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〈特集: 精神科診療における精神療法・カウンセリングの必要性について〉精神科診療における人間存在分析(精神分析的心理療法)

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Academic year: 2021

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(1)Bulletin of Center for Clinical Psychology Kinki University Vol. 6 : 21 〜 22 (2013). 21. 特集:精神科診療における精神療法・カウンセリングの必要性について. 精神科診療における人間存在分析(精神分析的心理療法) 奥 村 満佐子 (OKUMURA, Masako) 心療クリニック中野. 今回、執筆の依頼をお受けした時に、まず、人見先生が次のように書かれていたことを思 い出した。【神戸大学医学部精神神経科の医局会・同門会誌の第 8 号】で【心理療法への関 心が蘇るように】の中で、先生が<いずれにしても精神医学において心理療法への関心が蘇 ることを願っている>と書いておられること。【近畿大学臨床心理センター紀要 第 5 巻】 の【精神療法の本質】の中で、<精神医学の基礎をなしているのは精神療法であり>、<精 神療法がなければ、精神医学はより低い水準に低下する。精神療法とは、単に異常性を見つ けるのではなく、患者の状況と特質から出発しながら、患者の世界の発展とその生成の希望 に目を向けようとするものである>と Benedetti を引用し、人見先生の精神医学観を述べて おられる一文。私もそう思ううちの一人である。 私は神戸大学医学部を卒業し、精神科医師となって、今年でちょうど 40 年になる。 人にはそれぞれ、心理療法(精神療法)を習得しようとする動機があるだろう。私は、精神科 に入局した時に、漠然と「精神科の医師であれば、日々、患者の面接にあたるのだから、まず、 面接技術を身につけなくてはならないだろう。それができなくては、患者から十分な情報を得る ことができず、診断も治療も満足にはできないだろう」と考えた。特にいろいろの心理療法を勉 強した結果、 “精神分析治療”を専門とする中野良平先生に師事したというわけではない。たま たま、教室に心理療法の専門家として中野先生がおられたので、教室の勉強会に参加させてい ただくようになり、先生から薫陶を受けることになった。結果的にはこれがまことに幸いであった。 中野先生は私たちに精神分析的心理療法の基本は次のことであると教えてこられた。つ、 まり、予断や推論は廃して、患者が語るところを「受容的」 「支持的」 「感情移入的」に『何が、 どうして、 (ノイローゼ)になったのか?』詳しくきき」 、 「患者と二人で確認できたところを、 分析者が筋道を追って再構成して、できるだけ具体的にまとめて患者に話して、患者自身に しっかりと自己確認、自己洞察してもらう」 。治療者としては精神分析でいう“フロイト的態 度” 、つまり、 「禁欲原則」 「中立性」 「分析者の隠れ身」 「分析者(医師)としての分別」を守 ることが肝要であると。これは、たぶん、私が身につけている人間存在分析の基本というだ けではなく、心理療法(精神療法、カウンセリング)の基本なのではないかと私は思っている。.

(2) 22. 近畿大学臨床心理センター紀要 第 6 巻 2013年. 私は、大学院に在学中に中野先生の紹介で Zürich 大学医学部精神科 Willi 教授の元に 2 年 間留学。帰国後、これも中野先生の紹介で当時の精神分析学会の会長であった故山村道雄先 生の教育分析を 3 年受け、これと並行して、当時、神戸大学の精神科医局の勉強会の一つと して中野先生が主宰され、毎週水曜日に開催されていたスーパービジョン研究会(水曜研究 会)で、先生のスーパービジョンを受けるようになった。Zürich から帰国直後に、日本集 団療法学会が招待した心理劇の Moreno 夫人(J.L.Moreno の奥さん)のプロタゴニストを 経験したが、印象的なセッションであった。 私が経験した心理療法の研修はざっとこんなところである。心理療法を習得しはじめた若 い人たちが、何派の心理療法を習得するかで迷っている人を見かけることが少なくない。私 が経験した心理療法の研修は、中野先生は精神分析的心理療法(現在では「人間存在分析」 と名付けているが)、Zürich の Willi 先生は夫婦同席面接、Moreno 夫人は心理劇と、それぞ れ理論と技法は違うが、基本は私が中野先生から学んだ心理療法の基本的技法と全く同じで、 他の方法がいいのかという迷いを感じることもなく、心理療法や精神科の面接はこういうも のだと思ってやってきた。 現在は、H11 年に中野先生か神戸市営地下鉄・学園都市駅で開業された「心療クリニッ ク中野」を、H21 年から院長として引き継ぎ、精神科の診療を続けている。駅上の小さい 診療所で、これまでに私が経験してきた神戸市立中央市民病院や大学病院などという大病院 の精神科とは異なり、病気の治療というより、その人の人生により生に触れる“相談”に来 られる方も多い。このクリニックの診察・治療にも、中野先生から教えられた心理療法の基 本、患者が語るところを「受容的」「支持的」 「感情移入的」に、「患者から詳しくきき、治 療者に理解できたところを二人で確認する」という方法が、大いに役立っている。 じっくり落ち着いた心理療法が必要と思われる時には、クリニックの連携機関で心理療法専門 の関連機関である神戸精神分析研究所を紹介している。神戸精神分析研究所はクリニックとは 緑の公園に囲まれた落ち着いた場所にある別の建て物で、精神科医、臨床心理士、作業療法 士が、それぞれにカウンセリングや心理テストを担当している。症例検討会もそこで行っている。 関心のある方は下記の HP 見てください。 心療クリニック中野; http://www.shinryou.jp/ 神戸精神分析研究所 http://www.humanbeing.jp/.

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