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マウスモデルを用いた炎症性腸疾患の新規予防/治療物質及び関連分子の探索

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Title マウスモデルを用いた炎症性腸疾患の新規予防/治療物質及び関連分子の探索( 本文(Fulltext) ) Author(s) 寒川, 祐見 Report No.(Doctoral Degree) 博士(獣医学) 乙第152号 Issue Date 2017-09-22 Type 博士論文 Version ETD URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/73122 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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マウスモデルを用いた炎症性腸疾患の

新規予防

/治療物質及び関連分子の探索

2017 年

岐阜大学大学院連合獣医学研究科

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マウスモデルを用いた炎症性腸疾患の

新規予防

/治療物質及び関連分子の探索

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1 目次 序論 --- 2 第1 章 マウス DSS 誘発大腸炎モデルを用いた候補物質の評価 --- 4 諸言 --- 5 材料及び方法 --- 8 結果 --- 14 考察 --- 17 小括 --- 21 第2 章 AOM/DSS 誘発大腸癌モデルを用いた候補物質の評価及び 抗大腸炎/大腸 癌抑制作用の機序解析 --- 22 緒言 --- 23 材料及び方法 --- 25 結果 --- 33 考察 --- 37 小括 --- 42 第 3 章 マウス大腸炎/大腸癌モデルにおける AKAP13 及び ROCK の発現の検討 --- 44 緒言 --- 45 材料及び方法 --- 47 結果 --- 53 考察 --- 56 小括 --- 59 第4 章 DSS 誘発大腸炎における ROCK 阻害の影響に関する検討 --- 60 諸言 --- 61 材料及び方法 --- 62 結果 --- 67 考察 --- 71 小活 --- 74 結論 --- 75 謝辞 --- 78 要旨 --- 79 Abstract --- 83 引用文献 --- 87 略号一覧 --- 112 図表 --- 114

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序論

炎症性腸疾患 (inflammatory bowel disease, IBD) は再燃と寛解を繰り返す,下痢, 血便及び腹痛等の臨床症状を伴う難治性慢性炎症性疾患であり,厚生労働省指定 難病である (1-2)。IBD の主な病型として潰瘍性大腸炎 (ulcerative colitis, UC) と クローン病 (Crohn's disease, CD) があり,UC は結腸及び直腸のび漫性潰瘍,CD は回腸~近位結腸の潰瘍や線維化を伴う肉芽腫性病変が特徴である (3-5)。日本 では特にUC 患者数が増加しており,平成 25 年度厚生労働省保健・衛生行政業務 報告では患者数が 166,060 人と報告され,指定難病の中で最も患者数が多い疾患 となっている (6)。 近年の癌研究から,慢性炎症は潜在的な腫瘍誘発因子であることが示されてお り,炎症が長期間持続する IBD は大腸癌の重大なリスクとして認識されている (7)。そのため,IBD における炎症反応を抑えることが大腸癌への進展予防に効果 的であると考えられる。このような背景を踏まえて,IBD 治療では,抗炎症剤に よる臨床症状の緩和だけではなく,内視鏡的に粘膜に炎症が認められない「粘膜 治癒」を治療目標とする考え方が提唱され (8),新たな治療法の開発が進められ ている。これまでの UC 治療では,UC は原因不明で根本的な治療がないとの考 え方から,日本では基準薬として5-アミノサリチル酸製剤,補助薬としてステロ イドや azathioprine,6-mercaptopurine 等の免疫抑制剤が用いられ,併せて血球成 分除去療法等も行われている。さらに,これらの内科的治療が効かない場合には 外科的処置が行われる (6, 9)。近年では,UC を含む IBD が免疫制御機構の異常 による疾患と認識され,tumor necrosis factor-α (TNF-a) やインテグリンに対する

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3 抗体医薬が治療に使用されるようになった (10-11)。IBD に対する抗 TNF-a 抗体 は治療効果が高く,世界的に使用が広がっている (6) ものの治療効果は完全では なく,より有効な治療物質/治療法の開発が必要とされている (12-13)。 そこで,本研究ではマウス大腸炎及び大腸癌モデルを用いて新規 IBD 予防/治 療物質を探索するとともに,IBD 治療につながり得る分子機序を明らかにするこ とを目的とした。第1 章では新規 IBD 予防/治療候補物質について,マウス dextran sulfate sodium (DSS) 誘発大腸炎モデルを用いて候補物質の効果を検証した。また, cDNA マイクロアレイ解析を行いマウスモデルにおける大腸炎関連分子を探索し た。第2 章では第 1 章で有効性が認められた物質について,マウス azoxymethane (AOM)/DSS 誘発大腸癌モデルを用いて大腸癌抑制作用を検証した。さらに,大腸 炎及び大腸癌抑制作用機序を検証するため,同物質のDSS 誘発大腸炎初期におけ る変化及びヒト大腸癌細胞株の増殖活性への影響を評価した。第3 章では,第 1 章においてマウスDSS 誘発大腸炎の炎症期において,発現変動が認められた分子

であるA-kinase anchor protein 13 (AKAP13) について,マウスを用いた DSS 誘発 大腸炎及びAOM/DSS 誘発大腸癌モデルにおける病態への関与を検討した。加え て第 4 章では,AKAP13 の下流で機能する Rho-associated coiled-coil containing protein kinase (ROCK) の阻害が DSS 誘発大腸炎に与える影響を検討した。

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第1 章

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5 諸言 げっ歯類を用いたDSS 誘発大腸炎モデルは,IBD の急性炎症と粘膜損傷の病態 を反映したモデルとして治療薬の開発や病態の機序解析に広く使用されている (14-16)。本モデルは 1~5%の DSS を飲水投与することでげっ歯類に大腸炎を誘 発するモデルであり (17-20),5-FU 誘発腸炎 (21),トリニトロベンゼンスルホン 酸 (trinitrobenzenesulfonic acid, TNBS) 誘発大腸炎 (22),T 細胞移入大腸炎モデル (23) 等の他の大腸炎モデルと比較して簡便に大腸炎を誘発できることが特徴で ある。さらに,DSS 誘発大腸炎モデルは急性炎症モデルとしてだけでなく IBD の 慢性炎症を反映したモデルとしても使用できる (24-25) ことや,DSS による大腸 粘膜バリアの破綻に続いてinterleukin (IL) -1β (IL-1b),IL-6 及び TNF-a 等の炎症

誘発性サイトカイン濃度が炎症局所及び血中において増加する点が IBD に類似

するとされている (26)。そこで,本章では DSS 誘発大腸炎モデルを使用して新 規IBD 予防/治療候補物質の効果を検討した。

これまでの IBD 患者の病態解析から,血小板が IBD の病態に関与することが 明らかになっている (27)。血小板は炎症誘導能を有し,組織損傷と修復の過程に お い て contact-dependent シグナ ル (i.e. formation of circulating PLT-leukocyte complex) によって白血球を誘導/活性化し,外来微生物に対する応答を引き起こ す (28)。その結果,動員された白血球から放出されるサイトカインによってさら なる組織傷害が引き起こされる。

これらの炎症の際には,炎症局所における活性酸素種 (reactive oxygen species, ROS) の産生が亢進する (29-31) だけでなく,ROS からの保護機構であるスーパ

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ーオキシドジスムターゼ (superoxide dismutase, SOD) 活性と総グルタチオン濃度 が減少することが示されている (29, 32-33)。そのため,ROS に対する機能性食品 の抗酸化作用が疾患予防や健康維持のために注目されている。IBD においても抗 酸化物質は炎症の軽減に有用であると考えられ (34),他の薬剤と併用することで より高い治療効果が期待される。例えば,ポリフェノールやフラボノイドのよう な植物性化学物質のIBD 治療への有効性は既に示されており (35),大腸癌及び乳 癌を含むいくつかの一般的な癌における臨床データも示されている (36)。 これらの背景を踏まえて血小板凝集抑制剤であるcilostazol (CZ) と抗酸化物質 である酵素処理イソクエルシトリン (enzymatically modified isoquercitrin, EMIQ) 及びα-リポ酸 (α-lipoic acid, ALA) を新規 IBD 予防/治療候補物質に選定した。CZ (6[-4 (-1-Cyclohexyl-1H-tetrazol-5-yl) butyloxy]-3,4-dihydroquinolin-2 (1H) -one) は 2-oxo-quinoline 誘導体であり,phosphodiesterase (PDE) 3A の阻害によって血小板 の活性化及び凝集を阻害する薬剤である (37-39)。環状ヌクレオチド PDE は,セ カ ン ド メ ッ セ ン ジ ャ ー と し て , 環 状 ア デ ノ シ ン 一 リ ン 酸 (cyclic adenosine monophosphate, cAMP) 及び環状グアノシン一リン酸の細胞内濃度を調節する酵 素であり,細胞の増殖及び分化等を調節するシグナル伝達カスケードにおいて中 心的役割を果たしている (40)。他の血小板凝集抑制剤は,血小板の機能に関連し た自然免疫応答が関与する疾患への使用や応用研究が進められているが (28, 40), 消化器疾患における使用例は少ない。EMIQ は,野菜や果物に含まれるルチンの 酵素的グリコシル化によってから産生される isoquercitrin に 1~複数の糖鎖が付 加 さ れ た グ リ コ シ ル 化 配 糖 体 で あ る 。EMIQ は 水 溶 性 で あり , quercetin , isoquercitrin 及び rutin (quercetin-3-O-rutinoside) より吸収性に優れた抗炎症及び抗

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酸化物質であることが既に示されている (20, 41-43)。EMIQ は抗炎症及び抗酸化 作用に加えて,肝臓 (44-47) 及び腎臓 (48-50) において,抗腫瘍効果を有するこ とも示されていることから,IBD 及び続発する大腸癌の予防にも有用であると推 察される。ALA は,5-(1,2-dithiolan-3-yl) pentanoicacid 又は thiocticacid として知ら れる天然の代謝性抗酸化物質である (51)。細胞内グルタチオン濃度を増加させて ビタミンC 及びビタミン E のような他の生体内抗酸化物質を再生することが知ら れ (52),肝臓での抗腫瘍効果も示されている (53)。これまでに,EMIQ 及び ALA が腫瘍形成抑制を有すること及び薬物処置によって誘発された毒性変化に対し て酸化ストレスの軽減や抗炎症作用を示すことが肝臓及び腎臓で確認されてい る (49-50, 54) ものの,これら 2 物質の IBD 又は IBD モデルである DSS 誘発大腸 炎における有効性は明らかにされていない。興味深いことに,quercetin と ALA は CZ と同様に血小板の凝集を阻害することが知られている (55-56)。さらに, quercetin は CZ と同様に PDE3 の活性を阻害することも知られている (57)。そこ で,これらの多種な物質共通のシグナル伝達及びサイトカインを介してDSS 誘発 大腸炎を予防する可能性があると仮説を立て実験を行った。

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8 材料及び方法 被験物質等の由来 EMIQ (純度: > 97%,0.1%の quercetin を含む) は三栄源エフ・エフ・アイ株式 会社 (大阪府豊中市) より供与された。CZ (純度: > 98.0%, 分子量: 369.47, CAS 番 号: 73963-72-1) 及び ALA (純度: > 99.0%, 分子量: 206.32, CAS 番号: 1077-28-7) を 東 京 化 成 工 業 株 式 会 社 ( 東 京 都 中 央 区 ) よ り 購 入 し た 。 DSS ( 分 子 量 : 36,000-50,000, CAS 番号: 9011-18-1) を MP Biomedicals (Santa Ana, CA, USA) より 購入した。 供試動物 科研製薬株式会社 (静岡県藤枝市,HS 財団認定番号: 15-047) の動物実験ガイ ドラインに従って倫理的に配慮して動物を飼育した。4 週齢の BALB/cAnNCrlCrlj 系統の雌性マウスを日本チャールス・リバー株式会社 (厚木繁殖センター, 神奈 川県厚木市) から購入し,5 日間実験環境に馴化させた。飼育室を温度 23 ± 3 ºC, 湿度50 ± 20%に設定し,飼育室内の換気頻度を 1 時間あたり 17 回以上とした。 明暗サイクルを12 時間とし,7:00~19:00 を明期とした。1 ケージ (W 160 mm × D 300 mm × H 140 mm, 金網ケージ) 当たり 3 匹のマウスを収容した。馴化期間中, 基礎飼料 (オリエンタル酵母工業株式会社, 東京都板橋区) 及び上水 (静岡県藤 枝市) を自由摂取させた。馴化後,マウスを層別無作為化法にて,最新の体重に 基づいて各群に振り分け試験に使用した。剖検日にはマウスをイソフルラン麻酔 下で安楽殺した。

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9 実験方法 群及び動物数を下表の通りとした。 群名称 被験物質 (用量) DSS 濃度 動物数 (匹) DSS - 5% 12 CZ+DSS CZ (0.3%) 5% 12 EMIQ+DSS EMIQ (1.5%) 5% 12 ALA+DSS ALA (0.2%) 5% 12 Control - - 4 CZ,EMIQ 及び ALA を 0.3,1.5 及び 0.2%の用量にて混餌投与した。用量は既 報 (CZ:58-59 , EMIQ: 60-61, ALA: 62) を参考にして実施した予備試験結果から, 嗜好性に問題がなく,一般状態にも変化が認められない用量を選択した。 DSS を注射用水 (株式会社大塚製薬工場, 徳島県鳴門市) に 5 w/v%の用量にて 溶解させ給水ビンを用いて飲水投与した。DSS の用量は,予備試験において 3,4 又は5%の DSS を 8 日間飲水投与した結果,体重及び体重増加率の減少及び軟便 が明瞭に認められた5%に設定した。Control 群には自由に上水 (静岡県藤枝市) を 飲水させた。 混餌投与開始日を DSS 飲水投与開始日の 5 日前とし,剖検日まで継続した。 DSS 飲水投与は 8 日間 (day 1~day 8) とし,day 8 に剖検した。飼育期間中には 一般状態観察 (毎日),体重測定 (day 1, 5, 7, 8),糞便スコア観察 (day 5, 7) を実施 した。

剖検時 (day 8) に血液,大腸及び肝臓を採材した。遠心分離 (3000 rpm,15 分) により血液から血漿を分離した。大腸は大腸長 (回盲部~肛門) を測定の後,病 理組織学検査及び遺伝子解析用に処理した。病理組織学検査用のために,遠位大

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腸及び肝臓を 10% 中性緩衝ホルマリンで固定した。残りの大腸の粘膜及び粘膜

下組織はcDNA マイクロアレイによる遺伝子解析のために切開及び生理食塩液に

よ る 洗 浄 を 行 っ た 後 に カ ミ ソ リ の 刃 を 用 い て 粘 膜 を 剥 離 し ,RNAlater® Stabilization Solution (Life Technologies, USA) 中に採取し,使用時まで-80℃にて保 管した。肝臓は固定後に重量を測定し,相対重量 (肝重量/体重) を算出した。

Disease activity index (DAI)

糞便スコアとして,下痢スコア及び出血スコアを求めた。便潜血の判定には, 便潜血検査試薬 (便潜血スライドシオノギ,塩野義製薬株式会社,大阪府大阪市) を用いた。糞便スコアの基準は,下痢スコアを0: normal stool,1: softer stool,2: unformed stool,3: diarrhea,4: no stool,血便スコアを 0: no blood,1: weak hemoccult-positive,2: moderate hemoccult-positive,3: strong hemoccult-positive,4: visual blood とした (63)。さらに day 1 の体重を基準として,day 5 及び day 7 にお ける体重変化率 (%) をスコア化した。スコアの基準は 0: ≧98.01%,1: 98.00~ 95.01%,2: 95.00~90.01%,3: 90.00~85.01%,4: ≦85.00%とした。糞便スコア及 び体重減少スコアの和をDAI とした。

血漿中サイトカイン濃度測定

Bio-Plex Pro TM Mouse Cytokine 23-plexassay kit と Bio-Rad Bio-Plex Systems (バ イオ・ラッドラボラトリーズ株式会社,Hercules,CA,USA) を用いて,以下の 項目を測定した: IL-1α (IL-1a),IL-1β (IL-1b),IL-2,IL-3,IL-4,IL-5,IL-6,IL-9, IL-10,IL-12 (p40),IL-12 (p70),IL-13,IL-17A,eotaxin,granulocyte-colony stimulating

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factor (G-CSF) , granulocyte-macrophage colony stimulating factor (GM-CSF) , interferon-γ (INF-g),keratinocyte derived cytokine (KC),monocyte chemotactic protein 1 (MCP-1),macrophage inflammatory protein (MIP) -1α (MIP-1a),MIP-1β (MIP-1b), regulated on activation normal T cell expressed and secreted (RANTES) 及び TNF-a。

病理組織学的検査

遠位大腸を輪切りに切り出し,常法に従ってパラフィン包埋,薄切及びヘマト キシリン・エオジン (haematoxylin-eosin, H&E) 染色を行った。H&E 染色標本を 用いて粘膜下水腫,粘膜欠損及び炎症細胞浸潤の程度をスコア化した。粘膜下水 腫スコアの基準は1: なし,2: 限局性,3: 多巣性,4: び漫性,粘膜欠損スコアの 基準は1: なし,2: < 1/4,3: 1/4~1/2,4: 1/2~3/4,5: > 3/4,炎症細胞浸潤スコア の基準は1: なし,2: 軽度,3: 中等度,4: 重度とした。また,投与物の安全性の 確認を目的に,肝臓についても同様に H&E 染色標本を作製し,毒性所見の有無 を確認した。一部の個体については,常法に従って過ヨウ素酸シッフ (periodic acid-Schiff stain, PAS) 染色を行った。

cDNA マイクロアレイ解析

RNeasy® MiniKit (QIAGEN, Hilden, Germany) を使用し,キットの取扱説明書に 従って大腸粘膜のtotal RNA を抽出した。得られた RNA 溶液中の total RNA 濃度 及び純度 (Abs260/Abs280, Abs260/Abs230) を,ナノドロップ (ND-1000, Thermo Fisher Scientific Inc., Massachusetts, USA) を用いて測定した。また,total RNA の品 質 (RIN) を確認するため,バイオアナライザ (2100, Agilent Technologies Inc.,

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Santa Clara,CA,USA) を用いて分析した。Control 群を除く各群から,濃度,純 度及び品質が良好な上位4 例を抽出して cDNA マイクロアレイ解析に用いた。

続いて,100 ng の total RNA から Low Imput Quick Amp Labeling Kit (One-Color, Agilent Technologies Inc., Santa Clara,CA,USA) を用いてラベル化 cRNA を合成 した。さらに,RNeasy® MiniKit (QIAGEN, Hilden, Germany) を用いて,合成した ラベル化cRNA を精製した。得られたラベル化 cRNA 溶液の Abs260 及び Abs550 を,ナノドロップ (ND-1000, Thermo Fisher Scientific Inc., Massachusetts, USA) を 用いて測定し,cRNA 収量及び Cy3 色素取込率を算出した。なお,cRNA 収量が 1.65 μg 以上,Cy3 色素の取込率が 9 pmol/mg 以上の基準を満たしたサンプルを使 用した。また,ラベル化cRNA の品質を確認するため,バイオアナライザ (2100, Agilent Technologies Inc., Santa Clara,CA,USA) を用いて分析した。ラベル化サ ンプルのシグナルの大部分が,200 から 2000 塩基長のサイズ範囲に位置している ことを確認した。

その後,ハイブリダイゼーション及び洗浄として,ラベル化cRNA 600 ng 及び Gene Expression Hybridization Kit (Agilent Technologies Inc., Santa Clara,CA,USA) を用いてハイブリダイゼーションサンプルを調製し,マイクロアレイ (Sure Print G3 Mouse GE 8×60K ) にハイブリダイゼーション (65℃,約 17 時間) させた。ハ イブリダイゼーション後,Gene Expression Wash Buffer を用いてアレイスライド グラスを洗浄し,スキャニングに供した。スキャニング及び数値化には,マイク ロアレイスキャナ (G2565BA,Agilent Technologies Inc., Santa Clara,CA,USA) を 用い,得られた画像から,Feature Extraction を用いてスポットの数値化データを 得た。得られた数値化データについて,Gene Spring GX 13.1 (Agilent Technologies

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Inc., Santa Clara,CA,USA) を用いてデータ解析を実施し,DSS 群と比較して CZ, EMIQ 又は ALA 群で Fold change > 1.5 の変動を示した遺伝子群を用いて,Venn 図を作成した (64)。

データの補正とフィルタリング条件は下記の通りとした。 (1) Normalization: Shiftto 75 percentile

(2) Base line Transformation: median of Control Samples (3) Quality control: Filter Probesets by Expression

Lower cut-off: 20.0 Upper cut-off: 100.0

Entities where at least 100 percent of sample sinany 1 out of 2 condition shavevalues within cut-off

統計処理

体重,大腸長及び血漿中サイトカイン濃度は,被験物質間の比較を行うことを 目的にTukey’s multiple comparison test を実施した。DAI 及び病理組織学的検査ス コアについてはWilcoxon signed-rank test を実施した。いずれの解析においても有 意水準を両側 5%とした。統計解析には SAS (SAS InstituteInc., Cary, NC) 及び EXSUS (株式会社 CAC クロア, 東京都中央区) を使用した。

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14 結果 体重,DAI 及び肝重量 DSS 飲水期間に DSS 処置動物の体重は徐々に減少した (Table 1)。Control 群で は体重の減少は認められなかった。CZ,EMIQ 及び ALA の体重減少抑制効果は 明らかでなかった。 同様にDSS 処置動物では,DSS 飲水投与期間が長くなるにつれて DAI スコア が増加した (Figure 1A)。Control 群では DAI スコアの増加は認められなかった。 CZ,EMIQ 及び ALA 処置群では day 7 において,DSS 群と比較してこれら DAI スコアの指標のうち,下痢スコアが有意に減少した。肝重量 (平均絶対重量及び 平均相対重量) に群間の明らかな差は認められなかった。 大腸長 DSS 群では control 群と比較して,有意な大腸長の短縮が認められた (Figure 1B)。 CZ+DSS 群では,DSS 群と比較して有意に大腸長の短縮が抑制された。EMIQ 及 びALA 処置群では大腸長短縮抑制効果は明らかでなかった。 血漿中サイトカイン濃度 DSS 群では control 群と比較して,血漿中の IL-1a,IL-6,IL-17,TNF-a,G-CSF 及び KC の濃度増加が認められた (Figure 2)。CZ,EMIQ 及び ALA 処置群では DSS 群と比較して血漿中 IL-6 及び TNF-a 濃度の有意な減少が認められた。さら にCZ+DSS 群では IL-17 及び KC,EMIQ+DSS 群では KC,ALA+DSS 群では KC

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の血漿中濃度がDSS 群と比較して有意に減少した。有意差が認められなかったも

のの,CZ,EMIQ 及び ALA 群のいずれかにおいて,IL-1b,IL-2,IL-4,IL-5,IL-13, IFN-g,MCP-1 及び MIP-1a の濃度減少する傾向が認められた。全群における血漿 中IL-9 濃度及び CZ+DSS 群における血漿中 IL-10 濃度は検出限界以下であった。 病理組織学的検査 遠位大腸においてcontrol 群に異常は認められなかった (Figure 3)。DSS 処置動 物では,粘膜下組織の水腫,粘膜欠損及び粘膜固有層~粘膜下組織における炎症 細胞浸潤が認められた。DSS 群では水腫の程度に個体差が認められたものの,粘 膜欠損は観察部位の半分以上に高度な炎症細胞浸潤を伴って認められた。これら の変化はCZ,EMIQ 及び ALA 処置によって軽減された。まず,CZ+DSS 群では 粘膜欠損及び炎症細胞浸潤,EMIQ+DSS 群では水腫及び粘膜欠損,ALA+DSS 群 では水腫及び炎症細胞浸潤スコアがそれぞれDSS 群と比較して有意に減少した。 また,CZ,EMIQ 及び ALA 処置によって陰窩拡張が認められた。粘液の産生は CZ,EMIQ 及び ALA 処置によって DSS 群より亢進した (Figure 4)。

肝臓においてCZ,EMIQ 及び ALA 処置による重量変化及び毒性所見は認めら れなかった (Table 1)。

cDNA マイクロアレイ解析

遺伝子発現解析において,DSS 群と比較して CZ,EMIQ 及び ALA 処置群で共 通して発現増加した遺伝子プローブ数は,発現減少した遺伝子プローブ数より多 かった (Figure 5, Table 2)。Pathway 解析では,CZ,EMIQ 及び ALA 処置群におい

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て,それぞれ,6,9 及び 13 の Pathway 変動が抽出された (Table 3)。抽出された Pathway のうち,Type II interferon signaling が EMIQ+DSS 群及び ALA+DSS 群に, ESC Pluripotency Pathways が EMIQ+DSS 群及び CZ+DSS 群に,Id Signaling Pathway がALA+DSS 群及び CZ+DSS 群に共通であった。

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17 考察 DSS による大腸炎誘発機序は明らかでないものの,DSS が大腸粘膜バリアを破 壊して,IL-1,IL-6 及び TNF-a を含む炎症誘発性サイトカインの血漿中濃度増加 を伴う炎症反応を誘導すると考えられている (26)。マウス DSS 誘発大腸炎にお けるサイトカインプロファイルは,組織学的変化を反映することが示されている (15, 65)。本章では,血小板凝集抑制作用を介した抗炎症作用が期待される CZ と, 抗酸化作用を介した抗炎症作用が期待されるEMIQ 及び ALA を解析対象とした。 その結果,これら3 物質の全てがいずれかの評価項目において,DSS 誘発大腸炎 における大腸炎抑制作用を示した。特に 23 種の血漿中サイトカイン濃度測定で

はCZ,EMIQ 及び ALA 処置によって,IBD の病態において主要な炎症誘発性サ イトカインであるIL-6 及び TNF-a の血漿中濃度が有意に減少したことから,3 物 質が抗炎症作用を有すると判断した。PAS 染色によって示される粘膜上皮のムチ ン産生は,CZ,EMIQ 及び ALA 処置によって亢進した。陰窩拡張は粘液産生が 亢進し貯留して生じたものと推察された。この結果より,血漿中サイトカイン濃 度測定結果に一致して,CZ,EMIQ 及び ALA がムチン産生によって粘膜上皮に 対する傷害を軽減したことが示唆された。こられの抗炎症及び粘膜保護作用は H&E 染色標本を用いた病理組織学的検査においても確認され,DSS 群において 観察された粘膜下組織における水腫,粘膜欠損及び粘膜固有層~粘膜下組織への 炎症細胞浸潤のスコアは3 物質の処置により軽減し,組織傷害の抑制によって糞 便スコア及び体重減少スコアから算出したDAI スコアが低下したと考えられた。 CZ は下痢,大腸長短縮,血漿サイトカイン濃度上昇及び大腸組織傷害に対し

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18 て顕著な抑制作用を示した。CZ は高親油性であり (39),大腸粘膜上皮には CZ の標的であるPDE3A が特異的に発現するため (40),CZ が大腸組織に分布して粘 膜保護効果を発揮した可能性が考えられる。さらに,CZ と同様に大腸炎抑制作 用を示したEMIQ は,ラット肝臓において β-naphthoflavone により誘発した酸化 ストレス及びTNF-a シグナルを介した毒性変化に対して抑制的に作用し,炎症を 抑制することが示されている (49)。本章において実施した血漿中サイトカイン濃 度測定においても,既報に一致して血漿中TNF-a 濃度の減少が認められた。また, cDNA マイクロアレイ解析結果からも EMIQ は II 型 IFN シグナル及び p38 mitogen-activated protein kinase (MAPK) シグナル伝達を介して大腸炎を抑制する 可能性が示唆された。

ALA はヒドロキシラジカルや一重項酸素等の活性酸素種を除去することが知 られる抗酸化物質である (66, 67)。既報において,ALA の強制経口投与によって 2 サイクルの 3% DSS 飲水投与により誘発された大腸炎が,複数のサイトカイン とその制御因子であるnuclear factor-kappa B (NF-κB),signal transducer and activator of transcription (STAT) 3 及び cyclo-oxygenase-2 を介して軽減されたことが示され ている (16)。本研究でも ALA 処置により,大腸組織傷害と血漿中 IL-1b,IL-2, IL-6 及び TNF-a 濃度増加が抑制された。cDNA マイクロアレイ解析結果からは, ALA は既報と同様の炎症性シグナル伝達に加えて,アポトーシス,DNA の複製 及びWnt シグナル伝達を調整する可能性が考えられた。

近年の抗TNF-a 抗体を用いた IBD 治療では,IBD の病態の主となる炎症及び免 疫反応を軽減して粘膜治癒を誘導することを目的としている (13, 68)。本研究に 用いた3 物質は,血漿中の TNF-a を有意に減少させたことから,IBD においても

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19 TNF-a 産生抑制作用が期待される。さらに,IBD 患者では炎症局所において Th17 細胞が産生する IL-6 等の炎症誘発性サイトカインがさらなる炎症反応の引き金 となり,IBD の病態を憎悪させることが知られている (69)。本研究の血漿中サイ トカイン濃度測定により CZ が血漿中 IL-17 濃度を減少させた。また,CZ+DSS 群において単球及びマクロファージの浸潤に関与する KC (70-71) の血漿中濃度 の減少も認められた。以上より,PDE3 阻害剤である CZ は,IBD の予防/治療へ の有効性が期待される。

cDNA マイクロアレイ解析において抽出された A-kinase anchoring protein (AKAP) 13 は Rho の GTPase を活性化させる Rho GTPase guanine-nucleaotide 交換 因子ドメインを含むAKAP ファミリーの 1 つである (72-74)。AKAP13 は,心肥 大においてcAMP 依存性 protein kinase A (PKA) signaling を統合する重要な役割を 果たすことが示されている (75)。今回,DSS 処置による Akap13 及び IL-6 の高発 現はCZ,EMIQ 及び ALA 投与によって減少することが明らかとなった。これは, AKAP-LBC/IKKb 活性化複合体が NF-kB 及び IL-6 の転写を活性化するとの報告と 一致している (76)。さらに興味深いことに,Rho キナーゼは,消化管粘膜上皮バ リアの調節に重要な役割を果たしている。大腸粘膜上皮におけるAKAP13 の高発 現が,粘膜治癒に関与する可能性がある。逆に,AKAP13 の過剰発現は乳癌 (77), 甲状腺癌 (78) 及び大腸癌 (79-80) 等で報告されており,Rho の活性化が腫瘍の 増殖や転移に関与することが示唆されている。しかしながら,消化管粘膜上皮に おける腫瘍形成に対するAKAP13 の役割は,さらにマウスの大腸炎関連癌モデル において検討する必要があると考えられた。 本研究によって,異なる作用機序を有するCZ,EMIQ 及び ALA の 3 物質が,

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20 共通して血漿中炎症誘発性サイトカイン濃度を減少させ,粘膜傷害を軽減するこ とが示された。IBD 患者は,持続的な炎症反応によって大腸炎関連大腸癌 (colitis-associated cancer) の高いリスクを有することから (4),大腸炎関連大腸癌 の適切な動物モデルを用いて,これらの物質の大腸炎に続発する大腸癌に対する 有効性の検証が必要である。

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21 小括 IBD は日本において増加傾向にある難治性慢性炎症性疾患である。IBD による 慢性炎症は大腸癌のリスクとなることから,IBD を粘膜治癒に導く有効な治療物 質/治療法の開発が求められている。IBD の病態に血小板の活性化と ROS による 組織傷害が関与すると考えられため,第1 章ではこれらの病態機序に拮抗的に働 いて大腸炎抑制作用を示す可能性が考えられる物質として,血小板凝集抑制剤の CZ と,抗酸化物質である EMIQ 及び ALA の計 3 物質を取り上げ,その効果を検 証した。検証には IBD の病態モデルとして広く使用されているマウス DSS 誘発 大腸炎モデルを使用した。BALB/c マウスに 0.3% CZ (CZ+DSS 群),1.5% EMIQ (EMIQ+DSS 群) 又は 0.2% ALA (ALA+DSS 群) を混餌投与するとともに,5% DSS を8 日間飲水投与して大腸炎を誘発した。DSS 飲水投与期間中には体重測定及び 糞便観察を行い,剖検後には,大腸長測定,血漿中サイトカイン濃度測定,遠位 大腸における病理組織学的検査及び大腸粘膜のcDNA マイクロアレイ解析を実施 した。その結果,いずれの群においてもDSS 飲水投与開始 7 日目における糞便の 下痢スコアが DSS 群と比較して有意に減少した。さらに CZ+DSS 群では,大腸 長の短縮がDSS 群と比較して有意に抑制された。また,いずれの群においても大 腸組織傷害スコア及び血漿中 IL-6/TNF-a 濃度が DSS 群と比較して有意に減少し た。これらの結果から,CZ,EMIQ 及び ALA はいずれも大腸炎抑制作用を有し, IBD の治療に有用である可能性が考えられた。また,cDNA マイクロアレイ解析 において 3 物質に共通して発現が減少した AKAP13 を見出し,本分子と IBD の 関連について検討を進めることした。

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第2 章

AOM/DSS 誘発大腸癌モデルを用いた候補物質の評価及び 抗大腸炎/大腸癌抑制作用の機序解析

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緒言

近年の発癌研究から,様々な臓器において慢性炎症が発癌のリスクになること が明らかとなっており (7, 81),疫学調査では全ての癌のうちの 25%が慢性炎症と 関連することが示されている (82)。慢性炎症から発癌に至る機序には,炎症細胞 によって産生される活性酸素種 (reactive oxygen species, ROS) の関与がある (83)。 炎症細胞によって炎症局所で産生されるROS は,DNA を傷害又は不安定化し, 細胞増殖制御から外れた異常な細胞増殖を引き起こす (84-85)。慢性炎症が持続 するIBD は大腸癌の重大なリスクであり,IBD に続発する大腸癌は大腸炎関連大 腸癌と呼ばれる。大腸炎関連大腸癌において,ROS はイニシエーション及びプロ モーションを進行させ (82, 85-86), “inflammation-dysplasia-carcinoma” と呼ばれ る一連の病理学的変化の誘導に関与している (87)。 第1 章において IBD の発症機序解析や治療法の研究に広く使用されているマウ スDSS 誘発大腸炎モデルにおいて,血小板凝集抑制剤である CZ 及び抗酸化物質 であるEMIQ と ALA が DSS による大腸粘膜傷害を軽減し,血漿中 TNF-a 及び IL-6 濃度を減少させる効果を有することを示した。しかしながら,これら物質の大腸

炎関連大腸癌への有効性はこれまで明らかにされていない。そこで第 2 章では,

AOM/DSS 誘発大腸癌モデルを用いて CZ,EMIQ 及び ALA の大腸癌抑制作用に ついて検証した。

AOM/DSS 誘発大腸癌モデルは,大腸炎関連大腸癌の病態を反映するモデルで あり,本モデルを用いて天然物質及び合成化合物の化学的予防効果に関する多く の研究が実施されている (88-89)。本章では CZ,EMIQ 及び ALA の AOM/DSS

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24 誘発大腸癌モデルに対する有効性を,DSS 飲水投与を 1 サイクルのみ行う短期評 価と,2 サイクル行う長期評価にて検証した。さらに,本試験には比較対照とし て大腸癌を含む腫瘍性病変において抑制効果を有することが示されているアン トシアニン (anthocyanin, AC) 投与群を設定した (90-94)。加えて,DSS 誘発大腸 炎及びAOM/DSS 誘発大腸癌モデルにおけるさらなる抑制作用機序を明らかにす るため,短期DSS 誘発大腸炎抑制試験及びヒト大腸癌細胞を用いた in vitro 細胞 増殖抑制試験を実施した。

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材料及び方法

試験物質

EMIQ (純度: > 97%,0.1%の quercetin を含む) 及び AC (extract of the purple sweet potato) は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (大阪府豊中市) より供与された。CZ (純度: > 98.0%, 分子量: 369.47, CAS 番号: 73963-72-1),ALA (純度: > 99.0%, 分子 量: 206.32, CAS 番号: 1077-28-7) 及び 5-bromo-2'-deoxyuridine (BrdU, 純度: > 98%, CAS 番号: 59-14-3) を東京化成工業株式会社 (東京都中央区) より購入した。DSS (分子量: 36,000-50,000, CAS 番号: 9011-18-1) を MP Biomedicals (Santa Ana, CA, USA) より購入した。AOM (純度: > 98%, CAS 番号: 25843-45-2) をシグマアルド リッチ (St. Louis, MO, USA) より購入した。

供試動物 科研製薬株式会社 (静岡県藤枝市, HS 財団認定番号: 15-047) の動物実験ガイ ドラインに従って倫理的に配慮して動物を飼育した。4 週齢の BALB/cAnNCrlCrlj 系統の雌性マウスを日本チャールス・リバー株式会社 (厚木繁殖センター, 神奈 川県厚木市) から購入し,7 日間以上実験環境に馴化させた。飼育室を温度 23 ± 3 ºC,湿度 50 ± 20%に設定し,飼育室内の換気頻度を 1 時間あたり 17 回以上とし た。明暗サイクルを12 時間とし,7:00~19:00 を明期とした。1 ケージ (W 160 mm × D 300 mm × H 140 mm, 床敷きケージ) 当たり 3~5 匹のマウスを収容した。馴 化期間中,基礎飼料 (オリエンタル酵母工業株式会社, 東京都板橋区) 及び上水 (静岡県藤枝市) を自由摂取させた。馴化後,マウスを層別無作為化法にて,最新

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26 の体重に基づいて各群に振り分け試験に使用した。剖検日にはマウスをイソフル ラン麻酔下で安楽殺した。 実験方法 1 (in vivo 試験) 群及び動物数を下表の通りとした。 ①AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験 群名称 被験物質 (用量) AOM 用量 DSS 濃度 動物数 (匹) 短期 長期 AOM+DSS - 10 mg/kg 3% 8 8 AOM+DSS+CZ CZ (0.3%) 10 mg/kg 3% 8 8 AOM+DSS+EMIQ EMIQ (1.5%) 10 mg/kg 3% 8 8 AOM+DSS+ALA ALA (0.2%) 10 mg/kg 3% 8 8 AOM+DSS+AC AC (5%) 10 mg/kg 3% 8 8 AOM - 10 mg/kg - 8 8 ②短期DSS 誘発大腸炎抑制試験 群名称 被験物質 (用量) DSS 濃度 動物数 (匹)

Day 2 Day 4 Day 6

DSS - 4% 4 4 4 DSS+CZ CZ (0.3%) 4% 4 4 4 DSS+EMIQ EMIQ (1.5%) 4% 4 4 4 DSS+ALA ALA (0.2%) 4% 4 4 4 Control - - 4 4 4 CZ,EMIQ,ALA 及び AC を 0.3,1.5,0.2 及び 5.0%の用量で混餌投与した。 AC の用量は既報に準じて決定した (95-96)。AOM の用量は既報に準じて 10 mg/kg とし単回腹腔内投与した (97)。DSS を注射用水 (株式会社大塚製薬工場, 徳島県 鳴門市) に 3 又は 4 w/v%の用量にて溶解させ給水ビンを用いて飲水投与した。 AOM 群又は control 群には自由に上水 (静岡県藤枝市) を飲水させた。

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27 0) の 1 週間前とし,剖検日まで継続した。AOM 腹腔内投与 (week 0) の 1 週間 後に3% DSS を飲水投与した。DSS 飲水投与は 1 サイクルの飲水期間を 1 週間と し,1 サイクル (短期評価) 又は 2 サイクル (長期評価) の飲水投与を行った。1 回目と2 回目の DSS 飲水投与間には 2 週間の休薬期間を設けた。休薬期間中は自 由に上水 (静岡県藤枝市) を飲水させた。短期評価群では,DSS 飲水投与終了後 3 週間 (week 5),長期評価群では最終 DSS 飲水投与終了後 4 週間 (week 9) に剖 検した。 短期 DSS 誘発大腸炎抑制試験では,混餌投与開始日を DSS 飲水投与開始日 (day 1) の 7 日前とし,剖検日まで継続した。4% DSS を飲水投与した。DSS 飲水 投与は8 日間 (day 1~day 8) として day 2, 4, 6 に剖検した。BrdU は各剖検日の 前々日及び前日に100 mg/kg の用量にて腹腔内投与した。

いずれの試験においても飼育期間中には一般状態観察 (毎日) 及び体重測定 (1 週間に 2 回以上) を実施した。AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験では,さらに, 大腸重量,1 個体あたりの腫瘤数及び腫瘍容積,ムチン枯渇巣(mucin depleted foci, MDF) 数及び変異陰窩巣 (aberrant crypt foci, ACF) 数を測定した。AOM/DSS 誘発 大腸癌抑制試験では実験期間中に短期評価AOM+DSS+CZ 群の 1 例が死亡したが, その他に死亡は認められなかった。なお,大腸長の測定では,大腸摘出操作によ り損傷を生じた個体については,大腸長測定の対象外とした。その結果,大腸長 測定の対象個体は,AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験では,短期評価における AOM+DSS+CZ 群を N = 6,短期評価における AOM+DSS+AC 群,長期評価にお けるAOM+DSS+CZ 群,長期評価における AOM+DSS+AC 群及び長期評価におけ るAOM 群を N = 7 とした。残りの群では全例 (N = 8) を大腸長の解析対象とし

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た。短期DSS 誘発大腸炎抑制試験では,DSS+ALA 群の day 4,DSS+CZ 群の day 4 及び day 6 では N = 3 とし,残りの群では全例 (N = 4) を大腸長の解析対象とし た。 剖検時に血液及び大腸を採材した。遠心分離 (3000 rpm,15 分) により血液か ら血漿を分離した。大腸は大腸長 (回盲部~肛門) を測定の後,病理組織学検査 及び免疫組織化学染色のために10% 中性緩衝ホルマリン (N = 4/group) 又は 4% パラホルムアルデヒド (N = 4/group) で固定した。 血液生化学検査 AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験の長期評価において血液生化学検査を実施した (N = 8)。検査には LABOSPECT006 (株式会社日立ハイテクノロジーズ, 東京都港 区) を 使 用 し , 以 下 の 項 目 を 検 査 し た : total protein (T.Protein) , albumin , albumin/globulin ratio (A/G ratio) , total bilirubin (T.Bilirubin) , aspartate aminotransferase (AST),alanine aminotransferase (ALT),alkaline phosphatase (ALP), cholesterol,triglyceride,phospholipid,glucose,blood urea nitrogen (BUN),creatinine。

大腸腫瘤数及び容積の測定

AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験で大腸に肉眼的に認められた腫瘤について縦, 横,高さの 3 辺をデジタルノギスで測定し,次の式により容積 (mm3) を算出し た: length (mm) × width (mm) × height (mm) × 0.526 (98)。腫瘤容積の和を total mass volume として個体毎に算出した。その後,H&E 染色用 (N = 4) 及び免疫組織化 学染色用 (N = 4) に処理した。

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29 MDF 及び ACF の検出 AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験の短期評価では MDF 及び ACF を検出するため に,それぞれ1% アルシアンブルー (pH 2.5) で 30 分間及び 0.2% メチレンブル ーで5 分間染色した。既報に従って MDF と ACF の数を実体顕微鏡下で計数した (99)。MDF は既報 (100-101) に従い「ムチンの減少又は枯渇が認められる 2 つ以 上の陰窩の集合であり,陰窩の歪み及び周辺正常組織より隆起した病変」と定義 した。ACF は既報 (102) に従い「正常の陰窩と比較して大型で,周辺正常組織よ り隆起し,陰窩周辺がメチレンブルーに濃染する病変」と定義した。 病理組織学的検査 常法に従って大腸のパラフィン包埋,薄切及びH&E 染色を行った。AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験において,短期評価の全例 (N = 7-8/group) 及び長期評価の半 数例 (N = 4/group) について,大腸全長 (大腸~肛門) の長軸組織切片について, 腫瘍性病変の総数 (multiplicity) をカウントした。なお,短期評価 AOM+DSS+ALA 群の1例では観察に適した標本が得られなかったため解析対象から除外し,解析 対象を N = 7 とした。大腸の腫瘍性病変を,既報に従って low-grade 異形成, high-grade 異形成,腺腫及び腺癌に分類した (89)。さらに,炎症の評価として既 報 (103) に従い,炎症スコアを 0: 異常は認められない,1: 正常と比較して陰窩 が1/3 まで短縮する又は粘膜に軽度の炎症細胞浸潤及び水腫が認められる,2: 正 常と比較して陰窩が2/3 まで短縮する又は粘膜に中等度の炎症細胞浸潤が認めら れる,3: 正常陰窩が認められないが粘膜上皮は残存する又は粘膜に高度な炎症細

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30 胞浸潤が認められる,4: 粘膜上皮が欠損する又は高度な炎症細胞浸潤が粘膜,粘 膜下組織及び粘膜固有層に認められる,とした。遠位大腸~肛門を解析対象とし た。短期DSS 誘発大腸炎抑制試験では,遠位大腸の短軸切片を作製し,炎症細胞 浸潤,水腫及び粘膜傷害の有無を観察した。 短期DSS 誘発大腸炎抑制試験では遠位大腸を輪切りに切り出し,常法に従って パラフィン包埋,薄切及び H&E 染色を行い,組織傷害を観察した。一部の個体 については,常法に従ってPAS 染色を行った。 免疫組織化学染色方法及び評価方法 AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験の長期評価の半数例 (N = 4/group) について免 疫組織化学染色を行った。病理組織学的検査では,より多くの腫瘍性病変を観察 するために,約5 mm の間隔で大腸全長 (遠位大腸~肛門) を短軸に切り出した。 免疫組織化学染色をp53,β-catenin,Ki-67,Iba1,Nox1 及び Cyclin D1 について 実施した (Table 4)。 免疫組織化学染色を以下の手順で実施した。脱パラフィンした標本を必要に応 じてオートクレーブを用いて121°C,15 分の抗原賦活を行った。その後,3% H2O2 メタノール液で内因性ペルオキシダーゼを除去し,一次抗体と反応させた。一次 抗体反応の条件を室温下で 1~3 時間又は 4°C 下で一晩とした。抗原抗体反応の 可視化にはEnvision Dual Link System-HRP (Dako, Glostrup, Denmark) 及び Liquid DAB+Substrate Chromogen System (Dako, Glostrup, Denmark) を用い,取扱い手順に 従い実施した。次いで,標本をヘマトキシリンで対比染色し,顕微鏡検査のため にカバーガラスで封入した。

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免疫組織化学染色標本は,既報 (104-105) に準じた半定量的評価を行った。解 析対象は,β-catenin,Ki-67,Iba1,Nox1 及び Cyclin D1 の免疫組織化学染色標本 とした。半定量的評価法では,各視野の陽性細胞の割合及び染色強度の和を求め た。陽性細胞の割合のスコアを0: 0%,1: 1~25%,2: 26~50%,3: 51~75%,4: 76 ~100%,染色強度のスコアを 0: negative,1: mild,2: moderate,3: strong とした。 陽性細胞の割合及び染色強度の和を合計スコアとし,合計スコアを0~7 とした。 スコアはマウス1 匹あたり 9~10 個の腺癌について,100 倍の倍率で観察した。 短期DSS 誘発大腸炎抑制試験では,BrdU (1:80,M0744,Dako,Glostrup,Denmark) に対する免疫組織化学染色を以下の手順で実施した。脱パラフィンした標本をpH 6 条件下にてオートクレーブを用いて 121°C,15 分の抗原賦活を行い,3% H2O2 メタノール液で内因性ペルオキシダーゼを除去した。一次抗体反応は室温で 0.5

時間とした。抗原抗体反応の可視化には Envision Dual Link System-HRP (Dako, Glostrup, Denmark) 及び Liquid DAB+Substrate Chromogen System (Dako, Glostrup, Denmark) を用い,取扱い手順に従い実施した。次いで,標本をヘマトキシリン で対比染色し,顕微鏡検査のためにカバーガラスで封入した。遠位大腸の短軸切 片における1 陰窩当たりの BrdU 陽性上皮細胞を 400 倍にてカウントした。なお, DSS 群の day 2 及び day 4,control 群の day 2,DSS+ALA 群の day 4 では評価に適 した標本を得られなかったため,解析対象をN = 3 とした。

In vitro 腫瘍増殖抑制試験

ヒト大腸癌細胞株としてAmerican Type Culture Collection (Manassas, VA, USA) より入手したHT-29,LS174T,DLD-1 及び COLO205 を用いた。ヒト大腸癌細胞

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株における細胞増殖活性は,ELISA BrdU assay kit (Roche, Basel, Switzerland) を用

いて測定した。測定方法は取扱説明書に準じた。ヒト大腸癌細胞株には HT-29, LS174T,DLD-1 及び COLO205 を用いて,細胞播種濃度をそれぞれ 5×103,1×104, 1×103~5×103及び1×104 cells/mL とした。96 ウェルプレートに 100 µL のヒト大腸 癌細胞株を播種し,CZ (0.03 及び 0.08 mM),EMIQ (83 及び 250 mM),ALA (0.17 及び0.50 mM) 及び AC (83 及び 250 mM) を処理して 5% CO2 インキュベーター で3 日間培養した。続いて,BrdU を添加して 4 時間後に細胞を固定し,90 分間, 抗BrdU 抗体と反応させた。BrdU の取り込みは,基質としてテトラメチルベンジ ジンを用いて細胞をインキュベートすることによって検出し,マイクロプレート リーダーを用いて370 nm の吸光度を測定することにより BrdU 取り込み量を測定 した。本操作はトリプリケイトで3 回繰り返し実施した。 統計処理 全ての結果を平均±標準偏差として表した。測定及び計算によって得られた結 果を統計的にDunnett’s multiple comparison 又は Tukey’s multiple comparison test を 用いて解析した。病理組織学的検査及び免疫組織化学染色スコアを Wilcoxon signed-rank test を用いて解析した。いずれの解析においても有意水準を両側 5%と した。統計解析にはSAS (SAS InstituteInc., Cary, NC) 及び EXSUS (株式会社 CAC クロア, 東京都中央区) を使用した。

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結果

体重 (AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験)

Week 2~5 にかけて DSS 処置動物では体重減少が認められたが,AOM 群では 体重減 少は 認めら れ ず,実 験期 間中を 通 じて体 重が 増加し た (Figure 6)。 AOM+DSS 群では,AOM 群と比較して week 2~3, 5,9 において有意に体重が減少 した。体重推移においてAOM+DSS+CZ 群,AOM+DSS+EMIQ 群,AOM+DSS+ALA 群及び AOM+DSS+AC 群では AOM+DSS 群との有意差は認められなかったが, AOM+DSS+ALA 群で減少する傾向が認められた。

血液生化学検査 (AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験)

各測定項目において,AOM+DSS+CZ 群,AOM+DSS+EMIQ 群,AOM+DSS+ALA 群では AOM+DSS 群と比較して,毒性学的意義のある変動は認められなかった (Table 5)。 大腸長及び大腸重量 (AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験) 短期評価ではDSS を処置した全ての群において AOM 群と比較して,大腸長が 短縮したが,長期評価では明らかな変化は認められなかった (Table 6)。大腸重量 は,短期評価ではいずれの群においても同程度でありAOM+DSS 群と AOM 群間 に有意な差は認められなかったが,長期評価ではAOM+DSS 群と AOM 群間に有 意 な 増 加 が 認 め ら れ た 。AOM+DSS+CZ 群 , AOM+DSS+EMIQ 群 及 び AOM+DSS+AC 群の大腸重量は AOM+DSS 群と比較して有意に減少した。個体ご

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とに大腸重量を大腸長で除して求めた大腸重量/大腸長比は,短期評価では

AOM+DSS 群は AOM 群と比較して増加したが,AOM+DSS 群と CZ,EMIQ,ALA 及び AC 処置群間に有意な変化は認められなかった (Figure 7)。一方,長期評価 で は , 大 腸 重 量 と 同 様 に ,AOM+DSS+CZ 群 , AOM+DSS+EMIQ 群 及 び AOM+DSS+AC 群において AOM+DSS 群と比較して有意な大腸重量/大腸長比の 減少が認められた。 腫瘤数及び容積 (AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験) 腫瘤容積及び腫瘤数は,DSS 処置群において AOM 群と比較して有意に増加し た (Table 6,Figure 7)。腫瘤容積は各被験物質で AOM+DSS 群と比較して有意な 減少は認められなかったものの,AOM+DSS+CZ 群及び AOM+DSS+EMIQ 群では 比較対照群であるAOM+DSS+AC 群と比較して低値であった。腫瘤数も各被験物 質 で AOM+DSS 群 と 比 較 し て 有 意 な 減 少 は 認 め ら れ な か っ た も の の , AOM+DSS+EMIQ 群では AOM+DSS+AC 群と比較して低値であった。

MDF 及び ACF (AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験)

MDF 及び ACF は大腸の中間部~遠位に観察された (Figure 8)。MDF 及び ACF 数はDSS 処置群において AOM 群と比較して有意に増加した (Table 6)。MDF 数 はAOM+DSS+EMIQ 群,AOM+DSS+ALA 群及び AOM+DSS+AC 群で AOM+DSS 群と比較して有意に減少した。ACF 数は AOM+DSS+EMIQ 群で AOM+DSS 群と 比較して有意に減少した。

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病理組織学的検査 (AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験)

AOM 及び DSS の投与により,短期及び長期評価において全ての個体で大腸腫 瘍を誘発した (Table 7, Figure 9)。一方,AOM のみを処置した AOM 群では腫瘍 性病変は認められなかった。腫瘍性病変の総数は,短期及び長期評価において, AOM+DSS 群は AOM 群と比較して有意に増加した。また,AOM+DSS 群におけ る腫瘍病変総数は短期及び長期評価で同程度であった。短期評価において,腫瘍 病変総数はCZ,EMIQ,ALA 及び AC 処置群では,AOM+DSS 群と比較して有意 に減少した。長期評価における腫瘍病変総数は,AOM+DSS+AC 群で AOM+DSS 群と比較して有意に減少した。 炎症スコアは短期及び長期評価において,AOM+DSS 群は AOM 群と比較して 有意に増加した (Table 7)。長期評価では,炎症スコアが AOM+DSS+EMIQ 群及 び AOM+DSS+AC 群で AOM+DSS 群と比較して有意に減少したものの,短期評 価ではCZ,EMIQ,ALA 及び AC 処置による有意な変化は認められなかった。 免疫組織化学染色 (AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験) 腫瘍性病変部の核内におけるβ-catenin,Ki-67 及び Cyclin D1 の陽性像が,周囲 の正常粘膜上皮に比べて顕著に増加した (Table 8, Figure 10)。β-catenin スコアは AOM+DSS+CZ 群及び AOM+DSS+AC 群では AOM+DSS 群と比較して有意に減少 したが,AOM+DSS+EMIQ 群では有意に増加した。Ki-67 スコアは AOM+DSS+CZ, AOM+DSS+ALA 群及び AOM+DSS+AC 群で AOM+DSS 群と比較して有意に減少 した。Cyclin D1 スコアは AOM+DSS 群と比較して,全ての被験物質群及び AOM

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た,腫瘍性病変部における p53 陽性像はほとんど認められなかった (Data not shown)。

Iba1 陽性像は腫瘍性病変部間質に認められた。Iba1 スコアは AOM+DSS+CZ 群, AOM+DSS+EMIQ 群及び AOM+DSS+ALA 群では,AOM+DSS 群と比較して有意 に減少した。 In vitro 腫瘍増殖抑制試験 CZ,ALA 及 AC 処理によって HT-29,LS174T,DLD-1 及び COLO205 細胞株 で BrdU 取り込みが有意に抑制されたが,EMIQ 処理ではいずれの細胞株でも BrdU 取り込みに変化は認められなかった (Figure 11)。 短期 DSS 誘発大腸炎抑制試験

Day 4 及び day 6 において,DSS 群では control 群と比較して有意な大腸長の短 縮が認められた (Figure 12)。しかし,CZ,EMIQ 及び AC 処置による大腸長短縮 抑制効果は明らかではなかった。

BrdU 陽性上皮細胞数を指標とした粘膜上皮の増殖活性は,DSS 群では経時的 に減少した。Control 群では BrdU 陽性上皮細胞数に経時的変化は認められなかっ た。DSS+CZ 群及び DSS+EMIQ 群では day 4 及び day 6 において,DSS+ALA 群 ではではday 4 において,DSS 群と比較して有意な増殖活性の回復が認められた。

病理組織学的検査では,day 6 から DSS 処置により炎症細胞浸潤を伴う粘膜欠 損が認められ,その程度はDSS 群> DSS+ALA 群> DSS+CZ 群> DSS+EMIQ 群の 順に強かった。

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37 考察 マウスAOM/DSS 誘発大腸癌モデルにおける MDF は,DSS で誘発される炎症 によって促進される前癌病変であり,発癌初期の抗腫瘍作用の指標にされている (106)。AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験における短期評価では,CZ,EMIQ 及び ALA 処置により MDF 数が減少した。この結果は,病理組織学的検査による腫瘍 性病変数の評価結果と一致しており,第1 章で示した DSS 誘発大腸炎抑制作用を 介して,CZ,EMIQ 及び ALA は前癌病変を抑制すると考えられた。なお,本試 験では既報と異なりACF より MDF が多く観察された (100)。本試験に使用した BALB/c マウスは AOM/DSS に高感受性であることが知られていることから,ACF

と MDF の発現頻度の差は種及び系統による違いを反映している可能性が考えら れる (103)。 AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験における長期評価では,大腸長,大腸重量,肉 眼的な腫瘤容積及び数,病理組織学的検査による腫瘍性病変数及び炎症の程度並 びに免疫組織化学染色性を評価した。その結果,特に AOM+DSS+CZ 群及び AOM+DSS+EMIQ 群では大腸重量及び腫瘤容積の減少が認められたことから,CZ 及びEMIQ は大腸癌抑制作用を有すると考えられた。同様の結果は,比較対照と して使用したAC (90, 92, 107-110) においても確認されている。 AOM/DSS 誘発大腸癌モデルにおいて,粘膜上皮の持続した細胞増殖は腫瘍形 成に重要な役割を有する。長期評価における大腸腺癌でのKi-67 免疫組織化学染 色評価によって,CZ 及び AC 処置群では無処置群と比較して有意な細胞増殖の 抑制が認められた。これまでのin vitro 研究では,CZ (111),ALA (112-113) 及び

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38 AC (33, 110) が,ヒト大腸癌細胞株に対する増殖抑制作用を有することが報告さ れている。本章にて実施したヒト大腸癌細胞株を用いた細胞増殖への影響評価に おいても,CZ,ALA 及び AC 処置によって全てのヒト大腸癌細胞株で BrdU 取り 込みが減少した。その機序として,CZ の PDE3 阻害作用を介したヒト大腸癌細 胞株の成長阻害が考えられる (111)。CZ は細胞内 cAMP を増加させ (114),増加 したcAMP が細胞死ではなく G1 及び M 期における細胞周期の停止をもたらすこ とが示されている (115)。一方,ALA は,p53 非依存的にミトコンドリア障害を 介してアポトーシスを引き起こすことが知られている (116-117)。また,AC は Akt の抑制と p38 MAPK の活性化によってアポトーシス及び細胞周期停止を誘導 するとされている (118-120)。従って,本章における大腸癌細胞の細胞増殖でも 同様の機序が関与していることが示唆された。

AOM は β-catenin のコドン 33 と 41 に変異を引き起こし,β-catenin の核内移行 を増加させることで,標的遺伝子であるC-myc 及び Cyclin D1 転写を活性化して 細胞増殖を引き起こす (80, 121)。長期評価では,CZ 及び AC 処置によって大腸 腺癌組織におけるβ-catenin と Cyclin D1 の発現抑制が認められた。In vivo 試験で

得られたこれらの結果は,CZ の大腸炎関連大腸癌治療への有効性を示唆してお

り,in vitro 試験における本物質の結果を補足するものと考えられる。なお,

AOM+DSS+EMIQ 群では β-catenin 核内移行の増加が認められたが,EMIQ の抗酸 化作用によってβ-catenin 核内移行と Tcf 複合体と DNA の結合が抑制されて Cyclin D1 の発現が減少したとの報告があることから (122),意義のない偶発的変化であ ると考えられる。

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39 いるものの,ヒト大腸癌細胞株を用いた in vitro 試験では腫瘍細胞に対する直接 的な作用は認められなかった。EMIQ は摂取後,吸収されるまでにほとんどが脱 グリコシル化され,ヒト血中ではquercetin,quercetin-glucuronide 又はその両方と して存在する (123)。今回,代謝産物の血中濃度測定は行わなかったものの,EMIQ を単回投与したラット血漿中では quercetin 及び quercetin-glucuronide 濃度が上昇 することが示されている (124)。Isoquercitrin 及び quercitrin は,ヒト大腸癌細胞 のAkt-mammalian target of rapamycin (125-126) 及び NF-κB (127) を介して ROS の 産生を抑制し腫瘍増殖を阻害する。一方で,抗酸化作用を有するこれらの物質が AMPK シグナルを介してミトコンドリア膜電位を減少させて ROS の産生を亢進 し,アポトーシスを誘導するとの報告がある (128-129)。さらに,EMIQ は isoquercitrin と比べて水に溶けやすく吸収性に優れており (123),ラットを用いた 長期投与試験において毒性変化は認められていない (61, 124)。本試験においても, 血液生化学検査結果に毒性所見は認められなかった。そのため,EMIQ は吸収性 及び安全性の面からisoquercitrin より優れた治療物質となり得ると考えられるが, in vitro 試験においてはさらなる暴露条件等の確認が必要である。

AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験では,DSS+AOM+CZ 群及び DSS+AOM+EMIQ

群では腫瘍間質におけるマクロファージの浸潤が DSS+AOM 群と比較して減少 することが明らかとなった。同様に DSS+AOM+EMIQ 群及び DSS+AOM+AC 群 は組織の炎症スコアが減少した。マクロファージはIBD 患者において主要な ROS 産生源の一つであるため (32, 36),これらの結果は CZ 及び EMIQ の直接的な大 腸癌抑制作用だけでなく抗炎症作用を反映したものと考えられる。この結果は, 急性DSS 誘発大腸炎抑制試験においても確認された。

(43)

40 第1 章では,CZ 及び EMIQ 処置が大腸組織の炎症を軽減させることが明らか になった。本章における短期DSS 誘発大腸炎抑制試験では,DSS が BrdU 陽性上 皮細胞数を減少させることを見出し,CZ 及び EMIQ 処置によって,DSS による BrdU 陽性上皮細胞数の減少が抑制され,細胞増殖が維持されることを見出した。 既報では,DSS による BrdU 陽性上皮細胞数の減少は,アポトーシスの増加及び 細胞周期停止によって引き起こされる可能性があると報告されている (130)。持 続的に粘膜の恒常性を維持することは,IBD を予防するための重要な戦略である ため,短期DSS 誘発大腸炎抑制試験によって明らかとなった CZ と EMIQ の DSS 誘発大腸炎に対する粘膜保護作用は,AOM/DSS 誘発大腸癌モデルにおける抗炎 症性及び二次的な大腸癌抑制作用裏付けるものであった。 一方,AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験における ALA の大腸癌抑制作用は限定的 であった。既報のin vitro 試験では,本章の結果と同様に ALA がヒト大腸癌細胞 株の増殖を抑制することが示されている (113, 131)。その機序として,ALA が p53 依存性のミトコンドリアを介した内因性アポトーシス経路による細胞死の引き 金となる (116, 117)。ラットを用いた実験では ALA を 80 mg/kg の用量で強制経 口投与することで,nuclear erythroid 2-related factor 2 を介して DSS 誘発大腸炎に おける炎症を明確に抑制すること (16) 及び TNBS 誘発性大腸炎を抑制すること (14) が示されている。これらの結果の違いは試験条件の違いによると考えられる が,in vivo 試験による ALA の大腸炎及び大腸癌の抑制効果に関する報告は限定 的であるため,さらなる有効性の確認が必要である。 第2 章において,CZ 及び EMIQ のマウス AOM/DSS 誘発大腸癌モデルに対す る大腸癌抑制作用を示した。その作用機序としてin vivo 試験における抗炎症効果

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(CZ 及び EMIQ) に加え,in vitro 試験における直接的な増殖抑制作用 (CZ) が認 められた。さらに,AOM/DSS 誘発大腸癌抑制試験にて確認された β-catenin の核 内移行及びCyclin D1 発現の抑制により大腸癌抑制作用が示されたと考えられる。 これらの結果より,取り上げた3 物質のうち特に CZ 及び EMIQ が新規 IBD 予 防/治療物質として有効であると考えられた。CZ 及び EMIQ は国内外の公的機関 において,既にその安全性が検証されている。CZ は PDE3 阻害作用を介した血 小板凝集抑制作用及び血管拡張作用を有することから,閉塞性動脈硬化症 (132) や脳梗塞 (133) 等の治療に使用されている。IBD 患者では静脈血栓塞栓症のリス クが高まるとの報告 (134) からも,抗炎症及び抗血栓作用を有する CZ の有用性 が期待される。EMIQ は,Expert Panel of the Flavour and Extract Manufactures Association (FEMA, FEMA No.4225) 及 び U.S. Food and Extract and Drug Administration (US FDA) に よ っ て 一 般 に 安 全 と 認 め ら れ る 物 質 (generally recognized as safe, GRAS, GRAS No.00220) として認可され,既に食品添加物とし

て使用されている。そのため,さらなる有効性の検証によって,IBD 治療への活

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42 小括 第1 章において CZ,EMIQ 及び ALA が DSS 誘発大腸炎を軽減することを確認 した。そこで,これら物質について IBD の予防/治療におけるさらなる有効性の 検証のため,マウスAOM/DSS 誘発大腸癌モデルを用いて大腸癌抑制作用を検証 した。BALB/c マウスに 10 mg/kg の用量にて AOM を単回腹腔内投与し,その後, 3% DSS の 1 週間飲水投与を 1 サイクル (短期評価) 又は 2 サイクル (長期評価) 行い,大腸癌を誘発した。検証にあたり,CZ,EMIQ 及び ALA に加えて抗腫瘍 作用がよく知られる植物由来色素であるAC 処置 (5%, AOM+DSS+AC) 群を設け, 比較対象とした。さらに,大腸炎/大腸癌抑制作用の機序を検証することを目的に, DSS 誘発大腸炎の初期変化の観察及びヒト大腸癌細胞株を用いた in vitro 増殖抑 制試験を行った。 その結果,AOM/DSS 誘発大腸癌モデルを用いた大腸癌抑制試験では,短期評 価において AOM+DSS+EMIQ 群,AOM+DSS+ALA 群及び AOM+DSS+AC 群で AOM+DSS 群と比較して有意に MDF 数が減少した。さらに,長期評価では AOM+DSS+CZ 群及び AOM+DSS+EMIQ 群において大腸重量及び腫瘤容積が AOM+DSS+AC 群より減少し,AC と同程度以上の大腸癌抑制作用を示した。本 効果は,DSS 誘発大腸炎初期において,DSS による大腸粘膜上皮の増殖抑制を CZ 及び EMIQ が抑制して大腸炎を軽減させたことによるものと考えられた。さ らに,免疫染色の結果よりCZ の発がん抑制には大腸癌細胞における β-catenin 及 びCyclin D1 の発現抑制作用が関連することが明らかとなった。さらに in vitro 増 殖抑制試験ではCZ 及び ALA がヒト大腸癌細胞株の増殖活性を直接低下させるこ

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とが明らかとなった。

以上の結果より,CZ 及び EMIQ は大腸炎関連大腸癌を反映した動物モデルに

おいて大腸癌抑制作用を示し,新規 IBD 予防/治療物質として有用である可能性

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44

第3 章

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45 緒言 AKAP13 は第 1 章にて実施したマウス DSS 誘発大腸炎モデルの炎症期における cDNA マイクロアレイ解析で抽出された分子の1つである。AKAP ファミリー蛋 白質は,シグナル伝達のプラットフォームとして細胞内の複数の酵素を正確に機 能させ,シグナル伝達を調節する足場蛋白質である (135)。AKAP13 は AKAP-Lbc としても知られ,protein kinase A 及び protein kinase C 等の複数の protein kinase の 足場となる。また,AKAP13 は Rho-GTPase guanine nucleotide exchange region ドメ インを有しており,RhoA の活性化を介して下流の ROCK1 及び ROCK2 をエフェ クターとして機能させる (136)。RhoA-ROCK シグナルは,アクチン・ミオシン 複合体であるアクトミオシンによるアメーバ様の細胞遊走に関与することが報 告されている。AKAP13/ROCK シグナルが関与する病態としては,心肥大が知ら れているが (137),消化管の病態における役割は十分に検討されていない。 AKAP13 は,肝細胞癌 (138),乳癌 (139),甲状腺癌 (78),前立腺癌 (140) 及 び大腸癌 (80) 等の複数のヒトの腫瘍に発現し,腫瘍の薬剤耐性にも関与する (141)。リンパ球性白血病では,AKAP13 のスプライシング変異体は lymphoid blast crisis oncogene として知られ,腫瘍細胞の形質転換に関与している (142)。AKAP13 を ト ラ ン ス フ ェ ク ト し た 腫 瘍 細 胞 は , 細 胞 外 シ グ ナ ル 制 御 リ ン 酸 化 酵 素 (extracellular signal-regulated kinase, ERK) 及び Cyclin D1 の活性化を伴う高い細胞 増殖活性を示し,これらは全てRho 阻害剤によって抑制される (138)。これらの ことから,腫瘍細胞の増殖にはAKAP13/ROCK シグナルが関与する可能性が考え られる。

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そこで本章では,AKAP13 の消化管粘膜上皮の病態時の役割を明らかにするこ とを目的に,マウスAOM/DSS 誘発大腸癌モデル及び DSS 誘発大腸炎モデルの炎 症期及び回復期におけるAKAP13,ROCK1 及び ROCK2 の発現を解析した。

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材料及び方法

試験物質

DSS (分子量: 36,000-50,000, CAS 番号: 9011-18-1) を MP Biomedicals (Santa Ana, CA, USA) より購入した。 供試動物 科研製薬株式会社 (静岡県藤枝市, HS 財団認定番号: 15-047) の動物実験ガイ ドラインに従って倫理的に配慮して動物を飼育した。4 週齢の BALB/cAnNCrlCrlj 系統の雌性マウスを日本チャールス・リバー株式会社 (厚木繁殖センター, 神奈 川県厚木市) から購入し,7 日間以上実験環境に馴化させた。飼育室を温度 23 ± 3 ºC,湿度 50 ± 20%に設定し,飼育室内の換気頻度を 1 時間あたり 17 回以上とし た。明暗サイクルを12 時間とし,7:00~19:00 を明期とした。1 ケージ (W 160 mm × D 300 mm × H 140 mm, 床敷きケージ) 当たり 3~4 匹のマウスを収容した。馴 化期間中,基礎飼料 (オリエンタル酵母工業株式会社, 東京都板橋区) 及び上水 (静岡県藤枝市) を自由摂取させた。馴化後,マウスを層別無作為化法にて,最新 の体重に基づいて各群に振り分け試験に使用した。剖検日にはマウスをイソフル ラン麻酔下で安楽殺した。 実験方法 腫瘍組織におけるAKAP13 発現解析には,第 2 章の AOM/DSS 誘発大腸癌抑制 試験のAOM 群 (対照群) 及び AOM+DSS 群の大腸組織を用いた。

Figure  2.    Plasma  cytokine/chemokine  levels  in  DSS-induced  colitis  inhibition  study (chapter 1)
Figure  3.    Representative  H&amp;E  staining  images  of  histological  findings  in  the  distal colon in DSS-induced colitis inhibition study (chapter 1)
Figure 4.    Representative PAS images of histological findings in the distal colon in  DSS-induced colitis inhibition study (chapter 1)
Figure  5.    Summary  of  microarray  gene  expression  analysis  in  DSS-induced  colitis inhibition study (chapter 1)
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参照

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