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博(生)甲第134号

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Academic year: 2021

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論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

報 告 番 号

博(生)甲第134号

氏 名 城内 智行

学 位 審 査 委 員

主査 北村 等 副査 原 研治 副査 石橋 郁人 副査 サトイト シリル グレン

論文審査の結果の要旨

城内 智行氏は平成 12 年 3 月に長崎大学水産学部を卒業後、大学院生産科学研究科の 博士前期課程に進学し、平成 14 年 3 月に水産学修士を取得した後、同年 4 月に博士後期 課程に進学した。平成 15 年 3 月に退学し、財団法人九州環境管理協会に就職、その後、

平成 17 年 4 月に博士後期課程に社会人学生として再入学し、現在に至っている。これら の間、タテジマフジツボ幼生の付着に対する微生物フィルムの役割に関する研究に従事 し、その結果を平成 19 年 12 月に主論文「微生物フィルムによるタテジマフジツボ Amphibalanus amphitrite幼生の付着(Larval Settlement of the Barnacle, Amphibalanus

amphitrite by the Biofilms)」として完成させ、参考論文 2 編(共に審査付き論文)を添え、

長崎大学大学院生産科学研究科教授会に博士(水産学)の学位を申請した。

長崎大学大学院生産科学研究科教授会は平成 19 年 12 月 19 日の定例教授会において、

論文内容の要旨を検討し、本論文を受理して差し支えないものと認め、上記の審査委員を 選定した。委員は主査を中心に論文内容について慎重に審議し、公開論文発表会を実施す ると共に、最終試験を行い、論文審査および最終試験の結果を平成 20 年 2 月 20 日の研究 科教授会に報告した。

提出論文は、タテジマフジツボ幼生に対する微生物フィルムの付着誘起効果を詳細に検 討すると共に,フィルムの構成生物である付着珪藻に焦点をあて,その付着活性を追究し たものであり,汚損生物としての着生制御を目的としている。

まず,海域の微生物フィルムについて,2 年間にわたり合計 24 回の基板垂下実験を行い,

これらの付着誘起活性を詳細に調べた。その結果,全調査 58 ポイントのうち誘起活性が3 ポイント,阻害活性が 4 ポイントであり,特に,本種幼生が出現する夏季に,誘起および 阻害は認められなかった。これらのことから,フィルムには,幼生の付着に対して誘起,

(2)

阻害活性は共に無いものと結論した。フィルムの構成生物であるバクテリアおよび珪藻の 密度と付着活性との関係では,共に有意な相関は認められなかった。フィルム本体は,誘 起活性を示さないが,熱とエタノールの 2 重処理を行うと活性が発現した。化学的な機構 は不明ではあるが,フィルムの表面構造が変化し,付着誘起物質が露出したものと推察し た。発現した付着誘起活性は過ヨウ素酸,およびレクチン処理によって低下したことによ り,糖関連物質が活性物質であると考察した(第 2 章)。

微生物フィルムから付着珪藻 22 種 23 株を分離培養して,本種幼生への付着活性を調べ た。その結果,Navicula ramosissima strain AおよびCocconeis sp.の 2 株に誘起活性が認めら れた。一方,9 株に阻害活性が認められ,その他 12 株については誘起も阻害も認められな かった。活性の認められた珪藻については,密度と付着活性とには正の相関が認められる と共に,無菌培養下でも誘起活性が認められた。本珪藻を塩酸,エタノール,熱により処 理した結果,活性物質は安定なものであることが示された。また過ヨウ素酸,糖分解酵素 およびレクチン処理をしたところ,レクチンLCAのみで付着誘起活性は低下したため,活 性物質はLCA結合型糖鎖をもつと推定された。LCA結合型糖鎖の量と付着活性とには正 の相関が認められた。一方,N. ramossisima strain Aは,付着誘起活性を示さなかったが,2 重処理(エタノール+熱)により有意に活性が上昇した。これを過ヨウ素酸およびレクチ ン処理した結果、活性が低下したことから活性にはLCA結合型糖鎖が関わるものと推察さ れた。珪藻Bについても,先の海域微生物フィルムと同様に,2重処理により活性物質が 露出したものと推察した(第 3 章)。

以上より,海域の微生物フィルムおよび培養付着珪藻フィルムともに,本種幼生の付着 に対して,誘起や阻害といった活性は、基本的に認められないものと考えられた。誘起活 性が認められた珪藻Aの活性物質については、LCA結合型糖鎖が関与していることが判明 した。既報の成体由来の活性物質についても,過ヨウ素酸,LCA処理により低下すること から,活性発現には共通の糖鎖構造が関与していると考えられた。微生物フィルムは潜在 的に誘起活性を持っているものの,フィルムの粘液などにより活性がマスクされていると 考えられた。これらの知見は,環境負荷の少ない、より効率的な付着防止方法の開発に貢 献するものであることを認め、博士(水産学)の学位に値するものとして合格とした。

参照

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