女子大学生の風呂敷に関する使用実態と意識
著者名(日) 石原 慶子
雑誌名 共立女子大学家政学部紀要
巻 63
ページ 1‑6
発行年 2017‑01
URL http://id.nii.ac.jp/1087/00003114/
Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止
http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja
共立女子大学家政学部紀要 第
63号
(2017)女子大学生の風呂敷に関する使用実態と意識
Actual State of Using and Awareness of FUROSHIKI among Women's University Students
石原慶子*
Keiko ISHIHARA
1 . 緒言
今、日本の伝統が見直されている。 2 0 1 0年 、
「コレド室町」などの伝統的な製品を積極的に 扱う商業施設・売り場がオープンした。それら は現在も人気を博しており、日本の伝統的な製 品の価値が、見直されはじめていることを象徴
している。
このような動きを受け、今話題となっている のが「風呂敷」である。風呂敷とは「物を包み 持ち運んだり収納したりするための正方形に近 い形の布。」"と定義されるが、実際にはタペ ストリーやストール、バッグ等、あらゆる用途 に使用されている。しかし現在では、風呂敷を 使用している女子大学生をほとんど見かけなく
なってしまった様に感じる。
現在風呂敷に関する先行研究では、深澤琴絵、
植田憲、朴燦ー、宮崎消、樋口孝之の「飛鳥か ら平安時代における「包み」の文化」
2)の研究や、
高山貴子の「風呂敷」 という風呂敷のデザイ ン製作に関する研究、伊藤洋子の「生活用具と しての用と美一風呂敷一」
4)の研究などが挙げ られる。
しかしこれらは風呂敷の歴史や寸法・素材・
デザインについて述べられたものであり、現在
* 家 政 学 部 被 服 学 科
の風呂敷に対する消費者の使用実態や意識など についての研究はされていない。また、風呂敷 のように伝統的なものを現在のニーズと結ぴ付 け再考した研究としては、長嶋宏之、町田俊一、
有賀康弘、小林正信、東矢恭明、村上詩保の「ユ ニバーサルデザイン鉄瓶シリーズの開発」
5)が 挙げられる。しかしこちらもデザインについて のみの研究となっている。
そこで本報では、消費者であり流行やファッ ションに敏感な女子大学生の、風呂敷の使用実 態や「風呂敷」という言葉から受ける印象、お よぴ風呂敷に対する意識を明らかにすることを 目的とし、調査を行った。
2.
方法
本研究では、次のような手順と方法により調 査を進めた。
調査は質間紙調査法により、「風呂敷との関 わりについての調査」、「呼ぴ方の違いによる印 象についての調査」、「風呂敷に対する意識につ いての調査」を行った。
調査は平成 27年 5月下旬に行い、被験者は 共立女子大学生
(range:18‑2 2歳)とした。
有効回答数は 307名であった。
‑ 1 ‑
共立女—f大学家政学部紀災 第 63
サ
(2017)(1)
風呂敷との関わりついての濶査
風呂敷の使用経験など、風呂敷との関わりに ついて
!Illう項目を選定し回答してもら った。得 られたデータについて単純集計 ・ クロス集計を 行った。
(2) JI
乎ぴ方の述いによる印象の述いについての 調究
従来から使われている 「 風 呂 敷」 という 言 業と、風呂敷を英晶で表した 「 ラッピングクロ ス」 という 言業とでは、女子 大学生が受ける印 象はどのように汎なるのかを調究するため、 「 風 呂敷」・ 「 ラッピングクロス 」 それぞれについて
「 新しい一古い」 、 「 おしゃれ一やぽったい」 、 「 好 き 一嫌い」 、「 日
/・¥j・的ー非日常的」、「親しみやす い一親しみにくい 」の 5つの形容詞対を用意 し 、
SD法により評価してもらった
。得られたデ
ータについて集計• 分析の便宜上、左から
1-5 の値を置き、平均• 標池偏差 を求め、
t検 定を行 った。
(3)
風呂敷に対する慈識についての調究 風呂敷に対する意識を
I/JJう
35項目の質
Ill!項
目を選定し、 「 そう息う 」 に
1点 、 「 ややそう息う 」 に
2点 、 「 どちらでもない 」 に
3点 、 「 あまり そう息 わない」に
4点 、 「 そう思わない 」に
5点を与え 、
5段階で評価して
1閉 った。得られた データについて
t検定を行 った。
3.
結果および考察
3‑1. J
且
l呂敷との関わり
風呂敷の使用経験についての設間で 「 よく使 う」または 「 たまに使う 」 と回答した風呂敷
・m・用者は、女子大学生全体の
7.1%と非湖に少な く、女子大学生で
El'常的に風呂 敷を使川してい る人は、ごく佃かであることが分かっ た。( 屈
I1 )
よく使う たまに使う
1.6% 5.5%図
1.風呂敷の使
JIJ験
この設
lnJで 「 使ったことはある」、「使ったこ とはない」 、「 分からない」のいずれかを回答 し た
285人の風呂敷非常用者に対し、 今後の風呂 敷の使川慈 向について
IJHいたところ 、「
1史って みたい
(11.2%)」「 まあ使 ってみたい
(45.6%)」
と回答した 「
1史 )
TJ意向者」 と 、
「あま り 使いた くない
(34.0%)」 「使いたくない
(9.1%)」 と回 答した「 使川非意
1iJ1者 」が、ほぽ半数に分かれた。
さらに風呂敷の使用経験を
lllJう項 目と、使用 慈向者 ・使用 非慈
l句者について クロス集計を行 ったとこ ろ、使用意向者で 「
1史 ったことはある 」 と回答した人は、使
JI)意向者全体の
58.0%であ った 。一方使用非滋
l旬者は、
1史
JTJ非意向者全体 の
30.9%であった。 ( 囮
2)このことから、使用意向 者は使用非意向者に 比べ、風呂敷の使)
Tl経験がある人の割合が甜い ことが分かった。
ー
2
—女‑(‑}:.
学生の風,'
", ' 敷 に関する使川尖態と慈識
100.0
9.3
ヽ
",,Ji 13.8゜
800 [ 涵 磁打 9
゜ I
600 }翌 硲t磁
分からない
゜ 深 :
' •使ったことはない
●使ったことはある
゜
゜
lOO
lOO
00
(%) 使 用意向 者 使 用非 意向 者
l?Xl 2.
風 呂敷の
1史 )
II慈
JilJと
1史川経験のクロ ス集 ,
n粘 呆
3‑2.
呼び
)jの述いによる印象の述い「風呂敷」という
言梨から受ける 印象の結呆
は、平均値の小さいJ m
に、 「好きー姉い (2.8)」
、「 親しみやすい 一
親しみにくい (3.1)」
、「おしゃれーやぽったい
(3. 5 ) 」
、「日常的ー非F l
常的 (3.6)」、「新しい一古い (4.4)」であっ
た。一方 「
ラッビングクロス」という,t策から受
ける印象の結呆は、平均値の小さい順に、「
新 しい一古い (1 .
9)」、「お し ゃ れ ー や ぽ っ た い (2.0)」、「好き一拙い (2.7)
」、「親しみやすい一
親しみにくい (2.
8)、」「日・;;¥・的ー非II'常的 (3.2)」であった。
この 「風呂敷」・「ラッピングクロス
」
とい うそれぞれの言業から受ける印象の結果を t検 定により検証した結呆、 「新しい一古い(風出 敷:4.4、ラッピングクロス:1.9)」、「おしゃれ ーやぼったい(風呂敷:3.5、ラッピングクロス : 2.0)」、「日常的ー非E l
'常的(風呂敷:3.6、ラ
ッ ピングクロス:
3.
2)」の3項目で危険率0. 1 %の
有慈差が認められ、 「親しみやすい一親しみに くい (風呂敷:3.1、ラッピングクロス :
2.8)」の 1項目で危険率1%の布慈路が認められた。( I 図
13)--• --
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図3
.
「I瓜邑敷」「 ラ
ッピングクロス」という,j・栄から受ける
:111象の
l検定による
・Jc均値比較
このことから、女子大学生は
「 風呂敷」 とい
う言業に、古さややぽったさを感じていること が、 「ラッビングクロス」
という言業には、新
しさやおしゃれさを感じていることが伺えた。また 「好
き
一拙い(風呂敷
:2 .
8、ラッビングク ロス:2.7)」については、 1料幻店がみられなかった
ことから、 ,了梨としての新しさやおしゃれ
さなどは、その言策を好きかどうかとの関係性 はないことが伺えた。
3‑3. J乱品敷に対する意識
平均値が 1に近く、 「そう息う」と1111答して いる人が多い項1:1は、得、'・応の小さい順に 「6)
「和」のものというイメージがある
(
1.2)」
、「 4 )
大きな一枚の布というイメージがある(
1.3)」、「
13 )
11本 の 伝 統 的 な も の だ (
1.5)
、」「
20)風 呂敷は滸物に似合う (
1.5)」 、 「1 8 )繰り返し使
えるので、環桜に俊しい
(1.5)」 、「
11)小 さく
姓めて、場所をとらない (1.7)」、「3) 結ぴ方 次第で1:i:il
tに形を変えられる(
1.7)
」、「1) 手
頃なものから閥級品まで、様々な値段のものが ある (1.8)」、「2 2 )
風呂敷の価格はよく分から ない (1.9)」
、「3 5 ) あまり馴染みがない (
1.9)」
ー 3ー
共立女子大学家政学部紀要 第
63号
(2017)!
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図
4.女子大学生の風呂敷に対する意識の平均値と揉準偏差
であった。(図 4)
「「和」のものというイメージがある」、「
8本 の伝統的なものだ」といった項目の結果から、
女子大学生は全体として、風呂敷に対し和や
8本らしさといった文化的な価値を感じているこ
とが分かった。また「繰り返し使えるので、現 境に優しい」、「小さく昼めて、場所をとらない」、
「結ぴ方次第で自由に形を変えられる」といっ た項目が挙がっていたことから、女子大学生で あっても、風呂敷の使用方法や使い方を、ある 程度知っている・イメージできることが伺えた。
一方で「風呂敷の価格はよく分からない」、「あ まり馴染みがない」と感じているという結果か ら、女子大学生は風呂敷に対し、自分とは緑遠 く、自身の生活との関わりが博いものと感じて
いることが分かった。
この調査について、
3‑1の調査で分かれた、
「使用意向者」と「使用非意向者」の平均値の 差を、
t検定により検証した結果、
21項目で危 険率
0.1%の有意差が、
3項目で危険率
1%の 有意差が、 3項目で危険率 5%の有意差が認め
られた。(図 5)
危険率
0.1%の有意差が認められた項目とし ては「1
0)持ち運ぴを便利にしてくれる道具だ(使用意向者:
2.5、使用非意向者:
3.5)」 、 「
7)風呂敷を使うのは面倒臭い(使用意向者:
2.8、 使用非意向者: 1 . 8 )」 、 「2 4 ) どんなものにも使 えて便利だ(使用意向者:
2.2、使用非意向者:
3.0)
」 、 「
23)見た目が地味なイメージがある(使 用意向者:
2.8、使用非意向者:
2.0)」 、 「
25)丈
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、
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2J15》鼠anti取と、*チン~イメージが事か5 27) 四CIIU>±41~ぅUりだ 氾 ) 腿 観 珈9却l鉗 氾 い 29) 鵡虹ぷ會紐え"『お泊氾ntA•
30)~"が壼冨
31) 1'1譴っているパッグの代f?'J::fJる 32)箕いやすくてにさやすい
工 鼠8111岱 Hメージがある 34)鼠8霞lコがn』 を 1) 尋..なeのから墨〇贔2で、帽々なIIQのeのIJI島る
2) ● aa1:111111て澪がよeは 闘 色 だ
3) qび9次 ● でQ81:Jl璽鸞えられる 4》 *書なー""'専 UヽうイメーツIJI轟る
6) ● aatz●
" ' " " た
6) I匂Jのもの Uヽう,{Jiージが嘉る 7) ●8監亀●うG'lltlll●虞い 8) 饂aが墨いイメ‑ツOI鼻る 9) ● s• のlllll.11鼠1111111ばかりた 10) K11冨び亀置"にしてくnる這鳥だ 11)·l·-•l". •111 書ピうない 12) 耀 111J1•,n•~.(メ -9匹る 13) B● G')fi羹l'l'lt.G')だ 14). し,110~1心aぃ
l5)おおよそC>IIDIJIIり以ヽ 16) ●呂 •1:11 え It.llgGllllll!Lヽ謬かぶ 17) 111.JQttltlイメーツが島る
洟)あ•JIii四かない
図
5.使用意向の述いによる風呂敷に対するな識の平均値比較
一枚の布というイメージがある(使用意向者:
1.3
、使用非意向者:
1.3)」 、 「
8)値段が高いイ メージがある(使用意向者:
3.3、使用非意向 者:
3.4)」 、 「
16)風呂敷と言えば、唐草模様が 思い浮かぶ(使用意向者:
2.6、使用非意向者:
2.7)
」 、 「
32)洗いやすくて乾きやすい(使用意 向者:
2.3、使用非意向者:
2.4)」 、 「 1 1 ) 小さ
<畳めて、場所をとらない(使用意向者:
1.6、 使用非意向者:
1.8)」 、 「
12)泥棒が使っている イメージがある(使用意向者:
2.9、使用非意 向者:
2.6)」の
8項目については、有意差は認 められず、風呂敷の使用意向はあまり関係なく、
女子大学生全体に共通した認識だと言える。
—
5—
夫なイメージがある(使用意向者:
2.5、使用 非意向者:
3.2)」 、 「
31)普段使っているバッグ の代わりになる(使用意向者:
3.4、使用非意 向者:
4.1)」などが挙げられた。このことから 風呂敷使用意向者の方が、風呂敷の使用方法や 用途、外観などについて、より明確なイメージ を持っており、ポジテイプな印象を抱いている ことが伺えた。
一方、風呂敷使用非意向者は、風呂敷の使用 や用途、外観などについてあまりイメージがわ かず、ネガテイプな印象を抱いていることが伺 えた。
「2) 風呂敷と言われて浮かぶ色は、緑色だ
(使用意向者:
3.3、使用非意向者:
3.2)」 、 「
6)「和」のものというイメージがある(使用意向
者:
1.1、使用非意向者:
1.2)」 、 「
4)大きな
共立女子大学家政学部紀要 第
63号
(2017)4.
要約
女子大学生を対象に、風呂敷に関する使用実 態と意識について考察した。
風呂敷との関わりについての調査結果から、
女子大学生で日常的に風呂敷を使用している人 は、ごく備かであることが分かった。さらに風 呂敷非常用者に対し、今後の使用意向について 聞いたところ、使用意向者・使用非意向者それ ぞれほぽ半数ずつに分かれた。この使用意向者・
使用非意向者と、風呂敷の使用経験を問う項目 についてクロス集計を行ったところ、使用意向 者の方が使用非意向者よりも、風呂敷と接した ことのある人が多い傾向にあることが伺えた。
また、「風呂敷」、「ラッピングクロス」それ ぞれの言葉から受ける印象について調査したと ころ、「風呂敷」という言葉に、古さややぼっ たさを、「ラッピングクロス」という言葉には、
新しさやおしゃれさを感じていることが伺えた。
風呂敷に対する意識を問う調査では、女子 大学生であっても、風呂敷の使用方法や使い方 を、ある程度知っている・イメージできている ことが伺えた。また和や日本らしさといった文 化的な価値を感じている一方で、自分とは縁遠 く、関わりの博いものと感じていることが分か った。
この調査について、「使用意向者」と「使用
非意向者」の平均値の差を検証した結果、使用 意向者の方が、風呂敷について、より明確なイ メージを持っており、ポジテイプな印象を抱い ていることが伺えた。一方で使用非意向者は、
風呂敷についてあまりイメージがわかず、ネガ テイプな印象を抱いていることが分かった。
謝辞
本研究にあたっては、家政学部被服学科学生 の多大なる協力を得ました。また本研究のため、
お忙しい中研究室を越えご助言を下さいました 安藤嘉奈子教授、終始にわたりご指導をいただ きました藤田雅夫教授に、深く感謝申し上げます。
引用文献
1)
新村出:「広辞苑第六版」,
2502 (2008) 2)深澤琴絵、植田磁、朴燦ー、宮崎消、樋
口孝之:デザイン学研究.
4 , 47‑56 (2007)3) 高山貴子:長岡造形大学研究紀要. 5.
22‑24 (2008)