特集論文Ⅱ
初任者研修の質的向上のための実践的研究
―ワークショップの開発・試行を中心に―
Qualitative Improvement in the Training Program of Novice Teacher抄録:本稿は、初任者研修の質的向上を図ることを目的として、和歌山大学教職大学院が展開してきたプロジェク トの下の 2 つのプログラムの成果をもとに開発を進めてきた、拠点校指導教員や校内指導教員といった初任者の指導 にあたる教員の指導力の向上を図るワークショップの試行とそこから見えてきた課題について報告するものである。 ワークショップは、2 つのプログラムで蓄積した初任者の訪問指導記録から、初任者の課題とその指導上の適時と考 えられる時期を見出し、年間 4 回程度の連続性をもったものとして予定している。 キーワード:初任者研修、指導者の指導力向上、ワークショップ、校内の学びの場
鈴木 達也
SUZUKI Tasuya (和歌山大学教職実践支援室)中家 英
NAKAYA Ei (和歌山大学教職実践支援室)南 知孝
MINAMI Tomotaka (和歌山大学教職実践支援室) 受理日 平成 30 年 1 月 27 日添田 久美子
SOEDA Kumiko (和歌山大学大学院教育学研究科 教職開発専攻)貴志 年秀
KISHI Toshihide (和歌山大学大学院教育学研究科 教職開発専攻)三反田 和人
SANTANDA Kazuhito (和歌山大学教職実践支援室) 1. はじめに 和歌山大学教職大学院では、開設した 2016 年度か ら初任者の資質・能力向上を図るための実践的研究を 行ってきた。この実践的研究では、既存の初任者研修 でも行われている「集合研修」の改善と拠点校指導教 員や校内指導教員といった初任者の指導にあたる教員 の指導力の向上を目的とし、2 つのプログラムを展開 してきた。 ひとつのプログラムは、初任者に対して週 1 回の訪 問指導と月 1 回程度の大学で授業を行い、専修免許状 取得につなげる「履修証明プログラム」として、2016 年度「教職大学院と連動した初任者研修プログラム」、 2017 年度「教職大学院と連動した初任者研修履修証 明プログラム」、2018 年度「継続的な学びにつながる 初任者研修履修証明プログラム」という名称で行っ てきた。 もうひとのプログラムは、初任者の訪問指導とカン ファレンスを通して、若手教員の学びの場をつくり、 校内研修を活性化することを目的として、2016 年度 「教職大学院と連携したメンター制による校内研修プ ログラム」、2017 年度「初任者等に対する校内での学 び支援力向上プログラム」、2018 年度「初任者等に対 する校内学び支援力向上プログラム」という名称で 行ってきた。 両プログラムの具体的な取組と研究については、「学 校教育実践研究第 1 号」(2016)等を参照していただ きたい。 本学教職大学院では、現在この実践的研究から得た データと知見を基に、「初任者指導にあたる教員の指 導力向上」を図るためのワークショップの開発を行っ ている。本稿は、ワークショップ開発の経緯と進捗状 況を報告するものである。 2. ワークショップの概要 2. 1. 背景 この実践的研究において両プログラムを統括する実 施体(以下、プロジェクト)に、次の3つの方策を組 み込んだ。 ①初任者指導に当たる大学教員に対する初任者指導 に焦点化した FD の設定②初任者の育成スタンダードとその共有 ③担当大学教員の相互学習の場となる会議の設定 プロジェクトにおいて、初任者への指導にあたるの は教職大学院教員とこのプログラムで雇用している客 員教員である。2 名の研究者教員以外は、教職経験を 持つ実務家である。 プロジェクトでは、①と③については、各プログラ ムにおける毎週の実施報告や月 1 回の合同会議、さら に、1 学期 1 回程度の初任者への指導の互見等を行っ た。②については 2016 年度に開発した「授業評価シー ト」を用いて指導を行い、毎年度末に改善案の検討を 行い更新してきた。 開発中の「ワークショップ」は、プロジェクトで組 み込んだこの 3 つの方策を初任者指導にあたる教員の 研修に活かすものである。 2017 年度から開発に取組んでおり、2017 年度には 「ワークショップ」の 1 回の試行を行い、モニター参 加者から意見を得た。2018 年度は 3 回の「ワークショッ プ」の試行を計画している。 2. 2. 構成 ワークショップの中心部分は、以下の構成とした。 ①初任者の授業動画を視聴 ②グループディスカッション ③グループ報告 ④授業者に実際に指導にあたっている本学教員によ る指導実践報告 拙稿(2016)で、「拠点校指導教員の初任者理解力 を高めるためには、初任者の実態についての情報をも とに自らの認知枠組みを再構成し、初任者目線や心情 を理解する枠組みを構成することが必要である。自ら の個別の経験から、初任者の言語や行動を読み解き、 意味づけを行い、さらに初任者全体を視野に相対化・ 抽象化して枠組みをつくる実践的な研修が有効であ る」ことに言及した。 プロジェクトの方策③は、これにあたる。合同会議 や報告において、ある指導者が、初任者の課題として いる事柄が、他の指導者―初任者間においても課題と なっていることを確認することによって、自らの評価 に対して確信を持ち、さらには、他の指導者とその課 題や指導の在り方を具体的に開示することで、相対化 が進むのである。 ワークショップにおいてもグループディスカッショ ンを中心に据えた。ただし、その導入として「動画視 聴」を置いた。ワークショップでは、参加者が必ずし もプロジェクトのような継続的関係性や情報の共有化 を有しているとは限らないため、初任者によくある課 題の「動画視聴」によって「語り」のきっかけづくり となる。また、この後のディスカッションの焦点を参 加者に明確に意識させることにつながると考えた。 また、本学教員は、プロジェクトの取組みを通じて 初任者指導について「抽象化」に至っており、動画の 事例に関して、そのなかで語ることが可能である。そ こで、「授業者に実際に指導にあたっている本学教員 による指導実践報告」を行うことによって、グループ ディスカッションによる「相対化」を「抽象化」への 足掛かりを得ることができると考えた。 2. 3. 研修の構成 最終的に「初任者指導にあたる教員の指導力向上」 を図るためのワークショップについては、2016 年度、 2017 年度の 2 つのプログラムで蓄積した初任者の訪 問指導記録から、初任者の課題とその指導上の適時と 考えられる時期を見出し、以下の年間 4 回程度の連続 性をもったものとして予定している。 第 1 回 初任者の現状と課題(4 月当初) 第 2 回 授業評価シートとカンファレンスの持ち方 (7 月中旬) 第 3 回 「ねらい」を貫いた授業実践(8 月下旬) 第 4 回 「省察」と自己評価(2 月) (オプション) 授業規範・問題行動(12 月下旬) 3. 第 1 回ワークショップの試行 3. 1. 概要 タイトル:「初任者指導に関わる先生方のためのワー クショップ」 テーマ: 初任者の現状と課題 日 時: 2017 年 12 月 7 日 15:30 〜 17:00 場 所: 和歌山大学 教職大学院棟 内 容: ①初任者及び若手教員への関わり方につ いて ②初任者及び拠点校指導教員に実施した アンケート結果の概要 ③カンファレンスの進め方 参加者: 教育委員会研修センター等職員、市町 教育委員会職員、拠点校指導教員、小学 校・中学校の教員(教職大学院学校改善 マネジメントコース 1 年生 8 名含む)な ど約 30 名。 3. 2. 「カンファレンスの進め方」の実際 第 1 回の試行したワークショップについては、成果 報告書に詳細をまとめている。ここでは、他の回のワー クショップとも共通する「カンファレンスの進め方」 を取り上げる。「カンファレンスの進め方」は以下の 内容で行った。 ①初任者による振り返り ②授業評価シートの使い方 ③初任者指導の具体例
④示範授業 ⑤模擬カンファレンス 3. 2. 1. 初任者による振り返り 本プロジェクトの両プログラムでのカンファレンス では、最初に初任者自身に「振り返り」をさせる。そ の目的は、授業実践力の向上を継続的に図るための授 業分析の視点をもって客観的に振り返り、的確な自己 評価を身に付けることにある。しかし、現実には自ら の力だけでは「振り返り」ができない初心者も少なく ない。このような初任者に対しては、いかなる助言や 指導を行っても理解につながらない。 そこで、本ワークショップでは、2 つの対照的なこ の「振り返り」の様子を画像で提示する。一方は 2、 3 分で「振り返り」が終わってしまう初任者、もう一 方は、授業の流れを浚い、うまくいった点やうまくい かなかった点、気になった点などを 10 分程度で振り 返る初任者である。 ここでは、両プログラムでは「振り返り」において、 「授業を見る視点」と」子どもを観察する視点」を 1 年間をかけて、「授業全体の流れを振り返ることがで きる」、「授業者の発問や説明に対しての学級全体の反 応や雰囲気を振り返ることができる」、「授業のそれぞ れの場面での個々の子どもの反応を振り返ることがで きる」といった段階的に育成していることの説明を行 う。 3. 2. 2. 授業評価シートの使い方 2 で言及したように、プロジェクトの方策のひとつ として「②初任者の育成スタンダードとその共有」を 掲げ、「授業評価シート」を開発した。ワークショッ プでは、まずこのシートは「評価結果」を示すツール ではなく、「評価活動」に用いるツールとして開発し たものであることを以下のように説明を行う。 指導者は(評価者)は、あらかじめこのシートを用 いて、授業者と「めざす授業」のイメージの共有化を 図る。あるいは、授業者の具体的なイメージづくりを 促す。授業後、事前のイメージ通りの授業が行えたの かを指導者の評価と授業者の自己評価を比較検討し、 捉え方が異なる点についてはとくに注視して意見交換 を行う。シートを挟んでこうした過程を繰り返すこと で、初任者は「めざす授業」を言語化することができ るようになる。 3. 2. 3. 初任者指導の具体的例 ここでは、初任者によくある課題として、「子ども の方に向けているが見ていない視線」、「注目が集まら ない授業開始」、「子どもからの質問を待つだけの机間 指導」を取り上げた。当初の初任者の様子と課題克服 後の様子を動画で確認しながら、具体的にどのような 指導・支援により初任者が課題を克服していったのか を簡単に説明した。 3. 2. 4. 示範授業 示範授業は、従前の初任者研修においても行われこ とがあるが、本プロジェクトでは、必要性から 2 つの 種類の示範授業を計画・実施を行っている。さらにプ ロジェクトの示範授業の特徴として、示範授業の参観・ 参加の後にカンファレンスを位置づけている。ワーク ショップでは、このグループ討議や授業者による解 説、参観授業のカンファレンスの重要性について説明 を行った。 1) 大学教員による示範授業 「継続的な学びにつながる初任者研修履修証明プロ グラム」では、初任者は教職大学院において科目等履 修として数科目を受講する。そのなかの「授業・教材 研究」の授業では、実務家大学教員が示範授業を行い う。一般の初任者研修では、校内のベテラン教師や指 導教諭などによる授業がこれに当たるであろう。だが、 当該授業では、示範授業の後、グループ討議、授業者 の解説を行うことに特長がある。初任者にとっては、 示範授業に参加(子ども役)しただけでは、圧倒され、 学ぶ足がかりを見出せないことが多い。授業者がどの ようにこの授業を創り出したのか、工夫や力を入れた 点を取上げて、解説を行うことで、初任者が扱うこと ができるサイズに切り分けるのである。 2) 教職年数 3 〜 5 年程度の教師による師範授業 本プロジェクトでは、3 年間継続して行っている学 校では、1 年目の初任者、2 年目、3 年目が校内にいる。 この環境を利用して、初任者には、2 年目、3 年目 の教師の授業を示範授業として参観することを取り入 れている。 課題の共通性が大きく、技量が近接しているため、 取組み方が理解しやすく、真似ることが容易である。 この場合においても、可能な限り授業者に「解説」を 依頼する。授業者の「語り」は、初任者にとって共感 でき、自らの成長を確信できる証となると考える。さ らに、指導者と初任者が参観授業についてのカンファ レンスを行う。 3. 2. 5. カンファレンス力向上のためのワーク 初任者の授業の様子の動画を視聴し、その後グルー プに分かれ、初任者の問題点とその指導方法について 検討を行う。 1) 授業 学年: 小学校 4 年生 教科: 算数 2) 動画概要 3 時間目の授業時間が始まっている。席に着いてい る児童もいるが、自分の机の周りで立ったままの児童
や授業時間が始まっていることに気づかず友達と大き な声でしゃべっている子も複数名いる。 「始まりのあいさつ」が終わるがほとんどの児童は算 数の学習準備ができていない。初任者は一斉行動を促 すような声かけをしないまま、周りの児童に個別に声 かけをしている。 3 分後、初任者がようやく全体に「授業の準備をそ ろえて、ちゃんと座る」ように指示する。しかし全体 に向けて確認しないまま、準備のできていない児童の そばに行き、個々の児童に言葉かけを行う行為を繰り 返す。 授業開始から 7 分以上たって、やっと初任者が授業 を始めるが、休憩時間から授業開始への切り替えがで きない児童が多く、約 1/3 の子どもたちはその後も授 業に集中できない。 3) グループ討議の様子 各グループでは「なぜ授業が始まらないのか」ある いは「なぜ授業が始められないのか」について、その 原因を分析し、それへの指導や援助の方法について 15 分間の討議を行い、ホワイトボードにまとめ、報 告を行った。 その後、この初任者の指導に実際にあたっている本 学教員が、数か月後の同じ初任者の授業の動画を示 し、この間どのような指導を行ってきたのか、またそ の指導がどのように成果に結びついてきたのかを報告 した。 参加者が、教育委員会(指導主事等)、本学のプロ グラム実施校の校長、拠点校指導教員、また、本学教 職大学院現職院生といった初任者等への指導経験が豊 富な者であったことから、討議では、的確な原因分析 や整理された指導方法の経験談が話された。 各グループの討議の中で、「うちの初任者(若い先生) にもこういう場面があるね。」というつぶやきがあっ たり、初任者への具体的な指導・支援方法を考える場 面では、「そうそう」や「なるほどね」といった共感 を表す発言が頻繁に聞かれたりした。 3. 2. 6. アンケート結果 アンケートは、5 つの設問と自由記載から構成して いる。 1)カンファレンスに関わる 2 問についての結果 2)自由記載 ワークショップ参加者の感想のなかで、ワーク ショップとして意図していた目標に沿うものについて は下線を、改善意見の提案には、波線を施した。 ・初任者への指導は、同じ教科の近い年齢の者が行う のが最も良いのではないかと思います。本校の実情 からもよく見えたことでした。 ・今後もこのような研修を続けてほしい。初任者が 増えてくる中、初任者指導を担当する者の研修も大 切だと思う。 ・自分を振り返るよい機会でした。また初任者の先生 方が頑張っている姿は普段からも目にしているので すが、さらに気づかせてもらいました。 ・本日のワークショップでのお話をお伺いし「もっと こうすれば!ああすれば!」と私の指導の足りなさ があったことを確認し、「来年こそは!」いや残り 少ない時間ではありますが精一杯指導していこうと 改めて思っています。 ・初任者や若手の人数が増える中、(大学の)指導教 員の先生や支援室の先生方の存在はとても頼もし い。教員は研修にじっくり取り組む期間が企業より 短いので大変である。成長する実感、時には指摘し て繰り返し指導してくださる先生がいることで(初 任者の)自信につながっていくと思います。こち ら(大学)の先生方で多くの初任者や若手教員を観 ることは不可能。そう考えると、このようなワーク ショップが広がっていくことはとても有意義だと思 います。ありがとうございました。 ・とても良い機会だと思います。もう少しラフな感じ で話し合い(情報交換)ができればもっと良いので Q1- ③ 授業カンファレンスの実際(3.2.3 の内容) Q1- ④ 模擬カンファレンス(3.2.5 の内容) とても とても 役に立った 役に立った
はないかと感じました。 ・ワークショップに参加して、指導するポイントが同 じであったので安心しました。具体的な事例があれ ばわかりやすいと思います。どんなポイントで指導 したか?その結果、子どもたちがどのように変わっ たかがわかるような例がほしいですね。 3. 2. 7. 課題 経験が豊富で指導力の高い参加者であったため、 ワークショップ計画側の意図を説明以上に理解し、方 向性をもって討議を進めることになった。 本ワークショップは、完成後は、初任者指導の経験 の少ない拠点校指導教員や校内指導教員を対象とする ことから、初任者指導の経験の少ない者を対象とした 試行を行う必要がある。 4. 第 2 回ワークショップの試行 4. 1. 概要 テーマ: 授業評価シートを利用した協議の在り方 (校内研修) 日時: 2018 年 9 月 14 日 15:00 〜 16:50 場所: 岩出市 公立小学校学 内容: ①授業評価シートとその観点の説明 ②授業録画の視聴 ③グループ協議 ④授業者の授業への思いの発表 ⑤各グループ協議内容の発表 ⑥国語の授業の在り方 ⑦本日の研修の意義とまとめ 参加者: 教職員 18 名 プロジェクトスタッフ(大学教員) 9 名 4. 2. 研修の実際 第 2 回の試行したワークショップは、校内授業研究 に本格的に取組始めて 2 年目の小学校において、研究 授業後の協議会の質の向上を図る校内研修として実施 したものである。 4. 2. 1. 授業評価シートの利用 「授業評価シート」の利用目的のひとつに、「授業者 と「めざす授業」のイメージの共有化」「具体的なイメー ジづくり」を図ることにあることは上述したが、これ は、校内授業研究においても「めざす授業」の共有化、 「めざす授業」に向けての授業を観る視点の明確化を 図ることにつながる。 「授業評価シート」は、上述した目的のため事前準 備から振り返りまで授業全体を、学部卒業レベルから の成長を 4 段階に分けているため、理解し、利用でき るようになるには時間を要する。そのため事前に「授 業評価シート」を参加者に配布した。 さらに、本校内研修では、時間が限られるため、評 価シートから「教材研究・授業展開」の部分を取り出 し、授業者があてはまる step3 段階の指標を抜粋した 評価表(図表 1)を作成して、事前に元版とともに配 布した。カンファレンスでは、簡略版について説明を 行い、利用した。 4. 2. 2. 授業録画の視聴 授業参観をすることができない教職員もいるため、 授業の様子を録画動画を視聴し、その後グループに分 かれ協議を行った。 1) 授業 学年: 小学校 1 年生 日時: 9 月 教科: 国語 単元名: うみのかくれんぼクイズをして、いきもの のひみつをしろう 教材名: 「うみのかくれんぼ」(光村図書) 単元の主たる指導目標: 事柄の順序や文章構成上 の順序を考えながら読むことができる。 単元計画: 8 時間 事前 海の生き物について興味を持ち、生き物 の本や科学読み物を読む。 1 時間 見つける 「かくれんぼクイズ」を通して海の生き物を知る ために学習計画を立てよう 6 時間 つかむ・まとめる 海の生き物の隠れ方について説明した本や文章を読 んで、クイズを作ろう 2 時間 伝え合う クイズを出し合い、色々な生き物のことを知ろう 本時: 3 時間目 本時の目標: 写真と文を照応させながら、説明の 順序に気を付けて内容を捉えて読むことができる めあて: なにがどこにかくれているかをみつけ、 カードにまとめよう 授業者: 入職 3 年目(本プロジェクト参加初任者) 2) 動画概要 「本時のめあてを確かめる」活動については、前回 の振り返りから「めあて」にスムーズにつなげること ができた。 「共通学習教材の内容を読む」活動は、「何が」と「ど こに」に着目して、「たこ」で取り出し方を学び、「も くずしょい」で「たこ」で学んだ取り出し方を活かし て読み取る計画であった。授業者が、児童の発言を板 書にまとめたものを児童が各自「思考ツールカード」 (前時説明)に書き入れる活動を行った。「たこ」での 学習にかかった時間と同じだけの時間が「もずくしょ い」にもかかり、また、「思考ツールカード」に何を
78 書き込めばよいのかわからない児童もおり、予定より も時間がかかる。 「自分の生き物の内容を読む」活動は。事前に各児 童が選択した生き物(3 種類から選択・カラーコピー と説明文が配布)の説明文から、「何が」と「どこに」 の情報を読み取り、「思考ツールカード」に書き込む 計画であった。児童各自が活動を始めるが、時間が足 りなくなり、途中で終了する。 4. 2. 3. グループ協議 1)グループ構成 5 〜 6 名の教員で構成。3 グループの構成は、実施 校が行ったが、各グループに研究主任や教務主任が割 り振られ若手、中堅のバランスが取れた構成であった。 また、焦点化した協議を行うために、各グループに プロジェクトスタッフ(大学教員)を 1 名ファシリテー ターとして配置した。 2)協議の様子 ワークショップにおける各3グループの協議の概要 は以下のとおりである。 授業者が属したグループAでは、やはり授業の構成 や教材準備等、授業に関する内容が多く、また、参観 者が発問し、授業者が応えるといった質疑応答で協議 が行われた。参加者やからは、教師が行う説明そのも のが児童に届いていない点の指摘があった。授業者の 思いとして、教師の発問や支持が理解できない児童へ の対応をどのようにすれば良いかという課題提起もな された。 ファシリテーターからは、協議の柱として、児童の 活動として一人活動やペアの活動の意義、授業展開の あり方に関して児童の実態や主体的な学びを支援する にはどのように方法があるかについて意見が出され た。様々な工夫がされた一方で、掲示物が情報過多に なった板書について児童の理解を促すためには情報の 整理が必要との意見が出された。 研究主任が属したグループBでは、研究主任が同学 年を担当しており、先行して同様の構想で授業を行っ た際の授業の展開や児童の反応を参考に授業構想の再 構築を図ったことが報告された。 一人一人にラミネート教材を準備し、学意欲の向上 に寄与する点や「教科書を教えるのではなく教科書で 教える」授業展開への感想が協議の中心となった。ま た、国語が専門分野であるファシリテーターが、今回 の単元構想から授業のねらいと展開について児童の発 言から振り返ることで、活発な意見交換を促していた。 教務主任や意欲があふれる若手教員が多く属したグ ループCでは、児童の発言や行動の振り返りをもとに、 指導計画の立案や配慮の必要な児童への対応に絞って 協議を効率よく進められた。 指導計画の立案については、一般的な「何が」「ど のように」と結びつけて学びを深める展開に対して、 「どこに」で整理する展開のメリットとディメリット について協議を深めた。また、授業者の発問が、「ね らい」に迫るものになっているのかについて協議が深 まった。 4. 2. 4. アンケート結果 1) 設問の回答結果 Q1 評価シートの観点は授業分析に役立ちましたか Q2 グループ討議での他の先生の意見・考えは参考になりましたか Q3 グループ討議で新しい気づきはありましたか とても 和歌山大学教職大学院紀要「学校教育実践研究」2018 指導計画の立案については、一般的な「何が」「ど のように」と結びつけて学びを深める展開に対して、 「どこに」で整理する展開のメリットとディメリッ トについて協議を深めた。また、授業者の発問が、 「ねらい」に迫るものになっているのかについて協 議が深まった。 アンケート結果 設問の回答結果 Q1 評価シートの観点は授業分析に役立ちました か Q2 グループ討議での他の先生の意見・考えは参 考になりましたか Q3 グループ討議で新しい気づきはありましたか Q4 グループ討議で十分な意見交換が出来ました か 自由記載 ワークショップ参加者の感想のなかで、意図して いた目標に沿うものについては下線を、改善意見の 提案には、波線を施した。 ・評価シートが少し書きにくかったです。 ・本校の研究課題に沿った授業を観る視点を与えて いただけた方が、今後の本校の研究につながる協議 会ができなのではないかと思いました。 ・公開授業と言うことで、お互いあまり深く指導案 をよんでいなかったり、単元の流れがわかっていな かったりしたので、協議というよりかは質疑応答と いう形であったかと思う。 課題 各グループともに「評価シート」の観点に沿った 協議を進めるのに困難があった。アンケートにおい ても「とても役に立った」はわずか6%であった。 その理由として、「お互いあまり深く指導案をよん でいなかったり、単元の流れがわかっていなかった 6 71 23 とても役に立った 役に立った あまり役に立たなかった 役に立たなかった 71 29 とても役に立った 役に立った あまり役に立たなかった 役に立たなかった 59 41 たくさんあった ある程度あった あまりなかった なかった 12 82 6 よくできた ある程度できた あまりできなかった まったくできなかった ある程度 指導計画の立案については、一般的な「何が」「ど のように」と結びつけて学びを深める展開に対して、 「どこに」で整理する展開のメリットとディメリッ トについて協議を深めた。また、授業者の発問が、 「ねらい」に迫るものになっているのかについて協 議が深まった。 アンケート結果 設問の回答結果 Q1 評価シートの観点は授業分析に役立ちました か Q2 グループ討議での他の先生の意見・考えは参 考になりましたか Q3 グループ討議で新しい気づきはありましたか Q4 グループ討議で十分な意見交換が出来ました か 自由記載 ワークショップ参加者の感想のなかで、意図して いた目標に沿うものについては下線を、改善意見の 提案には、波線を施した。 ・評価シートが少し書きにくかったです。 ・本校の研究課題に沿った授業を観る視点を与えて いただけた方が、今後の本校の研究につながる協議 会ができなのではないかと思いました。 ・公開授業と言うことで、お互いあまり深く指導案 をよんでいなかったり、単元の流れがわかっていな かったりしたので、協議というよりかは質疑応答と いう形であったかと思う。 課題 各グループともに「評価シート」の観点に沿った 協議を進めるのに困難があった。アンケートにおい ても「とても役に立った」はわずか6%であった。 その理由として、「お互いあまり深く指導案をよん でいなかったり、単元の流れがわかっていなかった 6 71 23 とても役に立った 役に立った あまり役に立たなかった 役に立たなかった 71 29 とても役に立った 役に立った あまり役に立たなかった 役に立たなかった 59 41 たくさんあった ある程度あった あまりなかった なかった 12 82 6 よくできた ある程度できた あまりできなかった まったくできなかった あまり 和歌山大学教職大学院紀要「学校教育実践研究」2018 指導計画の立案については、一般的な「何が」「ど のように」と結びつけて学びを深める展開に対して、 「どこに」で整理する展開のメリットとディメリッ トについて協議を深めた。また、授業者の発問が、 「ねらい」に迫るものになっているのかについて協 議が深まった。 アンケート結果 設問の回答結果 Q1 評価シートの観点は授業分析に役立ちました か Q2 グループ討議での他の先生の意見・考えは参 考になりましたか Q3 グループ討議で新しい気づきはありましたか Q4 グループ討議で十分な意見交換が出来ました か 自由記載 ワークショップ参加者の感想のなかで、意図して いた目標に沿うものについては下線を、改善意見の 提案には、波線を施した。 ・評価シートが少し書きにくかったです。 ・本校の研究課題に沿った授業を観る視点を与えて いただけた方が、今後の本校の研究につながる協議 会ができなのではないかと思いました。 ・公開授業と言うことで、お互いあまり深く指導案 をよんでいなかったり、単元の流れがわかっていな かったりしたので、協議というよりかは質疑応答と いう形であったかと思う。 課題 各グループともに「評価シート」の観点に沿った 協議を進めるのに困難があった。アンケートにおい ても「とても役に立った」はわずか6%であった。 その理由として、「お互いあまり深く指導案をよん でいなかったり、単元の流れがわかっていなかった 6 71 23 とても役に立った 役に立った あまり役に立たなかった 役に立たなかった 71 29 とても役に立った 役に立った あまり役に立たなかった 役に立たなかった 59 41 たくさんあった ある程度あった あまりなかった なかった 12 82 6 よくできた ある程度できた あまりできなかった まったくできなかった 役に立った とても とても たくさん 役に立った
和歌山大学教職大学院紀要 学校教育実践研究 No.3 2018 Q4 グループ討議で十分な意見交換が出来ましたか 2) 自由記載 ワークショップ参加者の感想のなかで、意図してい た目標に沿うものについては下線を、改善意見の提案 には、波線を施した。 ・評価シートが少し書きにくかったです。 ・本校の研究課題に沿った授業を観る視点を与えて いただけた方が、今後の本校の研究につながる協議 会ができなのではないかと思いました。 ・公開授業と言うことで、お互いあまり深く指導案 をよんでいなかったり、単元の流れがわかっていな かったりしたので、協議というよりかは質疑応答と いう形であったかと思う。 4. 2. 5. 課題 各グループともに「評価シート」の観点に沿った協 議を進めるのに困難があった。アンケートにおいても 「とても役に立った」はわずか 6%であった。 その理由として、「お互いあまり深く指導案をよん でいなかったり、単元の流れがわかっていなかった り」(自由記載)といった状況では、簡略化した「授 業評価シート」であってもみるべき観点が広すぎこと が考えられる。 簡略化した「授業評価シート」であっても、事前に 指導案から読み取る「教材研究」や「教科書」、また 指導案から読み取ったことと実際の授業の流れを比 較して見取る「本時の指導計画」、「めあて」、「導入」 といった事前からの取組みを必要とする項目が含ま れていた。 事前に授業者や研究主任とは意見交換を行い、ファ シリテーターとは共通理解を諮ってはいたが、授業研 究に取り組んで日の浅い学校において、さらに短い時 間しか協議に取れない場合にあっては、事前に「ねら い」の共通理解と「本時の指導計画」の評価観点から の動画の視聴を促し、協議では、注目すべき児童の発 言や行動について議論を行うべきであった。また、「研 究課題に沿った授業を観る視点」(自由記載)に引き 付ける過程を置かなかったことにも課題が残る。 ただ、簡略版「授業評価シート」そのものは、授業 を観る観点を再確認できるものであり、71%の「役に 立った」との回答は、この点についての評価であると 考える。 今回の校内研修での協議では、ファシリテーターと して本学教員を各グループに配置した。参加者から出 される「いろいろ工夫されたていた」や「よく考え られていた」といった漠然とした「感想」に対して、 ファシリテーターが、「問い返し」することで、「ねら い」を意識化するという場面がどのグループでもみら れた。 また、「指導案」と「実際の展開」のズレが生じて いる場面について、ファシリテーターの児童の発言や 行動を取り上げた問いかけによって、混乱や停滞の原 因が「ねらい」の追究のあまさにあることに気づいた 発言が若手を中心にみられた。 こうしたファシリテーターの活躍が、Q2 や Q3 に みられる参加者が「他者の意見への関心」を高めるこ とにつながったものと考える。しかしながら、Q4 の 回答にみられるように、「十分な意見交換」という点 から見ると、20 分は非常に短い設定であった。 「初任者等に対する校内学び支援力向上プログラム」 では、初任者の指導にあたる者の初任者への指導を契 機に「校内研修を活性化」を図ることを目的としてい る。当該小学校においてのこうした課題は、初任者指 導にあたる者へのワークショップでも取り上げていく べきである。 5. 課題 初任者の指導にあたる拠点校指導教員や校内指導教 員の指導力の向上を図ることが、初任者の資質・能力 の向上に役立つことは、自明の理である。しかし「ど のような」研修を「いつ」行うのかについて、実践的 に研究されてこなかった。プロジェクトにおける実践 を基にした本ワークショップ開発は、その課題に一定 の応えを得ることができた。 一方添田(2016)で言及したように、本プロジェク トの課題の一つとして、大学教員が初任者指導のため に学校に入ることによって「校内研修が活性化する」 ことをあげていた。その取組みについては、宮橋(2018) に詳しい。 しかし、添田(2016)で推定した要因や波及のプロ セスについての追究が不十分であるため、本ワーク ショップ開発においても、力量の育成や手法の取得に 関するワークショップを開発するまでには至っていな い。今後、本プロジェクトに関わった大学教員に対し て、これらの観点から聞き取りを行う必要がある。
和歌山大学教職大学院紀要「学校教育実践研究」
2018
指導計画の立案については、一般的な「何が」
「ど
のように」
と結びつけて学びを深める展開に対して、
「どこに」で整理する展開のメリットとディメリッ
トについて協議を深めた。また、授業者の発問が、
「ねらい」に迫るものになっているのかについて協
議が深まった。
アンケート結果
設問の回答結果
Q1 評価シートの観点は授業分析に役立ちました
か
Q2 グループ討議での他の先生の意見・考えは参
考になりましたか
Q3 グループ討議で新しい気づきはありましたか
Q4 グループ討議で十分な意見交換が出来ました
か
自由記載
ワークショップ参加者の感想のなかで、意図して
いた目標に沿うものについては下線を、改善意見の
提案には、波線を施した。
・評価シートが少し書きにくかったです。
・本校の研究課題に沿った授業を観る視点を与えて
いただけた方が、今後の本校の研究につながる協議
会ができなのではないかと思いました。
・公開授業と言うことで、お互いあまり深く指導案
をよんでいなかったり、単元の流れがわかっていな
かったりしたので、協議というよりかは質疑応答と
いう形であったかと思う。
課題
各グループともに「評価シート」の観点に沿った
協議を進めるのに困難があった。アンケートにおい
ても「とても役に立った」はわずか
6%であった。
その理由として、
「お互いあまり深く指導案をよん
でいなかったり、単元の流れがわかっていなかった
6 71 23 とても役に立った 役に立った あまり役に立たなかった 役に立たなかった 71 29 とても役に立った 役に立った あまり役に立たなかった 役に立たなかった 59 41 たくさんあった ある程度あった あまりなかった なかった 12 82 6 よくできた ある程度できた あまりできなかった まったくできなかった 指導計画の立案については、一般的な「何が」「ど のように」と結びつけて学びを深める展開に対して、 「どこに」で整理する展開のメリットとディメリッ トについて協議を深めた。また、授業者の発問が、 「ねらい」に迫るものになっているのかについて協 議が深まった。 アンケート結果 設問の回答結果 Q1 評価シートの観点は授業分析に役立ちました か Q2 グループ討議での他の先生の意見・考えは参 考になりましたか Q3 グループ討議で新しい気づきはありましたか Q4 グループ討議で十分な意見交換が出来ました か 自由記載 ワークショップ参加者の感想のなかで、意図して いた目標に沿うものについては下線を、改善意見の 提案には、波線を施した。 ・評価シートが少し書きにくかったです。 ・本校の研究課題に沿った授業を観る視点を与えて いただけた方が、今後の本校の研究につながる協議 会ができなのではないかと思いました。 ・公開授業と言うことで、お互いあまり深く指導案 をよんでいなかったり、単元の流れがわかっていな かったりしたので、協議というよりかは質疑応答と いう形であったかと思う。 課題 各グループともに「評価シート」の観点に沿った 協議を進めるのに困難があった。アンケートにおい ても「とても役に立った」はわずか6%であった。 その理由として、「お互いあまり深く指導案をよん でいなかったり、単元の流れがわかっていなかった 6 71 23 とても役に立った 役に立った あまり役に立たなかった 役に立たなかった 71 29 とても役に立った 役に立った あまり役に立たなかった 役に立たなかった 59 41 たくさんあった ある程度あった あまりなかった なかった 12 82 6 よくできた ある程度できた あまりできなかった まったくできなかった よくできた ある程度 あまり註 和歌山大学教職大学院紀要『学校教育実践研究』№12016 2016 年 3 月。 和歌山大学教職大学院『教職大学院と連動した初任者研修プロ グラム(履修証明プログラム)』【成果報告冊子】平成 29 年 3 月。 和歌山大学教職大学院『教職大学院と連携したメンター制によ る校内研修支援プログラム』【成果報告冊子】平成 29 年 3 月。 和歌山大学教職大学院『教職大学院と連携した初任者研修履修 証明プログラム』【成果報告冊子】2018 年 3 月。 和歌山大学教職大学院『初任者等に対する校内での学び支援力 向上プログラム』【成果報告冊子】2018 年 3 月。 宮橋小百合(2018)、「初任者研修を核とした PLC の形成が学 卒院生の実践力育成に与える影響」和歌山大学教職大学院紀 要『学校教育実践研究』、№ 3 添田久美子(2016)、「初任者研修プログラム構想とその背景」、 和歌山大学教職大学院紀要『学校教育実践研究』、№1、p.1-10 - 1 -