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「「お化け調査」―各国の人々の自然観、死生観、宗教観、そして家族の大切さ―」 利用統計を見る

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「「お化け調査」―各国の人々の自然観、死生観、

宗教観、そして家族の大切さ―」

著者

吉野 諒三

雑誌名

「エコ・フィロソフィ」研究 Vol.8 別冊

8

ページ

13-20

発行年

2014-03-25

URL

http://doi.org/10.34428/00007488

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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「お化け調査」

―各国の人々の自然観、死生観、宗教観、そして家族の大切さ―

吉野 諒三(統計数理研究所調査科学研究センター)

こんにちは、統計数理研究所の吉野と申します。菊地先生のお話をうかがっていて、こういうお話 をじっくり聞くのは初めてだったので、色んなことを考えて、自分が話すことをどんどん忘れていま すけれども、役割をみてやっていきます。私は統計数理研究所にいますが、われわれの研究所という のは戦時中に始まりまして、名前から何をやっているのか分からないようなものが戦時中にできれば、 想像できるように戦略的研究ですよね、暗号解読とか、オペレーションズ・リサーチとか。大抵、戦 争が終わるとこんなところはつぶされてしまうのですけれども、当時のアメリカ軍はよく日本のこと を調べていて、どこにどんな人材がいるかというのを調べて、戦後の民主化に活用できるような政府 の統計調査とか、民主主義を発展させるための世論調査を作り上げることを、研究所の先輩たちを利 用して進めていったわけです。 統計数理というのは、統計と数理ではなく、統計数理という一つの概念で、みなさんは、ふつう数 理統計というのは聞きますよね。数学とか確率論の学問の中で。数理統計というのは、数学的に厳密 な確率論のもとで机上の空論みたいなことをやっていて、ちっとも現場では使えないじゃないか、役 に立たないじゃないか、という批判があった。戦前のある時期から、そうではなくて、社会の現実の 問題をとりあげて、それを統計的なアプローチで解決しよう、あるいは、統計的な新しい手法を開発 して解決しよう、そういう概念として統計数理というのが出てきて、その後研究所ができたという話 です。 先ほど申しましたように、残念なことに戦時中ですから、戦略的研究に結びついていましたけれど も、戦後の豊かな国、民主の世界を作り上げるために、そういう新たな使命を帯びて続いてきました。 その中で、日本人の国民性調査というものが、1953 年からずっと行なわれておりまして、今年もや りますけれども、60 年目です。還暦を迎えるような次第で、私が生まれる前からずっとやっているわ けですね。私は平成元年に統計数理研究所に入りまして、そのときから国際比較研究に携わって、ずっ とやってきました。それについてお話しします。 国際比較研究をやっていて、海外の人たちと交流があるのですが、一昨年の震災があった時に、海 外の人からいろいろメールが送られてきて、日本の様子を各国のメディアが海外に伝えていて、「あ んな大災害があったのに、日本人はなんであんなに冷静で、整然としていられるのか。各国では、す ぐ暴動が起きちゃって、すぐ色んなお店が略奪されちゃう。ところが、日本人は、がれきの中でスー パーマーケットの前に一列に並んで順番を待っている。なんであんなに冷静でいられるのか。」と。 私なりに一生懸命考えて、日本人の国民性研究をしているわけだから、各国の国民性だとかいろいろ

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なことを考えて、自然観とか生命観とかを考えて、答えをだそうとして試行錯誤しています。まだ解 答があるわけではないのですが、それを冒頭に出しておいて、色んな話をします。私の話はいつも、 精神分裂的に色んなところにいっちゃいますので、ご了解ください。 さて、先ほど申しましたように、私は「日本人の国民性」研究から、国際比較研究をずっとやって きました。今は、ここ10 年ほどですが、日本を含む東アジアの国との比較とか、環太平洋の国との 比較とか、アジア太平洋との比較を行っています。日本人の国民性調査から一つの例をあげてみたい と思います。いつも私の話を聞いている人は、「まただ」と思われるかもしれませんが、一つの質問 は、「もし生まれ変われるとしたら、今度は男に生まれたいですか、女に生まれたいですか」という ものです。まず、(会場の)男の人だけに聞きますけれど、今度生まれ変われるとしたら、また男がい いと思う人、手をあげてください。今度は女がいいなと思う人・・・。それ以外・・・。では、今度 は女の人だけに聞きます。生まれ変わるなら、今度は男がいいという人・・・。また女がいいなとい う人・・・。それ以外・・・、はい。これは昭和33 年からずっと聞いているのですけれども、不思 議なことに、男の回答はほとんど変わらず、9 割方が「また男がいい」というのです。男は男に、が 9 割ですね。ほんの数%は女がいいと言ってですね、それ以外の番外編というか、「神様に生まれた い」とか、「犬に生まれたい」とか・・・God と Dog で逆なんですけどね、そんなのが出てきます。 ところが、女性を見てみますと、昭和33 年というと、まだ一般家庭には電気冷蔵庫とか、電気掃除 機なんてあまりないような時代でした。「また女に生まれたい」という女の人は26~27%でした。「今 度は男がいい」という女の人が62~63%いたのです。それが、どんどん変わってきて、この辺(1968 年頃)で逆転してきました。この辺くらいになると昭和33 年と平成 7 年かな、元の数字が完全に逆 転しちゃって、つまり、漸近的に上がり続けております。日本人の国民性調査にはいろいろな質問項 目があるのですけれども、男の答えが全然変わらない、あんなに何十年経っても変わらないというこ とと、逆に、女の人があんなにドラスティックに変わっているっていうのは、なんていうか、日本の 戦後の状況を、ただの男女の問題だけでなく、日本の姿を象徴的に表しているようなデータだという ことで、私はいつも紹介しているんです。 もう一つ、別の例です。これは自由回答項目で、「あなたにとって一番大切なものは何ですか、何 でもいいから答えてください」と聞くわけです。ご覧の通り自由回答ですから、あらゆるバラエティ がある単語が出てくるのですけれども、それをカテゴライズしてこのように並べてみると、昔は、当 たり前ですけれど「生命・健康・自分自身」というのが青の部分ですね。ところが、このあたり(1978 年)からずっと、「家族」が突出しています。日本人というのは一般回答傾向として、極端な回答を避 けるということが、国際比較の中で分かっています。極端な回答を避けるというのは、「あなたは満 足ですか」と聞くと、「大変満足」とか「大変不満」とか、アメリカ人だったらはっきり言うわけで す。ところが、日本人は、あまりはっきりとは言わなくて、「まあまあ満足」だとか「まあまあ不満」 だとか、その程度です。中間回答傾向というのですが、それがある。ところが、家族の大切さについ

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ては、日本を含め、どこの国も、7ポイント尺度で7あたりですね、一番高くてはっきりしている。 ですから、人類が何百万年も生きてきたのは、やはり家族の大切さ、人類だけじゃなくて動物もそう かもしれませんが、家族の大切さとか、そういうものがあるということが、人類普遍の価値観ではな いかと私は思っているのです。 さて、国際比較をやっていますと、色んな統計的な、技術的なことがあるのですが、あまりうるさ いことは今日は避けます。さて、別の質問項目をあげます。「ここ1 ヶ月の間につぎのようなものに 悩みましたか」というものです。頭痛だとか背中の痛みだとかですね。国民性の調査でこんな医療関 係の質問が入っていて、何の関係もないじゃないかと思うのですけれども、ちょっとデータを見てみ ましょう。まず、こちらで1980 年代から 90 年代はじめに、日本を含むアメリカとヨーロッパの 5 カ 国の7 カ国比較のデータになるのですが、先ほどお見せした項目で、症状を訴えた個数の平均値を出 しているのですね。濃い色が女の人で、この青っぽいのが男の人です。7 カ国の中で一番多いのが、 どこの国も男と女を比べると、女の人の方が訴える症状が高いんです。イタリア、フランスが高いで すね。一方、日本が7 カ国の中で一番少ないから、日本が一番健康そうに見えますよね。特に日本の 男は一番少ないわけだから、日本の男が一番健康そうに見えます。ところが、よく考えてみてくださ い。女の人の方がどこの国も寿命が長いですよね。それから、幼児死亡率を考えると、男の方が死亡 率が高くて、女の人は低いですよね。要するに丈夫なんですよね。それから、残念なことに先進国の 中で日本人の男の自殺率は高いのです。ついこの辺までOECD でトップだったんだけど、韓国がい つの間にか抜いちゃってもっと多いらしいのですが。いずれにしろ、そんな状況ですね。そうすると、 これは体のことを質問しているけれども、もしかしたら、心の答えが出たかなというのが、私の一つ の解釈です。というのは、男は本当に悩んでいると、知らない調査員がやってきて聞いても「余計な お世話だ、知るか、どこも悪くないよ」って言って閉じこもっちゃいがちで、閉じこもるからなかな かストレスが発散しないで、もっとどんどん状況が悪くなっていく。女の人は「ここ痛い、あそこ痛 い」と簡単に言うし、それを言う友達もたくさんいると。電車の中に乗っていると、知らないおばさ んともすぐ友達になって語り合ってる。それが悪いんじゃなくて、それがあるからうまくストレス解 消して、健康を保っているのかもしれない。まあ、一つの解釈ですね。皆さんもっといい解釈がある かもしれませんけど。いずれにしろ、何を言いたいかというと、われわれの言う世論調査のような手 法で調査していると、それはあくまで「こう聞いたら、こう答えている」という行動的なレベルでの データであって、それが何を本当に意味するかは別の話だから注意しなさいよということですね。 これは別の話ですけれども、ディストレスのデータ、苦悩の尺度です。アメリカの方で、苦悩とか 悩みとか苦痛の尺度を作ってやっているので、それを同じ様に日本の人にもやってみたというもので す。そのデータをぱっと見ると、苦悩や苦痛が最も低いのは、男の50 代後半、女は 60 代前半である と。これを研究した人は、恐らく定年退職の頃がほっとした時期だろうと解釈を与えている。ところ が、これが書いてあった本の別の章を見ると、男性の自殺率が書いてあって、50 代がピークなんです

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よね。50 代はほっとしていて苦悩が低かったって言ったのと矛盾しますよね。どうも臨床心理なん かでは、お医者さんと患者さんとの信頼関係が成り立っていて、そこで色んな尺度で調べるものと、 それをいきなり世論調査で知らない面接員がやってきて協力してください、答えてくださいっていう 場合の尺度とは意味が違うのかもしれないし、あるいはそもそも聞くときに、本当にうつ状態だった り、悩みが深い人は、それを、特に男の場合は、言わないんじゃないか。たいしたことがなければ、 「ああ、悩んでますよ、大変なんですよ」と言うかもしれないけれど。それから、日本の男は閉じこ もっちゃうから、もっと悪化して、誰にも相談しない。閉じこもっちゃうから、事態が悪化して、自 殺率が高くなってしまう。一方、本当の自殺率は男は高いけれども、自殺未遂の率は女の方が高いと いう。自己開示性に関わっていそうで、死にたくないのだけど「死んでやる」と。ちょっと余計なこ とを言いましたけれども、われわれの調査というのは単に表面の数字を追っているのじゃなくて、文 化差とか男女差をよく考えて、そのデータが本当は何を意味するかということを考えながら研究して いるのです。 さて、自然観に話は変わります。日本人の国民性の中で昔から聞いている質問があります。「自然 と人間との関係について、次のような意見があります。あなたがこのうち真実に近いと思うものはど れですか?1、2、3」と書いてあって、人間が幸福になるためには自然に従わなければならない、 あるいは自然を利用しなければならない、あるいは自然を征服しなければならないという、「従う」、 「利用」、「征服」の3 択ですね。日本人のデータを見ますと、昭和 33 年くらいだと「自然を利用」 というのは割とコンスタントにずっと続いていますね。でこぼこはあるけれども、まあまあずっとあ まり変化がない。問題なのは、「自然に従う」と「自然を征服」ですね。昭和33 年のときは、「自然 を征服」が「従う」よりも多かったけれども、68 年から 73 年くらいで逆転して、「自然を征服」と いうのはもうあんまりいなくなって、「自然に従う」が一番多くなっているわけです。日本人の国民 性ではいろいろなことを聞いているのですけれども、国民性というくらいだから、そんなコロコロ変 わるようなものは国民性じゃないですよね。比較的安定しているものをつかもうとしているんだけれ ども、時系列比較しても、そんなに極端には変わらないはずなんです。ただ、注意しなきゃいけない のは、ひとつはこの 68 年から 73 年の間のところは、オイルショックとかニクソンショックがあっ て、あるいは公害問題とか、たいへんな事件がありました。あの時期は、自然に関しても、他のこと もガラッと変わっちゃった。経済的にも悪い時期でした。だから、あの時期を見ると、その前後で意 識が変わっている、という質問項目が目立ちます。それ以外の時は、時代は緩やかに変わっていくわ けですから、そんなに極端に変化しないのですけども、そういう注意点があります。同じ質問をいろ いろなところで聞いていますけども、これは80 年代から 90 年代ぐらいのですね。日本、イタリア、 フランスと書いてありますけれども、ぱっと見てイタリアが目立ちますよね。「自然に従う」がすご く多いです。67%とね。そこが理解できなかったんですが、あの頃は緑の党なんてヨーロッパの色ん なところで出てきたりして、活躍しているというのがあるかなとか色んなこと考えたんだけれど、あ

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るいはもっと深いものがあるのかもしれない。アジアと欧米とを比べてみると、アジアの方がやはり 「自然に従う」が多いですね。先ほどの菊地先生のお話にもあったけれども、妖怪が砂漠の遊牧民の ところにはいないっていう。自然が豊かな南ヨーロッパ、あるいは日本、東南アジアも自然が豊かで すよね。自然災害もときどきはあるんだけれども、日本でも。だけども、自然とともに生きていく、 ということが基本にあるだろう。そういうところは多神教で、たくさんの神様が色んなものに宿って いると考えている。一方で、厳しい自然の中東の砂漠とか、あるいは北ヨーロッパの辺、アメリカの ように開拓してやっと生きていくようなところ、そこは厳しい自然を克服すべきものであって、しば しば超人間的な神様を、スーパーナチュラルな神様を想定した一神教になっていますよね。その辺の ことがあるかなぁと、私は今考えているけれども、皆さんの方がもっと宗教観とかご存知なので、もっ といい解釈があるかもしれません。 それからこれが、お化け調査と呼ばれる質問項目に関係するんですけれども、「世間でときどき話 題になることをおうかがいします。このカードにある「超能力」や「空飛ぶ円盤」などについて、あ なたはどんな感じをもちますか。1 から 8 までの言葉をよくごらんになって、a、b、c、d のそれぞれ について、あなたの気持ちにもっともピッタリとする言葉を1 つずつ選んでください」って書いてあ ります。カードにあるというのは、これをカードで見せているわけです。面接調査だから、調査員が これを読むんです、見せないで。読んで、その上でカードとしてはこれだけを見せて、1 は「つまら ない」、2 は「あってほしい・いてほしい」、「いる・ある」、「おそろしい・こわい」、「あってほしくな い・いてほしくない」、「おもしろい・たのしい」、「ばかばかしい・いない・ない」、「おそろしくない・ こわくない」と。一個一個、超能力や念力について、この中であなたの感じに近いものはどれですか と選ばせるんです。あるいは、空飛ぶ円盤や宇宙人についてはどうですかと順番に選ばすわけですね。 で、初めてこれを見たとき、調査質問項目としてぐちゃぐちゃしていて、何でこんなの作ったのかわ からなかったんですね。ところが、携わった人の関係者に聞いたら、未熟なのは私で、もっと深い意 味があったということがよく分かりました。これは、一見稚拙な回答選択肢の構成になっているけれ ども、実は深層を探る高等テクニックです。というのは、もともと統計数理研究所というのは、さっ きも言ったように、戦後の民主主義のための世論調査の科学的な思想を作るために、いろいろ研究し てきました。世論調査とか政治というのは、大義名分で動きます。大義名分というのは本音と建前の、 建前の部分です。だから、建前がいけないのではなくて、建前はそれなりに重要であると。それで世 の中が動くことがあるわけです。けれども、いったん環境問題だろうが医療問題だろうが、人々の心 の深層まで入ろうとすると、なかなか普通の世論調査の手法ではうまくいかないわけです。そこで、 一歩でも心の中を、深層構造にアプローチしようと、そういう試みの中でこういうことが考えられた そうなんです。世論調査の場合は、基本的には皆さんのようなインテリだろうが、そうでない方たち も含めて、一人一票の民主主義だから、みんなに聞いてそれを総計して、単純集計で、これ賛成か反 対が多いかとか出すわけですよね。決して、皆さんのほうがインテリだから10 票分あるとか、そん

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なことはないわけです。だけども、深層構造を解明する場合は、そんなことを考えないで、単純集計 で見せなくても、関係する色んな質問項目を総合的に多次元的に見て、統計的にデータの深層構造を 発見するということをするわけです。この質問だけではなくて、いろいろな多様な質問が出てきて、 そのデータに対して解明する、解析するということを私ははじめました。 林知己夫先生という、10 年弱前に亡くなられましたけど、戦後の統計学の柱の一本だと思われる 方がいます。80 年代から林先生が仲間たちと始められた深層構造の多次元データ解析。統計の詳し いことは話しませんけども、数量化Ⅲ類とかを使います。これは、「お化け調査」というニックネー ムをつけましたけれども、ここに柳田国男の「妖怪談義」というのが書いてあって、『ないにもある にもそんな事は実はもう問題ではない。われわれがオバケはどうでもいるものと思った人が、昔は大 いにあり、いまでも少しはある理由が、わからないので困っているだけなのである』というモチベー ションで、研究が始まっているんですね。で、林先生たちはいろいろ調査したのですけれども、それ までの調査票を用いた意識調査では、本音をつかむのに限界があるので、一歩進んだ工夫で深層意識 を垣間見ようと意図して、「オバケ調査」で素朴な宗教的感情、迷信や言い伝え、死に対する感情な どを問うた。通常の意識調査であらわれる人々のタテマエは、それはそれで重要なのではありますが、 複雑な医療問題や環境問題に対処するためには、人々の心の奥にある生命観、自然観、宗教観、死生 観などに触れずには本当の解決は難しい。その試みとしてこの調査が遂行されたわけです。 ところが、結果を見てみますと、80 年代の結果を見ると、素朴な宗教感情、超自然に対する感情、 雪男やUFO などの代表的なもの、幽霊、人のたたりなどの精神的なもの、カッパ、龍などの架空の 生き物について、どの対象についても、最も多いのは「いない・ない・ばかばかしい」です。まあ、 合理的な答えですね。存在を肯定するものはさすがに少ない。しかし、興味や期待の感情は、特に近 代的なもの、UFO とかそういうものに対しては比較的多い。そのような関心は、地方の米沢よりも 東京、そして若い年齢層の方が、それから年齢との相関があるんですけど、高学歴の方が興味が高い。 後の研究では、選択肢のなかで1 番と 7 番をあわせて「合理派」と称して、それ以外の 2、3、4、5、 6 を「合理派でない人」と分けたんです。こんなに選択肢があるのに、結局は二つに分けたいってい う意識があったらしいんです。普通、いろいろな調査をしますと、性別で比べたり、年齢で比べたり、 学歴で比べたり、収入で比べたりするわけですね。だけど、そういう外から測れる外的属性ではなく て、それを乗り越えて、直接は見えないパーソナリティ、人間の態度、今言うところの「合理派」と か「合理派じゃない」という態度、そういう外的属性を乗り越えたタイプの属性があって、それがい ろいろなものに対する意識とか回答とかに大きな影響を与えているんじゃないか。あるいは、回答を 区別するときの予測値になるのではないかと、そういうモチベーションで一生懸命研究しています。 統計的な詳しいことはあまり述べませんけれども、今言ったことに関連するようなデータを少しお見 せします。 これは、1958 年、昭和 33 年と 2008 年、50 年間の差の 2 回の調査で、「あの世を信じるか」とい

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う回答を比べています。年齢別に比べますと、あの世を信じるのは、若い人がこの程度。年寄りもま あ、信じている人は、若い人よりは少ないけどまあ同じくらいですね。それで若い人は、昔は信じて いなかった。ところが、今、というか5 年ほど前、若者であの世を信じる人がこんなに多くなった。 若い人と年寄りを比べると、今は年寄りよりも若い方が信じていると。細かいデータは、皆さん資料 があるので、後でご覧になってください。あるいは、もっと詳しくは統計数理研究所のウェブサイト に行ってリポートをダウンロードするなり、あるいはリポートをリクエストするなりしてください。 それから、気になる迷信ですけれども、いろいろ調べていますけれども、やっぱり気にしている人 は6 割から 7 割方いるんですよね。「いやな夢をみる」とか、「ジンクス」とか。悪い方角に行ったり、 引っ越したりするのは、それほど多くはないですけど、足せばそれでも50%弱いるわけですよね。だ から、迷信を気にしている人は決して少なくない。 それから、これは死生観の調査データですけれども、これも詳しいデータはいちいち言いませんが、 「次に書いてあることについてどう思いますか」と聞いていまして、「自分はなにか大きな見えない 力によって生かされている」とか、「ある人が、どこで生まれ、いつ死ぬかは、その人の運命によって 決まっており、人の力では変えられない」とか、「人は死んでも、繰り返し生まれ変わる」とか、「自 分が死んでも、自然の一部になって生き続ける」とか、「人類全体の進歩と幸福のためにできること をやってみたい」、あるいは「自分を犠牲にしてでも、その人のために自分で尽くしたいと思ったこ とがある」、「自分の主義主張のために死ぬことは立派なことだ」、「自殺するとき、自分の子供を道連 れにする人の気持ちは、よくわかる」、「恋する者どうしが心中する、ということは美しい」とか、い ろいろ書いてありますけど、こういうものに対して「そう思う」人が割といるわけですね。ただ、「恋 人同士の心中」は流行らないみたいで、9割方は「そうは思わない」ですね、日本は。ただ、数年前 のいろいろな事件を見ると、インターネットで知らない者同士が一緒になって車の中で練炭自殺とか。 恋人同士は流行らないんだけども、知らない者同士の自殺が流行っている。それからもう一つ、「子 供を道連れの自殺」ってありますよね、親子心中の話です。日本はまあ、7割弱方が「そう思わない」 で、「そう思う」は10%なんですけど。ただ、そういうことがあったっていうのはわかりますね。親 子の関係、ファミリーの関係ということで。だけども、他の国は必ずしもそうではなくて、アメリカ 人にこれ言ってもわからないんです。アメリカ人は個人主義だから、親と子は別人格だから、子供を 道連れにしたら殺人になると。それから、親子心中して親が生き残っちゃって、子供だけ死んだって いうケースがありますね。日本の場合は、しばしば情状酌量になると。だけども、アメリカの場合は 殺人罪です。で、中国調査を一昨年やったときに、台湾の人は日本の気持ちがわかると言うけど、中 国の本土は分からないって言うんですよ。まあ、相手が男だったせいなのかもわからないけど。中国っ てとこは、男の子供に家計を継がせるっていう伝統がありますからね。 あと、「霊魂の存在を信じるか」という質問ですけれども、先ほどもいったようにいろいろ出てい ますが、これは色んな質問項目を合わせて合計点を作って、順位付けみたいなものをしたものです。

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そうしたら、シンガポール、台湾、香港は、まあそういうものを信じるのが多い。この中では、日本 と韓国は真ん中にいますけども、中国本土が下にいます。どちらかというと合理的なんですね。 今のお化け調査の質問項目で、合理派じゃなくて感情派のところを見ると、やはり台湾、日本が上 なんだけども、これを見てください。アメリカが合理派なのは、分かりますが、中国がもっと多いわ けですね。アメリカと中国は、あれほど政治体制が真逆みたいに見えるけれども、実はパーソナリティ でいうと、すごく似ているなって思うんです。だから、たとえば政治でも、どちらの国もグランドビ ジョンで30 年後とか 50 年計画を立てますよね。けれども、やっているうちに、いろいろな問題が出 てくれば、朝令暮改で変えることができるわけですね、アメリカも中国もね。だけど日本はそれがで きない。一回作ったら、それを変えようとすると役人の首が飛ぶから。誰かが責任を取らなきゃいけ ないので。 こういう、合理派か合理派でないかという話を、先輩たちは、医療問題で、がん患者のパーソナリ ティを調べてがん告知の是非を判別するとか、あるいは原子力発電への反対賛成の住民運動の意識調 査で、そのデータを解明するときなどに応用し始めていました。 これは科学と自然観という関係での質問ですけれども、後でちょっと見てください。結論をひとつ 言うと、日米欧の7 カ国の比較の場合は、日本とドイツというのは、科学に対してちょっと批判的な ところがあるんだけれど、日本の場合は、人のこころの解明とか、社会経済の問題の解決には、科学 が役に立つとはあまり思っていなくて、悲観的なんです。だけどドイツの方は、精神分析とか、マル クスの経済理論が発達したのを見たら分かるように、そっちにはまだポジティブで、科学は役に立つ と言っているんです。で、近代医療の可能性には欧米の方がむしろ否定的で、代替医療っていう、た とえば漢方医療とか按摩マッサージとか鍼とか、そういうものに対して興味を持つ人が、むしろアジ アより多くて、逆に、中国の方は、自分たちの医療を信じないのか、東洋医学にあまりポジティブじゃ なくて、近代的な医療の方に対してポジティブであるというようなことがあります。 最初の冒頭の問題。なぜ、あんな大震災があったのに冷静でいられるかの話ですけれど、いろいろ 考えているんですが、こじつけようと思ったら、国民性の差や、色んな価値観の差について絡めて言 えるかもしれません。けれども、よく考えてみると、経験から学んだっていうのが一番じゃないかと 思っているんですね。昔、震災、大震災があって、いろいろな不幸なことがあって、いろいろな暴動 が起きたわけですよ。略奪とか。そんなことが二度と起きてはいけないということを、繰り返し、み んな学習したはずなんです。だから冷静でいられたんじゃないか、というのがひとつの答えです。た だ、あのままの状態が何日も何日も続くようなことがあれば、耐え切れなくて、また混乱が広まった かもしれないということです。 すみません、いろいろ飛ばしましたけども、詳しい話はレポートでご確認ください。

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