秋 田 大 学 教養基礎教育研究年報 45 − 53 (2016)
地学の野外実習へのモデル実験導入の試み
:教養ゼミナール「ジオパーク学入門」での実施例
教育文化学部
川村 教一・金田 皓樹・山下 清次
Introducing Some Model Experiments in Geoscience Excursion : Case of Seminar for Culture of “Introduction to Geopark Research”
in the General Education of Akita University
Norihito KAWAMURA, Koki KANETA, and Seiji YAMASHITA
1.はじめに
ジオパークとは,優れた地球科学的な事象を観 察することができる地域,また地球科学について 教育普及,観光に組織的に取り組んでいる地域で あるが,これを取り入れた大学の教養基礎教育で の成果例はまだ知られていなかった。そこで筆者 のうち川村は,秋田大学の教養基礎科目の教養ゼ ミナールとして 2014 年度に「ジオパーク学入門」
(以下,ゼミ)を開講した。これは,大学生のジ オパークについての認知度は低いと考えられるこ とから,秋田の自然を学ばせつつジオパークの概 念について理解を深めさせるとともに,学習成果 を地域貢献に活かすことを目指したものである
(川村,2014,2015)。このゼミは,主として初年 次生を対象に,大学における学習活動に必要な学 習方法の基礎,および情報発信能力(プレゼンテー ション, Web ページ制作)の基礎を身につけさせ るとともに,地域理解として,秋田県を代表する 国定公園の一つである男鹿半島の自然について理 解を深めさせることをねらいとしている。ゼミで
は男鹿半島・大潟ジオパークに焦点を当て,地形,
地質,文化などの視点からジオパークの魅力を学 生自身に見いださせ,その魅力を発信する能力を,
実習を通じ実践的に身につけていく機会を提供し ている。 2014 年度の実践では,ジオパークの基 礎的な概念の理解には有効であり,情報発信のた めの基礎的なコンピュータリテラシを向上させる ことができた。課題は,ジオサイトについての地 質学的な理解をより深めること,および口頭発表 技術の指導法の改善にあった(川村,2015)。
2015 年度の実践では,ジオパークあるいはジオ サイトの地質学的な理解を学生に深めさせるため に,室内・野外実習においてモデル実験を取り入 れた。これらのモデル実験では,逆断層などが形 成できる圧縮型地層変形モデル実験装置および火 山噴火モデル実験装置の改造もしくは実験手順の 改変を行った。地層変形モデル実験装置は,教育 用の組み立て式圧縮型モデル実験装置(川村・山 下,2015)を改変したものである。火山噴火モデ ル実験装置については,男鹿半島のジオサイトに 概要 前年度に続き,教養基礎科目のゼミナールにおいて,秋田県男鹿半島のジオパークを題材と した学生参加型の授業を実施した。今年度の改善点は,ジオサイト等についての地学的な理解をよ り深めるために,モデル実験を導入したことである。男鹿半島に見られる断層の形成と土地の隆起,
火山地形(マール,爆裂火口)の理解を図るためのモデル実験教材を活用したところ,ジオサイト
の地学事象の基礎的な理解のために有効な場合があった。
見られるマールおよび爆裂火口の地形を再現でき るよう,永井(2013)のモデル実験装置を活用し たものである。
本報では,これら教材を導入して実施した男鹿 半島の地形・地質概観や火山地形形成をテーマと した野外実習について,大学の教養基礎教育科目 としての実践例を報告し,成果と課題を整理する。
2.男鹿半島の中規模地形と主な火山地形
(1)地形・地質概説
男鹿半島は,西部は山地地域,中央部は丘陵地 域,東部は低地となっている。半島では主として 南北方向に断層が走っており,例えば西部山地地 域と中央丘陵地域との境界には,北側は湯本断 層,南側は南平沢断層がある。また,中央丘陵地 域,特に半島北東部には多数の向斜・背斜がある
(的場ほか,1989)。また,男鹿半島の基部では,
八郎潟およびその周辺の低地は東側を鹿渡断層や 五城目断層などで東方の山地と接し(宮内ほか,
2013),半島中央丘陵地域と山地間が八郎潟に代 表されるように相対的に標高の低い土地となって いる。
男鹿半島の地質については,中生代白亜紀の花 崗岩,新生代後期始新世〜前期中新世の火山岩,
中期中新世〜鮮新世の堆積岩,中期更新世以降の 火山が分布する(鹿野,2011)。火山として,目 潟火山群や寒風山火山がある。
(2)目潟火山群
半島北西部には,一ノ目潟,二ノ目潟,三ノ目 潟の火山群がある(図1中の4付近,図2)。こ れらの火山の地形は,マグマ水蒸気爆発によって 形成された円形の凹地から構成されるマールであ る(例えば吉田,1989;鹿野・林,2011)。三ノ 目潟は約2万4千年〜2万年前に形成されたと考 えられている(北村,1990)。マールとは,噴火 によってできた円形の火口で,周囲に多量の火山 屑砕物による高まりをもたない地形のことである
(勝又ほか,1993)。
(3)寒風山火山
約2万年前から活動した主に安山岩,一部は玄 武岩で構成される成層火山であり,1万年前以降 の活動は未確認である(林,2011)。寒風山には 2か所の爆裂火口(第一火口,第二火口),玄武 岩質溶岩流の流出した火口(妻恋峠火口)など異
なる地形の火口や崩壊した溶岩岩尖(通称鬼の隠 れ里)などの火山地形がある(林,1989;図1中 の7,図3)。爆裂火口とは, 爆発的噴火により山 体の一部が飛ばされたあとに生成された火口のこ とである(勝又ほか,1993)。
図 3 寒風山の第二火口(爆裂火口)
図 2 八望台から見た二ノ目潟(マール)
図 1 野外実習で訪問したジオサイト
(4 八望台,7 寒風山ではモデル実験を実施)
3.モデル実験装置の製作
(1)卓上式圧縮型地層変形モデル実験装置 1)基本構造
本実験装置の基本構造は,川村・山下(2015)
で述べたものに準拠している。最も異なる点は,
モデル地層表面(地表面)の変形のようすが観察 しやすいよう,実験装置の幅を広くした点である。
このため組み立て式とすることはできないので卓 上式とした。構造はおおよそ次のとおりである。
モデル地層(以下,地層)を実験装置の側面か ら観察するため,実験装置側面は透明な板(透明 塩ビ板もしくはアクリル板)で構成する。2枚の 透明な板に挟まれる装置の底部には,板材を1枚 使用する(図4)。
2)地層の材料と形成方法
川村・山下(2015)同様,白色の地層には図画 工作用に販売されているシルトサイズの焼石膏
(吉野石膏製)や珪砂を粉砕したシルトサイズの 岩石粉(商品名:ファインサンド,北日本産業製,
粒径中央値 10 〜 15μ m )を,茶色の地層にはコ コアパウダー(商品名:純ココア,森永製菓製)
をそれぞれ使用する。そのほか,本実践では淡黄 色のきな粉も使用して3層構造とする。地層を作 る際には,スプーンで実験装置内に粉末をまんべ んなく敷き詰め,上から板材(押さえ板)で軽く 叩くようにして,層理面が水平になるよう整形す る。
実 験 装 置 の 内 部 に は 下 位 か ら 順 に, 厚 さ 約 10 mm の淡黄色,厚さ約5 mm 茶色の層および白 色の地層を水平に敷き詰めた。3枚の地層の層厚 は約 20 mm となる。
3)地形・地層の変形
圧縮型地層変形モデル実験装置は,板材(押し 板と呼ぶ)で水平方向に押すことにより地層に力 を側方から加え,地形や地層を変形させる(図 4)。押し板を 10 cm 程度装置内に向かって水平に 押し込むことにより,地層の押し板に近い部分が 上方に凸に曲隆し,隆起しなかった地層の表面と の間には崖が形成され,これは地層断面で見ると 断層面と地表面の交線にあることから断層崖にあ たる。断層は,押し板の移動方向に直交して,複
図 4 卓上式圧縮型地層変形モデル実験装置
(a)実験装置外観,(b)地層変形後のようす
図 5 地層変形モデル実験装置設計図
(単位 mm)上:平面図,下:正面図,右:側面図
(a)
(b)
表 1 地層変形モデル実験装置製作材料
材 料 寸 法 数 量
板材(底部) 10
mm
×150mm
×400mm
1本 塩ビ板 3mm
×100mm
×400mm
2枚 塩ビ板 3mm
×100mm
×156mm
1枚数条現れる。地層断面を見ると逆断層や褶曲が表 れている点は,岡本(1999,2000)と同様である。
実験装置の幅が狭い岡本(1999,2000)や川村・
山下(2015)などの実験装置と異なり,地形の変 化が観察しやすい一方,地層形成物質であるファ インサンドなどを比較的多量に必要とし,実験準 備のための地層の形成に時間がかかる。
(2)火山噴火モデル実験装置 1)先行研究の導入
従来から教育実践で用いられている火山噴火モ デル実験は,コーラをマグマに見立て,ペットボ トル内のコーラを激しく発泡させるものである
(例えば林,2006)。最近は菓子である「メントス
®」 をコーラに入れて発泡させる,いわゆる「メント スガイザー」を火山噴火モデルに利用したものが ある(例えば永井,2013)。筆者らは永井(2013)
の方法を導入し,スクリューキャップの代わりに ゴム栓をしたコーラ(コカコーラ製コカコーラ ZERO )の 500 mL ペットボトル内にメントス(ク ラシエ製商品名「メントス
®グレープ」)を投入 する実験を行う。このような物品を用いてモデル 噴火を発生させる装置(以下, 「メントスガイザー」
装置と呼ぶ)を用意した。
筆者らは,永井(2013)の「メントスガイザー」
装置の上に地層モデルを設置し,マールや爆裂火 口をモデル実験によって再現しようとするもので ある(図6)。
2)実験装置の基本構造
マール,爆裂火口形成のためには「メントスガ イザー」装置の直上に置いた円形の皿型容器(最 大直径約 22 cm ×高さ約3 cm ,プラスチック製)
内に水平な地層あるいは単独峰の山体を用意す
る。この皿形容器の中央部には直径約 3 cm の穴 を開けた。この穴の直下に,「メントスガイザー」
装置である 500 mL ペットボトルを設置する。なお,
コーラ内容量は 500 mL から減らし 250 mL 程度と する。
3)マール形成のモデル実験
①実験装置の構造
永井(2013)では,「メントスガイザー」装置 の上位に土を盛っていたが,火山噴火により表層 の地層よりも下位の層も放出されることを観察し やすくするため,土の代わりに石英を粉砕したシ ルトサイズの白色の粉末と褐色の粉末(両粉末と も地層変形実験の材料と同じ商品)を用い,地層 のモデルとした。皿型容器に,下位には白色の地 層,上位には褐色の地層となるよう,それぞれ層 厚2 cm ,数 mm 程度の水平な地層を入れた。
②実験結果の概要
「メントスガイザー」装置内のコーラを発泡さ せると,ペットボトル内の圧力が高まって,封を していたゴム栓が上方に向かって外れると同時 に,ボトル内の発泡したコーラが体積を一気に増 加させてペットボトルから吹き出す。その際,上 を覆っていた地層を吹き飛ばし,地層に凹地を形 成する。凹地周辺に分布する放出物は,褐色地層 およびその下位にあった白色の地層を起源とした もので,噴火により比較的深部の地質も地表にも たらされることがよくわかる(図7)。
本実験は,こういった様子を,マグマ水蒸気爆 発により表層地質が吹き飛ばされてマールが形成 される現象に見立てるものである。火山噴火のア ナロジーはコーラが発泡して噴火する様子により 示すことができるが,マグマと水が接して爆発的 に水蒸気になる現象(マグマ水蒸気爆発)は再現 できない。この点,「メントスガイザー」がなる
図 6 火山噴火モデル実験装置をセットする様子:
マールモデル実験装置の例
図 7 野外実習で行ったマール形成実験での 地表の変化の様子
(a)噴火前の地表,(b)噴火後の地表
べく勢いよく起こるよう予備実験で実験条件を確 かめておく必要がある。
4)爆裂火口形成のモデル実験
①実験装置の構造
永井(2013)の実験では土を盛っていたが,モ デル地形の変化が表れやすいよう,水分を含まな いファインサンドを用いた点が異なっている。モ デル実験装置の上部の皿型容器に,高さ約6 cm , 直径約 10 cm のお椀を伏せたような形状の山体を ファインサンドで作った。
②実験結果の概要
「メントスガイザー」装置内の「噴火」により,
山体の一部を吹き飛ばし(図8( a )),じょうご 型の凹地が山体の中央部に形成される(図8( b ))。
この様子を,マグマ水蒸気爆発により山体が吹き 飛ばされて爆裂火口が形成される現象に見立てる ものである。
4.授業実践
(1)本授業のカリキュラム上の位置づけ
前期開講の教養ゼミナール2「ジオパーク学入
門」(2単位)は全学部の学生を対象とした教養 基礎教育の選択科目であり,クラス定員は 20 名 である。
(2)授業の概要 1)授業の目標
今年度は昨年度よりも削減して,以下の2点を シラバスで示した。これらは昨年度の目標を一部 変更したものである。
・ 男鹿半島の地形,地質,特産品(食物)の魅力 を語れるようになる。
・プレゼンテーション能力の基礎を身につける。
2)授業設計方針
基本的に昨年度の授業構成と大きな変更はな い。本ゼミは 15 コマの授業から構成し,講義の ほか学生参加型の授業形態を主体とし,室内実習
(プレゼンテーション),野外実習から構成した。
内容については後で述べる。
本年度の変更点は,第3回授業で男鹿半島の中 地形構造を考えるための地層変形モデル実験を導 入したこと,第7回授業の野外実習において,数 地点のジオサイトにおける火山噴火モデル実験を 追加した点である。
3)指導者
専任教員である筆者が1人で授業を担当した が,必要に応じて専門知識や経験のあるコメン テーターとして大学職員を招聘した。モデル実験 の際には,実験に習熟した学部学生1〜2名が助 手を務めた。
(3)授業の実施記録 1)履修学生の所属学部
この科目には,3学部から 18 名の学生が履修 登録をし,このうち 16 名が初年次生であった。
学部ごとの内訳は次の通りである。国際資源学部
(理系)1名,理工学部8名,教育文化学部(地 域文化学科9名)。文系学科所属学生は9名,理 系学部・コース所属学生も9名であった。
2)授業の概要
ゼミ授業の内容は次のとおりである。第1回は イントロダクション,第2回はジオパークについ て(講義),第3回は男鹿半島の形成史(講義と 実験),第4回〜第6回は野外実習サイト・コー スの選定(実習)で,宿題としての調べ学習と,
その成果発表を繰り返した。第7回は野外実習で,
ジオパークにおいて正課授業のない土曜日に行っ
図 8 野外実習で行った爆裂火口形成実験での地形の変化の様子
(a)噴火中の様子,(b)形成された火口
た。第8回〜第 11 回は学生自身が推薦するジオ サイトの発表および受講者以外の人たちへ情報発 信するための web ページ作成(実習)である。構 成は昨年度実施とほぼ同様であるので,詳細は川 村(2015)の表1を参考にされたい。
昨年度からの変更点がある第3回,第7回授業 のみ概要を以下に述べる。
第3回:男鹿半島の形成史
男鹿半島・大潟ジオパークの地形学・地質学的 な特徴を理解させるために講義とモデル実験の演 示を行った。モデル実験では,卓上式圧縮型地層 変形モデル実験装置による実験を演示で行った が,実験前に地層変化の様子を予想させてワーク シートに描かせ,実験後の地形・地層のようすを 断面で観察させ,スケッチで記録をとらせた。
第7回:野外実習
6月 17 日に実施した。日程概要を表2に示す。
バスによるジオサイト間の移動では,日本海の形 成に関わる地層を車窓から観察させた。図1・表 2に示したジオサイトでは地形・地質学的な解説 を筆者が行った。授業終了後,野外実習レポート 作成および自分が他の学生に薦めたいジオサイト についての発表準備を次回までの課題とした。
5.実践結果
(1)受講学生の地学学習歴
受講した学生の高校における地学系科目(「地
学Ⅰ」,「地学基礎」など)の履修状況を調査した ところ,「地学基礎」履修者は6名であった。そ れ以外の 12 名の学生の地層変形や火山に関する 知識・理解は,中学校理科学習程度と推定される。
(2)地形・地層変形モデル実験に対する学生の反応 1)事前・事後調査
まず,第3回(4月 17 日)授業のモデル実験前に,
学生が地形・地層変形についてどのような認識を 持っているのかを知るために事前調査を行った。
これは,地層を水平方向に圧縮した時にどのよう な変化が見られると予想するかを模式図でワーク シートに記入させたものである。この記入状況を,
川村・山下(2015)が行った地層変形モデル実験 の予想・結果記録分類と同様に整理すると,全受 講生 18 名の回答は,褶曲 14 名(うち主に背斜のみ,
10 名描画),同斜構造(3名),土地の隆起・地層 の厚化(1名)のように分類でき,学生の多くは 地層の褶曲,特に背斜を予想している。なお「地 学基礎」履修者が6名いたが,断層を予想した者 は 18 名中0名であった(表3)。
実験3カ月後の7月 17 日に遅延テストとして の事後調査を行い,事前調査と同様の内容・形式 で回答を求めた。4月 17 日のモデル実験で観察 された,押し板側に近い部分の褶曲(主に背斜),
断層,土地の隆起・地層の厚化などのうち,背斜 と断層が描写できていれば正答,正答以外の内容 を1項目以上記入できていれば準正答,その他の 回答は非正答とした。全回答( N= 18)の分類結果 は次のとおりである(表3)。
正答:背斜と断層(6名)
準正答:背斜と地層の厚化(2名),同斜構造 と断層(1名),褶曲(1名),地層の厚化と地割 れ(1名),計 5 名。
非正答:主に中央部に背斜のみ(4名),同斜 構造のみ(2名),その他(1名)
事前調査の回答内容に事後調査の採点規準を適 用すると,正答0名,準正答5名(背斜・向斜4 名,土地の隆起・地層厚化1名),非正答 13 名に なる。事前・事後調査間の正答者数の変化は有意 である(正確確率検定(両側検定), p= 0 . 0191,
p<. 05,以下検定法は同じ)。しかし,準正答者数 は変化していない。
正 答 の 要 素 の う ち 褶 曲 の 回 答 者 数 は, 学 生 18 名中事前調査 14 名,事後調査 13 名であり,
表 2 野外実習日程 ジオサイト 主な活動項目 地形・地質
学 習 項 目 モ デ ル 実験項目
〈大学〉 バスによる移動開始 赤神神社五社堂 神社内散策,山岳宗教
の解説
加茂青砂 カンカネ洞へ入洞,日 本海中部地震慰霊碑参 拝
海食洞,津 波災害と海 岸地形 入道崎 (昼食)
八望台 目潟火山群,男鹿半島
西部の地形の解説 マール,海
岸段丘 マール形 成 男鹿温泉 湯本断層と温泉や石灰
華の解説,温泉入浴 断層,石灰 岩
なまはげ館
真山伝承館 なまはげ体験,展示館 見学
寒風山 第一火口,第二火口,
鬼の隠れ里,妻恋峠火 口と溶岩の解説
爆 裂 火 口,
溶 岩 岩 尖,
玄武岩質溶 岩の溶岩流
爆裂火口形成,溶 岩流
〈大学〉 解散
回答者数の割合に変化があったとは言えない
( p= 1 . 0000, . 05 <p )。また,事前調査では,断層を 予想した者は全くいなかったが,事後調査では7 名が断層を記述した。断層回答者の割合の差は有 意である( p= 0 . 0076, p<. 01)。
2)学生の自己評価文
本授業終了後に,学生による自己評価の自由記 述として提出された文( N= 18)から,断層形成の 認識を新たに持った例を抽出すると以下のように なる。
「予想通りに地層が隆起した他,断層が綺麗に 表れた事に驚いた。」(初年次生 KOK :学生識別 記号,以下同様)
「今回の実験で , 隆起するということは予想でき ましたが,内部で褶曲が起きて断層ができること が予想外でした。」(初年次生 TAT )
「今回のモデル実験では,地表のどこかで隆起が 起きるということしか予測していなかったので,
地割れや断層や褶曲,更には崖までもが発生する ことは予想外で驚きました。」(初年次生 KAM ) 「実験にて,私の予想した結果と実際の実験結
果では,隆起するという点では同じでしたが,そ の場所はまったく違うものでした。加え,私は隆 起だけすると思い込んでいたので,褶曲したり断 層が生じるということはまったく想像していませ んでした。地層の表面のひび割れも予想できませ んでした。地層が押されるという現象の中で自分 の予想よりも多くのことが起こり,非常に興味深 かったです。」(初年次生 YOS )
ほか同様の記述が1名からあった。(初年次生 SHS )
また,全授業終了後に,本授業についての感想 文を求めたところ 11 名からの提出があり,この うち1名が本モデル実験にも言及しており , その 内容は次のとおりである。
「教科書の断層や隆起の説明はイメージが付き にくく,先生が黒板に絵を描いて説明してくれた ものの,(このゼミの;筆者注)授業を受けるま では誤った解釈をしていたので,ココアときな粉 を使ったモデル実験を見れて本当に良かった。」
(初年次生 MUY )
(3)火山噴火モデル実験に対する学生の反応 1)マール・爆裂火口地形の成因の認識
マールおよび爆裂火口の地形成因についての適 切な認識を,どの程度の学生が持っているのかを 明らかにするため,野外実習当日の朝に二ノ目潟 および寒風山火山第二火口の写真を見せて,成因
表 3 モデル実験での地形・地層変形に関する予想図(事前調査)・模式図(事後調査)の分類結果調査
正 答 準 正 答 非 正 答
断層と背斜 背斜と
向斜 背斜と 地層厚化
断層と同斜構 造
土 地 の 隆起・地層 厚 化
地層厚化と 地割れ
背斜のみ 同斜
構造 その他
事前 0 5 4 0 0 1 0 13 10 3 0
事後 6 5 1 2 1 0 1 7 4 2 1
表 4 火山地形の成因についての学生の認識 二ノ目潟 第二火口
火山性の成因 適切な成因
マール・爆裂火 口・マグマ水蒸
気爆発 3
噴火で吹っ飛ん
だ 2
適切でない成因 カルデラ・陥没 2 4
山体崩壊 2
漠然とした成因 火山噴火・火口など 10 7
非火山性の成因
地割れ 1
侵食 1
その他 2
無回答 2
表 5 火山噴火モデル実験についての 学生による予想内容の分類
提示したモデル実験 マール 爆裂火口 適切な描写
マール・タフリング 10
爆裂火口 10
不適切な描写
なだらかな山体 3
陥没 1 1
隆起 4 1
めくれあがり 1
を記述させた。記述内容を分類した結果を表4に 示す。正しい成因を回答できたのは2〜3名であ り,半数強の学生は,これらの地形は火山による ものであるとは知っていても,形成プロセスにつ いては回答できておらず,知識はなかったものと 思われる。
2)モデル実験結果の予想
前項目の調査と同時に,マールおよび爆裂火口 のモデル実験装置および実験開始前の地層の模式 断面図を示し,どのような実験結果になると思う か,予想図を描かせた。図の形状を分類したもの を表5に示す。
表5を見ると,半数強の学生は正しい結果を予 想できていた。
3)学生の自己評価文
野外実習直後に,学生による自己評価の自由記 述として提出された文( N= 15)から,モデル実験 について記述されたものを抽出すると以下の4例 があり,内容は次のア〜ウに分類できる。
ア 実験を用いた解説を加えた地形観察の良さ 次の2例の感想は,野外実習で実験を交えた解 説の良さを指摘している。2例目は,地形理解が 深まることにも言及している。
「今日のツアーで,よく考えながら観光するこ との楽しさと大切さを知りました。八望台のマー ルのでき方や寒風山がどのようにして今のような 地形になったのかを,解説を聞きながら自分の頭 で考えることで,美しい景色がより魅力的なもの になりました。」(初年次生 KIR )
「そこでのコーラを使った実験でマグマ水蒸気 爆発によってできたマール湖の中の水(地下水)
はどのように湧き上がってきたのかがあらためて 分かりました。実験を交えた観光ツアーはなかな かないと思うので他とは違う魅力を感じました。」
(初年次生 KAY )
イ 実験による地形変化の理解促進
次の学生の記述は,野外実習中に八望台で行っ たマール形成実験と寒風山で行った噴火実験のこ とを指していると思われ,前項目の2例目に加え この学生の場合も,実験が火山地形の形成の理解 を助けたと解釈できる。
「2 回行っていただいた実験でも,地形の変化に ついて学ぶことができ,大変わかりやすかったで す。」(初年次生 YOS )
ウ 実験による興味の喚起
次の学生による記述は,爆裂火口ができる噴火 のモデル実験の予想が外れたため噴火様式につい て関心を持った例である。
「噴火の実験の私の火口の様子の私の予想は二 つとも異なる形をとると考えていた。(中略)横 にマグマが飛び出すという予想を立てていたが,
そのような噴火の仕方はないのだろうか。それに ついて時間があるときに調べてみようと思う。」
(初年次生 MUY )
6.モデル実験導入の成果と課題
(1)地層変形モデル実験の効果
実験内容に関する事前・事後調査の結果(前章
(2)1)からは,断層に関する認識を高められる 可能性が示唆された。また,モデル実験に対する 感想文(前章(2)2)では誤った解釈を正すこ とができた旨の記述があった。これら2点から,
本実験を導入することにより,地層に断層が生じ るような地層変形について学生の認識を改めさせ ることができる可能性があることがわかる。授業 後の感想文には次のような記述があった。
「断層が出来るメカニズムまでは,中学の理科 ではやらなかったので,非常にためになりまし た。」(初年次生 TAM )
この学生のように断層形成の概念をほとんど 持っていない場合には,本実践は必要な授業内容 であると思われる。
(2)本実践での火山噴火モデル実験の効果
前章(3)の1)でみたように,地形の成因に
ついて火山活動が関連するとの漠然とした認識し
か持たない学生が多かったが,2)に示したよう
にモデル実験では正しい結果を予想できた学生が
多かった。これらのことから,地形とモデル実験
を組み合わせることで,地形成因の理解を深める
ことが期待できた。また(3)の3)で見たよう
に,八望台および寒風山におけるモデル実験につ
いて,地形形成の理解が深まったとの記述が学生
の自己評価文にあり,これはモデル実験導入につ
いての肯定的な反応であった。学生から,個々の
モデル実験について直接の指摘はなかったことか
ら実験ごとの評価はできないが,学生によっては
爆発により形成される火山地形について成因的な
理解が促進されたと思われる反応が見られたこと
から,モデル実験の適切な導入は火山地形の形成 に関し,学生の理解を助ける可能性がある。とり わけ,火山地形を見ても火山活動が成因だとの発 想がない学生が見られるので,そのような学生に 対しては有用であるかもしれない。また,火山噴 火について実験を通じて興味を持つ学生も見られ た。この場合,モデル実験は学生への学習刺激と なりうるものと考えられる。
(3)課題
今後は,モデル実験後の火山地形に関する学生 の認識をより詳細に調査するなどして,火山噴火 に関する実験の有効性を丁寧に議論することが必 要である。また,今回は開発に至らなかった火山 地形(溶岩岩尖や山体崩壊など)についての教材 を,野外実習において導入できるように開発する ことも検討したい。
謝辞 秋田大学国際資源学部附属鉱業博物館の齋 藤 茜氏には,野外実習コース計画のアドバイ ザーとしてゼミナールに加わっていただいた。ま た,本研究費用の一部は平成 27 年度秋田大学教 育実践研究支援プロジェクト経費の助成によっ た。野外実習でのモデル実験は,教育文化学部学 生の大西 諒さん,石水英梨花さんに実演してい ただいた。本実践研究を進めるにあたりお世話に なった関係者諸氏に謝意を表する。
引用文献
林 信太郎(1989):寒風火山.日本の地質『東北地方』
編集委員会(編),日本の地質 2 東北地方,193,
共立出版,東京.
林 信太郎(2006):世界一おいしい火山の本―チョコ やココアで噴火実験―.小峰書店,東京,127
p
. 林 信太郎(2011):第 8 章 寒風山火山噴出物.地域地質研究報告(5 万分の 1 地質図幅)戸賀及び船川
地域の地質(第 2 版),93
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