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はじめに
本報告書は令和2年度滋賀大学データサイエンス学部社会調査実践演習Ⅰ・Ⅱで行った 分析結果をまとめたものである。分析には、ミールキット配送会社 X からの受託研究で行 った「食とライフスタイルに関する調査」を用いている。なお、調査を実施した会社名と 商品名については、本報告書では適宜匿名化をしている 。 本報告書には9編の論文が収められている。まず第1章に調査の概要について示した。 続く第2章から第10章は学生たちの各論文であり、最後に資料として調査票を付してい る。 第2章の饗庭論文は、「子どもに料理をさせたい」と考える保護者にどのような特徴があ るのか分析をしている 。主な結果として、働き方や子ども時代の料理経験は影響がなかっ たが、「家族と一緒に食事をとることを重視する 」という食への態度をもっている人ほど、 子どもに料理をさせたいと考えているということが明らかとなった。 第3章の秋山論文は、会社 X の商品を利用している理由として「カロリーコントロール」 「栄養バランス」「塩分を控えた食生活」を選択する人と家族構成の関連性について、主に 高齢者の有無に着目して分析をしている。主な結果として、高齢者がいる世帯ではカロリ ーコントロールに気を使っているが、塩分や栄養バランスについては 関連がないというこ とが明らかとなった。 第4章の釼持論文は、メニュー選択と食生活で重視することとの関連性に関する分析を している。食生活で重視することは 11 項目あるが、「夕食におかずを3品以上用意するこ と」に着目すると、そのような意識を持っている人は「 商品 A」を利用しにくいが、「商品 B」や「商品 C」を利用しやすいという特徴がみられた。また、食生活で重視することを因 子分析をした結果、利用者の態度は「エシカル志向」「栄養バランス志向」に分解できるこ とも明らかとなった。 第5章の幸田論文は、利用者のロイヤルティの規定要因について、ロイヤルティの指標 を「サービスをほかの人にも勧めるかどうか」とし、サービス利用 満足度の影響に着目し て分析をしている。主な結果として、「商品のおいしさ」「買いに行く手間が省ける宅配サ ービス」「栄養バランス」に満足している人ほどロイヤリティが高いということを明らかに している。さらに、満足度を因子分析によって分解したところ、満足度の軸は「食事提供 における価値」「ユーザビリティ」「宅配における価値」の3つに分解でき、「食事提供にお ける価値」と「宅配における価値」がロイヤルティ向上に影響している可能性を示唆して いる。 第6章の小嶋論文は、注文アプリを利用する理由や利用しない理由に着目して計量テキ スト分析を行ったその結果、年代によって アプリを使用する人の割合とアプリを利用しな い理由がそれぞれ異なることが明らかとなった 。 第7章の小林論文は、サービスの利用頻度と夫婦の働き方の関係について分析をしてい る。主な結果として、 夫と妻ともに正規雇用で働いているほうが、妻が専業主婦であると2 きと比較すると、サービスを利用する人が多い傾向にあることが明らかとなった。 第8章の高峰論文は、承認欲求とメニュー選択の関係について分析をしている 。主な結 果として、承認欲求が高い人は「 商品 A」や「商品 D」を選ぶ傾向があるが、「商品 B」や 「商品 C」とは関連がないことが明らかとなった。 第9章の丸石論文は、子育て世帯向け商品と末子の年齢との関係を分析している 。主な 結果として、子どもがいない世帯や子どもが高校生より上の世帯と比べて、未就学の子ど もがいると「商品 A」を選択しやすくなるが、「 商品 B」や「商品 C」を選択しにくくなる ことが明らかとなった。 第10章の柳瀬論文は、会社 X に加えて会社 X 以外の配食サービスを利用する人の特徴 について、特に会社 X の満足度に焦点をあてて分析している 。主な結果として、「商品の新 鮮さ」に満足している人はほかのサービスも利用しやすくなるが「置き配サービス」や「献 立の栄養バランス」に満足している人は他のサービスを利用しにくくなることが明らかと なった。 以上の報告の中には、分析方法や結論について、さらなるブラッシュアップが必要なも のも含まれているため、実際の経営に応用するにはさらに検討が必要であることには注意 されたい。この分析を軸にして、さらに経営戦略への応用を検討することが期待される。 この報告書をもって、受講生は質問票の検討、実査、データクリーニング、データの分 析、そして報告書の作成までのすべての行程を一通り経験し、社会調査(特に郵送調査) の基礎的なトレーニングを受けたことになる。今後、さらなる社会調査の経験を積み、社 会調査士としてその能力を社会に還元してもらいたいと願っている。 データサイエンス学部 准教授 伊達平和