として,(i)役割と費用負担,(ii)成果の 帰属,(iii)成果の実施条件を挙げている. 阿部(2007)[10]は,積水化学での産学連携につい て,その推進方法を論じている.その方法は,ま ず大学訪問や学会参加などにより情報収集を行 い,その情報を基に技術を発掘し,その発掘技術 が事業に貢献するか,知的所有権を確保できるか などの視点で検討し,共同研究,研究委託先を決 定するものである.共同研究先が決定し,研究が 始まると3 か月に1回程度進捗確認をしていくこ と,大学の研究の視点が長期的なことであるため、 そうしたことを考慮したスケジュールを設定す ること,特許を作成する際にその支援が必要であ ることなどを併せて論じている. 以上の既存研究の要点を,表2 に整理する. 表 2 既存研究における産学連携の要点 整理を行った既存研究は,経験を踏まえまとめ られており,企業が産学連携を進めるにあたり, 参考になる.一方で,それらは体系的に整理はな されていない. そこで,本研究では、企業視点での体系的な産 学連携評価方法の検討を行う. 3. 評価方法の考案 システム開発や品質管理,失敗学など分野では, 計画や業務の進め方,改善の参考となるリファレ ンスモデルを踏まえ,評価が実施されている. 例えば,システム開発の分野では,カーネギー メ ロ ン 大 学 に よ る CMMI(Capability Maturity Model Integration)[11]がリファレンスモデルとし て利用されている。このリファレンスモデルが特 徴的であることは,成熟度というコンセプトであ り,組織の成熟度レベルによって実施すべきこと が異なっている. 一方,品質管理の分野では ISO9001[12]がリフ ァ レ ン ス モデ ル と し て多 く 利 用 され て い る . PDCA(Plan-Do-Check-Action)を行うこと,しなけ ればならないことなどが規定されている. また,上記2 つのリファレンスモデルを踏まえ, メーカーの設計部門におけるリファレンスモデ ルを作成・運用した研究[13]がある.その研究で は,品質経営評価技法と呼ばれるリファレンスモ デルを作成・運用している.その具体的な内容は, 設計プロジェクトにおける必要なプロセスと実 施項目(仕組み)を ISO9001 や事業部設計基準など から抽出するものであり,評価の際は,プロジェ クトにおける実施項目を行っているか,否かだけ ではなく,実行のレベルも併せて評価している. そのコンセプトを図2 に示す. 図 2 品質経営評価技法のコンセプト 出所:永松他(2011) 以上のリファレンスモデルのコンセプトに従 い,産学連携におけるプロセスや進め方について もリファレンスモデルを作成・運用することが, 論文名 成功要因 桑江(2007)  共同研究の目的を明確にしたこと  産学それぞれの役割分担を明確にし たこと  産のニーズを開示し学のアイデアを 導き出したこと。換言すれば,産の ニーズと学のアイデアの結合 實淵(2007)  役割と費用負担  成果の帰属  成果の実施条件 阿部(2007)  情報収集を基にした技術発掘  発掘技術の事業貢献や知的所有権の 確保可能性などの検討  3か月に1回程度進捗確認  大学の研究の視点が長期的なことを 考慮したスケジューリング  特許作成の際の支援 仕組み プロジェクト プロセス 改善 事業部 実行 品質経営 評価技法 評価 改善提案(ベストプラクティス提示) 計画 仕様 設計 検査 製品

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自動車産業における産学共同研究の実証的考察

○齋藤裕美(千葉大学/NISTEP)・隅蔵康一(政策研究大学院大学/NISTEP)

1.はじめに

科学的な発見は画期的な技術の源泉であり、その科学の源泉は基礎研究にあると考えられる。Mansfield (1991)は, 米国企業へのアンケート調査(おもに R&D マネージャー対象)の結果に基づき, 基礎研 究の成果がなければ新しい製品や製造方法の 10%はその登場が著しく遅れただろうと指摘する.しかし ながら、基礎研究がどのように産業に影響を与えているのか、実態を可視化することは容易ではない。 しかしながら、先行研究では、科学と技術をつなぐさまざまなデータからこの課題に取り組んできた。 特にサイエンス型産業といわれる製薬産業を対象とした研究が多くある。たとえば、Narin et al.(1997) は, 特許が引用する文献に着目して, 特許と科学のリンケージの強さを定量的に示した. Cockburn and Henderson(1997)は, 論文の共著関係に着目し, 大学の科学者との共著論文を多く発表している企業 ほど, 研究費あたりの重要特許数が高いと指摘している。 Zucker and Darby(2001)も共著関係に着 目し, 日本のバイオテクノロジー分野の企業と大学のスター科学者の共著論文のデータから, スター科

学者との共同研究が企業の特許生産性や製品の開発, 製品の市場化を向上させたことを示している。

Saito and Sumikura(2010)では企業と大学・公的研究機関との特許の共同出願に着目し, 企業が大学・ 公的研究機関からのどれだけ科学的知見を吸収したかを定量的に分析した. その結果, 大学・公的研究 機関からの科学的知見の吸収は, 新薬の承認数といった市場に近い部分のパフォーマンスには影響しな いが, 特許出願や特許出願効率性という技術的パフォーマンスに寄与していることを示している。 産業における基礎研究の効果についてこれまで製薬産業に関する分析が多かったのは、製薬産業が特 にサイエンス型産業であったからであろう。しかしながら、大学・公的研究機関との何らかの連携の効 果をより客観的にみるには、比較対象としてサイエンス型産業以外の産業における分析も必要である。 われわれの知る限り、名古屋大学産学連携本部(2011)による産学官連携の調査報告書などはあるもの の、自動車産業に関する産学共同研究に関する論文は、製薬産業のそれに比べてきわめて少ないように 思える。 そこで本稿では自動車産業をとりあげて、産学共同研究の状況をフォローするとともに、産学共同研 究と企業パフォーマンス、特に特許出願数、との関係についてきわめて素朴な方法で概観する。本稿は 自動車産業における産学共同研究のインパクトを検討していくにあたっての第一報である。

3.データ

本稿が依拠する産学共同研究のデータは科学技術・学術政策研究所が保有する産学連携データベースで ある. これは 1983 年度から 2002 年度までの, 国立大学の法人化(2004 年 4 月)以前における, 全国の 国立大学と民間企業等との共同研究の実態についての情報を収載している. このデータは大学単位で収 集されているが, 産学共同研究を行った相手先の企業名が掲載されている. 我々はこの情報に注目し, 自動車産業だけを抽出した. ここでは JSIC(日本標準産業分類)の基準に従って1、自動車・同附属品製 造業をとりあげた。その中でも自動車製造業(二輪自動車を含む)と自動車部品その他に分類した。 そのうえで、大学等の共同研究相手先として記されている「企業」を単位としたデータに構築し直した. 無論, 同年に複数の産学共同研究を行っている可能性もある. そこで企業ごとに各年における大学・公 的研究機関との共同研究の件数を集計することで, 各企業が各年にどれだけ, どのような相手と共同研 究しているかのデータを作成した. データの構築方法の詳細は, 齋藤・隅蔵(2013a,b,c)を参照されたい. ここでは1983 年から 2002 年までの国立大学との産学共同研究の件数の累積を, 産学連携度として定義 1 JSIC は何年かごとに改訂されている。本データは平成 14 年(2002 年)3 月改訂(平成 20 年 3 月末 まで)の基準に従っている。 行っていないため,必ずしも正しい結果であるこ との保証できない.今後,評価方法の実施項目の 充実を行い,事例検証を増やしていくことで,評 価方法の安定性を図りたい. 参考文献 [1] 関根重幸:「公的研究機関とのオープンイノ ベーションのポイント」,研究開発リーダー Vol. 11,No.4,pp.8-10,(2014). [2] 山口佳和:「多様な産学連携活動の総合評価 手法の開発」2008 千葉工業大学附属総合研 究所 プロジェクト研究年報 pp. 148-152, (2008). [3] 伊藤伸:「TLO 業務と戦略的共同研究マネジ メント」研究開発リーダー Vol. 4,No.9, pp.20-22,(2007). [4] 若林節子,弓取修二:「新エネルギー・産業 技術総合開発機構における追跡調査・評価 の試み」産学連携 Vol.4, N0. 1, pp. 6-13, (2007). [5] 小林直人:「産業技術総合研究所におけるア ウトカムの視点からの戦略的研究評価と産 官学連携への課題」産学連携 Vol.4, N0. 1, pp. 14-24, (2007). [6] 吉田秀紀,篠原譲司,佐々正:「目的基礎研 究プロジェクトの評価に向けて」産学連携 Vol.4, N0. 1, pp. 1-5, (2007). [7] 東京医科歯科大学:「平成 25 年度経済産業 省産学連携評価モデル・拠点モデル実証事 業(モデル構築事業)報告会報告書」東京医科 歯科大学(2014). [8] 桑江良昇:「産学連携の推進と成功要因」研 究開発リーダー Vol. 4,No.9,pp.23-26, (2007). [9] 實淵武治:「産学連携の共同研究・委託研究 進め方とその戦略」研究開発リーダー Vol. 4,No.9,pp.27-30,(2007). [10] 阿部弘:「産学連携(委託研究,共同研究)の 推進と連携先の評価,選定」研究開発リー ダー Vol. 4,No.9,pp.31-34,(2007). [11] M. B. Chrissis, M. Konrad, S. Shrum 著 ,

JASPIC CMMI V1.2 翻訳研究会 訳:CMMI 標準教本 第 2 版,日経 BP 社(2009). [12] 中條武志:ISO9001 の知識〈第 3 版〉,日本 経済新聞出版社(2010). [13] 永松陽明,岡田公治,他 7 名:「業務プロセ スのベストプラクティス表現方法とライブ ラリの構築」プロジェクトマネジメント学会 誌,Vol. 13,No.1,pp. 22-27 (2011). [14] 永松陽明,中條武志,谷口芳夫,「業務プロ セスにおける不具合情報の有効活用の研究」 日本品質管理学会誌「品質」 Vol.43, No.1, pp.143-151 (2013). [15] 永松陽明:「プロセスの弱点顕在化と質の充 実による事故撲滅」日本品質管理学会第 141 回シンポジウム講演要旨集,pp. 65-77,(2012).

参照

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