Title
野生食肉目動物に寄生する Hepatozoon属原虫に関する寄生
虫学的研究( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
久保, 正仁
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 甲第300号
Issue Date
2010-03-15
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/33612
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
氏名(本(国)籍) 主 指 導 教 員 名 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目
審
査 委 員 (13) 久 保 正 仁(東京都) 岐阜大学 教授 柳 井 徳 磨 博士(獣医) 獣医博甲第300号 平成22年3月15日 学位規則第3条第1項該当 連合獣医学研究科 獣医学専攻 岐阜大学 野生食肉日動物に寄生する物∂ねgo00属原虫に関する 寄生虫学的研究 主査 岐 阜 大 学 副査 帯広畜産大学 副査 岩 手 大 学 副査 東京農工大学 副査 岐 阜 大 学 副査 岐 阜 大 学 也 峯 助 敏 磨 嗣 克 高 幸 国 徳 正 頭 井 田 森 井 木 鬼 松 岡 三 柳 鈴 授 授 授 授 授 授 教 教教 教 教 教 論 文 の 内 容 の 要 旨 物atozocu7属原虫はApicomplexa門に属する住血原虫であり,ダニやノミ等の吸血性節足動物 を終宿主とし,両生類,爬虫類‥鳥類,晴乳類等,さまざまな脊椎動物を中間宿主とする。飽関わZO∽ 属原虫の中間宿主への感染様式は特徴的で,胞子形成オーシストを含む終宿主を摂取することによ って経口感染する。ヰ間宿主の体内では各種の臓経で無性生殖(シゾゴニー)が行なわれ,シゾン トから放出されたメロゾイトは血球(晴乳類に寄生する種では,通常白血球)に侵入してガメトサ イトとなる。その後,末梢血中のガメトサイトが吸血の際に終宿主に取り込まれることによって生 活環が完結する。伽わZO00属原虫のうち哺乳類に寄生するものとしては約50種が知られており, 食肉目に寄生する伽才〝000属原虫で命名されているものとして,〟a広田づc即工喝 〟 c郡上∫,g 允ノね 〟劇〟∫ねノブ∫およびg〝℃Cアmメ∫の5種が知られていた。 日本産食肉目においては,犬(血流沈卿"加止血克,キタキツネ(抱血e∫相加e∫∫C女郎血),ホンドテン(彪打ね∫庇ja呼び併ノ叩血,ニホイッキノワグマ(肪罰岱乙鮎加漑狛∬ノ如皿ノc比d,
ツシマヤマネコ(乃づ00∂上ノmム即卵ノ即∫J∫e岬fJ■ム∬a)およびイリオモテヤマネコ(月 ム カイロ郡才即∫上カにおいて物∂わZO00属原虫寄生の報告があった。しかし,寄生する原虫種の分類学的解明はほとんど行われていなかった。また,日本以外の東アジアでは,食肉目における 物∂わZO∞属原虫寄生に関する論文はなかった。 本研究では,日本産のニホンツキノワグマとホンドテンおよび韓国産のベンガルヤマネコ(亜 種レベルではツシマヤマネコと同一とされる)に寄生する飽犯わZO00属原虫がどのような種であ るかを明らかにするために,これらの原虫について形態学的および分子生物学的に同定を試みた。 第一章では,日本産のニホンツキノワグマに寄生する物∂才α0∽属原虫の分類学的位置づけ を明らかにした。同原虫のシゾントは肺に認められ,形は亜球形,大きさは45.7±4.6×42.7±4.5 脚であった。成熟シゾントは,およそ80-130個のメロゾイトおよび0-5個の遺残体より構成され ていた。メロゾイトの大きさは,7.0±0.7×1.8±0.3pmであった。白血球内のガメトサイトはわ
ずかに湾曲した葉巻型で,一端に特徴的な鳥囁状の突起を有しており,大きさは10.9±0.3×3.3
±0.2p皿であった。これらの形態学的特徴,さらに寄生部位が既知の種とは異なっていることから,未記載種と考えられた。この考えは,18SrⅢ仏遺伝子の塩基配列の解析からも支持された。よって,
本種を〟 ∠上作ノとして新種記職を行なった。また,ニホンツキノワグマの体表から採取されたキチ マダニおよびヤマトチマダニから飽おねZO00属原虫の成熟オーシストが少数検出されたが,本研 究ではこれらが〟了以n豆のものであるということの確定には至らなかった。今後,感染実験や分子 生物学的手法を用いて,終宿主を特定する必要がある。 第二章では,日本産のホンドテンに寄生する軸わZO00属原虫の同定を試みた。ホンドテンの心臓には本原虫のメロゾイト/ガメトサイトやシゾントを含む肉芽腫性結節がみられた。シゾン
トは卵円形で,大きさは36.9±5.7×28.9±3.4pmであり,およそ20-60個の核を有していた。成 熟シゾントが観察されなかったため,メロゾイトは計測できなかった。本原虫は,形態や病原性の 点でアライグマに寄生する〟卯CJⅧノ∫や日本の野生ネコ科動物の心臓で認められた未同定の 伽ねZO∽属原虫と比較して,シベリアケナガイタチに寄生する〟∴皿〟けa力豆と類似していた。18S r肌A迫伝子の塩基配列の解析では,本原虫はスコットランド産のマツテンに寄生する未同定種と同 一種であると思われた。しかしながら,本研究ではガメトサイトや終宿主に関する情報が得られず, 丘 屈び∫ねノ∫∫との分子生物学的な比較もできなかったため,種の同定には至っていない。第三章では,韓国産のベンガルヤマネコに寄生する飽田わZO00属原虫の解析を行った。ベン
ガルヤマネコの心臓に寄生した同原虫シゾントの大きさは31±4×19±3脚であり,3個の成熟シ ゾントはそれぞれ約24個,25個および35個のメロゾイトを有していた。同原虫のシゾントは,イ スラエル産のイエネコおよび日本産の野生ネコ科動物で報告されたものと形態は似ていたが,大き さはそれらより大きかった。この違いが原虫の株の差によるものなのか,標本作製のアーティファ クトあるいは計測誤差によるものなのかは不明である。18Sr和仏遺伝子の解析に基づくと,本原虫は〟.廃止ねあるいはg カム●∫に極めて近縁な種であると考えられた。 結論として,ニホンツキノワグマに寄生する伽ねZO00属原虫については,未記載種と考 えられたため,〟乙肌打と命名し新種記載を行なった。ホンドテンに寄生する軸わZO00属原虫に ついては,〟」孔肌始ム■∫と類似していたが,本種とは分子生物学的な比較ができなかったため,種 の同定には至らなかった。韓国産ベンガルヤマネコに寄生する物∂ねZO00属原虫は,〟.允止ねあ るいは〟 允ノブ∫に極めて近縁な種であると考えられた。本研究で得られたこれらの情報は 伽わZO00属原虫の系統学的あるいは疫学的研究に貢献し,宿主となっている各野生動物の保護管 理に有用と考える。 審 査 結 果 の 要 旨 本研究では,日本および韓国産の野生食肉目動物に寄生する物∂ねZO∽属原虫につい
て,その形態学および分子生物学的特徴を明らかにし,分類学的同定を試みたご
第一章では,日本産のニホンツキノワグマに寄生する均p∂ねZOm属原虫につき解析し
た。その形態学的特徴,さらに寄生部位が既知の種とは異なることから,未記職種と考え
た。これは18SrRNA迫伝子の塩基配列の解析からも支持され,本種をH
LLZ-SIとして新種 記載した。また,ニホンツキノワグマの体表から採取されたキチマダニおよびヤマトチマ ダニの体内に物∂fozoo刀属原虫の成熟オーシストが認められたが,これらが〟乙肌打であ るとは確定できなかった。 第二章では,日本産のホンドテンに寄生する物∂ねZOO刀属原虫につき解析した。同原 虫は,形態学的特徴および心臓に対する病原性の点から,シベリアケナガイタチに寄生す るHmustellsに類似していた。さらに18SrRNA遺伝子の塩基配列の解析から,同原虫は
スコットランド産のマツテンに寄生する未同定種と同一種と考えられた。しかし,同原虫
に関してガメトサイトおよび終宿主が確認できず,また,〟β〟∫とeム■∫との分子生物学的
比較も検討できなかったため,種の同定には至らなかった。
第三章では,韓国産のベンガルヤマネコに寄生する穐p∂ねZOOβ属原虫の解析を試みた。
同原虫のシゾントは,イスラエル産イエネコおよび日本産野生ネコ科動物で報告されたも のと形態的に類似していたが,大きさはそれらより大型であった。しかし,この相違が原虫の株の違いに起因するのか,標本作製のアーティファクトや計測誤差に因るものか明確
ではなかった。18SrRNA遺伝子の解析では,同原虫はH
fbllsあるいはH fulsに極めて近縁な種であると考えられた。
本研究で得られた上記の情報は,物∂とozoo刀属原虫の系統学的あるいは疫学的研究に
貢献し,さらに宿主となった各野生動物の保護管理に極めて有用であると考える。
以上について,審査委員全員一敦で本論文が岐鼻大学大学院連合獣医学研究科の学位論
文として十分に催すると判断した。
基礎となる学術論文
1)題
目:物atozooDLLZ-Sln.sp.(Apicomplexa:Hepatozoidae)inJapaneseblack bear(Wsus thlbetaDUSJ如oDIcus)著
者 名:Kubo,M.,Uni,S.,Agatsuma,T.,Nagataki,M.,Panciera,R.J., Tsubota,T.,Nakamura,S.,Sakai,H.,Masegi,T.and Yanai,T.学術雑誌名:ParasitologyInternational
巻・号・頁・発行年:57(3):287-294,2008
2)題 目:Parasitologicalandmolecularfeaturesofthe侮atozoonspeciesin
the myocardium ofJapanese martens(脆rtesmelanpusmela叩uS)
著
者 名:Kubo,M.,Nagataki,軋,Agatsuma,T.,Sakai,H.,Masegi,T., Panciera,R.J.and Yanai,T.学術雑誌名:Journalof Parasitology
巻・号・頁・発行年:95(6): ,2009,in press
3)題 目:The first report of物atozoon speciesinfectioninleopard cats (j>loDaIluz・uS beDgaleDSIs)in Korea
著 者 名:Kubo,M.,Jeong,A.,Kim,S.-Ⅰ.,Kin,Y.-J.,Lee,H.,Kimura,J., Agatsuma,T.,Sakai,H.and Yanai,T.
学術雑誌名:Journalof
Parasitology 巻・号・頁・発行年:(): , ,in press既発表学術論文
1)題 目:A case of chondrosarcomain a free-flying great egret
著
者 名:Kubo,M.,Kobayashi,K.,Masegi,T.,Sakai,H.,Tsubota,T.,Asano,M.,Itani,M.and Yanai,T.
学術雑誌名:Journalof
Wildlife Diseases巻・号・貢・発行年:43(3):542-544,2007
2)題 目:Nasalneuroendocrinecarcinomainafree-1ivingJapaneseraccoondog (ルcとere〟とe5一夕rOCア00ロブゐ∫アノγeエrプβ〟∫) 著 者 名:Kubo,M.,Matsuo,Y.,Okano,T.,Sakai,H.,Masegi,T.,Asano,M.,
Uchida,K.and Yanai,T.
学術雑誌名:Journalof Comparative Pathology
巻・号・頁・発行年:140(1):67-71,2009 3)題 目:Anovelbudgerigar-adenovirusbelongingtogroupIIavianadenovirus of £′∂ゐβOF上r〟∫ 著 者 名:Katoh,H.,Ohya,K.,Kubo,M.,Murata,K.,Yanai,T.and Fukushi,H. 学術雑誌名 巻・号・頁 4)題 目 著 者 名 学術雑誌名
巻・号・貢
5)題 目 Virus Research 発行年:144(1-2):294-297,2009A pathologicalstudy of sepsis associated with sarcoptic mangein
raccoon dogs(ルctez・euteSPTOCyODOIdei)inJapan
Nakagawa,T.L.D.R.,Takai,Y.,Kubo,M.,Sakai,H.,Masegi,T.and Yanai,T.
Journalof Comparative Pathology
発行年:141(2-3):177-181,2009
Pathologicaland phylogenetic features of prevalent canine distemper viruses.in wild masked palm civetsinJapan
著
者
名:Takayama,Ⅰ.,Kubo,M.,Takenaka,A.,Fujita,K.,Sugiyama,T.,Arai,T.,Yoneda,M.,Sato,H.,Yanai,T.and Kai,C.
学術雑誌名:ComparativeInmunology,MicrobiologyandInfectious
Diseases巻・号・貢・発行年:32(6):539-549,2009
6)題 目:Muscular sarcocystosisin wild carnivoresin Honshu,Japan
著