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外国研究、比較研究、政治学 (特集 外国を研究すること)

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外国研究、比較研究、政治学 (特集 外国を研究す

ること)

著者

川中 豪

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

216

ページ

5-6

発行年

2013-09

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00003624

(2)

  外国を対象にする研究には二つ の異なる立場がある。ひとつは対 象となる国の事情を把握し紹介す るというものであり、もうひとつ は研究上重要な因果関係を解明す るために比較研究の一貫として行 うものである。筆者の関わる政治 研究に引き付けると、前者は、外 国政治に関する情報を一般社会に 提供するという社会貢献 の意味合 い が 強 く 、 学 術 的 な 作 業 と し て は、 後者の占める割合が増加して いるように 思われる。

●政治事情と外国政治研究

  比較政治学の教科書では、最初 に比較政治学とは何かが説明され る。そこでどのように比較政治学 の研究のトレンドが歴史的に変遷 してきたかが紹介される。共通し て言及されるのは、伝統的な比較 政治学が自分の国以外の国の政治 について記述することである。   比較政治学といえばかつては外 国政治研究と同義であった。日本 人にとっては、例えば、フランス 政治研究、イギリス政治研究、ロ シア政治研究、アメリカ政治研究 などがこれに該当する。アメリカ の政治学教育で依然としてアメリ カ政治専攻と比較政治専攻が区別 されていることにも、そうした事 情 が 端 的 に 表 れ て い る。 そ こ で は、特定の国の政治事情を知るこ とが重要な目的とされ、多くの比 較政治学者は外国語を習得し、各 国の政治史と政治制度の記述に従 事していた。   外国の政治事情を知ることがも たらす利益は自明である。実用的 な利益は最も理解しやすい。特定 の国と何らかの関係(貿易・投資 といった経済関係、安全保障など の外交関係)を持つ場合に、その 国の政策がどのようなものになる かは、自らの利益を左右する重要 な要因となる。政策についての理 解、さらには政策がどう展開する か予測するには、その政策が生み 出される背景にある政治の動態を 知ることが不可欠である。政治体 制、政治制度、政治エリートの性 質、歴史的な経緯などが、その場 合の重要な情報となる。比較政治 学もそうした実用的な利益と大き く関わっていた。   また、学術的な意味も小さくな い。個々の国の政治事情を知るこ とは、研究上の新たな問いの発見 につながる。外国政治をみること は、自国をみているだけでは観察 されないような政治現象を観察す る機会が提供されることであり、 そうした機会がなければ気づかな かったような問題を研究対象とし て取り上げることにつながる。例 えば、二大政党システムを持つ国 の政治学者が、多党システムを持 つ外国を観察することは、あらた めて異なるタイプの政党や政党シ ステムについて研究する機会を得 ることになる。こうした作業は類 型化につながっていく。実際、政 治体制の類型化、政治制度の類型 化などが進められてきた。

 因果関係の解明と

比較という手法

  政 治 事 情 を 紹 介 す る こ と 自 体 は、比較政治学者にとって依然と し て 重 要 な 仕 事 で あ る が、 し か し、近年では、学術的な意味より ももっぱら実用的な利益をもたら すための社会貢献という意味合い の方が強くなっている。それは比 較政治学にとって外国政治を対象 とする学術上の目的が、比較研究 の事例(観察単位)として異なる 国々を扱うことに変わってきてい るからである。   もちろん旧来の外国政治研究も 比較を意識していなかったわけで はない。外国政治研究は常に自国 との比較という暗黙の前提のうえ で、自国と共通する政治現象や自 国にはみられない政治現象をどの ように理解すべきかに関心を向け

 

、比

、政

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アジ研ワールド・トレンド No.216 (2013. 9)

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ていた。そうした暗黙の比較は、 自国の国民にとって外国の政治を どのように理解することができる のか、ということを基準としてお り、さらには自国の政治をどのよ うに理解するのか、ということに も密接に関係していた。しかし、 いずれにしても、それは一国の政 治事情を把握することを目指した 作業だった。   一方、近年の比較政治学におけ る比較は、必ずしも自国との比較 を前提としたものではない。その 根底には、自国政治を理解する、 あるいは、外国政治を理解する、 といった特定の国の政治を理解す ることを直接の目的とするのでは なく、比較という方法によって一 般的な政治事象に関わる因果関係 を解明しようという目的が想定さ れている。   自然科学では、因果関係を検証 するためにしばしば実験が行われ る。簡単な例をあげると、水を与 えることが原因となって植物が生 長するという結果が生まれる、と いう因果関係を検証するには、他 の条件(日照時間や気温など)を 同じにしたうえで、同じ種類の植 物に対し、一方には水を与え、他 方には水を与えない、という実験 をすることを考えるだろう。   そ れ で は、 経 済 成 長 が 原 因 と なって民主化という結果が生まれ る、という因果関係を検証するに はどうすれば良いだろうか。産業 構造や社会階層の構成などで同じ 条件を揃えた二つの権威主義的な 国を用意し、人工的に一方には経 済成長を引き起こし、もう一方の 経済成長を止め、民主化の発生を 試せば良い。しかし、現実にはま ず不可能である ⑴ 。   その場合、実際に経済成長し民 主化した国と、経済成長せず民主 化しなかった国の事例を比較する ことが考えられるだろう(それは 二カ国間の比較に限定されるわけ ではなく、多くの場合は多国間の 比 較 と な る )。 あ る い は、 対 象 を 一カ国に限定して、経済成長せず 民主化しなかった時期と経済成長 し民主化した時期を比較するとい うことも考えられる(当然、他の 条件をどのように制御するかが常 に 重 要 な 問 題 で あ る )。 い ず れ に し て も、 因 果 関 係 を 検 証 す る の に、比較という手法は有効な検証 方法なのである。

●外国政治研究の今後

  比較政治学における外国研究の 位置づけが、政治事情の紹介から 因果関係検証のための比較対象へ と変化していったのには、いくつ かの理由が考えられる。ひとつは 比較政治学自体の深化である。政 治事情の紹介が生み出したのは、 各 国 の 政 治 を 類 型 化 す る こ と で あった。しかし、類型化はそこで 作業をとどめない。類型化が進む と次に生まれる関心はどうしてそ のような異なるタイプが発生した の か、 と い う こ と に な る。 例 え ば、異なるタイプの政治体制、異 なるタイプの政治制度は、何が原 因となって生まれたのか。また、 もう一方で、異なるタイプはどの ような帰結を生むのか、というこ とも注目されてくる。異なる政治 体制、異なる政治制度は、政策の タイプや経済発展、社会開発、あ るいは政治的競争のパターンにど のような影響を与えるのか、とい う関心である。それはすなわち因 果関係をめぐる議論となるのであ る。   もうひとつは技術的な進展であ る。比較の方法、すなわち定量的 な手法と定性的な手法の双方にお いて、比較のための方法が開発さ れ進化していったからである。加 えて、情報環境も整備され、洗練 された検証手法にうまく合致する ような形式で情報、データを収集 することが飛躍的に可能になった ことが、こうした比較の方法の発 展を下支えしている。   政治事象の因果関係を説明する ものは理論と呼ばれる。理論を作 り挙げていく過程に比較という実 証作業を通じて関わっていること は、実は、反射的な利益として、 各国の政治事情がそうした理論に おいてどのように位置づけられる のかを知る効果を生む。社会貢献 として外国の政治事情を紹介する 際に、速報性や詳細な情報の提供 といった報道関係者の持つ利点に 対し、比較政治学者が異なる役割 を持つのはまさにこの点である。   因果関係をめぐる理論と比較研 究に統合されることが外国政治研 究を意義深いものとしていく。 ( か わ な か   た け し / ア ジ ア 経 済 研 究所   東南アジアⅠ研究グループ) 《注》 ⑴  近年は実験を取り入れた検証も 政治学で行われるようになった ので、実験が全く不可能な検証 方 法 と い う わ け で は な く な っ た。ただ、実験を適用できる研 究上の問いは限定されている。

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アジ研ワールド・トレンド No.216 (2013. 9)

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