水平,モーメント荷重を受ける砂地盤中の
パイルドラフト基礎挙動に与える上部構造物自重の影響
澤田 幸平
1,竹村 次朗
2 1 大成建設株式会社・土木本部土木設計部 2 東京工業大学・大学院理工学研究科 1水平,モーメント荷重を受ける砂地盤中の
パイルドラフト基礎挙動に与える上部構造物自重の影響
澤田 幸平
1,竹村 次朗
2 1 大成建設株式会社・土木本部土木設計部 2 東京工業大学・大学院理工学研究科概 要
本論文では,パイルドラフト基礎の水平抵抗,モーメント抵抗特性を明らかにすることを目的とし,相似 則を考慮した遠心場においてパイルドラフト基礎,およびその構成要素である杭基礎,直接基礎の静的鉛 直,水平載荷試験を行った。特に,上部構造物自重がパイルドラフト基礎の水平抵抗,モーメント抵抗に 及ぼす影響に着目した。遠心模型実験の結果,水平荷重,モーメント荷重を受けるパイルドラフト基礎の 杭部は,ラフト底面接地圧の影響により杭基礎の挙動とは大きく異なることを確認した。また,上部構造 物の自重が増加し相対的に杭の安全率が小さくなると,ラフト底面の支持力を効果的に活かすことができ るため,パイルドラフト基礎全体の水平抵抗,モーメント抵抗が増加することを確認した。 キーワード:パイルドラフト基礎,遠心模型実験,水平載荷実験,上部構造物自重,変位1. は じ め に
Burland et al. 1)が杭を沈下抑止杭として用いるパイルド ラフト基礎のコンセプトを示して以降,パイルドラフト基 礎の鉛直支持力機構や沈下挙動に対しては様々な研究や 実構造物への適用事例が報告されている2)3)4)5)6)7)8)。パイル ドラフト基礎はスラブ底面の支持力性能を活かしつつ,併 用された杭により上部構造物の絶対沈下,不等沈下を許容 値以内に抑止できる合理的な基礎形式である。日本におい ても建築構造設計の性能設計規定化への流れの中,合理的 な基礎形式として注目を集めており,日本建築学会建築構 造設計指針 2001 年改訂版9)より,パイルドラフト基礎に 関する規定が示され,実構造物への適用が広がっている。 その一方で,特に高架橋基礎のような比較的基礎寸法が小 さい基礎にパイルドラフト基礎を適用する場合,地震時等 に水平荷重とともに大きなモーメント荷重が基礎に作用 することによりラフト底面接地圧が大きく変動する。その 結果,ラフト-地盤-杭の相互作用がより一層複雑となる。 日本のような地震大国において,パイルドラフト基礎を合 理的な基礎形式として普及させるためには,耐震設計法の 確立が急務であり,そのためには水平荷重とモーメント荷 重を同時に受けた際の実挙動を把握することが重要であ る。 Yamashita et al. 10)は,東北地方太平洋沖地震時における パイルドラフト基礎を適用した実構造物の実測データを 報告している。この中で,杭とラフトの鉛直荷重分担率は 地震の前後で大きな違いが無いことなどが報告されてい る。また,Yamada et al. 11)も兵庫県南部地震時のパイルド ラフト基礎の実測データを報告している。しかし,このよ うに地震時の挙動を観測できる事例は稀であり,さらに実 構造物の計測では地質条件および荷重分布が複雑で,しか もその計測には限界があるため,計測結果に一般性を持た せて解釈することが難しい場合が多い。このため,条件を 比較的単純にできる実地盤における現場試験や室内模型 実験が,水平荷重を受けるパイルドラフト基礎の挙動を把 握する上で重要な役割を果たすことになる。Horikoshi et al. 12)13)は50g の遠心場において,パイルドラフト基礎,直接 基礎,単杭の静的水平載荷実験および振動台実験を実施し, 水平荷重の分担性状や杭頭の結合条件がパイルドラフト 基礎の挙動に与える影響について報告している。長尾ら14) は実地盤において杭長3m の杭を 4 本持つパイルドラフト 基礎と杭基礎,直接基礎の静的水平載荷実験を行い,水平 変位の増加に伴いラフト接地圧が増加し,杭基礎と比較し パイルドラフト基礎の水平抵抗は2.5 倍になることを示し ている。また,永井・土屋15)は原位置での杭長10m のパ イルドラフト基礎と単杭の静的水平載荷実験から,パイル ドラフトの杭はアンカーの役割を果たすため,全ての杭で 軸力が減少するとしている。Hamada et al. 16)も水平変位が 増加すると,杭はアンカー的な挙動を示すと報告している。 上記のパイルドラフト基礎に関する現場試験,室内模型 実験は水平荷重を比較的低い高さに載荷し,基礎に発生す る回転を小さく抑えた条件,または基礎の回転を拘束した 条件下での水平支持力機構に着目したものであり,モーメ ント抵抗やそれに起因する回転に対しての議論は十分とは言えない。比較的基礎幅の小さい橋脚基礎のような土木 構造物においては,モーメント抵抗や回転は重要な問題と
なる。Sawada and Takemura17)は50g の遠心場において橋脚
基礎を想定したパイルドラフト基礎とその構成要素であ る杭基礎,直接基礎の静的水平載荷実験を行い,比較的回 転が大きい状況下での水平抵抗特性,モーメント抵抗特性
について報告している。Sawada and Takemura17)の実験は,
上部構造物の自重が一定の条件下で行われたものであっ たが,上部構造物の自重と杭の安全率は密接に関係してお り,特にパイルドラフト基礎では上部構造物自重は荷重の 分担性状にも影響を与えるため重要な条件であると言え る。 本論文は,特に上部構造物自重が水平荷重,モーメント 荷重を同時に受けるパイルドラフト基礎の挙動に及ぼす 影響を明らかにする事を目的とする。これを実現するため, 50g の遠心場で比較的基礎幅の小さい橋脚基礎を想定した パイルドラフト基礎とその構成要素である直接基礎,杭基 礎の水平載荷実験を異なる上部構造物自重の下で実施し た。
2. 実験装置および実験条件
2.1 基礎模型 図 1 に計測システムを含む水平載荷実験の概要図を示す。遠心載荷装置は東京工業大学所有のTokyo Tech Mark
III を使用し,模型に載荷する遠心加速度は 50g とした。 遠心載荷装置の詳細はTakemura et al.18) が報告している。 水平荷重は土槽に固定した2 方向ジャッキにより,基礎の 両側から異なる高さに与えた。模型地盤には,表 1 示す 物理特性を持つ豊浦砂を用いた。 図 2,図 3 に本実験で用いた基礎模型を示す。模型は 上部構造物,ラフト,杭から成り全てステンレス製である。 上部構造物は 80mm×32mm の断面形状で,高さが 80mm のブロックであり,ネジによりラフト上部に剛結されてい る。ラフトは平面形状が 80mm×80mm の正方形で,厚さ 20mm と 40mm の 2 種類を使用した。模型全体の重量は厚 さ20mm と 40mm の模型でそれぞれ 2.7kg,3.7kg となって おり,これらは50g の遠心場でそれぞれ 1320N,1810N に 相当する。上部構造物自重の軽いケース (1320N)は,
Sawada & Takemura17)の実験と同等の条件である。上部構
造物自重は,パイルドラフト基礎の支持力発現と密接に関 係しており,その影響を評価することは重要である。しか し,これまでの水平荷重を受けるパイルドラフと基礎の実 験的研究12)17)では,上部構造物自重が一定の状況下での挙 動についての報告であり,上部構造物自重がパイルドラフ 表 1 豊浦砂の物理特性 土粒子密度 Gs (kg/m3) 2.65 平均粒径 D50 (μm) 0.162 最大間隙比 emax 0.973 最小間隙比 emin 0.609 ト基礎の水平抵抗,モーメント抵抗に与える影響について は報告されていない。本研究では,上述のように,2 種類 のラフトを用いることで,上部構造物自重がパイルドラフ 図 1 遠心模型実験の概要 図 2 上部構造物およびラフト模型 図 3 杭模型
3 ラフト 杭 上部構造物 ラフト 上部構造物 杭 (a) 自重の軽いケース (b) 自重の重いケース 図 4 基礎模型の写真 表 2 模型杭の諸元 模型スケール 実物スケール 材質 ステンレススチール ステンレススチール 直径 10mm 500mm 肉厚 0.5mm 25mm 埋め込み長さ*1 160mm (PR) 155mm (PG) 7.75m 8m 断面積 AP 14.9 mm2 3.73×10-2 m2 断面二次モーメントIP 169 mm4 1.06×10-3 m4 ヤング係数 EP 205 GPa 205 GPa 軸剛性 EPAP 3.06×10-3 GN 7.65GN 曲げ剛性 EPIP 3.46×10-8 GNm2 0.216GNm2 *1 PR はパイルドラフト基礎を,PG は杭基礎を示す。 ト基礎の挙動に与える影響について報告する。また,この ラフト模型は3 分割することができ,分割したラフト部で 4 本の杭を杭間隔 50mm の正方形配置で挟み込むことによ り剛結している。また,ラフト底面にはサンドペーパーを 貼り付け,ラフト底面の摩擦抵抗の増加を図った。模型杭 は外径10mm,肉厚 0.5mm,埋め込み長さ 160mm のステ ンレスパイプで,内外部にはひずみゲージが貼りつけてあ り,これらにより杭頭せん断力,杭の深さ方向6 点の軸力, 曲げモーメントを計測した。 図 4 に本実験で用いた基礎模型の写真を示す。また, 模型杭の模型,実物スケールでの諸元を表 2 にそれぞれ 示す。 2.2 実験ケース 表 3 に本研究で実施した 8 つの実験ケースの条件を示 す。表中の基礎に載荷する水平変位δLDTについては,「3.2 水平交番載荷実験の手順」で詳しく説明する。なお,δLDT および構造物自重は実物スケールで示してある。上記の上 部構造物およびラフト模型は全ての基礎で,また杭模型は パイルドラフト基礎,杭基礎で使用した。パイルドラフト 表 3 実験ケース ケース 名 基礎の種類 載荷水平変位 LDT 構造物 自重 (kN) RVLP*1 PR_L パイルドラフト ±50mm (h/S=1, 1.8), ±100mm (h/S=1, 1.8) 3300 27% P_L 杭基礎 ±50mm (h/S=1, 1.8), ±100mm (h/S=1, 1.8) 3300 0% R_L1 直接基礎 ±50mm (h/S=1, 1.8), +200mm (h/S=1) 3300 100% R_L2 直接基礎 ±50mm (h/S=1, 1.8), +200mm (h/S=1.8) 3300 100% PR_H パイルドラフト ±50mm (h/S=1, 1.8), ±100mm (h/S=1, 1.8) 4530 27% P_H 杭基礎 ±50mm (h/S=1, 1.8), ±100mm (h/S=1, 1.8) 4530 0% R_H1 直接基礎 ±50mm (h/S=1, 1.8), +200mm (h/S=1) 4530 100% R_H2 直接基礎 ±50mm (h/S=1, 1.8), +200mm (h/S=1.8) 4530 100% *1水平載荷実験前のラフトの鉛直荷重分担率 δLDT PL h δ 正の方向 PPV PRV PPH PRH LDT (下側) ML PV: 鉛直荷重 PL: 水平荷重 h: 水平荷重の載荷高さ ML: モーメント荷重=PL×h s: 基礎中央での沈下 LDT: LDT(下側)で計測する水平変位 : 基礎の回転 : ラフト底面水平変位 PRV: ラフト部鉛直荷重 PPV: 杭部鉛直荷重 PRH: ラフト部水平荷重 PPH: 杭部水平荷重 RVLP: PRV/PV RHLP: PRH/PL Push-in Pull-out s PV 図 5 計測項目 基礎はラフト底面を接地させるが,杭基礎はラフト底面と 地表面の間には5mm の離隔を設け,載荷中にラフト底面 が地盤に接地することを避けた。このように,ラフト底面 を接地させた基礎模型 (パイルドラフト基礎)と接地させ ない基礎模型 (杭基礎)の実験結果を比較することで,パイ ルドラフト基礎の抵抗特性を議論することが可能となる。
4 -4 -3 -2 -10 1 2 3 4 5 -200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200 250 時間 模型ス ケールでの 目標 LDT (m m ) 実物スケールで の 目標 LD T (m m ) h/S=1 1.8 1 1.8 h/S=1 (R_L1 & R_H1) h/S=1.8 (R_L2 & R_H2) PR_L PR_H P_L P_H 図 6 水平載荷実験時に基礎に与える水平変位 0 5000 10000 15000 -50 -40 -30 -20 -10 0 基礎 の沈 下 s ( mm) PR_L P_L R_L1 PPV (PR_L) PRV (PR_L) 鉛直荷重 PV, PPV, PRV (kN) (a) 構造物自重の軽いケース 0 5000 10000 15000 -150 -100 -50 0 基礎 の沈 下 s ( mm) 鉛直荷重 PV, PPV, PRV (kN) PR_H P_H R_H1 PPV (PR_H) PRV (PR_H) (b) 構造物自重の重いケース 図 7 プレロード載荷時の鉛直荷重 - 沈下関係 2.3 計測項目 図 5 に計測項目を整理する。載荷中の鉛直荷重 PV,水 平荷重PLは,ジャッキと載荷器具との間に設置した2 方 向ロードセルにより計測した。載荷器具の左右は半球状に なっており,この部分で基礎を押すことにより点荷重を与 えることができる。基礎の水平変位と鉛直変位は,それぞ れレーザー変位計とラフトの 4 隅に配置したポテンショ メーターにより計測した。レーザー変位計は鉛直方向の異 なる高さの位置に2 点設置しており,計測された水平変位 の差により基礎の回転を算出した。杭に働く荷重は,杭内 外に貼り付けたひずみゲージにより算出した。杭が支持す る鉛直荷重PPV,水平荷重PPHはそれぞれ杭頭軸力,杭頭 せん断力で評価し,ラフトが支持する鉛直荷重PRV,水平 荷重PRHは直接計測していないが,載荷鉛直荷重と構造物 自重の和であるPV,水平荷重PLから全杭頭軸力,全杭頭 せん断力をそれぞれ差し引くことにより算出した。本研究 において,パイルドラフト基礎の荷重分担性状を把握する ためには,ひずみゲージの精度が重要となる。本実験のひ
ずみゲージの精度については,Sawada and Takemura17)が報
告しており,そこでひずみゲージにより杭とラフトの支持 する荷重を評価することの妥当性を考察している。
3. 実験方法
17) 3.1 模型の作製手順 模型作製の手順は,まず空中落下法により相対密度50% の平地盤を作成し,その後,重力場と遠心力場でラフト底 面が地盤に接地するまで 2 方向ジャッキにより杭を貫入 させた。地盤の相対密度を50%と相対的に小さくした理由 は,杭先端支持力を杭周面摩擦力に対して相対的に小さく し,摩擦杭的挙動をある程度再現するためである。また, 地盤を最初に作成する理由は,パイルドラフト基礎の実験 を実施する上で,初期のラフトの接地状況を均一にして明 確な初期条件を与えることが重要なためである。さらに, 遠心力場で杭を貫入することにより,杭の周面摩擦力を含 めた支持力を大きくできるというメリットもある19)。杭を 貫入する際は,ジャッキに取り付けたガイド器具を上部構 造物のガイド用の穴 (図 2)に挿入し,貫入中の基礎の鉛直 性を確保した。杭貫入後,一度遠心載荷装置を停止して, 重力場においてガイド器具を取り外した後,水平載荷用の 器具および計測機器を設置した (図 1)。その後,再び遠心 加速度を50g に上げ,パイルドラフト基礎のラフト部鉛直 荷重分担率を約 30%に調整して,水平載荷実験を実施し た。ここで,ラフト部鉛直荷重分担率とは,全鉛直荷重に 対するラフトが支持する鉛直荷重の比である。水平交番載 荷実験前のラフト部鉛直荷重分担率は,基礎に鉛直荷重を 与えることにより調整している。なお杭基礎および直接基 礎についても同様に水平載荷前に鉛直荷重を与えた。 3.2 水平交番載荷実験の手順 水平交番載荷実験は図 1 に示したように,ラフト底面 から50mm (h/S=1.0)と 90mm (h/S=1.8)の高さに構造物の両 側から水平変位を与える交番載荷により行った (h は載荷 高さ,S は杭間隔 50mm)。荷重載荷速度は 0.155mm/s であ り,図 1 に示したレーザー変位計 (ラフト底面から 50mm の位置に設置)で計測した水平変位 δLDTにより水平載荷実 験を制御した (図 6)。水平載荷実験では,まず h/S=1.0 の 高さに対してδLDT=±1.0mm の水平変位を,次に h/S=1.8 の 高さに対してδLDT=±1.0mm の変位を基礎に与えた。ここで, δLDTは右側への変位を正とする。δLDT=±1.0mm の載荷サイ クルの後に,同様の手順でδLDT=±2.0mm の水平変位を基礎 に付与した。ただし,直接基礎においては,大きな変位を 与 え る と 基 礎 の 残 留 変 形 が 大 き く な り す ぎ る た め , δLDT=±1.0mm の水平載荷後は±2mm の交番水平変位を与え るのではなく,一方向から単調載荷でδLDT=+4mm の水平5 0 10 20 30 40 50 -50 -40 -30 -20 -10 0 RVLP (%) 基礎 の沈下 s (m m ) PR_L PR_H 除荷 除荷 図 8 プレロード載荷時の RVLP - 沈下関係 -100 -50 0 50 100
LDT (mm) 載荷サイクル 1a 1b 2a 2b 3a 3b 4a 4b 左杭 PPV (kN ) 時間 右杭 0 1000 2000 全杭 -2000 -10000 1000 2000 PL (kN ) 図 9 水平載荷時の構造物自重が重いケースにおける δLDT,PL, PPVの経時変化 変位を与えた。この後の実験結果は全て実物スケールで示 すこととする。また,本実験においては,パイルドラフト 基礎は水平荷重とモーメント荷重を同時に受ける。このた め,水平抵抗 (δ- PL関係),モーメント抵抗 (θ - ML)につい て個別に議論し,最後に水平荷重,モーメント荷重の複合 効果がパイルドラフト基礎の挙動に与える影響について 述べることとする。4. 実験結果および考察
4.1 水平載荷前の鉛直荷重分担率 図 7 (a) - (b) にそれぞれ自重が軽いケースと重いケー スにおける水平載荷実験前のプレロード載荷時の鉛直荷 重 - 沈下関係を示す。パイルドラフト基礎については, 杭部とラフト部が支持する鉛直荷重 (それぞれ PPV,PRV) も示してある。また,図 8 にプレロード載荷時の RVLP と 沈下の関係を示す。ここで,RVLP とはラフトの鉛直荷重 分担率であり,図 7 に示したパイルドラフト基礎全体の 鉛直荷重PVに対するラフトの鉛直荷重 PRVの比である。 パイルドラフト基礎は載荷と除荷を繰り返すことでRVLP が増加することを確認できる。これは基礎の沈下に伴い, ラフトの接地状況が良化するためである。この現象を利用 し,水平載荷実験前にプレロードを与えることで,PR_L およびPR_H で同程度の RVLP (30%)となるように調整し た。 パイルドラフト基礎の杭部鉛直抵抗 (PPV)に着目すると, 除荷後の再載荷では最大プレロード荷重に達するまで基 礎の沈下が小さく抑えられているが,載荷荷重が最大プレ ロード荷重に達すると沈下が急激に進行しており,最大プ レロード荷重が降伏荷重となっていることが確認できる。 このことから,プレロード載荷時に杭に与えた最大PPVは, 水平載荷実験中の杭の降伏荷重であり,極限鉛直支持力と みなすことが出来る。 各ケースで水平載荷実験前のプレロード載荷時に杭に 載荷した最大鉛直荷重はPR_L で 6520kN,P_L で 6120kN, PR_H で 7130kN,P_H で 5790kN となる。また,50g の遠 心力場における模型の自重は軽いケース (PR_L,P_L)と重 いケース(PR_H,P_H)でそれぞれ 3300kN,4530kN であり, プレロード載荷時の最大鉛直荷重を極限支持力とすると, 構造物自重に対する杭の安全率は,PR_L,P_L,PR_H, P_H でそれぞれ 1.98,1.85,1.58,1.28 となる。従って, 構造物の自重が重くなると,鉛直荷重に対する杭の安全率 が小さくなるため,軽いケースと比べて相対的に脆弱な杭 であることに留意する必要がある。ここで,一般的に杭基 礎の安全率は常時で3.0 を確保するが,本実験の P_L およ びP_H の安全率は 3.0 に対して小さい。本論文では,ラフ ト底面を接地させた基礎模型 (パイルドラフト基礎)と接 地させない基礎模型 (杭基礎)の実験結果を比較すること で,パイルドラフト基礎の水平抵抗,モーメント抵抗発現 のメカニズムを明らかにすることを目的としている。この ため,本実験の杭基礎は実際の杭基礎をモデル化せずに, ラフト底面の接地条件を除いてパイルドラフト基礎と同 じ条件としている。その結果,杭基礎の安全率は,一般的 な杭基礎と比べ小さな安全率となっている。 図 8 の RVLP - 沈下で示したように,自重の軽いケース, 重いケースともにパイルドラフト基礎のRVLP は沈下とと もに増加する。しかし,除荷時のRVLP の傾向は PR_L と PR_H で大きく異なる。PR_L は構造物自重が軽いため, 除荷時のラフトのリバウンドが大きく,それを防ぐように 杭がアンカーの役割を果たすため,ラフトの鉛直荷重減少 量に比べ,杭の鉛直荷重減少量が大きくなる。このため, 除荷時にRVLP は増加する17)。一方,PR_H では除荷時に RVLP は減少する。PR_H では PR_L と異なり,除荷時のラ フトの浮き上がりが小さく,杭はアンカーのような挙動は 示さず,杭に比べラフトの鉛直荷重減少割合が大きくなる ため,除荷時のRVLP は減少したと考えられる。 4.2 載荷水平荷重およびモーメント荷重 4.2.1 載荷水平変位の経時変化 図 9 に自重が重いパイルドラフト基礎 (PR_H)の δLDT,0 20 40 60 初期 RV LP (% ) RVLP PR_L PR_H 載荷サイクル 1a 1b 2a 2b 3a 3b 4a 4b-300 -200 -100 0 s PR_L PR_H 沈下量 s ( mm) 図 10 各載荷サイクルの初期 RVLP,沈下量 s 0 10 20 30 40 50 -10 0 10 ラフト底面水平変位 (mm) 沈下量 s(m m ) PR_L 0 10 20 30 40 50 -15 -10 -5 0 5 10 15 PR_H 載荷 除荷 図 11 載荷サイクル 1a における δ - 沈下関係 水平荷重 (PL),杭頭軸力 (PPV)の経時変化を示す。杭頭軸 力PPVについては4 本全ての杭の合計,左杭および右杭の 経時変化を示してある。なお左杭,右杭の軸力は杭2 本の 杭頭軸力の和である。図 6 に示すように,水平交番載荷 実験は基礎に付与する水平変位δLDTが±50mm,±100mm と 正負で対称となるように行った。しかし,載荷装置は手動 で制御しているため,実際に基礎に付与したδLDTは目標と するδLDTに対して誤差を持つことに留意が必要である。ま た,正の水平変位 (基礎の右側方向への変位)が載荷された 場合,右側の杭は押込まれるため軸力が増加し,左側の杭 は引抜かれるため軸力は減少する。このため,各載荷サイ クルにおいて杭頭軸力は変化し,結果として載荷後と載荷 前で異なる杭頭軸力となった。 4.2.2 各載荷サイクルの初期 RVLP 図 10 に PR_L および PR_H の各載荷サイクルでの初期 のラフトの鉛直荷重分担率RVLP を示す。図中には各載荷 サイクルで発生した基礎中心での最大沈下量も示してあ る。図 9 に示したように,水平交番載荷中に杭頭軸力は 変化するため,初期のRVLP は各載荷サイクルで異なる値 となった。特に最初の載荷サイクル1a において,RVLP は 大きく減少することが確認できる。図 11 に示す載荷サイ クル1a におけるラフト底面水平変位 δ と沈下の関係から 分かるように,載荷サイクル1a の載荷中に基礎は沈下せ ずに浮き上がる挙動を示す。これは,プレロード時にラフ -100 -50 0 50 100 -3000 -2000 -1000 0 1000 2000 3000 ラフト底面水平変位
(mm) 水平 荷重 PL (k N) h/S=1.0 1.8 PR_L P_L R_L (a) 構造物自重の軽いケース -100 -50 0 50 100 -3000 -2000 -1000 0 1000 2000 3000 ラフト底面水平変位
(mm) 水平 荷重 PL (k N) h/S=1.0 1.8 PR_H P_H R_H (b) 構造物自重の重いケース 図 12 δLDT =±100mm の載荷サイクルにおける δ - PL関係 ト底面は地盤に押し付けられた状態となっており,この状 態から基礎に水平荷重を与えると,荷重に対して前方側の 沈下が生じにくく,荷重に対して後方側は相対的に浮き上 がりやすくなるためである。その結果,プレロード時に増 加させたRVLP は,載荷サイクル 1a での載荷中の基礎の 浮き上がりに伴い大きく減少したと考えられる。また,本 実験のような交番載荷では,基礎の両側は沈下と浮き上が りを交互に繰り返す (荷重に対して前方側は沈下し,後方 側は浮き上がる)。このため,基礎全体としては載荷サイ クルの進行とともに徐々に沈下が大きくなるものの, RVLP は各載荷サイクルにて大きく増加せずに同程度とな る。 PR_H の RVLP は約 15%となっており,PR_L の 5%と比 べ大きくなっている。これは,PR_H の各載荷サイクルに おける基礎の沈下増分が,PR_L に比べ大きくラフトから より大きな反力が得られるためだと考えられる。なお, PR_L の 5%,PR_H の 15%のラフト部荷重分担率は,それ ぞれラフト底面接地圧で10kPa と 42kPa に相当する。 4.2.3 載荷水平荷重および載荷モーメント荷重 図 12 (a) - (b)に δLDT=±100mm の載荷サイクルにおける ラフト底面水平変位δ と水平荷重 PLの関係を示す。直接 基礎の載荷高さh/S=1.0 については,R_L1 および R_H1 の 結果を,載荷高さh/S=1.8 については R_L2 および R_H2 のδLDT=+200mm における結果を示してある。全ての基礎7 -0.02 -0.01 0 0.01 0.02 -8000 -4000 0 4000 8000 基礎の回転
(rad) モーメント荷重 ML (k Nm ) h/S=1.0 1.8 PR_L P_L R_L (a) 構造物自重の軽いケース -0.02 -0.01 0 0.01 0.02 0.03 -8000 -4000 0 4000 8000 h/S=1.0 1.8 PR_H P_H R_H 基礎の回転
(rad) モーメント荷重 ML (k Nm ) (b) 構造物自重の重いケース 図 13 δLDT =±100mm における θ - ML関係 で水平荷重の載荷点が高くなると,同じラフト底面水平変 位δ での水平荷重が小さくなる。載荷点が高くなると,水 平荷重に対して相対的に大きなモーメント荷重が基礎に 作用し基礎の回転も大きくなる。直接基礎では,h/S が大 きくなると水平荷重・モーメント荷重の複合効果により, 水平抵抗は小さくなる。一方,杭基礎,パイルドラフト基 礎においては,h/S が大きくなると δ に対して相対的に基 礎の回転が大きくなり,杭の水平抵抗発現に寄与する地盤 と杭の相対変位が,特に杭深部において小さくなるため, 載荷点高さが高くなると結果的に水平抵抗が減少するも のと考えられる。 図 13 (a) - (b)に δLDT=±100mm の載荷サイクルにおける 基礎の回転θ とモーメント荷重 MLの関係を示す。図 12 と同様,直接基礎の載荷高さh/S=1.0 については R_L1 お よびR_H1 の結果を,載荷高さ h/S=1.8 については R_L2 およびR_H2 の δLDT=+200mm における結果を示してある。 全ての基礎で水平荷重の載荷点が高い方が,同じθ でのモ ーメント荷重が大きい。載荷点高さが低くなると,同じモ ーメント荷重に対して相対的に大きな水平荷重が基礎に 作用する。モーメント抵抗は基礎の回転θ だけでなく,水 平荷重の影響を受けるため,載荷点高さが低くなると水平 荷重とモーメント荷重の複合効果により基礎のモーメン ト抵抗が減少するものと考えられる。 ラフト底面水平変位
(mm) 基礎の 沈下 s (m m ) PR_H P_H R_H2 -100 -50 0 50 100 -300 -200 -100 0 各載荷サイクルの 初期状態 図 14 構造物自重が重いケースにおける δ - 沈下関係 -300 -200 -100 0 載荷サイクル 最大沈下量 smax (m m ) PR_L P_L R_L2 PR_H P_H R_H1 1a 1b 2a 2b 3a 3b 4a 4b 図 15 各載荷サイクルで計測された最大沈下量 4.3 基礎の変位挙動 4.3.1 基礎の沈下挙動 図 14 にラフト底面水平変位 δ と基礎の沈下 s の関係を 示す。図中の丸,三角,四角のマークは各載荷サイクルの 初期状態を示している。パイルドラフト基礎の水平交番載 荷に伴う沈下は,杭基礎よりも小さく抑えられている。ま た杭基礎は δ に対して線形的に沈下が増加することに対 し,パイルドラフト基礎は載荷初期の水平変位が小さい範 囲ではδ の増加に伴い沈下が増大するが,水平変位が大き い範囲では基礎が浮き上がるような非線形的な沈下挙動 を示す。 図 15 に各載荷サイクルにおいて計測された基礎中心の 最大沈下量を示す。パイルドラフト基礎は杭基礎に比べ水 平荷重に伴う基礎の沈下が小さくなることが確認できる。 また,全ての基礎で構造物自重の重いケースが軽いケース と比べて,沈下量が大きくなっている。特に杭基礎では, P_H の沈下量は P_L の 2.1 倍程度であり,構造物自重の影 響を顕著に受けることが確認できる。図 7 で示したよう に,P_L と P_H の杭部の降伏鉛直荷重はそれぞれ 6120kN, 5790kN と同程度となっているが,自重が増加すると相対 的に鉛直荷重に対する杭の安全率が減少するため,結果と して基礎の沈下量が増加する。パイルドラフト基礎におい ても,構造物自重の重いPR_H の沈下量は PR_L と比べてラフト底面水平変位
(mm) 右杭の沈下 sRP (mm) PR_L P_L PR_H P_H -100 -50 0 50 100 -200 -150 -100 -50 0 各載荷サイクルの 初期状態 図 16 δLDT =±100mm,h/S=1.0 における δ - 右杭の沈下関係 大きくなっているが,その差は杭基礎ほど顕著でなく,自 重の増加に伴う基礎の沈下量増加を低減できていること が分かる。図 10 で示したように,沈下量の増加に伴い, ラフトの反力が大きくなり,その結果,パイルドラフト基 礎では,杭基礎のような自重の増加に伴う過大な沈下量の 増加を防ぐことができる。 図 16 に δLDT=±100mm,h/s=1.0 の載荷サイクルにおける ラフト底面水平変位δ と右杭の沈下の関係を示す。右杭は まず正の水平変位とともに押込まれ,次に負の水平変位に 伴い引抜かれる。杭基礎は押込み杭,引抜き杭ともにδ に 対して線形的な沈下・浮き上がり挙動を示している。また, P_H は P_L に比べ杭押込み時の沈下量が卓越しているが, 杭引抜き時の浮き上がり量は小さくなっている。押込み杭 の沈下量が P_H で大きくなるのは,前述の通り杭の鉛直 荷重に対する安全率がP_L と比較して小さいためである。 基礎中心の沈下は,押込み杭の沈下と引抜き杭の浮き上が り量で決まることを考えると,押込み杭の沈下量が大きく, 引抜き杭の浮き上がり量の小さいP_H の沈下量が P_L よ りも大きくなるのは当然の結果と言える。 パイルドラフト基礎は載荷方向前方の押込み側におい て,水平変位の増加に伴いラフトの反力が増加し杭の沈下 を抑える効果がある。このため,水平変位が大きくなるに つれて,押込み杭で発生する沈下量が徐々に減少する傾向 が見られる。これに対し,杭が引抜かれる際は,水平変位 の増加に伴い浮き上がりの傾向は徐々に大きくなる。これ は,水平変位が大きくなると押込み側の沈下がラフトによ り遮られることにより,基礎がラフト前面を支点とした剛 体回転をし,引抜き杭の浮き上がりが増加するためである。 つまり,引抜き側ではラフトの接地圧は非常に小さくなっ ており,押込み側と異なる接地圧条件になっていると考え られる。このような押込み杭と引抜き杭の非線形的な挙動 のため,図 14 に示したようにパイルドラフト基礎の沈下 挙動は非線形的な傾向を示す。これらは,パイルドラフト 基礎では上部構造物の自重に依らず,杭基礎に比べ押込み 杭の沈下が抑えられるが,引抜き杭の浮き上がり量が大き くなっているため,モーメント荷重による基礎の回転は杭 -100 -50 0 50 100 -0.02 0 0.02 0.04 ラフト底面水平変位
(mm) 基礎 の 回転
(r ad ) PR_L P_L R_L1 PR_H P_H R_H1 (a) h/S=1.0 -100 -50 0 50 100 -0.02 0 0.02 0.04 ラフト底面水平変位
(mm) 基礎の 回転
(r ad) PR_H P_H R_H2 PR_L P_L R_L2 (b) h/S=1.8 図 17 δLDT =±100mm における δ - θ 関係 の引抜きによるものが支配的となる可能性を示唆してい る。 4.3.2 水平変位 - 回転角関係(基礎の変形モード) 図 17 (a) - (b)にそれぞれ水平載荷高さ h/S=1.0,1.8 の載 荷サイクルにおけるラフト底面水平変位δ - 基礎の回転 θ 関係を示す。図 12,図 13 で説明したように,水平荷重 の載荷位置が高くなると,水平荷重に対して相対的に大き なモーメント荷重が基礎に作用することとなる。このため, 全ての基礎においてh/S=1.0に比べh/S=1.8の載荷サイクル で,水平変位δ に対して相対的に回転 θ が大きくなる。特 に,この傾向は直接基礎で顕著に表れている。また,h/S=1.8 においては,構造物自重による違いはh/S=1.0 のケースと 比べて顕著ではない。h/S=1.0 においては,構造物の自重 の違いにより基礎の変位モードが異なり,直接基礎とパイ ルドラフト基礎において,自重の軽いケース (PR_L, R_L1)は,重いケースより回転 θ が大きくなっており,こ の傾向は直接基礎で顕著となっている。一方,杭基礎は自 重の増加により,基礎の回転が相対的に大きくなっている。 これは図 16 で示したように,自重の重い P_H では P_L と比べ押込み杭で大きな沈下量が発生しており,押込み杭 の沈下増加に伴う基礎の回転が顕著になるためと考えら れる。9 各載荷サイクルにおける 最大ラフト底面水平変位
m (mm) 残留ラ フト底 面水平変 位
r (m m) PR_H P_H R_H1 & R_H2 PR_L P_L R_L1 & R_L2 0 25 50 75 100 125 150 0 25 50 75 100 図 18 各基礎の残留ラフト底面水平変位 0 0.01 0.02 0.03 0 0.005 0.01 0.015 0.02 0.025 各載荷サイクルにおける 最大回転角
m (rad) 残留回転 角
r (ra d) PR_H P_H R_H1 & R_H2 PR_L P_L R_L1 & R_L2 図 19 各基礎の残留回転角 4.3.3 残留水平変位,回転角 図 18 に各載荷サイクルにおける最大ラフト底面水平変 位δmと残留ラフト底面水平変位δrの関係を示す。各基礎 とも構造物自重によるδrの違いは明確に確認できない。一 方,ばらつきはあるものの,直接基礎のδrはパイルドラフ ト基礎と杭基礎のそれよりも大きくなる傾向がある。これ は,ラフト底面で発生した滑りは除荷後も残留し回復しづ らいことを示している。 図 19 に各載荷サイクルにおける最大回転角 θmと残留 回転角 θrの関係を示す。各基礎とも構造物自重による θr の違いは明確に確認できない。残留回転角θrは杭基礎で大 きくなり,直接基礎およびパイルドラフト基礎のθrは小さ く抑えられている傾向が確認できる。道路橋示方書20)では, レベル 2 地震時における橋脚基礎の許容変位として残留 回転角0.02rad を目安として与えており,橋脚基礎の残留 回転角は設計上重要な問題である。図 19 から分かるよう に,パイルドラフト基礎の残留回転角は杭基礎よりも小さ く,直接基礎と同等かそれ以下であり,残留変形という観 点から見ても有利な基礎形式であると言える。 4.4 パイルドラフト基礎の水平抵抗 図 12,図 17 で示したように,水平荷重の載荷高さが 低くなると,基礎の水平変位δ および基礎に作用する水平 荷重 PLが大きくなる。ここでは相対的にモーメント荷重 の影響の少ないh/S=1.0 の結果でパイルドラフト基礎の水 -75 -50 -25 0 25 50 75 -2000 -1000 0 1000 2000 ラフト底面水平変位
(mm) PL , PRH , PPH (k N) δ P1 δ P2 P = (ΔP1+ ΔP2) / 2 図 20 Δδ と ΔP の定義 ラフト底面水平変位
(mm) PL (kN ) PR_L P_L R_L1 PR_H P_H R_H1 -100 -50 0 50 100 -3000 -2000 -1000 0 1000 2000 3000 図 21 δLDT =±100mm,h/S=1.0 における δ - PL関係 0 20 40 60 80 100 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500
(mm)
PL (kN ) PR_L P_L R_L1 PR_H P_H R_H1 図 22 δLDT =±100mm,h/S=1.0 における Δδ - ΔPL関係 平抵抗 (δ - PL関係)を議論することとする。また,図 9 で 示したように,載荷装置は手動で制御しており,実際に基 礎に与えたδLDTは正負で対称となっていない。このため, 図 20 に示す Δδ,ΔP を用いて水平変位と水平抵抗関係を 比較検討する。ここで,Δδ は載荷前からのラフト底面水 平変位増分であり,ΔP は正負載荷時の水平変位増分 Δδ に おける各種水平抵抗P (水平抵抗 PL,ラフト部水平抵抗PRH, 杭部水平抵抗PPH)の増分 (図中の ΔP1,ΔP2)の平均値であ る。 4.4.1 水平変位 δ - 水平抵抗 PL関係 図 21 に δLDT=±100mm,h/S=1.0 の載荷サイクルにおける-100 -50 0 50 100 -3000 -2000 -1000 0 1000 2000 3000 ラフト底面水平変位
(mm) PL & PRH (k N ) PL (PR_L) PL (R_L1) PRH (PR_L) PL (PR_H) PL (R_H1) PRH (PR_H) 図 23 δLDT =±100mm,h/S=1.0 における δ - PRH関係 0 20 40 60 80 100 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500
(mm)
PL &
PRH (k N) PL (PR_L) PL (R_L1) PRH (PR_L) PL (PR_H) PL (R_H1) PRH (PR_H) 図 24 δLDT =±100mm,h/S=1.0 における Δδ – ΔPRH関係 各基礎のラフト底面水平変位δ と水平抵抗 PLの関係を示 す。また,図 22 に δLDT=±100mm,h/S=1.0 の載荷サイクル におけるΔδ - ΔPL関係を示す。直接基礎に着目すると,水 平変位が小さい範囲ではR_L1 と R_H1 の水平抵抗は同程 度であるが,極限水平抵抗は自重の大きなR_H1 で 15%倍 程度大きくなる。これは,直接基礎の水平抵抗は,構造物 自重に起因するラフト底面の摩擦抵抗により発現される ためである。 一方,杭基礎では構造物自重の重い P_H の水平抵抗は P_L のそれに比べて 20%程度小さくなる。前述のように, 杭基礎においては構造物自重の増加に伴い,鉛直荷重に対 する安全率が減少し押込み杭の沈下量が増加する。このた め,図 17 で示したようにラフト底面水平変位 δ が同程度 であっても基礎の回転が相対的に大きくなり,4.2.3 で証 明した通り,構造物自重の重いP_H は P_L と比較して水 平抵抗が小さくなる。 一方,パイルドラフト基礎は構造物自重の重いPR_Hが, PR_L に比べ 15%程度大きな水平抵抗を示す。これは図 10 で示したように,PR_H はラフトの鉛直荷重分担率が 15% とPR_L の 5%より大きく,ラフト部でより大きな水平抵 抗が発現するためと推察できる。 4.4.2 ラフト部の水平抵抗 図 23 に δLDT=±100mm,h/S=1.0 の載荷サイクルにおける ラフト底面水平変位δ - ラフト部水平抵抗 PRH関係を示す。 -20 0 20 40 60 0 10 20 30 40 50 ラフト底面水平変位
(mm) RH LP (%) PR_L PR_H 載荷終了 載荷前 図 25 δLDT =+100mm,h/S=1.0 における δ と ラフト部水平荷重分担率RHLP 関係 -100 -50 0 50 100 -3000 -2000 -1000 0 1000 2000 3000 ラフト底面水平変位
(mm) PL & PPH (k N) PL (PR_L) PL (P_L) PL (PR_H) PL (P_H) PPH (PR_L) PPH (PR_H) 図 26 δLDT =±100mm,h/S=1.0 における δ - PPH関係 図中にはパイルドラフト基礎および直接基礎のδ - PL関係 も示してある。また,図 24 に δLDT=±100mm,h/S=1.0 の載 荷サイクルにおけるΔδ – ΔPRH関係を示す。PR_H は PR_L と比べて2.8 倍のラフト部水平抵抗を発現しており,前述 の考察を確認することができる。PR_H は PR_L に比べ, 水平荷重に伴う基礎の沈下が若干大きくなるが (図 10), この相対的に大きな沈下によりラフトから得られる水平 抵抗が増加すると言える。 図 25 に δLDT=+100mm,h/S=1.0 の載荷サイクルで計測 されたラフト部の水平荷重分担率RHLP を示す。RHLP は パイルドラフト基礎全体の水平抵抗 PLに対するラフト部 の水平抵抗PRHの比である。PR_L および PR_H の RHLP はそれぞれ15%と 30%程度となり,δ が小さい範囲で増加 し,δ が大きくなるとほぼ一定,あるいはわずかに低下す る傾向を示す。 4.4.3 杭部の水平抵抗 (1) 杭部全体の水平抵抗 図 26 に δLDT=±100mm,h/S=1.0 の載荷サイクルにおける ラフト底面水平変位δ と杭部水平荷重 PPHの関係を示す。 図中にはパイルドラフト基礎および杭基礎のδ - PL関係も 示してある。また,図 27 に δLDT=±100mm,h/S=1.0 の載荷 サイクルにおけるΔδ – ΔPPH関係を示す。ここでのPPH, ΔPPHは全4 本の杭の和である。11 0 20 40 60 80 100 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500
(mm) PL (PR_L) PL (P_L) PPH (PR_L) PL (PR_H) PL (P_H) PPH (PR_H)
PL &
PPH (kN ) 図 27 δLDT =±100mm,h/S=1.0 における Δδ - ΔPPH関係 0 20 40 60 80 100 0 500 1000 1500
(mm) 押込み 杭の
PPH (k N) PR_L P_L PR_H P_H 押込み杭 水平荷重 図 28 δLDT =±100mm,h/S=1.0 における 押込み杭のΔδ - ΔPPH関係 杭基礎の場合,P_H の水平抵抗は P_L と比べ小さくなっ ている。一方,パイルドラフト基礎のPPHは,PR_L と PR_H で同程度となり,杭基礎のような自重の増加に伴う杭部水 平抵抗の低下は見られない。また,パイルドラフト基礎の 杭部水平抵抗は杭基礎のそれよりも大きくなった。杭基礎 の構造物自重の増加に伴う水平抵抗の低下は,押込み杭の 沈下に伴う基礎の回転の相対的な増加によるものである が,パイルドラフト基礎では,図 16 で示したようにラフ ト部により押込み杭の過大な沈下が抑制される。さらに, 図 28 で後述するが,パイルドラフト基礎では杭基礎と比 較して,ラフト接地圧の影響により押込み側の杭部水平抵 抗が増加する。このため,パイルドラフト基礎の杭部は構 造物自重の増加に対して杭基礎のような水平抵抗の低下 を示さず,杭基礎よりも大きな水平抵抗が得られる。PR_L とPR_H で杭部の水平抵抗が同程度であるため,図 21, 図 22 で示した PR_H と PR_L の水平抵抗の差はラフト部 水平抵抗の差が主な要因であると言える。 (2) 押込み杭および引抜き杭の水平抵抗 図 28 に δLDT=±100mm,h/S=1.0 の載荷サイクルにおける 押込み杭のΔδ - ΔPPH関係を示す。なお,ここでの押込み 杭の水平抵抗増分ΔPPHは押込まれる側の杭2 本の和であ る。押込み杭の水平抵抗は杭基礎に比べ,パイルドラフト 基礎で大きくなっている。構造物自重による差はパイルド 0 20 40 60 80 100 0 500 1000 1500
(mm) 引抜き 杭の
PPH (k N) PR_L P_L PR_H P_H 水平荷重 引抜き杭 図 29 δLDT =±100mm,h/S=1.0 における 引抜き杭のΔδ - ΔPPH関係 ラフト基礎ではあまり見られないが,杭基礎では軽いケー スの方が重いケースよりも大きな水平抵抗を示している。 結果として,杭基礎に比べPR_L で 1.8 倍,PR_H で 2.1 倍 の水平抵抗となっている。水平荷重に対して前方である押 込み杭周辺では,図 16 で示したようにラフト底面が地盤 に押しつけられ接地圧が増加する。このため,押込み杭周 辺の拘束圧が増加し,杭基礎に比べ高い水平抵抗となる。 図 29 に δLDT=±100mm,h/S=1.0 の載荷サイクルにおける 引抜き杭のΔδ - ΔPPH関係を示す。なお,引抜き杭の水平 抵抗増分ΔPPHは引抜かれる側の杭2 本の和である。水平 変位が小さい範囲では,パイルドラフト基礎の引抜き杭の 水平抵抗は杭基礎に比べ大きくなる。しかし水平変位の増 加に伴い,杭基礎はなだらかに水平抵抗が増加するが,パ イルドラフト基礎は水平変位増分に対する水平抵抗増分 が小さくなり,最終的にほぼ一定値となっている。引抜き 杭は直前の載荷サイクルで押込まれているため,ラフト底 面接地圧の影響により杭周辺の拘束圧が大きくなってい る。このため,引抜き初期の水平変位が小さい範囲では, 接地圧の影響により杭基礎に比べて水平抵抗が大きくな る。しかし,図 16 に示したように,水平変位の増加に伴 いパイルドラフト基礎の引抜き杭は大きく浮き上がり,こ れによって引抜き側の接地圧も急激に減少することとな る。さらに引抜き杭前方の地盤は,ラフト底面に追従して 動くため引抜き杭の地盤に対する相対変位は減少し,杭の 水平抵抗は減少する。このため,水平変位が大きい範囲で はパイルドラフト基礎の引抜き杭は非線形的な挙動を見 せ,水平抵抗が一定値となったと考えられる。 Horikoshi et al. 12)らの報告によると,パイルドラフト基 礎の杭部水平抵抗は単杭と比較して,押込み杭,引抜き杭 ともに高い水平抵抗を示すとしている。これはHorikoshi et al.の実験条件のように比較的小さなモーメント荷重を基 礎に与え基礎の回転が抑えられた場合は,接地圧が押込み 側と引抜き側で同程度になるためであると考えられる。本 実験のように,基礎に作用するモーメント荷重を大きく, 基礎の回転が卓越すると,接地圧の条件が押込み側と引抜 き側とで異なるため,杭は異なる挙動を示すことが確認で-0.03 -0.02 -0.01 0 0.01 0.02 0.03 -20000 -10000 0 10000 20000 基礎の回転
(rad) ML , M A , M B , M R (kN m ) θ M2 θ M1 M = (ΔM1+ ΔM2) / 2 図 30 Δθ と ΔM の定義 きた。また,引抜き杭での不利な影響に比べ,押込み杭で の接地圧による有利な影響が卓越するため,図 26,図 27 で示したように杭全体の水平抵抗は水平変位のレベルに 依らず,杭基礎に比べパイルドラフト基礎で大きくなった。 4.4.4 パイルドラフト基礎の水平抵抗まとめ 以上のように,上部構造物の自重を重くしたケースにおいても,Sawada & Takemura17)が報告したように,基礎に
作用するモーメント荷重が大きく,基礎に発生する回転が 卓越すると,パイルドラフト基礎では押込み側の杭と引抜 き側の杭の挙動が大きく異なることが確認できた。上部構 造物自重が異なるパイルドラフト基礎の水平載荷実験よ り新たに得られた知見は以下のとおりである。 杭基礎では杭が同等の条件で,上部構造物の自重が大き くなると,相対的に杭の安全率が低下し押込み杭の沈下量 が増加する。その結果,基礎の回転が増加し,特に杭深部 の水平変位が減少するため杭基礎の水平抵抗は減少する (図 21,図 22)。このため,構造物自重を増加させる場合, 当然ではあるが杭の仕様を上げる必要がある。一方,パイ ルドラフト基礎は構造物自重の増加により,基礎の沈下量 が若干増加するものの,この増加した沈下によりラフト部 からの直接得られる水平抵抗をより効果的に期待できる ようになる (図 23,図 24)。さらにラフト部が杭の過大な 沈下を防ぎ,ラフト接地圧の増加により押込み杭の水平抵 抗が増加する (図 28)。このため,パイルドラフト基礎は 基礎の沈下が許容値以内に収まる範囲であれば,構造物自 重が大きくなったとしても杭基礎のように杭の仕様を上 げる必要が無く,合理的な基礎形式であることが本実験の 結果より確認できた。 4.5 パイルドラフト基礎のモーメント抵抗 図 13,図 17 で示したように,水平荷重の載荷高さが 高くなると,基礎の回転θ および基礎に作用するモーメン ト荷重MLが大きくなる。ここでは高架橋基礎等を想定し てパイルドラフト基礎のモーメント抵抗 (θ - ML関係)を, h/S=1.8 の結果で議論することとする。また図 9 で示した -0.02 0 0.02 0.04 -10000 -5000 0 5000 10000 基礎の回転
(rad) ML (k Nm ) PR_H P_H R_H2 PR_L P_L R_L2 図 31 δLDT =±100mm,h/S=1.8 における θ - ML関係 0 0.01 0.02 0.03 0.04 0 2500 5000 7500 10000 12500
(rad)
ML (kN m ) PR_L P_L R_L2 PR_H P_H R_H2 図 32 δLDT =±100mm,h/S=1.8 における Δθ - ΔML関係 ように,載荷装置は手動で制御しており,実際に基礎に与 えたδLDTは正負で対称となっていない。このため,水平抵 抗 (図 20)と同様にモーメント抵抗においても図 30 に示 すΔθ,ΔM を用いて基礎の回転角とモーメント抵抗関係を 議論する。ここで,Δθ は載荷前からの基礎の回転増分で あり,ΔM は正負載荷時の基礎の回転増分 Δθ における各 種モーメント抵抗 (ML: 基礎全体のモーメント抵抗,MA: 杭頭軸力の変化によるモーメント抵抗,MB: 杭頭曲げモー メントによるモーメント抵抗,MR: ラフト部のモーメント 抵抗)の増分 (図中の ΔM1,ΔM2)の平均値である。 4.5.1 基礎の回転 θ – モーメント抵抗 ML関係 図 31 に δLDT=±100mm,h/S=1.8 の載荷サイクルにおける 基礎の回転θ とモーメント抵抗 MLの関係を示す。また, 図 32 に δLDT=±100mm,h/S=1.8 の載荷サイクルにおける Δθ - ΔML関係を示す。図 21,図 22 で示した水平抵抗と同様, 直接基礎は自重の重い R_H2 が R_L2 よりも 1.3 倍 (1500kNm)大きなモーメント抵抗を示すが,杭基礎では自 重の軽いP_L のモーメント抵抗は P_H と比べ 1.25 倍程度 大きくなる。P_H の鉛直荷重に対する安全率は,P_L と比 較して相対的に小さいため,モーメント荷重により発生す る押込み杭の沈下が大きくなる。押込み杭の鉛直抵抗は, 杭基礎のモーメント抵抗を担う 1 つの成分であるため, P_H のモーメント抵抗は P_L よりも小さくなる。一方,パ イルドラフト基礎は基礎の回転が小さい範囲では,直接基13 0 1000 2000 3000 -300 -200 -100 0 右杭の平均杭頭軸力 (kN) 0 PR_L P_L PR_H PH 右杭の沈 下 sRP (m m ) 各載荷サイクルの 初期状態 (a) 平均杭頭軸力 0 1000 2000 3000 -300 -200 -100 0 右杭の平均先端支持力 (kN) 0 PR_L P_L PR_H PH 右 杭の沈下 sRP (mm) 各載荷サイクルの 初期状態 (b) 平均先端支持力 0 1000 2000 3000 -300 -200 -100 0 右杭の平均周面摩擦力 (kN) 0 PR_L P_L PR_H PH 右杭の沈下 sRP (m m ) 各載荷サイクルの 初期状態 (c) 平均周面摩擦力 図 33 δLDT =±100mm,h/S=1.8 における 右杭の支持力-沈下関係 礎と同程度のモーメント抵抗であるが,基礎の回転が増加 しても直接基礎のような明確な降伏点は現れず,結果とし て高いモーメント抵抗を発現している。また,杭基礎とは 逆で構造物自重の重いPR_H が PR_L の 1.3 倍 (1850kNm) 大きなモーメント抵抗を示している。パイルドラフト基礎 における構造物自重の差は直接基礎における差と同程度 であるため,構造物自重の増加による転倒モーメント抵抗 の増加が主な原因の1 つと考えられる。 4.5.2 杭に発生する軸力 パイルドラフト基礎および杭基礎がモーメント荷重を 受けた際の杭軸力の変化は,モーメント抵抗の1 つの要因 である。ここでは杭軸力の変化について議論する。 図 33 (a) - (c)にそれぞれ δLDT=±100mm,h/S=1.8 の載荷 サイクルにおける右杭の杭頭軸力 - 沈下関係,杭先端支 持力 - 沈下関係,杭周面摩擦力 - 沈下関係を示す。なお, ここでの杭頭軸力,杭先端支持力,杭周面摩擦力は右側の 杭の2 本の平均値である。また図中の丸および三角マーク は載荷前の初期状態を示している。図 33 (b),(c)から,P_L と P_H を比較すると鉛直荷重に対する安全率が相対的に 小さい P_H は載荷前から極限周面摩擦力が発現されてお り,さらにわずかな沈下で先端支持力が降伏荷重に達し, 沈下が急激に増加することが確認できる。パイルドラフト 基礎に着目すると,水平載荷前の初期先端支持力はラフト 部が鉛直荷重の一部を支持するため,杭基礎に比べ小さく なり,この傾向は特に構造物自重の重いケースで顕著であ る。これは,PR_L と比較すると,構造物自重の重い PR_H でラフト部が支持する鉛直荷重が相対的に大きくなるた めである (図 10)。PR_H では初期の先端支持力が小さい ことに加え,ラフト部が杭の過度な沈下を防ぐため P_H で見られる脆弱な挙動は確認できない。次に引抜き時の先 端支持力の挙動に着目すると,P_H を除くケースで,先端 支持力が0 に達し浮き上がりが生じていることが分かる。 一方,P_H では引抜き杭の上向き変位が小さく (図 16), 正の先端支持力が発現されている。 杭の周面摩擦力に着目する (図 33 (c))と,ラフト底面接 地圧により押込み杭周辺地盤の拘束圧が増加するため,パ イルドラフト基礎の杭周面摩擦力は杭基礎と比べて大き くなることが確認できる。この傾向は図 28 で示した押込 み杭の水平抵抗増加と同様の傾向である。 以上より,図 33 (a)に示すように,杭基礎は水平荷重, モーメント荷重により杭の鉛直支持力が降伏荷重に達し て沈下が急激に増加する傾向を見せる。一方,パイルドラ フト基礎では杭基礎のような急激な沈下増加を見せずに, 押込み杭の沈下を低減出来ていることが分かる。 4.5.3 パイルドラフト基礎の杭部,ラフト部のモーメ ント抵抗 パイルドラフト基礎のモーメント抵抗は杭頭軸力の変 化,杭頭曲げモーメント,ラフトの接地圧の変化により発 現する。以下にそれぞれについて考察する。 図 34 (a) – (c)に δLDT=±100mm,h/S=1.8 の載荷サイクル におけるΔθ とΔMA,ΔMBおよびΔMRの関係をそれぞれΔML とともに示す。ここで,Δθ は基礎の回転角増分,ΔML,ΔMA, ΔMB,ΔMRはそれぞれ基礎全体のモーメント抵抗増分,杭 頭軸力の変化によるモーメント抵抗増分,杭頭曲げモーメ ントによるモーメント抵抗増分,ラフト部のモーメント抵 抗増分である。ここで,杭に起因するモーメント抵抗増分 ΔMA,ΔMBは杭頭に貼り付けたひずみゲージから直接計測 することが出来るが,ラフト部のモーメント抵抗増分ΔMR は直接計測することが出来ない。このため,全体のモーメ ント抵抗増分ΔMLからΔMAおよびΔMBを差し引くことに
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0 2500 5000 7500 10000
(rad) P_H ML MA
ML &
MA (k Nm ) P_L PR_H PR_L (a) 杭頭軸力によるモーメント抵抗増分 ΔMA 0 0.01 0.02 0.03 0.04 0 2500 5000 7500 10000
(rad) P_H ML MB
ML &
MB (k Nm ) P_L PR_H PR_L (b) 杭頭曲げモーメントによるモーメント抵抗増分 ΔMB PR_H PR_L 0 0.01 0.02 0.03 0.04 0 2500 5000 7500 10000
(rad)
ML &
MR (k N m ) R_L2 R_H2 ML MR (c) ラフト部モーメント抵抗増分 ΔMR 図 34 δLDT =±100mm,h/S=1.8 における基礎の回転増分 Δθ と モーメント抵抗増分ΔM の関係 より,ΔMRを求めた。 図 34 (a)より,パイルドラフト基礎は杭基礎と比較する と杭頭軸力から得られるモーメント抵抗が大きいことが 分かる。杭基礎においては,P_L は P_H よりも高いモーメ ント抵抗を示しており,構造物自重が増加すると杭頭軸力 から得られるモーメント抵抗 ΔMAが減少する結果となっ ている。これは,図 33 で示したように,P_H の杭の支持 力はわずかな沈下で降伏荷重に達するためである。一方, パイルドラフト基礎では,ラフト部が構造物自重の増加に 伴う沈下量の増加を抑えるため,構造物自重が増加しても 杭基礎のようにΔMAは低下せず,PR_L と PR_H で同程度 の大きさとなる。杭頭曲げモーメントから得られるモーメ ント抵抗増分ΔMB (図 34 (b))に着目すると,ΔMBは基礎の 回転に対してほぼ線形的に増加し,基礎形式によらず同程 度の値となるが,構造物自重が重いケース (PR_H,P_H) の方がやや大きな杭頭曲げモーメントが生じている。 杭基礎以外についてラフトから得られるモーメント抵 抗増分ΔMR (図 34 (c))に着目する。PR_H は PR_L と比較 して,ラフト部の荷重分担が大きいため (図 10),ラフト 部のモーメント抵抗が大きくなる。これは,図 23,図 24 で示したラフト部の水平抵抗と同様の傾向である。 4.5.4 パイルドラフト基礎のモーメント抵抗まとめ 以上のように,上部構造物の自重を重くしたケースにおいても,Sawada & Takemura17)が報告したように,パイル
ドラフト基礎は杭基礎に比べ,ラフと底面接地圧の影響に より押込み杭の周面摩擦力が増加し,杭部から得られるモ ーメント抵抗が大きくなることが確認できた。また,上部 構造物の異なる実験結果を比較することで得られた新た な知見は以下のとおりである。 杭基礎では杭の条件が同等であれば,構造物自重の増加 に伴い,鉛直荷重に対する杭の安全率が低下し比較的小さ な沈下で杭の支持力が降伏荷重に達する。このため,構造 物自重の増加により杭基礎のモーメント抵抗は減少する。 つまり,構造物自重を増加させる場合,杭の仕様を上げる ことが求められる。パイルドラフト基礎は,杭基礎よりも 大きなモーメント抵抗を示す。これはラフト部からモーメ ント抵抗が得られることに加え,杭の周面摩擦力がラフト 接地圧の影響により増加するためである。また,パイルド ラフト基礎においては,杭基礎と異なり構造物自重の増加 に伴うモーメント抵抗の低下が見られない。パイルドラフ ト基礎では,ラフト部が杭の沈下を低減させるため,杭の 支持力が降伏状態に達することが抑えられる。また構造物 自重の増加により,基礎の沈下量が若干増加するものの, それが結果としてラフト部から得られるモーメント抵抗 を増加させる。このため,パイルドラフト基礎は杭基礎と 異なり,構造物自重の増加によりモーメント抵抗が増加す る。つまり,パイルドラフト基礎は,構造物自重が大きく なったとしても基礎地盤が十分な鉛直支持力を有してい れば,杭基礎のように杭の仕様を上げる必要が無く,合理 的な基礎形式であることが本実験の結果より確認できた。 4.6 水平荷重とモーメント荷重の複合効果が基礎に与 える影響 ここまで,水平荷重による水平変位,モーメント荷重に よる回転角について個別に議論したが,本節では水平荷重,
15 θ δ H=5m δθ=H×θ δT 図 35 橋脚の変形概要図 0 20 40 60 80 100 120 PR_L PR_H P_L P_H R_L2 R_H2 Δδθ Δδ 単位: mm Δδ Δδθ ΔδT (m m ) 14 25 10 17 24 33 39 62 5 18 4 14 (a) h/S=1.8,PL=450kN 0 50 100 150 200 250 PR_L PR_H P_L P_H R_L2 R_H2 δΘ δ 単位:mm Δδ Δδθ ΔδT (m m ) 32 61 20 37 70 96 92 145 56 135 15 45 (b) h/S=1.8,PL=925kN 図 36 橋脚頂部における水平変位 モーメント荷重の両方により構造物に発生する変位につ いて議論する。本実験で用いた基礎模型は,比較的小型の 橋脚基礎を想定している。ここでは,橋脚の高さを5m と 仮定し,各基礎形式の橋脚頂部での水平変位を比較する。 図 35 に 5m の橋脚が水平,モーメント荷重を受けた際 の変形概要図を示す。橋脚頂部の水平変位 δTは,ラフト 底面の水平変位δ,および回転による水平変位 δθの和で与 えられる。ここでδθは基礎の回転角θ×橋脚高さ H で算出 される。 図 36 に本実験結果に基づいて h/S=1.8 で水平荷重 PL=450kN,925kN 載荷時において求めた橋脚頂部 (ラフト 底面から5m の高さ)における水平変位増分 ΔδTを示す。ΔδT -75 -50 -25 0 25 50 75 -2000 -1000 0 1000 2000 ラフト底面水平変位