<更新日:2002/12/20> 企画調査部:石井 徹
韓国政府、国家エネルギー基本計画を発表
(韓国毎日経済,連合ニュース,ソウル経済,東亜日報外,韓国産業資源省報道資料) ・韓国政府は今後 10 年間の基本方針である「国家エネルギー基本計画」を発表。 2010 年には石油依存度を 45%に,太陽光・風力等の代替エネルギーの 5%増加をめざす。 ・KEPCO 民営化第一弾の南東発電売却が進行する一方、KOGAS 民営化の具体案は次期政権に持ち越し 1.「国家エネルギー基本計画」 韓国政府は12 月 10 日、 2011 年まで 10 年間の韓国エネルギー産業の政策方針を盛り込んだ第 二次「国家エネルギー基本計画」を審議, 確定したと発表した。 「国家エネルギー基本計画」はエネルギー利用合理化法第4 条の規定により、5 年ごとに策定さ れるものであり、国民経済の健全な発展に必要なエネルギーの需給安定, エネルギー消費による環 境破壊要因の最小化, エネルギー利用の合理化及びエネルギー技術開発促進のため、今後 10 年間の 政策目標と推進戦略をまとめ、各種エネルギー関連計画の方向性を示すものである。 今回発表された第二次国家エネルギー基本計画では、本年9月に産・学の専門家 150 人余りが参 加して作成された 『2010 エネルギービジョン:エネルギー政策方針と戦略』を基に、関連部局の 意見を集約のうえ 2002 年から 2011 年までの基本計画をまとめている。 2.今回発表された第二次国家エネルギー基本計画の概要 韓国政府は本計画の中で、エネルギー総消費量(2001 年 198.41 百万 TOE)は、年平均 3.5%の増 加を見込み、2011 年には 280 百万 TOE に達すると予測したうえで、次の四つの政策方針を掲げて いる。 (1) 将来に向けた発展的なエネルギーシステムの構築 (2) 市場機能活性化で競争力のあるエネルギー産業の育成 (3) エネルギー技術強国、エネルギー技術輸出強国 (4) 対外開放型システムにより北東アジアのエネルギー分野における主導的な役割(1) 将来に向けた発展的なエネルギーシステムの構築 ①環境親和型エネルギーシステム構築 現在総エネルギー消費の 50% を占める石油依存度を 2011 年まで 45%に縮小する. 太陽光、風力等の代替エネルギーは 5%増加させる。このため、太陽発電住宅 3 万戸の普及 および100 ヶ所の代替エネルギーモデル地域造成事業を実施する。また、エネルギーの節約と 利用効率性向上のための努力を継続的に推進することとし、エネルギー低消費型経済構造の構 築を実現する。 【参考1】韓国のエネルギー別構成比 出所:韓国エネルギー経済研究院
0%
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【参考2】 韓国の 2001 年のGDPは OECD 加盟国中 10 位、一人当たり GDP は同じく 24 位であるのに対し、エ ネルギー総消費量は同第 7 位である。特に石油消費量は米国、日本、ドイツに次いで OECD 加盟国中第 4位、一人当たりの石油消費量では日本(11 位)を上まわる 7 位である(資料:韓国統計庁)ため、エ ネルギー利用の効率化の必要性が指摘されている。 水 力 ・ そ の 他 原子力 石炭 LNG 石油②安定的なエネルギー供給基盤の構築 原油供給源の多角化のため、韓国内大陸棚開発事業及び海外での開発事業を継続的に推進す るほか、中東産油国との資源外交を強化する。また、カスピ海油田などの資源開発事業にも積 極参加して行き,石油 10%、天然ガス 30%の自主供給率(注)の達成をめざす。さらに、天然ガ ス貯蔵施設や埠頭設備を建設していくほか、2010 年までに新たに 9 基の原子力発電所(現在 18 基が稼動)の建設を完了する。 (注)自主供給率:総供給量に占める韓国が開発に関わった部分の割合と思われる。 サウジアラビア 31% クウェート 7% イラン 9% アラブ首長国連邦 15% オマーン 6% エクアドル 1% マレーシア 2% ブルネイ 1% インドネシア 5% その他 23% 【参考4】コビクタ・ガス田プロジェクト 韓国産業資源部は、第二次国家エネルギー基本計画の発表に関連して、来年 1 月にソウルで開催さ れるコビクタ・ガス田開発プロジェクトの第 4 次調整交渉がまとまれば、来年上期のうちに契約を締 結し、下期にはパイプライン式工事に取り掛かることができ、2008 年から年間 700 万 t の天然ガス を導入できる見通しであると説明している。 パイプライン経路については、韓国政府は、南北統一に備え北朝鮮を経由する経路を推進して来た が, 北朝鮮側の態度が固まらないため中国大連を経て西海経由で国内に持ち込む案が有力視されてい 【参考3】韓国の原油輸入国(2001 年) 出所:韓国エネルギー研究院
る。これについて産業資源部関係者は “北朝鮮側と多くの経路で接触を試みており、北朝鮮経由の可 能性を完全に排除することはできない”としているものの、北朝鮮を巡る情勢の変化はますます困難 な状況に向かっている。 なお、コビクタ・ガス田プロジェクトが計画どおり進んだ場合の年間 700 万 t という韓国への輸入 量は、現在の国内の年間消費量(1,600 万トン)の半分に近い規模であり、上記自主供給率は、2011 年 には需要増を見込んでも30%にまで増加するものと見込まれている。 (2) 市場機能活性化で競争力のあるエネルギー産業の育成 ①電力産業の構造改編 電力産業の構造改編を推進するため、韓国電力公社(KEPCO)を、ⅰ)発電子会社の民営化、 ⅱ)配電部門の分割・民営化、と段階的に分割民営化を進める。さらに、2009 年以降には、小 売部門まで完全競争体制を導入する計画である。 なお、送電部門については分割・民営化後もKEPCO が継続管理する。 【参考5】KEPCO の民営化の状況 KEPCO は 2000 年 12 月に国会を通過した民営化法案に基づき、2001 年 4 月に発電部門が火力発電 5 社と原子力(及び水力)発電 1 社の計 6 社に分割された。このうち、原子力発電を除く火力発電5社が 民営化対象とされており、第1段として 5 社のうち南東発電所の売却が決定されている。 計画では、KEPCO 保有の南東発電株式の 34%(投資家の希望により最大 51%まで)を売却対象とし、 2002 年 12 月に入札締め切り、3 月頃には契約締結を行う予定である。 南東発電の発電能力は 7,165MW、2001 年の当期純利益は 1,661 億ウォンであり、火力5社の中では 最も財務状況が良好であったことも最初の売却対象に選定された理由であると思われる。 他の 4 社 の売却時期については南東発電の売却状況を見ながら順次決定されるが、2005 年までには売却を終 える計画である。
②ガス産業の構造改編 ガス産業の構造改編については,まず,ガス産業構造改編関連法案の早期成立をめざす。 具体的な改編計画では、韓国ガス公社(KOGAS)の、ⅰ)輸入・卸売部門を分離して 3 社に分割 し,ⅱ)3 社のうち、2 社を売却・民営化し、残り 1 社の売却時期については別に決定する。プ ラント部門については分割後もKOGAS が管理するが、保有する設備の共同利用制度の導入を検 討する。ⅲ)地域独占である小売部門については卸売り部門への競争体制導入の状況をみながら 段階的に競争原理を導入する。 【参考6】KOGAS の民営化の状況 2002 年10 月末、国会産業資源委員会に「韓国ガス公社法改正案」,「都市ガス事業法改正案」 及び「エネルギー委員会法制定案」の三つのガス産業構造改編に関する法案が提出されたが、審議 保留とされ、通常国会を通過することができなかった。産業資源委員会によると「追加検討の必要 がある」との理由から法案審査小委員会での議論すらされなかったという。法案が通過できなかっ た理由としては、長期輸入契約の継承などの点で補完策が不十分であるという説明がなされている ものの、KOGAS の労組が「法案が通過した場合、全面ストに突入する」と宣言していたこともある ことから、12 月の大統領選挙を控え、政界が票を意識して問題を先送りしたのではないかとの見方 がなされている。 このため、ガス産業構造改編は事実上次期政権に持ち越されることとなったが、野党ハンナラ党 は党の公式見解としてこれらガス改編法案への反対を表明しており、世論にも金大中政権の民営化 が性急過ぎるとの批判もある。また、12 月 19 日に投開票が行われた第 16 代大統領選挙で、労働運 動を支援していた盧武鉉氏が当選したことから、民営化スケジュールは緩やかなものになる可能性 もある。いずれにせよ、KOGAS 民営化の具体案が確定するのは、2003 年 2 月 25 日に予定されている 次期大統領就任以降になると思われる。 ③エネルギー価格体制の改編 合理的なエネルギー価格システムを構築するため、効率性の観点からエネルギー市場を見直
し、エネルギー産業のバランスの取れた発展基盤をつくる。 まず、電力・ガス・地域暖房等の価格構造を、生産原価を反映する体制に段階的に改編する。 また、この第一次エネルギー価格構造改編が完了する予定である2006 年6月までに、環境・ 公正競争・税収・産業波及効果などの多様な政策目的を勘案した包括的なエネルギー価格構造 改編案をまとめ、全面改編を実施する。 ④その他 石炭については現在11 ある炭鉱のうち 3~4 ヶ所を自主廃坑に誘導し、2005 年からは年間 300 万 t 程度で需給バランスを保つよう誘導する。また、一般鉱物分野では、有煙炭, ウラン, 銅 鉱, 亜鉛鉱などを主要戦略鉱物として海外開発に乗り出す。 石油の流通に関しては、小規模業者の統廃合により流通業者の大型化、流通構造の単純化を 誘導するとともに、事業者専用カードによる電子決済制度の拡大を検討するなど取引の健全化 を図る。 【参考7】事業者専用カード 韓国の酒類・穀類の流通業界においては、決済の迅速化と透明化等を図る目的で、事業者間で電 子決済制度を促進させるための事業者専用クレジットカードが導入されており,使用に対しては税 額控除等のインセンティブが与えられている。 石油の流通においてもこれらを参考に電子決済制度の拡大を図るものと思われる。 (3) エネルギー技術強国、エネルギー技術輸出強国に浮上 官・産・学共同研究体制を構築し、シナジー効果を向上させる。また、代替エネルギー技術開発 強化のため、太陽光・風力・燃料電池分野を三大重点開発分野として2004 年まで重点開発する。 さらにKEPCO の国内における電力事業の経験を活かし、東南アジア国家の電力事業に積極進 出するなどエネルギー技術・設備の輸出を図る。
【参考8】技術輸出 韓国産業資源省は 2002 年 11 月、ベトナムが行う原子力発電導入に対する協力を行う旨の覚書を ベトナム政府と交わしている。これは、2017 年を目処にベトナムに国産の原子力発電所を稼動させ るために必要な長期政策の策定・技術開発・人材育成等に関し、韓国原子力研究所・KEPCO・斗山重 工業などが支援を行うという内容のものである。 韓国政府はこれにより、ベトナム原子力発電市場進出における有利な地位を獲得するとともに、 韓国企業の輸出基盤を強化する計画である。 (4) 対外開放型システムにより北東アジアのエネルギー分野における主導的な役割 IEA の協力を得て韓国エネルギー政策に対する検討を周期的に行い政策効果の極大化を図ると ともに、エネルギー技術分野で先進国との協力関係を拡大する。APEC 地域協力等を推進して、 開放型エネルギーシステムの基盤を構築する。 また、南北統一に備え, 北朝鮮に対するエネルギー協力プログラムを模索する。今後検討が考 えられている方案としては、韓国の在庫無煙炭と石炭産業余剰設備を南北協力の次元で支援する 方案、北朝鮮領内大陸棚油田探査に対する情報交流協力の方案、 北朝鮮内経済開放地域のエネル ギー供給設備を拡充支援する方案, 北朝鮮地域海洋エネルギー共同開発方案、南北統合型石油シ ステムを構築する方案などあり、多様な協力プロジェクトを模索する方針である。 【参考9】対北朝鮮協力 次期大統領に民主党の盧武鉉氏が当選したことで、基本的には金大中政権の太陽政策は継続され るものと見られるが、現政権の北朝鮮政策には批判も多いため、方針に対する修正の可能性もある。 北朝鮮の原油開発に関しては、現時点で入手されている情報は断片的であり、埋蔵量も経済性も 不明である。KNOC は国会に対する報告の中で、北朝鮮における開発について、経済協力の一環とし ての参加可能性を調査していくとしている。