原 著
〔書権薄、、第鞍元劉骨〕
ラット視床下部ソマトスタチソと成長ホルモン放出
因子に対するグルココルチコイド欠乏の影響
東京女子医科大学 第2内科学教室(主任 マス ナガ ソウ ヘイ増 永 荘 平
鎮目和夫教授) (受付 昭和63年11月8日)Effects of Glucocorticoid Deficiency on Hypothalamic Somatostatin
and Growth Hormone・Releasing Factor in Rats
Souhei MASUNAGA
Department of Medicine II(Director:Prof. Kazuo SHIZUME), Institute of Clinical Endocrinology,
Tokyo Women’s Medical College
Glucocorticoid(GC)stimulates synthesis and secretion of growth hormone(GH). Little is known, however, about GC effects on hypothalamic GH−releasing factor(GRF)and GH・inhibiting factor (somatostatin, SRIF), the peptides which play physiological role on GH secretion. The present study was therefore designed to examine effects of GC deficiency on secretion and content of pituitary GH and hypothalamic GRF and SRIF in adult male rats. Secretion of GRF and SRIF was studied助碗70 from incubated hypothalamic fragments.
1.Adrenalectomy(ADX)had no significant effect on either spontaneous GH secretion or GH response to synthetic rat GRF(1μg/kg)or FK33−824(0.1 mg/kg), an enkephalin analogue, at 7 days after operation.
2.ADX diminished pituitary GH level at 7 and 14 days after ADX, reduced content and伽麗’70
release of SRIF at 2,7and 14 days, and increased release of GRF at 14 days only.
3.The ADX−induced decline in pituitary GH and hypothalamic SRIF, observed at 7 days after operation, was completely restored by 7−day daily treatment with dexamethasone sodium phosphate
(50μg/rat/day).
These results suggest that GC exerts a facilitatory effect on SRIF and has an opposite inhibitory effect, to a iesser extent, on GRF. Decrease in SRIF secretion, along with increase in GRF releasel appears to be a homeostatic event which counterbalances the decline in pituitary GH secretion associated with GC deficiency and thereby keeps GH secretion normal.
緒 言
下垂体からの成長ホルモン(GH)の分泌は,成
長ホルモン放出因子(GRF)1)とソマトスタチン
(SRIF)2)の2つの視床下部ペプチドによって調
節される.各種ホルモンはGH分泌を修飾する
が,グルココルチコイド(GC)もまたGHの合成
と分泌に影響を与えることが報告されている.薬理学的量のGCは加η勿。で身体の成長を抑
制し3)4),末端肥大症の患者5)やラット6)で血漿:GH値を低下させる.またGCの長期投与は低血糖に
対するGH反応性を低下させるが7)心10),これについては異論もある11).また伽〃伽。でGCはGH
遺伝子の転写を促進し12)∼14),合成GRFに対する GH反応性を充進させる6)15)16).一方GC欠乏は鋭麗〃。で下垂体のGRF結合部位数を減少さ
せ17)18),初θ勿。で薬理学的量の合成GRFに対するGH反応性を低下させる19).最近勿加〃。で,
GCの投与期間によりGRFに対するGH反応性
は異なる20)∼22)という報告もある.このようにGCの下垂体作用は多く報告されて
いるが,視床下部作用についてはほとんど報告さ
れていない.そこで今回,GCの視床下部に及ぼす
作用を検討するため,加 麗θoで両側副腎摘出
(adrenalectomy, ADX)ラットを用いてGH分泌
を観察するとともに,勿麗〃。で視床下部GRF,
SRIFに及ぼすGC欠乏の効果を観察した.
方 法
1.実験動物
実験にはSprague−Dawley系の成熟雄ラット
を用いた.ラットはハンガータイプケージの自動
給水型陽圧式クリーンラックで,温度22士1℃,
湿度40∼60%,明暗周期12時間(点灯8時,消灯
20時)の環境下で飼育した.固形飼料(MF:オリ
エンタル酵母株式会社)と水は自由に摂取させた. 2.’η卿。の実験体重280∼320gのラットにエーテル麻酔下で慢
性右心房カテーテルを留置し23),以後1匹飼い
ケージで飼育した.1週間後再びエーテル麻酔下
で背側より両側副腎摘出術(ADX)を施行し,対
照群には偽手術を施行した.実験は無麻酔無拘束下で行った,13時前後に出
現する脈動的GHを観察するために, ADX群と
偽手術群ラットから12時より14時まで15分ごとに
0.15mlの採血を行った.続いて,内因性GRFを
介してGH分泌を促進するEnkephalin誘導
体24)25)であるFK33−824(0.1mg/kg, Sandoz社製)を脈動的GH分泌の谷間と予想される時刻
(14時)に静脈注射し,注射後15分ごとに1時間に
わたり採血してGH反応性を観察した.次に, GC
欠乏状態の外因性GRFに対する下垂体GHの反
応性を検討した.実験は12時より20分ごとに採血
し,脈動的GH分泌の谷間と予想される時刻(14
時20分)に合成ラットGRF(1μg/kg, Peninsula社製)を静脈注射し,注射後5分,20分に採血し
た.なお,毎回の採血直後に,生理食塩水に浮遊
した赤血球を輸血した.3.’η曜roの実験
実験には体重270∼320gのラットを用いた.ま
ず,GC欠乏状態の視床下部GRF, SRIFの分泌,
含量と下垂体GH含量に及ぼす効果を検討した.
ADXまたは偽手術を施行し,術後2日,7日,14
日目に断頭し,視床下部組織片および下垂体を採
取し,視床下部GRF, SRIFの分泌および含量,
下垂体GH含量を測定した.
次に,ADXラットにおけるGC補充療法の視
床下部GRF, SRIFの分泌,含量と下垂体GH含
量に及ぼす効果を検討した.ADXまたは偽手術
を行い,対照の偽手術群には溶解液を,ADX群に
はデキサメサゾンリン酸ナトリウム(Dexameth−
asone;Decadron,日本メルク万有製薬株式会社)
50μg/ラット/日あるいは溶解液を,手術日より連日7日間にわたり皮下注射した.断頭後視床下部
組織片および下垂体を採取し,視床下部GRF,
SRIFの分泌および含量,下垂体GH含量を測定
した.4.視床下部のインキュベーションと下垂体
GH含量
視床下部は前方は視神経交叉直後,後方は乳頭
体前縁,側方は外側視床下部溝で境界される部位
を深さ2mmで採取した.視床下部組織片は正中
線上で縦に2分割した.まず,視床下部組織を95%
02−5%CO2通気下37℃で, Krebs−Ringer bicar−
bonate溶液(KRBG液), pH 7.40,中で30分間
プレインキュベーションした.次に,基礎分泌を
測定するために培養液を新しいKRBG液で置換
し,さらに30分間インキュベーションを行った.最後に脱分極刺激による反応を観察するため,培
養液を50mM K+添加KRBG液で置換し,さらに
30分間インキュベーションした.なお,バイヤル
1個あたり2個の視床下部をインキュベートし
た.視床下部組織片は実験終了後,直ちに1規定
酢酸,0.1規定塩酸でホモジェナイズし,15,000×gで30分間遠心し,上清を凍結乾燥した.また同時
に下垂体も採取し,0.05Mの炭酸バッファー
(NaHCO3, Na2CO3), pH 9.96でGHを抽出し た.5。ラジオイムノアッセイ(RIA)
血漿と下垂体GHは米国のNIADDKによっ
6GO 400 婁 200 こ 口 0 臣 奉 600 窪 茎、oo 200 Sham(10) FK33匿824 ↓ ADX(10) ↓ * 0 1200 1300 1400 1500
Time of the Day(hr)
図1 ADXラット10匹(下●)と偽手術ラット
(Sham)10匹(.L O)の平均血漿GH 脈動的GH分泌の波高およびFK33−824に対する GH反応頂値には両群間に有意差は認められない. ADX群ではFK33・824注射後45分,60分で血漿GH は有意(p〈0.05)に高値であった. 結果は平均値±標準誤差で示した.て提供されたキットを用いてRIAにて測定した.
ラットGH値はラットGH−RPを用いて表示し
た.培養液と視床下部抽出物のGRFとSRIFは
既報の方法26)によりRIAにて測定した.6.統計処理
有意差検定は,Student t・test,またはanalysis of varianceとStudent−Newman−Keul’s testを 用いた. 結 果 1.’ηyル。の実験結果図1はADX群10匹,偽手術群10匹の平均血漿
GHの値を示した.図からも明らかなように,
ADX群でも偽手術群と同様の波高を有する脈動
的GH分泌を認めた.また血漿GHのFK33−824
に対する反応性はADXにより抑制されなかっ
た.むしろFK33−824投与後45分,60分の血漿GH
の値はADX群の方が有意に(p〈0.05)高値を示
した. 毒 2DO 髪 墨 100 Q一一く)Sham(7) 一ADX(8)肝淑
0 1200 1300 1400 Time of the Day(hr)図2 合成ラットGRFに対するGH反応性における
ADXの効果
GRFを脈動的GH分泌の谷間に投与した時, ADX はGH反応性に影響しなかった, 結果は平均値±標準誤差で示した.図2は脈動的GH分泌の谷間(14時20分)に投
与した合成ラットGRFに対する血漿GHの反応
性を示したものである.FK33−824と同様に合成
ラットGRFに対してもADX群,対照群のGH
反応性には有意差は認めなかった. 2.’ηvκmの実1験結果図3には視床下部GRF, SRIFの分泌と含量に
及ぼすADXの影響を示した. SRIFの基礎分泌
はADX群と偽手術群で有意差は認められなかっ
た.しかし,K+刺激に対するSRIFの反応はADX
後2日目より14日目にかけて有意に減少し,ADX
後7日目には最大42%の減少を認めた(p〈
0.0001).SRIF含量はADX後2日目には偽手術
群と比較して有意の変化は認められなかったが,
7日目,14日目には有意(それぞれp〈0.025,p<
0.001)に減少した.一方,GRFの基礎分泌は
ADXにより影響を受けなかったが,脱分極刺激
による反応はADX後14日目にわずかであるが有
意(p<0.025)の上昇を認めた.GRFの含量は
ADX後7日目に有意(p<0.05)の低下を認めた
が,2日目,14日目には有意差は認められなかっ
た.図4はADXラットのSRIF, GRFの分泌と含
量に及ぼすDexamethasone補充療法の影響を示
した.偽手術群と比較してADX後7日巨では視
床下部SRIFの基礎分泌は不変だが, K+刺激に対
する反応は33%(p<0.001),含量は15%(p<
0,01)有意に減少した.この減少したSRIFの分
泌,含量は,7日間のDexamethasoneの補充によ
り完全に回復した.なおADXとDexamethasone
補充は,術後7日目の時点ではGRFの分泌,含量
600 豊 霧400 馨 量 誘200 0 50 璽 亙 呂25 塞 翫 。
Sham ADX ADX
2 ア * * * * * Sham ADX l4 200 150 璽 塁100 歪 途50 0 2 璽 蚕
81
堵 o Sham A №w A?X * * Sham ADX 14 図3 勉読%oにおける視床下部SRIF(左), GRF (右)の分泌(上段)と含量(下段)に及ぼすADX の影響SRIFのK+刺激に対する反応はADX後2日目
(ADX2),7日目(ADX7),14日目(ADX14)とも に偽手術群(Sham)に比較して有意(2,7日目: pく0.0001,14日目:p〈0.01)に減少した.SRIFの 含量はADX後7日,14日目に有意(それぞれp< 0.025,p〈0.001)に減少した. GRFのK+刺激に対 する反応はADX後14日目にわずかだが有意(p〈 0.025)に上昇した. 上段の分泌は■:基礎分泌,匿],□:K+刺激に対す る反応を示す。 結果は平均値±標準誤差で示した. に影響を及ぼさなかった.図5は下垂体GH含量に及ぼすADXとDex−
amethasone補充の効果を示した.下垂体GH含
量は偽手術群と比較して,ADX後2日目には有
意の変化はみられなかったが,7日目,14日目に
は有意(p<0.001)の減少を示した.また,7日
間のDexamethasone補充は,減少したGH含量
を完全に回復した. 考 察脈動的GH分泌は,視床下部SRIFと180.の位
相差を持って交互に分泌される周期的なGRF放
出により引き起こされると考えられている.すな
わち,脈動的GH分泌の谷間には主として視床下
部SRIFが分泌され, GRFの分泌は抑制されてい
る.脈動的GH分泌の発現時にはSRIFの分泌低
1000 禽750 百 墨500 罷 』2505
0 40@30
そ碧20
8
」 10 窃 OSham ADX ADX
十Dex * * 150 禽 湧100 璽 産 50 臣 響 0
@2
ぞ 雀 8 1 臣 管 GSham ADX ADX
十Dex 図4 ∬η碗zoにおけるADXラットでのSRIF(左) とGRF(右)の分泌と含量に及ぼすDexameth・ asone(Dex)補充の影響 7日間のDex補充は, ADXにより減少したSRIF の分泌(p<0.001)と含量(p<0.01)を完全に回復 した,GRFはADX, Dex補充によって影響されな かった. 上段の分泌は■:基礎分泌,圏,□:K+刺激に対す る反応を示す. 結果は平均値±標準誤差で示した. 400 曾 壬 玄 垂200 謹 G
Sham ADX ADX Sham ADX
2 7 14 図5 asone補充の影響 * * 璽 一40G 悉 一 三2GO d=
Sham ADX ADX
7 十Dex
下垂体GH含量に及ぼすADXとDexameth一
下垂体GH含量はADX後2日目は不変だが,7日
目,14日目には有意(p〈0.001)の減少を示した (左),7日間のDexamethasoneの補充は,減少した 下垂体GH含量(p〈0.00!)を完全に回復した(右). 結果は平均値±標準誤差で示した.下と同期したGRFの放出が起こる.最近の知見
によると,SRIF分泌の急激な減少(withdrawal)
は直接視床下部に働きGRF分泌を引き起こし,
同時に下垂体レベルではGH分泌抑制を解除す
ることにより脈動的GH分泌を発現させるとい
う。すなわち,GH分泌抑制因子として単離同定さ
れたSRIFは視床下部レベルではGRF抑制因子
としても作用することが提唱されている27).さて今回の実験で,術後7日目に観察した合成
ラットGRF, FK33−824に対するGH反応性は,予
想に反してADXにより抑制されなかった.この
成績は下垂体レベルではGCがGH分泌に促進
的に働くという諸家の勿加’ZOの報告6)12)一16)と一見矛盾するようにみえる.しかし,GH依存性因子
でGHの蛋白同化作用を仲介するソマトメジン
の血清中生物活性はADXにより影響されないと
いう所見28)が得られている.FK33・824によるGH
の増加がADXにより遅延反応を示したことか
ら,GC欠乏によるGHの代謝分解速度の低下が
脈動的GH分泌の維持に関与する可能性も考え
られる.しかし,合成GRFによるGHの増加反応
パターンはADXにより変化しなかったので,こ
れはむしろ薬物(FK33−824)の代謝速度の低下に
よるものであろう.もし,GC欠乏の効果が下垂体
レベルでのみ起こり視床下部レベルでは発現しな
いなら,ADXはGH反応性やGHの脈動的分泌
を低下させるはずである.それゆえ,勿〃勿。におけるGCの欠乏は下垂体レベルではGH分泌を
抑制すると同時に視床下部レベルではそれに拮抗
する影響,すなわちSRIFの分泌抑制もしくは
GRF分泌の漸進を及ぼす可能性も推測された.
GC欠乏による視床下部SRIF, GRFおよび下
垂体GHの変動を経時的に比較検討した結果,こ
れらのパラメーターでSRIFの分泌が最も早期に
変動することが明らかとなった.すなわち,ADX
ラットのSRIFの分泌は術後2日目にはすでに
33%と有意の低下を示し,この減少は7日目に最
大42%に達し,術後14日目まで持続した.この
SRIF分泌低下より遅れて, GH含量は術後7日
目より低下し,一方GRFの分泌は術後14日目で
のみ僅かな上昇を認めた.GC欠乏によりSRIF
分泌がGRF, GHの変動に先行して低下した所見
は,GC欠乏の視床下部に対する主な作用はSRIF
分泌抑制であることを示唆する。さらに,ADXに
よるSRIFの分泌低下のみならず下垂体GH含
量の低下がDexamethasoneの補充で完全に回復
した成績は,GC欠乏の視床下部および下垂体の
両レベルにおける作用の特異性を物語る.
この勿,θガ〃。の成績に基づくと,ADXにより
脈動的GH分泌が影響されなかったという術後
7日目の加麗〃。の結果も説明できるかもしれな
い.すなわち,GRFにより誘発されるGHの脈波
と同期して起こるSRIF分泌の低下がADXによ
り増強され,これが内因性GRFの下垂体作用に
及ぼすGC欠乏の抑制的効果に拮抗する結果,脈
動的GH分泌が正常に維持されるものと推測さ
.れる.したがって,おそらく生理的な条件下では,GCは下垂体GHに対しては直接促進的に作用
し,反対に視床下部ではSRIFに促進的に作用す
ることにより間接的にGHの分泌を抑制してい
ると考えられる.今回の成績は,GC過剰の視床下部GRF, SRIF
に及ぼす効果を観察した中川らの報告6)と一致す
るようにみえる.彼らはDecadron(200μg/ラッ
ト/日)の3日間投与により雌ラット視床下部
GRF含量の低下とSRIF含量の上昇を見出して
いる.しかるに今回の結果とは異なって,We−
hrenbergら19)はADX 7日目のラットで500ng/
kgのhGRF−44に対するGH反応性は低下すると
報告している.この不一致は彼らが視床下部
SRIFの分泌を抑制するベントバルビタール麻
酔29)を使用したことによると考えられる.このような,下垂体レベルにおけるSRIFのGH分泌抑
制作用が消失した条件下では,GRFのGH放出
促進作用に対するGC欠乏の抑制効果のみが発現
したものと推測される.ちなみにSeifertらの報
告17>18)によれぽ,正常ラット下垂体GRF結合部位数はADXにより著明に減少し,この減少はDex−
amethasone(50μg/日)の6∼48時間の補充に
よって急速に回復する. Schonbrunnら30)やValeら’5)の報告によると,ラットの下垂体GH、C腫瘍細胞あるいは正常下
垂体細胞の培養系でGCはSRIFに対するGH
の感受性を低下させる.これらの成績から,反対
にGC欠乏が下垂体レベルでSRIF感受性を増加
させGH分泌に促進的に作用することも否定で
きないが,劾〃勿。でのGC欠乏の下垂体SRIF受
容体に及ぼす影響を検討した報告は見当たらな
い.一方,Rodriguezらは, ADXにより中枢の
SRIF受容体数は大脳皮質では不変であるが,視
床下部,線条体,海馬では減少し,後者の減少は
Dexamethasone補充により完全に回復すると報
告している.彼らの研究では下垂体SRIF受容体
に対する影響は観察されなかったが,今回の成績
と合わせADXは視床下部SRIFの分泌のみなら
ず受容体数も低下させることがわかる.SRIFは
視床下部レベルではGRF抑制因子として作用す
ることが提唱されているが27),このGC欠乏によ
る視床下部SRIF分泌ならびに受容体数減少は,
ADX後14日目のGRF分泌上昇に関与している
かもしれない.SRIFは下垂体TSHの生理的抑制因子である
と考えられている32).したがって,今回明らかになったGC欠乏の視床下部SRIF分泌低下作用
は,ラットやヒトで報告されているGC欠乏に伴
う血漿TSH上昇33)34}あるいはTRHに対する
TSHの反応性充進35)に少な:くとも部分的に関与
しているかもしれない.なおADXにより,イヌの
膵SRIFは有意に上昇する36).この成績は今回の
ラット視床下部の結果とは反対であるが,GC欠
乏のSRIFに対する効果には臓器特異性があるこ
とを意味するものかもしれない,ADXによるSRIFの分泌低下の機序について
は,GC欠乏の視床下部に対する直接効果による
ものか,あるいはそれ以外の例えばフィードバッ
ク機構を介する二次的な変動かは明らかでない.
ADXによってGHの脈動的分泌が術後7日目で
は変動しなかったことは,前者の考えを支持する
かもしれない.しかし,ADXにより下垂体GRF
結合部位数が術後1∼2日目には激減する18)の
で,ADX術直後にGH分泌が一過性に低下した
可能性は十分にありうる.この場合には,視床下
部のSRIF分泌の低下のみならず, GRF分泌の増
加の両現象が従来のGHの短回路フィードバッ
ク機構によって説明できる.なぜなら,GHは
SRIF, GRF分泌にそれぞれ促進的37)38},抑制的26) にフィードバック作用するからである.結 語
1.GC欠乏は視床下部SRIF分泌と下垂体
GH含量を低下させ,視床下部GRF分泌を上昇
させた.したがって,GCは視床下部と下垂体に同
時に作用しGH分泌を修飾すると考えられる.
2.GC欠乏によるSRIF分泌低下はGRF分泌
⊥昇に先行し,またGC補充により完全に回復し
た.したがって,GC欠乏の視床下部における主作
用はSRIF分泌抑制であると思われる.
3.GC欠乏状態の視床下部SRIF分泌低下と
GRF分泌丁丁は,下垂体レベルのGHの合成や
分泌の低下と拮抗し,末梢血中のGH分泌を正常
に維持することに関与すると考えられる. 稿を終えるにあたり,御指導,御校閲を賜りました 鎮目和夫教授に深く感謝いたします,また終始,懇切 に御指導,御印錘下さった三木伸泰講師,小野昌美博 士に厚く感謝いたします. なお本研究の要旨は,第8回国際内分泌学会におい て発表した。文 献
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