委員会報告
脳神経内科医におけるバーンアウトの現状と対策―第 1 報―
下畑 享良
1)* 久保 真人
2)饗場 郁子
3)服部 信孝
4)吉田 一人
5)海野 佳子
6)横山 和正
4)小川 崇
4)加世田ゆみ子
7)小池 亮子
8)清水 優子
9)坪井 義夫
10)道勇 学
11)三澤 園子
12)宮地 隆史
13)戸田 達史
14)武田 篤
15)日本神経学会キャリア形成促進委員会
要旨:医師のバーンアウトに関連する要因を明らかにし,今後の対策に活かすため,2019 年 10 月,日本神経 学会はバーンアウトに関するアンケートを脳神経内科医に対して行った.学会員 8,402 名の 15.0%にあたる 1,261 名から回答を得た.日本版バーンアウト尺度の下位尺度の平均は,情緒的消耗感 2.86/5 点,脱人格化 2.21/5 点,個人的達成感の低下 3.17/5 点であった.また本邦の脳神経内科医のバーンアウトは,労働時間や患者数とい った労働負荷ではなく,自身の仕事を有意義と感じられないことやケアと直接関係のない作業などと強く関連し ていた.これらを改善する対策を,個人,病院,学会,国家レベルで行う必要がある. (臨床神経 2021;61:89-102) Key words:バーンアウト,医師,情緒的消耗感,脱人格化,個人的達成感の低下 はじめに バーンアウトは,1970 年代にヒューマン・サービスの場で 作られた概念で,仕事上の慢性的な感情的,対人的ストレス に対する反応である1).つまり過剰な労働負担や精神的スト レスが継続することで,サービス従事者は情緒的に力を出し 尽くし,消耗してしまった状態となり,情緒的資源の枯渇は, やがてクライエントに対する無情で,非人間的な対応を招く. さらに成果の急激な落ち込みと,それにともなう自己効力感 (仕事の遂行に成功できる感覚)や達成感の低下が生じ,仕事 に喜びを感じられなくなる.Maslach らは,情緒的な資源の 枯渇を「情緒的消耗感」,クライエントに対する無情で,非人 間的な対応を「脱人格化」,自己効力感や達成感の低下を「個 人的達成感の低下」と名付けた1).そして,これら三つを下位尺度とした評価尺度である Maslach Burnout Inventory (MBI)を作成し,これらの下位尺度がバーンアウトを高い精 度で説明できることを示した1). 医療は代表的なヒューマン・サービスの一つであることか ら,医師はバーンアウトの危険に曝されている.米国のすべ ての診療科医師を対象とした調査では,45.8%の医師が,MBI で定義されるバーンアウトの状態を呈していた2).さらに医 師のバーンアウトは,離職率の上昇や医療過誤と関連し,患 者ケアの質および患者満足度を低下させることも明らかにさ れた3)~7).以上より医師におけるバーンアウト対策は喫緊の *Corresponding author: 岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野〔〒 501-1194 岐阜県岐阜市柳戸 1-1〕 1) 岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野 2) 同志社大学政策学部 3) 国立病院機構東名古屋病院脳神経内科 4) 順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科 5) 旭川赤十字病院脳神経内科 6) 杏林大学医学部脳卒中医学 7) 地方独立行政法人広島市立病院機構広島市立リハビリテーション病院脳神経内科 8) 国立病院機構西新潟中央病院脳神経内科 9) 東京女子医科大学脳神経内科学 10) 福岡大学医学部脳神経内科学 11) 愛知医科大学内科講座神経内科学 12) 千葉大学大学院医学研究院脳神経内科学 13) 国立病院機構柳井医療センター脳神経内科 14) 東京大学大学院医学系研究科神経内科学 15) 国立病院機構仙台西多賀病院脳神経内科
(Received August 25, 2020; Accepted September 7, 2020; Published online in J-STAGE on January 26, 2021) doi: 10.5692/clinicalneurol.cn-001533
課題と言える. 日本神経学会は「医師のバーンアウト」に対して先駆的な 取り組みを行ってきた.第 59 回学術大会(2018 年,札幌) において,シンポジウム「脳神経内科医の燃え尽き症候群を 防ぐために~バーンアウトしないための Tips をシェアしよ う~」を開催し,バーンアウトの現状についての議論を開始 した.バーンアウトを経験した参加者の医師から,対策を求 める切実な意見が述べられた.また第 60 回日本神経学会学 術大会(2019 年,大阪)では,シンポジウム「脳神経内科医 の燃え尽き症候群を防ぐための対策と提言」を開催した.こ のなかで大学所属の医師,および女性の神経学会専門医を対 象とした二つのアンケート調査が行われたが8)9),いずれも バーンアウトの頻度が高いことが報告され,全学会員を対象 とした調査が必要であるという意見が挙がった.日本神経学 会のバーンアウトに対する取り組みは注目を集めたが,この 問題に先駆的に取り組む脳神経内科医にバーンアウトが多い という誤解も生じた10). 以上を踏まえ,脳神経内科医全体におけるバーンアウトの 状況を明らかにし,今後の対策に活かすことを目的として, 2019 年 10 月,全学会員を対象としたバーンアウト,および キャリア満足度に関するアンケート行い,バーンアウトの頻 度や影響する因子について検討した.さらに米国神経学会と 中国神経学会がそれぞれ 2016 年,2014~2015 年に行った調 査結果11)12)と対比し,考察を行った. 対象・方法 日本神経学会の全学会員に対し,2019 年 10 月 1 日から 1 か月間,インターネットを用いたアンケートを行った.アン ケートは米国神経学会が使用した設問11)と,日本神経学会 キャリア形成促進委員会が作成した独自の設問とし,前者は 許諾を得た上で日本語訳し,翻訳業者に依頼して英語に逆翻 訳したものを原文と比較し,日本語翻訳版の妥当性を確認し た.具体的には,米国神経学会のアンケート11)の設問 14, 21,22 は日本の現状に合わせて文章の改変を行い,設問 23, 25,26,27 は日本の実情に合わないため削除した(設問 24 は設問 23 に繰り上げた).この結果,本アンケートの設問の 1 から 23 は米国神経学会におけるバーンアウトに関するアン ケート調査を日本語訳,もしくは日本の現状に合わせ改訂し たものとなり,設問の 24 から 37 は日本神経学会キャリア形 成促進委員会が作成した独自の質問項目となった.結果的に アンケートの項目としては,回答者の基本的情報と職業的特 徴,サブスペシャリティと労働的負担,バーンアウトおよび キャリア満足度,自身の仕事を有意義と感じること(仕事の 有意義性)等についての設問で構成した. バーンアウトの評価尺度には,日本版バーンアウト尺度を 用いた.これは田尾13)が作成した 20 項目をもとに,久保の 研究の中で項目の追加,削除が行われ,最終的に 17 項目に まとめられたものである14).各項目は,本邦の労働環境を考 慮し,一読してわかりやすい項目とするため,MBI をそのま ま翻訳することは避け,MBI を含めて海外で用いられていた 尺度を参考にして,新たに作成されたものである.下位尺度 は MBI と同様に「情緒的消耗感」,「脱人格化」,「個人的達成 感の低下」の三つからなる.看護師およびホーム・ヘルパー を対象とした調査では,探索的因子解析でこれら 3 因子構造 が再現され,検証的因子分析では尺度の変数間の関係性と整 合性が高く,モデルの適合度は良好である15).また前述の米 国や中国の脳神経内科医を対象としたアンケートでは MBI, もしくは対人援助職を対象とした Human Services Survey (MBI-HSS)を使用し,カット・オフを設定して,バーンア ウトを定義している11)12).一方,本邦の医師を含む医療職に 対して,日本版バーンアウト尺度と日本版 MBI-HSS の適合 度について,採点法に基づいた確認的因子分析を行った研究 では,日本版 MBI-HSS と比較し,日本版バーンアウト尺度 のほうがより高い適合度を示していた16).このため,本研究 では,より本邦の医療職の労働状況に即したアンケート結果 を得るため,日本版バーンアウト尺度を採用した.しかし日 本版バーンアウト尺度にはバーンアウトを定義するためのカッ ト・オフ値はないため,バーンアウトの頻度を算出すること は断念した. 解析としては,まず全回答者のアンケート結果を集計した. 次に日本版バーンアウト尺度の「情緒的消耗感」,「脱人格化」, 「個人的達成感の低下」の三つの下位尺度に影響する因子を明 らかにするために,各下位尺度を目的変数,アンケートの各 項目を説明変数として,ステップワイズ法による重回帰分析 を行った.勤務時間など,極端な値を含む変数は,その影響 を除くため段階尺度に変換したものを使用した.また,カテ ゴリー変数はダミー変数として分析に供した.キャリア満足 度に関する二つの質問と well-being,QOL,疲労と日本版バー ンアウト尺度の三つの下位尺度について,Pearson の相関係 数を算出し,キャリア満足度との関わりを評価した.データ の分析には,IBM SPSS Statistics 25 を用いた. 倫 理 学会員に対するアンケート調査に倫理審査が必要かについ ては,「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に明確 な記載がないものの,「人を対象とした医学研究以外の研究に 該当する」として倫理審査が必要でない研究という指針が示 されていることや17),本研究は,学会が学会員を対象とし て,その労務環境を調査する内容になるが,回答は強制では なく任意であり,非人道的な質問も含まれていないことから, 倫理審査は不要と判断した.個人情報の保護については委員 会内で配慮して実施できると考えた.アンケート結果(エク セルファイル)は解析担当者のみがパスワードをかけた状態 で管理した. 結 果 日本神経学会員でメールアドレスが登録されている 8,402
名の 15.0%にあたる 1,261 名から回答が得られた.また 748 名より,統計学的解析に必要な設問のすべてに回答が得られ た.回答者の基本的情報と職業的特徴を Table 1 に示す.年 齢の中央値は 45 歳で,年代は 20 代から 70 代以上まで順に 4.7%,28.2%,31.6%,21.3%,11.8%,2.4%であった.性 別は 28.2%が女性であった.勤務先は一般病院が 51.4%,大 学 36.6%,開業 4.6%であった.2020 年 8 月の日本神経学会 の全学会員のデータと比較すると,年代は全学会員では,20 代から 70 代以上まで順に 5.7%,22.4%,22.6%,22.3%, 18.0%,9.1%であり,回答者は 30 代,40 代で多く,60 代, 70 代以上で少ない傾向であった.また女性の比率は 23.6% で,回答者は女性に多い傾向であった.また全学会員では, 一般病院が 53.6%,大学 29.9%,開業 12.7%であり,回答者 は大学で多く,開業医で少ない傾向であった. サブスペシャリティと労働的負担に関する結果を Table 2 に示す.サブスペシャリティは神経学全般が 45.5%と最も多 く,次いで血管神経学・脳卒中が 10.2%,運動異常症が 5.8% と多かった.1 週間の平均労働時間は 55.1 時間で,うち 66.4%が臨床に,12.6%が研究に,7.9%が教育に費やされて いた.1 か月あたりの宿直・日直の回数の中央値はそれぞれ 1 回ずつで,宿直・日直ではない患者対応のための時間外勤 務も 1 回であった.1 週あたりの外来患者数,入院患者数の 中央値はそれぞれ 40 人,10 人であった.1 年あたりの週末 回診回数は 12 回であった.平均睡眠時間は 6.0 時間/日であっ た. 日本版バーンアウト尺度とキャリア満足度に関する項目を Table 3 に示す.日本版バーンアウト尺度の下位尺度の平均 は,情緒的消耗感 2.86/5 点,脱人格化 2.21/5 点,個人的達成 感の低下 3.17/5 点であった.「再び医師を選ぶ」,「再び脳神 経内科医を選ぶ」と回答したのはそれぞれ 50.4%,51.1%で あった.現在の仕事に満足していると回答したのは 46.2%で あった.47.3%が個人生活/家族生活に十分な時間を取ること ができないと回答した.56.5%が現在の仕事が有意義である と回答した.54.9%が仕事の自己決定権があり,26.1%が脳 神経内科を選択する動機となった活動に十分な時間費やせて いると回答した.事務作業に関する設問では,オーダー入力, 口述,検査結果見直しなど,患者ケアに直接関係のある事務 作業に費やす時間は妥当と回答したのは 34.4%で,文書のや り取り,書類の完成,電話への応対など,間接的に関係する 事務作業については 20.0%であった.また,効果的な補助ス タッフについては,62.5%が少なすぎると回答した. つぎに日本版バーンアウト尺度の三つの下位尺度を目的変 数として Stepwise 法(投入基準:P < 0.05,除去基準:P > 0.10)による重回帰分析を行い,有意な関連を認めた項目を Table 4 に示す.説明率(調整済み R2)はすべて 0.4 以上であ り,ストレス調査としては十分な説明率だと考えられた.情 緒的消耗感と特に関連の強かった項目は,仕事が自分にとっ て有意義であること(以下,有意義性),個人/家庭生活のた めの時間,年齢,間接的な事務作業,補助スタッフ,業務に 研究が占める割合,脳神経内科を選択した動機などであった. 脱人格化と特に関連の強かった項目は,有意義性,年齢,間 接的な事務作業,脳神経内科を選択した動機,補助スタッフ などであった.個人的達成感の低下と特に関連の強かった項 目は,有意義性,脳神経内科を選択した動機,業務に臨床が 占める割合,自己決定権,非指導医の専門医などであった. 職業満足度に関する二つの設問と,Well being,QOL,疲 労,日本版バーンアウト尺度の三つの下位尺度との相関係数 を Table 5 に示す.日本版バーンアウト尺度のほうが Well being,QOL,疲労よりもおおむね高い相関係数を示した. 日本版バーンアウト尺度の下位尺度間で相関係数を求めた. 情緒的消耗感と脱人格化では 0.739,情緒的消耗感と個人的 達成感の低下では 0.390,脱人格化と個人的達成感の低下で は 0.427 であった(すべての相関係数の t 値は 1%水準で有 意). 本アンケートと米中のアンケートの結果の比較を Table 6 に示す.米国11)と比較すると,回答者の年齢は本邦の方が 6 歳若く,男性が多かった.専門領域は日米ともに神経学全般 が最多であったが,本邦では脳卒中が多く,米国ではてんか んが多かった.労働時間や仕事の自己決定権,疲労,事務作 業に関する結果は日米でほぼ同様であったが,職業満足度や 個人生活/家族生活のための十分な時間は本邦の方が低く,と くに,仕事が有意義と回答した頻度はとくに低かった(56.5% 対 87.6%).中国の報告は,女性が占める割合が高いこと, 職業満足度が最も低いこと,さらに個人生活のための十分な 時間があると答えた回答者は 3.2%とわずかであったことが 特徴であった12). 考 察 1.バーンアウト対策の重要性 Table 5 より,「再び医師/脳神経内科医を選択する」という 項目と最も強く関連していたのがバーンアウト尺度であった. したがって,医師のキャリア満足度を高めるためには,医師 のバーンアウト対策を講じることが有効であることが示され たと考えられる. 2.脳神経内科医のバーンアウトの特徴 本研究の対象である脳神経内科医のバーンアウト傾向を評 価する際,同じ尺度を使った他の対象の結果と比較する方法 が考えられる.以前からバーンアウト研究の対象となってき た看護師のデータ15)と比較する.この研究の対象となった看 護師 1,827 名の平均値は情緒的消耗感 3.25,脱人格化 2.07, 個人的達成感の低下 3.56 であった.この値と比較すると,本 研究の脳神経内科医の平均値は情緒的消耗感と個人的達成感 の低下はかなり低く,脱人格化は少し高いという結果となる. また本研究では,情緒的消耗感と脱人格化の間で強い相関 が認められたことに加え,これら二つの下位尺度と個人的達 成感の低下の間にも比較的高い相関が認められた.これは, 個人的達成感の低下と,残りの二つの下位尺度との関連は低 く,個人的達成感の低下はバーンアウトの独立した因子であ
Table 1 バーンアウトに関するアンケート. (1)米国神経学会アンケート 【幸せとキャリアへの満足度】 1.あなたの意見では,日本神経学会は脳神経内科医におけるバーンアウトを減らす試みを行うべきだと思いますか? ①はい ②いいえ ③分からない 2.あなたの幸せ(well-being)は,ほかの医師と比べて,どう考えますか? ①不良(医師のボトム 30%) ②平均以下(31~40 パーセンタイル) ③平均(41~60 パーセンタイル) ④平均以上(61~70 パーセンタイル) ⑤きわめて良好(医師のトップ 30%)
3.今日を含むこの 1 週間で,(a)あなたの総合的な QOL はどうでしたか?(b)平均して疲労のレベルはどうでしたか?(VAS 0~ 10 より選択する) 4.あなたは最近 6 ヶ月ぐらいのあいだに,次のようなことをどの程度経験しましたか?あてはまると思う番号を選んでください.(1. ない 2. まれにある 3. 時々ある 4. しばしばある 5. いつもある) (1)こんな仕事,もうやめたいと思うことがある. (2)われを忘れるほど仕事に熱中することがある. (3)こまごまと気くばりすることが面倒に感じることがある. (4)この仕事は私の性分に合っていると思うことがある. (5)同僚や患者の顔を見るのも嫌になることがある. (6)自分の仕事がつまらなく思えてしかたのないことがある. (7)1 日の仕事が終わると「やっと終わった」と感じることがある. (8)出勤前,職場に出るのが嫌になって,家にいたいと思うことがある. (9)仕事を終えて,今日は気持ちのよい日だったと思うことがある. (10)同僚や患者と,何も話したくなくなることがある. (11)仕事の結果はどうでもよいと思うことがある. (12)仕事のために心にゆとりがなくなったと感じることがある. (13)今の仕事に,心から喜びを感じることがある. (14)今の仕事は,私にとってあまり意味がないと思うことがある. (15)仕事が楽しくて,知らないうちに時間がすぎることがある. (16)体も気持ちも疲れはてたと思うことがある. (17)われながら,仕事をうまくやり終えたと思うことがある. 【あなたのキャリア】 5.以下の文章に対するあなたの意見の一致ないし不一致の程度を評価して下さい:私の仕事のスケジュールでは私の個人生活/家族 生活のための十分な時間を取ることができる. ①強く当てはまる ②当てはまる ③中間 ④当てはまらない ⑤強く当てはまらない 6.もしあなたが自分のキャリアの選択を再考できるなら,再び医師になることを選びますか? ①間違いなく選ばない ②おそらく選ばない ③わからない,中間 ④おそらく選ぶ ⑤間違いなく選ぶ 7.もしあなたが自分の専門の選択を再考できるなら,再び脳神経内科医になることを選びますか? ①間違いなく選ばない ②おそらく選ばない ③わからない,中間 ④おそらく選ぶ ⑤間違いなく選ぶ 8.あなたには脳神経内科を選択した明確な理由があるか思います.あなたが脳神経内科を選ぶ動機となった活動に,十分時間を費や すことはできていますか? ①非常にたくさん ②たくさん ③いくらか ④あまり多くない ⑤全然ない ⑥該当しない 9.以下の文章に対するあなたの意見の一致ないし不一致の程度を評価して下さい.(①強く当てはまる ②当てはまる ③中間 ④ 当てはまらない ⑤強く当てはまらない) (a)私は私の仕事をどのように行うかを決定するかなりの自己決定権を持つ. (b)私の行う仕事は,私にとって有意義なものである. (c)概して,私は私の仕事に満足している.
10.事務作業に費やす時間についての以下の文章に対するあなたの意見の一致ないし不一致の程度を評価して下さい.(①強く当ては まる ②当てはまる ③中間 ④当てはまらない ⑤強く当てはまらない ⑥分からない,該当しない) (a)患者ケアに直接的に関係のある事務作業(例:オーダー入力,口述,検査結果見直し,患者ポータル(注)を介した患者との やりとりなど)に私が費やす時間の量は妥当である. (b)患者ケアに間接的に関係のある事務作業(例:文書のやり取り,書類の完成,電話への応対など)に私が費やす時間の量は妥 当である. 注;患者ポータルとは,米国で導入が進んでいる,患者が医療機関から直接,医療データの一部を閲覧することができる仕組み. 11.あなたは自分の仕事において,あなたを手助けする効果的な補助スタッフをどのぐらい持っていますか? ①あまりにも多すぎる ②多すぎる ③ほぼ良い ④少なすぎる ⑤あまりにも少なすぎる 【あなたの仕事量】 12.典型的な 1 週間において,あなたは何時間,働いていますか? 13.あなたの職業人としての時間の何%を以下の業務に費やしていますか? 臨床( )%, 研究( )%, 教育( )%, 管理( )%, その他( )% (合計 100%) 14.典型的な 4 週間において,宿直,日直等はそれぞれ何回ですか? 15.1 週間において,病院で何人の外来患者を診察していますか?(もし外来患者を診察していなければ 0 人と書いてください) 16.病院を回診する平均的な 1 週間において,何人の入院患者を回診していますか?(もし入院患者を診察していなければ 0 人と書 いてください) 17.あなたは 1 年において週末の回診を何回行う責任がありますか?(注:1 年ですべて回診すると 52 週になります) 18.典型的な 1 ヶ月において,あなたは何時間ボランティア(例;慈善団体,専門職的団体,宗教的団体,ないしスポーツ団体)に 時間を費やしていますか? 【あなたについて】 19.西暦何年うまれですか? 20.あなたの性別を選んでください. ①男性 ②女性 21.あなたが勤務する都道府県は? 22.あなたの職業を最も良く言い表しているものはどれですか? ①研修医ないし専攻医 ②脳神経内科専門医(指導医ではない) ③指導医 ④施設の長(教授,診療部長など) ⑤開業医 ⑥その他 23.臨床,研究,教育の観点から,あなたの主な活動の中心はどれですか? □ 自律神経障害 □ 行動神経学・神経精神病学 □ 小児神経学 □ 臨床生理学 □ 血管内治療・インターベンション神経学 □ てんかん □ 神経学全般(general neurology) □ 老年神経学 □ 頭痛医学 □ 感染症・神経ウイルス学 □ 運動異常症 □ 神経修復・リハビリテーション □ 神経救命救急 □ 神経疫学 □ 神経遺伝学 □ 神経ホスピタリスト(病棟総合医) □ 神経画像 □ 神経免疫・多発性硬化症 □ 神経筋疾患 □ 神経筋病理 □ 神経腫瘍学 □ 神経眼科学 □ 神経耳科学 □ 疼痛医学 □ 神経緩和学 □ 睡眠医学 □ スポーツ神経学 □ 外傷性脳障害 □ 血管神経学・脳卒中 □ その他 (2)日本神経学会アンケート 【あなたのライフについて】 24.婚姻の有無について選んでください. ①未婚 ②既婚 ③離別・死別 25.お子さんはいらっしゃいますか? ①無 ②有( 人) 26.現在,介護の必要なご家族がいらっしゃいますか? ①無 ②有 ( 人) 27.一日のうち家事(育児・介護の時間を含む)に費やす時間はどのぐらいですか? 平日 約( 時間),休日 約( 時間) 28.家事(育児・介護を含む)を主に担っている方はどなたですか? ①自分 ②パートナー ③自分とパートナーでおよそ半分ずつ ④親 ⑤その他
29.1 日の平均睡眠時間は何時間ですか? 30.もっとも当てはまるものはどれですか? ①常勤(脳神経内科専門医) ②非常勤(脳神経内科専門医) ③常勤(非専門医) ④非常勤(非専門医) ⑤専攻医ないし研修医 ⑥大学院生 ⑦産休・育休中(脳神経内科専門医) ⑧産休・育休中(非専門医) ⑨留学中 ⑩退職 ⑪その他 31.もっとも当てはまる勤務先はどれですか? ①一般病院 ②大学 ③研究機関 ④開業 ⑤療養施設 ⑥健診センター ⑦行政機関 ⑧その他 【バーンアウトについて】 ここでいうバーンアウトとは「仕事を通じて力を出し尽くして消耗してしまった状態になる,患者さんないしスタッフに対する無 情で非人間的な対応をする,職務に関わる達成感が低下している」のいずれかを認める場合を指します. 32.バーンアウトの経験はありますか? ⓪全くない→35 の項目へ ①なりそう,も含め経験がある→33 へ 33.これまでのバーンアウトの発生回数は何回ですか?また各年代での発生回数を教えてください. 34.バーンアウトの状況について,以下の質問にお答えください.(1 回目について記載してください) 〈1〉発生当時の年齢:①20 代 ②30 代 ③40 代 ④50 代 ⑤60 代 ⑥70 代以上 〈2〉勤務形態:①常勤 ②非常勤(パートタイム・フリーランス) ③大学院生 ④産休・育休中 ⑤留学中 ⑥退職 ⑦その他 〈3〉発生当時の勤務先:①一般病院 ②大学 ③研究機関 ④開業 ⑤療養施設 ⑥健診センター ⑦行政機関 ⑧その他 〈4〉程度:①なりそうなことがあった ②なったが休まなかった ③少し休んだ(有給休暇範囲) ④診断書を出して休職した ⑤転職した ⑥退職した 〈5〉関連していると思われる要因(複数回答可):①時間外労働(□ 当直 □ オンコール) ②業務過多 ③職場の人間関係 ④患者・家族からのクレーム ⑤上司の無理解 ⑥ハラスメント(□ パワハラ □ セクハラ □ アカハラ □ マタハラ □ ジェンダーハラスメント □ その他) ⑦家族問題(□ 育児 □ 介護 □ 配偶者 □ 受験 □ その他) ⑧研究 ⑨更年期 ⑩人事異動 ⑪自身の病気 ⑫自身の性格 ⑬給与 ⑭睡眠時間 ⑮医療訴訟 ⑯対象疾患(□ 緊急性が高い □ 難治性疾患が多い □ 重症が多い) ⑰その他 〈6〉バーンアウトしたことは,性別と関係していると思いますか? ①関係している ②関係していない ③わからない 〈7〉対処(複数回答可):①仕事を休んだ ②労働時間を減らした ③職場内で配置換えを申し出た ④家族に相談した ⑤上司 に相談した ⑥友人に相談した ⑦職場内相談窓口に相談した ⑧精神科・心療内科などを受診した ⑨耐えた ⑩留学し た ⑪大学院に進学した ⑫パート・フリーランスになった ⑬職場・病院を変わった ⑭転科した( 科に) ⑮退 職した ⑯まだ立ち直っていない ⑰その他 2 回目について記載してください (2 回以上経験者は,クリックすると上記(3)〈1〉~〈7〉記入欄が出現する) 35.バーンアウトしないために,個人として予防的に必要なことは何だと思われますか?(複数回答可) ①自身の心の健康に気をつける ②バーンアウト・メンタルヘルスについて学生時代から教育を受ける ③趣味を持つ ④何でも相談できる人を持つ ⑤ストレスを感じたら早めに相談する ⑥仕事量を減らす ⑦他職種の人と交流する ⑧リベラルアーツを学ぶ ⑨その他 36.バーンアウトしないために,病院や国が予防的に行う必要があることは何だと思われますか?(複数回答可)
①複数主治医・勤務交代性の導入 ②nurse practitioner や physician assistant へのタスク・シフト ③当直後帰宅を含む勤務間イ ンターバル制度の導入 ④給与待遇の適正化(当直やオンコールへの報酬,大学-一般病院間格差の是正) ⑤各施設における当 直回数の適正化 ⑥職場内休憩室の設置 ⑦職場内相談窓口の設置 ⑧職場におけるメンタルヘルスに関する啓発活動の活性化 ⑨休みをとりやすい環境の整備(有給休暇の確保) ⑩医師の大病院集約化 ⑪医師の増員(国,施設,専門医レベルを含む) ⑫ハラスメントに関する教育 ⑬ハラスメントの禁止・処罰の規制強化 ⑭リーダーシップ研修 ⑮女性も男性と同等にキャリ アを積んでいけるような支援 ⑯先輩医師に相談できるようなメンター制度 ⑰若手医師,地方勤務医師の研究や論文執筆の機 会・時間的余裕の提供 ⑱その他 37.バーンアウトに関するご意見があれば,どうかご記入をお願いします.(自由記載)
るという,日本版バーンアウト尺度を用いたこれまでの報 告14)15)とは異なる結果であった.本研究の対象となった脳神 経内科医の傾向として情緒的消耗感が低く,個人的達成感が 高いという先の考察をふまえると,脳神経内科医は比較的高 い達成感,効力感を感じており,それが消耗感ひいてはバー ンアウトの抑止につながっているとの推測が成り立つ. 3.量的な労働負担とバーンアウト 本アンケートでは,米国,中国のアンケート11)12)で認めら れたバーンアウトと,労働時間や夜間オンコール数,患者数 といった量的な労働負担とのあいだに有意な相関は認めな かった.医師の労働時間とバーンアウトに関する既報として は,労働時間制限の効果を調べたシステマティック・レビュー において,バーンアウトに有効であったのは六つの研究のう Table 2 本調査の回答者の基本属性. 基本的情報 全体に対する比率,% 年齢,歳 中央値(IQR) 45(37~55) 性別,人 男性 905 71.8 女性 336 26.6 婚姻の有無,人 既婚 980 77.7 子の有無,人 あり 833 66.1 介護を要する家族,人 あり 152 12.1 勤務地方,人 北海道 52 4.1 東北 81 6.4 関東 432 34.3 中部 204 16.2 近畿 197 15.6 中国 97 7.7 四国 32 2.5 九州 161 12.8 職業的特徴 勤務先,人 一般病院 648 51.4 大学 461 36.6 研究機関 27 2.1 開業 58 4.6 療養施設 18 1.4 勤務形態,人 研修医ないし専攻医 154 12.2 脳神経内科専門医(指導医ではない) 377 29.9 指導医 428 33.9 施設の長(教授,診療部長など) 179 14.2 開業医 54 4.3
Table 3 サブスペシャリティと労働負担. サブスペシャリティ 全体に対する比率,% 主な分野,人 神経学全般(general neurology) 574 45.5 血管神経学・脳卒中 129 10.2 運動異常症 73 5.8 老年神経学 68 5.4 神経筋疾患 62 4.9 神経免疫・多発性硬化症 51 4.0 神経修復・リハビリテーション 43 3.4 血管内治療・インターベンション 29 2.3 臨床生理学 27 2.1 神経遺伝学 20 1.6 行動神経学・神経精神病学 19 1.5 神経ホスピタリスト(病棟総合医) 16 1.3 てんかん 15 1.2 1 週間の平均労働時間,時間/週 平均(±標準偏差) 55.1(±20.5) 業務内容の比率 臨床に費やす時間比率,% 平均(±標準偏差) 66.4(±25.4) 中央値(IQR) 70.0(50.0~90.0) 研究に費やす時間比率,% 平均(±標準偏差) 12.6(±18.5) 中央値(IQR) 5.0(0.0~15.0) 教育に費やす時間比率,% 平均(±標準偏差) 7.9(±9.1) 中央値(IQR) 5.0(0.0~10.0) 1 か月あたりの宿直・日直 宿直,回/月 中央値(IQR) 1(0~3) 日直,回/月 中央値(IQR) 1(0~1) 宿直・日直以外の患者対応の時間外勤務,回/月 中央値(IQR) 1(0~5) 1 週当たりの外来患者数,人/週 中央値(IQR) 40(20~70) 1 週当たりの入院患者数,人/週 中央値(IQR) 10(4~20) 1 年当たりの週末の回診回数,回/年 中央値(IQR) 12(0~26) 睡眠時間,時間/日 平均(±標準誤差) 6.0(±1.2)
Table 4 本調査で使用した項目の基本集計. 日本版バーンアウト尺度 全体に対する比率,% 情緒的消耗感(5 点満点) 平均(±標準偏差) 2.86(±.92) 脱人格化(5 点満点) 平均(±標準偏差) 2.21(±.85) 個人的達成感の低下(5 点満点) 平均(±標準偏差) 3.17(±.77) “自分のキャリアの選択を再考できるなら,再び医師になることを選びますか” 「おそらく選ぶ」,「間違いなく選ぶ」,人 635 50.4 “自分の専門(speciality)の選択を再考できるなら,再び脳神経内科医になることを選びますか” 「おそらく選ぶ」,「間違いなく選ぶ」,人 644 51.1 “概して,私は私の仕事に満足している” 「強く当てはまる」,「当てはまる」,人 582 46.2 総合的 QOL(10 点満点) 平均(±標準偏差) 5.4(±4.7) 6 点以下 805 63.8 疲労のレベル(10 点満点で 10 が最良) 平均(±標準偏差) 4.7(±2.1) “私の仕事のスケジュールでは私の個人/家族生活のための十分な時間を取ることができる” 「当てはまらない」,「強く当てはまらない」,人 597 47.3 “あなたの幸せ(well-being)は,他の医師と比べて,どう考えますか” 「不良(医師のボトム 30%)」,「平均以下(31~40 パーセンタイル)」,人 280 22.2 「平均(41~60 パーセンタイル)」,人 508 40.3 「平均以上(61~70 パーセンタイル)」,「極めて良好(医師のトップ 30%)」,人 460 36.5 “私は私の仕事をどのように行うかを決定するかなりの自己決定権を持つ” 「強く当てはまる」,「当てはまる」,人 692 54.9 “私の行う仕事は,私にとって有意義なものである” 「強く当てはまる」,「当てはまる」,人 713 56.5 “あなたが脳神経内科を選ぶ動機となった活動に,十分時間を費やすことはできていますか” 「非常にたくさん」,「たくさん」,人 329 26.1 “患者ケアに直接的に関係のある事務作業a)に私が費やす時間の量は妥当である” 「強く当てはまる」,「当てはまる」,人 434 34.4 “患者ケアに間接的に関係のある事務作業b)に私が費やす時間の量は妥当である” 「強く当てはまる」,「当てはまる」,人 239 20.0 効果的な補助スタッフの数 「少なすぎる」,「あまりにも少なすぎる」,人 788 62.5 a)例:オーダー入力,口述,検査結果見直し,患者ポータルを介した患者とのやりとりなど. b)例:文書のやり取り,書類の完成, 電話への応対など.
Table 5 日本版バーンアウト尺度の重回帰分析. 情緒的消耗感 項目 標準化偏回帰係数(β) 有意義性 −0.287 患者ケアに間接的に関係する事務作業に費やす時間が妥当 −0.134 個人/家族生活のための十分な時間を取ることができる −0.192 年齢 −0.185 業務比率 研究 −0.121 効果的なスタッフが充足している −0.134 脳神経内科を選ぶ動機となった活動に十分時間を費やせる −0.106 婚姻ダミー_未婚 0.082 地域ダミー_近畿 0.070 専門ダミー_神経修復・リハビリテーション −0.063 専門ダミー_臨床生理学 −0.060 調整済み R2 = 0.405 脱人格化 項目 標準化偏回帰係数(β) 有意義性 −0.469 患者ケアに間接的に関係する事務作業に費やす時間が妥当 −0.122 年齢 −0.172 脳神経内科を選ぶ動機となった活動に十分時間を費やせる −0.112 効果的なスタッフが充足している −0.107 介護が必要な家族c) 0.007 ボランティアの時間/月 0.069 地域ダミー_近畿 0.063 勤務機関ダミー_大学 −0.063 専門ダミー_神経筋疾患 −0.059 専門ダミー_神経修復・リハビリテーション −0.058 調整済み R2 = 0.419 個人的達成感の低下 項目 標準化偏回帰係数(β) 有意義性 −0.473 業務比率 臨床 0.123 脳神経内科を選ぶ動機となった活動に十分時間を費やせる −0.128 身分ダミー_専門医(非指導医) 0.100 仕事における自己決定権 −0.105 ボランティアの時間/月 −0.062 調整済み R2 = 0.427 注 1)投入された項目の F 値はすべて 5%水準で有意.マイナスの偏回帰係数がバーンアウトの抑制 変数,プラスが促進変数を示す.注 2)ダミー変数 地域:「関東」を基準,専門:「神経学全般」を 基準,身分:「指導医」を基準,勤務機関:「一般病院」を基準.
Table 6 well-being,QOL,疲労および日本版バーンアウト尺度とキャリア満足度との関係. 「再び医師になることを選びますか」 「再び脳神経内科医になることを選びますか」 Pearson の相関係数 Pearson の相関係数 Well being 0.293 0.285 QOL 0.215 0.203 疲労 0.169 0.138 情緒的消耗感 −0.329 −0.279 脱人格化 −0.352 −0.382 個人的達成感の低下 −0.368 −0.364 注 1)相関係数の t 値はすべて 1%水準で有意 Table 7 日米中でのアンケート結果の比較. 日本神経学会アンケート (2019 年) 米国神経学会アンケート(2016 年) 中国神経学会アンケート(2014~2015 年) 回答率 15% 40.5% 60.7% 基本的特徴 年齢中央値 45 歳 51 歳 中央値は不明. 20~50 歳までで 90.1%. 男性 71.8% 65.3% 46.0% 専門領域(多い順) ①神経学全般(45.5%), ②血管・脳卒中(10.2%), ③運動異常症(5.8%) ①神経学全般(31.9%), ②てんかん(8.9%), ③小児神経学(8.3%) データなし. 労働負担 労働時間 55.1 時間/週 55.3 時間/週 (clinical practice) 55 時間以上が 42.1%.平均は不明. 58.1 時間/週 (academical practice) 週末の回診回数 17.0 回/年 9.9 回/年 データなし 職業満足度 「再び医師を選択する」 50.4% 61.3% 25.3% 「再び脳神経内科医を選択する」 51.1% 67.2% データなし 「現在の仕事に満足している」 46.2% 67.0% 34.2% 個人生活/家族生活のための十分な 時間がある 20.2% 32.9% 3.2% 自己決定権がある 54.9% 59.9% データなし QOL の VAS 5.4 6.2 データなし 疲労の VAS 4.7 5.2 データなし 仕事が有意義である 56.5% 87.6% データなし 事務作業に関する設問 直接的な事務作業の量が妥当 34.4% 23.0% データなし 間接的な事務作業の量が妥当 20.0% 15.9% データなし 補助スタッフが少なすぎる 62.5% 56.3% データなし
ち二つのみと報告されている18).また労働時間制限によって 限られた時間内に同じ量の仕事をするプレッシャーが,疲労 とストレスを増加させたという報告もある19).すなわち,単 に労働時間の制限を行うだけではバーンアウト対策として不 十分な可能性が示唆された. 4.事務作業とバーンアウト 本研究では,間接的な事務作業の量が多すぎること,効果 的な補助スタッフの数が少なすぎることが,バーンアウトと 関連していた.直接,患者ケアに関わらない煩雑な事務作業 が医療現場の消耗感を高め,意欲の低下につながるものと考 えられた.電子カルテはその一因であり,情報過多,過剰な データ入力,システム反応の遅さなどが,バーンアウトに有 意に関連することが報告されている20).患者のケアと直接関 係のない事務作業がバーンアウトの危険因子であることは, 外科医やがん専門医の検討でも報告されている21)22).これに 対して,医療スクライブ(書記)の導入は,ランダム化比較 試験で患者の満足度を損なうことなく,医師全体の満足度, カルテの質と正確さへの満足度,カルテ作成の効率に有意な 改善をもたらすことが示されており23),医師のバーンアウト 対策として有効と考えられる. 5.仕事の有意義性とバーンアウト 本研究では,米国の報告11)と同様に,自身の仕事を有意義 と感じられないことがバーンアウトと有意に関連していた. 同様の結果が内科医における検討でも報告されており,自分 にとって最も有意義な活動に費やす時間が 20%未満と少ない 場合,バーンアウトの有病率は 2.75 倍と増加すると報告され ている24).また,重回帰分析の結果,仕事の有意義性はバー ンアウトの下位尺度すべてにおいて最も関連性の高い項目と なっていたことに加え,「脳神経内科を選ぶ動機となった活動 に十分時間を費やせる」という項目もバーンアウトの下位尺 度すべてと高い関連性を示していた. 仕事が有意義と回答した本調査の回答者が米国と比べて著 しく少なかったという結果を加味すれば,個人的に意味のあ る仕事に時間を費やせることで得られる達成感や効力感を通 してキャリア満足度を高めることは,バーンアウト対策とし て重要かつわが国の医療現場の喫緊の課題だと考えられる. 自身の仕事を有意義と感じられればバーンアウトを防止でき るかについては,渉猟した限り報告はないが,委員会として はバーンアウトのリスクを減らす可能性があるものと考えて いる. 6.本研究の限界 本研究の限界としては,第一にアンケートの回答率が 15% と低く,よりバーンアウトに関心が高い人が回答した可能性 がある.回答者と全学会員の年代,性別,勤務先の比較では, 30 代,40 代,女性,大学の勤務者の割合が高い傾向があり, これらの群でよりバーンアウトに対する関心が高い可能性 がある.第二に,日本版バーンアウト尺度にはカット・オフ 値が設定されていないため,バーンアウトの頻度が算出でき ないことや海外の既報11, 12)との比較ができないことが挙げら れる. おわりに 本邦の脳神経内科医におけるバーンアウト調査の結果につ いて報告した.間接的な事務作業量の過多と,効果的な補助 スタッフの数が少なすぎることが,バーンアウトと関連して いたが,単に労働時間の制限を行うだけでは不十分な可能性 が示唆された.本邦の脳神経内科医におけるバーンアウトに おいて,自身の仕事を有意義と感じられること,そしてそこ から達成感や効力感を得ることが重要な意味を持つことを認 識し,これらを促進する総合的な対策を行う必要がある.具 体的な方法として,個人での工夫の共有,病院や学会,国家 における組織改革や働き方改革,そしてキャリアアップ支援 とリーダーシップ教育などを積極的に進めていく必要がある. 具体的な方法として,①個人での工夫の共有,②病院や学会, 国家における組織改革や働き方改革,そして③キャリアアッ プ支援とリーダーシップ教育などを積極的に進めていく必要 がある.①については,「早めに吐き出す,愚痴る.無理だと 思ったら No と言う.仕事から離れる時間を作る.仲間と話 をする」ということがシンポジウムにて提案された8).②に ついては,複数主治医・勤務交代制の導入,勤務間インター バル制度の導入,休みを取りやすい環境の整備,タスク・シ フト,各施設における当直回数の適正化,給与待遇の適正化, 医師の増員が考えられる.③については,女性に対するキャ リアアップ支援や,若手医師,地方勤務医師の研究や論文執 筆の機会・時間的余裕の提供が考えられる.また男女間や大 学病院・一般病院間におけるバーンアウトの比較や,新型コ ロナ感染症がバーンアウトに及ぼす影響については重要な課 題であり,今後,検討を行い明らかにしたい. ※著者全員に本論文に関連し,開示すべき COI 状態にある企業, 組織,団体はいずれも有りません. 文 献
1)Maslach C, Schaufeli WB, Leiter MP. Job burnout. Annu Rev Pshchol 2001;52:397-422.
2)Shanafelt TD, Boone SB, Tan L, et al. Burnout and satisfaction with work-life balance among US physicians relative to the general US population. Arch Intern Med 2012;172:1377-1385. 3)Williams ES, Konrad TR, Scheckler WE, et al. Understanding
physicians’ intentions to withdraw from practice: the role of job satisfaction, job stress, mental and physical health. Health Care Manage Rev 2001;26:7-19.
4)West CP, Huschka MH, Novotny PJ, et al. Association of perceived medical errors with resident distress and empathy: a prospective longitudinal study. JAMA 2006;296:1071-1078. 5)Shanafelt TD, Bradley KA, Wipf JE, et al. Burnout and
self-reported patient care in an internal medicine residency program. Ann Intern Med 2002;136:358-367.
6)Vahey DC, Aiken LH, Sloane DM, et al. Nurse burnout and patient satisfaction. Med Care 2004;42:1157-1166.
7)Panagioti M, Geraghty K, Johnson J, et al. Association between physician burnout and patient safety, professionalism, and patient satisfaction: a systemetic review and meta-analysis. JAMA Intern Med 2018;178:1317-1330.
8)饗場郁子.脳神経内科医の燃え尽き症候群を防ぐための対策 と提言 女性医師における燃え尽き症候群(アンケート解析 と提言).臨床神経 2019;59:S87. 9)小川 崇,横山和正,服部信孝.脳神経内科医の燃え尽き症 候群を防ぐための対策と提言 大学医師における燃え尽き症 候群(アンケート解析と提言).臨床神経 2019;59:S87. 10)大学の脳神経内科医の半数が「燃え尽き症候群」?「朝日新
聞」[Internet].2019 May 23. [cited 2020 Jun 23]. Available from: https://www.asahi.com/articles/ASM5P3V8BM5PULBJ003.html. Japanese.
11)Busis NA, Shanafelt TD, Keran CM, et al. Burnout, career satisfaction, and well-being among US neurologists in 2016. Neurology 2017;88:797-808.
12)Zhou X, Pu J, Zhong X, et al. Burnout, psychological morbidity, job stress, and job satisfaction in Chinese neurologists. Neurology 2017;88:1727-1735. 13)田尾雅夫.ヒューマン・サービスにおけるバーンアウトの理 論と測定.京都府立大學學術報告 人文 1987;39:99-112. 14)久保真人.サービス業従事者における日本版バーンアウト尺 度の因子的,構成概念妥当性.心理学研究 2014;85:364-372. 15)久保真人.日本版バーンアウト尺度の因子的,構造概念妥当 性の検証.労働科学 2007;83:2:39-53. 16)井川純一,中西大輔.日本版バーンアウト尺度と MBI-HSS の異同に関する研究.心理学研究 2019;90:484-492. 17)金沢医科大学.倫理審査が必要ない研究[Internet].[cited 2020 Jan 5]. Available from: http://www.kanazawa-med.ac.jp/ ~tiken/committee/hos/notreview-research.pdf. Japanese. 18)DeChant PF, Acs A, Rhee KB, et al. Effect of
organization-directed workplace interventions on physician burnout: a systematic review. Mayo Clin Proc Innov Qual Outcomes 2019;3:384-408.
19)Morrow G, Burford B, Carter M, et al. Have restricted working hours reduced junior doctors’ experience of fatigue? A focus group and telephone interview study. BMJ Open 2014;4: e004222.
20)Kroth PJ, Morioka-Douglas N, Veres S, et al. Association of electronic health record design and use factors with clinician stress and burnout. JAMA Netw Open 2019;2:e199609. 21)Galaiya R, Kinross J, Arulampalam T. Factors associated with
burnout syndrome in surgeons: a systematic review. Ann R Coll Surg Engl 2020;102:401-407.
22)Copur MS. Burnout in Oncology. Oncology 2019;33:687522. 23)Gidwani R, Nguyen C, Kofoed A, et al. Impact of scribes on
physician satisfaction, patient satisfaction, and charting efficiency: a randomized controlled trial. Ann Fam Med 2017; 15:427-433.
24)Shanafelt TD, West CP, Sloan JA, et al. Career fit and burnout among academic faculty. Arch Intern Med 2009;169:990-995.
Abstract
Current and future strategies for burnout in Japanese neurologists
Takayoshi Shimohata, M.D., Ph.D.
1), Makoto Kubo, Ph.D., Ph.D. (Psychology)
2), Ikuko Aiba, M.D., Ph.D.
3),
Nobutaka Hattori, M.D., Ph.D.
4), Kazuto Yoshida, M.D., Ph.D.
5), Yoshiko Unno, M.D., Ph.D.
6),
Kazumasa Yokoyama, M.D.
4), Takashi Ogawa, M.D.
4), Yumiko Kaseda, M.D., Ph.D.
7),
Ryoko Koike, M.D., Ph.D.
8), Yuko Shimizu, M.D., Ph.D.
9), Yoshio Tsuboi, M.D., Ph.D.
10),
Manabu Doyu, M.D., Ph.D.
11), Sonoko Misawa, M.D., Ph.D.
12), Takafumi Miyachi, M.D., Ph.D.
13),
Tatsushi Toda, M.D., Ph.D.
14), Atsushi Takeda, M.D., Ph.D.
15)and
Committee for Career Development Promotion, Japanese Society of Neurology
1) Department of Neurology, Gifu University Graduate School of Medicine 2) Faculty of Policy Studies, Doshisha University
3) Department of Neurology, National Hospital Organization Higashinagoya National Hospital 4) Department of Neurology, Juntendo University School of Medicine
5) Department of Neurology, Japanese Red Cross Society Asahikawa Hospital 6) Department of Stroke and Cerebrovascular Medicine, Kyorin University School of Medicine
7) Department of Neurology, Hiroshima City Rehabilitation Hospital
8) Department of Neurology, National Hospital Organization Nishiniigata Chuo Hospital 9) Department of Neurology, Tokyo Women’s Medical University School of Medicine
10) Department of Neurology, Fukuoka University
11) Department of Neurology, Aichi Medical University School of Medicine 12) Department of Neurology, Chiba University Graduate School of Medicine 13) Department of Neurology, National Hospital Organization Yanai Medical Center 14) Department of Neurology, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo 15) Department of Neurology, National Hospital Organization Sendai Nishitaga Hospital