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<シンポジウム11―3>プリオン病の最新トピックスプリオン病の臨床と遺伝子異常

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49:943

<シンポジウム 11―3>プリオン病の最新トピックス

プリオン病の臨床と遺伝子異常

志賀 裕正

(臨床神経,49:943―945, 2009)

Key words:Prion diseases,PRNP,Clinical features,Dual phenotypes

はじめに プ リ オ ン 病 は 発 症 原 因 に よ り 原 因 不 明 の 孤 発 性 Creutzfeldt-Jakob 病(CJD),プリオン蛋白遺伝子(PRNP)変 異により発症する遺伝性プリオン病,感染ルートが特定され ている感染性プリオン病に分類される.遺伝性プリオン病は 全プリオン病の 10∼15% をしめている.遺伝性プリオン病の 臨床症状は原因遺伝子により規定され,急速進行性の認知機 能障害,全身性ミオクローヌス,脳波での周期性同期性放電 (PSD)といった所見を呈さないばあいもまれではない.これ まで Fig. 1 に示すような PRNP 変異が知られている. 常染色体優勢遺伝形式をとると考えられているが家族内発 症を示さない症例もまれではなく(日本の遺伝性プリオン病 症例では家族内発症を示すのはむしろ少数派),浸透率が低い ためと考えられている.浸透率以外に他の要因が発症に関連 する可能性もあり,家族内発症例が少ない理由は今後解明さ れなければならない課題である. 日本の遺伝性プリオン病 日本では 1999 年よりプリオン病サーベイランスを実施し ている.2009 年 2 月までで 200 例の遺伝性プリオン病が確認 されている.その内訳は 40% が PRNP codon 180 に点変異を 有する CJD(V180I CJD),以下 19.0% が P102L Gerstmann-Sträussler-Scheinker 病(GSS),17.0% が E200K CJD,16.0% が M232R CJD である.欧州での 455 例の集計では 38.5% が E200K CJD,15.2% が V210I CJD,14.9% が D178N 家族性致 死性不眠症(FFI),5.3% が P102L GSS となっており1)日本と は明らかにことなる.D178N FFI は日本では 3 例が確認され ているのみである(Fig. 2). 東北地区では V180I CJD 15 例,M232R CJD 5 例が確認さ れているが,P102L GSS は確認されておらず,E200K CJD も 1 家系 2 例が確認されているのみである.家族性プリオン 病の分布には地域性があると思われる. V180I CJD2) 日本では遺伝性 CJD の 40% を占めもっとも頻度が高いが 欧米では数例報告されているのみである.認知症または高次 脳機能障害で発症し進行は比較的緩徐で無動性無言にいたる まで数年かかるばあいもある.病初期には小脳失調や視覚障 害は呈さず,経過中ミオクローヌスも非典型的で,脳波で PSD も出現しない.大部分は孤発性の発症様式であり家族内 発症例は 2 例報告されているのみである.典型的な孤発性 CJD のイメージとはかけ離れており,診断にはプリオン遺伝 子診断が必須である.MRI が特徴的で,大脳皮質が浮腫状に 腫脹し,拡散強調 MRI では広範囲の大脳皮質が臨床症状と不 釣 合 い に 華 々 し い 高 信 号 を 呈 す る こ と,T2 強 調 MRI や FLAIR で大脳皮質が浮腫状に高信号を呈すること,初期には 後頭葉内側面に異常をみとめないことが診断の手がかりにな る. 最近では孤発性 CJD 様に急速に進行し,脳波で PSD が確 認されている症例も報告されている. P102L GSS3) 下肢失調による歩行障害または下肢のしびれ,感覚障害で 発症し,その後認知症症状が加わり数年の経過で無動性無言 となる.下肢深部腱反射は消失し,非小脳性構音障害をみとめ る.病理学的に捉えられている腰髄後角病変4)に起因する症状 が主体をなす.初期には MRI は正常で,拡散強調 MRI で高信 号が出現するのは末期である.早期から大脳皮質(小脳は保た れる)の脳血流低下をみとめる.脳波で PSD をみとめないこ とが多い.病理学的には小脳,大脳皮質,大脳基底核に空胞変 性と多数の amyloid Kuru-plaque をみとめることが特徴であ る.脊髄小脳路,皮質脊髄路にも変性をみとめる5) 一般には緩徐進行性の経過を辿るが,孤発性 CJD 様に急速 に進行する症例も知られている.真に急速に進行する亜型で あるか診断時期による問題かは今後の症例の蓄積が必要であ る. あおば脳神経外科〔〒980―0021 仙台市青葉区中央 2 丁目 11―19〕 (受付日:2009 年 5 月 22 日)

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臨床神経学 49巻11号(2009:11) 49:944 Fig. 1 遺伝性プリオン病の原因遺伝子変異 51 Octapeptide repeats Deletion/Insertionn −16, +8, +16, +24, +32, +40, +48, +56, +64, +72, +96, +120, +144, +168, +192 P102L P105T P105L G131V A117V G114V S132I A133V I138M G142Stop Y145Stop R148H Y163Stop D167G T188K T188R T188A E196K F198S E200K D202N V203I R208H V210I E211Q Q212P Q217R M232T M232R T183A V180I D178N N171S H187R N C 91

欧州

日本

N=455 E200K V210I D178N-FFI P102L-GSS D178N-CJD A117V A117V 120 insertion V180I P102L-GSS E200K M232R P105L-GSS D178N-FFI V203I その他 N=200

Kovacs GG, et al. Hum Genet 2005; 118: 166-174. ´ 2.6% 38.5% 15.2% 40.0% 19.0% 17.0% 16.0% 2.0% 1.5%1.0%3.5% 14.1% 5.3% 18.2% 18.2% 18.2% 2.6% 3.5% Fig. 2 遺伝性プリオン病の内訳 E200K CJD もっとも一般的な遺伝性 CJD である.臨床症状は古典的孤 発性 CJD と酷似し,急速に進行する認知症,全身性ミオク ローヌスを呈し発症後数カ月で無動性無言に陥る.脳波では 特徴的な PSD が出現する.家族性に発症するばあいが多いが 孤発性に発症するばあいもある. 難治性の不眠を呈し病理学的に視床病変が強い,臨床的に も病理学的にも FFI に類似した亜型が存在する6) M232R CJD7) 日本でのみ報告されているタイプ.急速に認知障害が進行

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プリオン病の臨床と遺伝子異常 49:945 し,全身性ミオクローヌスが出現し 3∼4 カ月で無動性無言に 陥り,脳波で PSD が出現する典型的孤発性 CJD と酷似する と考えられていたが,最近の症例の蓄積により進行が比較的 緩徐でミオクローヌスも非典型的で,脳波でも PSD が出現し ない,MM2 皮質型孤発性 CJD に似た臨床型の二つのタイプ があることがわかってきた.両者の codon129 の遺伝子多型 は MM で同一である.診断には拡散強調 MRI が有用である. これまで家族内発症をきたした症例は報告されていない.遺 伝子検査なしには孤発性 CJD と区別は困難である. 終わりに 他の遺伝性疾患とことなり遺伝性プリオン病といえども感 染性を有していることは他のプリオン病と変わりがない.診 療にあったてはプリオン病感染予防ガイドラインを参照して いただきたい.遺伝性プリオン病診断には PRNP 検査が必須 である.家族内発症がなくてもプリオン病のうたがいがある 症例では積極的に PRNP 検査を考慮すべきである. 謝辞:今回の発表にあたり資料を提出していただきました鹿児 島大学神経内科高嶋博先生,金沢医大(現順天堂大)神経内科斉木 三鈴先生に深謝いたします.

1)Kovács GG, Puopolo M, Ladogana A, et al: Genetic prion disease: the EUROCJD experience. Hum Genet 2005; 118: 166―174

2)Jin K, Shiga Y, Shibuya S, et al: Clinical features of Creutzfeldt-Jakob disease with V180I mutation. Neurol-ogy 2004; 62: 502―505

3)Arata H, Takashima H, Hirano R, et al: Early clinical signs and imaging findings in Gerstmann-Sträussler-Scheinker syndrome (Pro102Leu). Neurology 2006; 66: 1672―1678 4)Yamada M, Tomimitsu H, Yokota T, et al: Involvement of

the spinal posterior horn in Gerstmann-Sträussler-Scheinker disease (PrP P102L). Neurology 1999; 52: 260― 265

5)Jubelt B: Prion diseases. In Merrutt s Neurology, ed by Rowland LP, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA, 2005, pp 264―270

6)Chapman J, Arlazoroff A, Goldfarb LG, et al: Fatal insom-nia in a case of familial Creutzfeldt-Jakob disease with the codon 200Lysmutation. Neurology 1996; 46: 758―761

7)Shiga Y, Satoh K, Kitamoto T, et al: Two different clinical phenotypes of Creutzfeldt-Jakob disease with a M232R substitution. J Neurol 2007; 254: 1509―1517

参照

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