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東南アジア低湿地の土壌  ―― その1 マングローブ下の堆積物に由来する土壌 ――

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(1)

東 南 ア ジ ア研 究 20巻3号 1982年12月

東南 ア ジア低湿地 の土壌

その 1.マ ング ローブ下 の堆積 物 に由来 す る土壌

剛*

SoilsofSwampy CoastalAreasin SoutheastAsia

- Part1. SoilsDerived from M angrove M l王d

-KazutakeKYUMA*

The coastalareas of the Southeast Asian troplCSare Vegetated extensively by mangrove forest. Inland thereareareaswhich were for -merlyundermangrove,beforetheywerecutoff

from the marine or brackish environments. These areas together represent an important fractionofthepotentiallycultivablelarldforfood productioninthefleュrfuture. Thispaperlooks atthesoilsderivedfrom thesedimentsdeposited undermangrove,toevaluate theirpotentialfor cultivation.

Mangrovemudcontainsoxidizablesulfurc om-pounds,mainly in the form of pyrlte,Which uponexposureto theairisoxidized to sulfuric

じ め

1

9

6

7

年 に 出版 され た 『世 界 の 食 糧 問題〔ー] [W hite House

1

9

6

7]

に よ れ ば, 当 時熱 帯 圏 に は約

1

6

5

千 万 - クタ ール の潜 在 的可 耕 地 が 存 在 したが , そ の うち の約

1

3倍 ヘ ク タ ー ル はア フ リカ とア メ リカ大 陸 に あ り, 熱 帯 ア ジア の シ ェア はわ ず か に3億 - ク タ ール 強 で

* 京 都 大 学 農 学 部 ; FacultyofAgriculture, KyotoUniverslty,Kitashirakawa.Sakyo-ku, Kyoto

6

0

6

,Japan

acid,developingastrong acidity. Theresultant soiliscalledacidsulfatesoil. Thispaperdeals firstwith the processes of pyrlteaccumulation undermangroveanditsoxidation upon recl ama-tion. Itthen discussesthe classification,pr op-ertiesand managementofacid sulfatesoilson thebasisofrecentresearchresults.

Itisconcludedthatthefわrmermangroveland isprobablyreclaimableonlywithdi仔icultyand a highinvestment. ltmay,however,be possible to improve soilconditionstosome extentby simple meanspracticable by the smallfarmer,

suchaslocalized phosphateapplication.

あ った。 さ らに ま た, この潜 在 的可 耕 地 の う ち約75%はす で に耕 作 され て お り, 他 大 陸 に お け る既 耕 地 率 が

25

% 以 下 で あ るの と際立 っ た対 照 を み せ て い た。 そ の後

1

5

年 間 の変 化 を 数 字 と して 示 す こ と はで きな い が , わ れ わ れ の 見 聞 の限 りで は, 耕 地 の外 延 的 拡 大 は極 端 な まで に進 め られ , 南 ア ジアや 東 南 ア ジア 大 陸 部 で は, 潜 在 的可 耕 地 はあ らか た耕 地 化 され つ く した の で はな いか と思 わ れ る。 わ ず か に耕 地 化 を ま ぬ が れ て , い ま も残 って い る土 地 面 積 の主 要 な もの は, 東 南 ア ジア の 島峡 部 , な か ん ず くそ の

(2)

東 南 ア ジ ア研 究 20巻3号 低 湿地帯 に分布 す る と考 え て よ い。 そ して東 南 ア ジア諸 国政府 は,現 実 に この低 湿 地 開拓 にすで に と りかか って い るので あ る。 われ われ は, この よ うな背景 の下 に,東 南 ア ジア低 湿 地 の土 壌 につ いて, そ の特 性 や 開 発 に際 して の問題 点 な どを, 既存 の資料 によ りなが ら整理 す る こ とを意 図 した。 こ こで低 湿 地 とよんで い るの は,以上 の文脈 か ら明 ら か な よ うに,低 湿 な条件下 に あ る農 業 的未 利 用 地 を指 し, 大部 分 はマ ング ローブや湿 地林 (swampforest)におおわれ た状態 にあ る。 こ の うちマ ング ローブ下 の堆積物 は, 特異 な性 格 を もつ 酸性 硫 酸塩土 壌 (acid sulfatesoils) を生 成 す る し, 湿 地林下 に は有機 質 の泥炭 土 壌 (peatsoils)が発達 す る。 これ らはいず れ ち, 農業 的利 用 に際 して特 別 な考 慮 や処 置 を 必 要 とす る。 本 稿 で は, まず マ ング ローブ下 の堆積物 に 由来 す る土壌 を対 象 と して,そ の生 成 ,分類 , 性 質, 改良法 な どにつ いて述 べ る。 東 南 ア ジ ア低 湿 地 の 中で, マ ング ローブの 占め る面 積 は,Christensen[1979]の表 1のデ ータによ れ ば約500万 - クタール と見積 も られ て お り, その農 地 と して の潜在 力 は小 さ くな い。 また これ以 外 に も,メ コ ンデ ル タの葦 の原 (Plain ofReeds)のよ うに, かつ て マ ング ロ-ブの 下 にあ った低 湿 地 が, そ の堆積 物 の特異 な性 格 のた め に,現 在 で は カヤ ツ リグサ科 の草本 や特 殊 な木 本

(

Me

l

al

e

u

c

al

e

u

c

ad

e

ndr

o

n

な ど) の生 育 す る荒 蕪 地 とな って と り残 され て い る 表1東南アジアにおけるマングローブの面積 Burma Thailand Cambodia Malaysla Indonesia PhilipplneS Vietnam 500,000ha 317,700 ? 688,459 3,000,0007 251,577 300,000? Christensen【1979]による。 面 積 も少 な くな く, メ コ ンデ ル タだ けで も一 部 の既 開発 地 を含 めて

26

0

万 - クタ ール にの ぼ る といわれ る(VoTongXuan博 士 < ヴ ェ トナ ム ・カ ン トー大学 >か らの 聞書 き)。 こ の よ うに, マ ング ローブ下 の堆積物 に由来 す る土壌 の もつ 潜在 的農 地 と して の重 要 性 は, 東 南 ア ジア にお ける現 在 の土 地 資源 状 況 か ら み て, か な り大 きい こ とを知 って お く必 要 が あ る。 II マ ング ロー ブ下 の 堆積 過程 DiemontandWijngaarden[1974]は二つ の型 の海岸 を 区別 し, それ ぞれ にお け る堆積 過 程 の差 異 を認 めた。 一 つ はopenaccreting coast型 で あ り, もう一つ は estuary 型 で あ る。 前 者 は海 成 堆積物 が直線 的 な海岸 の前 線 に,妨害 を うける こ とな く沈積 し, 急 速 に海 岸線 が前 進 す る型 を指 して お り, ここで は前 進 型海岸 とよんで お く。 後 者 は入 り組 ん だ河 口や複 雑 に湾入 した海岸 で特 徴 づ け られ,強 く潮 汐 の 影 響 を うける 樹 枝状 の タイダル ク リー クによ って堆積 が起 こるよ うな型 を指 し て お り, ここで は河 口型海岸 とよぶ こ とにす る。 これ ら両型 の海岸 にお け るマ ング ローブの 成立 と堆積過 程 の関連 を考 え る上 で,潮位 の 変動 の幅が重 要 な意 味を もつ 。 表 2に,各種 潮 位 の呼称 と,半 島マ レー シア の西海岸 にお け る潮位 高 の実測値 を例 示 す る。 この表 で a % とあ るの は,各種 潮位 時 に冠 水 す る頻 度 を, 全満潮 回数 の100分率 と して示 した もので, た とえ ば大潮 の満 潮位

MHWS

は ,全 満潮 回 数 の

2

0%

程度 の頻 度 で起 こるのに対 し,小潮 の満潮 位

MHWN

9

0%

の頻 度 で起 こる こ とが わ か る。 前 進 型 のス ム ーズ な海岸 線 で は, その前面 に ,時 と して数 km に も及 ぶ泥質 の浅 い海 が 広 が るが, ここに

MHWN

まで堆積 が進 む

(3)

久凋 ‥東南 ア ジア低 湿地 の土壌 (その1)

2

潮位の呼称 と各潮位の満潮時冠水頻度(a),な らびに半島マ レーシアのマ ングローブ 地帯 におけ

る各潮位の実測高 (海図基準面か らの高 さ,m)

Level ao//o

MetersaboveAdmiraltyDatum

LaPnuglE:Lwi Merbok Matang seTaunaga., Malacca Highesthighwater HHW

Meanhighwatersprlng MHWS

0

0「

Meanhighwater MHW 60

Meanhighwaterneap MHWN 90

Meansealevel MSL 99

Meanlow waterneap MLWN 1

0

0

Meanlowwatersprlng MLWS 100 2 0 5 1 8 4 エU 3 2 2 2 L 1 0

DiemontandWijngaardenl1974]によるO

0 7 3 q ノ ふじ て」 5 3 2 2 1 1 L 0 4 」 8 5 2 9 3 2 2 1 1 1 0 0 1 5 0ノ tJ AU 9 ′0 5 4 3 3 7 ︼ -・ 0 3 1 史U 5 2 0ノ つJ 2 2 1 L I . 0 0

1. Low partwithlitt一eslope 2. Partwithrelativelysteepslope 3. Highpartwithlittleslope

庭園 oxidizedtopsoil,brownmottles E≡ヨ Partlyoxidizedtopsoi一,greenmottles

EZZZ2) Reducedsubsoil,greensediment - Black(FeS)coloredsediment

qfT

Avl'cenniaalba Avicenniaintermedia Bruguleracylindrica

図 1 KualaSelangor付近のマ ングローブ の模式的断面 den[1974]によ る) と, マ ング ロ ー ブが 侵 入 して くる(〕一 度 マ ン グ ロ ー ブが 成 立 す る と, 堆 積 速 度 が 速 くな り, や が て

MHWS

まで 堆 積 が 進 む 。 しか し,

MHWS

に達 す る と, 冠 水 の機 会 が 滅ず るの で, 堆 積 速 度 は低 下 す る。 図1は半 島 マ レー

シア西 海 岸 の Kuala Selangor付近 の マ ング ロ ーブ の模 式 断面 である。 急 速 な泥 土 の堆 積

… HHW

- MHWS

- MHWN

_ MSL

(DiemontandWijngaar -が起 こ るマ ング ロ ー ブ の前 縁 で は, 傾 斜 が比 較 的 急 に な って い るの が認 め られ る。 つ ま り, この前 進 型 海 岸 で は, マ ング ロ ー ブ が 存 在 して 大 量 の 有 機 物 を供 給 す る と同 時 に, 頻 繁 に 冠 水 して還 元 的 な 環 境 が 維 持 され る 期 間 は短 く, ま た 海 岸 線 沿 い にマ ン グ ロ- ブ が成 立 す る帯 域 の 幅 も比 較 的せ ま くな る こ と が わ か る。 この よ うに急 速 な堆 積 に よ って 海 岸 線 が 前 進 して ゆ くた め の前 提 条 件 は, 河 川 あ るい は海 流 に よ る土 砂 供 給 量 の 大 き さで あ る。 これ に対 し, 河 口型 の 海 岸 は 一 般 に 泥 土 の供 給 が 少 な い 条 件 下 に 成 立 す る もの で あ り, 堆 積 は緩 慢 に しか進 行 しな い。 こ こで も

MHWN

まで 堆 積 が進 ん で は じ め て マ ン グ

(4)

東南 ア ジア研究

2

0

巻3号 ローブが 定着 す るので あ るが, それか らあ と の堆積 も泥 土 の供 給 に制約 され て急速 に は進 まな い。 ただ し, タイダル ク リー クは潮 汐 に よ るバ ックア ップを うけ るた め,河 口付近 で も自然堤 防 で の堆積 が進 み, この部 分 だ けが

MHWS

よ り高 くな るが,後 背 湿地 で はほ と ん ど堆積 が 起 こ らず, 永 く かつ広 く マ ング ローブが安 定 に維 持 され る こ とにな る。 そ し て, ところ によ って は,後 背 湿 地 に泥 炭 質 の 有機 物 が積 もる こ とが あ る。 また, この よ う に有 機 物 の供 給 が多 い上 , 満潮 時 の冠水 が長 期 にわ た って繰 り返 され るた め に,還 元 的 な 環境 が永 く維 持 され,以下 に述 べ るよ うに, 堆積 物 中 に大 量 の硫化物 の蓄積 が起 こる。

堆積 物 中 にお け る パ イ ライ トの 生成 と蓄積 一般 に, 水 成堆積 物 中で の硫 化 物 の生 成 ・ 蓄 積 は,次 の条 件 がみ た されれ ば起 こる。

i

.

海水 な い し汽 水 によ る

S

O三

の供 給 ii. 有 機 物 の供 給 マ ング ローブが海水 な い し汽 水 環境下 で成立 す る こ とを考 えれ ば,上 の

i

,i

i

の条 件 は, マ ング ローブ下 の堆積 物 に理 想 的 に具備 され て い る といえ る。 海 水 中に は約

2,

65

0ppm

S

O三

が 存 在 す る。 つ ま り海 水 IB 中 に は

2.

65g

の硫 酸 根 が あ る。 この

S

O三

は嫌気 的条 件下 で は次 式 に従 って 還 元 され ,

S

の酸化 数 は (+

VI

)

か ら (

-Ⅰ

)

に減 ず る。

SO孟-+8H++8e

-

S(-l

l

)+4H2

0

(

1

)

こ こで

S(

-Ⅰ

)

と した もの は

H2

S,HS,S2

の三 つ の形 を と り, それ らの相 対 的 な存 在 割 合 は媒質 の

pH

によ って変 る。 (1)式 の反応 は,有 機 物 の酸化 分解 の反 応 と共役 して,

2CH2

0+So去

--- H2

S+2HC

O

言 (

2)

の ど と く進行 す る。 この硫 酸還 元反応 は

De

s

u

l

f

o

vi

br

i

o

De

-s

ul

f

ot

omac

u

l

um

な どのヘ テロ トロ- フ によ っ て メデ ィエ イ トされ るが, これ らの硫 酸 還 元 菌 は絶対 的嫌気性 菌 に属 し,無 酸 素条 件 の下 で な けれ ば,硫 酸 還 元 は進 行 しな い。 実 際 に 硫 酸還 元 の起 こる条 件 は

,pH

につ いて は硫 酸還 元菌 の耐性 によ って支 配 され,下 限 はお よそ

pH

5 で あ り, 上 限 は 9付近 で あ る。 また酸化 還元 電位 (Eh)につ いて は,SO三の 不 安 定化 す る電位 として,

Pat

r

i

c

kandRe

ddy

[

1

978

]は

-1

20- -1

80mV

を与 えて い る。 こ う して生 成 され た S(-

)

は,硫 酸還 元 よ りも高 いEh(

+1

8

0- +1

5

0)

です で に生 成 されて い る

Fe

2十 と反 応 して,常 温 で は準 安 定 な黒 色 の硫 化 鉄

(

FeS)

を沈 殿 す る。

Fe2

++S2

-

-

FeS

(

3

)

この

FeS

はX 線 的 に無 定形 で あ るか ,正 方 晶系 の

FeS

で あ るマ ッキ ナ ワイ ト

(

macki

-nawi

t

e)

の 不 鮮 明 な 回 折 線 を 与 え る

[

van

Br

eeme

n 1

976

]O こ の 後 者 の 溶 解 度 積 は

1

0-

17.55

[

Ber

ner 1

96

7

], 無 定形

FeS

のそれ

1

0

11619で あ る。 溶 解 した S(-

)

の一 部 は, 酸 素 や

Fe

3+ イオ ンの よ うな酸化 剤 の存 在 で は, 斜 方 晶系 の 元素状 硫 黄

S(

0)

に 酸化 さ れ る。 ま た,

S(

0)

S

O三

が酸 性条 件下 で 還 元 され る際 の 中間産 物 と して も生 成 され,一 旦生 成 され る と比較 的安 定 で あ るた め,海 底 堆積物 中 に は元素状 硫 黄 が か な り普 遍 的 に存 在す る とさ れ て い る

[

St

umm and Mor

gan 1

97

0]。

こ の元 素状 硫 黄 は

,FeS

と反 応 して直接 パ イ ラ イ ト

(

pyr

i

t

e)

を生 成 す るか,

FeS+S(

0)

-

FeS2

(

4)

あ るい は溶 存 す る S(-

)

と反 応 して多硫化 物 ア ニ オ ン

(

S乙

-

)

を作 り,

その上で FeS

反 応 し,グ リー ジ ャイ ト (等 軸 晶系 の

Fe。

S

.) を経 て, パ イ ライ トを生 成 す る。

(5)

久馬 :東南 ア ジア低 湿地 の土壌 (その1)

Fe

3

S

4-

FeS2+2FeS

(

5)

こ う して生 成 す るパ イ ライ トの溶 解 度 積 は,

S(

0)

の存 在下 で は

1

0-

27・6の オ ー ダ ー とな り,

FeS

に比 し

1

0

オ ー ダ ー程 度 低 い。 この こ と が

FeS-FeS

2 へ の変 化 の動 因 とな って い る

[

vanBr

e

emen 1

976

]

た だ し, これ らのパ イ ライ ト生 成機 構 の 中 把 は

S(

0)

また は

Sま

の生 成 を前 提 と して 含 んで お り, 元素 状 硫 黄 の生 成 を促 進 す るよ う な条 件 が , パ イ ライ トの生 成 を も促 進 す る。 先 に 述 べ た 前 進 型 海 岸 と 河 口型海 岸 に お け るパ イ ライ トの 蓄 積 を 考 えて み る と, 前 者 よ り も後 者 で蓄 積 量 が高 い のか一 般 で あ る。

Di

e

montandWi

j

ngaar

den[1

974]

の調 査例 で は, 前 者 で

0.

5

%以下 , 後 者 で 1

.

5%

以上 と 報 告 され て い る。 河 口型 海 岸 で は, す で に述 べ た よ うに, 堆 積 が急速 に進 ま な いた め に長 時 間 にわ た って還 元 的環 境 が維 持 され ,

FeS

を生 成 しつ づ け る とい う こ と と と もに, 複 雑 な海 岸 線 の た め潮 汐 による水 の擾 乱 が 激 し く, これ が溶 存 硫 化 物 の 限 定 的酸 化 を ひ き起 こ し て 元素 状 硫 黄 を生 成 し易 い こ と も, パ イ ライ トの 蓄積 に寄与 して い る と考 え られ る

[

van

Br

eeme

n 1

976

]

この よ うに 硫 酸 還 元 に よ って 生 成 され る

S(

-Ⅰ

)

は, 最 終 的 に はパ イ ライ ト

(

FeS

2) と して安 定 化 され , 堆積 物 中 に蓄 積 され る。 実 際,海 底 堆 積 物 につ い て, 還 元 型硫 黄 化 合 物 を分 別 定量 して み る と, パ イ ライ 1、態 硫 黄 が 全 体 の

95

%以 上 を 占め るのが 一 般 で あ り, そ の ほか に元 素状硫 黄 ,有 機 態 硫 黄 な どが存 在 す るが

,FeS

態 硫 黄 は きわ めて少 量 しか 存 在 しな い。 通 常 の硫 化 物 含 有 海 底 堆 積 物 の 中で は

,FeS

態 の硫 黄 は全硫 黄 の

0.

01

%以下 しか含 まれず , 黒 色 を 示 す 底 質 中で も

0.

6%

を 超 え る こ とは ほ とん どな い と され て い る

[

Ber

ner 1

971

]。パ イ ライ トの蓄 積 量 は乾 燥 堆 積 物 重 あた り

1- 4

%程 度 が普 通 で あ り, まれ に は

5%

以上 に も 達 す る

[

Moor

mann

and Pons 1

9

74

]

I

V

酸 性 硫 酸 塩 土 壌 の生成

a.

硫 化 物 含 有 堆 積 物 の酸 化 上 記 の過程 で パ イ ライ トを蓄 積 した堆 積物 が 陸化 し, 脱 水 ・熟 成過 程 に入 る と, 酸 素 の 存在 の下 で次 の よ うな諸 反 応 が起 こる。

FeS2+; 02+2肘

-

Feュ

++2S(

0)+H2

0

(

1

)

Fe2

-

02・H・

- F

e

3

+

I H20 (2)

2S(

0)+3

02+2f

i2

0

-

2SOi +4H+

(

3)

これ らの反 応 は, 純 化 学 的 に はい ず れ も緩 慢 に しか進 まな い。 特 に (2)式 の 反 応 の - I フ タ イ ム は

pH 3

で 1

,

000

日の オ ーダ ーで あ る

[

St

umm and Mor

gan 1

970

]。 しか し,

(

2)

式 の

Fe

2十

-Fe

3' の酸 化 反 応 も, (3)式

S(

0)

-SO

三 - の 酸 化 反 応 も, 微 生 物 に よ って メデ ィエ イ トされ る と, きわ めて速 や か に進 行 す る。 前 者 は鉄 バ クテ リア Thi

oba-cillusferrooxidansや Ferrobacillusferrooxl' -dansに よ り,後 者 は ThiobacillusthT'00Xidans

を は じめ とす る Thiobacl'lli に よ って メデ ィ エ イ トされ る。 この よ うに, 化 学 的酸 化 と微 生 物 的酸 化 の共働 の下 で パ イ ライ トの初 期 的 酸化 が進 む と, 生 成 す る硫 酸 に よ って媒 質 は 急 激 に酸性 化 され る。 か くて媒 質 の

pH

が 3以下 と もな る と, 土 壌 溶 液 中 に は

Fe

3+ イ オ ンが溶 存 し, 次 に は

Fe

3十を酸 化 剤 とす る パ イ ライ トの酸 化 が起 こる。

FeS2+2Fe

3十-

3Fe2

++2S(

0) (

4)

2S(

0)+1

2Fe

3

++

8H20 -

1

2Fe2

'+2SO呈-+1

6H' (

5)

(6)

東 南 ア ジア研究 20巻3号 この両式 を結合 す る と,

Fe

S2+1

4Fe

3

十十8

H2

0

-

1

5Fe2

'+2SO孟 +1

6H+ (

6)

がえ られ る。(6)式 の反 応 のハ ー フタイ ム は,

20-1,

000

分 のオ ーダ ーで あ り [l'bid.],パ イ ライ トの酸化 は きわ めて 速 や か で あ る。 ま た, ここで生 成 され た

Fe

2+ は, 鉄 バ クテ リ ア によ り再 び

Fe

3+ に酸化 され, さ らにパ イ ライ トの酸化 にあず か る。 生 成 され た酸 の溶脱 や,天 然 あ るい は人 為 によ る中和 が進 み ,媒質 のpH が> 3とな る と,

(

2)

式 の反 応 によ り生成 され た

Fe

3十は, 加 水分解 を うけて沈殿 し,

Fe

3'十

3

H2

0-

Fe(

OH)

3十3f

I

十(

7)

非 晶質 加水 酸化 鉄

(

br

own ge

l)の褐色 の斑 紋 や, 結 晶度 の 悪 い ゲ -サ イ ト

(

goe

t

hi

t

e

,

α-

Fe

OOH)

の黄樺色 の 斑紋 を 形 成 す る。 し か し,pH 4程 度 まで の 中度 の 酸 性条件下 で は

,Fe

3'が 部 分 的 加水 分解 を うけて 生 じた

Fe(

OH)

2'か ら,次 の反 応 によ り ジ ャローサ イ ト

(

j

a

r

os

i

t

e)

が生 成 す る。

3Fe(

OH)

言+2SO孟

l+K+

-

KFe3

(

SO4

)

2(

OH)

6 (

8)

ジ ャローサ イ トには K+ の 代 りに Na+や H。0+を含 む もの もあ るが, 酸性 硫 酸塩土 壌 中に 見 出 され る も のの 多 くは K+を 含有 す る。 ジ ャローサ イ トはよ くス トロー ・イ エ ロー とよばれ る淡 黄色 (典型 的 に は

2.

5

Y

6/

8-8

/

8)

を呈 し,糸板状 ,管状 ,膜状 な どの斑紋 と して土壌 中 に存在 す る。 この特徴 的 な色 の た め に, 酸性硫 酸塩 土壌 あ るい は

c

a

tc

l

ay

(下 記参 照) を 現 場 で識 別す るの に 役 立つ。 ジ ャローサ イ トは 媒質 の pH が > 4とな る と,加水 分解 を うけて ゲ -サ イ トを生 ず る。

KFe3

(

soヰ

)

2

(

OH)

6

-

3Fe

OOH+2SO三

一+K'+3H+ (

9)

以上 のよ うなパ イ ライ トの酸化過程 は, そ のま ま,硫化 物含 有 堆積物 の化 学 的熟 成過程 で あ り,酸性硫 酸塩土壌 の生 成過程 にほか な らな

い。

酸性 硫 酸塩土 壌 に特徴 的な ジ ャロー サ イ トの斑紋 を もつ粘土 質堆横物 を

ca

tc

l

ay

と もい うが, これ は オ ランダ語 の K

a

t

t

e

kl

e

i

か ら 来 て お り, もと もとは ジ ャローサ イ ト を含 む 堆積物 の色 と コン シス テ ンスが 猫 の 糞 に似 てい る ところか らの命 名 で あ る とい う

[

Andr

i

e

s

s

e 1

9

7

2

]。また ,酸 化 して

c

a

tcl

ay

を生ず るよ うな硫化 物含有 堆積物 の ことを,

mud cl

ay

と よ ぶ こ と が あ る

[

Moor

ma

nn

1

9

63

] 。 b. 酸化 生 成物 の行 方 パ イ ライ トの酸化 によ って生 成 す る酸 の総 量 は次式 で与 え られ る。

Fe

S

2

・誓 0

2

I

i

-

H2

0

-

Fe(

OH)

3+2SO

-+4H+

(1

0)

す なわ ち,

1

モル の パ イ ライ トあた り

4

当量 の酸 を生 成 す る。 この大量 の酸 のかな りの部 分 は彦透 によ り, あ るい は地表 -拡 散 の の ち 表面 水 とと もに失 われ る と思 われ るが,残 り は 土 壌 中の 塩 基性 物質 と 反 応 して 中和 され る。 最 も 有 効 に この酸 を 中和 す るの は, 堰 積物 中 に含有 され る生物 的, 非生物 的起 源 の

cac0

3 で あ り, タイ国 のバ ンコ ク平野 に は 石 灰 質 の硫 化物 含有 堆積物 の存 在 が知 られ て い る。 ここで は, 中和反 応 の結 果生 じた多量 の

CaS

O . が,石 膏 の微 細結 晶 の ネス トや, 長 さ数

c

m

に及 ぶ棒 状結 晶 と して土 壌 中に見 出 され る。 特 に, メ クロ ン川 や タチ ン川 の堆 積物 や河 川水 中 には

CaC

O 。 の含量 が高 く, バ ンコ ク平 野 西部 に石 膏含 有土 壌 の分布 が広 い。この よ うに,堆積 物 中の

CaC

O 3含量 が 十 分 高 いか,流 入 す る水 の アル カ リ度 が十分 高 い場 合 には,硫 化物 含有 堆積物 か ら生 成 し

(7)

久馬 :東南 アジア低湿地 の土壌 (その 1) た土 壌 で も強 い酸性 を示 さず , したが って典 型 的酸 性硫 酸塩土 壌 とはな らな い。 この よ う に,酸 性 で はあ るが ジ ャローサ イ トが 出現 せ ず , 非酸性 海 成 沖積 土 へ の移行 的 な段 階 にあ る土 壌 を,Pons[1973]はパ ラ酸性 硫酸 塩 土 壌 (paraacid sulfatesoils)とよんで い る。 CaCO 。 以 外 に も, 易 風化性 の一 次 鉱物 や 二 次 鉱物 は,硫 酸 と反 応 して破 壊 され,塩 基 含 有 量 の低 い,難 風化 性 の二 次 鉱物 に変化 す る と同時 に, 酸 を 中和 す る。 これ らの 中和 反 応 の 生 成物 の 中 に は, 単 純 な硫 酸塩 や 上 述 の ジ ャローサ イ トの ほか に, 水溶 性 の ナ トリウム明 はん (Na-alum,NaAl(So且),・12 H20), クマル ジ ャイ ト (tamarugite,NaAl (SO4)2・6H20), ピッカ リンジ ャイ ト(pick

-eringite,MgA12(SO.).・22H20),- ロ トリカ イ ト(halotrichite,FeA12(Soヰ)4・22H20),ロ ゼ ナ イ ト (rozenite,FeSO4・2H20)な どが あ り, 乾 季 に 地表 や掘 割 の 断面 に 析 出す る [van Breemen 1976]。 この よ うに,土 壌 鉱物 と反 応 して部 分的 に 中和 され る結 果 ,石 灰 質 の堆積物 に 由来す る 土 壌 や, 酸化 の初 期過 程 にあ る ご く未熟 な土 壌 を除 けば, 大部 分 の酸 性硫 酸塩 土 壌 の pH は3- 4の 範 囲 にあ る。van lireemen and Wielemaker[1974]はバ ンコク平 野 の土 壌 で, ジ ャローサ イ トを含 むB屑 の pH は,3. 6-3.8とせ まい範 囲 に収 れ んす る こ とを認 めた 。 これ は緩慢 な酸 生 成 がつづ く条 件下 で,無 定 形 の ケ イ酸 や, カオ リナ イ ト,Mg2'や A】3' で飽 和 したバ イデ ライ トな どの粘 土 鉱物 , 酸 化鉄 , ジ ャローサ イ ト,塩 基性 硫 酸 アル ミニ ウム (Al(OH)SO.)な どの鉱 物 か らな る多相 系 の 平衡 によ って 強 い緩衝作 用 が働 き,pH が安 定化 され る結 果 で あ る と して い る。 pH が

4

を超 え る とジ ャロ-サ イ トな どの塩 基性 硫 酸塩 の加水 分解 が起 こ り,pH を押 し下 げ る方 向 に働 くが, さ らに中和 が進 む と,最 後 に残 る少 量 の吸着憩 SO三一

Al(OH)SO4な

ど も湛 水,排 水 の繰 返 しの 中で, 徐 々 に脱 着 あ るい は加 水分解 され て排 水 中 に失 われ る。 か くて最 終 的 に は,土 壌 水 の無 機 酸性 が 0に な る ところまで pH は 上 昇 して 安 定化 す る と考 え られ る。 そ の条 件 は H十と HCO;が 等 濃度 にな る点 と して与 え られ, 次式 で表 さ れ る。 pH

-

+ (PKH+pK1-1ogPc。2

) (ll

)

こ こで

K

H はヘ ン リー の法 則 の恒 数

(

l

o

一l.5), K.は炭 酸 の 第 一次解離 恒 数 (10614),pc02は 炭 酸 ガス分圧 で あ る。25oCで は pH -3.95-i logP。。ヱ (12) と書 け, 土 壌溶 液 の Pc02が しば しば101 -102の範 囲 にあ る こ とか ら,pHはほぼ4. 5-5.0とな る。 す なわ ち, 酸性 硫 酸塩 土 壌 中の 硫 化 物 がす べ て酸化 され,生 成 した酸 がす べ て排 除 され た時 の土 壌 pH は,4・5-5.0の範 囲 に落 ち着 くこ とが わ か る [van Breemen 1975]。 パ イ ライ トの酸 化 によ って生 成す る もう一 つ の成 分 で あ る加水 酸化 鉄 は,最 初 は無 定形 で褐色 の 斑紋 を 作 るが, 熟 成 が 進 む につ れ ゲ ーサ イ トにな り,黄樺 色 の斑紋 とな る。 酸 性 硫 酸塩 土壌 の 中 に は B 屑上 部 に赤 い斑紋 を有 す る ものが あ り,van Breemen [1976] は これ を ヘ マ タイ ト(haematite,α-Fe203) と 考 えて い る。 赤色 の斑紋 を もつ ものが, 乾 燥 の強 いバ ンコク平野 西 部 の地形 的高所 に多 く み られ る ことか ら,彼 はゲ -サ イ トの脱 水 に よ りヘマ タイ トが生 成 す る と説 明 して い る。 しか し,湿 潤 な半 島部 の土 壌 に も赤 色 の斑紋 を もつ ものが あ り, これ らの土 壌 が強 い酸性 を示す こ とか ら,van Breemen 白身 ,乾 燥 以 外 に も, 強 い酸性 が なん らか の機 構 で -マ タイ トの生 成 にあず か って い る と して い る。 小 島 ・川 口 [1968]もタイ国産 酸性 硫 酸塩 土 壌 の斑紋 の鉱物 種 を 同定 し, ゲ -サ イ トが普

(8)

東 南 ア ジア研 究 20巻3号 遍 的 にみ られ る ことを報 告 して い るが, ヘマ タイ トは同定 され なか った。 C.酸 性硫 酸塩 土壌 の生 成 にお け る生物 の 役 割 マ ング ローブ下 の堆積物 中 に硫 化物 が蓄積 す る過程 で も, 堆積 物 の陸化熟 成 に伴 うパ イ ライ トの酸化 過程 で も, 微生物 の 働 き が き わ めて大 きい こ とは上 にみて きた とお りで あ る。微生 物 作用 の重 要性 を示 す もう一 つ の例 と して,SingerandStumm [1970]のデ ータ を 引用 しよ う。 彼 らは 9×104

M/

βのFe2+ を含 む pH<3.5の溶 液 を大気 中 に放 置 した 場 合,150日間 に全 Fe2+のわず か5%だ け し か酸化 され なか った の に対 し, 同 じ条件下 で 鉄 バ クテ リアを働 かせ た場 合,酸 化速度 は106 倍 以上 に高 め られ た と報 告 して い る。 この よ うな微 生物 の働 きの重 要性 はよ く知 られて い るが, それ以外 に も動物 が酸性硫 酸 塩 土壌 の生 成 に大 きい役 割 を果 たす場合 が知 られて い る。 Andriesseetal.[1973]は,サ ラワクの汽水 性潮 間域 で ,しば しば mud lobster(Thalas -sina anomala)が, 地表 か ら 120cm 程度 ま で の下 層 にあ る未熟 な硫化 物含有 堆積物 を地 表 に もた らして, 高 さ 150cm に及 ぶ塚 を作 る こ とを報告 して い る。 このた め地表 堆積物 が硫化 物 を含有 して い ない場合 で も,下 層 か らもち上 げ られ た mud clay の 酸化 で cat clayを生 ず る こ とにな る。 この塚 の 底 面 の 直径 は1- 2mに及 び, これ らの塚 が全面 積 の40% を 占め る場 合す らあ る。 したが って農 地 を造 る場 合, 塚 を こわ して平 坦化 す る必 要 が あ り, そ うす る こ とによ って catclayを 全面 に広 げ る結果 にな り問題 を生 じて い る。 比較 的乾燥 した気候 下 に あ るマ ング ローブ で は, 堆積物 中に い る節 足動物 や軟 体 動物 に よ る二 次 的 な CaCO。集積・が起 こる こ とが知

られ て い る [Moormann and γons 1974]。

また,GiglioliandThornton[1965]は, ガ ンビアで マ ング ローブ下 の泥土 中に カキが棲 息 して い る例 を報告 して い る。 これ らの生 物 的 な CaCO。集積 が, パ イ ライ トの酸化 過程 にお いて重要 な意 味 を もっ こ とは, す で に述 べ た とお りで あ る。 Ⅴ 酸性硫 酸 塩土壌 の分類 Mudclay とよばれ る還 元 的 な硫 化物 含有 堆積 物 は,潜 在 的酸性硫 酸塩土 壌(potentially acidsulfatesoils)とよ ばれ る ことが あ り,こ こで は これ らの未熟 成 堆積物 を も含 めて,酸 性 硫酸塩土 壌 の分類 を考 え る。 現在 の ア メ リカの 土 壌 分類 体 系 は Soil Taxonomy [USDA 1975]の名 で知 られ, 世界 的 に広 く使 われ て い るが, この 中で酸性 硫 酸塩 土壌 の分類基準 とな って い るの は, 吹 の二 つ の特 徴 で あ る。

i

. sulBdic物 質- >0.75% (乾 燥垂 あ た り) の Sを硫 化物 の形 で含 み, かつ S含 量 の3倍 以 下 の CaCO 3 当 量 を 有 す る も の で, 酸化 されれ ば次 に述 べ る sulfuric層 を 生 成 す る。 ii. sulfuric層- 無機 あ るい は有機土 壌 物 質 よ りな り,pH<3.5(1:1水 懸濁 液)で, ジ ャ ローサ イ トの斑紋 (色 相 2.5Y よ り黄色 で,彩度> 6) を有 す る層位 。 前 者 のsulBdic物 質 の存 在 は潜在 的酸性 硫 酸塩土 壌 の分 類基準 と して,後 者 の sulruric 層 は (顕在 的)酸 性硫 酸塩 土壌 の分類 基準 と して用 い られ る。 FAO/UNESCO の世 界土 壌 国 の 凡例 中で ち, 上 と同 じ分類 基準 が 援用 され, thionic な グル ー プを分 け るの に用 い られ て い る。 van derKevie [1973]は表3のよ うに酸 性 硫 酸塩土 壌 を ,SoilTaxonomy 方式 と FÅo/UNESCO 方式 によ って列 挙 し, 両 方 式 を対比 して い る。SoilTaxonomy方式 で

(9)

久 馬 =東 南 ア ジア低湿 地 の土壌 (その1)

は, 潜 在 的酸 性 硫 酸 塩 土 壌 で典 型 的 な もの は Sulfaquents大 群 (Entisol目,Aquent亜

目)に属 す る無 機 質土 壌 と , Sulfihemists大 群 (Histosol目 ,Hemist亜 冒)に属 す る有 機 質 土 壌 で あ り, (顕 在 的) 酸 性 硫 酸 塩 土 壌 で 典 型 的 な もの は Sulfaquepts大群 (I ncep-tisol目,Aquept亜 日)に属 す る無機 質 土 壌

と,Sulfohemists大 群 (Histosol目 ,Hemist 亜 目) に属 す る有 機 質 土 壌 で あ る こ とを , 義 3は示 して い る。 上 記 の分類 基準 を厳 密 にみ た して いな い た め に, 他 の大 群 に分類 され た もの の 中 に も, 多少 と も酸性 硫 酸 塩 土 壌 的 な 性 質 を示 す ものが あ るが , これ らは sulfiC亜 群 と し, 典 型 的 酸性 硫 酸 塩 土 壌 へ の移行 型 と して 分 類 され て い る。 FÅo/UNESCO 方式 で は, 潜 在 的, 顕 在 的 を問 わず ,sulfidic物

質 か sulfuric層 を もつ も の は す べ て Thi

-onicFluvisolsと して 分類 して お り, 移行 型

表3 USDAのSoilTaxonomy方式 とFAO′/UNESCO方式 による酸性硫 酸塩 土壌 の分類

a. Potentiallyacidsulfatesoils Climatic

Zone USDA MainCharacteristics World-wide Typic pH (1:1water)or

Sulfaquents driedsoil<3.5within 50cm irn>1.0;within 30cm irnく一/1.0

World-wide Su伯c pH (I:1water)or Hydraquents driedsoil、\4.5in

upper25cm,ormore acidbetween50and lOOcm,n>0.7between 20and50cm

Wettropics SulGcIJ Acidityrequirementsor andmom- Tropaquents SulficHydraquentsbut

soon nく0.7between20and

50cm

Temperate Sulnc Sameas

Fluvaquents SulBcTropaquents

World-Wide Typic Sulndicmaterialswithin SulBhemists ]00cm;pH(1:1water)

ordriedsoilく3.5 WorldSoil Map Thionic Fluvisols Thionic Fluvisols Gleyic

MainCharacteristics pH (KCl)ofdriedsoil

-二\3.5within125cm

Somethatarelessacid thanSulfaquentsbut sufficientlyacidtobe includedi nSu旧°Hy-draquents;non-saline Salichorizonandsaline Solonchaks atsometimeortheyear;

partthatmeetsacidity requirementsforSulnc Hydraquentsbutnotfor ThionicFluvisols Dystric

Fluvisols

Thionic Fluvisols GleylC Solonchaks Dystric Fluvisols

Thionic Fluvisols

1)SubgroupsnotrecognizedinAmericanclassiGcation.

Notsumcientlyacidfor ThionicFluvisolsbut meetsrequirementsfわr Su帆CHydraquents; non-saline

seeabove

(10)

東 南 ア ジア研 究 20巻3号

b. Acidsulfatesoils Climatic

Zone USDA MainCharacteristics World-wide Typic Sulfbhemists World-Wide Typic Sulfaquepts W ettropics Suはc and Tropaquepts monsoon Wettropics HisticSulfic Tropaquepts Monsoon and semi-arid Humid temperate Temperate Monsoon and semi_arid VerticSulfic Tropaquepts Sulficl) Humaquepts sulficl) Haplaquepts suIficl) Haplaquepts pH (1:1water)<3.5 within50cm pH (1:1water)く3.5 within50cm pH (1:1water)<4.0 between50and150cm andノor3.5to4.0 within50cm AciditylikeSul丘c Tropaquepts; Histicepipedon AciditylikeSulBc Tropaquepts; cracks(1cm)at50cm whendry AciditylikeSulBc Tropaquepts; Umbricor Histicepipedon AciditylikeSulGc Tropaquepts; Ochricepipedoll Acidity like Sulfic Tropaquep ts; Sodium saturation

>15inhalformoreor upper50cm;mostly salineinsomepartor theyear WorldSoil Map Thionic Fluvisols Thionic Fluvisols Thionic Fluvisols Humic Gleysols Dystric Gleysols Thionic Fluvisols Humic Gleysols Thionic Fluvisols Humic Gleysols Dystric Gleysols Thionic Fluvisols Humic Gleysols Thionic Fluvisols Dystric GleysoJs Thionic Fluvisols GleylC Solonchaks

1)SubgroupsnotrecognizedinAmericanclassification. varde†KevieH973】に よ る。

につ いて は酸性 硫 酸塩土壌 的 な性 質 を もつ こ とを,分 類名 か らは うか が いえ ない。 潜 在 的酸性硫 酸塩 土壌 で あ る Sulfaquents の場 合 に は

,n

値 1)≧1.0の未 熟 な もので は , 地表面 か ら50cm以 内 に,またn値 < 1.0の や や物理 的熟 成 の進 んだ もので は, 地表面 か 1) n値 :堆積物 の 物理的熟成度 の指標。 十分熟 成 した もののn値<0.7,未熟 な もののn値 ≧

1.

00

MainCharacteristics pH (KCl)ordriedsoil

<

3.5within125cm seeabove seeabove pH (KCl)≧3.5; umbricor0horizon pH (KCl)>3.5; ochricA horizon seeabove pH (KCl)>3.5; 0horizon seeabove pH (KCl)>3.5; umbricor0horizon pH (KCl)>3.5; ochricA horizon seeabove pH (KCl)>3.5; umbricor0horizon seeabove pH (KCl)>3.5; ochricA horizon seeabove pH (KCl)>3.5; salichorizonand/or salineatsometimeor theyear ら 30cm 以 内 に sulfidic物 質が 出現 す る。 有 機 質土 壌 の場合 , 地表面 か ら 1m 以 内 に sul丘dic物 質 を有 す る もの は, そ の有機 物 が セ ンイ質 で あ る (fibric物 質)か, あ るい は 分解度 が高 い (sapric物 質)かを 問わず ,す べ て Sul蝕 emistsと して分類 す る。 (顕在 的) 酸性硫 酸塩土壌 の 場 合 で も, 有 機 質土壌 で はsulfuric層 が地表面 か ら50cm 以 内 に出現 す る こ とだ けを重 視 し,有機 物 の

(11)

久 馬 :東南 ア ジア低 湿 地 の土 壌 (そ の1) 分解 度 を 問わず Sulfohemistsと分類 す る。 無 機 質土 壌 の場 合 は ,や は りsulfuric層 が地 表面 下 50cm 以 内 に 出現 す る こ とを条件 と す る。 この場 合 sulruric層 の存 在 は, 十 分 に物 理 的 ・化 学 的熟 成 が進 んで い る こ とを前 提 とす るか ら,必 然 的に Aquept亜 目に属 す る こ とにな り,Sulfaqueptsと分 類 され る。 酸 性硫 酸塩 土 壌 の熟 成 が進 み ,表 層 50cm 以 内 に ジ ャローサ イ トは残 って い るが,土 壌 pH が3.5-4まで上 昇 した よ うな場 合,sul -furic層 の規 定 か ら外 れ るた め に,Tr opaque-pts大群 中のsulfiC亜 群 ,SulficTr opaque-ptsと分 類 され るよ うにな る。 さ らに熟 成 が 進 んで,表 層 50cm 以 内の pH は> 4とな り, ジ ャロ-サ イ トも な くな ったが, 5 0-150cmの範 囲 に pH<4で かつ ジ ャローサ イ トを 含 む 層 位 が 出現 す る 場 合 も, 同 じ く Sulfic Tropaqueptsと分類 され る。 た だ し, これ ら二 つ の SulficTropaqueptsが,亜 群 よ り下 の レベルで細分 され るの は当然 で あ る。

(

(

,Fe

pH

%

organicC

1

2 こ; 3 4 5 6 O 2 4 6 2 3 ':Iに 6 (iK l i:3V l Tw o 図2 Sulfaquent- Sulfaquept- SulGcTropaquept系列 の土壌断 面発達過程模式 図

(12)

東 南 ア ジ ア研 究 20巻3号

タ イ国バ ン コク平 野 の酸性硫 酸塩土 壌 の大部 分 は ,上 述 の いず れか のSulficTropaquepts で あ る。 この分類 で 問題 とな るの は,pH が

<4

で あ りなが ら, ジ ャローサ イ トの 出現 し な い 土壌 で あ り, これ は Typic Tr opaque-pts と分 類す る以外 にな い。

潜在 的酸性硫 酸塩土 壌 で あ る Sulfaquents か らSulfaqueptsを経 て ,さらに SulficTr op-aquepts に至 る熟成 過程 と, そ の 間 に み ら れ る土 壌 断面 の諸 性 質 の変化 を模式 的 に示 す と, 図2の よ うで あ る。 酸性硫 酸塩土 壌 は, 各 国で古 くか ら使 われ て きた土壌分 類 の 中で は, マ ング ローブ林 土 壌 (soilsormangroveforest)とよばれ た り, 沖 積土 (alluvialsoils)の低位 分類 と して扱 われ る こ とが 多 か ったが, 北 ヴ ェ トナ ム で は acid saline soil あ るい は aluminous soil[Fridland

1

9

61

],また カ ンボ ジアで は alumisol[Crocker 1962] な ど と命名 され て いた。 これ らは いず れ も, フ ランス領 で あ った時代 にsolalun6 とよばれ て いた こ と の名残 で あ ろ う。

VI

酸性 硫酸塩 土壌 の肥沃 度的性 質 顕在 的 な酸性硫 酸塩土壌 だ けに限 って も, その熟 成 の程度 によ り性 質 に大 きい変 異 が み られ る こ とは,上 述 した ところか らも明 らか で あ る。 本 節 で は,作 物栽 培 に直接影 響す る ところの大 きい, 酸性硫 酸塩土 壌表 土 の肥 沃 度 的性 質 につ いてみてみ よ う。 Attanandana

e

ta

l.

[

1

98

1] はタ イ国バ ン コク平 野 の土壌 の うち,水 稲栽培 のた めの適 性 分級 の4区分 を代表 す る 5土壌続 を サ ンプ ル と して,表土 の諸性 質 を比較 した。 供試土 壌 続 と, そ の適性 分級 区分 は次 の とお りで あ る。 土 壌統 適性分 級 区 分 Bangkok (B)

PI

v

e

r

y

wel

ls

u

it

e

d

f

o

rp

a

d

dy

Ratchaburi(Ra)

p-I

v

e

r

y

wel

ls

u

it

e

d

f

o

rp

a

d

dy

Sena(S) p-ⅠIa wellsuited forpaddy Rangsit(Rs) p-ⅠⅠIa moderately suitedfor paddy Rangsitveryacid p-ⅠVa poorlysuited (Rva) forpaddy B は非酸性 海成沖 積物 ,Ra は河成 沖積 物 由 来 の TypicTropaqueptで,水 稲栽 培 (P)に 対 す る制 限因子 はな い。S,Rs,Rva はいず れ も酸性硫 酸塩 土壌 で あ り, 各適性等 級 に入 る土 壌続 の 中で最 大 の分布面 積 を もつ もので あ る。 す べ て に共通 して酸性 が 障害 とな る こ とを ,等 級記号 の あ とに

"

a

'

'を付 して示 して あ る. S と Rsは SulncTropaquept,Rva

は TypicSulfaqueptと分類 され る。

4

に示す よ うに ,供試土 壌 はRaが silty clayloam で あ るのを除 けば, すべ て heavy clayで あ る。pH は酸性 硫 酸塩 土壌 で はいず れ も

<5

で あ り, 中で も Rva は 表 層 で も 3.0-3.9を 示 す。 土 壌有 機 物 (腐 植)含 量 は, 酸性 硫 酸塩土壌 の方 が対 照 の非 酸性硫 酸 塩土 壌 よ りも 高 い。 この こ とは Kawagucbi and Kyuma

[

1

96

9]

も認 めて お り, 有機炭 素含 量 は 酸性 硫 酸塩土壌 で は 1.93±0.54% (n-ll),非酸性海成 沖積 土 で は1.28

±0.

3

4%

(n-ll)で あ った と して い る。 有 効態 リン酸 は, 酸性硫 酸塩土 壌 の 含 量 が きわ めて 低 く

6-1

0

ppm で あ るの に対 し,Bや Ra で は それ ぞれ24,51ppm と大 きい差 が あ る。交換 性 カチオ ン組 成 につ いて は,S で は明瞭 で な いが,他 の酸性 硫 酸塩土 壌 と

B

で は海成 の 特徴 が 明 らか で あ り,交換性 Mgと Naの含 量 が相対 的 に高 い。 土壌 の酸性 を反 映 して, 交換性 Alは酸性硫 酸塩土壌 で高 いが, 中で

(13)

久 罵 ‥東 南 ア ジ ア低 湿 地 の土 壌 (そ Lj) 1)

表4 バ ンコク平野の代表的酸性硫酸塩土壌 と対照非酸性硫酸塩土壌の肥沃度的諸性質

SoilSeries (SoilSuitabilityClass) 1. Texture

2. pH

3. Organicmatter

,㌔

4. Avail.phosphate,ppm P 5. ExchangeableK,me/IOOg (i. Exchangeab)eNa,me/100g 7. ExchangeableCa.me/100g 8. ExchangeableMg,nle/loo菩 9. ExchangeableAl,me/100g 10. Avail.silica, mgSiO2/100g ll. CEC,me/100g 12. 7A minerals

,o

/

0

13. 10A minerals

,㌔

14. 14

A

minerals

,㌔

15. Totalsulfur,ppm S 16. Watersol.S,ppm S 17. JarositeS,ppm S (p-eInIaa, (Rpa-TIgISit, 禁 n(gps::vvJbC・i望 B?Bg-i,ok R(ab:u:r3i, a-5 芸 霊 o ・ 42 0 ・ 6。 霊 o 10.1 31.2 55 15 30 1281 440 560 「-∩) C . 8 1 5 3 2 0 5 8t H 4 つ 山 t J o I f 1 0 . 8 . 0 4 ′n 5 C . 0 2 0 2 5 2 6 1 H 3 2 . 7 . 0 . 0 . 1 . 3 . _5 . 7 0 0 HC 3 ・ 9 3 ・ 1 6 ・ 1 0 ・ 1 1 ・ 7 2 ・ 5 5 ・ 6 -/b 上U 3 0 5 0 5 5 0 7 つJ /b I l rJ 3 0 00 2 4 2 5 2 0ノ 4 0 ′b 0 0 O ′b /b 2 1 2 5 1 4 0 7 0ノ 「-1 4 HC 「-C r8 2 3 6 6 7 0 3 」 5 1 . 3 0 2 0 9 0 つ ︼ 」 2 4 つJ 5 0 5 1 0 0 1 2 2 2 5 3 2 1 5 エU /∩ O 9 L . 8 5 8 -7 5 7 0 C 5 L o . 0 . 0 . 7 . 2 . 0 . S-5 4 4 1 7 0 5 5 1 0 0 ■l 1 5 つ 一 2 8↓・l

*A soilusedforpotexperiment.

**A soilusedforBeldexperiment.

Attanandanaetal.[1981]に よる。 も強 酸 性 の Rvaで は極 端 に高 く,これ が一 つ の 問題 で あ る こ とを うか が わせ る。 有 効態 ケ イ酸 は酸性 硫 酸 塩 土 壌 で低 い傾 向が あ るが, こ こで も Rvaで 顕著 に低 く,強 酸 性 媒 質 中で ケ イ酸 の溶 出が起 こる こ とを示 唆 して い る。 vanBreemen [1976]は強 酸性 を示 す 酸性 硫 酸 塩 土 壌 か ら採 取 した土 壌 溶 液 が ,無 定形 ケ イ酸 につ いて ほ ぼ飽 和 して い る (2mmoI/O) こ とを見 出 し, 実 験 室 的 に も硫 化 物 含 有 堆 積 物 の酸化 過程 で, 硫 酸 の生 成 に伴 い浸 出液 中 には 5mmol/C程 度 の ケ イ酸 の溶

L

H.が 起 こる こ とを た しか め て い る。 この よ うに ケ イ酸 の溶 出 は起 こ って い る も の の ,CEC はま だ高 く維 持 され て お り, 粘 土 の破 壊 は さほ ど進 んで い な い とみ られ る。 事 実 , 粘 土鉱 物 の組成 に は

,B

を 除 いて あま (l り大 きい差 はな く,1:1型 の 7A 鉱 物 が50 %強 ,次 いで 膨 張性 の 2:1型 を 主 とす る 14 0

A

鉱 物 が多 く,雲 母 型 の 10

A

鉱 物 は少 な い。 0 0 Bだ け は ,14A>7A とな って お り, 非酸 性 海 成 粘 土 で二 次 鉱 物 の風 化 が緩 慢 で あ る こ と ○ を うか が わ せ る。 これ ら土 壌 の 14A 粘 土 は,

0

Mg

飽 和 で グ リセ リン処 理 を す る と

1

8A

に 膨 張 す る もの の,K飽 和 で は 10A に収縮 し バ ー ミキ ュ ライ ト的 な挙 動 を示 す ので ,服 部 共 生 は これ を Beidellite-Vermiculite中間型 と考 えて い る (同教 授 <京都 府 立 大学 > よ り の個 人 的 聞書 き)0 Rva で は この 14A 鉱 物 が少 な く,7A 鉱 物 が供 試 土 壌 の

で最 も多 い が, これ が強 酸性 下 の風 化 と関係 が あ るか ど うか は明 らかで な い。 しか し,全 般 的 に酸性 硫 酸 塩 土 壌 の粘 土 鉱 物 組 成 は, この分 析 の結 果 か らみ る限 り, まだ さほ ど劣 化 して い な い とい え よ う。

(14)

東 南 ア ジ ア研 究 20巻3号 全硫 黄 は Rva が非常 に高 く

,S

と Rsで もやや高 いが, む しろ B で高 い ことが注 目 され る。 これ は水溶 性硫 黄 の値 か らわ か るよ うに, 石 膏 に由来 す る部分 が多

い。

ジ ャロー サ イ ト態硫 黄 は酸性硫 酸 塩土 壌 だ けに検 出 さ れ,特 に Rva で高 い値 を示 す 。 ここにみ た よ うに,酸性硫 酸塩 土 壌 の間で ち,そ の性 質 に はか な り大 きい変 異 が あ るが, 肥 沃度 的 にみて 主 要 な 問題 と な るの は, 低 pH,高 Al,低 リン酸,低 ケ イ酸 で あ る こ とが わか る。 また,熟 成 過程 の初 期 にあ る酸性硫 酸塩 土 壌 で は,塩 類 含量 の高 い ものが あ り, これ が 問題 とな る場 合 が あ る こ とに留 意 す る 必 要 が あ る。 VII 酸性硫 酸塩 土壌 の利 用 と改 良

a.

水 田 と して の利用上 の諸 問題 バ ンコ ク平 野 の潮 間湿 地帯 の面 積 は 1,300 km2と見 積 も られ て い るが,deGlopperand Poets [1973] は この地帯 の土 地利用 を 航 空 写 真 によ って調 査 し, それ ぞれ の利用 形態 下 表5 バ ンコク平野潮間帯の土地利用/植生 と年間 純 収入 LandUse/Vegetation

(

e

rS ) NetAnnual Income (Baht/ha) Nipaswamps 294 60 Mangroveswamps 254 400 (mainlyRhizophoYa) Treelessswamps 93 (mainlySuedaandbare land)

Saltevaporationpans Shrimp(and伝sh)ponds Paddyfie]ds

Coconutplantations Pa ddyongoodnon-acidmarinesoils (Bangkokseries) 91 199 -・ 2 353 一 0 0 0 0 0 0 0 5 0 0 5 5 1 0 1 2 2 3 1

deGlopperandPoetst1973】に よ る。

の面 積 と, そ こで の年 間収 入 を表5の よ うに 見 積 もった。NipaSwampか らの収 入 は ,屋 根 ふ き用 の 葉 や果 実 の 採集 によ る も ので あ り, マ ング ローブか らの収 入 は,主 と して木 炭 の生産 によ る。 この裏 か らは, コ コナ ッツ 園, 塩 田, エ ビ養殖 な どが 大 きい 収 入 を あ げ, 非酸性 海 成 堆積物 由来 で p-Ⅰ に属 す る Bangkok続 の肥 沃 な土 壌 で の稲作 よりも有 利 で あ るが, これ らの利用形 態 はいず れ もか な り大 きい資本 の役 人 を必 要 とす る こ とが わ か る. マング ロ-ブの 中の ライゾ フォラ(Rhi zo-phora)を伐 採 して 木炭 を焼 く 粗 放 な 林 業 で す ら, 酸性 硫 酸塩 土 壌 の水 田 と して の利用 よ りは高収 益 を あげ る こ とが で き る。 しか し, 潜在 的可 耕地面 積 が少 な く, 新 し い農地 開墾 の必 要 が 大 きい と ころで は,地形 平 坦 な潮 汐平 野上 の酸性硫 酸 塩 土壌 地帯 は, 魅 力 的 な農 地 開発 の対 象 とな ろ う。 そ の際, 水 文条 件 や 土地 条 件 か らまず 考 え られ る の は,水 田 と して の利用 で あ る。 水稲 は 酸性 に対 す る 高 い耐性 を もつ 。 水 耕 培養 で は pH<4 で は じめて 生 育 が 阻害 され る といわれ る。 しか し, 土 壌条 件下 で は,pH< 5 と な る と A13十が 可 溶化 し, 水 稲 は Al 過 剰 に よ る 生 育 阻害 を うけ る。 Attanandana

e

tal

.

[1982] は水 耕 によ って 水稲 に対 す る Al過 剰発 現 の閥値 を求 め,培 養液 中の Al濃度 が 20ppm を超 え る と生 育 が悪 くな りは じめ,40ppm で は きび しい生 育 阻害 を うけ る ことを みて い る。 Attanandana

e

t

al. [ibid.] は他 方 ,Rvaを湛 水 イ ンキ ュ ベ ー トした時 に,土 壌溶 液 中の Al濃 度 は最 高 60ppm に達 し,10週 間 の湛水 全 期 間 にわ た って 30ppm 以上 の 濃 度 を 示 す こ とを報 告 した。 前 節 で酸性硫 酸塩土 壌 の粘土 中に は, まだ(} 膨 張 型 14A 鉱物 が あ って CEC も高 い こ と をみ たが,これ が低 pH と組 み合 わ され る と, 多量 の交 換憩 Alが土 壌 中 に存在 す る こ とを

(15)

久 馬 :東 南 アジア低湿地 の土壌 (その1) 意 味す る。 この Alは土 壌溶 液 中の高濃 度 の Alと平 衡 を保 ち, また後 述 す るよ うに難溶 性 の リン酸 塩 を作 って,施 肥 リン酸 を不 可 給 憩 にす る。 一般 に ,低 い pH と高 いCEC の 組 合 せ は, 自然土 壌 で は まれ に しか み られ な い もので あ り, この意 味で 酸性 硫 酸 塩 土 壌 は 特 異 な問題 を か か え て い る とい え る。 酸 性 硫 酸 塩 土 壌 の土 壌溶 液 中 の Al濃 度 に つ いて は,vanBreemenandPons

[

1

978

]の 研 究 が あ り, それ はAl(OH)SO.の溶 解 度 積 10-17・2 によ って 規 定 され て い る と して い る。 彼 らは水 稲 の Alに対 す る耐性 の上 限 を 25 ppm と想 定 し, そ の Al濃 度 を与 え る pH を若 干 の仮 定 を お いて上 の関係 か ら計 算 し, pH 3.5-4.2を Al過 剰 症 発 現 の 閥値 で あ る と述 べ て い る。 た だ し, 幼苗 期 に は水 稲 の耐 性 が低 く,pH 4.5-5で す で に障害 を示 す に 至 る と した。 パ イ ライ トの酸化 過 程 で多 量 の鉄 が遊離 さ れ , 一 部 は無 定 形 の加 水 酸化 物 , あ るい は結 晶度 の低 いグ ーサ イ トと して土 壌 中 に残 る。 水 田 に して湛 水 す る と, これ らの鉄 化 合 物 は 還 元 され て Fe2十を土 壌 溶 液 中 に供 給 す る。 この Fe2+ の濃 度 は酸 性 硫 酸 塩 土 壌 にお いて は一 般 に高 く, 時 に数 千 ppm に達 す る とい われ る。水 稲 は300-400ppmを超 え るFe2+ 濃 度 の も とで は鉄 過 剰症 を発現 し易 い。 ス リ ラ ンカで かつ て ブ ロ ン ジ ング (bronzing)と よ ばれ , わ が 国 で赤 枯 れ Ⅰ型 な ど とよ ばれ て いた の は, いず れ も鉄 過 剰症 で あ る。 今 日, 水 稲 の鉄 過 剰症 は栄 養 的 に正 常 な場 合 に は発 現 しに く く, 高塩 濃 度 , 低 リン酸 , 低 カ リな どの障害 と高 Fe2'が共 存 す る場 合 に 出易 い こ とが知 られ て い る。 酸 性 硫 酸 塩 土 壌 で は, す で にみ た よ うに, 高塩 濃 度 や 低 リン酸 はか な り頻 繁 にみ られ る問題 で あ るか ら, これ に 高 Fe2+濃度 が 加 わ れ ば, 鉄 過 剰症 は深 刻 な 脅 威 とな る。 上 に述 べ た A13+ も Fe2十 も, 土 壌 溶 液 の pH が高 くなれ ば溶 解度 を 減 じ, 過 剰症 の発 現 は抑 制 され る。 一 般 の水 田土 壌 で は,湛 水 下 還 元 が進 め ば,pHはか な り速 や か に6・ 5-7.0まで 上昇 す る。 これ は還 元過 程 で H十が 消 費 され る と と もに土 壌溶 液 の アル カ リ度 が 高 ま るた めで あ る。 酸 性硫 酸 塩 土壌 で は, しば しば還 元 の進 行 が お そ く,pH が な か なか上 昇 しな い場 合 が あ るO これ は低 pHや 養 分 欠 乏 によ る微 生 物 活性 の低 さに起 因す る と考 え られ , た とえ ば 石 灰 施用 や , チ ッ ソ, リン酸 の添 加 が還 元過 程 を速 め る こ とか ら原 因 を た しか め うる。 し か し,酸 性 硫 酸塩 土 壌 でpH上 昇 が起 こ りに くい こ との よ り重 要 な原 因 と して は,交 換 性 あ るい は水 溶 性 の Al,Alや Feの塩 基性 硫 酸 塩 な どに よ る強い 緩衝 作 用 を考 え る必 要 が あ る。 ま た,ジ ャローサ イ トが存 在 す る場 合, この 中 の Fe3十が Fe2十 まで還 元 さ れ るの に は,Fe(OH),が還 元 され る場 合 の2/3倍 量 の H+しか必 要 と しな い。

Fe(OH)3+3H十+e- Feュ++3H20

‡ KFe3(soヰ)2(OH)6+2H++e - Fe2・+そ soい i K十.2H20 したが って,pH の上 昇 が低 い段 階 で も, 棉 対 的 に高 濃 度 の Fe2+を土 壌溶 液 中 に維 持 す る こ とにな る。 可 分 解 性 有 機 物 が十 分 量 存 在 す る場 合 ,義 時 間 の還 元過程 を経 る と pH は徐 々に 上 昇 す るが,pH>5 とな る と 硫 酸 還 元 菌 が 活動 しは じめ ,S(-Il)が 生 成 さ れ る (第 ⅠⅠⅠ節 参 照 )。 こ う して は じめて Fe2+は FeS と し て沈 殿 し, 土 壌溶 液 中 の Fe2+濃度 は減 少 す るに至 る。 た だ し, これ に は通 常 数 カ月 を要

す る [Nhungand Ponnamperuma

1

96

6]。

以 上 の よ うに, 低 pH とそれ に伴 うAl過 刺 , 鉄 過 剰 , さ らに高 Alによ って ひ き起 こ され る リン酸 欠 乏 な ど,酸 性 硫 酸 塩 土 壌 を水

(16)

東 南 ア ジア研 究 20巻3号 田 と して利用 す る際 の 土 壌 的 制 限 要 因 は 多 い。次 に は, これ らの諸 問題 を 回避 し,酸性 硫 酸 塩土壌 を水 稲栽 培 の培 地 と して 開墾 ・改 良 す るた めの手段 につ いて考 えてみ よ う。 b. 酸性硫 酸塩土 壌 の 開墾 と改良 (i) マ ング ローブ下 の 潜在 的酸性 硫 酸 塩 堆積物 の開墾 現 に, マ ング ローブの下 にあ る堆積 物 を 開 墾利用 す る場 合 はあ ま り多 くな い。特 に,前 進 型海岸 をふ ち どるマ ング ローブ は, そ の幅 もせ ま く, 開発 の 対 象 と はな らな い。 しか し,河 口型海岸 で広 い潮 間湿地帯 が存在す る 場合 , た とえ ばサ ラワ ク川 河 口域 の水 田化 計 画 の よ うに, これ を 開墾 す る試 みが な され て い る。 この よ うな場 合 ,一般 には, 堆積物 は未熟 で あ り,土壌 の酸性 はまだ発現 して お らず , 最 大 の 問題 は 塩類過 剰 の 書 で あ る。 こ こで は, 防潮 境 を築 いて塩水 浸入 を 防 ぐ手段 を講 じな い限 りは, 満潮 時 に 淡 水 の バ ックア ッ プによ って冠水 す るよ うな場所 以 外 は,水 稲 栽培 は不 可能 で あ る。栽 培可能 な場 合 で も, このよ うな条件下 にあ る堆積物 は未 熟 で あ っ て,常 時還 元状態 にあ るた め, 水稲 は高収 を 望 みが た いだ けで な く, 作業能 率 も悪 く,積 極 的 な改善 の手段 を と りに く

い。

防潮 堤 を築 き, 防潮 水 門 によ って塩水 浸入 を制御 す る場 合,条 件 によ って二 つ の場 合 が 考 え られ る。 一つ は明瞭 な乾季 が あ り,年 降 水 量 もあま り多 くな い条 件下 にあ る場 合 で, 満潮 時 にバ ックア ップす る淡水 を導 入 して冠 水 させ うる場 所, あ るい は時期 を利用 して稲 作 を 行 う。 この 場 合 に は, 先 の 場 合 と異 な り,地表 の浅 い土層 は乾季 に 自然 の乾燥 によ り多少 の熟成 とそれ に伴 う酸性化 が起 こって お り,淡 水 のバ ックア ップは,塩 とと もに酸 を洗源 して積 極 的 に土壌 の改良 を進 め る手段 とな る。 ただ し,本 格 的 な排水 を はか り,深 い土 層 を酸化 させ た場 合 には, 域外 か ら良 質 のか んが い水 を導 入 す る可 能性 が な い限 りは 十分 な洗 液 が で きず , か え って土地 を不 毛化 す るおそれ が あ る。 したが って,排水深 を調 節 し (た と え ば 表層 15-20cm),必要以上 の土 壌 の熟 成 ・酸化 を起 こさせ な い注意 が必 要 で あ る。 第2の場 合 は,年 間を通 じて降水 量 の多 い 地域 で, 防潮堤 を築 き, 排水路 を 設 け,土壌 の熟 成 と酸化 を起 こさせ た上 で,初 期 に は満 潮 時 に海水 (あ るい は汽 水) を導入 し,生 成 した酸 や A13十を洗 液す る。 こ う して表層 30 cm 程度 の土 壌 中のパ イ ライ トの大部分 を酸 化 除 去 した あ とに は,塩 水 の導 入 をや め, 自 然 の降水 によ って表 層 の塩類 を洗源 す る。 こ の方式 は西 ア フ リカの シエラ レオネな ど で行 われ,ある程 度 の成功 を お さめた [Bloomfield andCoulter 1973]。東 南 ア ジアで も, サ ラ ワ クや カ リマ ンタ ンな どで, この方式 を適用 で き る と考 え られ るが, 相 当大 きい初期投 資 を必要 とす るだ ろ う。 (ii) 顕在 的酸性硫 酸塩土 壌 の改良 かつ て マ ング ロ-ブ下 に堆積 した硫化 物含 有 堆積物 で あ って, その後 陸化熟 成 を経 て酸 性 硫 酸塩 土壌 とな り,現 在 で はデ ル タの 内陸 部 に未利用 な い し低利用 状態 で と り残 されて い る もの も少 な くな い。 た とえば, メ コンデ ル タの Plain orReedsが それで あ り, バ ン

コク平 野 で は Rangsitveryacidsoilの標 識 地 で あ る Ongkharak 地 方 が それで あ る。

また マ レー シアや イ ン ドネ シア で は グ ラム (gelam,Melaleucaleucadendron)林 の生 え る 湿 地 と して未 利用 で残 って い る。 これ らの酸性硫 酸塩土 壌地帯 を本格 的 に改 良 す るた め に は, や は り適 当 な深 さまで の排 水 と酸化 を うなが し,天水 あ るい は良質 のか んが い水 で,生 成 す る酸や塩 基性 硫酸塩 な ど を洗源 してや る必 要 が あ る。 半 島 マ レー シア の ケダ ー, プル T)ス両州 に またが るムダ川 か

(17)

久馬 :東南 ア ジア低 湿 地 の土 壌 (そ の1) んが い地 域 内 に は,2カ所 に酸性硫 酸塩 土 壌 地帯 が あ り, グ ラムや セ ッジ (スゲ属 の 草 本 ) の生 え る湿地 で あ ったが, 大規模 なか ん が い ・排 水工 事 によ り,現 在 で は,周 辺 の非 酸性硫 酸塩 土 壌地帯 と と もに, 水稲 の二 期作 が行 われ るに至 って い る。 農民 レベル で は,土 地 の一 部 を盛 り上

た り高 うね を作 って,堆積物 の酸化 と洗 源 を促 進 す る方 法 が と られ, ココナ ッツや稲 が作 ら れ て い る ところが あ る。 バ ンコク周辺 の小 輪 中 と高 うね の組合 せ も同 じ意 図 に 出て い る。 いず れ にせ よ, この よ うに して あ る程 度 積 極 的 な 熟 成 酸化 と 生 成物 の 洗 源 の効果 が あ が った上 で な ら, 石灰 施用 によ って残 った酸 を 中和 す る こ と も現 実 的 な処 置 とな る。

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Br

e

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nandPons[

1

978]

の計算 によれ ば ,

3%

のパ イ ライ トを 含 む土 壌 を, 石灰 施用 の み によ って 中和 しよ う とす れ ば, か りに生 成 した酸 の半 量 が洗 源 によ って 除去 され た と し て も, な おかつ

1

5

0t

on/ha

の石灰 が必 要 で あ る とい う。 この よ うな大量 の石 灰 の投 与 が 経済 的 にひ き合 わ な い の は い う ま で もな い が, か りに資材 が あ って も, もと もと低 湿 な 足 場 の悪 い場所 に, 大量 の石 灰 を運 搬す る こ との困難 さ も忘 れ て はな るまい 。 もう一 つ石 灰 施用 に関連 して考慮 すべ き こ とは,土 壌熟 成過程 の初期 に石 灰 を添加 して 媒 質 の

pH

を あ げ る と,パ イ ライ トの酸化 が お くれ る こ とで あ る (第

I

V

a

参照)。 し たが って, 酸 化 洗源 によ ってか な り土壌 が改 良 され た段 階 で,石 灰 を併用 す るのが有 効 で あ る。 また, 多量 の硫 酸 根 が土 壌 中 に残 存 し て い る段 階 で

pH

>5

とす る と,硫 酸 還 元 を促 進 し, 水 稲生育 に悪 い結果 を もた らす お それ が あ る。

A1

3

十の不 活性 化 に は

pH 5

程 度 まで の 中和 で か な りの効 果 が あ るか ら, それ 以上 に

pH

を あ げ る必 要 はない ば か りか , 有 害 です らあ りうる。 た だ し, 村 上

[

1

965]

は,酸 性硫 酸塩 土 壌 で は酸化 鉄 が多量 に遊離 され, これ が酸化 還 元電位 を高 く維持 し硫 酸 還 元 を抑 え るので,硫 化 水素 の害 は生 じな い と して い る。 土壌 肥 沃度 は,酸性 硫 酸塩 土 壌 の生 成 と改 良 の過程 で, 酸 によ る洗脱 が起 こるため に顕 著 に低下 す る と思 われ る。 事 実,前節 で み た よ うに,不 飽 和 度 の増 大 ,交 換性 Alの増 加 な どが た しか め られ た。 しか し, 粘土鉱 物 組 成 もさ して劣化 して お らず ,CEC が まだ十 分 高 いので,一 般 的 に は,適正 な施 肥 をす る ことによ り, 土壌肥 沃度 を高 め, 水 稲収量 を あ げ る こ とが可 能 で あ る と考 え られ る。

At

t

anandana

etal. [1981] は,前 節 で化 学 性 を検 討 した5土 壌 を用 いて植木 鉢試 験 を 行 い

,

p

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I

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Se

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Rangs

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で は,特 に リン酸 とカ リの施肥 量 を高 くす る 必 要 はあ るが, 試験 に 用 いた 施肥 量 の 範 囲 で

P」

Bangkok

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chabur

i

と同程 度 の 収 量 を あ げ うる こ とを 認 めた。 た だ し,

p-I

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土 壌 で は ,石灰 施用 や施肥 に もか かわ らず ,試 験 に用 いた処 理 の範 囲 で は

,p-

Ⅰ土 壌 の水準 まで収量 を高 め る こ とがで きず,植 物 体 の分析 結 果 か らは Al過剰 の害 が 認 め られ た。 恐 ら くは一 旦石 灰 で

pH

を あげた に もか かわ らず ,た とえ ば ジ ャローサ イ トな どの塩 基性硫 酸 塩 の加水 分 解 で ,根 圏で の新 た な酸性 化 が起 こ り,Alの 過 剰症 を ひ き起 こ した結 果 と考 え られ る。 リン酸 は酸性硫 酸塩 土 壌 にお ける作物 の生 育 決 定 因子で あ り,上 述 の植木 鉢試 験 で も,

Rangs

i

t ver

y aci

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土 壌 の 無 リン酸 区 は, チ ッソや カ リ,石 灰 の施用 に もか かわ らず, ほ とん ど完全 に生 育 が 阻害 され た。前 節 で も 示 した よ うに,酸性硫 酸 塩 土 壌 中の有 効態 リ ン酸 の 含 量 は きわ めて低 く, これ は 活性 な Al によ り リン酸 が 難溶 性 リン酸 アル ミニ ウ ム と して 固定 され るた めで あ る。 しか し, こ の同 じ機 構 によ り, リン酸 は水稲 の Al過 剰 症 に 対 して, あ る程 度 の 耐性 を 与 え る こ と

(18)

東南 アジア研究 20巻3号 が 知 ら れ て い る [Tanaka and Navasero

1966]。 これ は水 稲 の根 の外部 あ るい は内部 で, リン酸 が Alと結 合 して無 害化 す るた め と考 え られ る。Attanandana etal. [1982] は水 稲 に吸収 され た Alが,根 の表 皮 部 分 に リン酸 とと もに濃 集 して い る こ とを,X 線 マ イ クロア ナ ライザ ーを用 い実証 した。 また, この機 構 によ り, 水 稲 の一 部 の根 か ら高濃度 の リン酸 を 吸収 させ る と, ほか の根 を

A140

ppm の培 地 に入 れ た場合 に も,水 稲 のAl過 剰症 が あ る程 度 まで抑止 され,乾物重 はあ ま り影 響 を うけな くな る こ とを示 した。 Attanandana etal. libl'd.]は, この実験 結果 に もとづ き, リン酸 の泥 団子肥料 を水稲 の根 際 に うめ込 む施肥法 を考案 し,通 常 の撒 布 法 と 比較 す る試 験 を ,Rangsit very acid

土壌 を 用 い圃場 レベル で実 施 した。 その 結 栄, リン酸 レベル が低 く(62.5kgP205/ha), 無石 灰 の場 合 には, この泥 団子施用 法 が全面 撒布 法 よ りも高 い茎 数,穂 数,穀 実収 量 を与 え る こ とを示 した。 た だ し,石灰 施用 を伴 うか, 倍量 の リン酸施 肥 の場 合 に は,両施 肥法 の差 は明 らかで な くな った。 この よ うに, リン酸 肥料 の供 給 が制 限 され て い る場 合 の, リン酸 の施 肥法 につ いて は, なお検 討 ・改善 の余地 が あ る と思 われ る。

ⅤⅠ

Ⅰ お

り に

マ ング ローブ下 の堆積 物 に由来す る土 壌 に つ いて, そ の生 成 ・分類 ・性 質 ・利 用 に際 し て の 問題 や 改良 法 な どを みて きた。 こ こで は,水 田 と して の利用 しか考 えて いな いが,こ れ は小 農 のた めの農 地 の拡 大 こそが,現 在 の 東 南 ア ジア にお ける最 大 の関心事 で あ る と考 え るか らで あ る。 とはい って も,熱 帯 低湿 地 の本 格 的 開発 は, 大 きい資本 投下 な しで は不 可 能 で あ り, そ の場 合, よ り集約 的 な利用 の 仕 方 が模 索 され るか も しれ な い。 た とえ ば, ゴ ム, コ コナ ッツ, オ イル ・パ ー ムの プ ラ ン テ ー シ ョンや, パ イナ ップル, ミカ ンな どの 果 樹 園, あ るい はバ ン コク周 辺 にみ られ るよ うな,小 輪 中 と高 うね によ る読 菜栽培 な どが 考 え られ る。 さ らに は, エ ビや魚 の養殖 も, 現 にあ る利用 法 の一 つ で あ る。 た だ, いか な る利用法 を とるに して も,個 々の土壌 の特 性 を正 確 に把握 し, 改良 を はか る こ とが必 須 で あ り, そ のた め に は利用 の前 段 階 で の綿密 な 土 壌調査 が不可 欠 で あ ろ う。 参 考 文 献 1. Andriesse

,

J

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表 2 潮位の呼称 と各潮位の満潮時冠水頻度 ( a) ,な らびに半島マ レーシアのマ ングローブ 地帯 におけ る各潮位の実測高 ( 海図基準面か らの高 さ ,m)
図 2 Sul f aque nt‑ Sul f a que pt‑ Sul GcTr opa quept 系列 の土壌断 面発達過程模式 図 ( va nBr e e me nandPons l1 978 ])
表 4 バ ンコク平野の代表的酸性硫酸塩土壌 と対照非酸性硫酸塩土壌の肥沃度的諸性質

参照

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