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ドイツ法 における親族扶養
( Ve r wandt e nunt e rhal t ) と社会保障の協働
‑ 第 59 回 ドイツ法曹大会 を中心 と して ‑
藤 原 正 則
1‑ 1
商品交換社会では,人 は自己の財産 と労働力でその生活を維持 しな くてはな らない。商品交換法たる私法の中心をなすのは, この自己責任に基づ く自己実 現の手段たる法制度である 。 しか し自己責任 に依 らず,人間の生存を保障する 法制度 も又存在する
(1)。その意味で私的扶養 と社会保障は,公法 と私法 とい う枠組を超えて共通の機能を担 っている ( 2 )( 3 )。 しか も両者 は互 いに無関係
1 )こういった角度か らは, 沼教授の「ゆ りか ごか ら墓場」 までの民法,特 に 「 保護法」
とい う視角か らの扶養,無能力者制度の位置づけとい う構想 は最 も重要 な研究であ ろ う。 ここで は,例えば 「 親族法の体系 一民法 における親族法の地位 」 『 親族法の 総論的構造 ( 新版) 』三和書房 ( 昭 5 0 ) 1 頁以下 , 「 家族法 の基本構造 」 『 家族法 の 基本構造』三和書房 ( 昭 5 9 ) 1 頁以下を挙げてお く。
2) この こと自体 は当然の理 といえ る。 しか し,掘勝洋 「 社会保障 と扶養」 ジュ リ N o . 1 0
5 9 ( 特集 ・家族の変貌 と家族法 の課題) 1 7 7 貢以下 、1 7 8 頁 は,扶養法 と生活保護 との関係を論 じた文献 は多 いが,生活保護以外の社会保障 と扶養法の関係を扱 った
、 ものは少 ないと指摘す る。確かに前者 ( 扶養 と生活保護)に関す る文献 は枚挙のい とまがない。 しか し, ここでは旧 くか ら扶養法を特 に公的扶助 との緊張関係の下で 論 じている,沼正也 「 全体 としての扶養法秩序 における私的扶養の地位 」 『 親族法 の総論的構造 ( 新版) 』三和書房 ( 昭 5 0 )1 4 8 頁以下 , 「 公的扶助 と私的扶助の限界」
『家族法大系Ⅴ ( 中川還暦記念 ) 』有斐閣 ( 昭35 ) 1 2 7 頁以下を始め とす る沼論文, 山本笑子 「 英法 における扶養義務について」論叢59 巻 5号 8 1 頁以下,西原道雄 「 親 族扶養の法的保障 ( ‑) 」法協 7 4 巻 2号 9 9 頁以下 , 「 親権 と親の扶養義務」神戸法学 雑誌 6 巻 1・2 号340 頁以下,「 英国国家扶助法における家族の扶養義務」神戸法学 雑誌 8
巻3 号450 頁以下,「ドイツ公的扶助 における家族共同体概念の成立 ‑ ドイツ
〔 2 0 7 〕
に並存 しているのではな く,相互に交錯する。即ち,私的扶養 と社会保障は, 関連 し排斥 し協働す る。例えば,私的扶養は生活保護に優先するという形で, 前者 は後者を法的に排斥す る。他方社会保険の給付は扶養義務者の扶養能力を 増大 させ,扶養権利者の要扶養性を縮少する。つまりここでは,社会保障は扶 養義務者につ き扶養法を補完 し,権利者の側での扶養法の役割を事実上排除 し ている。さらに,遺族年金が扶養権利者に支払われる場合は,扶養は社会保障 の連結点 となっている
(4)。だか ら,扶養法 と社会保障の各々の守備範囲は,
家族法の一断面 ‑ 」 『 概観 ドイツ法』東大出版 ( 1 971 )219 真以下
,「 扶養の史的形 態 とその背景 」 『 家族問題 と家族法Ⅴ扶養』酒井書店 ( 昭 33 )1 9 頁以下
,「 扶養 と社 会統制」同前 66 頁以下等の論考,小川政亮 「ドイツ公的扶助 における親族扶助義務 の問題 一特 に世帯同一の場合を中心 に」 日本社会事業短期大学研究紀要 3 号 30 頁以 下をあげてお く。山本論文,西原 「 英国国家扶助法」は,大陸法 と異なって固有の 私的扶養義務を持たないイギ リス法で,公的扶助か らの求償を通 じて親族扶養があ ぶ り出されて くる過程を明 らかに している。 ドイツでの民法上の扶養義務 と公的扶 助か らの求償の相克 ・相互浸透の過程 は,西原 「ドイツ公的扶助」小川論文に詳細 である。又,西原 「 親族扶養 」1 1 3 頁以下の記述 は,近代的扶養法の意義を明瞭に 示 している。
社会保障全体 ( 特 に社会保険等) と扶養法の関連 について も,西原道雄 「 社会保障 における親族の扶養」 ジュ リ N o . 30
1,52 頁以下,小川政亮 「 社会保障制度 との関連」
『 家族問題 と家族法 Ⅴ扶養』酒井書店 ( 昭 33 )150 頁以下,沼 「 全体 としての」は, 先駆的業績であろう。
3)Bernd Yon Mayde l l , Unt e rhal tund s oz i al eSi cherhe i t .ZurFunkt i on des Unt er hal t s recht s i m Sozi al s t aat , Arc hi v f t i r Wi ssensc haf tund Praxi sders oz l al enArbei t ,1986 ,S. 244 f f . ,S. 244 は,公法 と私法 という法 律学の枠組 に制肘 された思考法 ( Schacht el denke n) 故 に,扶養法 と社会法 との 関係 は個別の問題 に即 してだけとりあげ られているにす ぎないと指摘 している。但 し, Maxi mi l i an Fuchs , Zi v i l rechtund Soz i al re cht , Rec htund Dog一 mat i kmat eri el l e rExi st e nzsi c herungi nde rmode rnenGes el l sc haf t ,1 9 9 2 は,民法典及び社会法の発生か らその展開,不法行為及び扶養 と社会保障の関係 を包括的に検討 している ( YonMayde l l ,Unt erhal tundSozi al rechtZusam‑
menh畠 . ngeundVerwer f ungen
,Brt i hl erSc hri f t enz um Fami l i enrec ht
,Bd. 8,1 998 ,S. 23 f f . ,S. 35 Anm. 2 は同書を従来の研究の例外であ り、全体 像を検討 していると評 している) 0
4 ) こういった社会保障法 と扶養法の全体的関連 については,例えば,掘,前掲注 ( 2 ) 論 文。及 び ドイ ツについて は ,Y on Mayde l l ,Soz i al rec ht l i cheAus wi r knnge n der moder ne n Ent wi ckl ungen i m Fami l enrecht , Ent wi c kl ungen i m Rec htde rFami l i eundderauβe r recht l i de nLebensgeme i nscha f t ,Uwe Bl auroc k ( Hrs g. ) 1 989 ,S. 45 f
f. ,S. 47 f f . を参照,
ここでは ,Pro首 .YonMayde l lが前掲注 ( 3) の冒頭の論文で掲示 した ドイツ法での
ドイツ法における親族扶養 ( Ve r wandt e nunt e rhal t ) と社会保 障の協働 209
法的にではな くとも事実上互いに影響 しあっている
(5)。もちろん私的扶養 と 社会保障のあり方を規定する要因は,二つの制度の相互関係だけではない。私 的扶養は,その成立の基礎 となる親族的連帯の存在 と,扶養義務者たる私人の 給付能力 という形で限界づけ られている 。 又,社会保障の内容 も,その時々の 社会保険団体,国家の財政状況,政策的課題 によって方向づけ られている。 し か し,いずれに して も,社会保障 と親族扶養が,相互 に交錯 し, しか も社会保 障上の給付が家族 とい う親族共同体を介 して与え られ る場合が多いことに鑑み れば,特に 「 家族政策」を通 じて両者が相互 に影響 しあっていることは間違い ないといえる。そ して この ことは,社会保障の中で も,人間の生存の最低限を 支える生活保護ではな く,社会保険等の給付が中心的役割を担 うようになった 今 日では一層あてはまると言えるであろう
(6)0本稿 は,特 に以上 の様 な視 角 か ら,第 59 回 ドイ ツ法 曹 大 会 ( Der59 . Deut scheJuri st ent agi nHannover1 992) での家族法部会 と社会法部会の 議論の紹介を通 じて, ドイツの親族扶養 ( Verwandt enunt erhal t ) の動向を
社会保障体系の図式を示 してお く ( A.a.0 ‥ S ,2 47 ) 0
第
1の原則 :自分の生活の経済的基礎 は,まず (自営,非 自営業を問わず)定期的 な自己の職業活動か らの収入及び利子によって確保 されなければな らない。国家は 最低収入を保障 しない。
第
2 の原則 :まず被用者更に自営業者の場合 も増えているが,職業活動が老齢,災 害,疾病,失業で不可能 となったときは,職業活動の定期的収入 に社会法 による所 得補償が代わる. Jその為の資金 は,現行の社会保険体系の下では現役の職業従事者 ( 及び使用者)の保険料 に依 っている。 公法的援助 システムに加入で きない者 には,
、 私的援助,特に私保険加入の方法がある。
第
3 の原則 :家族の一員が所得又は所得補償を得 られないときは,親族関係 に基づ いて扶養を受けることになる。扶養が離婚又は死亡が原因で与え られな くなれば, 社会保険法の補償請求 ( 負担調整 と遺族年金)が扶養請求に代わ る可能性がある。
第
4 の原則 :充分な収入がない者 には,国家 は場合 によって補償給付 ( Ausgl e i ‑ c hs l e i s t unge n) を与えることがある。補償給付 と扶養義務 との関係 は特別 に規定 が置かれている。 こういった給付がなされ る例 は,例えば住宅金 ( Wohnge l d)
と教育振興 ( Aus bi l dungs f 6rde rung) である。
第
5 の原則 :所得,所得補償が不充分でかつ扶養請求 も存在 しないときは,国家は 社会扶助の範囲内で最低限の生活保障を与える。
5)Y onMayde l l ,前掲注 ( 4) 論文,特に S. 50 f f . はその具体例を挙げて個別的検討を 加えている。
6 )掘,前掲注 ( 2 ) 論文 1 7 8 真。
社 会 法 の方 向性 を も顧慮 して探 る ことに あ る。今 日 わが国のみな らず工業化 さ れ た国 々が 直面 して い るの は,少子化 と 高 齢化 の も た らす諸 問題 ,伝統 的な家 族 関係 の変 化 であろ う。 わが国で も,家 族法 改正 作 業 で は,非嫡 出子 と嫡 出子 の 区別 の廃 止等が とりあげ られてい る。 又, 高齢 化 社会 の到来 を間近 に して, 老 親 扶 養 の 質 ・量一 一 一 一 「金銭扶養か 引取扶 養か 。生 活 保持義務 ,生活扶助義務 の 二 分 類 へ の 疑 問等 ( 7 ) ‑ が議論されているし,又, 昨年 の ドイ ツでの立法化 を も契機 と して公 的介護保険の導入も話題に上っている ( 8 ).以上 の よ うな背 景 の下 で,変化 しつ つある家族関係を軸として,社会法 と扶養法 の協働 とい う 視点か ら,親族扶養 を 一面で締少し他面で拡大する提 案 を示す ドイ ツ法曹大会 での議論 は, わが法 に も 大きな示唆を与えると考え る。
1‑2
さて本論 の前 に,法曹大会 の全体像 につ き説 明 し,かつ課題 を限定 してお く 必要 が あ る。士 い うの は,本稿 で とりあげ るの は,法曹大会 のテ ーマの一部 に す ぎないか らで あ る。 まず家族法部会 で は,「 親子法 を改正す ることが望 ま し いか ( Empf ehl tessi ch,dasKi ndschaf t srechtneuzuregel n ?) 」 とい う題 目で シュヴェ ンツ ァー ( Prof .Dr.I ngeborgSchwent zer ,バ ーゼル大 学)が鑑定意見 を書 いて い る
(9)。その中心 は嫡 出子 と非嫡 出子 の区別 の撤廃
7 )例えば,吉田邦彦 「 在宅ケアに関す る民法上の諸問題 一特 に事故責任 ( 看護過誤) 及 び老人介護 ( 老親扶養)問題 ‑」 ジュ リ増刊 『 高齢化社会 と在宅ケア 』( 1 99 3
年4
月)1 20 頁以下,1 25 頁以下。
8) 「 社会保障将来像委員会第二次報告書」等参照。
9) Verhandl ungen des neunundf t i nf zi gs t en de ut s chen Juri s t e nt ages , Hannove r1 99 2,Bd.Ⅰ ( Gut ac ht en) ,1992 .Gut ac bt enTei lA.Bd. Ⅰは, 各部会の鑑定意見,Bd.Ⅱ ( Si t z ungsberi cht e ) ,19 9 2 は鑑定意見以外の報告, 討論,決定を収録 してお り ,Bd.Ⅰ, Bd. Ⅱの通 しで各鑑定意見,各部会の報告, 討論にアルファベ ットでナンバ リングしてある。なお,法曹大会全般の簡潔な紹介 として,JZ19 9 3,S,82 f f 。 大会前のコメン トとして, 家族法部会については , Ni na Det hl o f f ,Re f orm desKi ndsc haf t srecht s,NJW 1 99 2 ,S.220 0f f . ,社会法 部会 については ,Berndv on Mayde l l ,Empf ehl tess i ch,di eZuwe i sung vonRi si ke nundL礼s t eni m Soz i al rechtneuz uordne n?,NJW 1 99 2 ,S.
21 95f f . があり,ドイツ法の各々の分野の全体的文脈の中での法曹大会の意義の理
解に有用である。
ドイツ法における親族扶養( Ver wandt e nunt er hal t ) と社会保障の協働 21 1 で あ るが,実 は全体 のパ ースペ クテ ィブは も う少 し広 い。離婚後 の別居子 の監 護 , 継 子,里子 の監 護,養子 法 に至 るまで,変 化 しっ っ あ る親 子 関係 に即 して, その生活 実体 に合致 した法 的規律 を与 え よ う とい うのが 1 0) ,鑑 定意 見 を貫 く 基本線 とな って い る。だか ら鑑 定意見 の中心 は未成年子 と親 の関係 に置 かれて お り, その観点 か らは親族扶養 の 内成年子 の老親 に対 す る扶 養 は副次 的 な問題 で あ るが,現実 に即 した親 子関係 の規律 とい う意 味 で全体 と関連 して い る と言 え る ( 故 に,夫婦 間の扶 養 ( Ehegat t enunt erhal t ) に は言 及 されず,親族 扶 秦 ( Verwandt enunt erha l t ) だ けが と りあ げ られ て い る)。 しか も,子 の監 護 をめ ぐる議 論 とは異 な りユ 1 ),親 族扶 養 の局 面 で は鑑 定 者 と他 の三 人 の報告 者 , ゼ ン
ツ( Prof .Dr.Gi esel a Zenz ,、 フ ラ ン ク フル ト大 学 ), ヴ ィル ツ
1 0 )シュヴェンツァーは,序言で従来か らも議論 され続け法改正 も行われてきた親子法 を今回とりあげるには三つの契機があると言 っている。第一は,子の出自,家庭の 状況 ( 離婚,片親等)にかかわ らず子に共通の福利を与えようという全 ヨーロッ
パの動 きとこれを受けた各国の法・ 改正,第二 は両独統一 ( 1 9 6 5 年か らDDR では嫡 出 ・非嫡出の区別を廃止,法抵触の問題等の解決) ,第三に最 も重要なのは内国, 外国での人 口的展開である。 即ち, 非嫡出, 離婚率,養子の増大 ( 里子の数 は一定) と出生率の低下である。 しか も増大する非嫡出子 ( 今 日 6 0 年代 と比 して倍増 し,旧 西独で約1 0 パーセ ン ト,旧東独で 34 パーセ ン ト位)の内訳は,婚姻関係にある男の 子ではな く非婚姻的共同体 ( NEG) か ら出生する者が増大 している。又,離婚率 の増大によって片親家庭が増え,嫡出子の状況 も変化 している。片親の養子 も増え ている。更 に母親のみな らず父親 と子供の関係が密接になってきている。つまり, 伝統的な法律婚の想定 している婚姻関係が解体 し,例えば非嫡出子 と嫡出子の置か れている状況 も相対化されてきているのである。法律婚が子の福祉に合致 し,非嫡 出子は父親不在で子に不利益,離婚は悲劇であるといった認識 は事実に反す る偏見 であると考え られる。その結果,非嫡出,嫡出という身分の区別を廃止 し,各々の 子の状況に合致 した多様な規範を形成 してい くことが必要だ, とされている 。 〔 A
9‑20 〕 。
但 し,以上のような試みは,未成年子の福利に合わせて伝統的な法律婚の枠組を解 体 させ ることにつなが る。だか ら,例 えば シュヴ ァ‑ ブ ( Pr of .Dr.Di e t e r Sc hwab. レーゲ ンスブルグ大学)は,婚姻は生殖,育児 と職業労働 という分業を 保護す る為の法制度であり,子の福祉を中心 とすれば将来は,監護扶養,居住権の 保障等の最低保障を伴 った 「 婚姻」と完全な育児の為の保障を持っ届出のなされた
「 デラックスな婚姻」の二つが共存 し,各々の妥当性が問題 とされるに至 るだろう
〔 M.1 22‑1 24 〕 ,と指摘 している。
l l )本法曹大会の中心テーマである,嫡出,非嫡出という身分の区別,父母の共同監護 権に関 しては, 岩志和一郎「 親子関係 と婚姻 一第59 会 ドイツ法曹大会の議論か ら‑」
早稲田法学6 9
巻4 号 41 頁以下に詳 しい紹介 と検討がある。
キー ( Si egf ri edWi l l uzki ,ブ リュ‑ル区裁判所長),デ ィーデ リクセ ン ( Prof . Dr. U weDi ederi chsen ,ゲ ッチ ンゲ ン大学) との問で ほとん ど意見の対立 がない。だか らそ こで打 ち出された方向性 は,一 一 一「夫婦間,非嫡出子の扶養は 別 として,民法典成立以来変化が見 られない 1 2) ‑ 扶養法の改正に直ちに結び
1 2 ) 夫婦間の扶養義務 ( E hegat l enunt e r hal t ) の §§1 360f f .BGB の規定 と並んで,
§§1 601f f .BGB,§1 601 は直系血族 は扶養義務を負 う, と定めている。同条 は確 かに民法典成立以来変更 されていない。 しか し特 に社会扶助 (による求償) との関 係で過去その当否が何度か問題 とされた。
まず民法典成立時には,傍系血族 ( 兄弟姉妹)にも親族扶養が認め られ るべ きかが 議論 された。第 1次草案で は普通法 とは反対 に兄弟姉妹 に も扶養義務が拡大 され た。その際, 兄弟間は扶養 に充分 な理解が得 られ る程親密 とは言えない場合が多 い, 経験上訴訟の増大を招 く,困窮時の扶養 に限定 して も苛酷 な結果 となるケース も有
り得 る点 は認識 されていた し,更 に兄弟 間には遺留分 はない ことも付言 されてい た。 しか し,決定的な拡大の理 由となったのは,公的な救貧 ( Arme npf l ege ) の 負担の増大であ った ( Mugdan4,S.360f .Mot i v e4 ,S . 679 ) 。 しか し,第二
次委員会では,プロイセ ン以外のラン トの反対で,救貧の負担 は決定的理由とはな らないと して,親族扶養を直系血族 に制限す る現行法へ と結 びっいた ( Mugdan 4,S.947 ,Pr ot okol l e4 ,S . 58 21 ) 0
1 953 年 には第二次世界大戦後 の財政難の為親族扶養を姻族一親等 にも拡大せん と す る法案が提案 されたが, 連邦参議院で否決 された (2.B T ,Drucksache,Nr 224 ,S. 84 ) 。この間の事情及 び救貧措置 との関係 については, 小 川 , 前掲注 ( 2 ) 「ドイ
ツ公的扶助」 に詳細であ り,又,西原,前掲注 ( 2) 「ドイツ公的扶助」 は民法典成立 前後の救貧への公的扶助 と親族扶養の関係を明 らかに している。
社会扶助法 による救貧 との関係で は ,1 97 4 年 に,生活扶助 の求償 を,民法上扶養 義務を負 う者 に対 して認めていた 91 条を,二親等或いはそれ以上の親等の親族に対 しては求償が発生 しない とい う現行法 ( 実質上 は孫 と祖父母間の求償削除) (§ 91
IBSHG) に改めた。その理 由は,か っての居住 を共 に していた大家族 とは異 な り今 日では孫 . ・祖父母間に求償への理解が得 られ る程の親密な関係がない。老人 は 求償を恐れて社会扶助を断念す るか ら, とされている ( 更 に,行政手続,費用の簡 潔化,低下 に も言及 されている) , 7.Druc ksache,Nr.30 8 ,S.8,S.1 9 。 し か も, この改正が契機 とな り,民法上の扶養義務 も二親等以上の親族間では発生 し ないとす る解釈論及び立法論があ らわれ始めた。 例えば , A. Kunz,Bes t e htnoch ei neUnt e rhal t spf l i chtz wi sc he nVerwandt e nz wei t e node re nt f e rnt eren Grad' es ?, Das Uberl ei t ungsv erbotdes S91I S. 1BSf IG i n s e i ner Auswi rkungaufdasf ami l i 畠 . reUnt erhal t s recht ,FamRZ1 97 7 ,S.291f f .
は,解釈論 として民法上 の扶養義務 の制限を主張す る。多数の学説 は,解釈論 と しては民法上の扶養請求,社会扶助法上の請求の併存, しか し相互 に求償 は生 じな い と解 して い る。例 えば ,Schel l horn/Ji ras ek/Sei pp , Komme nt arB um Bundessozi al hi l f egeset z,13 .Auf 1 . ,§91,Rn35 f f . ; G6r i pi nge ru.a. ,Un‑
t erhal t s recht , 5. Auf l . ,Rz. 21 0;K6hl er,HandbuchdesUnt e rhal t srec ht s ,
ドイツ法における親族扶養 ( Ve rwandt enunt e rhal t ) と社会保 障の協働 2 1 3 付 くかどうかは別 として,ほぼ共通の認識 となっていると言えよう 1 3)0
次に社会法部会のテーマは , 「 社会法での危険 と負担の分配を見直すのは望 ま しいか ( Empf ehl tess i c k, di eZuwei sung Yon Ri si ken und Last en i m Sozi al rechtneu zu ordnen?) 」 で あ り, シ ュー リン ( Prof . Dr Bert ram Schul i n , コンスタンツ大学) とリッ トマ ン ( Prof .Dr.Xonrad Li t t mann , シ ュパ イ ヒャー行 政大 学) の鑑 定意 見及 び ク ンマ ‑ ( Pet er Kummer ,連邦社会裁判所判事),イゼ ンゼ‑ ( Pro f .Dr.Jos efl s ensee , ボン大学)の報告が付されている。 ここで取 り上げ られた問題 も幅広 く, しか
もその内容 は法的側面だけでな く政策的局面 にまで及んでいるが,出発点 と なっているのは,立法者による従来の危険 と負担の分配はその時々の政治的契 機,財政事情に左右されてお り,体系整合性が見失われていた。だか ら今回は 社会保障の外枠ではな く,内的妥当性につながる構造改革を 目指そうという認 識である。そこか ら導 き出された方針の一つは,社会保障給付の中での社会保 険の要素の強化,つまり社会保険にふ さわ しい分野にだけ社会保険料か らの拠 出をあてること,他人の負担 は社会保険料ではな く租税で賄わるべ きだ, とい う考え方であった。そのように しては じめて,社会保障の中での体系整合性乃 至妥当性が保持 される, というのである。だか らこういった視角か ら,いわゆ
7.Auf l . ,Rz.2 2 ,20 8 。更 に ,1 9 8 4 年には他の一連の社会保障垂削減の措置 と ともに,同条の求償の範囲を再 び,民法上に扶養義務者 に広 げようという連邦政府 案が退け られている 。1 0 .Dr uc ks ac he,Nr . 33 5 ,S. 36, S. 9 2 ,S. 1 0 0 0
以上の経緯か らもわかるのは,親族扶養がその基礎 となる親族間連帯よりも主に公 的扶助の財政事情 との関係で論議 されていることである。
1 3 ) 例えば ,J.Mt i nde r,Unt e rs c hi edez wi s c he nz i vi l r ec ht l i c he nUne r hal t ‑
s ans pruc h und ,s oz i al hi f e re c ht l i c he n Rege l unge n
,NJW 1 9 90
,S.2 031
f f . ,S.2 03 7 は,親族扶養を介 しての社会扶助法 による求償が制限さるべ きこと
を確認 し,親族扶養の社会扶助への優先 も検討 し直すべ きであると言 う。かつその
基礎 となるのは,社会扶助が社会国家の下で最低の生存保障か ら,社会政策上の目
標を実現す ることを 目的として気前が良 く ( gr oβz t i gi g) なっているか らだ と言
う。 もちろんそれ自体 は歓迎 さるべき現象だと評 され るが,その結果を求償 という
形で私人に負担 させ るのは望ま しくない。 こういった制限を企てる判例の解釈論 は
問題がない訳ではないが,親族扶養の際限のなさへの不快感の表現であ り ,1 9 世紀
の扶養法体系が 2 0 世紀終 りの今 日の変化 した状況に受け入れ られないことの表現だ
と評 している。
る 「 家族負担調整 ( Fami l i 6hl as t e naus gl e i c h) 」一 丁 一 一扶養家族付 と独身の同 一の収入の二人の労働者が同額の健康保険料を支払い,一方 は一人の他方は複 数人の危険が健康保険組合か らの給付でカバーされる例を考えよ。 ここでは, 保険料率 と危険が合致 してお らず,保険原理か らの逸脱が存在する。だか ら扶 養家族への保険給付は,家族負担調整 という団体的正義か ら説明される‑ の 妥当性 も議論の対象 となった。 しか し,他方で見解の一致を見たのが,社会保 障の保護が欠映 している分野をどう救い上げてい くか,具体的には育児,教育 及び老人介護の家族の負担を軽減 しようという点であった。その結果,期せず して (?)家族法部会 と社会法部会で,老親 に対する扶養義務乃至は要介護者 ( 老親)に与え られた社会扶助法上の求償規定の廃止,及び子に対す る扶養義 務の縮少で見解の一致が見 られた。 こういった家族 ( 扶養義務)の負担を可能 な ら社会保険で代置,左 もな くば,児童手当等の給付,税控除措置により側面 支援 しようというのである。本稿では,社会法部会か ら扶養に関連する局面を 拾い上げて紹介す ることとしたい 1 4)。 又,家族法部会での問題設定,及び以 上の問題関心か ら,夫婦間の扶養についてはとりあげない。夫婦間の扶養‑
それは,特 に主婦埠を前提 とした男女の役割分担の下で問題 となる‑ は,主 婦の育児,家事労働の評価 という側面か ら社会法,親子間の扶養義務 と関係す
る限 りで言及 されることとなる 。
2‑1
シュヴェンツア ウ‑は,本法曹大会の前後 にも親族扶養に関す るはぼ同旨の 論文を書 いている。前者 「 親族扶養 と人 口統計の社会的変遷 ( Ver wandt e n‑
unt er ha l tunds oz i odemographi s cheEht wi c kl ung) 」1 5) ではその題名か らもわかるように家族をめ ぐる統計的変化に重点が置かれ,後者 「 親族扶養の
1 4 ) 他の社会法部会でのテーマ として 目立 ったのは,やはり財政事情を反映 して,健康 保 険 ( Kr anke nv e r s i c he r ung) で の費用削減,∵ 年金 の支給額 の削減,使用者の 社会保険料率の軽減の試み,失業保険の整理等であった。
1 5 )FamRZ, 1 9 8 9 ,S. 6 8 f f .
ドイツ法における親族扶養( V e r wandt e nunt e r hal t ) と社会保 障の協働 2 15 改正‑ 法政策上不可欠の措置か, 早急にす ぎる親族間連帯の放棄か( Re f orm desVerwandt enunt erhal t s
‑ei nerecht s pol i t i s che Not wendi gkei t odert i berei l t eAuf gabederFami l i ensol i dari t 畠 . t?) 」1 6) では社会法 との 関連,扶養義務制限の実際上の影響が意識 されている ( なお後者では,老親に 対する扶養だけが検討の対象 となっている) 。本稿ではまず この三つの論考を 併せ要約する形で紹介 し( 鑑定意見は本文中に割注で, 他 は脚注で頁数を示す) ,
しか る後に他の報告及び討論を これ とつ きあわせ るとい う形で叙述 を進めた
い